【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の型内発泡成形用発泡粒子は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を含むことを特徴とする。型内発泡成形用発泡粒子は発泡ガスを含有しており、加熱されることによって再発泡する。
【0008】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100重量%としたとき、無水マレイン酸単量体単位の含有量は、10〜50重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましく、20〜35重量%が特に好ましい。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、無水マレイン酸単量体単位の含有量が少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られる型内発泡成形体の耐熱性が低下することがある。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、無水マレイン酸単量体単位の含有量が多すぎると、型内発泡成形時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。
【0009】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100重量%としたとき、スチレン単量体単位の含有量は、30〜70重量%が好ましく、40〜65重量%がより好ましく、45〜60重量%が特に好ましい。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位の含有量が少なすぎると、型内発泡成形時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位の含有量が多すぎると、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られる型内発泡成形体の耐熱性が低下することがある。
【0010】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、スチレン単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100重量%としたとき、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、10〜30重量%が好ましく、13〜28重量%がより好ましく、15〜25重量%が特に好ましい。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られる型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が多すぎると、型内発泡成形時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。
【0011】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を構成している(メタ)アクリル酸エステル単量体単位としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどが挙げられ、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られる型内発泡成形体の機械的強度が向上するので、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸の何れか一方又は双方を意味する。
【0012】
型内発泡成形用発泡粒子を構成しているスチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体のガラス転移温度Tgは、低すぎると、型内発泡成形用発泡粒子を用いて製造された型内発泡成形体の表面への表皮材の積層一体化が不十分となって、得られる強化複合体の機械的強度が低下することがあり、高すぎると、型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがあるので、115〜135℃が好ましく、120〜130℃がより好ましい。
【0013】
なお、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体のガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行った。示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/minのもと20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温し、10分間保持後速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷させた後、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温した時に得られたDSC曲線より開始点ガラス転移温度を算出した。この時に基準物質としてアルミナを用いた。この補外ガラス転移開始温度は該規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求めた。
【0014】
型内発泡成形用発泡粒子には、ポリメタクリル酸メチルが含有されていることが好ましい。型内発泡成形用発泡粒子中にポリメタクリル酸メチルが含有されていることによって、型内発泡成形用発泡粒子及びこれを用いて得られた型内発泡成形体の機械的強度が向上すると共に、型内発泡成形用発泡粒子の熱融着性が向上し、発泡粒子同士をより強固に熱融着一体化させて、更に優れた機械的強度を有する型内発泡成形体を得ることができる。型内発泡成形用発泡粒子中におけるポリメタクリル酸メチルの含有量は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体100重量部に対して10〜500重量部が好ましく、20〜450重量部がより好ましく、30〜400重量部が特に好ましい。
【0015】
型内発泡成形用発泡粒子には加工助剤が含有されていることが好ましい。型内発泡成形用発泡粒子が加工助剤を含有していることによって、型内発泡成形用発泡粒子を構成している樹脂の型内発泡時における溶融張力(粘弾性)を発泡に適したものとして型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡化を抑制し、型内発泡成形用発泡粒子の発泡性を向上させて、発泡粒子同士の熱融着をより強固なものとし、更に優れた機械的強度を有する型内発泡成形体を製造することができる。型内発泡成形用発泡粒子中における加工助剤の含有量は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0016】
加工助剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系単量体の単独重合体又はこれらの二種以上からなる共重合体、アクリル系単量体を50重量%以上含有し且つアクリル系単量体とこれと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体などのアクリル系樹脂が挙げられる。
