特許第6396007号(P6396007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396007
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】航空機用電力システム
(51)【国際特許分類】
   B64D 41/00 20060101AFI20180913BHJP
   B64C 13/50 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B64D41/00
   B64C13/50
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-180120(P2013-180120)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-47935(P2015-47935A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大依 仁
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0302153(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0174177(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0232728(US,A1)
【文献】 特表2012−525815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/38 − 13/50
B64D 27/24
B64D 41/00
H02J 1/00 − 1/16
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に備えられる航空機用電力システムであって、
負荷に電力を供給するための所定の直流電源バスを含み、
前記直流電源バスは、2種類以上の異なる様式の少なくとも第1乃至第3電源装置と常時接続可能に構成されており、
前記直流電源バスは、複数の高圧バスを有し、
前記第1電源装置は、前記複数の高圧バスに接続され前記複数の高圧バスを介して充放電されるフライホイールバッテリを有し、
前記第2電源装置は、前記複数の高圧バスの一方に接続された第1主発電機を有し、
前記第3電源装置は、前記複数の高圧バスの他方に接続された第2主発電機を有することを特徴とする、航空機用電力システム。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機用電力システムであって、
前記第1及び第2主発電機の少なくとも一方は、前記航空機に推力を付与するためのエンジンに駆動される主発電機であることを特徴とする、航空機用電力システム。
【請求項3】
請求項2に記載の航空機用電力システムであって、
前記フライホイールバッテリを制御するための蓄電源制御装置をさらに備え、
前記蓄電源制御装置は、前記直流電源バスに接続された1または複数の負荷の電力消費状態に応じて、前記フライホイールバッテリの動作を制御することを特徴とする、航空機用電力システム。
【請求項4】
請求項3に記載の航空機用電力システムであって、
前記蓄電源制御装置は、1または複数の前記負荷に必要な必要電力が所定値を超える場合に、前記フライホイールバッテリに放電動作を行わせることが可能であることを特徴とする、航空機用電力システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の航空機用電力システムであって、
前記蓄電源制御装置は、1または複数の前記負荷に必要な必要電力が所定値以下である場合に、前記フライホイールバッテリに蓄電動作を行わせることが可能であることを特徴とする、航空機用電力システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の航空機用電力システムであって、
前記所定の直流電源バスは、複数設けられており、
一の前記所定の直流電源バスと他の前記所定の直流電源バスとは、電力を送受可能に接続されていることを特徴とする、航空機用電力システム。
【請求項7】
請求項6に記載の航空機用電力システムであって、
一の前記所定の直流電源バスは、前記航空機の飛行を制御するためのフライトコントロール機器に電力を供給するためのフライトコントロールシステム用直流電源バスであり、
他の前記所定の直流電源バスは、前記フライトコントロール機器以外の負荷に電力を供給するための直流電源バスであることを特徴とする、航空機用電力システム。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の航空機用電力システムであって、
一の前記所定の直流電源バスと他の前記所定の直流電源バスとは、蓄電および放電が可能なフライホイールバッテリを介して、電力を送受可能に接続されていることを特徴とする、航空機用電力システム。
【請求項9】
請求項8に記載の航空機用電力システムであって、
前記フライホイールバッテリを制御するための蓄電源制御装置をさらに備え、
前記蓄電源制御装置は、複数の前記所定の直流電源バスのうち配電の余力が相対的に大きい前記直流電源バスから前記フライホイールバッテリへ配電させるように前記フライホイールバッテリを動作させることが可能であり、且つ、複数の前記所定の直流電源バスのうち配電の余力が相対的に小さい前記直流電源バスへ前記フライホイールバッテリから電力を出力させることが可能であることを特徴とする、航空機用電力システム。
【請求項10】
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の航空機用電力システムであって、
前記第1及び第2主発電機は、前記航空機に推力を付与するためのエンジンに駆動される主発電機であり
前記第1及び第2主発電機が、前記直流電源バスに接続されることを特徴とする、航空機用電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機においては、電動式の各種機器が設置されており、このような機器は、たとえば、航空機に搭載された電動モータによって駆動される。そして、上記の機器として、たとえば、特許文献1に開示されているように、動翼を駆動する油圧作動式のアクチュエータに対して圧油を供給するための電動式の油圧ポンプが挙げられる。
【0003】
なお、動翼としては、補助翼(エルロン)、方向舵(ラダー)、昇降舵(エレベータ)などの舵面として構成される主操縦翼面、或いは、フラップ、スポイラなどとして構成される二次操縦翼面が挙げられる。また、上記の機器の他の例としては、上記の動翼を駆動する電動アクチュエータ、或いは、ランディングギア(降着装置)などの脚(航空機の機体を地上で支持する機構)、などが挙げられる。
【0004】
また、動翼を駆動するアクチュエータとして、電動式のアクチュエータも知られている。電動式のアクチュエータは、たとえば、ねじ機構を有しており、電動モータの駆動力によって、ねじ機構のロッドが変位する。このロッドの変位によって、動翼が変位される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−247334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえば、上記の電動式のアクチュエータの電動モータは、動翼の変位を開始させるために、大きな電流(イナーシャ加速電流)を必要とする。すなわち、電動モータの動作開始時、イナーシャ加速電流を発生させるために、瞬間的に大きな電流(過渡電流)を発生させる必要がある。その上、複数の電動式アクチュエータを同時に動作させる場合には、複数の電動モータが同時に動作を開始することとなり、航空機において、より大きな電流を瞬間的に発生させる必要がある。
【0007】
このため、通常、航空機は、上記の大きな電流を発生させるために、大きな発電機を備える必要がある。また、航空機は、上記の大きな電流を各電動モータに配分するために、大きな断面積を有するバスが必要である。その結果、航空機の機体の総重量が重くなってしまう。航空機においては、軽量化の要求が大きいため、航空機の機器をより軽量化することへの要請が大きい。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、発電機などの大型化を抑制しつつ、負荷に大電力を供給することのできる、航空機用電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための本発明のある局面に係る航空機用電力システムは、航空機に備えられる航空機用電力システムであって、負荷に電力を供給するための所定の直流電源バスを含み、前記直流電源バスは、2種類以上の異なる様式の電源装置と常時接続可能に構成されている。
【0010】
この構成によると、たとえば、動翼を駆動するための負荷としての電動アクチュエータの電動モータが、航空機の姿勢制御のために動作する際、空気抵抗などの大きな抵抗力に抗することのできる大トルクで動作を開始するために、一時的に大電流(イナーシャ加速電流)を必要とする場合がある。この場合、様式の異なる複数の電源装置のそれぞれから直流電源バスを介して電動モータへ同時に電力が出力されることで、上記の大電流を電動モータへ供給できる。したがって、1つの電源装置で上記の大電流を発生する必要がない。よって、電源装置をより小型にできる。また、複数の電源装置が分散して配置されることとなる。これにより、直流電源バスの線路損失(電力損失)をより小さくできる。特に、航空機は、当該航空機内のバス長さが極めて長くなるため、線路損失を低減する効果は、極めて大きい。その結果、各電源装置をより小型化(軽量化)できる。以上の次第で、本発明によると、発電機などの大型化を抑制しつつ、負荷に大電力を供給することのできる、航空機用電力システムを提供できる。
