特許第6396002号(P6396002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396002
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】金属検出機
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/11 20060101AFI20180913BHJP
   G01V 3/10 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G01V3/11 C
   G01V3/10 J
   G01V3/10 H
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-111012(P2013-111012)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-228522(P2014-228522A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良文
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−273535(JP,A)
【文献】 特開昭62−039781(JP,A)
【文献】 特開平05−267061(JP,A)
【文献】 特開平08−101279(JP,A)
【文献】 特開2006−098117(JP,A)
【文献】 特開平02−093394(JP,A)
【文献】 特開2000−046956(JP,A)
【文献】 特開2011−196773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/10 − 3/11
G01N 27/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(22)の一方の面(22a)に形成され、被検査体(W)が通過する通過領域に磁界を発生させる1つの送信コイル(23)と、
前記1つの送信コイルの平面上の形状が対称となる中心に対し、前記被検査体の通過方向(A)と交差する方向に並んだ2つの受信コイル(24a,24b)を対とする複数の受信コイルを前記送信コイルの対称性と同じ対称性に配置して前記基板の他方の面(22b)に形成され、前記1つの送信コイルによって発生した磁界を受ける複数組の受信コイル対(24−1,24−2,24−3,24−4,24−5)とを有し、前記複数組の受信コイル対が前記被検査体の通過方向と交差するように前記通過方向の周回り(B)に設けられる検出センサ(2)と、
前記複数組の受信コイル対(24−1,24−2,24−3,24−4,24−5)の各組とそれぞれ対をなして設けられ、各組の2つの受信コイル(24a,24b)からの入力信号の差分を増幅する複数組の差動増幅器(12−1,12−2,12−3,12−4,12−5)と、前記複数組の差動増幅器とそれぞれ対をなして設けられ、前記差動増幅器の出力を前記送信コイルを励磁する周波数と同期して検波する複数組の検波回路(13−1,13−2,13−3,13−4,13−5)と、前記複数組の検波回路とそれぞれ対をなして設けられ、前記検波回路の検波信号と予め設定された閾値とを比較して前記被検査体中の金属異物の混入の有無を判定する複数組の異物判定回路(14−1,14−2,14−3,14−4,14−5)と、を備えた処理回路(3)と、を備え、
前記受信コイルそれぞれの中心部に、該受信コイルの磁束を調整するためのダミーパターン(25)が該受信コイルから独立して形成され、
前記磁界中を通過する前記被検査体中の金属によって生じる前記検出センサの出力信号の変化に基づいて金属異物の検出を行うことを特徴とする金属検出機。
【請求項2】
前記送信コイル(23)の平面上の形状が前記中心に対して線対称であり、対称の基準となる中心線(L)に対して、前記複数組の受信コイル対(24−1,24−2,24−3,24−4,24−5)が線対称に配置されていることを特徴とする請求項1記載の金属検出機。
【請求項3】
前記送信コイル(23)の平面上の形状が前記中心に対して点対称であり、対称の基準となる中心点(P)に対して、前記複数組の受信コイル対(24−1,24−2,24−3,24−4,24−5)が点対称に配置されていることを特徴とする請求項1記載の金属検出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品や衣類などの製品を被検査体として搬送ベルトなどの搬送手段により搬送し、搬送中の被検査体に混入している金属異物を検出する金属検出機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば食品や衣類などの製品を製造する製造ラインには、被検査体としての製品への異物混入として金属異物を検出する検出センサと、検出センサを通過するように被検査体を搬送移動させる搬送コンベアとを備えた金属検出機が設けられている。この種の金属検出機では、搬送コンベアにより被検査体を搬送させて検出センサを通過させ、例えば下記特許文献1に開示されるように、被検査体に混入された金属異物が検査磁界に与える変化を検出センサにより検出することで被検査体内の金属異物の混入の有無を検出している。
