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特許6395966仕訳ルール作成支援装置、仕訳ルール作成支援方法、及び仕訳ルール作成支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6395966
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】仕訳ルール作成支援装置、仕訳ルール作成支援方法、及び仕訳ルール作成支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/00 20120101AFI20180913BHJP
【FI】
   G06Q40/00 400
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-81558(P2018-81558)
(22)【出願日】2018年4月20日
【審査請求日】2018年5月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514020389
【氏名又は名称】TIS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146330
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100185236
【弁理士】
【氏名又は名称】関 誠之
(72)【発明者】
【氏名】金枝 宏明
【審査官】 関 博文
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6261808(JP,B1)
【文献】 特許第6161229(JP,B1)
【文献】 特開2014−235484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引の内容を表す取引データと当該取引の内容を仕訳した勘定科目を含む過去の仕訳データとを用いて、前記取引の内容を所定の勘定科目へ仕訳するための対応関係を表す仕訳ルールの作成を支援する仕訳ルール作成支援装置であって、
前記取引データのデータ構造に含まれる項目名が第1のキーワード群のいずれかを含み、対応するフィールドに格納される値が第2のキーワード群のいずれかを含む項目を用いて前記過去の仕訳データに含まれる勘定科目と前記取引データに登録され得る値との関連度を求め、関連度の高い値と前記勘定科目との組み合わせを仕訳ルールの候補として抽出する分析処理部と、
前記候補のうち、ユーザが選択した仕訳ルールを取得し、記憶装置に格納する規則作成部と、
を備える仕訳ルール作成支援装置。
【請求項2】
前記項目名及び前記対応するフィールドに格納される値として、それぞれデータの定義において自然言語で記述された情報を用い、
前記取引データは、複数の組織における取引の内容を含む
請求項1に記載の仕訳ルール作成支援装置。
【請求項3】
前記過去の仕訳データは、複数の会計基準において前記取引の内容を仕訳する勘定科目を含み、
前記規則作成部は、会計基準ごとに取引データに登録され得る値と勘定科目との組み合わせを仕訳ルールとして取得するする
請求項1又は2に記載の仕訳ルール作成支援装置。
【請求項4】
取引の内容を表す取引データと当該取引の内容を仕訳した勘定科目を含む過去の仕訳データとを用いて、前記取引の内容を所定の勘定科目へ仕訳するための対応関係を表す仕訳ルールの作成を支援する仕訳ルール作成支援方法であって、
前記取引データのデータ構造に含まれる項目名が第1のキーワード群のいずれかを含む項目であって、対応するフィールドに格納される値が第2のキーワード群のいずれかを含む項目を用いて前記過去の仕訳データに含まれる勘定科目との関連度を学習し、関連度の高い値と前記勘定科目との組み合わせを仕訳ルールの候補として抽出するステップと、
前記候補のうち、ユーザが選択した仕訳ルールを取得し、記憶装置に格納するステップと、
をコンピュータが実行する仕訳ルール作成支援方法。
【請求項5】
取引の内容を表す取引データと当該取引の内容を仕訳した勘定科目を含む過去の仕訳データとを用いて、前記取引の内容を所定の勘定科目へ仕訳するための対応関係を表す仕訳ルールの作成を支援するための仕訳ルール作成支援プログラムであって、
前記取引データのデータ構造に含まれる項目名が第1のキーワード群のいずれかを含む項目であって、対応するフィールドに格納される値が第2のキーワード群のいずれかを含む項目を用いて前記過去の仕訳データに含まれる勘定科目との関連度を学習し、関連度の高い値と前記勘定科目との組み合わせを仕訳ルールの候補として抽出するステップと、
前記候補のうち、ユーザが選択した仕訳ルールを取得し、記憶装置に格納するステップと、
