特許第6395904号(P6395904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395904圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395904
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20180913BHJP
   H03H 9/215 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
   H03H9/19 J
   !H03H9/215
【請求項の数】5
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-124414(P2017-124414)
(22)【出願日】2017年6月26日
(62)【分割の表示】特願2013-50537(P2013-50537)の分割
【原出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2017-192149(P2017-192149A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】市村 直也
【審査官】 及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−209764(JP,A)
【文献】 特開2011−176059(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/116523(WO,A1)
【文献】 特開2011−142587(JP,A)
【文献】 特開2005−268830(JP,A)
【文献】 特開2007−288644(JP,A)
【文献】 特開平10−022776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00−9/135
H03H 9/15−9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、前記ベース部材に重ね合わされて接合されると共に前記ベース部材との間に気密封止されたキャビティを形成するリッド部材と、を有するパッケージと、
前記ベース部材における実装面にマウントされ、前記キャビティ内に収容された圧電振動片と、を備え、
前記圧電振動片は、一の方向に並んで配置された一対の振動腕部と、前記一対の振動腕部が接続された基部と、一面の所定位置に設けられたマウント部と、を備え、
前記ベース部材は、前記実装面上に、前記圧電振動片の前記一面と当接する第2の当接面を有する第2の凸部を備え、
前記第2の凸部の前記第2の当接面が当接する、前記圧電振動片の前記一面上の当接位置は、前記一面上において前記当接位置から前記振動腕部までをたどる間の位置に前記マウント部が設けられているような位置であり、
前記第2の当接面は、前記ベース部材の前記実装面に対して、所定の角度を有している圧電振動子。
【請求項2】
前記第2の凸部の前記第2の当接面は、前記圧電振動片の前記基部に接続された支持腕部における、前記基部に接続されている側と逆側の先端部と当接する、請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電振動子を備え、該圧電振動子は発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項1に記載の圧電振動子を備え、該圧電振動子は計時部に電気的に接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の圧電振動子を備え、該圧電振動子はフィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られており、たとえば、その1つとして、一対の振動腕部の端部を連結する基部から、振動腕部の外側に振動腕部と同じ方向に延びる一対の支持腕部を備えた圧電振動片を有するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−72705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の圧電振動子には次の課題がある。
上記のような圧電振動片は支持腕部の端部近傍を、導電性接着剤によってベース基板上に接着することによって実装される。接着手順としては、ベース基板上に未硬化の導電性接着剤を塗布し、その後、該導電性接着剤上に圧電振動片の支持腕部の端部近傍を当接させる。そして、未硬化の導電性接着剤を硬化させることによって、圧電振動片とベース基板とを接着する。
【0005】
このとき、圧電振動片を設置する作業は目視で行われ、圧電振動片とベース基板とは、導電性接着剤を介して接着される。未硬化の導電性接着剤は柔らかいため、圧電振動片を、目視によってベース基板に対して所望の姿勢(たとえば、ベース基板に対して圧電振動片が平行となる姿勢)となるようにしてベース基板に接着することは困難である。したがって、実装された圧電振動片のベース基板に対する姿勢が所望する姿勢と異なるような場合には、実装後に外部衝撃を受けると圧電振動片がパッケージ内面(たとえば、ベース基板)と衝突し、その結果、圧電振動片が破損してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は上記課題を解決すべくなされた発明であり、所望の姿勢でパッケージに実装することが容易な圧電振動片を提供することを目的とする。また、本発明はその圧電振動片を備えることで、外部衝撃を受けても実装された圧電振動片が破損しにくい、信頼性に優れた圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電振動片は、一の方向に並んで配置された一対の振動腕部と、前記一対の振動腕部が接続された基部と、一面の所定位置に設けられたマウント部と、前記一面上に設けられた、当接面を有する凸部と、を備え、前記一面上において、前記凸部から前記振動腕部までをたどる間の位置に前記マウント部が設けられている。
【0008】
この構成によれば、圧電振動片は当接面を有する凸部を備えている。そのため、圧電振動子に実装する際に、パッケージの実装面と、凸部の当接面とが当接するようにして設置することにより、圧電振動片を、実装面に対する圧電振動片の一面の角度が、凸部の当接面と圧電振動片の一面とが成す角度と同一になるような姿勢に保持した状態でパッケージに実装できる。したがって、圧電振動片の一面に対する凸部の当接面の角度を所望の値とすることにより、圧電振動片を所望の姿勢で容易に実装面上に設置することが可能である。
【0009】
また、凸部から振動腕部までをたどる間にマウント部が設けられているため、凸部は、圧電振動子のパッケージの実装面とマウントされるマウント部よりも振動腕部から離れた位置に設けられている。したがって、凸部においては、振動腕部から伝わる振動が十分に減衰されており、凸部と実装面とが当接していることによって、パッケージへ圧電振動片の振動が漏れることを抑制できる。
【0010】
前記当接面は、前記圧電振動片の前記一面と平行であってもよい。
この構成によれば、凸部の当接面をパッケージの実装面に当接させることにより、容易に、圧電振動片の一面とパッケージの実装面とが平行な状態で、圧電振動片を実装することができる。
【0011】
前記当接面は、前記圧電振動片の前記一面に対して、所定の角度を有していてもよい。
この構成によれば、凸部の当接面をパッケージの実装面に当接させることにより、容易に、圧電振動片の一面とパッケージの実装面とが所定の角度を有する状態で、圧電振動片を実装することができる。
【0012】
たとえば、マウント部が圧電振動片の重心に対して偏った位置に設けられているような場合においては、圧電振動片を実装した後に、自重によって圧電振動片が傾き、姿勢が変化する可能性がある。そのため、外部衝撃等によって、圧電振動片がパッケージ内面と衝突し、破損するおそれがある。
【0013】