【0003】
この特許文献1には、1つの実施例として、被検査体の通過方向に並んだ偶数個の磁気センサを1組として被検査体の通過方向の幅方向に沿って複数組の磁気センサを配置し、磁気センサの出力信号の差を求める差動検出手段を磁気センサ1組毎に設けた金属検出機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−93394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の金属検出機は、各組の磁気センサが被検査体の通過方向に並ぶ偶数個の磁気センサで構成されるので、被検査体の通過方向の幅方向に対する十分な空間分解能を得るためには、被検査体の通過方向に並ぶ受信コイルの分だけ受信コイルの数が増えてしまい、検出センサが大型化するという問題があった。しかも、特許文献1の金属検出機は、磁気センサを構成する送信コイルと受信コイルとが搬送ベルトを挟むように離れて対向配置され、被検査体が送信コイルと受信コイルとの間を横切る構成なので、振動によりコイル間隔が変動して雑音の原因になっていた。しかも、検査対象となる被検査体の高さに合わせて送信コイルと受信コイルとの間の距離を変更する必要があった。
【0006】
尚、特許文献1には、別の実施例として、被検査体の通過方向の幅方向に沿って磁気センサを複数個配置し、磁気センサの出力信号の変化量を出力する手段を磁気センサ毎に設けた金属検出機について開示されているが、磁気センサの出力信号の変化量を出力するために、サンプルホールド回路や減算器などの手段が磁気センサ毎に別途必要となり、構成が複雑化するという問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1を含む従来の金属検出機は、搬送コンベア上を1つずつ搬送される被検査体の金属異物の混入検出に対応したものであり、搬送コンベア上を複数個ずつ搬送される被検査体の金属異物の混入検出に対応しておらず、検査に時間を要して効率が悪かった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、必要最小限の受信コイルを効率的に配置して検出センサを小型化しつつ、被検査体の通過領域の幅方向の空間分解能の向上を図ることができ、また、複数の被検査体の金属異物の検出を行うことができる金属検出機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された金属検出機は、基板22の一方の面22aに形成され、被検査体Wが通過する通過領域に磁界を発生させる1つの送信コイル23と、
前記1つの送信コイルの平面上の形状が対称となる中心に対し、前記被検査体の通過方向Aと交差する方向に並んだ2つの受信コイル24a,24bを対とする複数の受信コイルを前記送信コイルの対称性と同じ対称性に配置して前記基板の他方の面22bに形成され、前記1つの送信コイルによって発生した磁界を受ける複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5とを有し、前記複数組の受信コイル対が前記被検査体の通過方向と交差するように前記通過方向の周回りBに設けられる検出センサ2と、
前記複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5の各組とそれぞれ対をなして設けられ、各組の2つの受信コイル24a,24bからの入力信号の差分を増幅する複数組の差動増幅器12−1,12−2,12−3,12−4,12−5と、前記複数組の差動増幅器とそれぞれ対をなして設けられ、前記差動増幅器の出力を前記送信コイルを励磁する周波数と同期して検波する複数組の検波回路13−1,13−2,13−3,13−4,13−5と、前記複数組の検波回路とそれぞれ対をなして設けられ、前記検波回路の検波信号と予め設定された閾値とを比較して前記被検査体中の金属異物の混入の有無を判定する複数組の異物判定回路14−1,14−2,14−3,14−4,14−5と、を備えた処理回路3と、を備え、
前記受信コイルそれぞれの中心部に、該受信コイルの磁束を調整するためのダミーパターン25が該受信コイルから独立して形成され、
前記磁界中を通過する前記被検査体中の金属によって生じる前記検出センサの出力信号の変化に基づいて金属異物の検出を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載された金属検出機は、請求項1の金属検出機において、
前記送信コイル23の平面上の形状が前記中心に対して線対称であり、対称の基準となる中心線Lに対して、前記複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5が線対称に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載された金属検出機は、請求項1の金属検出機において、