【0017】
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。
【0018】
アクリル系単量体と共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、α−メチルスチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0019】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、150万〜600万が好ましく、200万〜450万がより好ましく、250万〜400万が特に好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が低すぎても高すぎても、型内発泡成形用発泡粒子を構成している樹脂の型内発泡成形時における溶融張力(粘弾性)を発泡に適したものに十分に調整することができず、型内発泡成形用発泡粒子の発泡性を向上させることができないことがある。
【0020】
なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量は下記の要領で測定された値をいう。アクリル系樹脂50mgを10mL一級THF(移動相)で一晩放置して溶解し、0.45μm又は0.20μmのフィルターで濾過する。次に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてアクリル系樹脂の重量平均分子量を測定する。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン(PS)換算の重量平均分子量を意味する。
測定装置:東ソー社製 GPC HLC−8020
ガードカラム:TOSOH TSKguardcolumn HHR(S)×1(7.5 mmID×7.5cm)
カラム:TOSOH TSK−GEL GMHHR−H(S)×3(7.8mmID×3 0cm)
測定条件:カラム温度(40℃)、移動相(一級THF/45℃)、
S.PUMP/R.PUMP流量(0.8/0.5mL/min)、RI温度(35℃)INLET温度(35℃)、測定時間(55min)、検出器(UV254nm、RI)検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と、東ソー社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、495
【0021】
型内発泡成形用発泡粒子中における発泡ガスの含有量は、少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子の型内発泡成形時の再発泡性が低下することがあり、多すぎると、型内発泡成形用発泡粒子が型内発泡成形時に破泡して連続気泡率が上昇し、型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下することがあるので、0.5〜5重量%が好ましい。
【0022】
型内発泡成形用発泡粒子中における発泡ガスの含有量は、型内発泡成形用発泡粒子を190℃の熱分解炉に20分間に亘って入れ、この熱分解炉で発生した炭化水素量をクロマトグラフにて測定することができる。
【0023】
なお、型内発泡成形用発泡粒子には、その物性を損なわない範囲内において、結合防止剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0024】
次に、型内発泡成形用発泡粒子の製造方法について説明する。型内発泡成形用発泡粒子の製造方法としては、(1)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を含む樹脂組成物を押出機内に供給して発泡剤(物理発泡剤又は化学発泡剤)の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から共重合体押出物を押出発泡させながら切断した後に冷却して型内発泡成形用発泡粒子を製造する方法、(2)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を含む樹脂組成物を押出機内に供給して発泡剤(物理発泡剤又は化学発泡剤)の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出発泡し冷却してストランド状の共重合体押出物を製造し、この共重合体押出物を所定間隔毎に切断して型内発泡成形用発泡粒子を製造する方法、(3)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体を含む樹脂組成物を押出機内に供給して発泡剤(物理発泡剤又は化学発泡剤)の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けた環状ダイ又はTダイから押出発泡して発泡シートを製造し、この発泡シートを切断することによって型内発泡成形用発泡粒子を製造する方法などが挙げられる。
【0025】
物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、物理発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0026】
又、化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0027】
押出機に供給される発泡剤量は、少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子を所望発泡倍率まで発泡させることができないことがある。押出機に供給される発泡剤量は、多すぎると、発泡剤が可塑剤として作用することから溶融状態の樹脂の粘弾性が低下し過ぎて発泡性が低下し良好な型内発泡成形用発泡粒子を得ることができない場合がある。従って、押出機に供給される発泡剤量は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましく、0.3〜3重量部が特に好ましい。
【0028】
なお、押出機には気泡調整剤が供給されることが好ましい。このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末、タルクなどが好ましい。
【0029】
押出機に供給される気泡調整剤の量は、少なすぎると、型内発泡成形用発泡粒子の気泡が粗大となり、得られる型内発泡成形体の外観が低下することがある。押出機に供給される気泡調整剤の量は、多すぎると、樹脂組成物を押出発泡させる際に破泡を生じて型内発泡成形用発泡粒子の独立気泡率が低下することがある。従って、押出機に供給される気泡調整剤の量は、樹脂組成物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ましく、0.1〜2重量部が特に好ましい。
【0030】
型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、小さすぎると、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率が上昇して、型内発泡成形の発泡時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が低下する虞れがある。型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、大きすぎると、型内発泡成形用発泡粒子の気泡が不均一となって、型内発泡成形時における型内発泡成形用発泡粒子の発泡性が不充分となることがある。従って、型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、50〜700kg/m
