特許第6395877号(P6395877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395877嫌気性消化処理方法及び嫌気性消化処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395877
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】嫌気性消化処理方法及び嫌気性消化処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20180913BHJP
   C02F 11/14 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C02F11/04 ZZAB
   C02F11/14 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-12056(P2017-12056)
(22)【出願日】2017年1月26日
(62)【分割の表示】特願2013-511982(P2013-511982)の分割
【原出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2017-100130(P2017-100130A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2011-98289(P2011-98289)
(32)【優先日】2011年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】西井 啓典
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 建樹
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直明
(72)【発明者】
【氏名】西本 将明
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−268400(JP,A)
【文献】 特開平11−300323(JP,A)
【文献】 特開2000−015231(JP,A)
【文献】 特開平04−131197(JP,A)
【文献】 特開昭62−160183(JP,A)
【文献】 特開平03−293098(JP,A)
【文献】 特開昭61−254300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
B09B 1/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を、0.5mm以上のし渣と、除渣汚泥とに分離する、孔径0.5mm以上の多孔板を備えるし渣分離部と、
前記除渣汚泥に薬液を混合する薬液混合・凝集部と、
前記薬液混合・凝集部で生成した凝集汚泥を、4〜12質量%に濃縮された濃縮汚泥と分離液とに固液分離する濃縮分離部と、
前記濃縮汚泥を回収し、嫌気性消化処理部へ定量供給できる濃縮汚泥供給部と、
前記濃縮汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理部と、
前記し渣分離部からのし渣、及び前記濃縮分離部からの分離液の全量又は一部を混合して、前記濃縮汚泥を嫌気性消化して得られる嫌気性消化汚泥に混合する機構と、
前記し渣及び分離液と前記嫌気性消化汚泥との混合物を脱水する脱水装置と、
を含み
前記濃縮汚泥供給部は、前記嫌気性消化処理部から前記嫌気性消化汚泥を引き抜くための引き抜き配管、引き抜いた前記嫌気性消化汚泥と前記濃縮汚泥とを混合する混合槽、混合した汚泥を前記混合槽から前記嫌気性消化処理部に戻す返送用配管、及び定量ポンプを具備する、嫌気性消化処理装置。
【請求項2】