これに対して、あらかじめ、圧電振動片が傾くことが予想される方向(マウント部に対して重心が位置する側が実装面に接近する方向)と反対の方向に、圧電振動片が傾いているような姿勢で、圧電振動片をパッケージの実装面上に設置することで、自重によって圧電振動片の姿勢が変化した場合においても、圧電振動片の姿勢を適正な範囲内に抑えることができる。これにより、圧電振動片の姿勢が変化した場合であっても、外部衝撃等によって圧電振動片がパッケージ内面と衝突し、破損することを抑制できる。
【0014】
また、このような場合では、圧電振動片の姿勢が変化すると、凸部の当接面と、パッケージの実装面とは離間する。これにより、圧電振動片の振動が、凸部からパッケージに漏れることを抑制できる。
【0015】
前記凸部は、前記基部における前記一の方向の中央に設けられていてもよい。
この構成によれば、凸部が圧電振動片の基部中央に設けられているため、凸部が一つであっても、パッケージの実装面に設置する際に、圧電振動片の姿勢が安定しやすい。
【0016】
前記凸部は、前記基部に接続された支持腕部における、前記基部に接続されている側と逆側の先端に設けられていてもよい。
この構成によれば、凸部は支持腕部の先端に設けられているため、圧電振動片の一面上において凸部から振動腕部までをたどる距離が長くなり、振動腕部から凸部に伝わる振動は十分に減衰される。そのため、凸部の当接面から、パッケージに漏れる圧電振動片の振動を低減できる。
【0017】
本発明の圧電振動子は、ベース部材と、前記ベース部材に重ね合わされて接合されると共に前記ベース部材との間に気密封止されたキャビティを形成するリッド部材と、を有するパッケージと、前記ベース部材における実装面にマウントされ、前記キャビティ内に収容された本発明の圧電振動片と、を備える。
この構成によれば、本発明の圧電振動片を備えているため、外部衝撃等によって圧電振動片がパッケージ内面と衝突し、破損することを抑制でき、信頼性に優れた圧電振動子が得られる。
【0018】
本発明の圧電振動子は、ベース部材と、前記ベース部材に重ね合わされて接合されると共に前記ベース部材との間に気密封止されたキャビティを形成するリッド部材と、を有するパッケージと、前記ベース部材における実装面にマウントされ、前記キャビティ内に収容された圧電振動片と、を備え、前記圧電振動片は、一の方向に並んで配置された一対の振動腕部と、前記一対の振動腕部が接続された基部と、一面の所定位置に設けられたマウント部と、を備え、前記ベース部材は、前記実装面上に、前記圧電振動片の前記一面と当接する第2の当接面を有する第2の凸部を備え、前記第2の凸部の前記第2の当接面が当接する、前記圧電振動片の前記一面上の当接位置は、前記一面上において前記当接位置から前記振動腕部までをたどる間の位置に前記マウント部が設けられているような位置である。
【0019】
この構成によれば、ベース部材は、圧電振動片の一面と当接する第2の当接面を有する第2凸部を備えている。そのため、圧電振動片の一面と第2の凸部の第2の当接面とが当接していることにより、圧電振動片の姿勢は、ベース部材の実装面に対する圧電振動片の一面の角度が、第2の凸部の第2の当接面とベース部材の実装面とが成す角度と同一な姿勢となっている。したがって、ベース部材の実装面に対する第2の凸部の第2の当接面の角度を所望の値とすることにより、圧電振動片が所望の姿勢で実装された、信頼性に優れた圧電振動子が得られる。
【0020】
また、第2の凸部の第2の当接面が当接する圧電振動片の一面上の当接位置は、当接位置から振動腕部までをたどる間の位置にマウント部が設けられているような位置である。そのため、圧電振動片の一面上の当接位置は、圧電振動片の一面上においてマウント部よりも振動腕部から離れた位置となる。したがって、圧電振動片の一面上の当接位置においては、振動腕部から伝わる振動が十分に減衰されており、圧電振動片の一面と第2の凸部の第2の当接面とが当接していることによる、パッケージへの圧電振動片の振動漏れを抑制できる。
【0021】
前記第2の当接面は、前記ベース部材の前記実装面と平行であってもよい。
この構成によれば、圧電振動片の一面と第2の凸部の第2の当接面とが当接していることにより、圧電振動片の一面とパッケージの実装面とが平行な状態で圧電振動片が実装された圧電振動子が得られる。
【0022】
前記第2の当接面は、前記ベース部材の前記実装面に対して、所定の角度を有していてもよい。
この構成によれば、圧電振動片の一面と第2の凸部の第2の当接面とが当接していることにより、圧電振動片の一面とパッケージの実装面とが所定の角度を有する状態で圧電振動片が実装された圧電振動子が得られる。
【0023】
前記第2の当接面が当接する前記圧電振動片の前記一面上の位置は、前記基部における前記一の方向の中央であってもよい。
この構成によれば、圧電振動片が安定して実装された圧電振動子が得られる。
【0024】
前記第2の凸部の前記第2の当接面は、前記圧電振動片の前記基部に接続された支持腕部における、前記基部に接続されている側と逆側の先端部と当接してもよい。
この構成によれば、第2の当接面から、パッケージに圧電振動片の振動が漏れることを抑制できる。
【0025】
本発明の発振器は、本発明の圧電振動子を備え、該圧電振動子は発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、信頼性に優れた発振器が得られる。
【0026】
本発明の電子機器は、本発明の圧電振動子を備え、該圧電振動子は計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、信頼性に優れた電子機器が得られる。
【0027】
本発明の電波時計は、本発明の圧電振動子を備え、該圧電振動子はフィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、信頼性に優れた電波時計が得られる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、容易に圧電振動片を所望の姿勢に保持した状態で圧電振動子のパッケージに実装できる。そのため、圧電振動片を実装した圧電振動子が外部衝撃等を受けた場合においても、実装された圧電振動片がパッケージ内部に接触し、破損することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態の圧電振動片を示す外観斜視図である。
図2】第1実施形態の圧電振動片を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は正面図である。
図3】第1実施形態の圧電振動片の凸部を形成する工程を示したフローチャートである。
図4】第1実施形態の圧電振動片の凸部を形成する手順を示した断面図および平面図である。
図5】第1実施形態の圧電振動片の接着手順を示した断面図である。
図6】第1実施形態における変形例の圧電振動片を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は正面図である。
図7】第1実施形態における変形例の圧電振動片の実装状態を示す断面図であり、(a)は実装直後の状態を示す図であり、(b)は所定時間経過後に圧電振動片が傾いた場合を示す図である。
図8】第2実施形態の圧電振動片を示す外観斜視図である。
図9】第2実施形態の圧電振動片を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は正面図である。
図10】第3実施形態の圧電振動片を示す外観斜視図である。
図11】第3実施形態の圧電振動片を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は正面図である。
図12】圧電振動子の第1実施形態を示す外観斜視図である。
図13】圧電振動子の第1実施形態の内部構造を示す平面図である。
図14】圧電振動子の第1実施形態を示す図であって、図13におけるA−A断面図である。
図15】圧電振動子の第1実施形態を示す図であって、各部を分解した分解斜視図である。
図16】圧電振動子の第2実施形態の内部構造を示す平面図である。
図17】圧電振動子の第2実施形態を示す図であって、図16におけるB−B断面図である。
図18】圧電振動子の第2実施形態を示す図であって、各部を分解した分解斜視図である。