3が好ましく、70〜600kg/m
3がより好ましく、80〜500kg/m
3が特に好ましい。なお、型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、ノズル金型のノズルの出口部における樹脂圧力、又は、発泡剤量などによって調整することができる。ノズル金型のノズルの出口部における樹脂圧力の調整は、ノズルの直径、押出量及びスチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体の溶融粘度によって調整することができる。
【0031】
なお、型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定された値をいう。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度を測定することができる。
【0032】
型内発泡成形用発泡粒子の嵩密度(g/cm
3)
=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)−メスシリンダーの質量(g)〕
/〔メスシリンダーの容量(cm
3)〕
【0033】
又、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率は、高すぎると、型内発泡成形時に型内発泡成形用発泡粒子の発泡圧が不足し、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって型内発泡成形体の機械的強度が低下することがある。従って、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。なお、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率の調整は、押出機からの型内発泡成形用発泡粒子の押出発泡温度、又は、押出機への発泡剤の供給量などを調整することによって行われる。
【0034】
ここで、型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率は下記の要領で測定される。先ず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量の型内発泡成形用発泡粒子の全重量A(g)を測定する。次に、上記型内発泡成形用発泡粒子全体の体積B(cm
3)を比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。なお、体積測定空気比較式比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されている。
【0035】
続いて、金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の重量C(g)を測定する。次に、この金網製の容器内に上記型内発泡成形用発泡粒子を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れた型内発泡成形用発泡粒子の全量とを併せた重量D(g)を測定する。
【0036】
そして、下記式に基づいて型内発泡成形用発泡粒子の見掛け体積E(cm
3)を算出し、この見掛け体積Eと上記型内発泡成形用発泡粒子全体の体積B(cm
3)に基づいて下記式により型内発泡成形用発泡粒子の連続気泡率を算出することができる。なお、水1gの体積を1cm
3 とした。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
【0037】
型内発泡成形用発泡粒子を用いて型内発泡成形体を製造するには、型内発泡成形用発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、キャビティ内に加熱媒体を供給して、型内発泡成形用発泡粒子を加熱して再発泡させ、再発泡させた型内発泡成形用発泡粒子同士をこれらの発泡圧力によって互いに熱融着一体化させることによって型内発泡成形体を成形することができる。なお、加熱媒体としては、例えば、水蒸気、熱風、温水などが挙げられ、水蒸気が好ましい。
【0038】
型内発泡成形体の110℃における加熱寸法変化率は−1〜1%が好ましい。型内発泡成形体は、その加熱寸法変化率が−1〜1%であることによって高温環境下における用途にも好適に用いることができる。
【0039】
型内発泡成形体の110℃における加熱寸法変化率はJIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定された値をいう。具体的には、型内発泡成形体から平面形状が一辺150mmの正方形で且つ厚みが型内発泡成形体の厚みである試験片を切り出す。
【0040】
上記試験片の中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の100mmの直線を50mm間隔に記入する。縦及び横方向についてそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L
0を初めの寸法とした。しかる後、試験片を110℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間に亘って放置して加熱試験を行った後に取出し、試験片を25℃にて1時間に亘って放置した。次に、試験片の表面に記入した縦及び横方向のそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L
1を加熱後の寸法とした。下記の式に基づいて加熱寸法変化率を算出した。
加熱寸法変化率(%)=100×(L
1−L
0)/L
0
【0041】
型内発泡成形体における単位密度当たりの圧縮弾性率は、小さすぎると、型内発泡成形体の表面に繊維強化プラスチックなどの表皮材を積層一体化する際に加えられる圧力によって型内発泡成形体が変形する虞れがあるので、0.1MPa/(kg/m
3)以上が好ましい。
【0042】
なお、型内発泡成形体における単位密度当たりの圧縮弾性率は、JIS K7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」記載の方法により測定された値をいう。
【0043】
上述のように、型内発泡成形用発泡粒子を用いて型内発泡成形によって得られた型内発泡成形体は、軽量性、耐熱性及び機械的強度に優れており、特に、高温環境下での耐荷重性に優れていることから、例えば、自動車、航空機、鉄道車輛及び船舶などの輸送機器の部品に好適に用いることができる。自動車部品としては、例えば、エンジン付近に用いられる部品、外装材などに好適に用いることができる。
【0044】
型内発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて強化複合体として用いられてもよい。型内発泡成形体が発泡シートである場合、型内発泡成形体の両面に積層一体化されている必要はなく、型内発泡成形体の両面のうち少なくとも一方の面に表皮材が積層一体化されていればよい。表皮材の積層は、強化複合体の用途に応じて決定すればよい。なかでも、強化複合体の表面硬度や機械的強度を考慮すると、型内発泡成形体の厚み方向における両面のそれぞれに表皮材が積層一体化されていることが好ましい。
