特許第6395896号(P6395896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395896型内発泡成形用発泡粒子、型内発泡成形体及び繊維強化複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395896
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】型内発泡成形用発泡粒子、型内発泡成形体及び繊維強化複合体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20180913BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20180913BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180913BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180913BHJP
   B29C 44/00 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
   C08J9/16CET
   B32B5/28 101
   B32B27/18 Z
   B32B27/30 A
   B32B27/30 B
   !B29C44/00 G
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-89443(P2017-89443)
(22)【出願日】2017年4月28日
(62)【分割の表示】特願2014-72083(P2014-72083)の分割
【原出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-141476(P2017-141476A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】桑原 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】古井 孝宜
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−115406(JP,A)
【文献】 特開昭55−112214(JP,A)
【文献】 特開平08−311230(JP,A)
【文献】 特開2009−294262(JP,A)
【文献】 特開2000−229617(JP,A)
【文献】 特開平03−081308(JP,A)
【文献】 特許第6161563(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/16
B32B 5/28
B32B 27/18
B32B 27/30
B29C 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100重量%としたとき、無水マレイン酸単量体単位の含有量が10〜50重量%であるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体100重量部と、ポリメタクリル酸メチル10〜500重量部とを含み、連続気泡率が40%以下であることを特徴とする型内発泡成形用発泡粒子。
【請求項2】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100重量%としたとき、スチレン単量体単位の含有量が30〜70重量%であることを特徴とする請求項1に記載の型内発泡成形用発泡粒子。
【請求項3】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体100重量部に対して加工助剤0.5〜5重量部を更に含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の型内発泡成形用発泡粒子。
【請求項4】
請求項1〜の何れか1項に記載の型内発泡成形用発泡粒子を用いて型内発泡成形によって製造されたものであることを特徴とする型内発泡成形体。
【請求項5】
110℃における加熱寸法変化率が−1〜1%であることを特徴とする請求項4に記載の型内発泡成形体。
【請求項6】
単位密度当たりの圧縮弾性率が0.1MPa/(kg/m3)以上であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の型内発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内発泡成形用発泡粒子、型内発泡成形体及び繊維強化複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機、自動車及び船舶などの乗り物は、地球環境への負荷低減のために燃費向上が必要とされており、これらの乗り物を構成する金属材料を樹脂材料へ転換し、大きな軽量化を図る流れが強くなってきている。これらの樹脂材料としては、繊維強化プラスチックなどが挙げられるが、一部に軽量コア材を使用することで更なる軽量化や高剛性化を図ることも検討されている。軽量コア材として用いられる材料として高い圧縮強度を有するポリスチレン発泡体などが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリスチレン系樹脂粒子中に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体(但し、内部気泡は除く)に炭素数7以上の有機化合物が均一に含有されてなり、前記有機化合物の溶解度パラメータ(A)が前記発泡剤の溶解度パラメータ(B)に対して特定の関係を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が開示され、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて型内発泡成形により得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−214751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られたポリスチレン樹脂発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度が低いために耐熱性が十分でない。そのため、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の表面に繊維強化プラスチックなどの表皮材を積層一体化しようとすると、ポリスチレン系樹脂発泡成形体に表皮材を積層する際に加えられる熱及び圧力によって、ポリスチレン系樹脂発泡成形体が大きく変形してしまうという問題点を有する。