前記送信コイル23の平面上の形状が前記中心に対して点対称であり、対称の基準となる中心点Pに対して、前記複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5が点対称に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る金属検出機によれば、基板の一方の面に1つの送信コイルを形成し、送信コイルの平面上の形状が対称となる中心に対し、2つの受信コイルを対とする複数の受信コイルを送信コイルの対称性と同じ対称性に配置した複数組の受信コイル対を基板の他方の面に形成して検出センサを構成している。具体的には、送信コイルの平面上の形状を中心に対して線対称とし、対称の基準となる中心線Lに対して、複数組の受信コイル対を線対称に配置、又は、送信コイルの平面上の形状を中心に対して点対称とし、対称の基準となる中心点Pに対して、複数組の受信コイル対を点対称に配置している。そして、この検出センサを複数組の受信コイル対が被検査体の通過方向と交差するように通過方向の周回りに設けている。これにより、必要最小限の受信コイルによって検出センサの小型化を図りつつ被検査体の通過領域の幅方向の空間分解能の向上を図ることができる。そして、受信コイルそれぞれの中心部にはダミーパターンが形成されるので、このダミーパターンを適宜トリミングすることにより、隣接する組の受信コイル間で互いに磁束の変化に影響を与えることなく、各組の受信コイルの磁束が各組毎に同等になるように磁束を調整することができる。
【0014】
また、上述した検出センサに加え、各組の受信コイル対の2つの受信コイルからの入力信号の差分を増幅する複数組の差動増幅器と、複数組の差動増幅器の出力を送信コイルを励磁する周波数と同期して検波する複数組の検波回路と、複数組の検波回路の検波信号と予め設定された閾値とを比較して被検査体W中の金属異物の混入の有無を判定する複数組の異物判定回路とを備えた構成によれば、被検査体の通過方向と交差する方向に配置される複数組の受信コイル対により、被検査体の通過領域の幅方向のどの位置に金属異物が混入しているかをある程度特定することができる。
【0015】
さらに、通過領域の幅方向に複数の被検査体を並べて検出センサを通過させることにより、同時に複数の被検査体における金属異物の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る金属検出機の全体構成図である。
図2図1における金属検出機の検出センサの第1実施の形態及び処理回路の内部構成を含む全体構成図である。
図3】(a)本発明に係る金属検出機の検出センサの第2実施の形態を示す平面図である。 (b)本発明に係る金属検出機の検出センサの第3実施の形態を示す平面図である。
図4】本発明に係る金属検出機における受信コイルに設けられるダミーパターンの一例を示す図である。
図5】本発明に係る金属検出機において金属異物の混入時に各受信コイルが出力する信号波形の三次元波形の一例を示す図である。
図6】本発明に係る金属検出機において金属異物の混入時に検波回路が出力する検波信号の信号レベルと閾値との関係を示す図である。
図7】本発明に係る金属検出機における被検査体の搬送形態の他の一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれる。
【0018】
本発明に係る金属検出機は、例えば食品や衣類などの製品を製造する製造ラインに設置され、搬送ベルトなどの搬送手段により食品や衣類などの製品を被検査体Wとして所定間隔で搬送し、搬送中の被検査体Wに異物として混入している金属異物(磁性金属、非磁性体)を検出するものである。
【0019】
金属検出機1は、図1に示すように、検出センサ2と処理回路3とを備えて概略構成される。
【0020】
検出センサ2は、搬送手段としての搬送ベルト21の下部に設けられ、搬送ベルト21により搬送方向(通過方向)Aに被検査体Wが搬送されると、被検査体Wが通過する搬送路(通過領域)aに対して磁界を発生させ、この発生した磁界の磁束変化に応じた検出信号を出力している。
【0021】
検出センサ2は、平板状の基板22と、基板22の一方の面22aにパターン形成される1つの送信コイル23と、2つの受信コイル24a,24bを対として送信コイル23とほぼ同一平面上の基板22の他方の面22bにパターン形成される複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5とから構成される。
【0022】
複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5は、送信コイル23の平面上の形状が対称となる中心に対し、2つの受信コイル24a,24bを対とする複数の受信コイルを送信コイル23の対称性と同じ対称性に配置して基板22の他方の面22bに形成されるものである。
【0023】
具体的に、第1実施の形態の検出センサ2における送信コイル23は、図1図2に示すように、長方形状に1巻きされた導体パターンからなり、図1の点線で示すように、搬送ベルト21のベルト幅に合わせて基板22の一方の面(裏面)22aにパターン形成される。
【0024】