図19】圧電振動子の第2実施形態の変形例における内部構造を示す平面図である。
図20】圧電振動子の第2実施形態の変形例を示す図であって、図19におけるC−C断面図である。(a)は圧電振動片を実装した直後の状態を示す図であり、(b)は所定時間経過後に圧電振動片が傾いた場合を示す図である。
図21】圧電振動子の第2実施形態の変形例を示す図であって、各部を分解した分解外観斜視図である。
図22】発振器の一実施形態を示す構成図である。
図23】電子機器の一実施形態を示す構成図である。
図24】電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る圧電振動片および圧電振動子について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
なお、図1から図11までの説明においてはXYZ座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各部材の位置関係を説明する。この際、圧電振動片の面と垂直な方向をZ軸方向、振動腕部の長手方向をY軸方向、Y軸方向とZ軸方向の両方と直交する方向をX軸方向とする。また、基部から振動腕部の先端に向かう方向を+Y方向とし、凸部が延出している方向を+Z方向とする。
【0031】
[第1実施形態]
(圧電振動片)
まず、本実施形態の圧電振動片1について説明する。
図1,2は、本実施形態の圧電振動片を示す図である。図1は、外観斜視図、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図である。
なお、図1,2においては、後述する圧電振動子に実装する際にパッケージの実装面と対向する対向面(一面)18aが上側(+Z方向側)となるようにして表している。
【0032】
本実施形態の圧電振動片1は、図1,2に示すように、平板状である。圧電振動片1は、基部10と、振動腕部11,12と、ハンマー部13,14と、支持腕部15,16と、凸部17と、を備えている。
圧電振動片1は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成されたサイドアーム型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
圧電振動片1の面に垂直な方向の厚さ(Z軸方向長さ)としては、たとえば、30μmとすることができる。
【0033】
一対の振動腕部11,12は、基部10からそれぞれ同一の方向(+Y方向)に向かって延出している。振動腕部11,12は、長手方向(Y軸方向)と垂直で圧電振動片1の面と平行な方向(一の方向)、すなわちX軸方向に並んで設けられている。一対の振動腕部11,12の外表面上には、これら一対の振動腕部11,12を振動させる不図示の励振電極が形成されている。
【0034】
ハンマー部13,14は、それぞれ振動腕部11,12の先端から、振動腕部11,12の長手方向(Y軸方向)に沿うように延出形成されている。ハンマー部13,14の幅(X軸方向長さ)は、振動腕部11,12の幅(X軸方向長さ)よりも大きく形成されている。ハンマー部13,14は、基部10を固定端として、幅方向(X軸方向)に振動する自由端に設定されている。
【0035】
一対の支持腕部15,16は、基部10から、振動腕部11,12の幅方向(X軸方向)両側に延出した後、振動腕部11,12の長手方向(Y軸方向)に沿って、振動腕部11,12の先端側(+Y方向側)に向かって屈曲延出して形成されている。
【0036】
支持腕部15,16の延出方向側(+Y方向側)の先端部における、圧電振動片1の対向面18a上には、凸部17がそれぞれ設けられている。
凸部17は、後述するパッケージの実装面と当接する、当接面17aを備えている。当接面17aは、対向面18aと平行である。
図2(b)に示す、凸部17の対向面18aに垂直な方向(Z軸方向)の厚さh1は、圧電振動片1の振動時において、実装されるパッケージ(主に後述する第2ベース基板)と接触しない範囲内で、特に限定されない。たとえば、30μm以上とできる。
【0037】
支持腕部15,16は、それぞれマウント部15a,16aを備えている。マウント部15a,16aは、圧電振動片1の対向面18a上における、支持腕部15,16の延出方向側(+Y方向側)の先端近傍で、かつ凸部17よりも基部10側(−Y方向側)に設けられている。マウント部15a,16aが設けられている位置は、支持腕部15,16が振動する際に、振動の節となる位置である。
【0038】
支持腕部15,16のマウント部15a,16aには、不図示のマウント電極が形成され、不図示の引き出し電極により、振動腕部11,12の外表面上に形成された励振電極と接続されている。そして、これらの各電極に所定の電圧が印加されると、一対の振動腕部11,12の双方の励振電極どうしの相互作用により、一対の振動腕部11,12が互いに接近または離間する方向(X軸方向)に所定の共振周波数で振動する。
【0039】
(圧電振動片の凸部の形成方法)
次に、前述した圧電振動片1の凸部17の形成方法について説明する。
図3,4は、凸部17の形成方法を示す図である。図3は、凸部17を形成する工程を示すフローチャートであり、図4は、各工程の手順を模式的に示した断面図および平面図である。
【0040】
まず、図3に示すように、水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みとしたウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、この後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行なって所定の厚みのウエハS(図4(a)参照)を準備する(ステップS01)。
【0041】
次に、図4(a)に示すように、ウエハSの両主面にエッチング保護膜40とフォトレジスト膜41とをそれぞれ成膜する(ステップS02)。
エッチング保護膜40は、たとえば、クロム(Cr)を数10nm成膜した第1エッチング保護膜40aと、金(Au)を数10nm成膜した第2エッチング保護膜40bとが、順次積層された積層膜である。
【0042】
このステップS02においては、まず、ウエハSの両主面に、順次、第1エッチング保護膜40aと第2エッチング保護膜40bとを、それぞれスパッタリング法や蒸着法などにより成膜する。
次いで、エッチング保護膜40上に、スピンコート法などによりレジスト材料を塗布して、フォトレジスト膜41を形成する。
なお、本実施形態で用いるレジスト材料としては、環化ゴム(たとえば、環化イソプレン)を主体にしたゴム系ネガレジストが好適に用いられている。ゴム系ネガレジストは、環化ゴムを有機溶剤に溶解し、さらにビスアジド感光剤を加えて、ろ過し、不純物を除去することで精製されたものである。
【0043】
次に、エッチング保護膜40およびフォトレジスト膜41が成膜されたウエハSの両主面を、凸部パターンが形成されたフォトマスクを用いて一括で露光し、現像する。
これにより、図4(b)に示すように、フォトレジスト膜41の一方側(図示上側)に凸部パターン41Aを形成する(ステップS03)。
凸部パターン41Aは、凸部17の外形に沿った形状である。凸部パターン41Aは、支持腕部15,16の間隔と同間隔で形成されている。
【0044】
次に、凸部パターン41Aが形成されたフォトレジスト膜41をマスクとしてエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜40の第2エッチング保護膜40bのみを選択的に除去する(ステップS04)。
次に、エッチング加工後にフォトレジスト膜41を剥離する(ステップS05)。
これらにより、図4(c)に示すように、第2エッチング保護膜40bの一方側に凸部パターン40bAを形成する。
【0045】
なお、エッチング加工には、エッチング保護膜40とフォトレジスト膜41が形成されたウエハSを、薬液に浸漬して行うウェットエッチング方式を用いることができる。
具体的には、たとえば、金(Au)が成膜された第2エッチング保護膜40bは薬液としてヨウ素を用いてエッチングすることができる。
なお、このパターニングは、複数の圧電振動片1の数だけ、一括して行なう。