【0006】
本発明は、優れた機械的強度、耐熱性及び軽量性を有する型内発泡成形体を製造することができる型内発泡成形用発泡粒子、これを用いて得られた型内発泡成形体及び繊維強化複合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の型内発泡成形用発泡粒子は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を含むことを特徴とする。型内発泡成形用発泡粒子は発泡ガスを含有しており、加熱されることによって再発泡する。
【0008】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100重量%としたとき、無水マレイン酸単量体単位の含有量は、10〜50重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましく、20〜35重量%が特に好ましい。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、無水マレイン酸単量体単位の含有量が少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られる型内発泡成形体の耐熱性が低下することがある。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、無水マレイン酸単量体単位の含有量が多すぎると、型内発泡成形時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。
【0009】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100重量%としたとき、スチレン単量体単位の含有量は、30〜70重量%が好ましく、40〜65重量%がより好ましく、45〜60重量%が特に好ましい。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位の含有量が少なすぎると、型内発泡成形時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位の含有量が多すぎると、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られる型内発泡成形体の耐熱性が低下することがある。
【0010】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100重量%としたとき、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、10〜30重量%が好ましく、13〜28重量%がより好ましく、15〜25重量%が特に好ましい。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られる型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が多すぎると、型内発泡成形時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。
【0011】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を構成している(メタ)アクリル酸エステル単量体単位としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどが挙げられ、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られる型内発泡成形体の機械的強度が向上するので、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸の何れか一方又は双方を意味する。
【0012】
型内発泡成形用発泡粒子を構成しているスチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体のガラス転移温度Tgは、低すぎると、型内発泡成形用発泡粒子を用いて製造された型内発泡成形体の表面への表皮材の積層一体化が不十分となって、得られる強化複合体の機械的強度が低下することがあり、高すぎると、型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがあるので、115〜135℃が好ましく、120〜130℃がより好ましい。
【0013】
なお、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体のガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行った。示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/minのもと20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温し、10分間保持後速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷させた後、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温した時に得られたDSC曲線より開始点ガラス転移温度を算出した。この時に基準物質としてアルミナを用いた。この補外ガラス転移開始温度は該規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求めた。
【0014】
型内発泡成形用発泡粒子には、ポリメタクリル酸メチルが含有されていることが好ましい。型内発泡成形用発泡粒子中にポリメタクリル酸メチルが含有されていることによって、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られた型内発泡成形体の機械的強度が向上すると共に、型内発泡成形用発泡粒子の熱融着性が向上し、発泡粒子同士をより強固に熱融着一体化させて、更に優れた機械的強度を有する型内発泡成形体を得ることができる。型内発泡成形用発泡粒子中におけるポリメタクリル酸メチルの含有量は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体100重量部に対して10〜500重量部が好ましく、20〜450重量部がより好ましく、30〜400重量部が特に好ましい。
【0015】