をコンピュータに実行させる仕訳ルール作成支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕訳ルール作成支援装置、仕訳ルール作成支援方法、及び仕訳ルール作成支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェブサーバにおけるクラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理装置が提案されている。ウェブサーバは、ウェブ明細データを取引ごとに識別し、各取引を、各取引の取引内容の記載に含まれるキーワードに基づいて、各キーワードに1又は複数の勘定科目を対応づけて生成されたラーンド・データベースを参照して、特定の勘定科目に自動的に仕訳する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−16696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、キーワードと勘定科目との関係を学習して仕訳を行う方法が提案されていた。しかしながら、仕訳の規則を機械学習により作成する場合、仕訳の妥当性を保証することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、ユーザによる仕訳ルールの作成を支援する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る仕訳ルール作成支援装置は、取引の内容を表す取引データと当該取引の内容を仕訳した勘定科目を含む過去の仕訳データとを用いて、取引の内容を所定の勘定科目へ仕訳するための対応関係を表す仕訳ルールの作成を支援する。また、仕訳ルール作成支援装置は、取引データのデータ構造に含まれる項目名が第1のキーワード群のいずれかを含み、対応するフィールドに格納される値が第2のキーワード群のいずれかを含む項目を用いて過去の仕訳データに含まれる勘定科目と取引データに登録され得る値との関連度を求め、関連度の高い値と勘定科目との組み合わせを仕訳ルールの候補として抽出する分析処理部と、候補のうち、ユーザが選択した仕訳ルールを取得し、記憶装置に格納する規則作成部とを備える。
【0007】
このようにすれば、ユーザが仕訳ルールを作成するための候補となる情報を出力することができ、ユーザは内容がブラックボックスでない仕訳ルールを定義できるようになる。
【0008】
また、項目名及び対応するフィールドに格納される値として、それぞれデータの定義において自然言語で記述された情報を用い、取引データは、複数の組織における取引の内容を含むようにしてもよい。このようにすれば、組織に固有の情報でなく、複数の組織に共通する特徴を抽出することができ、例えば海外の関連会社を含めたグループ会計を実現することができる。
【0009】
また、過去の仕訳データは、複数の会計基準において取引の内容を仕訳する勘定科目を含み、機械学習部は、会計基準ごとにユーザが選択した項目のフィールドに登録された値
と、過去の仕訳データの勘定科目との対応関係を機械学習するようにしてもよい。このようにすれば、異なる会計基準にしたがった仕訳明細及び参考残高等の会計データを容易に出力することができるようになる。
【0010】
なお、課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。また、課題を解決するための手段の内容は、コンピュータ等の装置若しくは複数の装置を含むシステム、コンピュータが実行する方法、又はコンピュータに実行させるプログラムとして提供することができる。なお、プログラムを保持する記録媒体を提供するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
ユーザによる仕訳ルールの作成を支援する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】システムの構成の一例を示す図である。
図2】拠点サーバ、会計サーバ及びユーザ端末の構成の一例を示すブロック図である。
図3】仕訳ルール作成処理の一例を示す処理フロー図である。
図4】取引データの一例を示す図である。
図5】条件の一例を示す図である。
図6】5W3Hの観点で項目を分類するためのキーワードの一例を示す図である。
図7】識別性能を評価するための基準の一例を示す図である。
図8】取引データから生成される識別キーの一例を示す図である。
図9】勘定科目の推測結果の一例を示す図である。
図10】仕訳ルールの候補の他の例を示す図である。
図11】日本の会計基準に従った勘定科目の一例を示す図である。
図12】IFRS基準に従った勘定科目の一例を示す図である。