前記濃縮汚泥供給部の前記汚泥濃縮部が、前記嫌気性消化処理部よりも高い位置に設けられている、請求項に記載の嫌気性消化処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気性消化処理方法及び装置に関し、特に、嫌気性消化処理の前処理として好適な汚泥濃縮方法及び装置を用いる嫌気性消化処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥の嫌気性消化処理は、好気性処理に比べて汚泥発生量が少なく、病原微生物や寄生虫卵も速やかに死滅して安定化し、酸素の供給が不要なので動力消費量も少なく、メタンガスを主成分とするバイオガスも得られることから、省エネルギー的処理方法として古くから適用されている技術である。一方、嫌気性消化槽設備は大容量を必要とし、消化汚泥の処理では薬品費用の負担の大きい技術でもある。
【0003】
したがって、現状の汚泥処分方法としては、汚泥を嫌気性消化することなく、脱水して埋め立てる事例や、脱水して焼却処分する事例がまだまだ多い。例えば、従来の汚泥の嫌気性処理として、図2に示すブロックフロー図で示されるものが挙げられる。このフローについて説明する。
【0004】
汚泥11は、貯留装置12に送られ、次いで汚泥11は、固液分離装置13に送られ、濃縮汚泥14と分離液15とに固液分離され、濃縮汚泥14は、嫌気性消化装置16に送られ、嫌気性消化された汚泥は、消化汚泥凝集物調製装置17に送られ、分離液18を分離するとともに消化汚泥凝集物19が調製され、消化汚泥凝集物19は、脱水装置20に送られ、分離液21を分離するとともに脱水ケーキ22が調製される。分離液15、分離液18、及び分離液21は、廃水処理設備23等に送られる。消化汚泥凝集物調製装置17では、凝集剤が添加されることが多い。
【0005】
一方、特許文献1には、(a)汚泥の混在するし尿を固液分離する前処理工程と、(b)処理工程で分離した固形物を脱水せずに直接嫌気性消化する嫌気性消化工程と、(c)動植物残さ及び固形物を含有する厨芥を嫌気性消化する嫌気性消化工程と、(d)嫌気性消化工程流出液を固形物と分離水に脱水分離する脱水工程、(e)前処理工程の分離水、脱水工程からの分離水を生物学的に酸化、脱窒素する生物処理工程とからなる処理方法により、有機性廃水処理施設の汚泥、浄化槽汚泥等の汚泥、し尿、動植物残さを含有する厨芥を省エネルギー的に処理するとともに、し尿、浄化槽汚泥中の非衛生な篩渣を衛生的にコンポスト、固形燃料化するし尿、厨芥、汚泥の処理方法を提案している。
【0006】
特許文献2には、廃水処理設備における最初沈殿池から発生する初沈汚泥と最終沈殿池から発生する余剰汚泥とを混合して貯留し、この混合汚泥に凝集剤を添加して1次凝集処理を行い、次に1次凝集処理を終えた混合汚泥をその汚泥濃度が6〜8%となるように濃縮処理し、次いで濃縮処理後の混合汚泥に凝集剤を添加して2次凝集処理を行い、さらに2次凝集処理を行った混合汚泥に脱水処理を施す処理方法により、廃水処理により発生する初沈汚泥と余剰汚泥の2種の汚泥を、1系統で濃縮処理するとともに、後続の脱水工程にとって最適な汚泥濃度まで濃縮して維持することにより、これら廃水汚泥の濃縮及び脱水プロセスにおけるトータルの効率を最大限に発揮させる汚泥処理方法及びそのシステムを提案している。
【0007】
また、特許文献3には、固液分離装置の搬送能力を上げるとともに、押圧圧搾効果を増大させるスリット型濃縮機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−216785号公報
【特許文献2】特開2009−90240号公報
【特許文献3】特開2003−211293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の汚泥濃縮工程では、前段で粒径3〜4mm以上のし渣を濃縮前に別途除去するが、それ以下の粒径のし渣はそのまま濃縮工程に供給され、汚泥とともに濃縮される。
【0010】
