特許第6395943号(P6395943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395943O−グリカンシアリル化組換え糖タンパク質及びそれを産生するための細胞株
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395943
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】O−グリカンシアリル化組換え糖タンパク質及びそれを産生するための細胞株
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20180913BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20180913BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20180913BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20180913BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20180913BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20180913BHJP
   C07K 14/475 20060101ALN20180913BHJP
   C07K 14/575 20060101ALN20180913BHJP
   C07K 14/60 20060101ALN20180913BHJP
   C07K 14/755 20060101ALN20180913BHJP
   C07K 14/745 20060101ALN20180913BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20180913BHJP
   C07K 14/81 20060101ALN20180913BHJP
   C07K 14/505 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
   C12N5/10ZNA
   C12N9/10
   C12P21/02 C
   C12P21/02 H
   !C12N5/071
   !C12N15/85 Z
   !C12P21/08
   !C07K14/475
   !C07K14/575
   !C07K14/60
   !C07K14/755
   !C07K14/745
   !C07K16/00
   !C07K14/81
   !C07K14/505
【請求項の数】9
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-536883(P2017-536883)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公表番号】特表2018-500922(P2018-500922A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015002521
(87)【国際公開番号】WO2016110302
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2017年7月5日
(31)【優先権主張番号】15000016.4
(32)【優先日】2015年1月7日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517238400
【氏名又は名称】ツェヴェック ファーマシューティカルズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッシンク ジルケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルフェル イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ファウスト ニコル
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−519636(JP,A)
【文献】 BLIXT, O. et al.,J. AM. CHEM. SOC.,2002年 5月22日,Vol.124, No.20,pp.5739-5746,ISSN: 0002-7863
【文献】 SHANG, J. et al.,EUR. J. BIOCHEM.,1999年10月,Vol.265, No.2,pp.580-588,ISSN: 0014-2956
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00− 7/08
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ1(ST3Gal1)を過剰発現するよう遺伝子操作された、哺乳動物の細胞株であって、
β−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ4(ST3Gal4)を過剰発現するよう更に遺伝子操作された、哺乳動物の細胞株。
【請求項2】
β−ガラクトシドα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ1(ST6Gal1)を過剰発現するよう更に遺伝子操作された、請求項1に記載の、哺乳動物の細胞株。
【請求項3】
前記細胞株がST3Gal1及びST3Gal4をコードする内在性遺伝子並びに場合によりST6Gal1をコードする内在性遺伝子を含み、ST3Gal1及びST3Gal4並びに場合によりST6Gal1を過剰発現させるのに適した1つ又は複数の位置のゲノムに挿入された、プロモーター、増強エレメント、及び安定化エレメントからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝要素を更に有する、請求項1又は2に記載の、哺乳動物の細胞株。
【請求項4】
ST3Gal1及びST3Gal4をコードする外因性核酸並びに場合によりST6Gal1をコードする外因性核酸を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、哺乳動物の細胞株。
【請求項5】
前記哺乳動物の細胞株がヒト細胞株である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項6】
前記哺乳動物の細胞株がAGE.CR(商標)細胞、Vero細胞、MDCK細胞、BHK細胞、CHO細胞、HEK293細胞、HepG2細胞、Huh7細胞、AGE1.HN(商標)細胞、NC5T11細胞、Per.C6細胞、HMCL細胞、MM.1細胞、U266細胞、RPMI18226細胞、HKB11細胞、NM細胞、NM−F9細胞、及びCAP細胞からなる群から選択される細胞株由来である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項7】
前記哺乳動物の細胞株がアデノウイルスのE1及びpIX領域の遺伝子産物をコードする少なくとも1つの核酸を含むヒト初代羊膜細胞由来である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項8】
少なくとも80%の割合にシアリル化されたGalNAc O−グリカンを有する組換え糖タンパク質を発現させる方法であって、該組換え糖タンパク質とともにβ−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ1(ST3Gal1)及びβ−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ4(ST3Gal4)を哺乳動物の細胞において過剰発現させる工程を含む、方法。
【請求項9】
さらに、前記組換え糖タンパク質とともにβ−ガラクトシドα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ1(ST6Gal1)を前記細胞において過剰発現させる工程を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度に又は完全にシアリル化(sialylated:シアル酸化された)されたO−結合型GalNAcグリカン(GalNAc O−グリカン)、好ましくはコア1のGalNAc O−グリカンを有する組換え糖タンパク質の生成に使用することができるβ−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ1(ST3Gal1)、好ましくはヒトST3Gal1を過剰発現するよう遺伝子操作した細胞株及び各組換え糖タンパク質に関する。さらに、本発明は、組換え糖タンパク質を発現させる各方法、組換え糖タンパク質のシアリル化の割合を増加させる方法、及びGalNAc O−グリカンの微変異性(micro-heterogeneity:微小不均一性)を低減させる方法に関する。最後に、本発明は、組換え糖タンパク質を生成するための、組換え糖タンパク質のシアリル化の割合を増加させるための、及び組換え糖タンパク質のO−結合型GalNAcグリカンの微変異性を低減させるための上記の細胞株のそれぞれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用タンパク質の開発は、その臨床的重要性により、過去数年にわたってかなり加速している。しかし、治療用タンパク質の開発は、特に複合グリコシル化タンパク質において、好ましいグリコシル化パターンを有するタンパク質を得る難しさから遅れていることが多い。これは多くの場合、最適とはいえない薬理学的特性、例えば血清半減期の減少又は免疫原性の増大を導いている。
【0003】
別の欠点として、翻訳後修飾のばらつきによる治療用タンパク質、特に糖構造の不均一性がある。この不均一性により、異なる生産単位の間での生成物の品質に一貫性がなくなる恐れがある。それゆえ、治療用タンパク質の開発を進めるために、均一な翻訳後修飾を実現することが重要である。
【0004】
グリコシル化は最も一般的な翻訳後修飾である。最適な治療効果を示すために、生物製剤のほぼ全てにおいて、正確にグリコシル化することが求められる。一般に、グリコシル化は糖がタンパク質表面に共有結合することを指し、この場合、糖はアスパラギン残基に結合してN−結合型グリカン(N−グリカン)となるか、又はセリン残基若しくはトレオニン残基に結合してO−結合型グリカン(O−グリカン)となるかのいずれかとなる。O−結合型グリカンの最も一般的な基はGalNAc O−グリカンであり、このとき、セリン又はトレオニンがN−アセチル−ガラクトサミン(GalNAc)に結合し、すなわち更なる単糖に結合する。本明細書において使用される場合、「O−結合型グリカン」又は「O−グリカン」という用語は常に、GalNAc O−グリカンに関する。上述のように、グリコシル化パターンは、分子間でかなり多様なものとなり得るが、その結合形態は単糖の順、分岐パターン、及び長さ(微変異性)において異なり得る。さらに、グリコシル化部位により全てが完全に占められるものではない(マクロ変異性)。
【0005】
グリコシル化はタンパク質の溶解性、タンパク質分解に対する抵抗性、及び他のタンパク質又はタンパク質受容体、例えばASGPR(アシアロ糖タンパク質受容体)への結合挙動に影響を及ぼし、それゆえ血漿中の糖タンパク質の半減期に影響を及ぼす。
【0006】
約50kDaより小さいサイズのタンパク質において、クリアランスは主に腎クリアランスを介して行われる。タンパク質のサイズ以外に、タンパク質表面の電荷も腎クリアランスに影響を及ぼし、腎臓内の電荷の高いタンパク質の濾過は低下する。
【0007】
大きいサイズのタンパク質において、クリアランスは主に、肝臓における特異的及び/又は非特異的な肝臓による取込みによって行われる。特異的な取込みのメディエーターの例としては、非シアリル化N−結合型糖タンパク質と末端ガラクトースとを特異的に結合させるASGPRがある。この受容体の作用により、隣接する炭水化物であるガラクトースを包含する末端シアル酸を有する糖タンパク質は、N−結合型グリカンに末端ガラクトース残基を有する非シアリル化対応物に比べ半減期が最大100倍増加している。他の受容体はマンノース、N−アセチル−グルコサミン、又はフコースに特異的に結合し、系からこれらの末端糖を含む糖タンパク質を除去する。
【0008】
この観点から、末端シアリル化を高い割合で含む天然のN−グリコシル化パターンは、治療用タンパク質の薬物動態特性を決定することから、治療用タンパク質として重要である。さらに、糖タンパク質上で適切に結合した末端シアル酸は、糖タンパク質の免疫原性を減少させる。
【0009】
ほぼ天然の糖構造及び高い割合のシアリル化を得るための最初の方法は、哺乳動物様の糖構造をタンパク質に結合することができる細胞株、例えばCHO細胞(チャイニーズハムスターの卵巣細胞)内において組換えタンパク質を産生することである。しかし、CHO細胞はシアル酸の2,6−結合を触媒するために必要な酵素がないため、2,3−結合を触媒することしかできない。さらに、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸;NeuAc)に加え、CHO細胞ではまた、N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc)をヒトでは合成されない糖であるグリカンに結合するため、ヒトに注射したときに免疫原性となる。それゆえ、より良い方法はヒト細胞様CAP細胞(ヒト羊膜細胞由来)又はHEK293細胞(ヒト胚腎細胞由来)から得られた細胞株から治療用タンパク質を産生する。しかし、発酵中の哺乳動物の細胞株から分泌される治療用タンパク質のシアリル化は多くの場合不完全である。