また、第1実施の形態の検出センサ2における複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5は、それぞれが同一の長方形状に1巻きされた導体パターンによる2つの受信コイル24a,24bからなり、図1に示すように、送信コイル23に対向して送信コイル23の形成領域内に収まるように基板22の他方の面(表面)22aにパターン形成される。
【0025】
図1図2に示す第1実施の形態の検出センサ2では、送信コイル23の平面上の形状が線対称であり、対をなす5個の受信コイル24aと5個の受信コイル24bとを、対称の基準となる送信コイル23の対称軸L(送信コイル23の平面上の形状が対称となる中心点(対称点)Pを通る中心軸線)に対して線対称に配置して基板22の長手方向に沿って等間隔にパターン形成し、2つの受信コイル24a,24bを対とする5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5を構成している。
【0026】
尚、図1図2の例では、送信コイル23や受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5がパターン形成される基板面(基板22の表面22a又は裏面22b)と同一平面上で中心点Pを通る基板22の短手方向(被検査体Wの搬送方向A)と平行な中心軸を送信コイル23の対称軸L(送信コイル23の平面上の形状が対称となる中心点(対称点)Pを通る中心軸線)としている。
【0027】
これら5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5は、磁束がほぼ同じであり、1つの送信コイル23から発生する磁界の磁力線が等量交わり、その磁界によって生じる誘起電圧が等しくなっている。
【0028】
尚、図1の例では、検出センサ2を搬送ベルト21の下部に設けた構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、検出センサ2は、5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5が被検査体Wの搬送方向Aと平行にならずに搬送方向Aと交差するように搬送方向A(搬送路a)の周回りBに設けられていれば良い。例えば搬送ベルト21の側面に検出センサ2を設けたり、搬送路aに対して傾斜させて搬送ベルト21の下部や側面に検出センサ2を設けることができる。尚、検査対象となる被検査体Wの高さ範囲が決まっている場合には、被検査体Wの最大高さに合わせて搬送ベルト21の上部に設けるようにしても良い。
【0029】
また、検出センサ2を構成する1つの送信コイル23と5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5は、図1図2の構成に限定されるものではない。図3(a),(b)に示す第2,3実施の形態の検出センサ2を採用することもできる。
【0030】
第2実施の形態の検出センサ2における1つの送信コイル23は、平面上の形状が線対称であり、図3(a)に示すように、被検査体Wの搬送方向Aと直角をなす長手方向が円弧状をなし、短手方向が直線状をなす枠状の導体パターンを不図示の基板22の一方の面22aにパターン形成して構成される。また、5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5は、1つの送信コイル23の対称軸Lに対して互いに対称形状の平行四辺形の導体パターンからなる5個の受信コイル24aと5個の受信コイル24bとを、対称の基準となる送信コイル23の対称軸Lに対して線対称に不図示の基板22の他方の面22bに送信コイル23と対向して送信コイル23の形成領域内にパターン形成して構成される。
【0031】
尚、5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5は、送信コイル23の対称軸Lを中心として、線対称に配置される同じ組の受信コイル24a,24b同士が同じ大きさの対称形状の平行四辺形であれば良く、各組毎に対称形状の平行四辺形の大きさが異なっていても良い。また、受信コイル24a,24bは、中心点(対称点)P又は対称軸Lから等間隔に配置した構成としているが、中心点P又は対称軸Lから離れるに従って面積が小さくなるようにしても良い。すなわち、各組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5は、各組毎の磁束がほぼ同じとなり、1つの送信コイル23から発生する磁界の磁力線が各組毎に等量交わり、その磁界によって生じる誘起電圧が各組毎に等しくなる大きさや配置であれば良い。
【0032】
第3実施の形態の検出センサ2における1つの送信コイル23は、平面上の形状が点対称であり、図3(b)に示すように、被検査体Wの搬送方向Aと交差する方向に延びる縦長の平行四辺形の導体パターンを不図示の基板22の一方の面22aにパターン形成して構成される。また、5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5は、同一の長方形による導体パターンからなる5個の受信コイル24aと5個の受信コイル24bとを、対称の基準となる送信コイル23の中心点(対称点)Pに対して点対称に不図示の基板22の他方の面22bに送信コイル23と対向して送信コイル23の形成領域内にパターン形成して構成される。