【0011】
(2)好ましくは、一の前記電源装置は、前記航空機に推力を付与するためのエンジンに駆動される主発電機を含み、他の前記電源装置は、蓄電および放電が可能な蓄電源装置を含む。
【0012】
この構成によると、負荷が瞬間的に大きな電力を必要とする場合には、主発電機と蓄電源装置との協働により、負荷に大きな電力を供給できる。また、負荷に必要な電力が比較的小さい場合には、主発電機で発電された電力で負荷を動作させることができる。このような構成により、主発電機の定格出力をより小さくできる。よって、主発電機と、当該主発電機を駆動させるためのエンジンを、より小型且つ軽量にすることができる。
【0013】
(3)より好ましくは、前記電力システムは、前記蓄電源装置を制御するための蓄電源制御装置をさらに備え、前記蓄電源制御装置は、前記直流電源バスに接続された1または複数の負荷の電力消費状態に応じて、前記蓄電源装置の動作を制御する。
【0014】
この構成によると、蓄電源制御装置は、負荷の電力消費状態に応じて、蓄電源装置からの放電量を設定することができる。これにより、蓄電源装置に貯められた電力を、より効率よく利用することができる。その結果、蓄電源装置は、必要以上に大きな電力を貯める必要がない。よって、当該蓄電源装置をより小型にできる。
【0015】
(4)より好ましくは、前記蓄電源制御装置は、1または複数の前記負荷に必要な必要電力が所定値を超える場合に、前記蓄電源装置に放電動作を行わせる。
【0016】
この構成によると、たとえば、主発電機から負荷に供給できる電力の最大値を超える大きさの電力を負荷に供給する必要がある場合に、蓄電源制御装置は、蓄電源装置の放電動作を行わせることができる。これにより、負荷に必要な電力を安定して供給でき、且つ、主発電機の定格出力をより小さくできる。
【0017】
(5)好ましくは、前記蓄電源制御装置は、1または複数の前記負荷に必要な必要電力が所定値以下である場合に、前記蓄電源装置に蓄電動作を行わせることが可能である。
【0018】
この構成によると、蓄電源制御装置は、負荷への電力供給が不要である間に、蓄電源装置に蓄電動作を行わせることができる。
【0019】
(6)好ましくは、前記所定の直流電源バスは、複数設けられており、一の前記所定の直流電源バスと他の前記所定の直流電源バスとは、電力を送受可能に接続されている。
【0020】
この構成によると、負荷への電力供給経路をスマートグリッド化できる。すなわち、負荷への電力供給経路を多重化することができる。その結果、1つの電源装置の故障などによって電力供給能力が大きく損なわれる事態を抑制できる。したがって、負荷へ電力をより確実に供給することのできる、より信頼性の高い電力システムを実現することができる。また、たとえば、交流電源バス同士を電気的に接続する構成であれば、交流電源バス間の電力の負荷バランスを合わせるための電源位相合わせ、および、電圧レベル合わせが困難である。これに対して、直流電源バス同士を接続する構成であれば、このような手間のかかる調整作業が不要であり、スマートグリッドを、より簡易な構成で実現できる。
【0021】
(7)より好ましくは、一の前記所定の直流電源バスは、前記航空機の飛行を制御するためのフライトコントロール機器に電力を供給するためのフライトコントロールシステム用直流電源バスであり、他の前記所定の直流電源バスは、前記フライトコントロール機器以外の負荷に電力を供給するための直流電源バスである。
【0022】
この構成によると、フライトコントロール機器のための専用の直流電源バスが設けられている。これにより、フライトコントロール機器以外の機器に起因する電圧変動の影響がフライトコントロール機器へ及ぶことを抑制できる。その結果、フライトコントロール機器へ電力をより確実に安定供給できる。また、たとえば、フライトコントロールシステムの電動アクチュエータへ直流電力を供給する構成であれば、電動アクチュエータへ交流電力を供給する場合と比べて、線路損失(電力損失)をより小さくできる。
【0023】
(8)より好ましくは、一の前記所定の直流電源バスと他の前記所定の直流電源バスとは、蓄電および放電が可能な蓄電源装置を介して、電力を送受可能に接続されている。
【0024】
この構成によると、複数の直流電源バス間に配置された蓄電源装置がアキュムレータとして機能することで、複数の直流電源バス間での電力の融通に起因する不安定な電圧変動が生じることを抑制できる。
【0025】
(9)より好ましくは、前記蓄電源装置は、フライホイールバッテリを含んでいる。
【0026】
この構成によると、フライホイールバッテリは、一の直流電源バスからの電力をフライホイールの運動エネルギに一旦変換し、その後、当該運動エネルギを電力に変換してから他の直流電源バスへ出力することができる。このような構成であれば、一の直流電源バスと他の直流電源バスとが直接電気的に接続されることを抑制できる。すなわち、一の直流電源バスと他の直流電源バスとの間で電気的な絶縁を実現できる。よって、複数の直流電源バス間での電力の融通に起因する不安定な電圧変動が生じることを、より確実に抑制できる。
【0027】
(10)より好ましくは、前記電力システムは、前記蓄電源装置を制御するための蓄電源制御装置をさらに備え、前記蓄電源制御装置は、複数の前記所定の直流電源バスのうち配電の余力が相対的に大きい前記直流電源バスから前記蓄電源装置へ配電させるように前記蓄電源装置を動作させることが可能であり、且つ、複数の前記所定の直流電源バスのうち配電の余力が相対的に小さい前記直流電源バスへ前記蓄電源装置から電力を出力させることが可能である。
【0028】
この構成によると、複数の直流電源バス間の電力負荷の偏りをより小さくすることができる。よって、各電源装置の定格出力をより小さくでき、その結果、各電源装置をより小型且つ軽量にできる。
【0029】
(11)好ましくは、一の前記電源装置は、前記航空機に推力を付与するためのエンジンに駆動される主発電機を複数含み、複数の前記主発電機が、前記直流電源バスに接続される。
【0030】
この構成によると、一の主発電機が故障した場合でも、他の主発電機から電力を供給できる。よって、負荷への電力供給をより確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、発電機などの大型化を抑制しつつ、負荷に大電力を供給することのできる、航空機用電力システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施形態にかかる電力システムを有する航空機の一部を示す模式図である。
図2】電力システムの構成の模式図である。
図3】フライトコントロールコンピュータ、および、エルロン駆動装置の構成を示す模式図である。
図4】電動アクチュエータの電動モータの駆動時に必要な電力の特性を説明するためのマップの一例を示す図である。
図5】エルロン制御装置における処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。
図6】フライホイールバッテリ制御装置における処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態の主要部を説明するための模式図である。
図8】本発明の第3実施形態の主要部を説明するための模式図である。
図9】本発明の第3実施形態の変形例を説明するための模式図である。
図10】本発明の第4実施形態の主要部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる電力システム1を有する航空機100の一部を示す模式図である。なお、図1は、航空機100の機体101の前部および中間部を図示しており、機体101の後部についての図示を省略している。図2は、電力システム1の構成の模式図である。
【0035】
図1を参照して、航空機100は、たとえば、旅客機である。航空機100は、機体101と、左右一対のエンジン103L,103Rと、電力システム1とを備えている。
【0036】
機体101は、胴体104と、胴体104に連結された左右一対の主翼102L,102Rと、を有している。
【0037】
主翼102L,102Rには、舵面として、エルロン105L,105R、および、スポイラ106L,106Rが設けられている。これらのエルロン105L,105Rおよびスポイラ106L,106Rは、後述する電動アクチュエータ41,51などによって動作される。
【0038】
エンジン103L,103Rは、たとえば、機体101に推進力を与えるためのジェットエンジンであり、本実施形態では、ターボファンエンジンである。エンジン103L,103Rは、主翼102L,102Rに取り付けられている。エンジン103L,103Rは、図示しない回転軸を有している。エンジン103L,103Rは、電力システム1で消費される電力を発生させるためにも用いられる。
【0039】
なお、電力システム1は、機体101の左舷部に関連する構成と、機体101の右舷部に関連する構成とが同様である。したがって、本実施形態では、電力システム1のうち機体101の左舷部に関連する構成を主に説明し、電力システム1のうち機体101の右舷部に関連する構成の説明の一部は省略する。
【0040】
図1および図2を参照して、本実施形態の電力システム1は、スマートグリッド機能を有しており、後述するDCバス10間での電力融通が可能である。また、電力システム1は、DCバス10およびスマートメータ機能を用いた電力統合管理システムを有しており、後述する電動アクチュエータ41の動作状態に応じて、電力供給を最適化するように構成されている。
【0041】
このように、本実施形態の電力システム1は、電力の効率的な供給および配分を行うことが可能に構成されており、これにより、航空機100のライフサイクル(LCC:Life Cycle Cost)の低減が図られている。以下、電力システム1の具体的な構成を説明する。