【0010】
タンパク質の薬物動態プロファイルにおいてシアリル化が重要であることから、シアリル化の割合を増加させるための多大な努力がなされてきた。N−結合型グリコシル化の完全なシアリル化における有益な作用は十分に理解されているが、O−グリコシル化の作用については比較的ほとんど知られていない。それゆえ、これまでシアリル化の改良に対する細胞工学での試みは全て、N−結合型糖構造に向けられている。
【0011】
O−結合型GalNAcグリカンは常に、セリン又はトレオニンに結合したα−結合型N−アセチルガラクトサミン残基を有する。GalNAcはガラクトース、GlcNAc、フコース、又はシアル酸等の残基を用いて伸長することができる。O−結合型GalNAcグリコシル化において、4つの主要なコア構造、コア1(GalGalNAc)、コア2(GalGlcNAcGalNAc)、コア3(GlcNAcGalNAc)、及びコア4(GlcNAc2GalNAc)を識別することができる(図1)。末端は、例えばリン酸塩、硫酸塩、カルボン酸、又はシアル酸を用いて更に修飾されることもある。O−結合型GalNAcグリカンは、完全に折り畳まれたタンパク質の構造を維持する際に、プロテアーゼを安定させる役割を果たす。図2はコア1及びコア2のGalNAc O−グリカンの生合成を示す。
【0012】
治療用タンパク質の半減期の増加に対するN−結合型グリカンの末端シアル酸の劇的な正の影響は十分に確立されたものであるが、O−結合型GalNAcグリカンの末端シアル酸の考えられる作用及びO−結合型構造の正確な状態(appearance)については十分に理解されていない。
【0013】
ヒトインスリン様成長因子結合タンパク質−6(IGFBP6)は、5つのO−結合型グリコシル化部位を有し、脱グリコシル化されたものに比べO−グリコシル化形態における血液からのクリアランスは低いことから、O−結合型グリカンの全般的な関与は示されるが、シアル酸の役割は依然として不明瞭なままである。B細胞活性化因子受容体3(BR3)−Fcは、多数のO−結合型グリコシル化部位を有し、シアリル化レベルは製造過程において変化する。異なる形態を分離することで、BR3−Fcの脱シアリル化されたO−結合型グリカンにおいて顕在化するガラクトースが、肝臓の取込み及び分解による、特に非実質性細胞を介在したクリアランスによる急速なクリアランスと関連があることを示すことができる。興味深いことに、シアリル化Galの増加と関連があるクリアランス率の低下はまた、アシアロGalNAcの増加とともに観察され、末端アシアロGalがクリアランスのシグナルである可能性が示されている。アディポネクチンは、脂肪細胞分泌型のインスリン感受性ホルモンであり、3つの推定O−結合型グリコシル化部位を有し、多量体形成に必要ではないが、シアリル化タンパク質のものに比べ、脱シアリル化タンパク質の血漿クリアランスを促進させる。これまで、糖タンパク質の組換え発現中のO−結合型GalNAcグリカンのシアリル化又は構造に影響を与える方法は記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それに応じて、本発明の基礎となる技術的課題は、高度又は完全なシアリル化GalNAc O−グリカンを有する組換え糖タンパク質及び上記タンパク質を組換えにより産生することができる細胞株を提供することである。さらに、組換え糖タンパク質を発現させる方法、組換え糖タンパク質のシアリル化の割合を増加させる方法、及びGalNAc O−結合型グリカンの微変異性を低下させる方法それぞれ、並びに組換え糖タンパク質を産生するための、組換え糖タンパク質のシアリル化の割合を増加させるための、及びGalNAc O−結合型グリカンの微変異性を低下させるための上記の細胞株の使用を提供するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の技術的課題に対する解決方法は、特許請求の範囲に特徴づけられる実施形態によって実現される。
【0016】
特に第1の態様において、本発明は、β−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ1(ST3Gal1)を過剰発現するよう遺伝子操作した、動物の細胞株、好ましくは昆虫、鳥類、又は哺乳動物の細胞株、より好ましくは哺乳動物、特にヒトの細胞株に関する。
【0017】
本明細書において使用される場合「ST3Gal1を過剰発現するよう遺伝子操作した細胞株」という用語はまた、下記の他のトランスフェラーゼにおいても、遺伝子操作時に、細胞株の個々の細胞において遺伝子操作の前よりもシアリルトランスフェラーゼ等のタンパク質が高い活性を示すことを表す。
【0018】
所与のタンパク質を過剰発現させる遺伝子操作は、特に限定されず、当該技術分野において知られている。特定の例において、例えばヒト細胞株等の細胞株はST3Gal1をコードする内在性遺伝子を含む。このような場合、細胞をプロモーター、増強エレメント、及び/又は安定化エレメントを上記の核酸を過剰発現させるのに適した位置の細胞のゲノムに挿入することにより遺伝子操作することができる。これは、TALENS、Znフィンガータンパク質、CRISPR−CAS9を用いた相同組換え、又は当該技術分野において既知の他の方法により行うことができる。したがって、好ましい実施の形態において、細胞株がST3Gal1をコードする内在性遺伝子及び場合によりST3Gal4及び/又はST6Gal1をコードする内在性遺伝子を含み、ST3Gal1及び場合によりST3Gal4及び/又はST6Gal1を過剰発現させるのに適した1つ又は複数の位置のゲノムに挿入された、プロモーター、増強エレメント、及び安定化エレメントからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝要素を更に有する。好適なプロモーター、増強エレメント、及び安定化エレメントは特に限定されず、当該技術分野において知られている。例えば、プロモーターには、構成型プロモーター、例えばCMV、EF1α、SV40、RSV、UbC、CAG、BOS、又はPGKプロモーター及び誘導型プロモーター、例えばテトラサイクリン誘導型プロモーター又は当該技術分野において既知の他の誘導型プロモーターがある。さらに、増強エレメント(エンハンサー)には、CMVエンハンサー、βグロビンエンハンサー、免疫グロブリンエンハンサー、及びPGKエンハンサーがある。さらに、安定化エレメント(クロマチンエレメント)には、マトリクス付着領域(MAR)、遺伝子座制御領域(LCR)、及び遍在的作用性クロマチンオープニングエレメント(UCOE)がある。
【0019】
代替法として、細胞がST3Gal1をコードする内在性遺伝子を含まない場合、又はさらに、細胞がST3Gal1をコードする内在性遺伝子を含む場合、細胞の遺伝子操作は、ST3Gal1をコードする核酸を細胞に導入することにより実現することができる。核酸を細胞に導入する方法は特に限定されず、当該技術分野において知られている。例えば、上記の核酸を、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、顕微注入、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターを介して、試薬ベースの方法、例えば脂質、リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、又は当該技術分野において既知の他の方法により、環状形態又は直鎖形態において細胞に導入することができる。核酸を、エピソーム系により、又は核酸のゲノムへの安定した組込みにより細胞に一時的又は安定して導入することができる。上記核酸は、1つ又は複数の発現ベクター、例えばpcDNA、pCEP、pLenti、pEntr、pDest、pEF、pEAK、pCMV、pStbl、又は当該技術分野において既知の他の発現ベクターの形態において、細胞内に存在することができる。ST3Gal1の発現は、構成型プロモーター、例えばCMV、EF1α、SV40、RSV、UbC、CAG、BOS、若しくはPGKプロモーター、内因性プロモーター、又は誘導型プロモーター、例えばテトラサイクリン誘導型プロモーター若しくは当該技術分野において既知の他の誘導型プロモーターの制御下にあってよい。さらに、ST3Gal1をコードする核酸は、1つの連続した核酸として存在することができ、又は個別の核酸として、例えば個別の発現ベクターとして存在することができる。上記核酸は、コード領域及びプロモーターに加え、好適な制限部位、Kozak配列、リボゾーム結合部位、クロマチン調節エレメント、選択カセット、エピソーム複製系、例えば当該技術分野において既知の、エプスタイン−バー核抗原及びori P又はSV40 ori及びSV40Tラージ抗原、配列内リボソーム進入部位(IRES)、スプライシングシグナル、及びポリアデニル化シグナルを含有することができる。したがって、好ましい実施の形態において、細胞株はβ−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ1(ST3Gal1)をコードする外因性核酸及び場合によりβ−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ4(ST3Gal4)及び/又はβ−ガラクトシドα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ1(ST6Gal1)をコードする外因性核酸を含む。
【0020】
細胞株のトランスフェクションに好適なST3Gal1をコードする遺伝子は特に制限されず、ST3Gal1活性を有するタンパク質、すなわちThr又はSerに結合するGal−β−1,3−GalNAc構造へのシアル酸の結合を触媒するタンパク質をコードする任意の供給源由来の任意の遺伝子を含む。好ましくは、このような遺伝子は、そのアミノ酸配列、特にC末端アクセプター結合部位のモチーフ3に、保存コンセンサス配列(/C/R)(/H/F)(/Y/F)(/D/H/Y)(HYWE配列(配列番号5)が特に好ましい)を含む、ST3Gal1タンパク質をコードするST3Gal1遺伝子から選択される。図14は触媒ドメインを含むヒトST3Gal1のアミノ酸191〜340を含む、様々な種のST3Gal1のアミノ酸配列のアライメントを示し、上記のコンセンサス配列を示す。より好ましくは、遺伝子を、ヒトST3Gal1のアミノ酸263〜321に少なくとも50%、好ましくは75%及びより好ましくは90%同一であるアミノ酸配列を含む、ST3Gal1タンパク質をコードするST3Gal1遺伝子から選択する。より好ましくは、遺伝子を、ホモ・サピエンス(Homo sapiens:ヒト)(配列番号1)、パン・トログロデュテス(Pan troglodytes:チンパンジー)(配列番号6)、マカカ・ムラッタ(Macaca mulatta:アカゲザル)(配列番号7)、サス・スクロファ(Sus scrofa:イノシシ)(配列番号8)、ラッタス・ノルベギクス(Rattus norvegicus:ドブネズミ)(配列番号9)、ムス・ムスクルス(Mus musculus:ハツカネズミ)(配列番号10)、ナンノスパラックス・ガリ(Nannospalax galili:メクラデバネズミ)(配列番号11)、モノデルフィス・ドメスティカ(Monodelphis domestica:ハイイロジネズミオポッサム)(配列番号12)、オリクトラグス・クニクルス(Oryctolagus cuniculus:アナウサギ)(配列番号13)、クリセツルス・グリセウス(Cricetulus griseus:モンゴルキヌゲネズミ)(配列番号14)、カニス・ファミリアリス(Canis familiaris:イヌ)(配列番号15)、フェリス・カツス(Felis catus:ネコ)(配列番号16)、エクウス・カバッルス(Equus caballus:ウマ)(配列番号17)、ガルス・ガルス(Gallus gallus:ニワトリ)(配列番号18)、コルムバ・リビア(Columba livia:カワラバト)(配列番号19)、アリゲーター・シネンシス(Alligator sinensis:ヨウスコウワニ)(配列番号20)、ラティメリア・カルムナエ(Latimeria chalumnae:シーラカンス)(配列番号21)、及びシオナ・インテスチナリス(Ciona intestinalis:ユウレイボヤ)(配列番号22)からなる群から選択される種由来のST3Gal1遺伝子からなる群から選択する。ここで、哺乳動物S3Gal1遺伝子、特にヒトST3Gal1遺伝子が特に好ましい。
【0021】
更に好ましい実施の形態において、細胞株を、β−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ4(ST3Gal4)、好ましくはヒトST3Gal4を過剰発現するよう更に遺伝子操作し、及び/又はβ−ガラクトシドα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ1(ST6Gal1)、好ましくはヒトST6Gal1を過剰発現するよう更に遺伝子操作する。それぞれの遺伝子操作は、上記のST3Gal1において定義された通りが好ましい。さらにST3Gal4をコードする好適な遺伝子及びST6Gal1をコードする好適な遺伝子は特に制限されず、それぞれの活性を有するタンパク質をコードする任意の供給源由来の任意の遺伝子を含む。繰り返すが、哺乳動物、特にヒト遺伝子が特に好ましい。