【0045】
表皮材としては、特に限定されず、例えば、繊維強化プラスチック、金属シート、合成樹脂フィルムなどが挙げられ、繊維強化プラスチックが好ましい。表皮材として繊維強化プラスチックを用いた繊維強化複合体が好ましい。
【0046】
繊維強化プラスチックを構成している強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的物性を有している。
【0047】
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。また、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
【0048】
強化繊維基材は、一枚の強化繊維基材のみを積層せずに用いてもよく、複数枚の強化繊維基材を積層して積層強化繊維基材として用いてもよい。複数枚の強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材としては、(1)一種のみの強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(2)複数種の強化繊維基材を用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた強化繊維基材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層強化繊維基材などが用いられる。なお、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
【0049】
繊維強化プラスチックは強化繊維に合成樹脂が含浸されてなるものである。含浸させた合成樹脂によって強化繊維同士を結着一体化させている。
【0050】
強化繊維に合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)強化繊維を合成樹脂中に浸漬して強化繊維中に合成樹脂を含浸させる方法、(2)強化繊維に合成樹脂を塗布し、強化繊維に合成樹脂を含浸させる方法などが挙げられる。
【0051】
強化繊維に含浸させる合成樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の何れも用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。強化繊維に含浸させる熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0052】
又、強化繊維に含浸させる熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、型内発泡成形体との接着性又は繊維強化プラスチックを構成している強化繊維同士の接着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0053】
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0054】
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0055】
繊維強化プラスチック中における合成樹脂の含有量は、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。合成樹脂の含有量が少なすぎると、強化繊維同士の結着性や繊維強化プラスチックと型内発泡成形体との接着性が不十分となり、繊維強化プラスチックの機械的物性や繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。合成樹脂の含有量が多すぎると、繊維強化プラスチックの機械的物性が低下して、繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。
【0056】
繊維強化プラスチックの厚みは、0.02〜2mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。厚みが上記範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
【0057】
繊維強化プラスチックの目付は、50〜4000g/m
2が好ましく、100〜1000g/m
2がより好ましい。目付が上記範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
【0058】
次に、強化複合体の製造方法を説明する。型内発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて強化複合体を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)型内発泡成形体の表面に接着剤を介して表皮材を積層一体化する方法、(2)型内発泡成形体の表面に、強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸されてなる繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱可塑性樹脂をバインダーとして型内発泡成形体の表面に繊維強化プラスチック形成材を繊維強化プラスチックとして積層一体化する方法、(3)型内発泡成形体の表面に、強化繊維に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸された繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱硬化性樹脂をバインダーとして、熱硬化性樹脂を硬化させて形成された繊維強化プラスチックを型内発泡成形体の表面に積層一体化する方法、(4)型内発泡成形体の表面に、加熱されて軟化状態の表皮材を配設し、型内発泡成形体の表面に表皮材を押圧させることによって表皮材を必要に応じて型内発泡成形体の表面に沿って変形させながら型内発泡成形体の表面に積層一体化させる方法、(5)繊維強化プラスチックの成形で一般的に適用される方法などが挙げられ、型内発泡成形体は高温環境下における耐荷重性などの機械的強度に優れていることから、上記(4)の方法も好適に用いることができる。
【0059】
繊維強化プラスチックの成形で用いられる方法としては、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、PCM(Prepreg Compression Molding)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法などが挙げられる。
【0060】
このようにして得られた繊維強化複合体は、耐熱性、機械的強度及び軽量性に優れているため、自動車、航空機、鉄道車輛又は船舶などの輸送機器分野、家電分野、情報端末分野、家具の分野などの広範な用途に用いることができる。
【0061】
例えば、繊維強化複合体は、輸送機器の部品、及び、輸送機器の本体を構成する構造部材を含めた輸送機器構成用部材(特に自動車用部材)、ヘルメット用緩衝材、農産箱、保温保冷容器などの輸送容器、部品梱包材として好適に用いることができる。自動車用部材としては、例えば、フロアパネル、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバーなどの部材が挙げられる。