型内発泡成形用発泡粒子には加工助剤が含有されていることが好ましい。型内発泡成形用発泡粒子が加工助剤を含有していることによって、型内発泡成形用発泡粒子を構成している樹脂の型内発泡時における溶融張力(粘弾性)を発泡に適したものとして型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡化を抑制し、型内発泡成形用発泡粒子の発泡性を向上させて、発泡粒子同士の熱融着をより強固なものとし、更に優れた機械的強度を有する型内発泡成形体を製造することができる。型内発泡成形用発泡粒子中における加工助剤の含有量は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0016】
加工助剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系単量体の単独重合体又はこれらの二種以上からなる共重合体、アクリル系単量体を50重量%以上含有し且つアクリル系単量体とこれと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体などのアクリル系樹脂が挙げられる。
【0017】
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。
【0018】
アクリル系単量体と共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、α−メチルスチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0019】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、150万〜600万が好ましく、200万〜450万がより好ましく、250万〜400万が特に好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が低すぎても高すぎても、型内発泡成形用発泡粒子を構成している樹脂の型内発泡成形時における溶融張力(粘弾性)を発泡に適したものに十分に調整することができず、型内発泡成形用発泡粒子の発泡性を向上させることができないことがある。
【0020】
なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量は下記の要領で測定された値をいう。アクリル系樹脂50mgを10mL一級THF(移動相)で一晩放置して溶解し、0.45μm又は0.20μmのフィルターで濾過する。次に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてアクリル系樹脂の重量平均分子量を測定する。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン(PS)換算の重量平均分子量を意味する。
測定装置:東ソー社製 GPC HLC−8020
ガードカラム:TOSOH TSKguardcolumn HHR(S)×1(7.5 mmID×7.5cm)
カラム:TOSOH TSK−GEL GMHHR−H(S)×3(7.8mmID×3 0cm)
測定条件:カラム温度(40℃)、移動相(一級THF/45℃)、
S.PUMP/R.PUMP流量(0.8/0.5mL/min)、RI温度(35℃)INLET温度(35℃)、測定時間(55min)、検出器(UV254nm、RI)検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と、東ソー社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、495
【0021】
型内発泡成形用発泡粒子中における発泡ガスの含有量は、少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子の型内発泡成形時の再発泡性が低下することがあり、多すぎると、型内発泡成形用発泡粒子が型内発泡成形時に破泡して連続気泡率が上昇し、型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下することがあるので、0.5〜5重量%が好ましい。
【0022】
型内発泡成形用発泡粒子中における発泡ガスの含有量は、型内発泡成形用発泡粒子を190℃の熱分解炉に20分間に亘って入れ、この熱分解炉で発生した炭化水素量をクロマトグラフにて測定することができる。
【0023】
なお、型内発泡成形用発泡粒子には、その物性を損なわない範囲内において、結合防止剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0024】
次に、型内発泡成形用発泡粒子の製造方法について説明する。型内発泡成形用発泡粒子の製造方法としては、(1)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を含む樹脂組成物を押出機内に供給して発泡剤(物理発泡剤又は化学発泡剤)の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から共重合体押出物を押出発泡させながら切断した後に冷却して型内発泡成形用発泡粒子を製造する方法、(2)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を含む樹脂組成物を押出機内に供給して発泡剤(物理発泡剤又は化学発泡剤)の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出発泡し冷却してストランド状の共重合体押出物を製造し、この共重合体押出物を所定間隔毎に切断して型内発泡成形用発泡粒子を製造する方法、(3)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を含む樹脂組成物を押出機内に供給して発泡剤(物理発泡剤又は化学発泡剤)の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けた環状ダイ又はTダイから押出発泡して発泡シートを製造し、この発泡シートを切断することによって型内発泡成形用発泡粒子を製造する方法などが挙げられる。
【0025】
物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、物理発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0026】
又、化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0027】