【0022】
本発明による細胞株は、当該技術分野において既知の細胞株、例えば哺乳動物の細胞株から得ることができる。好ましい実施の形態において、本発明の細胞株は、Muscovy Duck細胞(AGE.CR(商標))、アフリカミドリザル腎臓上皮細胞(Vero)、Madin Darbyイヌ腎臓細胞(MDCK)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト肝細胞癌の細胞株(HepG2、Huh7)、ヒト胚腎臓293(HEK293)細胞、ヒト神経前駆体細胞(AGE1.HN(商標)及びNC5T11)、ヒト胚網膜芽細胞腫(Per.C6)、骨髄腫細胞株(HMCL、MM.1、U266、RPMI8226)、CML腫瘍細胞株(NM、NM−F9)、ハイブリッドHEK293及びリンパ腫細胞(HKB11)、又はヒト羊膜細胞(CAP;欧州特許第1230354号を参照)から得ることができ、この場合CHO細胞、HEK293細胞、及びCAP細胞が好ましく、CAP細胞が特に好ましい。
【0023】
これに関して、CAP細胞がアデノウイルス、特にアデノウイルス5型(Ad5)、E1A及びE1Bの領域の遺伝子産物をコードする核酸を含む永久羊膜細胞株である。CAP細胞は、Ad5のE1A及びE1Bをコードする核酸を用いて形質転換する初代ヒト羊膜細胞由来である。
【0024】
それに応じて、好ましい実施の形態において、本発明による細胞株は、アデノウイルスのE1及びpIXの領域、好ましくはnt.505〜4079のアデノウイルス5型(Ad5)のE1及びpIXの領域をコードする少なくとも1つの核酸を含むヒト初代羊膜細胞から得ることができ、この場合E1Aはマウスホスホグリセリン酸キナーゼ(pgk)プロモーターの制御下にあり、一方、E1B及びpIXの発現は、天然のプロモーターから制御されている。E1B下流イントロン、スプライスアクセプター、及びポリAシグナルをSV40由来の対応するモチーフで置き換える。
【0025】
哺乳動物の細胞株において記載した上記の好ましい及び/又は特定の実施の形態のいずれか又は全てを互いに任意の様式において組み合わせることができる。
【0026】
更なる態様において、本発明は、少なくとも80%の割合にシアリル化されたGalNAc O−グリカンを有する組換え糖タンパク質に関する。
【0027】
本明細書において使用される場合、「組換え糖タンパク質」という用語はそれぞれの糖タンパク質が遺伝子操作した微生物又は細胞においてバイオ技術において産生されたことを示す。
【0028】
本発明による糖タンパク質は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも84%、少なくとも86%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、又は少なくとも99%の割合にシアリル化されたGalNac O−グリカンを有する。好ましくは本発明による糖タンパク質は、95%以上の割合にシアリル化されたGalNac O−グリカンを有する。これに関して、本明細書において使用される場合、「少なくともX%の割合にシアリル化されたO−グリカン」という用語は、所与の糖タンパク質製剤における全ての末端GalNac O−グリカンの単糖部分のX%がシアル酸(N−アセチルノイラミン酸;NeuAc)であることを示す。
【0029】
好ましい実施の形態において、本発明の糖タンパク質のGalNac O−グリカンの少なくとも80%、好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも84%、少なくとも86%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、又は少なくとも98%は、コア1のGalNAc O−グリカン、すなわち、
GP−Ser/Thr−O−GalNAc−Gal−
(式中、GPは糖タンパク質であり、Ser/Thr−Oは糖タンパク質のアミノ酸側鎖のセリン又はトレオニンであり、GalNAcはN−アセチルガラクトサミンであり、Galはガラクトースである(図1))のコア構造を有するGalNac O−グリカンである。
【0030】
好ましい実施の形態において、本発明による糖タンパク質は、少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、少なくとも37.5%、少なくとも40%、少なくとも42.5%、又は少なくとも45%の割合にジシアリル化(disialylated)されたコア1のGalNAc O−グリカンを有する。これに関して、本明細書において使用される場合、「少なくともX%の割合にジシアリル化されたコア1のGalNAc O−グリカン」という用語は、全てのコア1のGalNAc O−グリカンのX%が2つの末端シアル酸部分を有することを示す。これに関して、図11は、糖タンパク質のC1エステラーゼ阻害因子(C1 Inh)の種々の製剤における6つの主要なO−グリカン種の相対量を示す。
【0031】
それぞれの組換え糖タンパク質を本明細書に記載の通りに、例えば組換え糖タンパク質と合わせてβ−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ1(ST3Gal1)を過剰発現させることにより、場合により付加的にβ−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ4(ST3Gal4)及び/又はβ−ガラクトシドα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ1(ST6Gal1)を過剰発現させることにより産生することができる。好ましくは、上記の糖タンパク質を本明細書に記載の通りに本発明による細胞株において産生する。
【0032】
関連の実施の形態において、本発明の組換え糖タンパク質のGalNAc O−グリカンは、微変異性が少なく、すなわち所与の糖タンパク質製剤中のGalNAc O−グリカン構造及び組成の多様性が少ないことを特徴とする。それぞれの組換え糖タンパク質を、本明細書に記載の通りに、例えば組換え糖タンパク質とともにST3Gal1を過剰発現させることにより、場合により付加的にST3Gal4及び/又はST6Gal1を過剰発現させることにより産生することができる。好ましくは、上記の糖タンパク質を、本明細書に記載の通りに本発明による細胞株において産生する。
【0033】
本発明による特定の糖タンパク質は特に制限されないが、該糖タンパク質がGalNAc O−グリカンを有し、GalNAc O−グリカンのシアリル化のそれぞれの要件を満たすものとする。好ましくは、該糖タンパク質は、哺乳動物、より好ましくはヒトの糖タンパク質である。糖タンパク質は、成長因子、ペプチドホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、抗体フラグメント、血液凝固因子、及びプロテアーゼ阻害因子からなる群から選択することができる。好ましくは、該糖タンパク質は、肝細胞成長因子(HGF)、エリスロポエチン(EPO)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、フォンヴィレブランド因子(vWF)、及びC1エステラーゼ阻害因子(C1−阻害因子;C1 Inh)からなる群から選択される。C1 Inhが特に好ましい。
【0034】
したがって、特に好ましい実施の形態において、本発明は、少なくとも80%の割合にシアリル化されたGalNAc O−グリカンを有する、組換えC1エステラーゼ阻害因子(C1阻害因子;C1 Inh)、好ましくは組換えヒトC1 Inhに関する。組換え糖タンパク質において記載された上記の好ましい及び/又は特定の実施の形態の全ては概ね、この組換え(ヒト)C1 Inhの特定の実施の形態にも適用される。
【0035】
組換え糖タンパク質において記載された上記の好ましい及び/又は特定の実施の形態のいずれか又は全てを互いに任意の様式において組み合わせることができる。
【0036】
更なる態様において、本発明は、いずれも組換え糖タンパク質とともにβ−ガラクトシドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ1(ST3Gal1)を過剰発現させる工程を含む、少なくとも80%の割合にシアリル化されたGalNAc O−グリカンを有する組換え糖タンパク質を発現させる方法、組換え糖タンパク質のGalNAc O−グリカンのシアリル化の割合を増加させる方法、及び組換え糖タンパク質のGalNAc O−グリカンの微変異性を低下させる方法に関する。
【0037】
特定の実施の形態において、上記の方法は、
(a)本発明による細胞株を準備する工程と、
(b)上記細胞株に目的の糖タンパク質を発現させる工程と、
(c)ST3Gal1、場合によりST3Gal4及びST6Gal1からなる群から選択される1つ又は複数を目的の糖タンパク質と合わせて過剰発現させる工程と、
を含む。
【0038】
さらに、本発明の方法は、(d)目的の糖タンパク質を単離する工程を含むことができる。
【0039】
これらの態様において、本発明の組換え糖タンパク質及び本発明の細胞株において記載された定義、並びに好ましい及び/又は特定の実施の形態は全て、適宜、同様に適用される。
【0040】
特に、上記方法において作製された組換え糖タンパク質又は上記方法においてシアリル化の割合が増加する組換え糖タンパク質又は上記方法においてGalNAc O−グリカンの微変異性が低下する組換え糖タンパク質は、上記に定義の本発明の任意の糖タンパク質であり得る。さらに、本発明の方法の工程(a)に挙げられた細胞株は、上記に定義の本発明の任意の細胞株であってよい。
【0041】
本発明の細胞株のタンパク質の発現における手段は特に限定されず、当該技術分野において知られている。これに関して、上記細胞株において目的の糖タンパク質を発現させる工程(b)は、それぞれのコードする核酸を上記細胞株にトランスフェクションした後、糖タンパク質を実際に発現させることを包含する。さらに、細胞培養物から目的の糖タンパク質を単離する手段は特に制限されず、当該技術分野において知られている。
【0042】
関連の態様において、本発明は、少なくとも80%の割合にシアリル化されたGalNAc O−グリカンを有する組換え糖タンパク質を産生するための、及び/又は組換え糖タンパク質のシアリル化の割合を増加させるための、及び/又は組換え糖タンパク質のGalNAc O−グリカンの微変異性を低下させるための、本発明による細胞株の使用に関する。
【0043】
これらの態様において、本発明の組換え糖タンパク質及び本出願の細胞株において記載される定義、及び好ましい及び/又は特定の実施形態は全て、適宜、同様に適用される。
【0044】
特に、上記の使用において産生された組換え糖タンパク質又はシアリル化の割合が上記の使用において増加した組換え糖タンパク質又はGalNAc O−グリカンの微変異性が上記の使用において低下した組換え糖タンパク質は、上記に定義される本発明の任意の糖タンパク質であり得る。さらに、本発明で使用された細胞株は、上記で定義された本発明の任意の細胞株であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】主な4つのコアのGalNAc O−結合型グリコシル化構造を識別することができる図である。GalNAc O−結合型グリカンは、セリン又はトレオニンに結合したα−結合型N−アセチルガラクトサミン残基を含有する。GalNAcを、ガラクトース、GlcNAc、フコース、又はシアル酸等の残基を用いて伸長することができる。主要な4つのコア構造であるコア1(GalGalNAc)、コア2(GalGlcNAcGalNAc)、コア3(GlcNAcGalNAc)、及びコア4(GlcNAc2GalNAc)を識別することができる。これらのコア構造を、更に伸長し、分岐状にすることができる。
図2】コア1及びコア2のGalNAc O−グリカンの生合成を示す図である。生合成の第1の工程は、タンパク質骨格の特定のセリン又はトレオニン残基にGalNAcを結合させ、いわゆるTn抗原を得る。次いで、酵素のC1GalT−1がガラクトースとGalNAcとの結合を触媒するため、T抗原とも呼ばれるコア1構造の基礎が形成される。コア1は、GlcNAc β1−6結合型分岐鎖の合成を触媒するC2Gntのいずれかにおける基質として作用し、コア2構造が得られる。コア1構造をさらに、ST3Gal1によりシアリル化することができ、モノシアリル化されたGal1−3(NeuAc2−6)GalNAc又はジシアリル化されたNeuAc2−3Gal1−3(NeuAc2−6)GalNAcが得られる。