【0046】
次に、凸部パターン40bAが形成された第2エッチング保護膜40bをマスクとしてエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜40の第1エッチング保護膜40aを選択的に除去する(ステップS06)。
これにより、図4(d)に示すように、第1エッチング保護膜40aの一方側に凸部パターン40aAを形成する。
【0047】
次に、第2エッチング保護膜40bの凸部パターン40bAおよび第1エッチング保護膜40aの凸部パターン40aAをマスクとして、マスクされていないウエハSを選択的にハーフエッチング加工する(ステップS07)。
これにより、図4(e)に示すように、ウエハS上に凸部17を形成する。
【0048】
次に、図4(f)に示すように、第2エッチング保護膜40bの凸部パターン40bAのみを選択的に除去するエッチング加工を行なう(ステップS08)。
次に、同様に、第1エッチング保護膜40aの凸部パターン40aAのみを選択的に除去するエッチング加工を行なう(ステップS09)。
【0049】
以上の工程により、凸部17が形成されたウエハSが得られる。
この後、形成された凸部17が支持腕部15,16の先端部に設けられるようにして、圧電振動片1を製造する。圧電振動片1の製造方法としては、たとえば、開示されている特開2012−175673に示されるような方法を用いることができる。
【0050】
(圧電振動片の実装方法)
次に、本実施形態の圧電振動片1を圧電振動子のパッケージに実装する方法について説明する。
図5は、後述する圧電振動子4の第2ベース基板560上に圧電振動片1を設置する手順を示す図であり、圧電振動片1が実装された際に支持腕部15の長手方向となる方向に沿って、第2ベース基板560の実装面560aに垂直な面で切断した断面図である。なお、図5においては、圧電振動子4の構成要素を適宜省略して図示している。
【0051】
まず、図5(a)に示すように、第2ベース基板560の実装面560a上に設けられた電極パッド610A(610B)上に未硬化の導電性接着剤75を塗布する。
未硬化の導電性接着剤75としては、たとえば、熱硬化性を有するものを用いることができる。
【0052】
次に、図5(b)に示すように、圧電振動片1を、対向面18aが第2ベース基板560の実装面560aと対向するようにして、第2ベース基板560上に設置する。
このとき、凸部17の当接面17aを、第2ベース基板560の実装面560aと当接させる。これにより、当接面17aは圧電振動片1の対向面18aと平行であるため、圧電振動片1は、対向面18aが第2ベース基板560の実装面560aと平行な姿勢となる。
そして、マウント部15a(16a)は、未硬化の導電性接着剤75と当接する。これにより、マウント部15a(16a)と、電極パッド610A(610B)と、が未硬化の導電性接着剤75を介して接着される。
【0053】
次に、図5(c)に示すように、未硬化の導電性接着剤75を硬化させる。
硬化させる方法としては、たとえば、未硬化の導電性接着剤75として熱硬化性を有するものを用いた場合には、加熱する方法を選択できる。これにより、未硬化の導電性接着剤75が硬化し、圧電振動片1のマウント部15a(16a)と、第2ベース基板560上に設置された電極パッド610A(610B)と、が導電性接着剤80を介して固着され、圧電振動片1は第2ベース基板560上に設置される。
【0054】
以上により、圧電振動片1は、対向面18aがパッケージの実装面と平行な姿勢で、圧電振動子のパッケージに実装される。
【0055】
本実施形態の圧電振動片1によれば、圧電振動片1は凸部17を有しているため、凸部17の当接面17aをパッケージの実装面に当接させることで、圧電振動片1の姿勢を所望の姿勢(本実施形態においては、対向面18aとパッケージの実装面とが平行な姿勢)に保持した状態で、圧電振動片1を圧電振動子のパッケージに実装することが容易である。
これにより、圧電振動子に外部から衝撃が加えられたような場合であっても、実装された圧電振動片がパッケージ内部と接触して破損することを抑制できる。
【0056】
また、凸部17は、マウント部15a,16aよりも支持腕部15,16の先端側(+Y方向側)に設けられている。そして、マウント部15a,16aは、振動の節となる位置に設けられ、圧電振動子のパッケージに実装された際には、導電性接着剤80によって第2ベース基板560と接着される。そのため、マウント部15a,16aよりも支持腕部15,16の先端側(+Y方向側)に伝わる振動は十分に減衰したものとなる。したがって、振動腕部11,12から凸部17に伝わる振動は十分に減衰されており、凸部17から圧電振動子のパッケージに振動が漏れることを抑制できる。
【0057】
また、圧電振動片は、一般的に基部の方が重く、重心は基部寄りとなる。そのため、本実施形態のサイドアーム型や、後述するセンターアーム型のような、マウント部が支持腕部の先端近傍に設けられているような圧電振動片では、重い基部の側が下がり(パッケージの実装面に接近し)、圧電振動片の姿勢が変化する場合があった。
これに対して本実施形態の圧電振動片1では、支持腕部15,16のマウント部15a,16aよりも先端に凸部17が設けられていることにより、重心が基部10側からマウント部15a,16a側に近づく。これにより、圧電振動片1の姿勢が変化することが抑制される。
【0058】
なお、本実施形態においては、下記の構成を採用することもできる。
【0059】
本実施形態においては、圧電振動片として振動腕部に溝が形成されていないものを用いたが、溝が形成されたものであってもよい。
【0060】
[第1実施形態の変形例]
次に、前述した本実施形態の圧電振動片1に対して、凸部の当接面が圧電振動片の対向面と所定の角度を有している点において異なる、本実施形態の変形例について説明する。
図6は、本変形例の圧電振動片1Aを示す図である。図6(a)は、外観斜視図、図6(b)は、正面図である。
なお、上記実施形態と同様の構成要素については、適宜、上記実施形態と同様の符号を付してその説明を簡略化、あるいは省略する。また、圧電振動片1Aの平面形状は、図2(a)に示す圧電振動片1の平面形状と同一となるため、平面図は省略する。
【0061】
本変形例の圧電振動片1Aは、圧電振動子に実装する際にパッケージの実装面と対向する対向面18b上に、凸部50を備えている。
凸部50は、本実施形態と同様に、支持腕部15,16の延出方向側(+Y方向側)の先端に設けられている。凸部50は、当接面50aを備えている。
【0062】
凸部50における圧電振動片1Aの面に垂直な方向(Z軸方向)の厚さは、図6(b)に示すように、凸部50の基部10側(−Y方向側)の端部において、最大厚さh2となり、支持腕部15,16の延出方向側(+Y方向側)に向かうに従って、小さくなっている。これにより、当接面50aは、対向面18bに対して角度θ1で傾く斜面となっている。
【0063】
凸部50の厚さおよび当接面50aの角度θ1としては、実装した際に、圧電振動片1Aがパッケージ内部に接触しない範囲内で、特に限定されない。凸部50の最大厚さh2は、たとえば、30μm以上とできる。
【0064】
圧電振動片1Aは、前述した本実施形態の実装方法と同様にして、圧電振動子のパッケージに実装することができる。圧電振動片1Aの凸部50における当接面50aは、対向面18bに対して角度θ1で傾いているため、実装した際の圧電振動片1Aの姿勢は、実装面に対して対向面18bが、パッケージの実装面に対して角度θ1だけ傾いたものとなる。
【0065】
本変形例の圧電振動片1Aによれば、圧電振動片を実装した後に、圧電振動片の姿勢が変化してしまうような場合でも、圧電振動片がパッケージ内部に接触し、破損することを抑制することができる。
【0066】
前述したように、たとえば、圧電振動片において、パッケージのベース基板と導電性接着剤によって接触するマウント部が、圧電振動片の重心位置と離れた位置に設けられているような場合(たとえば、サイドアーム型やセンターアーム型の場合)、実装された圧電振動片の姿勢は、所定時間経過の後、圧電振動片の自重によって変化することがある。すなわち、圧電振動片におけるマウント部の位置に対して重心の位置する側(主として基部側)が下がる(実装面に接近する)ことがある。このような場合においては、外部衝撃等により、圧電振動片がパッケージ内部(主として実装面)に接触してしまう可能性がある。