押出機に供給される発泡剤量は、少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子を所望発泡倍率まで発泡させることができないことがある。押出機に供給される発泡剤量は、多すぎると、発泡剤が可塑剤として作用することから溶融状態の樹脂の粘弾性が低下し過ぎて発泡性が低下し良好な型内発泡成形用発泡粒子を得ることができない場合がある。従って、押出機に供給される発泡剤量は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましく、0.3〜3重量部が特に好ましい。
【0028】
なお、押出機には気泡調整剤が供給されることが好ましい。このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末、タルクなどが好ましい。
【0029】
押出機に供給される気泡調整剤の量は、少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子の気泡が粗大となり、得られる型内発泡成形体の外観が低下することがある。押出機に供給される気泡調整剤の量は、多すぎると、樹脂組成物を押出発泡させる際に破泡を生じて型内発泡成形用発泡粒子の独立気泡率が低下することがある。従って、押出機に供給される気泡調整剤の量は、樹脂組成物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ましく、0.1〜2重量部が特に好ましい。
【0030】
型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、小さすぎると、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率が上昇して、型内発泡成形の発泡時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下する虞れがある。型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、大きすぎると、型内発泡成形用発泡粒子の気泡が不均一となって、型内発泡成形時における型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が不充分となることがある。従って、型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、50〜700kg/m3が好ましく、70〜600kg/m3がより好ましく、80〜500kg/m3が特に好ましい。なお、型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、ノズル金型のノズルの出口部における樹脂圧力、又は、発泡剤量などによって調整することができる。ノズル金型のノズルの出口部における樹脂圧力の調整は、ノズルの直径、押出量及びスチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体の溶融粘度によって調整することができる。
【0031】
なお、型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定された値をいう。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度を測定することができる。
【0032】
型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度(g/cm3
=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)−メスシリンダーの質量(g)〕
/〔メスシリンダーの容量(cm3)〕
【0033】
又、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率は、高すぎると、型内発泡成形時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡圧が不足し、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。従って、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。なお、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率の調整は、押出機からの型内発泡成形用発泡粒子の押出発泡温度、又は、押出機への発泡剤の供給量などを調整することによって行われる。
【0034】
ここで、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率は下記の要領で測定される。先ず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量の型内発泡成形用発泡粒子の全重量A(g)を測定する。次に、上記型内発泡成形用発泡粒子全体の体積B(cm3)を比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。なお、体積測定空気比較式比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されている。
【0035】
続いて、金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の重量C(g)を測定する。次に、この金網製の容器内に上記型内発泡成形用発泡粒子を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れた型内発泡成形用発泡粒子の全量とを併せた重量D(g)を測定する。
【0036】
そして、下記式に基づいて型内発泡成形用発泡粒子の見掛け体積E(cm3)を算出し、この見掛け体積Eと上記型内発泡成形用発泡粒子全体の体積B(cm3)に基づいて下記式により型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率を算出することができる。なお、水1gの体積を1cm3 とした。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
【0037】
型内発泡成形用発泡粒子を用いて型内発泡成形体を製造するには、型内発泡成形用発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、キャビティ内に加熱媒体を供給して、型内発泡成形用発泡粒子を加熱して再発泡させ、再発泡させた型内発泡成形用発泡粒子同士をこれらの発泡圧力によって互いに熱融着一体化させることによって型内発泡成形体を成形することができる。なお、加熱媒体としては、例えば、水蒸気、熱風、温水などが挙げられ、水蒸気が好ましい。
【0038】