図3】ラットにおける組換えC1 Inh(CAP C1 Inh、CAP C1 Inh ST3Gal4、CAP C1 Inh ST3Gal1/ST3GAL4プールA及びプールB)又はベリナートの単回静脈内注射後のC1 Inhの血清濃度を示す図である。ラットにおいて、ベリナート(ヒト血漿由来のC1 Inh)又はCAP C1 Inh、CAP C1 Inh ST3Gal4、又はCAP C1 Inh ST3Gal1/ST3GAL4に発現する組換えC1 Inhのいずれかを注射したラットにおける薬物動態試験を行った。雌のSprague Dawleyラットにおいて、10mg/kg用量のi.v.ボーラス注射後の残留hC1 Inh量を、様々な時間点:5分、10分、15分、20分、30分、60分、2時間、4時間、6時間、及び24時間にて決定した。残留C1 Inhの割合をELISAにより検出した。各動物において、C1 Inh濃度を、5分の濃度=100%に正規化した。値を当て嵌め、注射後の時間に対してプロットした。各群(n=4、ベリナートのn=7を除く)において、代表的な動物の1例のグラフを示す。
図4】ラットにおける、組換えC1 Inh(CAP C1 Inh、CAP C1 Inh ST3Gal4、CAP C1 Inh ST3Gal1/ST3GAL4プールA及びプールB)又はベリナートの単回静脈内注射後のC1 Inhの血清半減期を示すグラフである。ラットにおいて、ベリナート(ヒト血漿由来のC1 Inh)又はCAP C1 Inh、CAP C1 Inh ST3Gal4、又はCAP C1 Inh ST3Gal1/ST3GAL4に発現する組換えC1 Inhのいずれかを注射したラットにおける薬物動態試験を行った。雌のSprague Dawleyラットにおいて、10mg/kg用量のi.v.ボーラス注射後の残留hC1 Inhを、様々な時間点:5分、10分、15分、20分、30分、60分、2時間、4時間、6時間、及び24時間にて決定した。残留C1 Inhの割合をELISAにより検出した。各動物において、C1 Inh濃度を、5分の濃度=100%に正規化した。値を当て嵌め、注射後の時間に対してプロットした。t1/2の平均値(n=4、ベリナート n=7)、エラーバー=±SDを示す。
図5】様々な組換えC1 Inh(CAP C1 Inh、CAP C1 Inh ST3Gal4、CAP C1 Inh ST3Gal1/ST3GAL4プールA及びプールB)又はベリナートのAUC値の測定を示すグラフである。様々な組換え糖最適型(glyco-optimized)C1 Inhサンプル間のバイオアベイラビリティの比較。AUCの平均値(n=4、ベリナート n=7)、エラーバー=±SDを示す。
図6】ST3Gal1及び/又はST3Gal4を共役発現する、及び共役発現しないCAP細胞株から発現したC1 InhのN−結合型グリコシル化分析及びアドオン方式(add-on)のウェスタンブロット分析を示す図である。CAP細胞に発現した精製組換えC1 Inhは、ベリナートに比べSDS PAGEではゆっくり移動している。ST3Gal1及びST3Gal4の発現は、PNGaseによりN−グリコシル化が取り外された後では、組換えC1 Inhがベリナートに向かって移動し、残存するO−結合型−グリカンの質量の減少を示している。糖改良型(glyco-improved)C1発現細胞株に発現した100ngの精製組換えC1 Inhを、500UのPNGaseF(NEB)を用いて37℃にて1時間消化させた後、4%〜12%のBis−Trisゲルにて分離した。(分子量マーカー:MagicMark(商標)XPウェスタンタンパク質標準物質)。
図7】シアリルトランスフェラーゼの存在下又は非存在下において、CAP細胞に発現した組換えC1 InhのECLレクチン免疫ブロットを示す図である。エリスリナ・クリスタ・ガリ(Erythrina crista galli:アメリカデイゴ)(ECL)レクチンは、N−結合型グリカンのβ1−4結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、ECLブロットにおけるシグナルの消失は、シアリル化された量の増加を意味する。ベリナートのN−結合型グリカンはまた、ほぼ完全にシアリル化され、ST3Gal4を過剰発現するCAP細胞由来のC1 Inhも、ほぼ完全にシアリル化されている。ST3Gal1/4を過剰発現するCAP細胞由来のC1 Inhは、アシアロN−グリカンの量がわずかに高いことを示している。比較すると、シアリルトランスフェラーゼを過剰発現しないCAP細胞から精製された非修飾型C1 Inhは、ECLブロットにおけるシグナルが強く、或る特定の量のアシアロN−グリカンを示す。ローディング対照として、同じサンプルを、ノイラミニダーゼで処理し、グリカン構造からシアル酸含量全体を除去した。(分子量マーカー:MagicMark(商標)XPウェスタンタンパク質標準物質)。
図8】シアリルトランスフェラーゼの存在下又は非存在下におけるCAP細胞に発現した組換えC1 InhのPNAレクチン免疫ブロットを示す図である。ST3Gal1の過剰発現時のCAP細胞の組換えC1 InhのO−結合型グリカンのシアリル化の量をPNAレクチン免疫ブロットで試験した。ピーナッツ凝集素(PNA)は、O−結合型グリカンのβ1−3結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、PNAレクチンブロットにおけるシグナルの低下は、O−グリカンのガラクトース残基のシアリル化のレベルの増加を示唆している。ST3Gal1を過剰発現するCAP細胞の細胞培養上清から精製されたC1 Inhは、O−グリカンの完全なシアリル化を示すシグナルを示していない。血漿由来のC1 Inhであるベリナートにおいても同じことが当てはまる。(分子量マーカー:MagicMark(商標)XPウェスタンタンパク質標準物質)。
図9】IEF分析によるrhC1 Inhアイソフォームパターンの比較を示す図である。様々なC1 Inhの骨格が同一であるとき、IEFの変化は、シアル酸含量における変化による可能性が最も高い。付加的にST3Gal4を発現するCAPに発現したC1 Inhは修飾型C1 Inhとなり、非修飾型C1 Inhに比べ、わずかだがアノードに向かって移動し、1分子当たりのシアル酸の総量がわずかに増加したことを示す。対照的に、付加的にST3Gal1を発現すると、C1 Inhはアノードに向かって大きく移動し、1分子当たりのシアル酸の総量の顕著な増加を示す。
図10】ベリナートと比較した、付加的にST3Gal1及び/又はST3GAL4を過剰発現し、又は過剰発現することなく発現するタンパク質のCAP C1 Inh O−グリカンのMALDI−TOF質量スペクトル分析を示す図である。(A)CAP C1 Inhサンプルの分析により、コア2構造及び末端ガラクトースを有するモノシアリル化O−グリカンがかなり多量であることが明らかとなっている。(B)ST3Gal4の過剰発現と組み合わせたC1 Inhの発現により、多量の、コア2構造及び末端ガラクトースを有するモノシアリル化O−グリカンが得られている。(C)ST3Gal4及びST3Gal1の過剰発現を組み合わせたC1 Inhの発現により、モノ又はジシアリル化であるが、いずれの末端ガラクトース残基も含まないコア1のO−グリカン構造に向かっての移動を生じている。コア2構造は、わずかに検出可能である。(D)ベリナートのO−糖鎖分析は、末端ガラクトース残基を含まない、ほとんどがモノシアリル化であるコア1のO−グリカンの存在のみを示している。
図11】ベリナートに比べ、ST3Gal1及び/又はST3GAL4を過剰発現し、又は過剰発現することなくCAP細胞に発現したC1 InhのMALDI−TOF質量スペクトルの結果のサマリーを示す図である。同じグリカンの合計量に対する6つの主なグリカン種の量を示す。MALDI−TOFにより生じたグリカンフラグメント又は微量のシグナルはこの分析では使用されなかった。付加的にST3Gal1又はST3Gal4を過剰発現しないCAP C1 Inhサンプル、すなわちCAP C1 Inhにおいて、大部分のコア2構造を有するO−グリカンが検出可能である(Gal1−3(Gal1−GlcNAc1−6)GalNAc−ol_コア2)(m/z 983)、又はNeuAc2−3Gal1−3(Gal1−4GlcNAc1−6)GalNAc−ol(m/z 1344)、Gal1−3(NeuAc2−3Gal1−4GlcNAc1−6)GalNAc−ol(m/z 1344)、及びNeuAc2−3Gal1−3(NeuAc2−3Gal1−4GlcNAc1−6)GalNAc−ol(m/z 1706))。コア1構造は、ほとんど検出できていない。付加的にST3Gal4を発現することにより、コア1構造に向かってわずかに移動した(NeuAc2−3Gal1−3GalNAc−ol_コア1)。興味深いことに、ST3Gal1を過剰発現するCAP細胞におけるC1 Inhの発現では、NeuAc2−3Gal1−3GalNAc−ol(コア1)のそれぞれGal1−3(NeuAc2−6)GalNAc−ol(m/z 895)及びNeuAc2−3Gal1−3(NeuAc2−6)GalNAc−ol(m/z 1256)の発現のみを生じている。この図の「Hex」はヘキソースを示す。
図12】様々なコア1及びコア2のGalNAc O−グリカン構造を示す図である。MALDI−TOF質量スペクトル分析により、コア1又はコア2のO−グリカン構造のいずれかの2つの異なるクラスターにおいて、異なるサンプルのグループが明らかとなった。
図13】シアリルトランスフェラーゼの存在下又は非存在下におけるCAP細胞に発現した組換えHGFのECL及びPNAのレクチン免疫ブロットを示す図である。(A)エリスリナ・クリスタ・ガリ(ECL)レクチンは、N−結合型グリカンのβ1−4結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、ECLブロットにおけるシグナルの消失は、シアリル化の量の増加を意味する。ST3Gal4又はST3Gal1/4の過剰発現により、N−結合型グリカンのシアリル化の増加が生じている一方で、ST3Gal1の過剰発現は、非修飾型C1 Inhに比べ効果はない。(B)ST3Gal1の過剰発現時のCAP細胞の組換えHGFのシアリル化の量を、PNAレクチン免疫ブロットにより試験した。ピーナッツ凝集素(PNA)は、O−結合型グリカンのβ1−3結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、PNAレクチンブロットにおけるシグナルの低下は、O−グリカンのガラクトース残基のシアリル化のレベルの増加を示唆する。ST3Gal1を過剰発現するCAP細胞由来の細胞培養上清により、シグナルが顕著に低下する結果となり、O−グリカンのシアリル化の増加を示している。(分子量マーカー:MagicMark(商標)XPウェスタンタンパク質標準物質)。
図14】ST3Gal1のドメイン構造及び配列アライメントを示す図である。A)ST3Gal1のシアリルトランスフェラーゼのドメイン構造。TM、膜貫通ドメイン;Stem、ステム領域;L、シアリルモチーフL(長鎖);シアリルモチーフS(短鎖);3、シアリルモチーフIII;VS、シアリルモチーフVS(非常に短鎖)。LモチーフはCMP−Siaの結合に関与し、モチーフSはCMP−Sia及びアクセプターの結合に関与し、モチーフ3及びVSは触媒コンセンサス配列(catalytic consensus sequence)を含有し、またアクセプターの結合に関与する。B)ヒト、哺乳動物、鳥類、爬虫類、魚類、及びホヤ類由来のST3Gal1のC末端配列のアライメント。全ての種に同一のアミノ酸残基は影付きの明灰色であり、ほとんどの種に同一のアミノ酸は暗灰色及び同様のアミノ酸のブロックは中間の灰色である。モチーフ3の触媒により活性したアミノ酸のコンセンサス配列は(/C/R)(/H/F)(/Y/F)(/D/H/Y)と読み取られる(下線部の対応する位置のアミノ酸が好ましい)。
図15】シアリルトランスフェラーゼの存在下又は非存在下における293F細胞に発現した組換えC1 InhのECL及びPNAのレクチンの免疫ブロットを示す図である。(A)エリスリナ・クリスタ・ガリ(ECL)レクチンは、N−結合型グリカンのβ1−4結合型末端ガラクトースを検出する。ST3Gal4又はST3Gal1/4の過剰発現により、N−結合型グリカンのシアリル化の増加を生じる一方で、ST3Gal1のみの過剰発現は、非修飾型C1 Inhに比べ効果はない。ノイラミニダーゼは、オリゴ糖由来のN−アセチル−ノイラミン酸残基の加水分解を触媒するため、ノイラミニダーゼ処理したサンプルは陽性対照として作用する。(B)ST3Gal1の過剰発現時の293F細胞における組換えC1 Inhのシアリル化の量を、PNAレクチン免疫ブロットにより試験した。ST3Gal1を過剰発現する293F細胞由来の細胞培養上清では、シグナルの顕著な低下を生じ、O−グリカンのシアリル化の増加を示している。ノイラミニダーゼ処理したサンプルは陽性対照として使用する。(分子量マーカー:MagicMark(商標)XPウェスタンタンパク質標準物質)。
図16】シアリルトランスフェラーゼの存在下又は非存在下におけるCHO−K1細胞において発現した組換えC1 InhのPNAレクチン免疫ブロットを示す図である。ST3Gal1の過剰発現時のCHO−K1細胞における組換えC1 Inhのシアリル化の量を、PNAレクチン免疫ブロットにより試験した。ST3Gal1を過剰発現するCHO−K1細胞由来の細胞培養上清では、シグナルの顕著な低下を示し、CHO−K1 C1 Inh対照細胞から精製したC1 Inhに比べ、O−グリカンのシアリル化の増加を示している。同じタンパク質サンプルのウェスタンブロット分析をローディング対照として使用した。(分子量マーカー:MagicMark(商標)XPウェスタンタンパク質標準物質)。