濃縮方法としては、重力により汚泥を沈降させることによる重力濃縮法、汚泥中の固形物を通さず、水分を通過させるベルト状スクリーンを利用したベルト濃縮法、遠心力による固液分離を利用した遠心濃縮法などの機械濃縮法が挙げられる。重力濃縮法は、通常、薬注なしで汚泥を濃縮する。しかし、濃縮率は2〜3倍程度で、濃縮倍率を高めるためには滞留時間を十分に確保することが必要となるために極端に大容量の濃縮槽を設けている。あるいは、薬液を添加する必要があり、高濃度汚泥を得る方法としては現実的でない。また、従来の機械濃縮法では、固形物回収率を上げるために多量の薬液を必要とし、ベルト濃縮法ではベルトの洗浄のための多量の高圧洗浄用水を要する。また遠心濃縮法では汚泥を入れた容器を高速回転させるため、多大な動力が必要となるといった問題があった。
【0011】
また、上述のような従来の嫌気性消化処理のHRTを更に短縮し、かつ消化槽を小型化することに寄与する、嫌気性消化される汚泥の濃縮技術の改善が望まれている。
【0012】
更に、従来の技術では、嫌気性消化処理後の汚泥の脱水性が悪化するなどの問題があり、この問題に対処するための有効な手段が望まれていた。
【0013】
本発明の課題は、汚泥を簡易に高濃度に濃縮することができる方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の嫌気性消化処理方法及び装置は、以下の汚泥濃縮方法及び装置を含む。
1)汚泥をし渣と除渣汚泥に分離するし渣分離工程、除渣汚泥に薬液を混合する薬液混合・凝集工程、及び薬液混合・凝集工程で生成した凝集汚泥を濃縮汚泥と分離液に固液分離する濃縮分離工程を含む、汚泥濃縮方法。
2)汚泥をし渣と除渣汚泥に分離するし渣分離部、除渣汚泥に薬液を混合する薬液混合・凝集部、及び薬液混合・凝集部で生成した凝集汚泥を濃縮汚泥と分離液に固液分離する濃縮分離部を含む、汚泥濃縮装置。
【0015】
本発明は、し渣分離工程で、し渣と除渣汚泥に分離する際、従来では除かれなかった粒径の小さいし渣及び毛髪等の径が小さく長い繊維状の夾雑物を含めて除くことを最大の特徴としている。し渣とともに得られる除渣汚泥はこれらが従来に比べて十分に除かれているため、濃縮工程での回転部分への絡み付きなどの機械的トラブルを生じることなく低動力で高濃度の濃縮汚泥を得ることが可能となり、分離したし渣を後段の嫌気性消化汚泥と混合することで脱水性を改善することが可能となる。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1] 汚泥をし渣と除渣汚泥とに分離するし渣分離工程、
前記除渣汚泥に薬液を混合する薬液混合・凝集工程、
前記薬液混合・凝集工程で生成した凝集汚泥を、4〜12質量%に濃縮された濃縮汚泥と、分離液とに固液分離する濃縮分離工程、
前記濃縮汚泥を回収し、嫌気性消化工程へ定量供給する濃縮汚泥供給工程、
前記濃縮汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理工程、及び
前記分離したし渣及び分離液の全量又は一部を混合して、前記濃縮汚泥を嫌気性消化して得られる嫌気性消化汚泥に混合する混合工程
を含む、嫌気性消化処理方法。
[2]前記し渣及び分離液と前記嫌気性消化汚泥との混合物を脱水する脱水工程をさらに含む、[1]記載の嫌気性消化処理方法。
[3]前記し渣分離工程は、粒径0.5mm以上又は粒径2.0mm以上のし渣を分離する、[1]又は[2]に記載の嫌気性消化処理方法。
[4]前記混合・凝集工程において、凝集剤の添加量は除渣汚泥中のSS質量に対して0.2〜1.0%である、[1]〜[3]に記載の嫌気性消化処理方法。
[5]汚泥をし渣と除渣汚泥に分離するし渣分離部と、
前記除渣汚泥に薬液を混合する薬液混合・凝集部と、
前記薬液混合・凝集部で生成した凝集汚泥を濃縮汚泥と分離液に固液分離する濃縮分離部と、
前記濃縮汚泥を回収し、嫌気性消化処理部へ定量供給できる濃縮汚泥供給部と、
前記濃縮汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理部と、