型内発泡成形体の110℃における加熱寸法変化率は−1〜1%が好ましい。型内発泡成形体は、その加熱寸法変化率が−1〜1%であることによって高温環境下における用途にも好適に用いることができる。
【0039】
型内発泡成形体の110℃における加熱寸法変化率はJIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定された値をいう。具体的には、型内発泡成形体から平面形状が一辺150mmの正方形で且つ厚みが型内発泡成形体の厚みである試験片を切り出す。
【0040】
上記試験片の中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の100mmの直線を50mm間隔に記入する。縦及び横方向についてそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L0を初めの寸法とした。しかる後、試験片を110℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間に亘って放置して加熱試験を行った後に取出し、試験片を25℃にて1時間に亘って放置した。次に、試験片の表面に記入した縦及び横方向のそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L1を加熱後の寸法とした。下記の式に基づいて加熱寸法変化率を算出した。
加熱寸法変化率(%)=100×(L1−L0)/L0
【0041】
型内発泡成形体における単位密度当たりの圧縮弾性率は、小さすぎると、型内発泡成形体の表面に繊維強化プラスチックなどの表皮材を積層一体化する際に加えられる圧力によって型内発泡成形体が変形する虞れがあるので、0.1MPa/(kg/m3)以上が好ましい。
【0042】
なお、型内発泡成形体における単位密度当たりの圧縮弾性率は、JIS K7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」記載の方法により測定された値をいう。
【0043】
上述のように、型内発泡成形用発泡粒子を用いて型内発泡成形によって得られた型内発泡成形体は、軽量性、耐熱性及び機械的強度に優れており、特に、高温環境下での耐荷重性に優れていることから、例えば、自動車、航空機、鉄道車輛及び船舶などの輸送機器の部品に好適に用いることができる。自動車部品としては、例えば、エンジン付近に用いられる部品、外装材などに好適に用いることができる。
【0044】
型内発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて強化複合体として用いられてもよい。型内発泡成形体が発泡シートである場合、型内発泡成形体の両面に積層一体化されている必要はなく、型内発泡成形体の両面のうち少なくとも一方の面に表皮材が積層一体化されていればよい。表皮材の積層は、強化複合体の用途に応じて決定すればよい。なかでも、強化複合体の表面硬度や機械的強度を考慮すると、型内発泡成形体の厚み方向における両面のそれぞれに表皮材が積層一体化されていることが好ましい。
【0045】
表皮材としては、特に限定されず、例えば、繊維強化プラスチック、金属シート、合成樹脂フィルムなどが挙げられ、繊維強化プラスチックが好ましい。表皮材として繊維強化プラスチックを用いた繊維強化複合体が好ましい。
【0046】
繊維強化プラスチックを構成している強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的物性を有している。
【0047】
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。また、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
【0048】
強化繊維基材は、一枚の強化繊維基材のみを積層せずに用いてもよく、複数枚の強化繊維基材を積層して積層強化繊維基材として用いてもよい。複数枚の強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材としては、(1)一種のみの強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(2)複数種の強化繊維基材を用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた強化繊維基材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層強化繊維基材などが用いられる。なお、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
【0049】
繊維強化プラスチックは強化繊維に合成樹脂が含浸されてなるものである。含浸させた合成樹脂によって強化繊維同士を結着一体化させている。
【0050】
強化繊維に合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)強化繊維を合成樹脂中に浸漬して強化繊維中に合成樹脂を含浸させる方法、(2)強化繊維に合成樹脂を塗布し、強化繊維に合成樹脂を含浸させる方法などが挙げられる。
【0051】
強化繊維に含浸させる合成樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の何れも用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。強化繊維に含浸させる熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0052】
又、強化繊維に含浸させる熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、型内発泡成形体との接着性又は繊維強化プラスチックを構成している強化繊維同士の接着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0053】
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0054】
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0055】
繊維強化プラスチック中における合成樹脂の含有量は、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。合成樹脂の含有量が少なすぎると、強化繊維同士の結着性や繊維強化プラスチックと型内発泡成形体との接着性が不十分となり、繊維強化プラスチックの機械的物性や繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。合成樹脂の含有量が多すぎると、繊維強化プラスチックの機械的物性が低下して、繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。