図17】シアリルトランスフェラーゼの存在下又は非存在下におけるMDCK.1細胞に発現した組換えC1 InhのECL及びPNAのレクチンの免疫ブロットを示す図である。(A)エリスリナ・クリスタ・ガリ(ECL)レクチンは、N−結合型グリカンのβ1−4結合型末端ガラクトースを検出する。MDCK.1細胞のST3Gal1の過剰発現は、N−結合型グリカンのシアリル化の量において効果はない。(B)MDCK.1細胞におけるST3Gal1の過剰発現時の組換えC1 Inhのシアリル化の量を、PNAレクチン免疫ブロットにより試験した。ST3Gal1を過剰発現するMDCK.1細胞由来の細胞培養上清では、シグナルの顕著な低下を示し、O−グリカンのシアリル化の増加を示している。(分子量マーカー:MagicMark(商標)XPウェスタンタンパク質標準物質)。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明を更に以下の実施例において説明するが、それらに限定されない。
【実施例】
【0047】
実験手法:
細胞培養及び発酵
永久ヒト羊膜細胞の細胞株CAP 1D5を、既知組成の、6mMの安定したグルタミン(biochrom、ドイツ)を補充した動物成分非含有のCAP−CDM培地(CEVEC Pharmaceuticals、ドイツ)において、又は4mMの安定したグルタミン(biochrom、ドイツ)を補充した血清非含有PEM培地(Life Technologies)においてのいずれかの懸濁液において培養した。
【0048】
Life Technologies製の293F細胞を4mMの安定したグルタミン(biochrom、ドイツ)を補充したFreestyle293発現培地(Life Technologies)の懸濁液において培養した。
【0049】
接着性CHO−K1細胞(ATCC、CCL−61)を10%FBS及び2mMの安定したグルタミン(biochrom、ドイツ)を補充したF12−K培地(Life Technologies)において培養した。
【0050】
接着性MDCK.1細胞(ATCC、CRL−2935)を10%FBS及び2mMの安定したグルタミン(biochrom、ドイツ)を補充した、EMEM培地(ATCC)又はDMEM F−12(ATCC)のいずれかにおいて培養した。
【0051】
CAP細胞及び293F細胞を、振とうフラスコ(Corning、125mL(25mL wv)又は3000mL(1000mL wv))において37℃、5%CO、及び185rpmにて培養した。発酵の間、CAP細胞に3日目、5日目、及び7日目に10%CAP−CDMフィード液(CEVEC Pharmaceuticals、ドイツ)及び4mMの安定したグルタミン(biochrom、ドイツ)を与えた。接着性CHO−K1及びMDCK.1細胞を、6cm又は10cmの細胞培養皿(TPP)又は225cmの細胞培養皿(BD)において37℃、5%COにて培養した。
【0052】
クローニング
本発明において使用される細胞株の世代において、細胞を、糖構造修飾酵素であるST3Gal1及び/又はST3Gal4をコードする核酸構築物並びに特定の組換えタンパク質を用いて連続してヌクレオフェクトした。安定した細胞株のみを利用した。表1には、作製した全ての細胞株を挙げている。
【0053】
【表1】
【0054】
ST3Gal1のcDNAを設計するため、前駆体タンパク質及び成熟タンパク質の配列情報は、データベースエントリーUniProt Q11201(配列番号1)に基づいたものであった。クローニングにおいて、ClaI制限部位及びKozak配列をヒトST3Gal1 cDNAの開始コドンの5’末端側に付加し、EcoRV制限部位を終止コドンの3’末端側に付加して、pStbl−Puro−CMV−MCS(−)ベクターのClaI制限部位とEcoRV制限部位との間に挿入し、発現プラスミドpStbl−Puro−CMV−ST3Gal1を得た。このベクターは、目的の遺伝子の発現を誘導するCMVプロモーターに続き、改良型のスプライシング介在性mRNA輸送のためのSV40イントロン、及び目的の遺伝子を挿入するためのマルチクローニング部位を含有する。選択マーカー(ピューロマイシン)は、ヒトユビキチン(UbC)プロモーターにより誘導される。cDNA合成はGeneArt(ドイツ、Life Technologies)にて行われた。
【0055】
ST3Gal4 cDNAを設計するため、前駆体タンパク質及び成熟タンパク質の配列情報は、データベースエントリーUniProt Q11206(配列番号2)に基づいたものであった。クローニング用に、ClaI制限部位及びKozak配列をヒトST3Gal4 cDNAの開始コドンの5’末端側に付加し、EcoRV制限部位を終止コドンの3’末端側に付加して、pStbl−Puro−CMV−MCS(−)ベクターのClaI制限部位とEcoRV制限部位との間に挿入し、発現プラスミドpStbl−Puro−CMV−ST3Gal4を得た。cDNA合成はGeneArt(ドイツ、Life Technologies)にて行われた。
【0056】
ヌクレオフェクション及びプール作製
ヌクレオフェクションを、製造業者のプロトコルに従い、ヌクレオフェクター(LONZA)を使用し、適切なヌクレオフェクターキット(KitV;CAP細胞、293F及びCHO又はKitT;MDCK.1細胞)を用いて行った。つまり、培養物の対数増殖期の間に、1×10個の細胞を遠心分離(150g、5分間)により回収し、100μlの完全ヌクレオフェクター溶液に再懸濁し、合計5μgのプラスミドと混合した。ヌクレオフェクションを、X001プログラム(CAP細胞及び293F細胞)、U024プログラム(CHO−K1)、又はP029プログラム(MDCK.1)を用いて行った。パルス処理後、細胞を完全細胞培養培地に戻した。細胞は前述同様に培養した。
【0057】
安定したプールを作製するため、72時間〜96時間のヌクレオフェクション後の細胞を、5μg/mlのブラストサイジン(治療用タンパク質)及び/又は200μg/mlのネオマイシン(pStbl−neo−CMV−ST3Gal4)及び/又は2μg/mlのピューロマイシン(pStbl−Puro−CMV−ST3Gal1)を用いて選抜した。
【0058】
ラットにおける組換えC1 Inhの薬物動態試験
ベリナート(ヒト血漿由来のC1 Inh)又はCAP C1 Inh、CAP C1 Inh ST3Gal4若しくはCAP C1 Inh ST3Gal1/ST3GAL4に発現した精製組換えC1 Inhのいずれかをラットに注射して比較薬物動態試験を行った。
【0059】
雌のSprague Dawleyラットに10mg/kg用量のi.v.ボーラス注射後のhC1 Inhの残留濃度を、様々な時間点:5分、10分、15分、20分、30分、60分、2時間、4時間、6時間、及び24時間にて決定した。
【0060】
図3において、組換えC1 Inh又はベリナートの単回静脈内注射後のC1 Inhの血清濃度を示す。残留C1 Inhの割合をELISAにより検出した。各動物において、C1 Inh濃度を5分=100%の濃度に正規化した。値を当て嵌め、注射後の時間に対してプロットした。各群(n=4、ベリナートのn=7を除く)において、代表的な動物の1例のグラフを示す。図5において、C1 Inhの様々な形態に対する曲線下面積(AUC)の計算結果を示す。
【0061】
MALDI−TOF−質量スペクトル分析
サンプルを脱塩するため、100μgのタンパク質を、クロロホルム−メタノールを用いて2回析出し、真空回転により乾燥させた。グリカンを50℃にて一晩インキュベーションすることによりアルゴン下の50μLのNaBH(50mMのNaOH中1M)にβ脱離した。Dowex50×8(H)を用いて脱塩し、酸性メタノールからメチルエステルを共蒸留することによりホウ酸塩を除去した後、乾燥させた残基を当該技術分野において知られている通りにメチル化した。MALDI−MSをUltrafleXtreme装置(Bruker Daltonics)で行った。マトリクス(50%アセトニトリル/0.1%TFA中α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)を用いて1:1に混合することによってメチル化したグリカンアルジトールをステンレス鋼の標的に塗布した。分析は、MS1及びMS2(Post−Source−Decay−Modus)の陽イオン検出により行われた。様々なグリカン種の同定は、i)単糖組成物に関する情報が得られる分子イオン、及びii)MS2分析のフラグメント化(B、C、Y、及びZイオン)に基づいたものであった。
【0062】
PNGaseF消化
PNGaseFは、N−結合型糖タンパク質の最深部のGlcNAcとアスパラギン残基との間を切断するアミダーゼである。それゆえ、C1 Inhタンパク質をPNGaseFで処理した後、タンパク質の骨格及びO−結合型グリカンは残存する。血漿由来のヒトC1 InhとCAP細胞に発現したC1 Inhとの間のタンパク質骨格が等しいものであるとして、PNGaseFの処理がO−グリカンの構造に関する間接的な情報を担っている。
【0063】
PNGaseF消化は、製造業者の説明書に記載の通りに行われた。つまり、100ngの精製タンパク質を500UのPNGaseF(NEB)と1時間、37℃にてインキュベーションした。続いて、サンプルを、製造業者の説明書に従い、還元条件下においてNuPAGE Novex 4%〜12%のBis−Trisゲルで分離した。分離したタンパク質をブロットモジュール(Invitrogen)(30V、60分間、室温)を介してAmersham Hybond ECL膜(100V、60分間、室温)に移した。膜をPBSTB(リン酸緩衝生理食塩水、pH=7.4、0.1%Tween20及び1%BSAを補充)を用いて1時間、室温にてブロッキングした。その後、膜をPBSTBで1:10000に希釈したマウスモノクローナルC1 Inh特異的HRP標識抗体とともにインキュベーションした。膜をPBST(リン酸緩衝生理食塩水、pH=7.4、0.1%Tween20を補充)を用いて洗浄後、タンパク質をPierce ECL WB基質キットを用いて化学発光検出器(INTAS)により検出した。
【0064】
レクチン免疫ブロット法
レクチンは、特定の炭水化物構造に結合するタンパク質である。それゆえ、ビオチン結合レクチンを使用して、N−結合型及びO−結合型グリカンを分析することができる。エリスリナ・クリスタ・ガリ(ECL)レクチンは、N−結合型グリカンのβ1−4結合型末端ガラクトースを検出し、ピーナッツ凝集素(PNA)はO−結合型グリカンのβ1−3結合型末端ガラクトースを検出し、サンブカス・ニグラ(Sambucus nigra:西洋ニワトコ)凝集素(SNA)は2,6結合型シアル酸に優先的に結合し、一方マキア・アムレンシス(Maackia amurensis:イヌエンジュ)レクチン(MAL)は2,3結合型シアル酸に優先的に結合する。
【0065】
ST3Gal1及び/又はST3Gal4を共発現し、又は共発現することなく、精製タンパク質又は細胞培養上清を上記のように分離し、Hybond ECLニトロセルロース膜(GE healthcare)にブロッティングした。膜をPBSTB(リン酸緩衝生理食塩水、pH=7.4、0.1%Tween20及び1%BSAを補充)を用いて1時間、室温にてブロッキングした。その後、膜をPBSTBで1:2000(MAL 1:400)に希釈したレクチンとともにインキュベーションした。PBST(リン酸緩衝生理食塩水、pH=7.4、0.1%Tween20を補充)を用いて膜を洗浄後、膜を、ストレプトアビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼを用いて1時間、室温にて染色した(PBSTBで1:1000に希釈)。HRPシグナルを抗ストレプトアビジンIgG及び抗IgG−HRPを用いて増幅させた。タンパク質をPierce ECL WB基質キットを用いて化学発光検出器(INTAS)により検出した。
【0066】
IEF分析
等電点電気泳動(IEF)を行い、CAP C1 Inh細胞又はST3Gal4及び/又はST3Gal1を用いてトランスフェクトしたCAP C1 Inh細胞それぞれから精製したC1 Inhの等電点(pI)を分析した。シアリル化の割合は、所与のタンパク質酸性度と、それゆえそのpIと相関する。IEF分析は、製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従い行われた。つまり、5μgの精製タンパク質をpH3〜pH7のゲルに充填し、電気泳動(1時間100V、1時間200V、30分間500V)を行った。タンパク質を製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従い、SimplyBlue SafeStainで染色した。
【0067】
実施例1:
プロテアーゼ阻害因子であるC1エステラーゼ阻害因子(C1 Inh)は、セルピンスーパーファミリーに属する。その主な機能は、補体系を阻害して自然に活性化するのを阻止する。500aaのタンパク質は、7つの予測N−グリカン及び8つの予測O−結合型グリカンと高度にグリコシル化される。
【0068】
