(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述の
図1から
図12と、本特許文書における本開示の原理を説明するために使用された様々な実施形態とは、例示して説明するためのものに過ぎず、決して開示の範囲を限定するように解釈されるべきではない。当業者は、本開示の原理が各種の適切に用意された機器又はシステムに実装されることがあることを理解するであろう。
【0010】
図1A及び1Bは、本開示による低温冷却装置アクティブ除振プロセスのための適応位相制御(APC)を実装する適応フィードフォワード(AFF)振動制御システム20の実施例及び関連した詳細を例示して説明する。本実施例では、制御システム20は、宇宙船10において使用されるが、システム20は、他の適当な環境においても使用され得る。
【0011】
図1Aに表されるように、制御システム20は、スターリングサイクル低温冷却装置111と、冷却装置11の低温先端に結合された画像センサ12(検出器アレイと呼ばれることもある)と、冷却装置11に結合されたロードセル31及び32とを含む。制御システム20は、低温冷却装置アクティブ除振プロセスのAPCを提供する1つ以上のコントローラを更に含む。
【0012】
低温冷却装置11は、冷却装置筐体14と、冷却装置筐体14内に配置されたエキスパンダモジュール15及びコンプレッサモジュール16と、エキスパンダモジュール15用のコントローラ27と、コンプレッサモジュール16用のコントローラ28とを含む。低温冷却装置の実施例には、スターリングサイクル低温冷却装置と、パルスチューブ低温冷却装置と、スターリング/パルスチューブ・ハイブリッド型低温冷却装置が含まれる。一部の実施形態では、コントローラ27〜28は、冷却装置筐体14の内部に包み込まれるか、又は、少なくとも1つの連通リンクなどによって冷却装置11に結合される。
【0013】
エキスパンダモジュール15は、エキスパンダピストン17と、エキスパンダピストン17用の駆動モータ18と、エキスパンダモジュール15用のバランサマス21と、バランサマス21用の駆動モータ22とを含む。エキスパンダモジュールは、ガス(例えば、ヘリウム)移送ラインによってコンプレッサモジュールに接続される。
【0014】
コンプレッサモジュール16は、2つのコンプレッサピストン23及び25と、それぞれのコンプレッサピストンの駆動モータ24及び26とを含む。駆動モータは、コンプレッサピストンと同じシャフト上にリニアモータを含むことがあり得る。駆動モータ24及び26は、コンプレッサピストン23及び25の運動が相補的であるように、正弦波コマンド信号を使用して整合した逆向きの直線運動で2つのコンプレッサピストン23及び25を駆動する。相補的な運動は、コンプレッサピストン23及び25を互いにバランスさせ、個々のピストンによって生成された振動力の大半が筐体14でキャンセルされる。コンプレッサピストン23及び25は、これらの間に収容された多量のガスを圧縮する。各ピストンは、表面間に摩擦がない状態でガス圧縮を可能にする非接触隙間シールと一体になってシリンダの内側を動く。ガスは、ガス移送ラインを介して強制的にコンプレッサから外に出され、エキスパンダの中へ入れられる。完璧に整合したピストン及びモータ駆動は、基本モータ駆動周波数で振動を完全に無効にするであろう。しかしながら、適応フィードフォワード振動制御なしの場合、ピストン23と25との間のわずかな差は、いくらかの残留基本高調波力及び残留高次高調波力を生成する。冷却装置11は、明細書では、閉鎖系分割サイクルスターリング冷却装置として記述されているが、他の種類の低温冷却装置、若しくは、振動力を生成する他の種類の機械も使用される可能性があることに注意すべきである。冷却装置11は、画像センサ12(又は、低温冷却の恩恵を受ける他の機器)を約5Kから100Kなどのターゲット定常状態温度まで冷却する。
【0015】
エキスパンダモジュール15及びコンプレッサモジュール16は、それぞれのコントローラ27〜28に結合される。コントローラ27〜28は、モータ駆動信号を生成することによって、低温冷却装置が冷たくなる温度を制御する。冷却制御に向けてモータ駆動信号を生成することに加えて、コントローラ27〜28は、キャンセル信号を生成することにより適応フィードフォワード振動制御システム20を制御する。モータ駆動信号及びキャンセル信号は、コントローラ27〜28からのコマンド信号35〜36として生成され得る。即ち、コントローラからモータへのコマンド信号35〜36は、モータ駆動信号、AFFキャンセル信号、又は両方を含むことがあり得る。例えば、各コントローラ27〜28は、AFF振動制御手順を実装し得る。エキスパンダモジュール15用のコントローラ27は、モータ駆動信号及びAFFキャンセル信号を駆動モータ18及び22に供給し、コンプレッサモジュール16用のコントローラ28は、モータ駆動信号及びAFFキャンセル信号を駆動モータ24及び26に供給する。コントローラ27〜28は、駆動モータ18、22〜26を制御する単一のコントローラ又は制御システムとして実装され得る。各コントローラ27〜28は、種々の形式のうちいずれかで機械使用可能な、コンピュータ使用可能な又はコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶された実行可能な命令を含み、これらの命令は、実行されたとき、コントローラの処理回路にAFF振動制御及び除振を行わせる。コントローラ27〜28は、データを記憶するランダム・アクセス・メモリ(RAM)などのマイクロプロセッサメモリを含むことがあり得る。メモリは、プロセッサによる使用のためデータ及び命令を記憶し得る。
【0016】
AFF振動制御手順を実施するとき、コントローラ27〜28は、低温冷却装置11の移動コンポーネントによって生成された駆動周波数力の基本駆動周波数及び高次高調波で小さいピストンのバランスの悪さに対抗するキャンセル信号を反復的に生成する。反復毎に、AFF振動制御手順は、振動高調波の大きさ及び位相を解析し、これらの振動を部分的にキャンセルするために使用される波形を有するキャンセル信号を生成する。キャンセル信号及びモータ駆動信号の波形は、ピストンを制御するため使用される。コントローラ27〜28は、データ点の形式でキャンセル信号をRAMに記憶することができ、データ点を全て零値に初期化することができる。例えば、コントローラ27〜28は、各高調波に対して、高調波毎にRAに記憶された1対の正弦基準波形及び余弦基準波形などのフーリエ係数を判定する。各基準波形は、(正弦成分B
n及び余弦成分C
nを含む)フーリエ係数を計算するために振動波形を乗じられる。各高調波に対して、RAMに記憶された1対の正弦合成波形及び余弦合成波形は、この周波数でのモータ駆動入力から力トランスデューサまでの位相遅延に一致するように位相シフトされる。AFFキャンセル信号波形は、各フーリエ係数に対応する合成波形及び利得項を乗じることにより作り出される。次の反復へ進む際に、コントローラ27〜28は、新しいAFFキャンセル信号の波形を前のAFFキャンセル信号波形に加算する。コントローラ27〜28は、合成キャンセル信号波形を先行するAFFキャンセル信号波形に加算するので、キャンセルの量は、反復のたびに増加し、振動の量が減少する。各反復は、振動が振動フィードバック及びモータ駆動コマンドの分解能限界に減らされるまで前のキャンセル波形に基づいて進む。コントローラ27〜28が振動のおよそ10〜25%減衰を与える利得項を選択するとき、収束時間は減速するが、システム応答変動に対するより高い耐性が得られる。低温冷却装置11の構造の分解能限界の範囲内で達成可能な最小振動は、AFFが収束するときに現れる。利得項のより優れたチューニングは、高調波レベルのより高速な収束とより高い安定性とをもたらす。
【0017】