【0042】
電力システム1は、複数のDCバス10(11〜16)と、複数の主発電機21,22,23と、外部電源接続部24と、補助発電機(APU:Auxiliary Power Unit)25と、ラムエアタービン(RAT:Ram Air Turbine)26と、フライホールバッテリ(FWB:Flywheel Battery)27と、バッテリ28と、燃料電池29と、を有している。
【0043】
DCバス10(11〜16)は、それぞれ、負荷(電気機器)に電力を配分するために設けられた、電力系統構成部であり、電線などを用いて形成されている。
【0044】
DCバス10は、第1高圧バス11と、第2高圧バス12と、非常用高圧バス13と、FCS(フライトコントロールシステム)用高圧バス14と、中圧バス15と、低圧バス16と、を有している。これらのDCバス11〜16は、いずれも、直流電力を配分するために用いられる。
【0045】
高圧バス11〜14は、高圧電力用のバスであり、本実施形態では、270ボルトの直流電力用に設けられている。FCS用高圧バス14は、フライトコントロールシステム用のDCバスとして設けられており、電気機器のうち機体101の飛行制御に関する機器(後述するエルロン駆動装置40の電動モータ43など)に電力を配分するように構成されている。
【0046】
一方、バス10のうちFCS用高圧バス14以外のバス11〜13,15,16は、フライトコントロール機器以外の電気機器に電力を供給するために設けられている。第1高圧バス11および第2高圧バス12は、それぞれ、高圧(DC270ボルト)の電気機器のうち機体101の姿勢制御に直接は関係しない機器に電力を配分するように構成されている。
【0047】
第1高圧バス11は、たとえば、電気機器としてのエアコンディショナ31に接続されており、当該エアコンディショナ31に電力を供給する。このエアコンディショナ31は、機体101の客室内の温度調整に用いられる。なお、第1高圧バス11は、図示していないけれども、エアコンディショナ31以外の複数の電気機器にも接続されている。
【0048】
また、第1高圧バス11は、スイッチ18aおよびDC/DCコンバータ19aを介して中圧バス15と電気的に接続されており、このスイッチ18aがオンにされることで、中圧バス15に電力を配分する。なお、各スイッチ18は、導通状態と絶縁状態とを切り替えるためのスイッチである。第1高圧バス11から中圧バス15に配分される電力の電圧は、DC/DCコンバータ19aによって、中圧バス15の電圧に低下された後、中圧バス15に供給される。
【0049】
また、第1高圧バス11は、スイッチ18bおよびDC/DCコンバータ19bを介して低圧バス16と電気的に接続されており、このスイッチ18bがオンにされることで、低圧バス16に電力を配分する。なお、第1高圧バス11から低圧バス16に配分される電力の電圧は、DC/DCコンバータ19bによって、低圧バス16の電圧に低下された後、中圧バス15に供給される。
【0050】
第2高圧バス12は、たとえば、電気機器としての電動燃料ポンプ32に接続されており、当該電動燃料ポンプ32に電力を供給する。この電動燃料ポンプ32は、ポンプを駆動するための電動モータを含んでおり、主翼102L内の燃料タンク(図示せず)に設置されている。電動燃料ポンプ32は、燃料タンク内の燃料を、エンジン103L,103Rへ供給するために駆動される。なお、第2高圧バス12は、図示していないけれども、電動燃料ポンプ32以外の複数の電気機器にも接続されている。
【0051】
また、第2高圧バス12は、スイッチ18cおよびDC/DCコンバータ19aを介して中圧バス15と電気的に接続されており、このスイッチ18cがオンにされることで、中圧バス15に電力を配分する。なお、第2高圧バス12から中圧バス15に配分される電力の電圧は、DC/DCコンバータ19aによって、中圧バス15の電圧に低下された後、中圧バス15に供給される。
【0052】
また、第2高圧バス12は、スイッチ18dおよびDC/DCコンバータ19bを介して低圧バス16と電気的に接続されており、このスイッチ18dがオンにされることで、低圧バス16に電力を配分する。なお、第2高圧バス12から低圧バス16に配分される電力の電圧は、DC/DCコンバータ19bによって、低圧バス16の電圧に低下された後、中圧バス15に供給される。
【0053】
非常用高圧バス13は、非常用バスとして設けられており、たとえば、第1高圧バス11、第2高圧バス12、および、低圧バス16の少なくとも1つの異常時に、異常を生じた第1高圧バス11、第2高圧バス12、および、低圧バス16に電力を配分可能に構成されている。
【0054】
非常用高圧バス13は、スイッチ18eを介して第1高圧バス11と接続可能であり、このスイッチ18eがオンにされることで、第1高圧バス11に電力を配分する。同様に、非常用高圧バス13は、スイッチ18fを介して第2高圧バス12と接続可能であり、このスイッチ18fがオンにされることで、第2高圧バス12に電力を配分する。また、非常用高圧バス13は、スイッチ18gおよびDC/DCコンバータ19bを介して低圧バス16と接続されており、このスイッチ18gがオンにされることで、低圧バス16に電力を配分する。なお、非常用高圧バス13から低圧バス16に配分される電力の電圧は、DC/DCコンバータ19bによって、低圧バス16の電圧に低下された後、低圧バス16に供給される。
【0055】
FCS用高圧バス14は、フライトコントロールシステムに含まれる電気機器としてのエルロン駆動装置40の電動アクチュエータ41に接続されている。また、FCS用高圧バス14は、フライトコントロールシステムに含まれる電気機器としてのスポイラ駆動装置50の電動アクチュエータ51に接続されている。
【0056】
また、FCS用高圧バス14は、スイッチ18hおよびDC/DCコンバータ19cを介して低圧バス16と電気的に接続されており、このスイッチ18がオンにされることで、低圧バス16に電力を配分する。なお、FCS用高圧バス14から低圧バス16に配分される電力の電圧は、DC/DCコンバータ19cによって、低圧バス16の電圧に低下された後、低圧バス16に供給される。
【0057】
中圧バス15は、たとえば、120ボルトの直流電力を配分するために設けられている。中圧バス15には、当該中圧バス15の電圧と同じ電圧で動作する電気機器としてのヒータ34が接続されている。なお、中圧バス15は、ヒータ34以外の複数の電気機器にも接続されている。
【0058】
低圧バス16は、28ボルトの直流電力を配分するために設けられている。低圧バス16は、当該低圧バス16の電圧と同じ電圧で動作する電気機器に接続されている。低圧バス16は、フライトコントロールシステムに含まれる電気機器としてのフライトコントロールコンピュータ(FCC:Flight Control Computer)33などに接続されている。
【0059】
上記の構成を有するDCバス10は、主発電機21,22,23、外部電源接続部24、補助発電機25、ラムエアタービン26、フライホイールバッテリ27、バッテリ28、および燃料電池29から電力を供給されることが可能に構成されている。
【0060】
主発電機21,22,23と、補助発電機25と、ラムエアタービン26と、フライホイールバッテリ27と、バッテリ28と、燃料電池29は、電源装置として設けられており、電力システム1で消費される電力を供給可能に構成されている。なお、本実施形態では、主発電機21,22,23と、補助発電機25と、ラムエアタービン26と、バッテリ28と、燃料電池29は、電力システム1の一要素として設けられているけれども、この通りでなくてもよい。主発電機21,22,23と、補助発電機25と、ラムエアタービン26と、バッテリ28と、燃料電池29は、電力システム1に含まれていなくてもよい。
【0061】
主発電機21,22,23は、主電源装置として設けられており、本実施形態では、交流発電機である。各主発電機21,22,23は、航空機100に推力を付与するためのエンジン103Lによって駆動される。
【0062】
主発電機21は、主に、フライトコントロールシステム専用の発電機として設けられている。主発電機21は、エンジン103Lの回転軸の回転力によって駆動されるように構成されている。主発電機21で発電された交流電力は、AC/DCコンバータ20aで高圧(270ボルト)の直流電力に変換された後、FCS用高圧バス14に供給される。
【0063】
主発電機22は、エンジン103Lの回転軸の回転力によって駆動されるように構成されている。主発電機22で発電された交流電力は、AC/DCコンバータ20bで高圧の直流電力に変換された後、スイッチ18i,18jを介して、第1高圧バス11に供給される。また、主発電機22で発電された交流電力は、AC/DCコンバータ20b、および、スイッチ18i,18k,18lを介して、第2高圧バス12へ供給される。
【0064】
主発電機23は、エンジン103Lの回転軸の回転力によって駆動されるように構成されている。主発電機23で発電された交流電力は、AC/DCコンバータ20cで高圧の直流電力に変換された後、スイッチ18m,18k,18jを介して、第1高圧バス11に供給される。また、主発電機22で発電された交流電力は、AC/DCコンバータ20c、および、スイッチ18m,18lを介して、第2高圧バス12へ供給される。また、主発電機22で発電された交流電力は、AC/DCコンバータ20c、スイッチ18n,18o、および、AC/DCコンバータ20eを介して、補助発電機25へ供給されることが可能である。主発電機23から補助発電機25へ電力が供給されるのは、たとえば、補助発電機25が起動されるときである。
【0065】