構築物のゲノムへの安定した組込みを促進させるため、ヒト組換えC1阻害因子(rhC1 Inh、配列番号3)(CAP−C1 Inh)を発現するよう予め安定してトランスフェクトしたヒト羊膜細胞の細胞株CAP 1D5の細胞を、ScaIで直鎖状にしたST3Gal4をコードするベクターでヌクレオフェクトした。ベクターは、直鎖状の構築物のゲノムへの安定した組込みを選択するための薬剤発現カセットを含有する。プール作製後、得られた安定したCAP−C1 Inh−ST3Gal4プールに、限界希釈によるシングルセルクローニングを行った。選抜したクローンを分析し、ST3Gal4の発現を証明した。次いで、ST3Gal4を発現するCAPシングルセルクローンを、ST3Gal1遺伝子をコードする遺伝子を用いて更にヌクレオフェクトした。細胞を、抗生物質を用いて選抜し、安定してrhC1 Inh、ヒトST3Gal4、及びST3Gal1(CAP−C1 Inh−ST3Gal1/4)を共発現する細胞のプールを得た。
【0069】
十分な量の組換えC1 Inhを作製するため、ヒトC1 Inhを過剰発現する作製済みのCAP−C1 Inh細胞株を実験手法に記載の通りに培養した。続いて、C1 Inhを以下の細胞株の細胞培養上清から以下に記載の通りに精製した:CAP−C1 Inh、CAP−C1 Inh−ST3Gal4、及びCAP−C1 Inh−ST3Gal1/4(プールA及びB)。
【0070】
細胞培養上清又は精製組換えC1 Inh及びベリナートを分析し、糖構造を決定した。
【0071】
C1 Inh特異的抗体を用いた免疫ブロット法(図6)により、血漿から精製したC1 Inh(ベリナート)は電気泳動中の移動が速く、CAP細胞由来の組換えC1 Inhに比べ質量が消失していることを示すことが明らかとなった。ST3Gal4と組み合わせたシアリルトランスフェラーゼST3Gal1の過剰発現も同様に移動速度が上昇している。この作用は、PNGase消化によってタンパク質の骨格からN−結合型グリカンを切断した後に更により明らかとなり、移動が速いことは、実際には残存するO−結合型グリカンのサイズの違いによることを示している。
【0072】
N−結合型グリカンのシアリル化の割合を決定するため、ECLレクチン免疫ブロットが行われた。エリスリナ・クリスタ・ガリ(ECL)レクチンはN−結合型グリカンのβ1−4結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、ECLブロットにおけるシグナルの消失は、シアリル化の量の増加を意味する。図7に示されるように、ベリナートのN−結合型グリカンはほぼ完全にシアリル化されている。ST3Gal4を過剰発現するCAP細胞由来のC1 InhのN−グリカンも同様にシアリル化され、ST3Gal1/4を過剰発現するCAP細胞由来のC1 Inhでは、アシアロN−グリカンの量がわずかに高いことを示す。比較すると、シアリルトランスフェラーゼを過剰発現しないCAP細胞から精製したC1 InhではECLブロットにおいて強いシグナルが得られ、アシアロN−グリカンの量が多いことを示す。
【0073】
ST3Gal1の過剰発現時のCAP細胞の組換えC1 InhのO−結合型グリカンのシアリル化の割合を最初にPNAレクチン免疫ブロットにより試験した。ピーナッツ凝集素(PNA)はO−結合型グリカンのβ1−3結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、PNAレクチンブロットにおけるシグナルの消失は、O−グリカンのガラクトース残基のシアリル化のレベルの増加を示唆している。図8に示されるように、ST3Gal1を過剰発現するCAP細胞の細胞培養上清から精製されたC1 Inhでは、O−グリカンの完全なシアリル化を示すシグナルは示されていない。血漿由来のC1 Inhであるベリナートにおいても同じことが当てはまる。
【0074】
レクチンブロットからの結果は、等電点電気泳動(IEF)により確定することができた。様々なC1 Inhの骨格が同一であるとして、IEFの変化は、シアル酸含量における変化による可能性が最も高い。図9に示されるように、付加的にST3Gal4を発現することにより、得られた修飾型C1 Inhは、アノードに向かって非常にわずかであるが移動し、1分子当たりのシアル酸の総量においてわずかに増加したことを示す。対照的に、付加的にST3Gal1を発現することにより、C1 Inhがアノードに向かう著しい移動を生じ、シアル酸の総量の顕著な増加を示す。
【0075】
図10において、O−結合型グリカンのMALDI−TOF−質量スペクトルの詳細を示す。図11において、これらのデータをまとめ、様々なO−グリカン構造のピーク強度を説明する。図12は得られたデータの説明を示す。付加的にST3Gal1又はST3Gal4を過剰発現しないCAP C1 Inhサンプル、すなわちCAP C1 Inhにおいて、検出可能なO−グリカンの75%はコア2構造であり、末端ガラクトース残基(Gal1−3(Gal1−GlcNAc1−6)GalNAc−ol_コア2)(m/z 983)、又はNeuAc2−3Gal1−3(Gal1−4GlcNAc1−6)GalNAc−ol(m/z 1344)、Gal1−3(NeuAc2−3Gal1−4GlcNAc1−6)GalNAc−ol(m/z 1344)、及びNeuAc2−3Gal1−3(NeuAc2−3Gal1−4GlcNAc1−6)GalNAc−ol(m/z 1706))を伴わないシアリル化O−グリカンは35%に過ぎなかった。コア1構造はほとんど検出できていない。付加的にST3Gal4を発現することにより、コア1構造に向かう移動を生じる(68.7%)(NeuAc2−3Gal1−3GalNAc−ol_コア1)。興味深いことに、ST3Gal1を過剰発現するCAP細胞のC1 Inhの発現は、コア1のO−グリカンの排他的な発現を生じ(99.1%)、任意の末端ガラクトース残基、特に(NeuAc2−3Gal1−3GalNAc−olのそれぞれGal1−3(NeuAc2−6)GalNAc−ol(m/z 895)及びNeuAc2−3Gal1−3(NeuAc2−6)GalNAc−ol(m/z 1256)を伴わずにほぼ完全にシアリル化される(98.5%)。
【0076】
様々な糖鎖改良型組換えC1 Inh、CAP−C1 Inh−ST3Gal4、及びCAP−C1 Inh−ST3Gal1/4対CAP細胞由来の組換えC1 Inh(野生型)、又は血漿由来のC1 Inh(ベリナート)の血清半減期を決定するため、薬物動態試験を行った。
【0077】
様々なサンプルの濃度時間曲線を正規化した後、様々なサンプルクラスターが形状及び曲線の伸び(progression)がほぼ同じである2つのグループに分けられることが明らかとなっている:一方は、CAP−C1 Inh−ST3Gal4と合わせて、付加的に任意のシアリルトランスフェラーゼを発現しないCAP C1 Inh及びもう一方は、血漿由来のヒトC1 Inhであるベリナートと合わせたCAP−C1 Inh−ST3Gal1/4(図3)。各グループ内の物質は、同じ薬物動態に従って同様に血流から排除されている。
【0078】
ST3Gal4の過剰発現のみでは、組換えにより発現したC1 Inhの血清半減期に有益な作用がない一方で、付加的にST3Gal1が共発現することにより、血清半減期が約6倍高まった(図4)。AUC、ひいてはバイオアベイラビリティは非修飾型C1 Inhに比べおよそ6倍増大し、ベリナートにおいて測定されたAUC値と同等である(図5)。つまり、これらの結果により、糖タンパク質を示すN−グリカン及びO−グリカンにおいて、O−グリカンの広範囲のシアリル化はN−グリカンにおけるものと同様に重要であることが指摘される。
【0079】
実施例2:
肝細胞成長因子は、成熟した実質性肝細胞における強力な分裂促進因子であり、肝再生因子であると考えられ、組織及び細胞型の広域の成長因子として作用する。728aaの大きさのタンパク質は、4つの予測N−グリカン及び1つの予測O−結合型グリカンを含有する。
【0080】
構築物のゲノムへの安定した組込みを促進するため、ヒト組換え肝細胞の成長因子(配列番号4)を安定して発現するCAP 1D5細胞を、ScaIで直鎖状にした、ST3Gal4、ST3Gal1、又はST3Gal4及びST3Gal1をコードするベクターのいずれかを用いてヌクレオフェクトした。ベクターは、細胞の選抜を促進し、直鎖状の構築物をゲノムに安定して組み込ませる薬剤発現カセットを含有する。プール作製後に得られた、安定したCAP細胞のプールであるCAP−HGF、CAP−HGF−ST3Gal1、CAP−HGF−ST3Gal4、及びCAP−HGF−ST3Gal1/4を実験手法に記載の通りに培養した。組換えヒトHGFを含有する細胞培養上清を、ECL及びPNAのレクチンブロットにより試験し、既存のN−結合型糖構造及びO−結合型糖構造を決定した。
【0081】
エリスリナ・クリスタ・ガリ(ECL)レクチンは、N−結合型グリカンのβ1−4結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、ECLブロットにおけるシグナルの消失は、シアリル化の量の増加を意味する。図13に示されるように、ST3Gal4又はST3Gal1/4の過剰発現により、N−結合型グリカンのシアリル化の増加を生じたが、ST3Gal1の過剰発現効果はなかった。
【0082】
ST3Gal1の過剰発現時のCAP細胞の組換えHGFのシアリル化の量を、PNAレクチン免疫ブロットにより試験した。ピーナッツ凝集素(PNA)は、O−結合型グリカンのβ1−3結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、PNAレクチンブロットにおけるシグナルの低下は、O−グリカンのガラクトース残基のシアリル化のレベルの増加を示唆する。図13に示されるように、ST3Gal1のみ又はST3Gal4を組み合わせての過剰発現は、組換えHGFのO−グリカンのシアリル化の顕著な増加を生じた。
【0083】
実施例3:
以下の実験は、シアリルトランスフェラーゼST3Gal1の過剰発現時の糖タンパク質のO−グリカンのシアリル化において観察された増加が、組換えタンパク質の製造に利用される多様な細胞株又は製剤の製造及び/又はバイオメディカル研究のためのウイルスにより共有される一般的な特徴であるかどうかを検討するために行われた。
【0084】
不死化ヒト胚腎臓細胞である293F細胞(Life Technologies、R−970−07)を、構築物のゲノムへの安定した組込みを促進するため、ScaIで直鎖状にした、ST3Gal1、又はST3Gal1及びST3Gal4をコードするベクターのいずれかを用いてヌクレオフェクトした。ベクターは、細胞の選抜を促進し、直鎖状の構築物をゲノムに安定して組み込ませる薬剤発現カセットを含有する。プール作製後に得られた、安定した293F細胞のプールである293F−ST3Gal1及び293F−ST3Gal1/4、及び野生型293F細胞を、hC1 Inhをコードする遺伝子を用いて更にヌクレオフェクトした。細胞を、抗生物質を用いて選抜し、i)rhC1 Inh、ii)rhC1 Inh及びヒトST3Gal1、iii)rhC1 Inh、ヒトST3Gal1、及びヒトST3Gal4を安定して発現する細胞のプールを得た。C1 Inhを、方法の章で記載の細胞培養上清を含有するC1 Inhから精製し、ECL及びPNAのレクチンブロットにより試験し、既存のN−結合型糖構造及びO−結合型糖構造を決定した。
【0085】
エリスリナ・クリスタ・ガリ(ECL)レクチンは、N−結合型グリカンのβ1−4結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、ECLブロットにおけるシグナルの消失は、シアリル化の量の増加を意味する。図15に示されるように、ST3Gal1/4の過剰発現により、N−結合型グリカンのシアリル化の増加を生じたが、ST3Gal1のみの過剰発現効果はなかった。
【0086】
ST3Gal1の過剰発現時の293F細胞の組換えC1 Inhのシアリル化の量を、PNAレクチン免疫ブロットにより試験した。ピーナッツ凝集素(PNA)は、O−結合型グリカンのβ1−3結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、PNAレクチンブロットにおけるシグナルの低下は、O−グリカンのガラクトース残基のシアリル化のレベルの増加を示唆する。図15に示されるように、ST3Gal1のみ又はST3Gal4を組み合わせての過剰発現は、組換えヒトC1InhのO−グリカンのシアリル化の顕著な増加を生じた。
【0087】
実施例4:
CHO−K1(ATCC、CCL−61)細胞株を、成体のチャイニーズハムスターの卵巣の生検試料から出発した親CHO細胞株からの部分クローンとして得た。
【0088】
ヒトシアリルトランスフェラーゼST3Gal1の過剰発現時のO−結合型グリカンのシアリル化において観察された増加が、非ヒト哺乳動物の細胞株においても生じるかについて検討するため、ヒトC1 Inhを、シアリルトランスフェラーゼST3Gal1の存在下又は非存在下において上記の細胞に発現させた。
【0089】
構築物のゲノムへの安定した組込みを促進するためCHO−K1細胞を、ScaIで直鎖状にしたST3Gal1をコードするベクターを用いてヌクレオフェクトした。ベクターは、細胞の選抜を促進し、直鎖状の構築物をゲノムに安定して組み込ませる薬剤発現カセットを含有する。プール作製後に得られた、安定したCHO−K1細胞プール、CHO−ST3Gal1、及び野生型CHO−K1細胞を、hC1 Inhをコードする遺伝子を用いて更にヌクレオフェクトした。細胞を、抗生物質を用いて選抜し、i)rhC1 Inh、ii)rhC1 Inh、及びヒトST3Gal1を安定して発現する細胞のプールを得た。
【0090】