【0067】
これに対して、本変形例によれば、あらかじめ傾くことが予想される方向と反対の方向に圧電振動片1Aが傾いた姿勢で実装されるように、凸部50の当接面50aの角度θ1を設定することで、圧電振動片1Aの姿勢が変化しても、外部衝撃等によりパッケージ内部に圧電振動片1Aが接触し、破損することを抑制できる。
以下、具体的に説明する。
【0068】
図7は、本変形例の圧電振動片1Aを、後述する圧電振動子4に実装した場合を示す断面図である。図7(a)は、実装した直後を示す図であり、図7(b)は、実装した後、時間の経過により圧電振動片1Aの姿勢が変化した場合を示す図である。なお、図7は、図5と同様の断面で切った場合を示しており、圧電振動子4の構成要素は適宜省略して図示している。
【0069】
図7(a)では、圧電振動片1Aが、対向面18bと第2ベース基板560の実装面560aとが対向するようにして、第2ベース基板560上に設置されている。圧電振動片1Aの姿勢は、凸部50の当接面50aが対向面18bに対して角度θ1で傾いていることにより、圧電振動片1Aの対向面18bが、第2ベース基板560の実装面560aに対してθ1で傾くような姿勢となっている。いいかえると、圧電振動片1Aの振動腕部11(12)における、ハンマー部13(14)が設けられている側から、基部10側に向かう方向に進むに従って、第2ベース基板560の実装面560aと、圧電振動片1Aの対向面18bとの距離が大きくなっている。
【0070】
本変形例の圧電振動片1Aのようなサイドアーム型の圧電振動片は、重心が基部10寄りになるため、支持腕部15,16の延出方向側の先端近傍にマウント部15a,16aが設けられていると、自重によって基部10側が下がる(実装面560aに接近する)場合がある。
【0071】
このような場合においても、図7(b)に示すように、本変形例によれば、あらかじめ傾くことが予想される方向とは逆側に傾いた姿勢で、圧電振動片1Aが実装されているため、姿勢が変化した際に圧電振動片1Aが第2ベース基板560に接触することが抑制される。
【0072】
また、圧電振動片1Aの姿勢は、導電性接着剤80を介して第2ベース基板560上に設置された電極パッド610A(610B)に接着されているマウント部15a(16a)を中心に、振動腕部11,12が並ぶ方向(紙面に垂直な方向)回りに変化する。そのため、圧電振動片1Aの基部10側が下がることにより、ハンマー部13(14)が設けられている側は上がる(実装面560aから離間する)。これにより、当接していた、当接面50aと実装面560aとが離間し、隙間63が形成される。その結果、圧電振動片1Aの振動が、凸部50から第2ベース基板560に漏れることを抑制できる。
【0073】
[第2実施形態]
次に、音叉型の圧電振動片に凸部を設けた、第2実施形態について説明する。
なお、上記実施形態と同様の構成要素については、適宜、上記実施形態と同様の符号を付してその説明を簡略化、あるいは省略する。
【0074】
図8,9は、本実施形態の圧電振動片2を示す図である。図8は、外観斜視図であり、図9(a)は、平面図、図9(b)は、正面図である。
本実施形態の圧電振動片2は、図8,9に示すように、平板状である。圧電振動片2は、基部70と、振動腕部72,73と、凸部71と、を備えている。
基部70の対向面74上における、基部70の中央部には、マウント部70aが2つ、基部70の幅方向(X軸方向)に並んで設けられている。マウント部70aには、不図示のマウント電極が形成されている。
【0075】
一対の振動腕部72,73は、基部70からそれぞれ同一の方向(+Y方向)に向かって延出している。一対の振動腕部72,73は、長手方向と垂直で圧電振動片2の面と平行な方向(X軸方向)に、並んで設けられている。一対の振動腕部72,73の外表面上には、これら一対の振動腕部72,73を振動させる不図示の励振電極が形成されている。
【0076】
マウント部70aに設けられているマウント電極は、不図示の引き出し電極により、振動腕部72,73の外表面上に形成された励振電極と接続されている。そして、これらの各電極に所定の電圧が印加されると、一対の振動腕部72,73の双方の励振電極どうしの相互作用により、一対の振動腕部72,73が互いに接近または離間する方向(X軸方向)に所定の共振周波数で振動する。
【0077】
凸部71は、基部70の対向面74上における、基部70の幅方向(X軸方向)の中央で、かつ振動腕部72,73の長手方向基部70側(−Y方向側)の端部に設けられている。凸部71は、当接面71aを備えており、当接面71aは、圧電振動片2の対向面74と平行である。
【0078】
圧電振動片2は、第1実施形態の圧電振動片1と同様に、対向面74と、パッケージの実装面とが対向するようにして、実装される。このとき、凸部71の当接面71aは、実装面と当接し、マウント部70aは、導電性接着剤を介して、実装面上に設けられた電極パッドと接着される。当接面71aは対向面74と平行なため、圧電振動片2は、対向面74が、実装面と平行な姿勢となる。
【0079】
本実施形態の圧電振動片1Aによれば、凸部71が基部70の幅方向の中央に設けられているため、凸部71が1つであっても、安定して圧電振動片2の姿勢を所望の姿勢(本実施形態においては、圧電振動片2の対向面74と、パッケージの実装面とが平行な姿勢)に保持した状態で容易に実装できる。
【0080】
なお、本実施形態においては、下記の構成を採用することもできる。
【0081】
本実施形態においては、凸部71の当接面71aは、対向面74と平行な面としたが、前述した第1実施形態の変形例の圧電振動片1Aと同様に、対向面74に対して所定の角度で傾く斜面としてもよい。
【0082】
凸部71は、マウント部70aを挟んで振動腕部72,73側(+Y方向側)の、基部70の幅方向(X軸方向)中央に設けてもよい。
【0083】
凸部71は、複数設けてもよい。たとえば、基部70のマウント部70aを挟んで振動腕部72,73とは逆側(−Y方向側)の端部に、基部70の幅方向(X軸方向)の中心を挟んで2つ設けることができる。
【0084】
本実施形態においては、圧電振動片として振動腕部に溝が形成されていないものを用いたが、溝が形成されたものであってもよい。
【0085】
[第3実施形態]
次に、センターアーム型の圧電振動片に凸部を設けた、第3実施形態について説明する。
なお、上記実施形態と同様の構成要素については、適宜、上記実施形態と同様の符号を付してその説明を簡略化、あるいは省略する。
【0086】
図10,11は、本実施形態の圧電振動片3を示す図である。図10は、外観斜視図、図11(a)は、平面図、図11(b)は、正面図である。
本実施形態の圧電振動片3は、図10,11に示すように、平板状である。圧電振動片3は、基部90と、振動腕部93,94と、ハンマー部95,96と、支持腕部91と、凸部92と、を備えている。
【0087】
一対の振動腕部93,94は、基部90からそれぞれ同一の方向(+Y方向)に向かって延出している。振動腕部93,94は、長手方向と垂直で圧電振動片3の面と平行な方向(X軸方向)に、並んで設けられている。一対の振動腕部93,94の外表面上には、これら一対の振動腕部93,94を振動させる不図示の励振電極が形成されている。
【0088】
ハンマー部95,96は、それぞれ振動腕部93,94の先端から、振動腕部93,94の長手方向(Y軸方向)に沿うように延出形成されている。ハンマー部95,96の幅(X軸方向長さ)は、振動腕部93,94の幅(X軸方向長さ)よりも大きく形成されている。ハンマー部95,96は、基部90を固定端として、幅方向(X軸方向)に振動する自由端に設定されている。
【0089】
支持腕部91は、基部90における、振動腕部93と振動腕部94が延出している箇所の間から、振動腕部93,94の長手方向(Y軸方向)に沿って、振動腕部93,94の先端側(+Y方向側)に向かって延出して形成されている。
【0090】
支持腕部91の延出方向側(+Y方向側)の先端部における、圧電振動片3の対向面97上には、凸部92が設けられている。