【0056】
繊維強化プラスチックの厚みは、0.02〜2mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。厚みが上記範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
【0057】
繊維強化プラスチックの目付は、50〜4000g/m2が好ましく、100〜1000g/m2がより好ましい。目付が上記範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
【0058】
次に、強化複合体の製造方法を説明する。型内発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて強化複合体を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)型内発泡成形体の表面に接着剤を介して表皮材を積層一体化する方法、(2)型内発泡成形体の表面に、強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸されてなる繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱可塑性樹脂をバインダーとして型内発泡成形体の表面に繊維強化プラスチック形成材を繊維強化プラスチックとして積層一体化する方法、(3)型内発泡成形体の表面に、強化繊維に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸された繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱硬化性樹脂をバインダーとして、熱硬化性樹脂を硬化させて形成された繊維強化プラスチックを型内発泡成形体の表面に積層一体化する方法、(4)型内発泡成形体の表面に、加熱されて軟化状態の表皮材を配設し、型内発泡成形体の表面に表皮材を押圧させることによって表皮材を必要に応じて型内発泡成形体の表面に沿って変形させながら型内発泡成形体の表面に積層一体化させる方法、(5)繊維強化プラスチックの成形で一般的に適用される方法などが挙げられ、型内発泡成形体は高温環境下における耐荷重性などの機械的強度に優れていることから、上記(4)の方法も好適に用いることができる。
【0059】
繊維強化プラスチックの成形で用いられる方法としては、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、PCM(Prepreg Compression Molding)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法などが挙げられる。
【0060】
このようにして得られた繊維強化複合体は、耐熱性、機械的強度及び軽量性に優れているため、自動車、航空機、鉄道車輛又は船舶などの輸送機器分野、家電分野、情報端末分野、家具の分野などの広範な用途に用いることができる。
【0061】
例えば、繊維強化複合体は、輸送機器の部品、及び、輸送機器の本体を構成する構造部材を含めた輸送機器構成用部材(特に自動車用部材)、ヘルメット用緩衝材、農産箱、保温保冷容器などの輸送容器、部品梱包材として好適に用いることができる。自動車用部材としては、例えば、フロアパネル、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバーなどの部材が挙げられる。
【発明の効果】
【0062】
本発明の型内発泡成形用発泡粒子は優れた機械的強度及び耐熱性を有しており、型内発泡成形用発泡粒子を用いて型内発泡成形によって成形された型内発泡成形体は、優れた機械的強度、耐熱性及び軽量性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本実施例に何ら限定されるものでない。
【0064】
(実施例1〜、比較例1〜10
スチレンとメタクリル酸メチルと無水マレイン酸とからなる、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(実施例1〜4及び比較例3〜10)、ポリスチレン(比較例1)又はスチレン−無水マレイン酸共重合体(比較例2)を用意した。
【0065】
得られたスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体におけるスチレン単量体単位、メタクリル酸メチル単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の含有量を表1に示した。得られたスチレン−無水マレイン酸共重合体におけるスチレン単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の含有量を表1に示した。スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン及びスチレン−無水マレイン酸共重合体のガラス転移温度を表1に示した。ポリスチレン及びスチレン−無水マレイン酸共重合体のガラス転移温度は、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体のガラス転移温度の測定方法に準拠して測定した。なお、表1において、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体は単に「共重合体」と表記し、ポリスチレン及びスチレン−無水マレイン酸共重合体は便宜上「共重合体」の欄に記載した。
【0066】
スクリュー径50mmの第一押出機とスクリュー径65mmの第二押出機とが連結されたタンデム型押出機を用意した。表1に示した所定量のスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリメタクリル酸メチル(旭化成ケミカルズ社製 商品名「デルペット 80NE」)、加工助剤として高分子量アクリル系樹脂(三菱レイヨン社製 商品名「メタブレン P−530A」、重量平均分子量:300万)及びタルクを含む樹脂組成物をタンデム型押出機の第一押出機に供給して280℃にて溶融混練した。なお、樹脂組成物のガラス転移温度を、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体のガラス転移温度の測定方法に準拠して測定し、表1に示した。
【0067】