細胞を方法の章に記載の通りに増殖させた。細胞の作製において、ヒトC1 Inh細胞を含有する培養上清を10cmの細胞培養皿に播種し、細胞を播種後の3日目に1×PBSで広範囲に洗浄し、ウシ胎児血清を除去した後、新鮮な血清非含有培地を添加した。4日後に、細胞培養上清を回収し、細胞及び細胞片を遠心分離により取り出し、0.22μmのフィルターにより濾過した。C1 Inhを方法の章に記載の通りに精製した。
【0091】
ST3Gal1の過剰発現時のCHO−K1細胞の組換えC1 InhのO−グリカンのシアリル化の量を、PNAレクチン免疫ブロットにより試験した。ピーナッツ凝集素(PNA)は、O−結合型グリカンのβ1−3結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、PNAレクチンブロットにおけるシグナルの低下は、O−グリカンのガラクトース残基のシアリル化のレベルの増加を示唆する。図16に示されるように、ST3Gal1のみの過剰発現により、組換えヒトC1 InhのO−グリカンのシアリル化の顕著な増加を生じた。
【0092】
実施例5:
イヌMDCK.1細胞(ATCC、CRL−2935)を安定してトランスフェクトした。得られた安定したMDCK.1細胞プール、MDCK.1−ST3Gal1、及び野生型MDCK.1細胞を更に安定してトランスフェクトし、i)rhC1 Inh、ii)rhC1 Inh、及びヒトST3Gal1を安定して発現する細胞のプールを得た。
【0093】
MDCK.1細胞を方法の章に記載の通りに増殖させた。細胞の作製において、ヒトC1 Inh細胞を含有する培養上清を、225cmの細胞培養皿に播種し、細胞を播種後の2日目に、1xPBSで広範囲に洗浄し、ウシ胎児血清を除去した後、新鮮な血清非含有培地を添加した。5日後に細胞培養上清を回収し、細胞及び細胞片を遠心分離により取り出し、0.22μmのフィルターにより濾過した。C1 Inhを方法の章に記載の通りに精製し、ECL及びPNAのレクチンブロットにより試験し、既存のN−結合型糖構造及びO−結合型糖構造を決定した。
【0094】
エリスリナ・クリスタ・ガリ(ECL)レクチンは、N−結合型グリカンのβ1−4結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、ECLブロットにおけるシグナルの消失は、シアリル化の量の増加を意味する。図17に示されるように、ST3Gal1の過剰発現は、N−結合型グリカンのシアリル化の増加を生じなかった。
【0095】
ST3Gal1の過剰発現時のMDCK.1細胞の組換えC1 InhのO−グリカンのシアリル化の量を、PNAレクチン免疫ブロットにより試験した。ピーナッツ凝集素(PNA)は、O−結合型グリカンのβ1−3結合型末端ガラクトースを検出する。それゆえ、PNAレクチンブロットにおけるシグナルの低下は、O−グリカンのガラクトース残基のシアリル化のレベルの増加を示唆する。図17に示されるように、ST3Gal1のみの過剰発現により、組換えヒトC1 InhのO−グリカンのシアリル化の顕著な増加を生じた。
【0096】
考察:
上記に示す実験において、CMP−シアル酸からガラクトース含有基質までのシアル酸の移動を触媒するST3Gal1を、単独又はST3Gal4と組み合わせたいずれかにおいて、哺乳動物の細胞に過剰発現させた。
【0097】
ST3Gal1の過剰発現は、共発現したO−グリコシル化組換えタンパク質のほぼ完全なシアリル化を生じた。さらに、GalNAc O−グリカンの不均一性は顕著に減少した。
【0098】
驚くべきことに、ST3Gal4のみの過剰発現は、試験した糖タンパク質の薬物動態プロファイルに効果はなく、一方で付加的なST3Gal1の過剰発現及びGalNAc O−グリカンのシアリル化の割合において得られた増加が、血清半減期を約6倍増大させた。
【0099】
薬物動態プロファイルを改良するために治療用タンパク質のグリカン構造を修飾することは、非常に強力な手段の1つである。本発明の場合、治療用タンパク質の特に2つの共通する弱点、1つ目は血清半減期の限定、及び2つ目は糖鎖構造の不均一性に対処している。これは、GalNAc O−グリカンのほぼ完全なシアリル化を示す糖タンパク質の分泌を生じるST3Gal1酵素の強制的な発現により実現することができる。
【0100】
本発明は、一宿主由来の特定の一細胞株に限定されず、動物細胞株の広範囲に適用可能である。さらに、本発明は糖タンパク質の特定の一グループに制約されず、少なくとも1つのGalNAc O−結合型グリカンを含有する広範囲の糖タンパク質、例えば成長因子、ペプチドホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、抗体フラグメント、血液凝固因子、又はプロテアーゼ阻害因子に適用可能である。
【0101】
本発明は以下のアミノ酸及びヌクレオチド配列に関する。
【0102】
配列番号:1
ヒトST3Gal1
MVTLRKRTLK VLTFLVLFIF LTSFFLNYSH TMVATTWFPK QMVLELSENL KRLIKHRPCT 60
CTHCIGQRKL SAWFDERFNQ TMQPLLTAQN ALLEDDTYRW WLRLQREKKP NNLNDTIKEL 120
FRVVPGNVDP MLEKRSVGCR RCAVVGNSGN LRESSYGPEI DSHDFVLRMN KAPTAGFEAD 180
VGTKTTHHLV YPESFRELGD NVSMILVPFK TIDLEWVVSA ITTGTISHTY IPVPAKIRVK 240
QDKILIYHPA FIKYVFDNWL QGHGRYPSTG ILSVIFSMHV CDEVDLYGFG ADSKGNWHHY 300
WENNPSAGAF RKTGVHDADF ESNVTATLAS INKIRIFKGR 340
【0103】
配列番号:2
ヒトST3Gal4
MVSKSRWKLL AMLALVLVVM VWYSISREDR YIELFYFPIP EKKEPCLQGE AESKASKLFG 60
NYSRDQPIFL RLEDYFWVKT PSAYELPYGT KGSEDLLLRV LAITSSSIPK NIQSLRCRRC 120
VVVGNGHRLR NSSLGDAINK YDVVIRLNNA PVAGYEGDVG SKTTMRLFYP ESAHFDPKVE 180
NNPDTLLVLV AFKAMDFHWI ETILSDKKRV RKGFWKQPPL IWDVNPKQIR ILNPFFMEIA 240
ADKLLSLPMQ QPRKIKQKPT TGLLAITLAL HLCDLVHIAG FGYPDAYNKK QTIHYYEQIT 300
LKSMAGSGHN VSQEALAIKR MLEMGAIKNL TSF 333
【0104】
配列番号:3
ヒトC1 Inh
MASRLTLLTL LLLLLAGDRA SSNPNATSSS SQDPESLQDR GEGKVATTVI SKMLFVEPIL 60
EVSSLPTTNS TTNSATKITA NTTDEPTTQP TTEPTTQPTI QPTQPTTQLP TDSPTQPTTG 120
SFCPGPVTLC SDLESHSTEA VLGDALVDFS LKLYHAFSAM KKVETNMAFS PFSIASLLTQ 180
VLLGAGENTK TNLESILSYP KDFTCVHQAL KGFTTKGVTS VSQIFHSPDL AIRDTFVNAS 240
RTLYSSSPRV LSNNSDANLE LINTWVAKNT NNKISRLLDS LPSDTRLVLL NAIYLSAKWK 300
TTFDPKKTRM EPFHFKNSVI KVPMMNSKKY PVAHFIDQTL KAKVGQLQLS HNLSLVILVP 360
QNLKHRLEDM EQALSPSVFK AIMEKLEMSK FQPTLLTLPR IKVTTSQDML SIMEKLEFFD 420
FSYDLNLCGL TEDPDLQVSA MQHQTVLELT ETGVEAAAAS AISVARTLLV FEVQQPFLFV 480
LWDQQHKFPV FMGRVYDPRA 500
【0105】
配列番号:4
ヒトHGF
MWVTKLLPAL LLQHVLLHLL LLPIAIPYAE GQRKRRNTIH EFKKSAKTTL IKIDPALKIK 60
TKKVNTADQC ANRCTRNKGL PFTCKAFVFD KARKQCLWFP FNSMSSGVKK EFGHEFDLYE 120
NKDYIRNCII GKGRSYKGTV SITKSGIKCQ PWSSMIPHEH SFLPSSYRGK DLQENYCRNP 180
RGEEGGPWCF TSNPEVRYEV CDIPQCSEVE CMTCNGESYR GLMDHTESGK ICQRWDHQTP 240
HRHKFLPERY PDKGFDDNYC RNPDGQPRPW CYTLDPHTRW EYCAIKTCAD NTMNDTDVPL 300
ETTECIQGQG EGYRGTVNTI WNGIPCQRWD SQYPHEHDMT PENFKCKDLR ENYCRNPDGS 360
ESPWCFTTDP NIRVGYCSQI PNCDMSHGQD CYRGNGKNYM GNLSQTRSGL TCSMWDKNME 420
DLHRHIFWEP DASKLNENYC RNPDDDAHGP WCYTGNPLIP WDYCPISRCE GDTTPTIVNL 480
DHPVISCAKT KQLRVVNGIP TRTNIGWMVS LRYRNKHICG GSLIKESWVL TARQCFPSRD 540
LKDYEAWLGI HDVHGRGDEK CKQVLNVSQL VYGPEGSDLV LMKLARPAVL DDFVSTIDLP 600
NYGCTIPEKT SCSVYGWGYT GLINYDGLLR VAHLYIMGNE KCSQHHRGKV TLNESEICAG 660
AEKIGSGPCE GDYGGPLVCE QHKMRMVLGV IVPGRGCAIP NRPGIFVRVA YYAKWIHKII 720
LTYKVPQS 728
【0106】
配列番号:5
ST3Gal1モチーフ3コンセンサス配列
HYWE 4
【0107】
配列番号:6
パン・トログロデュテスST3Gal1
MVTLRKRTLK VLTFLVLFIF LTSFFLNYSH TMVATTWFPK QMVLELSENL KRLIKHRPCT 60
CTHCIGQRKL SAWFDERFNQ TVQPLLTAQN ALLEDDTYRW WLRLQREKKP NNLNDTIKEL 120
FRVVPGNVDP MLEKRSVGCR RCAVVGNSGN LRESSYGPEI DSHDFVLRMN KAPTAGFEAD 180
VGTKTTHHLV YPESFRELGD NVSMILVPFK TIDLEWVVSA ITTGTISHTY VPVPAKIRVK 240
QDKILIYHPA FIKYVFDNWL QGHGRYPSTG ILSVIFSMHV CDEVDLYGFG ADSKGNWHHY 300
WENNPSAGAF RKTGVHDADF ESNVTATLAS INKIRIFKGR 340
【0108】
配列番号:7
マカカ・ムラッタST3Gal1
MVTLRKRTLK VLTFLVLFIF LTSFFLNYSH TMVTTTWFPK QMVLELSENL KRLIKHRPCT 60
CTHCIGQRKL SVWFDERFNQ TVQPLLTAQN ALLEDDTYRW WLRLQREKKP NNLNDTIKEL 120
FRVVPGNVDP MLEKRSVGCR RCAVVGNSGN LRESSYGPEI DRHDFVLRMN KAPTAGFEAD 180
VGTKTTHHLV YPESFRELGD NVSMILVPFK TIDLEWVVSA TTTGTISHTY VPVPAKIRVK 240
QDKILIYHPA FIKYVFDNWL QGHGRYPSTG ILSVIFSMHV CDEVDLYGFG ADSKGNWHHY 300
WENNPSAGAF RKTGVHDADF ESNVTATLAS INKIRIFKGR 340
【0109】
配列番号:8
サス・スクロファST3Gal1
MAPMRKKSTL KLLTLLVLFI FLTSFFLNYS HTVVTTAWFP KQMVIELSEN FKKLMKYPYR 60
PCTCTRCIEE QRVSAWFDER FNRSMQPLLT AKNAHLEEDT YKWWLRLQRE KQPNNLNDTI 120
RELFQVVPGN VDPLLEKRLV SCRRCAVVGN SGNLKESYYG PQIDSHDFVL RMNKAPTEGF 180
EADVGSKTTH HFVYPESFRE LAQEVSMILV PFKTTDLEWV ISATTTGRIS HTYVPVPAKI 240
KVKKEKILIY HPAFIKYVFD RWLQGHGRYP STGILSVIFS LHICDEVDLY GFGADSKGNW 300
HHYWENNPSA GAFRKTGVHD GDFESNVTTI LASINKIRIF KGR 343
【0110】
配列番号:9
ラッタス・ノルベギクスST3Gal1
MVNMRKRTLK YLTFFLLFIF LTSFVLNYSN SGVPSAWFPK QMVLEFSENF RKFIKSQPCT 60
CRHCISQGKV SYWFDQRFNK TMQPLLTAHN ALMEEDTYRW WLRLQRERKP NNLSDTVKEL 120