前記し渣分離部からのし渣、及び前記濃縮分離部からの分離液の全量又は一部を混合して、前記濃縮汚泥を嫌気性消化して得られる嫌気性消化汚泥に混合する機構と、
を含む、嫌気性消化処理装置。
[6]前記濃縮汚泥供給部は、定量ポンプを具備する、[5]に記載の嫌気性消化処理装置。
[7]前記濃縮汚泥供給部は、前記嫌気性消化処理部よりも高い位置に設けられている、[5]又は[6]に記載の嫌気性消化処理装置。
[8]前記し渣及び分離液と前記嫌気性消化汚泥との混合物を脱水する脱水装置をさらに含む、[5]〜[7]のいずれか1に記載の嫌気性消化処理装置。
[9]前記し渣分離部は、孔径0.5mm以上又は孔径2.0mm以上の多孔板、または60〜100メッシュの金網を有するスクリーンを備える、[5]〜[8]のいずれか1に記載の嫌気性消化処理装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、汚泥を、省スペース、低動力の装置で濃縮することが可能であり、分離したし渣を脱水助剤として他の工程で用いるか、保管し、所望のときに所望の汚泥処理に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の方法の一態様を実施するための濃縮装置の一例を含む、説明図である。
図2】従来の処理装置の構成を表す説明図である。
図3】汚泥分離部の後段に嫌気性消化槽を備え、消化汚泥を濃縮汚泥と混合して嫌気性消化槽に返送する実施態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、汚泥とは、下水、屎尿、厨芥などの有機性物質を処理する工程で排出される汚泥を意味する。このような汚泥としては、初沈汚泥、余剰汚泥等が挙げられる。
【0019】
本発明において、し渣とは、上記汚泥から分離されるものであり、下水試験方法に準拠した呼び寸法74μmふるいで分離される粗浮遊物を含むものであり、好ましくは、粒径0.5mm以上又は粒径2.0mm以上、あるいは孔径0.5mm以上又は孔径2.0mm以上の多孔板、または60〜100メッシュの金網を有するスクリーンで分離される粗浮遊物を意味する。
【0020】
ここで、粒径は、篩により分級される値であり、孔径は穴の直径を意味する。
【0021】
初めに、汚泥をし渣と除渣汚泥に分離するし渣分離工程について説明する。
【0022】
し渣分離工程において、汚泥に含まれるし渣を分離、回収する工程、及びその工程で用いられる装置について説明する。
【0023】
し渣が分離される汚泥は、スラリーであり、通常、SSが5g/L(リットル)以上のものである。
【0024】
し渣の分離は、基本的にし渣の粒径に応じて、あるいは所望に応じて分離したい粒径未満を有する孔径の篩手段を用いて、汚泥をろ過することにより行うことができる。例えば、一般的にし渣の含有量の多い初沈汚泥の比率が高い場合は上記のうち目の粗いスクリーンを使用し、し渣含有量の少ない余剰汚泥の比率が高い場合は目の細かいスクリーンを用いるが、この限りではない。
【0025】
該篩手段としては、上記多孔板、または金網を用いたスクリーン等が挙げられる。
【0026】
し渣と除渣汚泥に分離するし渣分離部の形態については、特に限定されるものではないが、例えば、分離したし渣の掻き寄せ装置、上記篩手段の目詰まりを防ぐための振動機構等を具備したものが好ましい。
【0027】
次に上記薬液混合・凝集工程について説明する。
【0028】
本願において、薬液とは、少なくとも凝集剤を含む薬剤を意味し、凝集剤以外の他の薬剤、例えば、pH調整剤、等を含んでいてもよい。また、薬液は液体に限定されない。薬液は、凝集剤のみの使用、凝集剤と他の薬剤との混合使用、あるいは時間差を設けた併用等で用いることができる。
【0029】