図13】仕訳処理の一例を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る会計システムの構成の一例を示す図である。会計システム1は、企業のグループ会社や支社に設けられる拠点サーバ2(図1では21、22、・・・)と、複数の会社の会計を一元的に管理する会計サーバ3と、会計システム1を使用する企業の担当者や会計システム1を提供する企業の担当者等が使用するユーザ端末4とを備え、これらの構成要素が、インターネットやLAN(Local Area Network)等を含むネットワーク5を介して互いに通信可能に接続されている。なお、各装置の数は、図示した構成には限定されない。会計サーバ3はいわゆるクラウド上でサービスを提供する装置であってもよく、複数の拠点サーバ2は基幹業務を行う異なる企業のサーバを含むものであってもよい。
【0015】
会計サーバ3は、例えば生産、受注、購買のような企業が行う取引の内容を表す伝票等のデータを、拠点サーバ2から取得する。また、会計サーバ3は、取引の内容を、所定の仕訳ルールに基づいて勘定科目に仕訳し、仕訳明細及び参考残高ファイルに登録する。本実施形態では、ユーザである企業の国内外のグループ会社等、複数の組織に同一の仕訳ルールを適用することで、複数の企業を一元的に管理することができる。また、システムは、所定の期間の取引について、仕訳明細の計上を行い、その仕訳の積上げを行った参考残高を作成し、仕訳明細及び参考残高を出力することができる。仕訳ルールは、日本の会計
基準であるJ−GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)、米国会計基準であるUS−GAAP、国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)等の会計基準毎に定めておき、選択された会計基準に基づく出力ができ
るようにしてもよい。なお、会計サーバ3は、本発明に係る仕訳ルール作成支援装置に相当する。
【0016】
また、仕訳ルールは、取引の内容を表すデータと勘定科目の教師値との組み合わせを用いて機械学習を行い、ユーザに提案される。本実施形態では、会計サーバ3は、取引の内容を表すデータに含まれる項目(属性)のうち、仕訳ルールに用いる項目を抽出し、当該項目に対して登録された値の特徴を仕訳ルールの候補としてユーザに提案する。このようにして、ユーザが仕訳ルールを作成するための支援を行うことができる。
【0017】
図2は、拠点サーバ2、会計サーバ3及びユーザ端末4の構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
<拠点サーバ>
拠点サーバ2は、一般的なコンピュータであり、通信I/F(Interface)21と、記
憶装置22と、入出力装置23と、プロセッサ24と、バス25とを備えている。
【0019】
通信I/F21は、例えばネットワークカードや通信モジュールであり、所定のプロトコルに基づき、ネットワーク5を介して他のコンピュータと通信を行う。
【0020】
記憶装置32は、RAM(Random access memory)やROM(Read Only Memory)等の主記憶装置及びHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置である。主記憶装置は、プロセッサが読み出したプログラムやデータを一時的に記憶したり、プロセッサの作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロセッサが実行するプログラムや、他の装置との間で送受信される情報等を記憶する。
【0021】
入出力装置23は、例えばキーボード、マウス等の入力装置や、モニタ等の出力装置、タッチパネル等のユーザインターフェースである。
【0022】
プロセッサ24は、CPU等の演算処理装置であり、プログラムを実行することにより本実施の形態に係る各処理を行う。拠点サーバ2においては、プロセッサ24内に機能ブロックを示している。プロセッサ24は、取引情報処理部241を含む。
【0023】
取引情報処理部241は、企業の支社等の拠点で発生した取引の内容を表す伝票等の情報を、通信I/F21を介して会計サーバ3へ送信する。
【0024】
以上のような構成要素が、バス25を介して接続されている。
【0025】
<会計サーバ>
会計サーバ3も一般的なコンピュータであり、通信I/F(Interface)31と、記憶
装置32と、入出力装置33と、プロセッサ34と、バス35とを備えている。
【0026】
通信I/F31は、例えばネットワークカードや通信モジュールであり、所定のプロトコルに基づき、ネットワーク5を介して他のコンピュータと通信を行う。
【0027】
記憶装置32は、RAMやROM等の主記憶装置及びHDDやSSD、フラッシュメモリ等の補助記憶装置である。主記憶装置は、プロセッサが読み出したプログラムやデータを一時的に記憶したり、プロセッサの作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロ
セッサが実行するプログラムや、他の装置との間で送受信される情報等を記憶する。