FRLVPGNVDP MLNKRLVGCR RCAVVGNSGN LKDSSYGPEI DSHDFVLRMN RAPTVGFEAD 180
VGSRTTHHLV YPESFRELGE NVNMVLVPFK ITDLQWVISA TTTGTITHTY VPVPPKIKVK 240
QEKILIYHPA FIKYVFDNWL QGHGRYPSTG ILSVIFSIHI CDEVDLYGFG ADSKGNWHHY 300
WENNPSAGAF RKTGVHDGDF EYNVTTTLAA INKIRIFKGR 340
【0111】
配列番号:10
ムス・ムスクルスST3Gal1
MRRKTLKYLT FFLLFIFLTS FVLNYSNTGV PSAWFPKQML LELSENFRRF IKSQPCTCRH 60
CISQDKVSYW FDQRFNKTMQ PLLTVHNALM EEDTYRWWLR LQRERKPNNL SDTVKELFRL 120
VPGNVDPMLN KRLVGCRRCA VVGNSGNLKD SSYGPEIDSH DFVLRMNKAP TVGFEADVGS 180
RTTHHLVYPE SFRELGENVN MVLVPFKTTD LQWVISATTT GTITHTYVPV PPKIKVKQEK 240
ILIYHPAFIK YVFDNWLQGH GRYPSTGILS IIFSIHICDE VDLYGFGADS KGNWHHYWEN 300
NPSAGAFRKT GVHDGDFEYN ITTTLAAINK IRIFKGR 337
【0112】
配列番号:11
ナンノスパラックス・ガリST3Gal1
MVNLRKKIVK WLTFLLLFVF LTSCFLNYSN SGVPITWFPK QMVLELSENF QKLIKQRPCT 60
CTHCISQSKV SSWFDQRFNQ TMQPLLTASN AMMEEDTYQW WLRLQRERKP NNLSDIVKEL 120
FSLVPGNVDP VLDKRSVGCR RCAVVGNSGN LRASSYGSDI DSHDFVLRMN RAPTVGFEAD 180
VGSRTTHHLV YPESFRELGE NVNMVLVPFK TTDLQWVISA TTTGTITHTY VPVPPKIKVK 240
QEKILIYHPA FIKYVFDNWL QGHGRYPSTG ILSVIFSMHV CDEVDLYGFG ADSKGNWHHY 300
WENNPSAGAF RKTGVHDGDF ESNVTTTLAS INKIRIFKGR 340
【0113】
配列番号:12
モノデルフィス・ドメスティカST3Gal1
MAAIKKKRLK VFTFVLLLVS LTSFFLNYAH TTATYTWFPK QMVMHFSEHF KRFMKYPQRP 60
CSCSQCISET GFAPWFDERF NHTMQPLLNR QNAFLENDTY TWWMKLQRER TPKRLNETFM 120
DLFSIIPGDV DPLLQKGPLI CRRCAVVGNS GNLKESHYGK DIDSHDFVLR MNRAPTAGFE 180
VDVGRKTTHH LVYPESFREL AGNVSMILVP FKTMDLQWLI SALTKGTINF TYVPVPRKIH 240
VNREKILIYH PAFIKYVFDS WLQAHGRYPS TGILSVILSL HICDKVDLYG FGADSKGNWH 300
HYWENNPSAG AFRKTGVHDG DFESNVTSTL ASLNKIRIFK GR 342
【0114】
配列番号:13
オリクトラグス・クニクルスST3Gal1
MVTPRKRTLK ALAFLMLFIF LTSFLLNYSH TMVATTWFPK QMVLEFSENL RKLIKTRPCT 60
CAHCVGQRKL SAWFDERFNQ TMQPLLTAHN ALMEEDTYRW WLKLQREKKP NNLNDTIKEL 120
FSVVPGDVDP VLEKRSVGCR RCAVVGNSGN LRESSYGPDI DSHDFVLRMN KAPTVGFEGD 180
VGSKTTHHLV YPESFRELGE NVSMVLVPFK TIDLQWVVSA TTTGTISHTY VPVPAKIKVK 240
QDKILIYHPA FIKYVFDNWL QGHGRYPSTG ILSVIFSMHI CDEVDLYGFG ADSKGNWHHY 300
WENNPSAGAF RKTGVHDADF ESNVTATLAA INKIRIFKGR 340
【0115】
配列番号:14
クリセツルス・グリセウスST3Gal1
MMTTQKKVLK VLTFLVLLIF LTSFVLNFAH TTVPAAWFPK QMVLELSQNL RKLIKPPPCT 60
CTHCISQRKV SAWFDKRFNQ TVQPLLTAHN AVLEEDTYQW WLRLQREKKP SNLSDTIREL 120
FSVVPGNVDP VLEKKSGSCR RCAVVGNSGN LRESSYGPEI DSHDFVLRMN RAPTVGFEAD 180
VGSKTTHHLV YPESFRELGE DVSMILVPFK TIDLQWVVSA TTTGTISHTY VPVPKKIKVK 240
QDKILIYHPA FIKYVFDNWL QGHGRYPSTG ILSVIFSLHV CDEVDLYGFG ADSKGNWHHY 300
WENNPSAGAF RKTGVHDGDF ESNVTATLAA INKIRIFTGR 340
【0116】
配列番号:15
カニス・ファミリアリスST3Gal1
MVTMRKRTLK VLTLLVLFIF LTSFFLNYSH TMVTTTWFPK QMVVELSENF KKFMKYTHRP 60
CTCARCIGQQ RVSAWFDERF NRSMQPLLTA QNALLEEDTY SWWLRLQREK QPNNLNDTIR 120
ELFQVVPGNV DPLLEKRSVG CRRCAVVGNS GNLRESWYGP QIDSHDFVLR MNKAPTAGFE 180
MDVGSKTTHH LVYPESFREL AENVSMVLVP FKTTDLEWVV SATTTGTISH TYVPVPAKIK 240
VKKDKILIYH PAFIKYVFDS WLQGHGRYPS TGILSVIFSL HICDEVDLYG FGADSKGNWH 300
HYWENNPSAG AFRKTGVHDG DFESNVTATL ASINKIRIFK GR 342
【0117】
配列番号:16
フェリス・カツスST3Gal1
MVTVRKRTLK VLTLLVLFIF LTSFFLNYSH TMVATTWFPK QMVVELSENF KKFMKYAHRP 60
CTCARCIGQQ RVSPWFDERF NRSMQPLLTA QNALLEEDTY SWWLRLQREK QPNNLNDTIK 120
ELFQVVPGNV DPLLEKKSGG CRRCAVVGNS GNLRESWYGP QIDGHDFVLR MNKAPTAGFE 180
ADVGSKTTHH LVYPESFREL GENVSMVLVP FKTTDLEWVV SATTTGTISH TYVPVPAKIK 240
VKKNKILIYH PAFIKYVFDN WLQGHGRYPS TGILSVIFSL HICDEVDLYG FGADSKGNWH 300
HYWENNPSAG AFRKTGVHDG DFESNVTATL ASINKIRIFK GR 342
【0118】
配列番号:17
エクウス・カバッルスST3Gal1
MATHRRRILK VLTLLILFIF LTSFFLNYSH TVVTTAWFPK QMVLELSENF KKLVQYSHRP 60
CSCARCIGQQ KVSSWFDERF NRSMQPLLTV QNAFLEEDAY NWWLRLQREK EPSNLNDTIK 120
ELFRVVPGNV DPLLGKRSVG CRRCAVVGNS GNLKESSYGP QIDSHDFVLR MNKAPTAGFE 180
AYVGSKTTHH LVYPESFREL GENVSMVLVP FKTTDLEWVV SATTTGTISH TYVPVPAKIK 240
VKQDKILIYH PAFIKYVFDN WLQGHGRYPS TGILSVIFSL HICDEVDLYG FGADSRGNWH 300
HYWENNPSAG AFRKTGVHDG DFESNVTATL ASIDKIRIFK GR 342
【0119】
配列番号:18
ガルス(Gallus:ニワトリ)ST3Gal1
MVTVRKRNVK VFTFAFVLIT VTSFLLNYKH QVTMTTWDPK HIISQFSEQV RKLIKFPRRP 60
CSCSTCISEL GHSLWFDQRF NSTMQPFLTS QNALIPEDSY RWWLKLQGEK SPKNINDTLK 120
ELFGIIPGDR DPLQERGTFS CRRCAVVGNS GNLRQSQYGQ DIDSHDFVLR MNRAPTIGYE 180
SDVGSKTTHH FVYPESYKEL AENVSMIVIP FKTLDLRWIV TALTTGTINF TYVPVPRKIK 240
VRKEKVLIYN PSFIKYVYEN WLQNHGRYPS TGLLSVIFAL HVCDEVNVYG FGADSKGHWH 300
HYWENNASAG AFRQTGVHDG DFEFNVTLTL ASIEKIKFFK GR 342
【0120】
配列番号:19
コルムバ・リビアST3Gal1
MVVVRRRNVK VFTFAFLLIT VTSFLLNYTH QVTTTTWDPR HLVMQFSEQV QKLFKYPRRP 60
CSCRSCISEL GHSLWFDQRF NSTMQPFLTS QNALIPEDSY RWWLKLQGEK TPKNINATLK 120
ELFEFIPGDG DPLQERGTST CRRCAVVGNS GNLLQSQYGQ DIDSHDFVLR MNRAPTTGYE 180
SDVGSKTTHH FVYPESYKEL AENVSMILIP FKTLDLRWIV TALTTGTINF TYVPVPRKIK 240
VKKEKILIYN PTFMKYVYEN WLQHHGRYPS TGLLSLIFAL HVCDEVNVYG FGADSRGHWH 300
HYWENNGSAG AFRKTGVHDG DFEFNVTLTL ASIEKINFFK GR 342
【0121】
配列番号:20
アリゲーター・シネンシスST3Gal1
MRRRHLKMFS FLFVFIAAMS FFLNYNHYEA MVTWAPQQIV MQFSEQFKKL MKHPRRPCSC 60
KACVSELGLS LWFDERFNQT MQPLLTTQNA LISQDSYRWW LKLQGEKNPK NINETIKELF 120
ETISGDGSQL QERSSSMCRR CAVVGNSGNL RQSHYGQDID SHDFVLRMNR APTVGFESDV 180
GSKTTHHFVY PESFKELPEN VSMIVIPFKT LDLRWIVSAL TTGTINHTYV PVPRKIKVKK 240
EKILVYHPDF LKYVFDHWLQ RHGRYPSTGI LSVVFALHVC DEVNLYGFGA NSKGHWHHYW 300
ENNPSAGAFR QTGVHDGDFE SNITSTLAAV NKIHLFKGR 339
【0122】
配列番号:21
ラティメリア・カルムナエST3Gal1
MARHNHRIMW LLTIILLLCV YMVIYDMGED KQKLIKIPSI RRLSGRTIVL DKKLCSCEKC 60
VSEKEESAWF DERFDPNFQP ILMTEVQDIP SHALQWWLSL QAGNKNYNLS ESIAKLFTVV 120
PRTNHSGIRD PAHCRKCAVV GNSGNLKGSN HGKEIDAHHF VIRMNRARTA GFEPDVGIKT 180
THHLMYPESS QDLQPGVHLV LLPFKIMDFE WIRSALTTGE ITRTYFRVQQ FIKADKDKVL 240
IINPTFFKYV CDHWTEHHGR YPSTGMTALV FALHICDEVS VFGYGADSNG NWHHYWENNR 300
NGGAFRRTGV HSGDFESQII KKLADEGKII FYK 333
【0123】
配列番号:22
シオナ・インテスチナリスST3Gal1
MLINFKLSRV IAMLLVVAIF LTYSWLLLWS TKTALQTNRK NKAGQDEVPV INVIKEDSYV 60
QQKTQNLNKG KRFDLGRVNH SHPREEIQQN NKCGHQLDAS QTRWFRARFN PEIEPVWTQS 120
ALEIDYLVYD WWLSLQSSEA ENLDKTFEAL YKEGVPRKDP FARLTHDREA GCRSCAVVGN 180
SGNILNSNYG NVIDGHDFVI RMNKGPTYNY ENDVGSKTTH RFMYPTTAAS SLPQGVSLVL 240
VPFQPLDIKW LLSALTTGEI TRTYQPLVRR VTCDKSKITI ISPTFIRYVH DRWTQHHGRY 300
PSTGLLALIY ALHECDEVDV YGFGANRAGN WHHYWEDLPP HVAGAFRKTG VHDSAQENEI 360
IDQLHIHGLL RVHRSEQSS 379
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]