この薬液混合・凝集工程では、除渣汚泥は少なくとも凝集剤が注入、混和されることにより凝集汚泥が調製される。この除渣汚泥に凝集剤を混合する薬液混合・凝集部は、通常、凝集剤注入手段を備えた凝集混和槽であるが、凝集汚泥が調製可能であれば、凝集剤注入手段を備えた単なる管又は管状体であってもよい。また、薬液混合・凝集部は、凝集剤を定量溶解したものを収容する凝集剤貯留タンクを備えたものでもよく、該タンクから凝集剤溶液を除渣汚泥に凝集混和槽へ注入することにより行うことができる。この方法は、凝集剤を無駄なく効率的に注入することができ、好ましい。
【0030】
薬液混合・凝集工程における、凝集剤の添加量は汚泥中のSS(Suspended Solid)質量に対して0.2〜1.0%が好ましく、0.3〜0.6%が更に好ましい。
【0031】
凝集剤としては特に限定されないが、無機系凝集剤(例えば、ポリ硫酸第二鉄またはPAC、硫酸バンド等)及び有機高分子凝集剤(以下、高分子凝集剤ともいう)などが挙げられ、各々、単独または組み合わせて用いることができるが、少なくとも高分子凝集剤を含むことが好ましい。高分子凝集剤としては、カチオン系、アニオン系、両性系、等が挙げられ、例えば、アミジン系凝集剤、アクリルアミド系凝集剤、アクリル酸系凝集剤等が挙げられる。
【0032】
次に、薬液混合・凝集工程で調製された凝集汚泥を濃縮汚泥と分離液とに固液分離する濃縮分離工程について説明する。
【0033】
本発明では、上述のように、この濃縮分離工程にて、凝集汚泥を固液分離することにより高濃度の濃縮汚泥を調製することができる。
【0034】
ここで、凝集汚泥を濃縮汚泥と分離液とに固液分離する濃縮分離部としては、特に限定されず、重力濃縮法が適用される単なる槽、遠心濃縮法が適用される遠心分離機、浮上濃縮法が適用される分離機、スクリーンを用いた分離機等が挙げられる。中でも、スリット型濃縮機は好ましく、例えば、前記特許文献3に記載の、処理物をスリット板で受け止め、多数のスリットを形成したスリット板上に周面を突出せしめた多数の円板が処理物排出方向に回転軸により偏心回転することによって、処理物はスリット板上を排出側に送られ、この過程でスリット内の円板との隙間から液体成分が落下して濾過され、処理物中の固体成分は分離捕集され、さらにこの手段に加えてスリット板の上面に近接して処理物の排出方向に回転し、スリット板上の捕集物を圧搾して脱液するベルトコンベアを上記スリット板上に設けた機械構造が挙げられる。スリット型濃縮機を適用すると安定して確実に高濃縮、例えば、4〜12質量%の高濃度化が安価なランニングコストで可能である。
【0035】
上記濃縮分離工程で分離された濃縮汚泥は、所望の処理工程へ供給され、任意の処理を施すことができる。
【0036】
濃縮汚泥を回収し、処理装置へ定量供給できる濃縮汚泥供給部としては、定量化手段と移送手段が一体化したポンプを備えることが好適であり、例えば、フィーダー一体型の一軸ねじ式ポンプ等が挙げられる。しかし、本発明による汚泥濃縮装置のうち少なくとも汚泥濃縮部を嫌気性消化槽の上部に設置することで濃縮部から排出される濃縮汚泥を直接又はスクリューコンベヤを介して消化槽に落下させて投入することも可能である。この場合、投入ポンプ等が不要となるため、その分の低動力化が可能となる。
【0037】
また、後段の処理工程が消化工程である場合は、図3に示すように、消化汚泥の引き抜き配管を分岐し、嫌気性消化槽に返送する配管を設け、その途中で濃縮汚泥と消化汚泥を混合させて投入することにより、嫌気性消化槽への投入汚泥の濃度及び粘性を下げることができ、投入にかかるポンプ動力を低減することも可能である。
【0038】
また、この濃縮分離工程で凝集汚泥を固液分離することにより得られる分離液の一部又は全部は、任意の処理工程に混合することができる。この場合、分離液は、上記し渣と混合されてもされなくともよい。
【0039】
次に、本発明の汚泥濃縮技術を、嫌気性消化処理の前処理として適用した一例を以下に挙げる。
【0040】
本態様では、し渣分離工程で得られるし渣を嫌気性消化処理後の汚泥の脱水性を改善するために用いる。し渣を回収した除渣汚泥には薬液を添加、混合して調製後、高濃度(例えば、4〜12質量%)に濃縮にする。濃縮過程で分離した分離液は前段で分離したし渣とともに、その全量又は一部を嫌気性消化処理後の嫌気性消化汚泥に混合し、脱水処理工程に供給する。