次に、第一単軸押出機の途中から、イソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%を含むブタンを樹脂分100重量部に対して2.0重量部となるように溶融状態の樹脂組成物に圧入して、樹脂組成物中に均一に分散させた。
【0068】
しかる後、第二押出機の前端部において、溶融状態の樹脂組成物を175℃に冷却した後、押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型のノズルから樹脂組成物を押出発泡させた。なお、マルチノズル金型は、出口部の直径が1mmのノズルを有していた。
【0069】
そして、マルチノズル金型のノズルの出口部から押出発泡された樹脂押出物を回転刃によって切断した後に直ちに冷却して略球状の再発泡性を有する型内発泡成形用発泡粒子を製造した。樹脂押出物は、マルチノズル金型のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなっていた。樹脂押出物は、ノズルの出口部の開口端において切断されており、樹脂押出物の切断は未発泡部において行われていた。再発泡性を有する型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度及び連続気泡率を表1に示した。再発泡性を有する型内発泡成形用発泡粒子はブタンを2重量%含有していた。
【0070】
雌雄金型を備えた型内発泡成形機を用意した。雄金型と雌金型とを型締めした状態において、雌雄金型間には内法寸法が縦300mm×横400mm×高さ30mmの直方体形状のキャビティが形成されていた。なお、雌雄金型には、この雌雄金型のキャビティ内と雌雄金型外部とを連通させるために、直径が8mmの円形状の供給口が20mm間隔毎に形成されていた。なお、各供給口には、開口幅が1mmの格子部を設けてあり、キャビティ内に充填した型内発泡成形用発泡粒子がこの供給口を通じて雌雄金型のキャビティ外に流出しないように構成されている一方、雌雄金型の供給口を通じて雌雄金型外からキャビティ内に水蒸気を円滑に供給することができるように構成されていた。
【0071】
型内発泡成形機の雌雄金型のキャビティ内に型内発泡成形用発泡粒子を充填して雌雄金型を型締めした。しかる後、キャビティ内に144℃の水蒸気を供給して型内発泡成形用発泡粒子を加熱、再発泡させて、再発泡させた発泡粒子同士をこれらの発泡圧力によって互いに熱融着一体化させた後に冷却して型内発泡成形体を得た。
【0072】
得られた型内発泡成形体について、密度、110℃における加熱寸法変化率、5%圧縮応力、25%圧縮応力、圧縮弾性率及び単位密度当たりの圧縮弾性率、並びに、複合化性を上記又は下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0073】
〔型内発泡成形体の5%圧縮応力、25%圧縮応力、圧縮弾性率及び単位密度当たりの圧縮弾性率〕
型内発泡成形体の5%圧縮応力、25%圧縮応力、圧縮弾性率及び単位密度当たりの圧縮弾性率は、JIS K7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」記載の方法により測定した。即ち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)、万能試験機データ処理UTPS−237(ソフトブレーン社製)を用いて、試験体サイズ断面50mm×50mm、厚み25mmで圧縮速度を2.5mm/minとして圧縮強さ(5%変形圧縮応力、25%変形圧縮応力、圧縮弾性率)を測定した。試験片の数は5個以上とし、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定を行った。各試験片の圧縮強さ(5%変形圧縮応力、25%変形圧縮応力、圧縮弾性率)の相加平均値をそれぞれ、型内発泡成形体の5%圧縮応力、25%圧縮応力、圧縮弾性率とした。
【0074】
(5%(25%)変形圧縮応力)
5%(25%)変形圧縮応力は次式により算出する。なお、()内は25%変形圧縮応力を算出するときの条件である。
σ5(25)= F5(25)/A0
σ5(25): 5%(25%)変形圧縮応力 (MPa)
F5(25): 5%(25%)変形時の力(N)
0:試験片の初めの断面積(mm2
【0075】
(圧縮弾性率)
圧縮弾性率は、荷重−変形曲線の始めの直線部分を用いて次式により計算する。
E= Δσ/Δε
E:圧縮弾性率(MPa)
Δσ:直線上の2点間の応力の差(MPa)
Δε:同じ2点間の変形の差(%)
又、単位密度当たりの圧縮弾性率は、圧縮弾性率を型内発泡成形体の密度で除して算出する。
【0076】
〔複合化性〕
炭素繊維からなる綾織の織物からなる強化繊維基材に、未硬化のエポキシ樹脂(ガラス転移温度128℃)が40重量%含浸されている繊維強化プラスチック形成材(厚み0.3mm、目付:200g/m2、三菱レイヨン社製 商品名「パイロフィルプリプレグ TR3523 381KMP」)を2枚用意した。繊維強化プラスチック形成材は、縦500mm×横400mmの平面長方形状であった。そして、2枚の繊維強化プラスチック形成材を、強化繊維基材の経糸の長さ方向同士の交差角度が90°となるように重ね合わせて、2枚の繊維強化プラスチック形成材が重なり合っている部分を縦300mm×横400mmの平面長方形状に切り出して積層繊維強化プラスチック形成材を作製した。同様の要領でもう一枚の積層繊維強化プラスチック形成材を作製した。
【0077】
型内発泡成形体の厚み方向の両面のそれぞれに積層繊維強化プラスチック形成材を積層して積層シートを作製し、この積層シートをその表面温度が130℃となるように加熱しながら、積層シートにその厚み方向に0.3MPaの押圧力を加えて、積層繊維強化プラスチック形成材中のエポキシ樹脂をバインダーとして硬化させ、積層繊維強化プラスチック形成材中のエポキシ樹脂を硬化させて形成された繊維強化プラスチック(厚み:1.0mm)を型内発泡成形体の両面に積層一体化させて繊維強化複合体を得た。
【0078】
得られた繊維強化複合体の両面を目視観察した。型内発泡成形体が熱によって収縮することにより、繊維強化プラスチックの表面に凹部が生じていないか否かを下記基準に基づいて評価した。
◎・・繊維強化プラスチックの表面に1.0mm以上の大きさの凹部はなかった。
○・・繊維強化プラスチックの表面に1.0mm以上で且つ2.0mm未満の大きさの凹
部が確認されたが、2.0mm以上の大きさの凹部はなかった。
△・・繊維強化プラスチックの表面に2.0mm以上で且つ3.0mm未満の大きさの凹
部が確認されたが、3.0mm以上の大きさの凹部はなかった。
×・・繊維強化プラスチックの表面に3.0mm以上の大きさの凹部が確認された。
【0079】
【表1】