【0028】
入出力装置33は、例えばキーボード、マウス等の入力装置や、モニタ等の出力装置、タッチパネル等のユーザインターフェースである。
【0029】
プロセッサ34は、CPU等の演算処理装置であり、プログラムを実行することにより本実施の形態に係る各処理を行う。会計サーバ3においても、プロセッサ34内に機能ブロックを示している。プロセッサ34は、データ分析部341と、規則作成部342と、運用処理部343とを含む。
【0030】
データ分析部341は、取引データのデータ構造に含まれる項目名が所定のキーワード群(第1のキーワード群とも呼ぶ)のいずれかを含む項目、又は対応するフィールドに格納される値が所定のキーワード群(第2のキーワード群とも呼ぶ)のいずれかを含む項目を抽出する。また、規則作成部342は、抽出された項目に対して登録された値と、勘定科目との関係(「取引パターン」とも呼ぶ)を機械学習する。例えば、機械学習により、取引データから条件付き確率に基づいて仕訳先の勘定科目を推定するためのベイジアンネットワークを作成する。また、規則作成部342は、項目に登録された値と勘定科目との組み合わせを含む仕訳ルールの候補をユーザに提示し、ユーザの操作に基づいて採用する仕訳ルールが決定される。運用処理部343は、システム1の運用段階において、作成された仕訳ルールに基づいて取引の内容を仕訳する処理を行う。
【0031】
以上のような構成要素が、バス35を介して接続されている。
【0032】
<ユーザ端末>
ユーザ端末4は、一般的なコンピュータであり、通信I/F41と、記憶装置42と、入出力装置43と、プロセッサ44と、バス45とを備えている。
【0033】
通信I/F41は、例えばネットワークカードや通信モジュールであり、所定のプロトコルに基づき、他の装置と通信を行う。
【0034】
記憶装置42は、RAMやROM等の主記憶装置及びHDDやSSD、フラッシュメモリ等の補助記憶装置である。主記憶装置は、プロセッサが読み出したプログラムやデータを一時的に記憶したり、プロセッサの作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロセッサが実行するプログラムや、他の装置との間で送受信される情報を記憶する。
【0035】
入出力装置43は、例えばキーボード、マウス等の入力装置や、モニタ等の出力装置、タッチパネル等のユーザインターフェースである。
【0036】
プロセッサ44は、CPU等の演算処理装置であり、プログラムを実行することにより本実施の形態に係る各処理を行う。ユーザ端末4についても、プロセッサ44内に機能ブロックを示している。プロセッサ44は、例えば、規則設定部441と、表示処理部442とを含む。
【0037】
規則設定部441は、会計サーバ3の規則作成部342が提案する仕訳ルールの候補を通信I/F41を介して受信し、入出力装置43に出力させる。また、規則設定部441は、入出力装置43を介して、ユーザが採用する仕訳ルールの選択を受け付ける。例えば、ユーザは、ユーザ端末4にインストールされたインターネットブラウザを介して、会計サーバ3の出力する処理結果を照会すると共に、仕訳ルールの設定を行うことができるようにしてもよい。また、規則設定部441は、通信I/F41を介してユーザが採用した仕訳ルールを会計サーバ3へ送信する。表示処理部442は、ユーザが要求する財務諸表
等の会計データを会計サーバ3から取得し、入出力装置43に出力させる。
【0038】
以上のような構成要素が、バス45を介して接続されている。
【0039】
<仕訳ルール作成処理>
図3は、仕訳ルールの候補をユーザに提案し、ユーザが仕訳ルールを作成する操作を支援する仕訳ルール作成処理の一例を示す処理フロー図である。なお、会計サーバ3の記憶装置32には、取引の内容を表す取引データと、機械学習の教師値となる、ユーザが仕訳を行った勘定科目を表すデータとの組み合わせ、取引データのデータ構造や項目名(属性名)等を含むデータ定義等の情報が予め登録されているものとする。
【0040】
会計サーバ3のデータ分析部341は、記憶装置42から取引データを読み出す(図3:S1)。本ステップでは、データ分析部341は、本システムのユーザ企業に発生する受注、生産、販売、その他の様々な取引の内容を表す取引データを読み出す。
【0041】
図4は、取引データの一例を示す図である。図4の表は、ファイルID、取引区分、取引種別、・・・、集計分類コード、処理日、取引金額、取引件数の各項目(属性)を含む。また、各項目に対応するフィールドには、それぞれ所定の値が登録されている。登録される値は、いわゆる識別コードのように予め定められた英数字等である場合もあるが、図4の例では括弧内に各コードが表す内容を自然言語(例えば日本語)で示している。例えば、1レコード目のデータは、項目「取引区分」に対応するフィールドに識別コード「1」が登録されており、「1」は括弧内に示す通り「クレジット」を表している。このような取引データに含まれる値が示す内容は、記憶装置32に予め記憶されているデータ定義の情報に基づいて判断できるものとする。また、図4の項目名に示すような、自然言語で記述された名称もデータ定義の情報に含まれるものとする。