ある実施形態では、AFFキャンセル信号がモータ駆動増幅器による出力の前にモータ駆動信号に加算される。ある実施形態では、AFFキャンセル信号は、駆動信号と組み合わされることなくトリムコイルを駆動するために使用される。トリムコイルは、ピストン上で駆動モータと同じボビンに巻き付けられた別個のコイルである。トリムコイルは、モータ駆動が達成できる分解能より精細な分解能で力がピストンに印加されることを許す。
【0018】
パルスチューブ低温冷却装置の場合、(パルスチューブと呼ばれる受動的な共振空洞である)エキスパンダモジュールの中に移動部品が存在しないので、コントローラ27は、AFF振動制御手順を実施することなく、コンプレッサモジュール用のコントローラ28だけがAFF振動制御手順を実施する。
【0019】
スターリング低温冷却装置又はスターリング/パルスチューブ・ハイブリッド型低温冷却装置の場合、エキスパンダモジュールは、コンプレッサ圧力波と相対的に膨張の位相をより高い効率を示す最適動作点に操作する膨張能力をもたらす能動エキスパンダピストンを含む。能動エキスパンダピストンの構造は、別のエキスパンダと対をなすことを防止する。力をバランスさせるために、モータ22は、正弦波波形を有するコマンド信号を使用してエキスパンダピストン17と逆向きの運動でバランスマス21を駆動する。エキスパンダは、ガスが膨張することを許し、エキスパンダモジュールの終端で低温先端から熱を吸収して望ましい冷却作用を提供する。ピストンの全ては、同じ周波数(例えば、20Hzから100Hzを上回る範囲)で駆動している。
【0020】
以下は、エキスパンダモジュール15を制御するコントローラ27の説明であるが、類似した説明がコンプレッサモジュール16を制御するコントローラ28にも当てはまる。動作中に、コントローラ27は、コマンド信号35〜36を生成し、モータ18、22の入力端子に送信する。コマンド信号35〜36を受信したことに応答して、モータ18、22は、(基本周波数とも呼ばれる)モータ駆動周波数で直線運動を生成し、単一周波数正弦波運動に従うようにピストン17、21を駆動する。例えば、単一周波数正弦波運動は、基本周波数と同一であることがあり得る。コントローラ27は、基本駆動周波数振動力ΔF
fの完全なキャンセルを生じさせるコマンド信号35〜36を生成する。即ち、基本周波数に関連付けられた、動いているピストンからの振動力は、コマンド信号35〜36の基本周波数を調整することによってキャンセルされ得る。
【0021】
ロードセル31は、筐体14とコントローラ27との間に結合され、(感知振動信号とも呼ばれる)フィードバック信号33をコントローラ27に供給する。ロードセル32は、筐体14とコントローラ28との間に結合され、フィードバック信号34をコントローラ28に供給する。各ロードセル31〜32は、筐体14に搭載され、筐体14内に存在する振動だけを示すフィードバック信号33〜34を生成する(圧電力トランスデューサなどの)振動センサを含む。例えば、ロードセル3は、1サイクル毎に360点のモータ駆動周波数で振動データのサンプルを測定する。データ転送速度は、キャンセルされる最高高調波周波数のため十分な分解能を有するように選択される。ロードセル31〜32は筐体14に対する全反力ΔF作用を感知し、この全反力ΔFは、基本周波数での単一周波数正弦波運動に従うピストン17、21によって生成された基本周波数で生じる振動力ΔF
fを含んでいる。全反力ΔFの中で、ロードセル31〜32は、残留高次高調波力、即ち、振動力ΔF
hを感知する。ロードセル31からのフィードバック信号33に基づいて、コントローラ27は、全反力ΔF=ΔF
hとなるように、基本駆動周波数振動力ΔF
fをバランスさせる、又は、(一部の残留基本振動力を除いて)実質的に零に低減するためにコマンド信号35〜36の振幅αを調整する。
【0022】
ピストン17、23、35及びバランスマス33の運動からの振動力に加えて、冷却装置11は、非線形力を生成するモータ駆動電子機器、ピストンサスペンション屈曲部、及びガス熱力学を含む。例えば、冷却装置11は、ガススプリングをもたらすヘリウムガスで満たされ得る。別の実施例として、システム20の機械的共振は、冷却装置11の内部に非線形振動力を生成する。その上、低温冷却装置ピストン17、21、23、25の運動とピストンを懸架するサスペンション屈曲部との間の非線形相互作用は、冷却装置11の内部に非線形振動力を引き起こす。
【0023】
駆動モータ18、22に印加されたコマンド信号35〜36の基本周波数の調整は、基本周波数の高調波に関連付けられた振動力ΔF
hをキャンセルしないことがあり、基本周波数のこれらの高調波は、モータ駆動電子機器、ピストンサスペンション屈曲部、ガススプリング熱力学、機械的共振などに関連付けられた非線形力によって生成される。更に、基本駆動周波数振動力ΔF
fをキャンセルするコマンド信号35〜36の振幅αの調整は、基本周波数の高次高調波に関連付けられた振動力ΔF
hをキャンセルしないことがある。同じことは、ピストン17、21の質量不平衡又は不均衡に対抗するための完全な正弦波コマンド信号35〜36への調整が非常に小さい状況において、完全な正弦波コマンド信号がモータ18、22に印加されるとき、基本駆動周波数振動力ΔF
fは完全に打ち消されることもあり得るという仮説例においても言える。即ち、例えば、モータ付き駆動周波数が完全に45Hzである場合、低温冷却装置ケースでの合成振動は、零であることがあり得るが、90Hzの第2次高調波は、サスペンション屈曲部及びガススプリング熱力学の非線形力に起因する非線形振動を示すであろう。
【0024】
コントローラ27〜28は、低温冷却装置アクティブ除振プロセスのAPCアルゴリズムを実施する適応位相制御(APC)モジュール37〜38をそれぞれ含む。例えば、各APCモジュール37〜38は、種々の形式のうちいずれかで機械読み取り可能な、コンピュータ使用可能な、又はコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶された実行可能な命令を含む可能性があり、これらの命令は、実行されたとき、コントローラ27〜28の処理回路に低温冷却装置アクティブ除振のAPCを行わせる。一部の実施形態では、各モジュール37〜38は、APCを行う処理回路を含み、MPDO値を含む位相コマンドをそれぞれのAFCコントローラ27〜28に送信するために結合される。APCモジュール37〜38は、基本周波数の複数の高調波(第1次、第2次、第3次及び第N次高調波など)に関連付けられた振動力ΔF
hをキャンセルする。より詳しくは、APCモジュール37〜38は、モータ駆動電子機器、ピストンサスペンション屈曲部、ガススプリング熱力学、機械的共振などの非線形力に関連付けられた振動力をキャンセルできる。
【0025】
APCモジュール37は、AFFコントローラ27が残留高調波振動力ΔF
hをキャンセルするために、モータ18、22に供給されたコマンド信号35〜36の位相角φを自動的に適合させることを可能にする。APCモジュール37は、開始伝達関数とは無関係に望ましい低温冷却装置アクティブ除振を行うことができる最適角を自動的に判定する。即ち、APCモジュール37は、AFFコントローラ77に対し、コマンド信号35、36の位相角φを示すMPDO値を生成する。言い換えると、MPDO値は、選択されたモータが駆動される位相角φを設定する。APCモジュール37は、AFFシステム20への入力、即ち、コマンド信号35〜36と、AFFシステム20からの出力、即ち、感知された振動信号33〜34との間の関係を表現する伝達関数を判定する。以下の
図1Bについての記載は、伝達関数が変化するのにつれて、APCモジュール37は、AFFコントローラ28が最初から最後まで伝達関数の変化を追跡することを可能にさせることをより詳しく記述する。
【0026】