補助発電機25は、補助電源装置として設けられており、本実施形態では、ガスタービンエンジンである。なお、補助発電機25は、ディーゼルエンジンなどの他の原動機を用いて形成されていてもよい。補助発電機25は、主発電機23からの電力、またはバッテリ28からの電力を用いて起動される。主発電機23からの電力、またはバッテリ28からの電力は、AC/DCコンバータ20eで直流電力から交流電力に変換され、補助発電機25に供給される。
【0066】
補助発電機25が起動すると、当該補助発電機25に備えられている発電機で発電が行われる。補助発電機25で生成された電力は、AC/DCコンバータ20e、および、スイッチ18o’,18nを介して主発電機23からの電力ラインに与えられ、これにより、第1高圧バス11および第2高圧バス12に供給され得る。航空機100の飛行中において、補助発電機25および主発電機21,22,23のいずれもが異常を生じた場合、ラムエアタービン26が発電を開始するように構成されている。
【0067】
ラムエアタービン26は、非常用発電機として設けられている。ラムエアタービン26は、航空機100の飛行中において、補助発電機25および主発電機21,22,23のいずれもが異常を生じた場合に、機体101から飛び出されるタービンと、交流発電機とを含んでいる。このタービンが風力を受けて回転することで、ラムエアタービン26の交流発電機が発電を行うように構成されている。ラムエアタービン26で発電された交流電力は、AC/DCコンバータ20fで直流電力に変換され、スイッチ18pを介して非常用高圧バス13へ供給されるとともに、スイッチ18qを介してFCS用高圧バス14へ供給される。
【0068】
外部電源接続部24は、たとえば、航空機100の駐機(停止)時に航空機100の外部から電力を受けるために設けられている。外部電源接続部24は、たとえば、空港の電源設備と接続可能に構成されている。外部電源接続部24から与えられた交流電力は、AC/DCコンバータ20dで直流電力に変換された後、スイッチ18r,18s,18tを介して、第1高圧バス11および第2高圧バス12へ供給される。
【0069】
フライホイールバッテリ27は、蓄電および放電可能な蓄電源装置(副電源装置)として設けられており、本実施形態では、インバータ制御式の電源装置である。フライホイールバッテリ27は、運動エネルギと電力とを変換するエネルギ変換装置であり、電力を運動エネルギとして保存しておくことが可能に構成されている。
【0070】
フライホイールバッテリ27は、電力を一時的に蓄積するアキュムレータとしての機能を有している。本実施形態では、フライホイールバッテリ27は、主発電機21からの電力が電動アクチュエータ41に与えられているときに当該電動アクチュエータ41に一時的に電力を供給可能に構成されている。
【0071】
フライホイールバッテリ27は、スイッチ18uを介して第1高圧バス11と接続可能であり、また、スイッチ18vを介してFCS用高圧バス14と接続可能である。フライホイールバッテリ27は、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14から電力を供給されることが可能に構成されており、且つ、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14に電力を供給することが可能に構成されている。このような構成が採用されていることにより、第1高圧バス11とFCS用高圧バス14とは、フライホイールバッテリ27によって、電力を送受可能に接続されている。
【0072】
以上の構成により、DCバス10は、2種類以上の異なる様式の電源装置と電気的に常時接続可能に構成されている。具体的には、第1高圧バス11は、主発電機22、23、およびフライホイールバッテリ27と常時接続可能に構成されている。また、FCS用高圧バス14は、主発電機21、フライホイールバッテリ27、および、燃料電池29と常時接続可能に構成されている。
【0073】
図3は、フライトコントロールコンピュータ33、および、エルロン駆動装置40の構成を示す模式図である。図1図3を参照して、フライホイールバッテリ27は、フライホイールバッテリ制御装置35とともに、フライホイールバッテリユニット60を形成している。換言すれば、フライホイールバッテリユニット60は、フライホイールバッテリ27と、フライホイールバッテリ制御装置35とを有している。
【0074】
フライホイールバッテリ27は、フライホイール271と、モータジェネレータ272と、第1インバータコンバータ273と、第2インバータコンバータ274と、インターフェース部275と、を有している。
【0075】
フライホイール271は、運動エネルギ蓄積部材として設けられており、回転することで、運動エネルギを保存するように構成されている。フライホイール271は、モータジェネレータ272の回転軸に連結されており、当該回転軸とともに回転する。
【0076】
モータジェネレータ272は、ロータと、このロータと一体回転可能な上記の回転軸と、ロータを取り囲むステータとを有している。モータジェネレータ272は、電力を与えられた場合には、モータとして動作することで、回転軸を回転し、フライホイール271を回転させる。これにより、フライホイール271に運動エネルギが蓄積される。一方、モータジェネレータ272は、フライホイール271の運動エネルギ(回転エネルギ)を与えられた場合、発電機として動作することとなり、第1インバータコンバータ273または第2インバータコンバータ274に交流電力を出力する。
【0077】
第1インバータコンバータ273、および第2インバータコンバータ274は、直流電力を与えられた場合には当該直流電力を交流電力に変換し、交流電力を与えられた場合には当該交流電力を直流電力に変換するように構成されている。
【0078】
第1インバータコンバータ273は、モータジェネレータ272、および、FCS用高圧バス14に接続されている。第1インバータコンバータ273は、インターフェース部275を介してフライホイールバッテリ制御装置35から所定の制御信号を与えられた場合、モータジェネレータ272からの交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力をFCS用高圧バス14へ出力可能である。
【0079】
第2インバータコンバータ274は、モータジェネレータ272、および、第1高圧バス11に接続されている。第2インバータコンバータ274は、インターフェース部275を介してフライホイールバッテリ制御装置35から所定の制御信号を与えられた場合、第1高圧バス11からの直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力をモータジェネレータ272へ出力可能である。第1インバータコンバータ273、および、第2インバータコンバータ274は、フライホイールバッテリ制御装置35によって制御される。フライホイールバッテリ制御装置35の構成は、後述する。
【0080】
バッテリ28は、たとえば、リチウムイオン蓄電池などの二次電池である。バッテリ28は、スイッチ18wおよびAC/DCコンバータ20eを介して補助発電機25に接続されている。バッテリ28は、たとえば、主発電機22,23が駆動していない場合において補助発電機25が起動されるときに、補助発電機25に電力を供給する。また、バッテリ28は、スイッチ18xを介して低圧バス16に接続されており、低圧バス16に電力を供給可能である。
【0081】
燃料電池29は、主に、主発電機21,22,23からFCS用高圧バス14への電力供給が遮断された場合などの緊急時に使用される電源装置として設けられている。燃料電池29は、電気化学反応によって電力を発生する電池である。燃料電池29は、フライホイールバッテリ27およびバッテリ28と協働して、分散電源装置を形成している。燃料電池29は、スイッチ18yを介して非常用高圧バス13と接続可能であり、非常用高圧バス13に電力を供給可能である。また、燃料電池29は、スイッチ18zを介して、FCS用高圧バス14に接続されており、FCS用高圧バス14に電力を供給可能である。
【0082】
次に、電力システム1に備えられたエルロン駆動装置40、および、スポイラ駆動装置50のより詳細な構成を説明する。エルロン駆動装置40,およびスポイラ駆動装置50は、航空機用電動アクチュエータ駆動装置として設けられている。
【0083】
エルロン駆動装置40は、電動アクチュエータ41と、エルロン制御装置42と、フライホイールバッテリユニット60と、を有している。電動アクチュエータ41は、電動モータ43を含んでいる。
【0084】
本実施形態では、エルロン制御装置42は、フライトコントロールコンピュータ33とともに機体101の胴体104内に配置されている。エルロン制御装置42およびフライトコントロールコンピュータ33は、低圧バス16に接続されており、低圧バス16からの電力によって動作するように構成されている。
【0085】
フライトコントロールコンピュータ33は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などを有しており、航空機100の飛行に関する統合制御部として設けられている。フライトコントロールコンピュータ33は、図示しない操縦桿などから出力された信号に基づいて、所定の制御信号を出力するように構成されている。たとえば、エルロン105Lを操作する指令が操縦桿からフライトコントロールコンピュータ33に与えられた場合、フライトコントロールコンピュータ33は、エルロン駆動装置40を動作させるための制御信号を、エルロン制御装置42へ出力する。
【0086】
エルロン制御装置42は、電動アクチュエータ41を制御する電動アクチュエータ制御装置として設けられている。エルロン制御装置42は、CPU、RAM、およびROMなどを用いて形成されており、フライトコントロールコンピュータ33からの制御信号に応じた動作を電動アクチュエータ41に行わせるための制御信号を生成するように構成されている。エルロン制御装置42は、フライトコントロールコンピュータ33から出力された制御信号と、電動モータ43からのモータ信号とに基づいて、電動アクチュエータ41を駆動するための制御信号を生成する。