【0042】
また、データ分析部341は、取引データと勘定科目との組み合わせを仕訳ルールの候補として抽出する(図3:S2)。本ステップでは、データ分析部341は、まず、取引データに含まれる複数の項目のうち取引のパターンを識別するために用いる項目の候補を抽出する。具体的には、予め定められている条件に基づいて候補の項目を抽出する。例えば、項目名が、取引を識別する手がかりとなる複数のキーワード(第1のキーワード群とも呼ぶ)のいずれかを含むこと等の条件を用いるようにしてもよい。
【0043】
図5は、条件の一例を示す図である。図5の表は、分類、判断条件の各項目(属性)を含む。各項目に対応するフィールドには、取引データの項目を候補として抽出するための条件が登録されている。本実施形態では、取引データに含まれる値が、図5に示す条件のうち「桁数」、「リテラル」、「バリエーション」に一致し、項目名が「キーワード」のうち少なくとも1つと一致する項目が抽出される。図5の例では、取引データのある項目に対応するフィールドに格納された値が5桁以内であり、当該項目のデータ型が英数字又は数字であり、格納された値のバリエーション(すなわち、項目値のとり得る値)が50種類以内であり、且つ項目定義の項目名がキーワードのいずれかを含む場合に、当該項目が抽出される。なお、項目のデータ型とは、項目値として格納されるコード値のデータ型であり、自然言語で記述された名称は用いないものとする。例えば、図4に示した項目のうち、ファイルID、取引区分、取引種別、集計分類コード、取引金額、取引件数の各項目が抽出される。
【0044】
また、データ分析部341は、抽出された項目に対して登録された値とあらかじめ定められたキーワードとに基づいて、抽出された項目を5W3Hの観点で分類する。5W3Hとは、課題を表すWHAT(何を)、動機を表すWHY(なぜ)、時期を表すWHEN(いつ)、場所を表すWHERE(どこで)、対象を表すWHO(誰が)、方法を表すHO
W(どのように)、金額を表すHOW MUCH(いくら)、規模を表すHOW MANY(どれくらい)を含む。分類を行うことで、各項目の会計における意味合いを定義することができる。
【0045】
図6は、5W3Hの観点で項目を分類するためのキーワードの一例を示す図である。図6の表は、分類、キーワードの各項目を含む。分類の項目に対応するフィールドには、5W3Hの観点のいずれかが登録されている。また、キーワードの項目に対応するフィールドには、各観点に分類するためのキーワードが登録されている。図6に示すような表を用いて、データ分析部341は、取引データに含まれる値がキーワードを含む場合、当該値が登録された取引データの項目を、図6においてキーワードに対応付けられた5W3Hの観点に分類する。
【0046】
例えば、図4から抽出された項目を図6の例に従って分類すると、ファイルIDの項目はいずれの観点にも分類されない。取引区分の項目は、図6のキーワード「クレジット」を含むため、観点「WHY」に分類される。同様に、取引種別の項目はHOWに分類され、取引金額の項目はHOW MUCHに分類され、取引件数はHOW MANYに分類される。なお、5W3Hの観点による分類は、出力データのレイアウトを決定する際にも用いるようにしてもよい。
【0047】
また、データ分析部341は、観点ごとにあらかじめ定められた勘定科目を識別するための性能を評価するためのキーワード(第2のキーワード群とも呼ぶ)を用いて、取引データに含まれる項目のうち「WHAT」、「WHY」、「HOW」の観点に分類された項目の正答率を求める。
【0048】
図7は、識別性能を評価するための基準の一例を示す図である。図7の表は、判別対象、分析内容の各項目を含む。判別対象の項目に対応するフィールドには、取引データのうち評価する対象が登録されている。分析内容の項目には、対象を評価するための基準が登録されている。図7の例では、正答率(「一致率」又は「関連度」とも呼ぶ)を求めるためのキーワードが登録されており、取引データの各項目について、すべてのレコードのうち図7に示すキーワードのいずれかを含むレコードの割合を正答率として算出する。
【0049】
そして、データ分析部341は、正答率が所定の閾値以上である項目を、取引パターンを識別するための識別キーに採用する。識別キーは、項目とヒットした1以上のキーワードとの組み合わせを含む。
【0050】