【0041】
濃縮分離工程で分離された濃縮汚泥は嫌気性消化工程に導入される。従来は重力濃縮又は各種機械濃縮により汚泥を濃縮したが、嫌気性消化工程への供給汚泥の濃度は実情として3〜4%、高くても5%程度であった。また、汚泥中のし渣は濃縮工程で分離されないため、汚泥とともに嫌気性消化工程に導入され、嫌気性消化処理によってその大半は分解されていた。
【0042】
上述のように、し渣を回収された汚泥(除渣汚泥)は薬液混合・凝集工程へ、分離、回収されたし渣は、その全量又は一部が嫌気性消化処理後の嫌気性消化汚泥と混合される。この場合、嫌気性消化汚泥が、更に凝集剤による処理を施される場合は、し渣の該消化汚泥への添加は、し渣の粒径と凝集剤により生成する凝集汚泥を分離するための手段の孔径等の条件によって、凝集剤の添加前後、又は凝集剤の添加と同時から適宜、選択でき、併用も可能である。該し渣の添加が、凝集剤の添加後の場合は、少なくとも該生成した凝集汚泥が脱水工程で処理される間又はその前にし渣を該凝集汚泥に添加することが好ましい。
【0043】
該回収されたし渣は、所望により、乾燥処理を施す等を行い、保管してもよい。
【0044】
上記濃縮分離工程で分離された濃縮汚泥は、上述のように嫌気性消化工程へ供給される。汚泥濃縮部を嫌気性消化槽の上部に設置できる場合は、排出される濃縮汚泥を重力により消化槽に直接投入するが、そうでない場合は、濃縮汚泥を回収し、嫌気性消化工程へ定量供給できる濃縮汚泥供給工程を含むことが好ましく、より効率的な運転管理の嫌気性消化処理を行うことができる。
【0045】
濃縮汚泥を回収し、例えば、嫌気性消化処理部へ定量供給できる濃縮汚泥供給部としては、定量化手段と移送手段が一体化した上述のポンプ等が挙げられる。
【0046】
また、この濃縮分離工程で凝集汚泥を固液分離することにより得られる分離液の一部又は全部は、嫌気性消化工程で得られる嫌気性消化汚泥に混合することができる。この場合、分離液は、上記し渣と混合されてもされなくともよい。
【0047】
嫌気性消化工程で処理された濃縮汚泥の消化汚泥は、上述のように更に凝集剤により、所望によりし渣とともに処理することができるが、そのままであるとMアルカリ度が高く、凝集剤による処理が困難となるため希釈することが好ましく、その希釈に分離液を用いることができる。この場合、添加されるし渣は、上記分離液と混合されてもされなくともよい。
【0048】
また、該分離液は、リン、カルシウム、シロキサン等を含むので、それらを回収する工程に回し、回収することもできる。
【0049】
次に本発明の一例を、図を参照してさらに説明する。
【0050】
図1は本発明の実施形態を示すブロックフロー図である。本発明の汚泥濃縮装置は、少なくともし渣分離部1と、凝集混和槽2と薬液貯留タンク3を含む薬液混合・凝集部と、汚泥濃縮部4を備える。まず、汚泥はし渣分離部1に送られ、し渣と除渣汚泥に分離される。次に除渣汚泥は配管を介して凝集混和槽2に送られるが、その配管途中または凝集混和槽2で薬液貯留タンク3の薬液を添加され、凝集・調製される。凝集した汚泥は汚泥濃縮部4に導入され高濃度の濃縮汚泥と分離液に分離される。濃縮汚泥は濃縮汚泥移送ポンプ5に備えられた供給機を介してポンプに供給され、定量的に後段の嫌気性消化工程に移送される。また、し渣分離部で分離されたし渣と汚泥濃縮部で分離された分離液はし渣・分離液受槽6で混合され、嫌気性消化処理後の消化汚泥と混合され脱水工程に供給される。
【0051】