【0033】
尚、図3(b)の構成では、全ての組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5を同一の長方形による導体パターンの受信コイル24a,24bで形成しているが、これに限定されるものではない。すなわち、長方形による導体パターンは、対をなす同じ組の受信コイル24a,24b同士が同じ大きさであれば良く、異なる組の受信コイル24a,24bとは大きさが異なっていても良い。また、受信コイル24a,24bは、中心点P又は対称軸Lから等間隔に配置した構成としているが、中心点P又は対称軸Lから離れるに従って面積が小さくなるようにしても良い。すなわち、各組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5は、各組毎の磁束がほぼ同じとなり、1つの送信コイル23から発生する磁界の磁力線が各組毎に等量交わり、その磁界によって生じる誘起電圧が各組毎に等しくなる大きさや配置であれば良い。
【0034】
また、受信コイル24a,24bを形成する導体パターンは、形状が図3(a),(b)に示すような平行四辺形や長方形に限定されるものではなく、例えば正方形、円形、多角形などの他の形状であっても良い。
【0035】
さらに、図1図3の例では、1つの送信コイル23と5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5の巻き数を1巻きとしているが、巻き数が限定されるものではない。これらコイルの巻き数を増加すれば、受信感度を高めることができる。また、図1図3の例では、5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5を図示したが、組数が限定されるものではない。
【0036】
また、各組の受信コイル24a,24bの中心部には、図4に示すように、例えば四角形状の導体パターンからなるダミーパターン25が形成されている。ダミーパターン25は、各組の受信コイル24a,24bをパターン形成した後に適宜トリミングすることにより、各組の受信コイル24a,24bの磁束が各組毎に同等になるように調整することができる。
【0037】
尚、ダミーパターン25は、図4に示すような受信コイル24a,24bの中心部に形成位置が限定されるものではない。すなわち、ダミーパターン25は、隣接する組の受信コイル24a,24bとの間において、互いに磁束の変化に影響を与えない位置に形成すれば良く、その形状も問わないものである。
【0038】
さらに、図1図3に示す10個の受信コイル24a,24bは、10個の被検査体Wを搬送路aの幅方向に並べて搬送させる場合、10個の被検査体Wの搬送経路上で1対1に対応して配置されるように基板22の他方の面にパターン形成される。
【0039】
このように構成される検出センサ2では、発振回路11からの所定周波数の励磁信号により、被検査体Wが搬送される搬送路aに対して1つの送信コイル23から磁界を発生し、この磁界の磁束変化に応じた検出信号を各組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5の受信コイル24a,24bから出力して処理回路3に入力している。
【0040】
ところで、図1図2図3(a)の検出センサ2を採用し、搬送路aの幅方向に複数の被検査体Wを並べて同時に搬送させた場合、極めて少ない事例ではあるが、被検査体Wの同じ位置に金属異物が混入していると、5組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5から複数組の差動増幅器12ー1,12−2,12−3,12−4,12−5の何れかに入力される2つの受信コイル24a,24bの検出信号が同一の変化を示し、その出力が0になってしまい、誤検出するおそれがある。
【0041】
この問題を解消するため、図1図2図3(a)の検出センサ2を採用する場合には、各組の対をなす2つの受信コイル24a,24b上を同時に被検査体Wが通過しないように被検査体Wを搬送させ、被検査体Wに金属異物の混入がある際に差動増幅器12の出力が0にならないようにするのが好ましい。
【0042】
具体的には、搬送路aの幅方向に並ぶ被検査体W間に所定の時間差を持たせて被検査体Wを搬送させたり、各組の受信コイル24a上を同時に被検査体Wが通過し、かつ各組の受信コイル24b上を同時に被検査体Wが通過するように被検査体Wを2組に分けて搬送路a上を並走させる。
【0043】
次に、処理回路3は、検出センサ2の検出信号を処理して被検査体W中の金属異物の混入の有無を判別するもので、図2に示すように、発振回路11、差動増幅器12、検波回路13、異物判定回路14を備えている。
【0044】