AFFシステム20の伝達関数は、物理現象に応答して変化する。物理現象の実施例は、地面を基準にする冷却装置11の向きの変化、(低温冷却装置の低温先端での周囲温度から超低温までの低下などの)低温冷却装置の内部の温度変化、又は他の物理現象を含む。APCモジュール37は、AFF除振アルゴリズムを自立的に実施するために必要とされる正しい機械的位相遅延オフセット(MPDO)値を自動的に判定する。APCアルゴリズムは、AFFコントローラ27が動作中に必要に応じてMPDO値を調整することにより冷却装置11の冷却プロファイル中に振動をより効率的にキャンセルするコマンド信号35〜36を生成することを可能にする。APCモジュール37は、低温冷却装置の統合及び試験に関連付けられた時間及びコストを削減するAPCアルゴリズムを実行し、低温冷却装置が引き渡し後に遠隔的に再チューニングされることを許す。例えば、APCモジュール37〜38は、複数の高調波(例えば、第1次、第2次、第3次及び第N次高調波)の範囲内で各周波数に対してMPDOを調整することにより複数の周波数のうちの各周波数で振動を低減する。非限定的な実施例として、初期モータ力の基本周波数が50Hzであり、100Hz、150Hz、200Hz,...N×50Hzの高調波を伴う場合、APCモジュールは、固定周波数波形のMPDOを調整する。
【0027】
APCモジュール38は、AFFコントローラ28のため類似した機能を行えることに注意すべきである。このようにして、APCモジュール37〜38は、低温冷却装置アクティブ除振プロセスの性能を著しく改善することに役立つ可能性がある。
【0028】
図1Bは、AFF制御システムから出力されたキャンセル信号と、コマンド信号を受信するモータによって駆動された単一周波数正弦波運動と、正弦波運動によって生成された振動を感知する力センサから出力された出力信号との簡略化されたタイミングチャート100の実施例を例示して説明する。
図1Bに表された波形は、単に実施例として与えられている。
【0029】
冷却装置11は、AFF振動制御手順が始まる前の時点t
0より前に動作を開始する。時点t
0で、AFFシステム20は、(1番目の波形105として表された)初期キャンセル信号を冷却装置の選択されたモータに送信する。初期キャンセル信号は、
図1Aのコマンド信号35〜36の実施例である。初期コマンド信号は、初期直線並進周波数及び初期大きさを選択されたモータ18、22、24、26に指示する。時点t
1で、初期キャンセル信号105を受信したことに応答して、選択されたモータは、初期モータ駆動基本周波数及び初期大きさで直線運動する。2番目の波形110は、初期モータ駆動基本周波数及び初期大きさでの選択されたモータの直線運動によって駆動された単一周波数正弦波運動を表現する。時点t
2で、ロードセル31〜32は、選択されたモータの、選択されたモータによって駆動された直線運動により生じさせられた振動を感知する。被感知振動フィードバック信号33〜34は、3番目の波形115として表されている。
【0030】
AFFシステム20は、ロードセル31〜32によって感知された振動力を連続的に監視し、初期キャンセル信号(1番目の波形105)に関連付けられた振動力ΔFを減少させるために選択されたモータに送信されたフィードフォワードキャンセル信号35〜36を修正する。AFFシステム20は、時点t
2とt
3との間に感知された振動力に基づいて(4番目の波形120として表された)調整済みのキャンセル信号を生成する。調整済みのキャンセル信号は、
図1Aのコマンド信号35〜36の別の実施例である。
【0031】
AFFコントローラ27〜28は、時点t
3まで初期キャンセル信号105を送信し続け、このとき、コントローラ27〜28は、調整済みのコマンド信号(4番目の波形120)を選択されたモータに送信する。時点t
3を過ぎて、1番目の波形105は、AFFコントローラ27〜28が時点t
3で初期コマンド信号を送信することを停止したことを示すために破線として続く。調整済みのキャンセル信号120は、選択されたモータに送信された調整済みの直線並進大きさ及びMPDO値(例えば、位相角)を示す。時点t
4で、調整済みのキャンセル信号を受信したことに応答して、選択されたモータは、調整済みの直線並進大きさとMPDO値に対応する位相遅延とで運動して、調整済みのモータ力125をピストンに印加する。2番目の波形110は、時点t
4で終わり、選択されたモータが(1番目の波形105によって引き起こされた)初期モータ力を印加することを停止し、(4番目の波形120によって引き起こされた)調整済みのモータ力125を印加することを開始したことを示す。5番目の波形125は、調整済みの直線並進大きさとMPDO値に対応する位相遅延とでの選択されたモータの直線運動によって駆動されたピストンの単一周波数正弦波運動を表現する。時点t
5で、ロードセル31〜32は、調整済みのキャンセル信号120を受信したことに応答して運動する選択されたモータの直線運動によって引き起こされた(6番目の波形130によって表された)振動を感知する。AFFシステム20は、調整済みのコマンド信号に関連付けられた振動力ΔFを減少させるように、選択されたモータに送信されたフィードフォワードコマンド信号35〜36を修正するために、ロードセル31〜32によって感知された振動力を引き続いて監視する。3番目の波形115は、時点t
5で終わり、ロードセル31〜32が初期モータ力に関連付けられた振動を感知することを停止し、調整済みのモータ力に関連付けられた振動を感知することを開始したことを示す。
【0032】
伝達関数は、モータへの(コマンド信号波形105又は120などの)入力信号と、ロードセル31〜32の(感知された振動115又は130などの)出力信号との間の関係を表現するように定められ得る。伝達関数は、入力信号振幅と出力信号振幅との間の(利得などの)差を表現する。伝達関数は、入力信号位相角と出力信号位相角との間の(位相遅延などの)差も表現する。より詳しくは、入力信号は、AFFシステム、即ち、低温冷却装置を駆動する機械電気システムから送信され、低温冷却装置の直線運動は、入力信号への応答であり、出力信号は、1つ以上のロードセルから送信される。その結果、伝達関数は、振幅利得と、低温冷却装置を駆動する機械電気システム、低温冷却装置自体、並びに、低温冷却装置が内部で動作する機械電気システムの内部での位相遅延とを表現する。伝達関数のボード線図は、低温冷却装置を駆動する機械電気システムと低温冷却装置が内部で動く機械電気システムとに関して、周波数の関数として位相遅延及び利得を特徴付ける。
【0033】
各伝達関数は、第1、第2、及び第3の位相遅延を含むことがあり得る。例えば、波形105と110との間の第1の位相遅延t
1−t
0は、(AFFシステム20が時点t
0で初期キャンセル信号をモータに送信することを仮定して)モータの電気コンポーネントが初期コマンド信号を受信する時点t
1と、モータの機械コンポーネントが初期モータ駆動基本周波数で直線運動する時点t
1との間の時間を表現する。波形110と115との間の第2の位相遅延t
2−t
1は、時点t
1と、(AFFシステムが同じ時点t
2にロードセルによって生成された信号を受信することを仮定して)ロードセルが初期モータ駆動基本周波数で運動しているモータの振動を感知する時点t
2との間の時間を表現する。波形105と115との間の第3の位相遅延t
2−t
0は、AFFシステム20が初期キャンセル信号を時点t
0でモータに送信する時点と、AFFシステム20が初期モータ駆動基本周波数で直線運動しているロードセルによって生成された信号を受信する時点t
2との間の時間を表現する。第3の位相遅延は、第1の位相遅延と第2の位相遅延との合計であるので、第3の遅延の長さは、第2の位相遅延の長さに依存する。第3の位相遅延は、機械的位相遅延と呼ぶこともでき、伝達関数位相遅延とも呼ばれる。
【0034】
調整済みのキャンセル信号120を印加すると、冷却装置11は、初期コマンド信号(波形105)と調整済みのキャンセル信号(波形120)との間の差に過渡応答する。過渡応答は、AFFコントローラ27〜28が時点t