【0087】
エルロン制御装置42は、インターフェース部421,422と、目標電流算出部423と、PWM指令生成部424と、保護回路425と、を有している。
【0088】
インターフェース部421は、フライトコントロールコンピュータ33から出力された制御信号を受信し、当該制御信号を目標電流算出部423へ出力する。目標電流算出部423は、電動モータ43の回転位置信号、回転速度信号、および電流信号を用いたフィードバック制御により、目標電流値を算出する。
【0089】
なお、上記の回転位置信号は、電動モータ43の回転軸の位置を示す信号である。また、上記の回転速度信号は、電動モータ43の回転軸の回転速度を示す信号である。また、上記の電流信号は、電動モータ43に流れる電流値を示す信号である。また、上記の目標電流値は、電動モータ43に与えるべき電流値に相当する。算出された目標電流値は、PWM指令生成部424へ出力される。
【0090】
PWM指令生成部424は、目標電流値と同じ電流が電動モータ43に流れるようにするために、パルス幅変調制御(PWM制御)を行う。PWM指令生成部424は、目標電流値に基づいて、電動アクチュエータ41の後述するモータドライバ45へ出力するPWM制御信号を生成し、当該PWM制御信号を、インターフェース部422へ出力する。インターフェース部422は、PWM制御信号を、電動アクチュエータ41へ出力する。
【0091】
また、インターフェース部422は、モータドライバ45から、電動モータ43の回転位置信号と回転速度信号と、電流信号とを、受信するように構成されている。インターフェース部422は、上記の回転位置信号と回転速度信号と、電流信号とを、目標電流算出部423および保護回路425へ出力する。また、インターフェース部422は、上記の回転速度信号と、電流信号を、フライホイールバッテリ制御装置35へ出力する。
【0092】
電動アクチュエータ41は、FCS用高圧バス14に接続されており、主発電機21からの電力を用いて駆動するように構成されている。また、本実施形態では、電動アクチュエータ41は、フライホイールバッテリ27から一時的に与えられる電力を用いて駆動するように構成されている。本実施形態では、電動アクチュエータ41とエルロン制御装置42とは、分離して配置されている。具体的には、電動アクチュエータ41は、主翼102Lに設置され、エルロン制御装置42は、胴体104に設置されている。そして、電動アクチュエータ41とエルロン制御装置42とは、通信回線44を介して通信可能に接続されている。
【0093】
電動アクチュエータ41は、電動モータ43と、モータドライバ45と、運動変換機構46とを有している。
【0094】
本実施形態では、電動モータ43と、モータドライバ45と、運動変換機構46は、いずれも主翼102Lに設置されており、互いに隣接して配置されている。
【0095】
モータドライバ45は、エルロン制御装置42から与えられるPWM制御信号に基づいて、電動モータ43へ電力を配分するために設けられている。
【0096】
モータドライバ45は、インターフェース部451,452と、中央処理部453と、配電処理部454と、保護回路455と、三相インバータ回路456と、を有している。
【0097】
インターフェース部451は、エルロン制御装置42のインターフェース部422と通信回線44を介して通信可能に接続されている。インターフェース部452は、中央処理部453と通信可能に接続されている。
【0098】
中央処理部453は、たとえば、PLD(Programmable Logic Device)を用いて形成されている。中央処理部453は、インターフェース部422を介して受信したPWM制御信号を、配電処理部454へ出力するように構成されている。また、中央処理部453は、インターフェース部452に接続されており、当該インターフェース部452に与えられた電動モータ43の回転位置信号、回転速度信号、および電流信号などのモータ信号を、インターフェース部451へ出力するように構成されている。
【0099】
配電処理部454は、たとえば、PLD(Programmable Logic Device)を用いて形成されている。配電処理部454は、PWM制御信号に基づいて動作する。これにより、配電処理部454は、三相インバータ回路456の6つのスイッチング素子457を選択的にオフ状態からオン状態に切り替える制御信号を、三相インバータ回路456へ出力する。
【0100】
三相インバータ回路456は、前述したように、6つのスイッチング素子457を有している。各スイッチング素子457は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。各スイッチング素子457は、FCS用高圧バス14、および、GND(接地点)に接続されているとともに、電動モータ43のステータコイルに接続されている。また、各スイッチング素子457は、配電処理部454に接続されている。各スイッチング素子457は、配電処理部454から制御信号を与えられている間、通電可能状態となり、電動モータ43を動作させるための高圧(270ボルト)電流を流すことが可能となる。
【0101】
また、三相インバータ回路456には、電流検出部458が接続されている。この電流検出部458は、電動モータ43に流れる電流を検出可能に構成されている。電流検出部458からの電流信号は、インターフェース部452へ出力される。
【0102】
電動モータ43は、本実施形態では、三相交流モータであり、三相インバータ回路456から与えられる電力によって、回転駆動する。この電動モータ43は、当該電動モータ43の回転軸の回転角を検出する回転角検出センサ431を有している。この回転角検出センサ431は、たとえば、レゾルバであり、電動モータ43の回転軸の位置および速度を検出する。回転角検出センサ431からの回転位置信号および回転速度信号は、インターフェース部452へ出力される。
【0103】
インターフェース部452は、電動モータ43の回転位置信号、回転速度信号、および電流信号を、中央処理部453へ出力する。これにより、電動モータ43の回転位置信号、回転速度信号、および電流信号は、中央処理部453、および、インターフェース部451を介して、エルロン制御装置42のインターフェース部422へ出力される。
【0104】
電動モータ43は、前述したように、モータドライバ45の三相インバータ回路456から与えられる電力によって動作し、当該電動モータ43の回転軸が、所定量回転する。この回転軸の回転運動は、運動変換機構46に出力される。
【0105】
運動変換機構46は、電動モータ43の回転軸の回転運動を、直線運動に変換するために設けられている。運動変換機構46は、たとえば、ボールねじ機構を含んでおり、雄ねじ部材を含む可動部461を有している。電動モータ43の回転軸の回転に伴い、可動部461は、直線方向に変位する。可動部461は、エルロン105Lに連結されており、可動部461の変位に伴って、エルロン105Lが変位する。
【0106】
次に、フライホイールバッテリユニット60のフライホイールバッテリ制御装置35の構成を説明する。フライホイールバッテリ制御装置35は、フライホイールバッテリ27を制御するための副電源制御装置(蓄電源制御装置)として設けられており、胴体104に配置されている。フライホイールバッテリ制御装置35は、低圧バス16に接続されており、低圧バス16からの電力を用いて動作する。本実施形態では、フライホイールバッテリ制御装置35は、FCS用高圧バス14に接続された電動モータ43の電力消費状態(電動モータ43の動作に必要な必要電力)に応じて、フライホイールバッテリ27を動作させる。本実施形態では、フライホイールバッテリ制御装置35は、電動アクチュエータ41の電動モータ43の負荷を検出(予測)し、当該検出結果に基づいて、フライホイールバッテリ27を動作させる。
【0107】
フライホイールバッテリ制御装置35は、CPU、RAM、および、ROMなどを有している。本実施形態では、フライホイールバッテリ制御装置35と、エルロン制御装置42とは、一体化されている。すなわち、フライホイールバッテリ制御装置35と、エルロン制御装置42は、同一のCPU、RAM、および、ROMを用いて形成されており、且つ、電動モータ43の回転速度信号および電流信号を共有している。
【0108】
フライホイールバッテリ制御装置35は、動作設定部351と、電力マップ格納部352と、インターフェース部353と、を有している。
【0109】
電力マップ格納部352は、電動アクチュエータ41の電動モータ43の駆動時に必要な電力の特性を示すマップを格納している。このマップの一例が、図4に示されている。図4は、電動アクチュエータ41の電動モータ43の駆動時に必要な電力の特性を説明するためのマップの一例を示す図である。
【0110】
図3および図4を参照して、図4の上側のグラフは、主翼102Lに対するエルロン105Lの舵面角度(傾斜角)を示している。このグラフは、時間と舵面角度との関係を示すグラフであり、横軸が時間を示しており、縦軸がエルロン105Lの舵面角度を示している。また、図4の下側のグラフは、電動モータ43が必要とする電流値を示している。このグラフは、時間と電動アクチュエータ41に流れる電流値との関係を示すグラフであり、横軸が時間を示しており、縦軸が電動アクチュエータ41に流れる電流値を示している。
【0111】
図4の各グラフは、エルロン105Lの舵面角度が所定値変化され、その後、一定時間エルロン105Lの舵面角度が一定値に保持され、その後、エルロン105Lが再びもとの位置に戻される場合の変化を示している。
【0112】