発振回路11は、各組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5の受信コイル24a,24b毎にほぼ等量の磁束が鎖交するように、所定周波数の励磁信号を送信コイル23に入力している。また、発振回路11は、発生した所定周波数の励磁信号を、各組の差動増幅器12(12−1,12−2,12−3,12−4,12−5)の出力を同期検波するためのタイミング信号として複数組の検波回路13(13−1,13−2,13−3,13−4,13−5)に入力している。
【0045】
差動増幅器12は、受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5とそれぞれ対をなして設けられている。差動増幅器12−1,12−2,12−3,12−4,12−5は、対をなす各組の受信コイル24a,24bからの2つの入力信号(検出信号)の差分を増幅している。
【0046】
検波回路13は、差動増幅器12−1,12−2,12−3,12−4,12−5とそれぞれ対をなして設けられている。検波回路13−1,13−2,13−3,13−4,13−5は、発振回路11からタイミング信号により、送信コイル23を励磁する周波数と同期して対をなす差動増幅器12−1,12−2,12−3,12−4,12−5の出力を検波している。
【0047】
ここで、被検査体Wの内部に金属異物が混入していて、その混入部分が受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5の何れかの上方を通過した場合、検波回路13−1,13−2,13−3,13−4,13−5からの検波信号は、図5の三次元波形に示すように、金属異物の混入部分の上方に位置する受信コイル(図5の例では、受信コイル対24−1の受信コイル24a)とその両側の受信コイル(図5の例では、受信コイル対24−1の受信コイル24b、受信コイル対24−2の受信コイル24a)に対応する検波信号のみが増大し、他の検波信号はほとんど変化しないで異物判定回路14に出力される。
【0048】
異物判定回路14は、検波回路13−1,13−2,13−3,13−4,13−5とそれぞれ対をなして設けられている。異物判定回路14−1,14−2,14−3,14−4,14−5は、対をなす検波回路13−1,13−2,13−3,13−4,13−5の検波信号の信号レベルと予め設定された閾値(基準レベル)とを比較して被検査体W中の金属異物の混入の有無を判定し、判定結果やアラーム信号を出力している。例えば被検査体Wの内部に混入される金属異物が受信コイル対24−1の上方を通過した場合、異物判定回路14ー1は、図6に示すように、検波回路13ー1の検波信号の信号レベルが閾値を超えるので、被検査体W中に金属異物の混入が有ると判定し、被検査体Wに金属異物が混入していることを知らせるアラーム信号を出力する。
【0049】
次に、上記のように構成される金属検出機1により被検査体Wに金属異物が混入していない場合と金属異物が混入している場合の動作について簡単に説明する。
【0050】
(被検査体Wに金属異物が混入していない場合)
搬送路aを搬送される被検査体Wに金属異物が混入していない場合は、検出センサ2の各組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5における2つの受信コイル24a,24bが受ける磁束は等しい。このため、各組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5における2つの受信コイル24a,24bの検出信号が入力される差動増幅器12ー1,12−2,12−3,12−4,12−5の出力電圧はゼロボルトとなり、検波回路13−1,13−2,13−3,13−4,13−5によって検波される。そして、異物判定回路14ー1,14−2,14−3,14−4,14−5は、全ての検波回路13−1,13−2,13−3,13−4,13−5によって検波される検波信号がゼロボルトであって、閾値を超えていないので、被検査体W中に金属異物の混入が無いと判定する。
【0051】
(被検査体Wに磁性金属が金属異物として混入している場合)
搬送路aを搬送される被検査体Wに鉄などの磁性金属が金属異物として混入している場合は、送信コイル23より発生する磁界により、磁性金属が磁化される。この磁性金属の磁化により、新たに磁性金属による磁界が発生し、磁性金属が通過する受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5のある組の受信コイル24a(又は24b)からは、送信コイル23による磁界と磁性金属の磁化による磁界とを合成した磁束が検出信号として差動増幅器12に入力される。そして、受信コイル24a(又は24b)の検出信号が差動増幅器12に入力されると、送信コイル23による磁束は相殺され、磁性金属による磁束だけを増幅して出力する。これにより、差動増幅器12より出力される電圧は、金属の移動に伴って変化し、移動速度に比例した周波数を有する特徴的な波形となる。そして、異物判定回路14は、この波形が検波回路13によって検波され、その検波信号が閾値を超えると、被検査体W中に金属異物の混入が有ると判定する。
【0052】
(被検査体Wに非磁性体が金属異物として混入している場合)