3の直前に初期キャンセル信号105を送信することを停止したときに始まる。AFFコントローラ27〜28が調整済みのキャンセル信号120をモータに印加する前に、零に等しい初期MPDOは、有効であり、入力としての初期キャンセル信号波形105及び出力としての振動波形115に対応する。過渡応答中に、AFFシステム20は、初期MPDOから調整済みのMPDO(入力波形120及び出力波形130)に変化する。過渡応答は、調整済みのMPDOが有効であるときに終わる。APCモード37〜38は、定常状態動作の期間に初期MPDOと調整済みのMPDOとを判定する。即ち、物理的伝達関数は、制御システム20に内在する。APCアルゴリズムは、AFFアルゴリズムの各反復を監視することによりこの物理的伝達関数を測定する。APCモジュール37〜38は、キャンセル信号の入力信号と感知された振動の出力波形との間の関係に基づいて制御システム20に内在する物理的伝達関数を判定する。即ち、キャンセル信号105と感知された振動115との間の関係(更に、例えば、キャンセル信号120と感知された振動130との間の関係)は、制御システム20に内在する物理的伝達関数を判定する根拠である。ある実施形態では、APCモジュール37〜38は、現在の調整済みのキャンセル信号120の印加から測定された効果に基づくその後の波形の調整とMPDO値更新との間のある期間(例えば、過渡応答設定期間)を待機する。
【0035】
時点t
3で調整済みのキャンセル信号120を印加すると、初期MPDO値と調整済みのMPDO値との間の差は、波形110と125との間に位相遅延を生成する。APCモジュールは、入力(時点t
3での波形120)と出力(時点t
5での波形130)との間の位相遅延を含めて(波形105から120までの)フィードフォワードキャンセル信号の調整を表現するために、測定された伝達関数に基づいてMPDO値を(人間の介在なしに)自動的に更新し修正する。APCモジュール37〜38は、測定された伝達関数を使用してMPDO値を示すMPDO値を自動的に生成し、ロードセル31〜32によって感知された通りの調整済みのキャンセル信号の印加に関連付けられた力をキャンセルするためにコマンド信号35〜36の範囲内のMPDO値を供給する。即ち、AFFアルゴリズムの次の反復は、次の調整済みのキャンセル信号(即ち、波形120の後のキャンセル信号)の中に更新済みのMPDO値を含む。
【0036】
図1Aにおいて、冷却装置11は、宇宙船10のコンポーネントとして表されていることに注意すべきである。しかしながら、本開示は、宇宙船システムに限定されない。冷却装置11は、低温冷却の恩恵を受けるシステムのいかなる種類のコンポーネント、例えば、別の車両システム、実験室試験台のパネル上端などでもよい。冷却装置11を含むシステムの種類は、調整済みのフィードフォワードキャンセル信号の効果が現れる時点と、ロードセル31〜32が筐体14に合成振動を感知する時点との間の遅延の長さに影響を与える。冷却装置11を含むシステムの種類は、調整済みのフィードフォワードキャンセル信号がモータ付きのドライバに供給される時点(時点t
3)と、調整済みのキャンセル信号の効果が現れる時点(時点t
4)との間の遅延の長さにも影響を与える。
【0037】
比較すると、APCモジュールを含まないAFFは、伝達関数を特徴付けることがなく、補正することがない。APCを含まないAFFの除振アルゴリズムを修正する1つの解決策は、MPDO値を実験的に判定して、AFFキャンセル信号を粗くチューニングすることを含む。しかしながら、MPDO値を実験的に判定することは、時間のかかる試みであり、値は、低温冷却装置の全ての動作温度及び取り付け条件に対して判定される必要がある。
【0038】
図2は、本開示によるAPCモジュールを含まないAFFコントローラに関して周波数と対比した振動高調波の大きさの実施例を例示して説明する。グラフィカル表現200は、データの単一のサンプルに関してキャンセルされた信号周波数ドメインの範囲内でAFF動作の実施例からの結果を与える。他のAFF動作結果は、本開示の範囲から逸脱することなくグラフ的に表現され得る。
【0039】
グラフィカル表現200は、基本周波数の9つの高調波に対する振動力大きさを表示する。大きさの中の第1のスパイク210は、基本周波数の第1次高調波を表現し、これは、約25〜27Hzの範囲内の基本周波数に対応する。即ち、モータ18、22、24、26は、基本周波数でピストン17、21、23、25の単一周波数正弦波運動を駆動する。大きさの中の第2のスパイク220は、基本周波数の第2次高調波を表現し、これは、約50〜54Hzの範囲内の基本周波数に対応する。本実施例では、第1次高調波周波数での振動力は、第2次高調波周波数での振動力より大きな大きさを有する。第3、第4、第5、第6、第7、第8及び第9のスパイク230〜290は、基本周波数のそれぞれの序数の高調波を表現する。
【0040】
図3は、本開示によるAFF動作中に時間と対比した振動高調波の大きさの実施例を例示して説明する。AFFシステム20は、86°伝達関数位相遅延を含む
図3に表示されたグラフィカル表現300を生成するためにシミュレーションされる。グラフィカル表現300を生成するために、周波数と対比した振動高調波の大きさの合計で少なくとも100回の反復のグラフィカル表現がグラフィカル表現200におけるプロットと同様にプロットされ得る。グラフィカル表現300は、データの100個のサンプルに対して、
図2に表されたのと同じAFF動作からの結果を提供する。実施例として、データの単一のサンプルは、1秒の持続期間に亘って測定されたデータを含むこと、又は、1秒毎に測定された瞬時データを含むことがあり得る。本開示は、1秒毎に測定されたデータのサンプルについて記載するが、他の時間間隔が使用されることがあり得る。
図3における時間ドメインは、100秒に及ぶ。表示された100秒間に、調整済みのキャンセル信号がスパイク210の大きさを縮小するために1つ以上のモータに印加される。
【0041】
グラフィカル表現300は、基本周波数の8つの高調波、具体的には、第2次から第9次高調波に対する振動力大きさを表示する。各ラインプロットは、第2次高調波から第9次高調波の各々を表現する。7つのラインプロットのグループ305は、振動力ΔFの削減を表す振幅の減衰を示す。振幅減衰は、調整済みのキャンセル信号が8つの表示された高調波周波数のうちの少なくとも7つで低温冷却装置振動レベルと破壊的に干渉することを表している。
【0042】
ラインプロット310は、第2次から第9次高調波のうちの少なくとも1つの挙動を表す。ラインプロット310は、適切に調整又はチューニングされていない高調波に対する振動力ΔFの増加を示す傾斜を含む。傾斜は、調整済みのキャンセル信号が高調波周波数のうちの1つとして低温冷却装置振動レベルと建設的に干渉することを表す。傾斜は、調整済みのキャンセル信号の範囲内で非最適位相値に起因する間違った位相整列によって生じる。
【0043】
図4は、本開示によるAFF動作中に時間と対比した振動高調波の位相角の実施例を例示して説明する。
図4の中のグラフィカル表現400は、
図2に表されたものと同じAFF動作からの結果を与える。時間ドメインは、100秒に及び、データは、全部で100個のサンプルに亘って毎秒1サンプルでサンプリングされる。表示された100秒間に、調整済みのキャンセル信号は、第1のスパイク210の大きさを削減するために1台以上のモータに印加される。
【0044】
グラフィカル表現400は、
図2に表された基本周波数の9つの高調波、具体的には、第1次から第9次高調波に対する振動力位相角を表示する。各ラインプロットは、9つの高調波の各々を表現する。ラインプロットのうちの8つを有するグループ405a〜405bは、最初から最後まで一定の位相角値を指定する平坦なラインを示す。一定の位相角値は、調整済みのキャンセル信号が9つの表示された高調波周波数のうちの8つに対して位相角の安定性を生成することを表している。
【0045】
ラインプロット410は、9つの高調波のうちの1つの挙動を表している。ラインプロット410は、適切に調整されていない、又は、チューニングされていない高調波に対する位相角の増加を示す傾斜を含む。傾斜は、調整済みのキャンセル信号が9つの表示された高調波周波数のうちの1つで低温冷却装置振動レベルと建設的に干渉することを表している。傾斜したラインによって表された線形増加は、調整済みのキャンセル信号の範囲内で非最適位相値に起因した間違った位相整列によって生じる。