凸部92は、後述するパッケージの実装面と当接する、当接面92aを備えている。当接面92aは、対向面97と平行である。
【0091】
支持腕部91は、マウント部91aを備えている。マウント部91aは、圧電振動片3の対向面97上における、支持腕部91の延出方向側(+Y方向側)の先端近傍で、かつ凸部92よりも基部90側に、長手方向(Y軸方向)に並んで2つ設けられている。マウント部91aが設けられている位置は、支持腕部91が振動する際に、振動の節となる位置を挟んだ位置である。
【0092】
支持腕部91のマウント部91aには、不図示のマウント電極が形成され、不図示の引き出し電極により、振動腕部93,94の外表面上に形成された励振電極と接続されている。そして、これらの各電極に所定の電圧が印加されると、一対の振動腕部93,94の双方の励振電極どうしの相互作用により、一対の振動腕部93,94が互いに接近または離間する方向(X軸方向)に所定の共振周波数で振動する。
【0093】
圧電振動片3は、第1実施形態の圧電振動片1と同様に、対向面97と、パッケージの実装面とが対向するようにして、実装される。このとき、凸部92の当接面92aは、実装面と当接し、マウント部90aは、導電性接着剤を介して、実装面上に設けられた電極パッドと接着される。当接面92aは対向面97と平行なため、圧電振動片3は、対向面97が、実装面と平行な姿勢となる。
【0094】
本実施形態の圧電振動片3によれば、センターアーム型の圧電振動片を所望の姿勢で、圧電振動子のパッケージに容易に実装できる。
【0095】
なお、本実施形態においては、下記の構成を採用することもできる。
【0096】
本実施形態においては、凸部92の当接面92aは、対向面97と平行な面としたが、前述した第1実施形態の変形例の圧電振動片1Aと同様に、対向面97に対して所定の角度で傾く斜面としてもよい。
【0097】
本実施形態においては、圧電振動片として振動腕部に溝が形成されていないものを用いたが、溝が形成されたものであってもよい。
【0098】
[圧電振動子の第1実施形態]
次に、前述した圧電振動片1を用いた圧電振動子の第1実施形態として、セラミックパッケージタイプの表面実装型振動子について説明する。
図12から15は、本実施形態の圧電振動子4を示す図であり、図12は外観斜視図、図13は圧電振動子の内部構成を示す、封口板を取り外した状態の平面図、図14図13におけるA−A断面図、図15は圧電振動子4の分解斜視図である。
【0099】
本実施形態の圧電振動子4は、図12から図15に示すように、内部に気密封止されたキャビティCを有するパッケージ510と、キャビティC内に収容された前述した圧電振動片1と、を備える。
【0100】
この圧電振動子4は、略直方体状に形成されており、本実施形態では平面視において圧電振動子4の長手方向を長さ方向といい、短手方向を幅方向といい、これら長さ方向および幅方向に対して直交する方向を厚さ方向という。
【0101】
パッケージ510は、パッケージ本体(ベース部材)530と、このパッケージ本体530に対して接合されるとともに、パッケージ本体530との間にキャビティCを形成する封口板(リッド部材)540と、を備えている。
【0102】
パッケージ本体530は、互いに重ね合わされた状態で接合された第1ベース基板550および第2ベース基板560と、第2ベース基板560上に接合されたシールリング570と、を備えている。
第1ベース基板550は、平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされている。第2ベース基板560は、第1ベース基板550と同じ外形形状である平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされており、第1ベース基板550上に重ねられた状態で焼結等によって一体的に接合されている。
【0103】
第1ベース基板550および第2ベース基板560の四隅には、平面視1/4円弧状の切欠部580が、両基板550,560の厚さ方向の全体に亘って形成されている。これら第1ベース基板550および第2ベース基板560は、たとえば、ウエハ状のセラミック基板を2枚重ねて接合した後、両セラミック基板を貫通する複数のスルーホールを行列状に形成し、その後、各スルーホールを基準としながら両セラミック基板を格子状に切断することで作製される。その際、スルーホールが4分割されることで、前述した切欠部580となる。
また、第2ベース基板560の上面は、圧電振動片1がマウントされる実装面560aとされている。
【0104】
なお、第1ベース基板550および第2ベース基板560はセラミックス製としたが、その具体的なセラミックス材料としては、たとえばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co−Fired Ceramic)や、ガラスセラミックス製のLTCC(Low Temperature Co−Fired Ceramic)等が挙げられる。
【0105】
シールリング570は、第1ベース基板550および第2ベース基板560の外形よりも一回り小さい導電性の枠状部材であり、第2ベース基板560の実装面560aに接合されている。
具体的には、シールリング570は、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付けによって実装面560a上に接合、あるいは、実装面560a上に形成(たとえば、電解メッキや無電解メッキの他、蒸着やスパッタ等により)された金属接合層に対する溶着等によって接合されている。
【0106】
なお、シールリング570の材料としては、たとえばニッケル基合金等が挙げられ、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42−アロイ等から選択すればよい。特に、シールリング570の材料としては、セラミック製とされている第1ベース基板550および第2ベース基板560に対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。たとえば、第1ベース基板550および第2ベース基板560として、熱膨張係数6.8×10-6/℃のアルミナを用いる場合には、シールリング570としては、熱膨張係数5.2×10-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5×10-6/℃以上、6.5×10-6/℃以下の42−アロイを用いることが好ましい。
【0107】
封口板540は、シールリング570上に重ねられた導電性基板であり、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付け等によって、シールリング570と気密に接合されている。シールリング570に対する接合は、そして、この封口板540とシールリング570と第2ベース基板560の実装面560aとで画成された空間が、気密に封止された前述したキャビティCとして機能する。
【0108】
なお、封口板540の溶接方法としては、たとえばローラ電極を接触させることによるシーム溶接や、レーザ溶接、超音波溶接等が挙げられる。また、封口板540とシールリング570との溶接をより確実なものとするため、互いになじみの良いニッケルや金等の接合層を、少なくとも封口板540の下面と、シールリング570の上面とにそれぞれ形成することが好ましい。
【0109】
ところで、第2ベース基板560の実装面560aには、圧電振動片1との接続電極である一対の電極パッド610A,610Bが幅方向に間隔をあけて形成されているとともに、第1ベース基板550の下面には、一対の外部電極620A,620Bが長さ方向に間隔をあけて形成されている。
これら電極パッド610A,610Bおよび外部電極620A,620Bは、たとえば、蒸着やスパッタ等で形成された単一金属による単層膜、または異なる金属が積層された積層膜であり、互いにそれぞれ導通している。
【0110】
この点詳細に説明する。