図3は、濃縮分離部4の後段に、嫌気性消化槽7を設けた実施形態を示すブロックフロー図である。濃縮分離部4にて分離された濃縮汚泥は、嫌気性消化槽7で嫌気性消化されて嫌気性消化汚泥となり、消化汚泥引き抜き配管10aを介して引き抜かれる。消化汚泥引き抜き配管10aには、消化汚泥返送用配管10bが分岐しており、少なくとも一部の嫌気性消化汚泥を嫌気性消化槽7に戻す。消化汚泥返送用配管10bには、濃縮汚泥と嫌気性消化汚泥とを混合する混合槽9が設けられており、混合した汚泥を嫌気性消化槽7に供給する。図示した実施形態においては、濃縮汚泥又は濃縮汚泥と嫌気性消化汚泥との混合物を嫌気性消化槽7に供給するための投入ポンプ8と、嫌気性消化槽7から嫌気性消化汚泥を引き抜くための汚泥引き抜きポンプ10とを用いているが、自重により汚泥を供給又は引き抜くことができればポンプは不要である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例を説明する。A下水処理場から発生した下水汚泥について、本発明の汚泥濃縮試験を図1の態様に準じて行った。試験に用いた下水汚泥は、初沈汚泥と余剰汚泥を約1:1で混合した汚泥を重力濃縮したものである。
【0053】
なお、本発明はこの実施例により何等制限されるものではない。
【0054】
表1に試験に用いた汚泥濃縮装置の仕様を示す。試験では除渣汚泥にカチオン性高分子凝集剤(平均分子量300万)を0.5%(対SS比)添加混合した。
【0055】
表2に濃縮処理前後の汚泥及び濃縮分離工程で得られた分離液の性状を示す。原汚泥は、投入汚泥である。
【0056】
なお、分析方法は下記の方法で行った。
・TS(Total solids、全蒸発残留物);105℃蒸発残留物重量(JIS K 0102)
・VTS(Volatile total solids、強熱減量);600℃強熱減量(JIS K 0102)
・SS(Suspended solids、懸濁粒子);遠心分離法による回転数3,000rpm,10分間での沈殿物重量(JIS K 0102)
・VSS(Volatile suspended solids、揮発性懸濁粒子);懸濁粒子の600℃強熱減量(JIS K 0102)
・Mアルカリ度;遠心分離機による回転数3,000rpm,3分間での上澄液を0.1mol/Lの塩酸溶液でpH4.8まで滴定(下水試験方法)
・粗浮遊物;呼び寸法74μmふるいでの粗浮遊物分析(下水試験方法)
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
以上の結果より、本発明により効率的に汚泥を高濃度に濃縮できることがあきらかである。
【0060】
次に、上記濃縮汚泥を嫌気性消化処理した汚泥について脱水試験を行い、前処理で分離したし渣の添加の有無による脱水性の変化について検討した。
【0061】
嫌気性消化処理条件は表3に示す通りである。嫌気性消化処理前後の汚泥の性状を表4に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
この嫌気性消化汚泥に嫌気性消化の前処理で分離したし渣の全量と濃縮分離液の全量を混合した液を1:1の割合で混合した汚泥を脱水試験に供した。比較例として嫌気性消化汚泥と濃縮分離液を1:1で混合した汚泥についても脱水試験を行った。汚泥脱水にはカチオン性高分子凝集剤(平均分子量300万)を用いた。また、脱水機はベルトプレス式脱水機を用い、脱水処理条件は、ろ布緊張力4.9kN/m、ろ布スピード1.0m/分で行った。その結果、高分子凝集剤注入率と脱水汚泥の含水率は表5の通りであった。
【0065】
【表5】
【0066】
以上の結果から、本発明によれば、少ない薬注率で含水率の低い脱水汚泥が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0067】
1…し渣分離部、2…凝集混和槽、3…薬液貯留タンク、4…汚泥濃縮部、5…濃縮汚泥移送ポンプ、6…し渣・分離液受槽、7・・・嫌気性消化槽、8・・・投入ポンプ、9・・・混合槽、10・・・汚泥引き抜きポンプ、10a・・・消化汚泥引き抜き配管、10b・・・消化汚泥返送用配管、11…汚泥、12…貯留装置、13…固液分離装置、14…濃縮汚泥、16…嫌気性消化装置、17…消化汚泥凝集物調製装置、18…分離液、19…消化汚泥凝集物、20…脱水装置、21…分離液、23…廃水処理設備
図1
図2
図3