このグラフの通りの動作が行われる場合、電動モータ43は、エルロン105Lの動作開始時に、一瞬、所定のしきい値Thを超える大きな電流(イナーシャ加速電流)で駆動し、その後、エルロン105Lの舵面角度を増加させている間、時間の経過に比例して増加する電流で駆動し、エルロン105Lの舵面角度が目標値に達したときに、駆動を停止する。この駆動停止時には、電動モータ43は、所定の保持電流H1を与えられることで、エルロン105Lの姿勢を保持する力を発生する。また、電動モータ43は、エルロン105Lの舵面角度をもとの値に戻すためにエルロン105Lの動作を開始する際、一瞬、所定のしきい値Thを超える大きな電流(イナーシャ加速電流)で駆動し、その後、回生電流が生じるように動作する。これにより、エルロン105Lは、もとの位置に戻される。
【0113】
動作設定部351は、フライホイールバッテリ27に行わせる動作を設定するように構成されている。具体的には、動作設定部351は、モータドライバ45からインターフェース部422に入力された情報としての、電動モータ43の回転速度信号および電流信号を、インターフェース部422から受信する。そして、動作設定部351は、電力マップ格納部352に格納されているマップ(図4に示すマップ)と、目標電流値とを参照する。これにより、動作設定部351は、現在の電動モータ43の回転速度および電流値から、電動モータ43が行う動作を検出(推定)する。すなわち、動作設定部351は、電動モータ43が必要とする電流をフィードフォワード制御によって検出する。
【0114】
そして、電動モータ43が必要とする電流値が所定のしきい値Thを超えることが推定される場合、動作設定部351は、フライホイールバッテリ27から電動モータ43(FCS用高圧バス14)へ電力を供給するための制御信号を生成する。この場合の制御信号は、電動モータ43が必要とする電流値と上記のしきい値Thとの差分に相当する電流をフライホイールバッテリ27から電動モータ43へ供給することを指令する信号である。動作設定部351は、当該制御信号を、インターフェース部353を介して、フライホイールバッテリ27のインターフェース部275へ出力する。
【0115】
一方、電動モータ43が必要とする電流値が所定のしきい値Th以下である場合、動作設定部351は、フライホイールバッテリ27に蓄電を行わせるための制御信号を生成し、当該制御信号を、インターフェース部353を介してフライホイールバッテリ27のインターフェース部275へ出力する。
【0116】
図1図3を参照して、スポイラ駆動装置50は、電動アクチュエータ51と、スポイラ制御装置52とを有している。
【0117】
スポイラ制御装置52は、低圧バス16に接続されており、低圧バス16からの電力を用いて動作する。スポイラ制御装置52は、胴体104に配置されている。スポイラ制御装置52は、エルロン制御装置42と同様の構成を有しており、フライトコントロールコンピュータ33からの制御信号に基づいて、電動アクチュエータ51にPWM制御信号を与える。
【0118】
電動アクチュエータ51は、FCS用高圧バス14に接続されており、FCS用高圧バス14からの電力を用いて動作する。電動アクチュエータ51は、エルロン用電動アクチュエータ41と同様の構成を有しており、スポイラ106Lに接続されている。この電動アクチュエータ51は、スポイラ制御装置52からのPWM制御信号に基づいて駆動することで、スポイラ106Lを動作させる。
【0119】
以上が、航空機100の概略構成である。次に、航空機100の電力システム1における動作の一例を説明する。
【0120】
図5は、エルロン制御装置42における処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、フローチャートを参照しながら説明する場合、フローチャート以外の図も適宜参照しながら説明する。
【0121】
図5を参照して、エルロン制御装置42の目標電流算出部423は、まず、フライトコントロールコンピュータ33からの制御信号を読み込む(ステップS11)。次に、目標電流算出部423は、モータドライバ45から出力された、電動モータ43のモータ信号(回転位置信号、回転速度信号、および電流信号)を読み込む(ステップS12)。
【0122】
次に、エルロン制御装置42の目標電流算出部423は、電動モータ43の目標電流値を算出する(ステップS13)。次に、エルロン制御装置42のPWM指令生成部424は、目標電流値と同じ値の電流が電動モータ43に流れるように、PWM制御信号を生成する(ステップS14)。次いで、エルロン制御装置42は、このPWM制御信号を、モータドライバ45へ出力する(ステップS15)。エルロン制御装置42は、上記の処理を繰り返し行う。
【0123】
次に、フライホイールバッテリ制御装置35における処理の流れの一例を説明する。図6は、フライホイールバッテリ制御装置35における処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。図6を参照して、フライホイールバッテリ制御装置35の動作設定部351は、まず、モータドライバ45から出力された、電動モータ43のモータ信号(回転速度信号、および、電流信号)を読み込む(ステップS21)。
【0124】
次に、動作設定部351は、電動モータ43の回転速度信号、および、電流信号と、電力マップに格納されているマップとを参照して、電動モータ43が行う動作を検出(推定)する。すなわち、フライホイールバッテリ制御装置35は、電動モータ43の目標電流値を算出する(ステップS22)。次に、動作設定部351は、フライホイールバッテリ27による発電動作が必要か否かを判定する(ステップS23)。具体的には、動作設定部351は、電動モータ43に必要な電流値が、しきい値Thを超える場合(ステップS23でYES)、動作設定部351は、フライホイールバッテリ27から電動モータ43(FCS用高圧バス14)へ電力を出力する制御信号を、フライホイールバッテリ27へ出力する(ステップS24)。すなわち、動作設定部351は、電動モータ43に必要な必要電力が所定値を超えている場合に、フライホイールバッテリ27に発電動作を行わせる。
【0125】
より具体的には、動作設定部351は、第1インバータコンバータ273に交流電力を直流電力に変換する動作を行わせるための制御信号を、フライホイールバッテリ27へ出力する。その結果、フライホイール271の回転によって駆動されているモータジェネレータ272からの交流電力は、第1インバータコンバータ273で直流電力に変換される。そして、第1インバータコンバータ273から出力された直流電力は、主発電機21からの直流電力とともに、FCS用高圧バス14、および、三相インバータ回路456を介して電動モータ43へ供給される。
【0126】
一方、電動モータ43に必要な電流値が、所定のしきい値Th以下である場合(ステップS23でNO)、動作設定部351は、フライホイールバッテリ27に蓄電動作を行わせる制御信号を、フライホイールバッテリ27へ出力する(ステップS25)。すなわち、動作設定部351は、電動モータ43に必要な必要電力が所定値以下である場合に、フライホイールバッテリ27に蓄電動作を行わせる。
【0127】
より具体的には、動作設定部351は、第2インバータコンバータ274に直流電力を交流電力に変換する動作を行わせるための制御信号を、フライホイールバッテリ27へ出力する。その結果、第2インバータコンバータ274は、三相インバータ回路として動作し、第1高圧バス11からの電力を用いてモータジェネレータ272を駆動させる。これにより、フライホイール271に回転力が付与され、フライホイール271による運動エネルギの蓄積、すなわち、フライホイールバッテリ27による蓄電動作が行われる。
【0128】
なお、電動アクチュエータ41の負荷が小さい場合に、FCS用高圧バス14からの電力をフライホイールバッテリ27に与えてフライホイールバッテリ27に蓄電動作を行わせてもよい。また、第1高圧バス11に接続されているエアコンディショナ31などの負荷が大きい場合、フライホイールバッテリ27からの電力を第1高圧バス11へ出力してもよい。
【0129】
また、フライホイールバッテリ27と第1高圧バス11との間で電力の送受を常時行ってもよいし、フライホイールバッテリ27とFCS用高圧バス14との間で電力の送受を常時行ってもよい。
【0130】
以上説明したように、本実施形態にかかる電力システム1によると、第1高圧バス11は、2種類以上の異なる様式の電源装置としての主発電機22,23、および、フライホイールバッテリ27と常時接続可能に構成されている。また、FCS用高圧バス14は、2種類以上の異なる様式の電源装置としての主発電機21およびフライホイールバッテリ27と常時接続可能に構成されている。この構成によると、電動アクチュエータ41の電動モータ43が、航空機100の姿勢制御のために動作する際、エルロン105Lが受ける空気抵抗などの大きな抵抗力に抗することのできる大トルクで動作を開始するために、一時的に大電流(イナーシャ加速電流)を必要とする。この場合、様式の異なる主発電機21およびフライホイールバッテリ27のそれぞれからFCS用高圧バス14を介して電動モータ43へ同時に電力が出力されることで、上記の大電流を電動モータ43へ供給できる。したがって、1つの主発電機21で上記の大電流を発生する必要がない。よって、主発電機21をより小型にできる。また、主発電機21,22,23、および、フライホイールバッテリ27が分散して配置されることとなる。これにより、第1高圧バス11、および、FCS用高圧バス14バスの線路損失(電力損失)をより小さくできる。特に、航空機100は、当該航空機100内のバス長さが極めて長くなるため、線路損失を低減する効果は、極めて大きい。その結果、各電源装置(主発電機21,22,23およびフライホイールバッテリ27)をより小型化(軽量化)できる。以上の次第で、主発電機21,22,23などの大型化を抑制しつつ、電動アクチュエータ41の電動モータ43に大電力を供給することのできる、航空機用電力システム1を提供できる。