【0046】
本開示の様々な実施形態は、AFF除振プロセスの実行中に情報を獲得し、MPDOが低温冷却装置の応答に基づいてAFFコントローラ27〜28から送信された(調整済みのキャンセル信号などの)キャンセル信号に合わせて調整される必要があるか否かを判定するAPCモジュール37〜38を含む。経時的にキャンセル信号の大きさを監視することにより、APCモジュール37〜38は、冷却装置に送信されているキャンセル信号が低温冷却装置振動レベルと破壊的に(好ましく)干渉するか、又は、建設的に(好ましくなく)干渉するかについて判定を行う。位相キャンセルが経時的にどのように変化するかを監視することにより、APCモジュール37〜38は、キャンセル信号が実際の振動レベルより進んでいるか、又は、遅れているかについて判定を行う。この情報に基づいて、APCモジュール37〜38は、振動を実質的にキャンセルするために、MPDO値への調整がMPDO値をAFFアルゴリズムのため必要とされる所要範囲の中に訂正するため必要とされるか否かについて判定を行う。APCモジュール37〜38は、計算されたキャンセル信号の位相角の変化を監視することに基づいて(即ち、同じものを測定するために種々の入力を使用して)MPDO値を判定することができる。
【0047】
図5及び
図6Aは、本開示によるMPDO値を判定する反復のフェーザ表現500、600の実施例を例示して説明する。同じ単一高調波周波数が
図5及び
図6Aに適用される。フェーザ表現500、600は、低温冷却装置アクティブ除振プロセスのためのAPCの一部分として、MPDO値を判定するN回の反復のうちの1回目及び2回目に対応する。フェーザ表現500、600は、複素平面{実部、虚部}にプロットされる。フェーザ表現500、600の大きさは、ベクトル間のフェーザ関係を例示して説明するために正しい縮尺で表されていない。
図5の軸は、
図6Aの軸と同じ縮尺で表されていない。
図5及び
図6Aに表された実施例では、各ベクトルの大きさは、各反復中に増加する。
【0048】
各フェーザ表現500、600は、非測定振動力、キャンセル力、及び合成力の各々に対する振幅及び位相角を含んで、データの振動の1サンプルを(単一周波数に対して)表現する。振動データの1サンプルは、いくつかの周波数に対して、非測定振動力、キャンセル力、及び合成力に対する振幅及び位相角を含むことがあるが、
図5及び
図6Aのフェーザ表現500、600は、1つの周波数(単一高調波周波数)だけを例示して説明する。フェーザ表現500、600は、非測定力、キャンセル力、及び合成力に対応する正弦波形の座標点をプロットする。以下は、単一高調波周波数に対するMPDO値を判定する説明であるが、類似の説明が高調波周波数の各々に対するMPDO値を判定する場合にも当てはまることが分かる。
【0049】
図5は、MPDO値を判定する1回目の反復のフェーザ表現500を例示して説明する。時点t
0より前に、冷却装置11は、動作を開始し、ロードセル31〜32は、始動時振動力ΔF(t
0)(全反力と呼ばれることもある)を測定し、この力は、コントローラ27〜28にフィードバックされた(
図1Bにおける波形115などの)感知振動信号33〜34に変換される。時点t
0より前に、AFFコントローラ27〜28は、キャンセル信号を送信しない(又は時点t
0までの波形105は、零振幅を有し、高調波を含んでいない)。始動時非測定振動力ΔF(t
0)は、振動キャンセル調整量を含まないモータ駆動信号を含む(零値キャンセル信号を含むか、又は、キャンセル信号を含んでいない)初期コマンド信号によって生成される。始動時非測定振動力ΔF(t
0)は、冷却装置11の内部の非線形相互作用、ピストン17、21、23、25の単一周波数正弦波運動、及びモータ18、22、24、26の直線運動によって生成された振動力を含む。
【0050】
非測定力ベクトル505は、単一高調波周波数に対する始動時非測定振動力ΔF(t
0)のフェーザ表現であり、θ
n−1は、始動時被測定力の位相角である。位相角に対する添字は、それぞれの反復の序数を表現する小文字「n」を含む。この序数は、1回目の反復に対してn=1であり、2回目の反復に対してn=2であり、以下同様に続く。しかしながら、2回目の反復は、1回目の反復を基準にして引き出されるので、nは、
図5及び
図6Aにおいて同じ値を有する。
【0051】
AFFコントローラ27〜28は、経時的にロードセル31〜32によって感知された振動力を監視し、第1次高調波基本周波数に対する始動時被測定振動力ΔF(t
0)を実質的にキャンセルするためにキャンセル力を計算する。例えば、APCモジュール37〜38を使用しない場合、AFFコントローラ27〜28は、全反力がΔF(t)=ΔF
hであるように基本駆動周波数振動力ΔF
fをバランスさせる、又は、零まで低下させるために、計算されたキャンセル力に対応するモータ駆動コマンド信号35〜36の振幅α及び位相を調整する。即ち、時点t
3で、AFFコントローラ27〜28は、(
図1Bにおける波形120などの)調整済みのキャンセル信号を選択されたモータ(群)18、22、24、26に送信する。
【0052】
キャンセル力ベクトル510は、調整済みのキャンセル信号が単一高調波周波数に対してAFFシステム20に印加されたときのキャンセル信号のフェーザ表現である。キャンセル力の位相角ψ
nは、被測定力ベクトル505と相対的に測定される。位相角の添字は、この場合もそれぞれの反復の序数を表現する小文字「n」を含む。ロードセル31〜32は、合成全反力ΔF(t
3)を測定し、この合成全反力は、コントローラ27〜28のAPCモジュール37〜38にフィードバックされる(
図1Bにおける波形130などの)被感知振動信号33〜34に変換される。合成力ΔF(t
3)は、始動時被測定振動力ΔF(t
0)と実際のキャンセル力との組み合わせである。説明の簡略化のため、実際のキャンセル力は、計算されたキャンセル力に等しいと仮定されるであろう。
【0053】
合成力ベクトル515は、単一高調波周波数に対する合成力ΔF(t
3)のフェーザ表現であり、θ
nは、合成力の位相角である。合成力ベクトル515は、被測定力ベクトル505とキャンセル力ベクトル510とのベクトル和である。ベクトル和は、始動時被測定力ΔF(t
0)の正弦波とキャンセル力とが組み合わされたときに、ロードセル31〜32が冷却装置11の内部で、
図1Bの波形130などの異なる正弦波運動を感知することを表現する。
【0054】
式(1)〜(3)は、キャンセル力ベクトル510の位相角φ
nがAFF利得(G
AFF)、及び、被測定ベクトル506と合成力ベクトル515との間の位相角Δθ
nの関数(即ち、φ
n(Δθ
n,G
AFF)であることを表す。三角法及び幾何学と以下の関係とを使用して、被測定力ベクトル505と合成力ベクトル515との間の位相角差Δθ
nは、キャンセル力ベクトル510の位相角φ
nとG
AFFとの関数であることが証明され得る。
【0055】
|キャンセル力|=G
AFF×|被測定力|
|キャンセル力|/|被測定力|=G
AFF (1)
但し、0≦G
AFF≦1である。
【0056】
Δθ
n=θ
n−θ
n−1 (2)
180°=Δθ
n+φ
n+cot(|キャンセル力|/|被測定力|)
=Δθ
n+φ
n+cot(G
AFF) (3)
APCモジュール37〜38は、Δθの測定値に基づいてAFF MPDOを調整することによりキャンセル力の位相角を零に等しくする(φ
n=0)ために制御する。APCモジュール37〜38は、AFFシステム20への完全なソリューションに向かってAFF MPDOを反復的に収束させ、この完全なソリューションは、φ
n=0のときに、つまり、ロードセル31〜32が零振動力を感知するように、即ち、505と510とのベクトル和が零であるように、キャンセル力ベクトル510が被測定力ベクトル505に均等に相反するときに生じる。即ち、AFF MPDOは、φ