図14に示すように、第1ベース基板550には一方の外部電極620Aに導通し、第1ベース基板550を厚さ方向に貫通する一方の第1貫通電極630Aが形成されているとともに、第2ベース基板560には一方の電極パッド610Aに導通し、第2ベース基板560を厚さ方向に貫通する一方の第2貫通電極640Aが形成されている。そして、第1ベース基板550と第2ベース基板560との間には、一方の第1貫通電極630Aと一方の第2貫通電極640Aとを接続する一方の接続電極650Aが形成されている。これにより、一方の電極パッド610Aと一方の外部電極620Aとは、互いに導通している。
【0111】
また、第1ベース基板550には他方の外部電極620Bに導通し、第1ベース基板550を厚さ方向に貫通する他方の第1貫通電極630Bが形成されているとともに、第2ベース基板560には他方の電極パッド610Bに導通し、第2ベース基板560を厚さ方向に貫通する他方の第2貫通電極640Bが形成されている。そして、第1ベース基板550と第2ベース基板560との間には、他方の第1貫通電極630Bと他方の第2貫通電極640Bとを接続する他方の接続電極650Bが形成されている。これにより、他方の電極パッド610Bと他方の外部電極620Bとは、互いに導通している。
なお、他方の接続電極650Bは、後述する凹部660を回避するように、たとえばシールリング570の下方をシールリング570に沿って延在するようにパターニングされている。
【0112】
第2ベース基板560の実装面560aには、図13および図14に示すように、振動腕部11,12の先端部に対向する部分に、落下等による衝撃の影響によって振動腕部11,12が厚さ方向に変位(撓み変形)した際に、振動腕部11,12との接触を回避する凹部660が形成されている。この凹部660は、第2ベース基板560を貫通する貫通孔とされているとともに、シールリング570の内側において四隅が丸みを帯びた平面視正方形状に形成されている。
【0113】
そして、圧電振動片1は、図14に示すように、導電性接着剤80を介して、マウント部15a,16aに形成されている図示しないマウント電極が、電極パッド610A,610Bに接触するようにマウントされている。このとき、圧電振動片1における凸部17の当接面17aは、実装面560aと当接している。
これにより、圧電振動片1は、第2ベース基板560の実装面560aに対して、対向面18aが平行な状態で支持されると共に、一対の電極パッド610A,610Bにそれぞれ電気的に接続された状態とされている。
【0114】
このように構成された圧電振動子4を作動させる場合には、外部電極620A,620Bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片1の励振電極に電流を流すことができ、一方の振動腕部11と他方の振動腕部12とを圧電振動片1の面に沿って所定の周波数で振動させることができる。そして、この振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として圧電振動子4を利用することができる。
【0115】
本実施形態の圧電振動子4によれば、圧電振動片1が、対向面18aと、実装面560aとが平行な姿勢で、精度よく第2ベース基板560上に実装されている。そのため、外部衝撃を受けること等によって、圧電振動片1がパッケージ内部に接触して破損することを抑制でき、信頼性に優れた圧電振動子が得られる。
【0116】
なお、本実施形態においては、下記の構成を採用することもできる。
【0117】
圧電振動片1を用いた圧電振動子として、セラミックパッケージタイプの表面実装型振動子について説明したが、圧電振動片1を、ガラス材によって形成されるベース基板およびリッド基板が陽極接合によって接合されるガラスパッケージタイプの圧電振動子に適用することも可能である。
【0118】
本実施形態においては、実装する圧電振動片として、第1実施形態の圧電振動片1を用いたが、第1実施形態の変形例、第2実施形態、第3実施形態の圧電振動片を用いてもよい。
【0119】
[圧電振動子の第2実施形態]
次に、第1実施形態に対して、第2ベース基板上に凸部が設けられている点において異なる、圧電振動子の第2実施形態について説明する。
なお、上記実施形態と同様の構成要素については、適宜、上記実施形態と同様の符号を付してその説明を簡略化、あるいは省略する。
【0120】
図16から18は、本実施形態の圧電振動子5を示す図であり、図16は圧電振動子の内部構成を示す、封口板を取り外した状態の平面図、図17図16におけるB−B断面図、図18は圧電振動子5の分解斜視図である。なお、外観斜視図は、図12で示した圧電振動子4と同様であるため省略する。
実装されている圧電振動片20は、支持腕部150,160の先端部に凸部を備えていない点を除いて、第1実施形態の圧電振動片1と同様である。
【0121】
図16から18に示すように、第2ベース基板560Aは、実装面560Aa上に、凸部(第2の凸部)81を備えている。凸部81は、当接面(第2の当接面)81aを備え、当接面81aは、実装面560Aaと平行である。凸部81は、電極パッド610A,610Bの近傍で、実装された圧電振動片20における、支持腕部150,160の延出方向側(凹部660の側)に、それぞれ設けられている。これにより、当接面81aは、圧電振動片20の支持腕部150,160における、電極パッド610A,610Bと導電性接着剤80を介して接触している位置(マウント部150a,160a)よりも、延出方向側の位置(当接位置)とそれぞれ当接している。
【0122】
本実施形態の圧電振動子5によれば、圧電振動片20が、対向面180と、実装面560Aaとが平行な姿勢で、精度よく第2ベース基板560A上に実装されている。そのため、外部衝撃を受けること等によって、圧電振動片20がパッケージ内部に接触して破損することを抑制でき、信頼性に優れた圧電振動子が得られる。
【0123】
また、凸部81の当接面81aは、圧電振動片20の支持腕部150,160における延出方向側の先端部と当接している。支持腕部150,160の先端部においては、振動腕部11,12からの振動が十分に減衰されているため、圧電振動片20から第2ベース基板560Aに振動が漏れることを抑制できる。
【0124】
また、圧電振動片20のような、凸部を有しない圧電振動片を実装することが可能なため、実装できる圧電振動片の選択の幅を広くすることができる。
【0125】
なお、本実施形態においては、下記の構成を採用することもできる。
【0126】
本実施形態においては、サイドアーム型の圧電振動片を用いたが、音叉型のものであっても、センターアーム型のものであってもよい。その場合には、凸部81の位置を各圧電振動片のマウント部の位置に応じて変更できる。
【0127】
[圧電振動子の第2実施形態の変形例]
次に、本実施形態における圧電振動子5に対して、凸部の当接面が斜面である点において異なる、圧電振動子の第2実施形態の変形例について説明する。
なお、上記実施形態と同様の構成要素については、適宜、上記実施形態と同様の符号を付してその説明を簡略化、あるいは省略する。
【0128】
図19から21は、本変形例の圧電振動子5Aを示す図である。図19は圧電振動子の内部構成を示す、封口板を取り外した状態の平面図である。図20は、図19におけるC−C断面図であり、図20(a)は、圧電振動片を実装した直後を示す図、図20(b)は、所定時間経過後に、圧電振動片の姿勢が変化した場合を示す図である。図21は圧電振動子5Aの分解斜視図である。なお、外観斜視図は、図12で示した圧電振動子4と同様であるため省略する。
【0129】
図19から21に示すように、第2ベース基板560Bは、実装面560Ba上に、凸部82を備えている。凸部82は、当接面82aを備えている。凸部82の当接面82aは、実装面560Baに対して所定の角度で傾く斜面である。凸部82は、電極パッド610A,610Bの近傍で、実装された圧電振動片20における、支持腕部150,160の延出方向側(凹部660の側)に、それぞれ設けられている。これにより、当接面82aは、圧電振動片20の支持腕部150,160における、電極パッド610A,610Bと導電性接着剤80を介して接触している位置(マウント部150a,160a)よりも、延出方向側の位置(当接位置)とそれぞれ当接している。
【0130】
図20(a)に示すように、圧電振動片20の姿勢は、実装時においては、基板560Bの実装面560Baに対して傾いた状態となっている。