搬送路aを搬送される被検査体Wに例えばSUS304ステンレス、SUS316ステンレスなどの非磁性体が金属異物として混入している場合は、送信コイル23より発生する磁界により、非磁性体に渦電流が流れる。この渦電流により、新たに磁界が発生し、非磁性体が通過する受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5のある組の受信コイル24a(又は24b)からは、送信コイル23による磁界と渦電流による磁界とを合成した磁束が差動増幅器12に入力される。そして、受信コイル24a(又は24b)の信号が差動増幅器12に入力されると、送信コイル23による磁束は相殺され、渦電流による磁束だけを増幅して出力する。これにより、差動増幅器12より出力される電圧は、金属の移動に伴って変化し、移動速度に比例した周波数を有する特徴的な波形となる。そして、異物判定回路14は、この波形が検波回路13によって検波され、その検波信号が閾値を超えると、被検査体W中に金属異物の混入が有ると判定する。
【0053】
このように、本例の金属検出機1によれば、基板22の一方の面22aに1つの送信コイル23をパターン形成するとともに、送信コイル23の平面上の形状が対称となる中心に対し、2つの受信コイル24a,24bを対とする複数の受信コイルを送信コイル23の対称性と同じ対称性に配置して複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5を基板22の他方の面22bにパターン形成して検出センサ2を構成している。具体的には、送信コイル23の平面上の形状を中心に対して線対称とし、対称の基準となる中心線(対称軸L)に対して、複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5を線対称に配置、又は、送信コイル23の平面上の形状を中心に対して点対称とし、対称の基準となる中心点(対称点)Pに対して、複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5を点対称に配置している。そして、この検出センサ2を複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5が被検査体Wの搬送方向Aと交差するように搬送方向A(搬送路a)の周回りBに設けている。これにより、必要最小限の受信コイルによって検出センサの小型化を図りつつ被検査体Wの搬送幅方向の空間分解能の向上を図ることができる。また、搬送方向Aと交差する方向に配置される複数組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5により、被検査体Wの搬送幅方向のどの位置に金属異物が混入しているかをある程度特定することができる。
【0054】
また、本例の金属検出機によれば、検出センサ2に加え、各組の受信コイル対24−1,24−2,24−3,24−4,24−5の2つの受信コイル24a,24bからの入力信号の差分を増幅する複数組の差動増幅器12ー1,12−2,12−3,12−4,12−5と、複数組の差動増幅器12ー1,12−2,12−3,12−4,12−5の出力を送信コイル23を励磁する周波数と同期して検波する複数組の検波回路13ー1,13−2,13−3,13−4,13−5と、複数組の検波回路13ー1,13−2,13−3,13−4,13−5の検波信号と予め設定された閾値とを比較して被検査体W中の金属異物の混入の有無を判定する複数組の異物判定回路14−1,14−2,14−3,14−4,14−5とを備えた構成なので、搬送路aの幅方向に複数の被検査体Wを並べて搬送させ、同時に金属異物の検出を行うことができる。
【0055】
特に、図3(b)の配置構成による検出センサ2を採用して搬送路a上に複数の被検査体Wを並走させた場合には、複数の被検査体Wがある程度の時間差を持って検出センサ2の受信コイル24a,24b上を通過するので、これらを区別して金属異物の混入の有無を検出することができる。
【0056】
ところで、上述した実施の形態では、被検査体Wの搬送手段として搬送ベルト21を例にとって説明したが、この構成に限定されるものではなく、被検査体Wが検出センサ7を通過する構成であれば良い。例えば図7に示すように、被検査体Wを滑降させるための傾斜面からなる搬送路aを有する搬送台26を搬送手段として用い、搬送路aの中途位置の下部に検出センサ22を配置する。これにより、被検査体Wの搬送に特別な動力を使用せず、被検査体Wを搬送路a上に滑降させて金属異物の検出を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 金属検出機
2 検出センサ
3 処理回路
11 発振回路
12(12−1〜12−5) 差動増幅器
13(13−1〜13−5) 検波回路
14(14−1〜14−5) 異物判定回路
21 搬送ベルト(搬送手段)
22 基板
22a 一方の面
22b 他方の面
23 送信コイル
24a,24b 受信コイル
24−1〜24−5 受信コイル対
25 ダミーパターン
26 搬送台(搬送手段)
a 搬送路(通過領域)
W 被検査体
A 搬送方向(通過方向)
B 周回り
P 中心点(対称点)
L 中心線(対称軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7