図8は、図4の取引データから生成される識別キーの一例を示す図である。図8の例では、取引区分、取引種別の各項目について、取引データに含まれる値が登録されている。図4に示した取引データに含まれる値は、いわゆるコード値でなく自然言語で記述された名称を用いて所定のキーワードとの一致率が求められるため、個別の企業等に固有の特徴でなく、複数の企業に適用できる汎用的な仕訳ルールの候補を作成することができるようになる。また、例えばグループ企業に含まれる複数の企業の取引データを用いて仕訳ルールの候補を作成することで、グループ企業全体に適用し得る仕訳ルールの候補が作成できるようになる。
【0051】
また、データ分析部341は、取引データと仕訳先の勘定科目との関係を機械学習した学習済みモデルを用いて、識別キーによって勘定科目を推測させる。学習済みモデルは、過去に当該企業(又はグループ企業)において発生した取引データに含まれる上述の識別キーと仕訳先の勘定科目との関係を機械学習したモデルである。
【0052】
機械学習の手法は特に限定されないが、例えばベイジアンネットワークを利用すること
ができる。すなわち、識別キーに採用された項目に格納され得る値を変数として、各変数をノードとした有効グラフで表されるモデル及びノード間の条件付き確率(重み)を決定する。なお、モデルの決定及び条件付き確率の決定は、既存の技術を利用して行うことができる。ベイジアンネットワークによれば、文字列で表される学習データをそのまま用いて、例えば前処理として数値化することなく、統計的な処理ができるため、本システムが行う仕訳処理に適している。
【0053】
図9は、勘定科目の推測結果の一例を示す図である。図9の表は、識別キーとして抽出された取引区分、取引種別の各項目と、上述した正答率と、推測結果である借方科目、貸方科目の各項目を含む。科目の推測結果は、複数出力するようにしてよく、さらに正答率等に基づいて優先順位をつけるようにしてもよい。図9に示すような識別キーと推測結果との組み合わせ(すなわち、取引データに含まれる項目値と仕訳先の勘定科目の候補との組み合わせ)が、勘定科目に仕訳するための仕訳ルールの候補としてユーザに提示される。
【0054】
なお、例えば学習データとして用いた取引データに存在する件数が閾値よりも小さい値と仕訳先の勘定科目との組み合わせについては、例えばイレギュラーなデータの可能性がある旨のフラグを立て、ユーザに通知するようにしてもよい。このようにすれば、発生頻度の低いデータに基づく仕訳ルールの設定を抑制できる。また、フラグの立てられた取引データに含まれる項目値と仕訳先の勘定科目の候補との組み合わせについては、当該仕訳ルール候補が生成される根拠となった取引データをユーザが参照(ドリルダウン)できるようにしてもよい。このようにすれば、ユーザに対し、仕訳ルールを設定するか否か判断するための材料を提供することができる。
【0055】
図10は、仕訳ルールの候補の他の例を示す図である。図10の表は、図9の項目に加え、取引データに含まれる項目のうち、5W3Hのいずれかに分類された項目を含む。このように、仕訳ルールの候補には、5W3Hの観点で分類した項目及び当該項目に対応するフィールドに登録された値を出力するようにしてもよい。これらの項目は、仕訳ルールの一部として用いるようにしてもよいし、出力する会計データの一部として用いるようにしてもよい。
【0056】
図3の説明に戻り、会計サーバ3の規則作成部342は、仕訳ルールの候補を通信I/F41を介してユーザ端末4へ送信する(図3:S3)。一方、ユーザ端末4の規則設定部441は、通信I/F41を介して仕訳ルールの候補を受信する(S4)。例えば、ユーザ端末4のインターネットブラウザに、仕訳ルールの候補が表示される。また、規則設定部441は、受信した仕訳ルールの候補を入出力装置43に出力すると共に、ユーザの操作に基づいて選択を受け付ける(S5)。本ステップでは、ユーザが採用する仕訳ルールが選択される。そして、規則設定部441は、採用された仕訳ルールを示す情報を、通信I/F41を介して会計サーバ3へ送信する(S6)。例えば、ユーザは、インターネットブラウザを介して仕訳ルールを選択する。
【0057】
一方、会計サーバ3の規則作成部342は、通信I/F31を介して、採用された仕訳ルールを示す情報を受信し(S7)、記憶装置32に格納する(S8)。以上のようにして、仕訳ルールが作成される。
【0058】
また、仕訳ルールを複数の会計基準についてそれぞれ作成しておき、ユーザの選択に応じて異なる会計基準に従った仕訳明細を出力できるようにしてもよい。また、5W3Hの分類に基づき、出力する会計データ(例えば、仕訳明細及び参考残高)のレイアウトを定めるようにしてもよい。
【0059】
図11は、日本の会計基準に従った勘定科目の一例を示す図である。図12は、IFRS基準に従った勘定科目の一例を示す図である。それぞれ、複数の明細について元データ、会計帳簿、勘定科目、金額データの項目を含む。このように、複数の会計基準における勘定項目を登録しておくようにしてもよい。
【0060】
<仕訳処理>
図13は、仕訳処理の一例を示す処理フロー図である。なお、会計サーバ3の記憶装置32には、図3に示したような仕訳ルール作成処理によって作成された仕訳ルールが記憶されているものとする。