【0131】
また、電力システム1によると、電動モータ43が瞬間的に大きな電力を必要とする場合には、主発電機21とフライホイールバッテリ27との協働により、電動モータ43に大きな電力を供給できる。また、電動モータ43に必要な電力が比較的小さい場合には、主発電機21で発電された電力で電動モータ43を動作させることができる。このような構成により、主発電機21の定格出力をより小さくできる。よって、主発電機21と、当該主発電機21を駆動させるためのエンジン103Lを、より小型且つ軽量にすることができる。
【0132】
また、電力システム1によると、フライホイールバッテリ制御装置35は、FCS用高圧バス14に接続された電動モータ43の電力消費状態に応じて、フライホイールバッテリ27の動作を制御する。この構成によると、フライホイールバッテリ制御装置35は、電動モータ43の電力消費状態に応じて、フライホイールバッテリ27からの放電量を設定することができる。これにより、フライホイールバッテリ27に貯められた電力を、より効率よく利用することができる。その結果、フライホイールバッテリ27は、必要以上に大きな電力を貯める必要がない。よって、当該フライホイールバッテリ27をより小型にできる。
【0133】
また、電力システム1によると、フライホイールバッテリ制御装置35は、電動モータ43に必要な必要電力が所定値を超える場合に、フライホイールバッテリ27に放電動作を行わせる。この構成によると、主発電機21から電動モータ43に供給できる電力の最大値を超える大きさの電力を電動モータ43に供給する必要がある場合に、フライホイールバッテリ制御装置35は、フライホイールバッテリ27の放電動作を行わせることができる。これにより、電動モータ43に必要な電力を安定して供給でき、且つ、主発電機21の定格出力をより小さくできる。
【0134】
また、電力システム1によると、フライホイールバッテリ制御装置35は、電動モータ43に必要な必要電力が所定値以下である場合に、フライホイールバッテリ制御装置35に蓄電動作を行わせることが可能である。この構成によると、フライホイールバッテリ制御装置35は、電動モータ43への電力供給が不要である間に、フライホイールバッテリ27に蓄電動作を行わせることができる。
【0135】
また、電力システム1によると、第1高圧バス11とFCS用高圧バス14は、電力を送受可能に接続されている。この構成によると、電動モータ43への電力供給経路をスマートグリッド化できる。すなわち、電動モータ43への電力供給経路を多重化することができる。その結果、1つの主発電機21の故障などによって電力供給可能容量が大きく損なわれる事態を抑制できる。したがって、電動モータ43へ電力をより確実に供給することのできる、より信頼性の高い電力システム1を実現することができる。また、たとえば、交流電源バス同士を電気的に接続する構成であれば、交流電源バス間の電力の負荷バランスを合わせるための電源位相合わせ、および、電圧レベル合わせが困難である。これに対して、本実施形態のように、直流バスとして、第1高圧バス11、および、FCS用高圧バス14同士を接続する構成であれば、このような手間のかかる調整作業が不要であり、スマートグリッドを、より簡易な構成で実現できる。
【0136】
また、電力システム1によると、フライトコントロール機器(電動アクチュエータ41,51など)のための専用のFCS用高圧バス14が設けられている。これにより、フライトコントロール機器以外の機器に起因する電圧変動の影響がフライトコントロール機器へ及ぶことを抑制できる。その結果、フライトコントロール機器へ電力をより確実に安定供給できる。また、電動アクチュエータ41,51へ直流電力を供給する構成であれば、電動アクチュエータ41,51へ交流電力を供給する場合と比べて、線路損失(電力損失)をより小さくできる。
【0137】
また、電力システム1によると、第1高圧バス11とFCS用高圧バス14とは、蓄電および放電が可能なフライホイールバッテリ27を介して、電力を送受可能に接続されている。この構成によると、第1高圧バス11、および、FCS用高圧バス14間に配置されたフライホイールバッテリ27がアキュムレータとして機能することで、これらの第1高圧バス11、および、FCS用高圧バス14間での電力の融通に起因する不安定な電圧変動が生じることを抑制できる。
【0138】
また、電力システム1によると、フライホイールバッテリ27は、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14の何れか一方からの電力をフライホイール271の運動エネルギに一旦変換し、その後、当該運動エネルギを電力に変換してから他方のバスへ出力することができる。このような構成であれば、第1高圧バス11とFCS用高圧バス14とが短絡されることを抑制できる。すなわち、第1高圧バス11とFCS用高圧バス14との間で電気的な絶縁を実現できる。よって、複数のDCバス11,14間での電力の融通に起因する不安定な電圧変動が生じることを、より確実に抑制できる。
【0139】
また、電力システム1によると、複数の主発電機22,23が、第1高圧バス11に接続されている。この構成によると、主発電機22,23の何れかが故障した場合でも、他方の主発電機22,23から電力を供給できる。よって、エアコンディショナ31などの電気機器への電力供給をより確実に行うことができる。
【0140】
また、本実施形態にかかるエルロン駆動装置40によると、フライホイールバッテリ27は、主発電機21からの電力が電動アクチュエータ41に与えられているときに当該電動アクチュエータ41に一時的に電力を供給可能である。この構成によると、前述したように、電動アクチュエータ41が動作を開始するために、一時的に大電流(イナーシャ加速電流)を必要とする。この場合に、フライホイールバッテリ27は、電動アクチュエータ41に電力を供給することができる。よって、主発電機21とフライホイールバッテリ27のそれぞれから電動アクチュエータ41へ同時に電力を出力することで、上記の大電流を電動アクチュエータ41へ供給できる。したがって、主発電機21のみで上記の大電流を発生する必要がない。よって、主発電機21の定格出力を、電動アクチュエータ41に瞬間的に必要な大電流を供給できる程度まで大きくする必要がなく、当該定格出力を、より小さくできる。これにより、主発電機21、および、当該主発電機21を駆動するための原動機としてのエンジン103Lなどを、より小型(軽量)にできる。以上の次第で、発電機1の大型化を抑制しつつ、電動アクチュエータ1に大電力を供給することのできる、エルロン駆動装置40を提供できる。
【0141】
また、エルロン駆動装置40によると、フライホイールバッテリ制御装置35は、電動アクチュエータ41の電力消費状態に応じて、フライホイールバッテリ27からの放電量を設定できる。これにより、フライホイールバッテリ27で発生する電力を、より効率よく利用できる。その結果、フライホイールバッテリ27は、必要以上に大きな定格出力を必要としない。よって、フライホイールバッテリ27をより小型にできる。
【0142】
また、エルロン駆動装置40によると、フライホイールバッテリ制御装置35は、電動アクチュエータ41の負荷を検出し、当該検出結果に基づいて、フライホイールバッテリ27を動作させる。この構成によると、電動アクチュエータ41の負荷に応じた出力を、フライホイールバッテリ27から電動アクチュエータ41へ供給することができる。本実施形態では、フライホイールバッテリ制御装置35は、電動アクチュエータ41に必要な電力を、フィードフォワード制御を用いて電動アクチュエータ41へ供給することで、電動アクチュエータ41の電圧低下を、より確実に抑制できる。
【0143】
また、エルロン駆動装置40によると、フライホイールバッテリ制御装置35とモータドライバ45とは、分離して配置されており、且つ、通信回線44を介して通信可能に接続されている。この構成によると、フライホイールバッテリ制御装置35とモータドライバ45とを離隔して配置することができる。これにより、フライホイールバッテリ制御装置35とモータドライバ45を個別に整備できる。よって、エルロン駆動装置40の整備性をより高くできる。
【0144】
また、エルロン駆動装置40によると、運動変換機構46と電動モータ43とモータドライバ45は、互いに隣接して配置されている。この構成によると、運動変換機構46と電動モータ43とモータドライバ45とを隣接して配置することで、これら運動変換機構46、電動モータ43、および、モータドライバ45を一括して整備できる。よって、エルロン駆動装置40の整備性をより高くできる。
【0145】
また、エルロン駆動装置40によると、エルロン制御装置42とフライホイールバッテリ制御装置35とが一体に形成されている。この構成によると、エルロン制御装置42とフライホイールバッテリ制御装置35とが情報を共有できることとなり、電動アクチュエータ41の制御精度と、フライホイールバッテリ27の制御精度を、より高くすることができる。また、エルロン制御装置42とフライホイールバッテリ制御装置35とを全体として小型化できる。
【0146】
また、エルロン駆動装置40によると、フライホイールバッテリ27は、インバータ制御式である。この構成によると、電動アクチュエータ41からの回生電力をフライホイールバッテリ27に戻すことができるので、電力利用のさらなる高効率化を通じて、電動アクチュエータ41の省エネルギ化を実現できる。その上、電動アクチュエータ41の発熱量の低減を実現できる。
【0147】