nを制御し、APCモジュール37〜38は、φ
nを零に駆動し、かつ、Δθを零に駆動するためにAFF MPDOを反復的に調整する。
【0057】
φ
n=伝達関数位相遅延+AFF MPDO (4)
ここで、式(5)は、φ
n=0のときに生じる。
【0058】
伝達関数位相遅延=−AFF MPDO (5)
G
AFFは、コントローラ27〜28によって、0から1までの値として定められた定数である。ある実施形態では、ユーザは、G
AFFの値を選択し、コントローラ27〜28は、ユーザが選択した値を受け取る。ある実施形態では、一旦定義又は選択すると、G
AFF値は、APCアルゴリズム又はAFFアルゴリズムによって変更されない。G
AFFの値を設定するために、コントローラ27〜28は、単一高調波周波数に対する被測定振動力ΔF(t)の大きさ及び位相角を判定する。G
AFFに対する零値に対応するキャンセル力はない(無限の反復)。G
AFFに対する1つの値は、1回の反復の範囲内で、単一高調波周波数に対する被測定振動力ΔF(t)を完全にキャンセルするキャンセル力に対応する。コントローラ27〜28は、公称反復回数の範囲内で、単一高調波周波数に対する被測定振動力ΔF(t)を実質的にキャンセルするようにキャンセル力を収束させるキャンセル力に対応するG
AFFに対する値を選択することによって、AFFシステム20が伝達関数の変化に耐えることを可能にする。例えば、コントローラ27〜28は、非常に多数の反復を防止するために十分に小さく、かつ、リミットサイクル(キャンセル力のオーバーシュートとアンダーシュートとの間で行ったり来たりすること)を防止するために十分に大きい値の範囲である0.1から0.3までの範囲から選択された値をG
AFFに設定することができる。
図8は、G
AFF値に、複数の高調波周波数に対する被測定振動力ΔF(t)の大きさを零値漸近線に向かって徐々に(反復毎に)低下させること(完全なソリューション)を表す。
【0059】
図6Aは、AFF MPDOを判定する2回目の反復のフェーザ表現600を例示して説明する。1回目の反復の合成力ベクトル515は、2回目の反復の被測定力ベクトル605として改称され、使用される。即ち、前(n=1)の反復の最後に現れる合成全反力ΔF(t
3)の測定値は、現在(n=2)の反復の最初に現れる被測定振動力ΔF(t
3)の測定値と同じである。
【0060】
APCモジュール37〜38は、φ
nが零に収束し、πラジアンに収束しないことを保証するために反復毎に被測定力ベクトル505の大きさ(|被測定力|)を監視することにより反復毎に象限チェック機能を行う。例えば、反復nに対する被測定力ベクトル905の大きさ(|被測定力|
n)が反復n+1に対する被測定ベクトル605の大きさ(|被測定力|
n+1)未満である場合、APCモジュール37〜38は、πラジアンを反復n+1に対するAFF MPDOに加算する。πラジアン以外の値が収束の時間を最適化するために選ばれることもあり得る。
【0061】
反復回数が1より大きい場合(n>1)、AFFコントローラ27〜28は、前の全ての反復からのキャンセル力ベクトルに対応する信号を含む(
図1Bにおける波形120などの)調整済みのキャンセル信号を送信する。APCモジュール37〜38は、AFFアルゴリズムキャンセル力ベクトル610がΔθ
n+1<Δθ
n及びφ
n+1<φ
nと|キャンセル力|
n<|キャンセル力|
n+1とを生じるように、AFF MPDOを計算する。
【0062】
ロードセル31〜32は、調整済みのモータ駆動信号及び(ベクトル610のキャンセル力を生成するように構成された)キャンセル信号を受け取るモータの直線運動から得られた冷却装置11の内部の正弦波運動の(合成力ベクトル615によって表現された)力を感知し測定する。2回目の反復の合成力ベクトル615は、3回目の反復の被測定力ベクトルと同じである。
図6Bは、
図5及び
図6Aの2つのフェーザ表現の組み合わされたフェーザ表現を例示して説明する。図示されるように、1回目の反復に対する被測定力ベクトル505と(反復2として表された)n回目の反復に対する合成力ベクトル615との間のベクトル差は、初期キャンセルベクトル(例えば、1回目の反復より前の零キャンセル)まで遡る前のキャンセルベクトルのベクトル和650に等しい。図示された実施例では、キャンセルベクトル和650は、キャンセル力ベクトル510にキャンセル力ベクトル610を加えたベクトル和に等しい。換言すれば、調整済みのキャンセル信号120は、キャンセルベクトル和650、即ち、初期キャンセルベクトルまで遡る前のキャンセルベクトルの合計によってキャンセル力を定めさせる。
【0063】
図7は、本開示によるAPCモジュール37〜38の制御図の実施例を例示して説明する。APCモジュール37〜38は、指定された設定点710と被測定位相角差Δθ入力715との間の差を判定するエラーコンパレータ705を含む。エラーコンパレータ705は、AFFシステム20に適合させるように設定された利得P倍で差を増幅する。象限チェック処理ブロック720は、象限チェック機能を行う。例えば、象限チェック処理ブロック720は、|被測定力|
n≦|被測定力|
n+1である場合、πラジアン、即ち、180°を出力する。積分利得(I)増幅器725は、これの入力を積分利得倍に増幅し、バッファ730は、エラーコンパレータ出力735(−Δθ)を受信する。総和ブロック740は、象限チェック処理ブロック720、増幅器725、及びバッファ730からの出力を加算する。AFF MPDO 745は、総和ブロック740からの出力である。AFF MPDO 4745は、式(6)に表されるように表現され得る。
【0064】
AFF MPDO=p×{−Δθ+I∫(−Δθ)}+象限チェック (6)
図8は、本開示によるAPCモジュール37〜38を使用するAFF動作中に時間と対比した振動大きさのシミュレーションの実施例を例示して説明する。AFFシステム20は、86°伝達関数位相遅延を含む
図8に表示されたグラフィカル表現800を生成するためにシミュレーションされる。グラフィカル表現800は、データの100個のサンプルに対する結果を提供する。グラフィカル表現800を生成するために、周波数と対比した振動高調波の大きさの合計で少なくとも100回の反復のグラフィカル表現がグラフィカル表現200におけるプロットと同様にプロットされ得る。実施例として、データの単一のサンプルは、1秒の持続期間に亘って測定されたデータを含むこと、又は、1秒毎に測定された瞬時データを含むことがあり得る。
図8における時間ドメインは、0秒(時点t
0)から始まる100秒に及ぶ。データは、表示された時間間隔の間、合計で100サンプルに亘って、毎秒1サンプルずつサンプリングされる。表示された100秒間に、調整済みのキャンセル信号が複数の高調波周波数の各々で振動の大きさを減少させるために1つ以上のモータに印加される。本開示は、1秒毎に測定されたデータのサンプルについて記載するが、他の時間間隔が本開示の範囲から逸脱することなく使用されることがあり得る。
【0065】
グラフィカル表現800は、基本周波数の9つの高調波、具体的には、第1次から第9次高調波に対するシミュレーション振動力大きさを表示する。各ラインプロットは、第1次から第9次高調波の各々を表現する。ラインプロットの全部を含むグループ805は、あらゆる高調波周波数で振動力ΔFの低下を表す振幅の減衰を示す。振幅減衰は、調整済みのキャンセル信号が9つの表示された高調波周波数の全部で低温冷却装置振動と破壊的に干渉することを表している。
【0066】
ラインプロット810は、9つの高調波のうち、伝達関数位相遅延が86度である1つの高調波の振動力大きさ挙動を表している。ラインプロット815は、伝達関数位相遅延が114度である9つの高調波のうちの別の高調波の振動力大きさ挙動を表している。このグラフィカル表現800によって表されているのは、APCモジュール37〜38は、APCモジュール37〜38が使用されなかった場合に不安定になっていたことであろう伝達関数に対する振動レベルを低下させることである。