【0061】
拠点サーバ2の取引情報処理部241は、発生した取引の内容を示す取引データを、通信I/F21を介して会計サーバ3へ送信する(図11:S11)。本ステップの処理は、取引の発生が発生する都度、日時、月次等の所定のタイミングで行われる。また、図4に示したような取引データが送信される。
【0062】
一方、会計サーバ3の運用処理部343は、通信I/F31を介して取引データを受信し(S12)、仕訳処理を行う(S13)。本ステップでは、予め定められた仕訳ルールに基づいて仕訳が行われ、記憶装置32に格納された仕訳明細及び参考残高のデータに登録される。
【0063】
また、ユーザ端末4の表示処理部442は、入出力装置43を介してユーザから会計データ(仕訳明細及び参考残高)の表示を要求する操作を受け付けると、通信I/F41を介して会計サーバ3へ所望の会計データを要求する旨の情報を送信する(S14)。要求は、集計する期間、集計するグループ会社の範囲、会計帳簿の種別、適用する会計基準等の少なくとも一部を指定するものであってもよい。
【0064】
会計サーバ3の運用処理部343は、通信I/F31を介して要求を受けると(S15)、仕訳明細帳のデータを読み出し、要求に応じて会計データ(仕訳明細及び参考残高)を出力する(S16)。また、運用処理部343は、出力した会計データを、通信I/F31を介してユーザ端末4へ送信する(S17)。
【0065】
そして、ユーザ端末4の表示処理部442は、通信I/F41を介して会計データを受信し(S18)、記憶装置42に記憶させたり、入出力装置43に出力させたりする。以上のように、取引データを仕訳すると共に所望の形式で仕訳明細及び参考残高のデータを出力することができるようになる。
【0066】
<効果>
本システムによれば、ユーザが仕訳ルールを作成するための支援をすることができ、ユーザは内容がブラックボックスでない仕訳ルールを定義できるようになる。また、仕訳ルールの候補を作成する際には、項目名及び値として、それぞれデータの定義において自然言語で記述された情報を用いているため、グループ会社のような異なる組織に共通して適用できる仕訳ルールの候補を抽出し得る。また、会計基準ごとに仕訳ルールを作成するようにしてもよい。このようにすれば、異なる会計基準にしたがった財務諸表等の会計データを容易に出力することができるようになる。
【0067】
<その他>
なお、上述した構成は一例であり、本発明は例示した構成に限定されない。上述した事項は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【0068】
また、本発明は上述の処理を実行するコンピュータプログラムを含む。さらに、当該プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に属する。当該プログラムが記録された記録媒体については、コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、上述の処理が可能となる。
【0069】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、ハードディスクドライブやROM等がある。
【符号の説明】
【0070】
1 :会計システム
2 :拠点サーバ
21 :通信I/F
22 :記憶装置
23 :入出力装置
24 :プロセッサ
241 :取引情報処理部
25 :バス
3 :会計サーバ
31 :通信I/F
32 :記憶装置
33 :入出力装置
34 :プロセッサ
341 :データ分析部
342 :規則作成部
343 :運用処理部
35 :バス
4 :ユーザ端末
41 :通信I/F
42 :記憶装置
43 :入出力装置
44 :プロセッサ
441 :規則設定部
442 :表示処理部
45 :バス
5 :ネットワーク
【要約】
【課題】ユーザによる仕訳ルールの作成を支援する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】仕訳ルール作成支援装置は、取引の内容を表す取引データと当該取引の内容を仕訳する勘定科目を含む過去の仕訳データとを用いて、取引の内容を所定の勘定科目へ仕訳するための対応関係を表す仕訳ルールの作成を支援する。また、仕訳ルール作成支援装置は、取引データのデータ構造に含まれる項目名が第1のキーワード群のいずれかを含み、対応するフィールドに格納される値が第2のキーワード群のいずれかを含む項目を用いて過去の仕訳データに含まれる勘定科目と取引データに登録され得る値との関連度を求め、関連度の高い値と勘定科目との組み合わせを仕訳ルールの候補として抽出する分析処理部と、候補のうち、ユーザが選択した仕訳ルールを取得し、記憶装置に格納する規則作成部とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13