しかし、実装から所定時間経過すると、前述したように、自重によって圧電振動片20の姿勢が変化する場合がある。
この場合において、本変形例の圧電振動子5Aによれば、図20(b)に示すように、圧電振動片20の姿勢が変化しても、あらかじめ、変化が予想される方向(圧電振動片20の基部側が第2ベース基板560Bに接近する方向)と反対方向に傾いているため、圧電振動片20が第2ベース基板560Bと接触することが抑制される。図20(b)においては、姿勢が変化することによって、圧電振動片20の対向面180と、実装面560Baとが平行となっている。
【0131】
また、この場合においては、当接していた凸部82の当接面82aと、第2ベース基板560Bの実装面560Baとが離間する。そのため、圧電振動片20の振動が第2ベース基板560Bに漏れることを抑制できる。
【0132】
[発振器の実施形態]
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図22を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図22に示すように、圧電振動子4を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子4が実装されている。これら電子部品102、集積回路101および圧電振動子4は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0133】
このように構成された発振器100において、圧電振動子4に電圧を印加すると、この圧電振動子4内の圧電振動片1が振動する。この振動は、圧電振動片1が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子4が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、たとえば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0134】
本実施形態の発振器100によれば、前述した圧電振動子4を備えているので、同様に信頼性に優れた発振器100とすることができる。
【0135】
[電子機器の実施形態]
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図23を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子4を有する携帯情報機器(電子機器)110を例にして説明する。
ここで、本実施形態の携帯情報機器110は、たとえば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカおよびマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化および軽量化されている。
【0136】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図23に示すように、圧電振動子4と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、たとえば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0137】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信および受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0138】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路およびインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子4とを備えている。圧電振動子4に電圧を印加すると圧電振動片1が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0139】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123および呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0140】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、たとえば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0141】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、たとえば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119および着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0142】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0143】
本実施形態の携帯情報機器110によれば、前述した圧電振動子4を備えているので、同様に信頼性に優れた携帯情報機器110とすることができる。
【0144】
[電波時計の実施形態]
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図24を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図24に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子4を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0145】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子4を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子4は、前述した搬送周波数と同一の40kHzおよび60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138,139をそれぞれ備えている。
【0146】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138,139は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0147】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。たとえば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。したがって、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子4を必要とする。
【0148】
本実施形態の電波時計130によれば、前述した圧電振動子4を備えているので、同様に信頼性に優れた電波時計130とすることができる。
【0149】
なお、上記の実施形態における発振器、電子機器、電波時計においては、第1実施形態の圧電振動子4を用いたが、前述した第2実施形態、第2実施形態の変形例の圧電振動子であってもよい。
【符号の説明】
【0150】
1,1A,2,3…圧電振動片、4,5,5A…圧電振動子、10,70,90…基部、11,12,72,73,93,94…振動腕部、15,16,91…支持腕部、15a,16a,70a,91a…マウント部、17,50,92…凸部、17a,50a,71a,92a…当接面、18a,18b,74,97…対向面(一面)、100…発振器、110…携帯情報機器(電子機器)、130…電波時計、510…パッケージ、530…パッケージ本体(ベース部材)、540…封口板(リッド部材)、560a,560Aa,560Ba…実装面、C…キャビティ
図1
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