【0067】
図9は、本開示によるAFF動作中に時間と対比した振動高調波の振動位相角のシミュレーションの実施例を例示して説明する。グラフィカル表現900は、
図8に表されるように通り同じAFF動作からの結果を提供する。
図9の時間ドメインは、
図8の時間ドメインと同じである。グラフィカル表現900は、基本周波数の9つの高調波、具体的には、第1次から第9次高調波に対する振動力位相角を表示する。各ラインプロットは、9つの高調波の各々を表現する。表されたラインプロットは、最初から最後まで一定の位相角値を表す平坦なラインを示す。一定の位相角値は、調整済みのキャンセル信号が9つの高調波に対して位相角の安定性を生成することを表している。
【0068】
ラインプロット910の位相角値は、ラインプロット810の振動大きさの振幅に対応する。即ち、ラインプロット910は、9つの高調波のうち、伝達関数位相遅延が86度である1つの高調波の位相角挙動を表している。ラインプロット915の位相角値は、ラインプロット815の振動大きさの振幅に対応する。ラインプロット915は、9つの高調波のうち、伝達関数位相遅延が114度である別の高調波の位相角挙動を表している。このグラフィカル表現900によって表されているのは、APCモジュール37〜38は、APCモジュール37〜38が使用されなかった場合に経時的に一定であったことであろう伝達関数に対するΔθを経時的に減少させることである。
【0069】
図10は、本開示によるAPCモジュール37〜38を使用して時間と対比したMPDO値の実施例を例示して説明する。グラフィカル表現1000は、
図8に表された動作と同じAFF動作からの結果を提供する。
図10の時間ドメインは、
図8の時間ドメインと同じである。ラインプロット1010のMPDO値は、ラインプロット810の振動大きさの振幅、及び、ラインプロット910の位相角値に対応する。即ち、ラインプロット1010は、9つの高調波のうち、伝達関数位相遅延が86度である1つの高調波のMPDO値挙動を表している。MPDO値の中にスパイクが存在しないことは、象限チェックモジュール出力が最初から最後まで零であることを表している。漸近線(完全なソリューション)へのラインプロット1010の緩やかな減衰は、複数回の反復がMPDO値をおよそ1.7ラジアンの値に収束させることを示す。
【0070】
ラインプロット1015のAFF MPDO値は、ラインプロット815の振動大きさの振幅、及び、ラインプロット915の位相角値に対応する。ラインプロット1015は、9つの高調波のうち、伝達関数位相遅延が114度である別の高調波のAFF MPDO挙動を表している。AFF MPDO値の中のスパイクは、象限チェックモジュール出力が最初の2回の反復の間の比較に対応するπであることを表している。即ち、φ
n値は、位相φ
n値の正/負の符号を逆転することによって位相φ
n値の象限を変更するために1回目の反復に対して180°反転させられる。180°反転は、位相φ
n値の象限を変更するために使用される角度の実施例であり、その他の角度が本開示の範囲から逸脱することなく使用され得る。
【0071】
ラインプロット1020のMPDO値は、
図8から
図19にプロットされた9つの高調波のうち残りの7個の高調波(ラインプロット810、910又はラインプロット815、915に対応しない7つの高調波)の振幅大きさの振幅、及び、位相角値に対応する。グラフィカル表現1000によって表されているのは、APCモジュール37〜38は、APCモジュール37〜38が使用されなかった場合に不安定になったことであろうパラメータに対して安定であるAFF MPDOに対するソリューションに収束することである。
【0072】
図11は、本開示による低温冷却装置アクティブ除振プロセスの適応位相制御の方法1100の実施例を例示して説明する。
図11に表された方法1100の実施形態は、例示して説明することだけを目的とする。他の実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく使用されることがあり得る。方法1100は、APCモジュール37〜38、若しくは、APCモジュール37〜38を含むAFFコントローラ27〜28によって、又は、他の適当なコンポーネント(群)によって実施され得る。方法1100は、AFFシステム20又は他のシステムの伝達関数位相遅延を測定するために使用され得る。
【0073】
図11における各ステップは、着目している各周波数値に対して実行され得る。着目している周波数値は、基本周波数と、基本周波数の複数の高調波とを含むことがあり得る。例えば、基本周波数の9つの高調波が着目している9つの周波数値である場合、9つの被測定振動力ベクトル、9つのキャンセル力ベクトル、及び9つの合成力ベクトルが反復毎に判定され得る。
【0074】
ブロック1105では、APCモジュール37〜38は、例えば、冷却装置11などのため始動時被測定振動力ΔF(t
0)の大きさ及び位相角を測定する。始動時被測定振動力ΔF(t
0)は、振動キャンセル調整を含まない(
図1Bにおける波形105などの)初期コマンド信号によって生成され得る。ブロック1110では、APCモジュール37〜38は、始動時被測定振動力ΔF(t
0)を実質的にキャンセルするために必要とされるキャンセル力の大きさ及び位相角を計算する。例えば、APCモジュール37〜38は、1回の反復において第1次高調波基本周波数を実質的にキャンセルするためにキャンセル力ベクトルのフェーザ表現を計算する。APCモジュール37〜38を使用することなしに、AFFコントローラ27〜28は、基本駆動周波数振動力ΔF
fをバランスさせる、又は、零に減少させるために計算されたキャンセル力に対応するモータ駆動コマンド信号35〜36の振幅αを調整する。ブロック1120では、コントローラ27〜28は、第1のコマンド信号を少なくとも1つの選択されたモータに送信する。第1のキャンセル信号は、1回目の反復のキャンセル力ベクトルに対応する。例えば、第1のキャンセル信号は、基本駆動周波数振動力ΔF
fを実質的に零までキャンセルする。本開示のある実施形態では、制御システム20は、収束に到達したことをAPCモジュールに指示し、反復しないために十分に小さい収束限界値として零を定義して構成されている。例えば、零の定義は、実質的に零値であることがあり得る。APCモジュール37〜38は、ブロック1105の被測定振動力ベクトルを基準にしてキャンセル力ベクトルの位相角φ
nを判定する。
【0075】
ブロック1125では、APCモジュール37〜38は、AFFモジュールから合成振動力ΔF(t
3)の大きさ及び位相角の情報を受信する。例えば、APCモジュール37〜38は、AFFシステム20がブロック1120において送信された第1のキャンセル信号に応答して生成する合成振動力のフェーザ表現を判定する。APCモジュール37〜38は、ブロック1105の被測定振動力の位相角と合成振動力の位相角との間の差(Δθ)を判定する。ブロック1130では、APCモジュール37〜38は、第1のキャンセル信号がΔθを完全なソリューションに収束させることにより合成振動力を実質的にキャンセルさせたか否かを判定する。Δθ=0である場合、ブロック1150において、実質的に完全なソリューションが達成され、コントローラ27〜28は、第1のキャンセル信号を送信し続ける。Δθ≠0である場合、コントローラ27〜28は、ブロック1135へ進む。
【0076】
このプロセスは、測定済みの伝達関数(Δθ)を
図7に引き渡し、
図7では、象限チェックが行われ、更新済みのAFF MPDOが計算される。このAFF MPDOは、その後、新しいキャンセル力をこの新しい情報(即ち、
図7の象限チェック済み、計算済み、更新済みのAFF MPDO)に基づいて適用するAFFモジュールに送られる。その後、このプロセスは反復する。ブロック1135では、APCモジュール37〜38は、別の反復を始める。APCモジュール37〜38は、前の反復のブロック1125の合成力ベクトルが(2回目の反復の被測定力などの)現在の反復の被測定力ベクトルであるか否かを判定する。具体的には、APCモジュール37〜38は、(ブロック1120の1回目の反復のキャンセル信号などの)前の反復のコマンド信号に関連付けられた被測定振動力を実質的にキャンセルするために必要とされたキャンセル力の大きさ及び位相角を計算する。ブロック1140では、APCモジュール37〜38は、ブロック1135の現在の反復のキャンセル力ベクトルの位相角とブロック1110の前の反復のキャンセル力ベクトルの位相角とを比較することにより象限チェックを行う。APCモジュール37〜38は、比較に基づいて0°又は180°をMPDO値に加算する。ブロック1145では、AFFコントローラ27〜28は、G
AFF、ブロック1125の被測定力ベクトルの大きさ、及び、APCモジュールによって生成されたMPDO値を使用して、MPDO値を含んでいる第2のキャンセル信号を選択されたモータ(群)に送信する。APCモジュール37〜38は、式(6)を使用して現在の反復のMPDO値を生成することができる。即ち、APCモジュール37〜38は、ブロック1140の象限チェック値を使用してMPDO値を計算することができる。方法1100は、必要に応じて、(3回目の反復などの)次の反復に対する合成力ベクトルでもある(2回目の反復などの)現在の反復に対する合成力ベクトルを生成するためにブロック1145の後にブロック1125に戻る。
【0077】
図12は、本開示による制御システムにおいて適応位相制御(APC)を使用して機械的位相遅延オフセット(MPDO)値を判定する方法1200の実施例を例示して説明する。
図2に表された方法1200の実施形態は、例示して説明することだけを目的とする。他の実施形態が本開示の範囲から逸脱することなく使用されることがあり得る。方法1200は、APCアルゴリズムを実施するように構成されたAPCモジュール、若しくは、システムのコントローラによって、又は、他の適当なコンポーネント(群)によって実施され得る。方法1200は、制御されたシステムの伝達関数を測定し、システムに入力された制御信号とシステムから受信された出力信号との間の位相角差を低減するために使用され得る。
【0078】
ブロック1205では、システムのコントローラは、制御信号ベクトルの大きさ及び位相角を判定する。制御信号ベクトルは、システムに入力された制御信号を表現する。制御信号は、少なくとも大きさ、位相角、及び周波数のそれぞれを有する電気信号になり得る。
【0079】
ブロック1210では、システムのコントローラから制御信号を取得することに応答して、システムは、応答を生成する。システムの応答は、センサ又はトランスデューサ(例えば、力トランスデューサ)によって測定可能である。ある実施形態では、システムは、システムのコントローラがシステムの一部分である場合などに、システム自体で制御信号を生成することにより制御信号を取得する。ある実施形態では、制御システムは、システムが外部コントローラによって制御される場合などに、制御信号を受信することにより制御信号を取得する。
【0080】
ブロック1215では、システムのコントローラは、ブロック1205の制御信号とブロック1210の応答との間の関係の伝達関数を測定する。ある実施形態では、伝達関数を測定することは、システムから出力信号を受信すること(ブロック1220)と、受信された出力信号の大きさ及び位相角を測定すること(ブロック1225)と、受信された出力信号を表現する出力信号ベクトルを判定すること(ブロック1230)と、出力信号ベクトルの位相角と制御信号ベクトルの位相角との間の第1の位相角差を計算すること(ブロック1235)とを含む。
【0081】
ブロック1220では、システムのコントローラは、センサから、制御されたシステムからの応答を示す少なくとも1つの出力信号を受信する。センサは、制御されたシステムの応答を感知し、応答の指標を生成する。センサは、システムの一部分となること、又は、システムの一部に結合されることがあり得る。センサは、複数の出力信号をシステムのコントローラに供給するいくつかのセンサを含むことがあり得る。受信された出力信号の各々は、単一周波数を有する。例えば、複数の出力信号は、基本周波数の様々な高調波周波数を含むことがあり得る。ある実施形態では、基本周波数は、制御信号の中に含まれている。
【0082】
ブロック1225では、システムのコントローラによって受信された複数の出力信号のうちの少なくとも1つに対して、方法1200は、受信された出力信号の大きさ及び位相角を測定することを含む。
【0083】
ブロック1230では、システムのコントローラによって受信された複数の出力信号のうちの少なくとも1つに対して、方法1200は、受信された出力信号の大きさ及び位相角によって定められた(即ち、ブロック1225において測定された)出力信号ベクトルを判定することを含む。
【0084】
ブロック1235では、システムのコントローラによって受信された複数の出力信号のうちの少なくとも1つに対して、方法1200は、出力信号ベクトルの位相角と制御信号ベクトルの位相角との間の第1の位相角差を計算することを含む。
【0085】
ブロック1240では、第1の位相角差が実質的に零に等しくないと判定したことに応答して、システムのコントローラは、第1の位相角差を使用してMPDOを計算し(ブロック1245)、調整済みの制御信号を生成する(ブロック1250)。ある実施形態では、第1の位相角差が実質的に零に等しくないと判定することは、第1の位相角差を収束限界値と比較することを含む。MPDOは、システムの制御信号(例えば、又は入力信号)の位相角とシステムの出力信号の位相角との間の関係をシステムの伝達関数に向けて収束させる。
【0086】
ブロック1245では、システムのコントローラは、MPDOを制御信号に加算することにより調整済みの制御信号を生成する。
【0087】
続いて、方法1200の次の反復では、システムは、システムのコントローラから調整済みの制御信号を取得すること(即ち、生成すること又は受信すること)に応答する(ブロック1210の次の反復)。システムのコントローラは、調整済みの制御信号への応答の大きさ及び位相によって定められた第2の出力信号ベクトルを判定する(ブロック1230の次の反復)。システムのコントローラは、第1の出力信号ベクトルの位相角と第2の出力信号ベクトルの位相角との間の位相角差を計算することがあり得る。即ち、この第2の位相角差は、第1の出力信号ベクトルの位相角と、調整済みの制御信号を取得することに対する制御システムの後続の応答を示すその後に受信された出力信号の位相角との間の差である。その結果、第1の位相角差は、第2の位相角差より大きい。
【0088】
変更、追加、又は省略は、発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されたシステム、装置及び方法になされることがある。システム及び装置のコンポーネントは、統合されること、又は、分離されることがある。更に、システム及び装置の動作は、より多数の、より少数の、又は他のコンポーネントによって行われることがある。方法は、より多数の、より少数の、又は他のステップを含むことがある。付加的に、ステップは、何らかの適当な順序で行われることがある。本文書において使用されるように、「各々」は、集合の中の各メンバー、又は、集合の部分集合の中の各メンバーのことを指す。
【0089】
特許庁と、本出願に関して発行されたあらゆる特許のあらゆる読者とが願書に添付された特許請求の範囲を解釈するのに役立つように、出願人は、請求項又は請求項の要素がいずれも、文言「する手段(means for)」又は「するステップ(step for)」が特定の請求項において明示的に使用されない限り、本願の出願日に存在しているので、出願人が米国特許法第112条第7パラグラフを行使するつもりはないことを指摘したい。