また、エルロン駆動装置40によると、フライホイールバッテリ27は、フライホイール271の回転による運動エネルギを電力に変換することで、電動アクチュエータ41へ電力を供給できる。この構成であれば、予めフライホイール271を回転させて当該フライホイール271に運動エネルギを貯めておくことで、電動アクチュエータ41に大電流を流す必要のあるときに、フライホイールバッテリ27から電動アクチュエータ41へ瞬時に大電流を与えることができる。すなわち、放電要請に対する応答性の高いフライホイールバッテリ27を実現できる。
【0148】
また、エルロン駆動装置40によると、航空機100の飛行中に大きな駆動抵抗を受けるフライトコントロールシステム用の電動アクチュエータ41に、主発電機21およびフライホイールバッテリ27から大電流を与えることができる。よって、この電動アクチュエータ41を、より大きな力で動作させることができる。
【0149】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態の主要部を説明するための模式図である。図7を参照して、本発明の実施形態では、エルロン制御装置42およびスポイラ制御装置52に代えて、エルロン/スポイラ制御装置55が設けられている。エルロン/スポイラ制御装置55は、複数の電動アクチュエータ41,51の動作を制御するように構成されている。
【0150】
なお、以下では、主に、上述の実施形態と異なる構成について説明し、上述の実施形態と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0151】
エルロン/スポイラ制御装置55は、フライトコントロールコンピュータ33からの制御信号に基づいて、エルロン用電動アクチュエータ41の電動モータ43を駆動するためのPWM制御信号を生成し、当該PWM制御信号を電動アクチュエータ41のモータドライバ45へ出力する。同様に、エルロン/スポイラ制御装置55は、フライトコントロールコンピュータ33からの制御信号に基づいて、スポイラ用電動アクチュエータ51の電動モータ43’を駆動するためのPWM制御信号を生成し、当該PWM制御信号をモータドライバ45’へ出力する。
【0152】
上記の制御の際、エルロン/スポイラ制御装置55は、エルロン用電動アクチュエータ41における電動モータ43の回転位置信号、回転速度信号、および電流信号を用いたフィードバック制御により、PWM制御信号を生成する。同様に、エルロン/スポイラ制御装置55は、スポイラ用電動アクチュエータ51における電動モータ43’の回転位置信号、回転速度信号、および電流信号を用いたフィードバック制御により、PWM制御信号を生成する。また、エルロン/スポイラ制御装置55は、電動モータ43,43’のそれぞれの回転速度信号、および電流信号を、フライホイールバッテリ制御装置35へ出力する。
【0153】
フライホイールバッテリ制御装置35の動作設定部351は、FCS用高圧バス14に接続された複数の電動モータ43,43’の負荷の電力消費状態に応じて、フライホイールバッテリ27の動作を制御する。具体的には、フライホイールバッテリ制御装置35の動作設定部351は、エルロン/スポイラ制御装置55から、上記の各電動モータ43,43’の回転速度信号および電流信号を受信する。そして、動作設定部351は、これらの回転速度信号および電流信号と、電力マップ格納部352に格納されているマップとを参照し、各電動モータ43,43’の動作に必要な電流値(電力量)の合計値を検出(推測)する。
【0154】
なお、エルロン用電動アクチュエータ41の電動モータ43に対応するマップと、スポイラ用電動アクチュエータ41の電動モータ43’に対応するマップとが、それぞれ、設けられている。これらのマップは、電力マップ格納部352に格納されている。スポイラ用電動アクチュエータ51の電動モータ43’に対応するマップは、図4に示す、エルロン用電動アクチュエータ41の電動モータ43に対応するマップと同様に設定されている。
【0155】
動作設定部351は、上記の処理によって、各電動モータ43,43’が必要な電力量の合計値を検出し、この合計値を基に、フライホイールバッテリ27による発電動作が必要か否かを判定する。そして、動作設定部351は、フライホイールバッテリ27による発電動作が必要であると判定した場合、フライホイールバッテリ27に発電動作を行わせるように、第1インバータコンバータ273を制御する。
【0156】
一方、動作設定部351は、フライホイールバッテリ27による発電動作が必要無いと判定した場合、フライホイールバッテリ27に蓄電動作(フライホイール271の回転動作)を行わせるように、第2インバータコンバータ274を制御する。
【0157】
以上の次第で、本実施形態によると、第1実施形態の作用効果に加えて、以下の作用効果を発揮することができる。すなわち、フライホイールバッテリ制御装置35は、複数の電動アクチュエータ41,51のそれぞれの動作に必要な必要電力の合計値を基に、フライホイールバッテリ27を動作させることが可能である。この構成によると、複数の電動アクチュエータ41,51が同時に動作した場合でも、主発電機21から与えられる電力より大きい電力を、電動アクチュエータ41,51へ供給できる。また、複数の電動アクチュエータ41,51へ与えられる電力の制御を、1つのフライホイールバッテリ制御装置35が一括して行うことができる。これにより、フライホイールバッテリ制御装置35は、複数の電動アクチュエータ41,51からの情報を統合してフライホイールバッテリ27を制御できる。よって、フライホイールバッテリ制御装置35は、複数の電動アクチュエータ41,51への電力制御を、より精密に行うことができる。
【0158】
また、本実施形態によると、エルロン/スポイラ制御装置55は、複数の電動アクチュエータ41,51の動作を制御し、且つ、電動アクチュエータ41,51の動作状態を特定するための信号をフライホイールバッテリ制御装置35へ出力可能である。この構成によると、エルロン/スポイラ制御装置55は、複数の電動アクチュエータ41,51を制御する機能と、電動アクチュエータ41,51の制御用データをフライホイールバッテリ制御装置35へ与える機能と、を有する統合化されたシステムを構成できる。
【0159】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態の主要部を説明するための模式図である。図8を参照して、第3実施形態では、電動アクチュエータ41,51毎に、フライホイールバッテリ27,27Aが設けられている。具体的には、電力システム1Aは、スポイラ制御装置52に関連して、フライホイールバッテリ27Aと、フライホイールバッテリ制御装置35Aとをさらに有している。このように、フライホイールバッテリ27に加えて、フライホイールバッテリ27Aが設けられていることにより、電源のさらなる分散配置が実現されており、これにより、電力利用のさらなる高効率化が図られている。
【0160】
フライホイールバッテリ制御装置35Aは、フライホイールバッテリ制御装置35と同様の構成を有している。具体的には、フライホイールバッテリ制御装置35Aは、動作設定部351Aと、電力マップ格納部352Aと、インターフェース部353Aとを有している。
【0161】
また、フライホイールバッテリ27Aは、フライホイールバッテリ27と同様の構成を有している。具体的には、フライホイールバッテリ27Aは、フライホイール271Aと、モータジェネレータ272Aと、第1インバータコンバータ273Aと、第2インバータコンバータ274Aと、インターフェース部275Aとを有している。
【0162】
スポイラ制御装置52は、フライトコントロールコンピュータ33からの制御信号に基づいて、スポイラ駆動装置50の電動アクチュエータ51の電動モータ43’を駆動するためのPWM制御信号を生成し、当該PWM制御信号をモータドライバ45’へ出力する。
【0163】
上記の制御の際、スポイラ制御装置52は、スポイラ駆動装置50の電動アクチュエータ51における、電動モータ43’の回転位置信号、回転速度信号、および、電流信号を用いたフィードバック制御により、PWM制御信号を生成する。
【0164】
また、スポイラ制御装置52は、スポイラ駆動装置50の電動アクチュエータ51における、電動モータ43’の回転速度信号、および、電流信号を、フライホイールバッテリ制御装置35Aの動作設定部351Aに出力する。
【0165】
動作設定部351Aは、スポイラ制御装置52から、上記の電動モータ43’の回転速度信号、および、電流信号を受信する。そして、動作設定部351Aは、これらの回転速度信号、および、電流信号と、電力マップ格納部352Aに格納されているマップとを参照し、各電動モータ43’に必要な電力量を検出(推測)する。
【0166】
動作設定部351Aは、上記の処理によって、電動モータ43’に必要な必要電力量を算出し、この必要電力量を基に、フライホイールバッテリ27Aによる発電動作が必要か否かを判定する。そして、動作設定部351Aは、フライホイールバッテリ27Aによる発電動作が必要であると判定した場合、フライホイールバッテリ27Aに発電動作を行わせるように、第1インバータコンバータ273Aを制御する。
【0167】
一方、動作設定部351Aは、フライホイールバッテリ27Aによる発電動作が必要無いと判定した場合、フライホイールバッテリ27Aに蓄電動作(フライホイール271の回転動作)を行わせるように、第2インバータコンバータ274Aを制御する。
【0168】
なお、図9に示すように、2つのフライホイールバッテリ制御装置35,35Aを統合制御する統合制御部70をさらに設けてもよい。統合制御部70は、CPU、RAM、および、ROMなどを備えている。この場合、2つの電動アクチュエータ41,51の動作状態に応じて、統合制御部70が、2つのフライホイールバッテリ制御装置35,35Aに適宜制御信号を出力する。これにより、2つのフライホイールバッテリ27,27A間で電力融通を行うことが可能である。
【0169】
[第4実施形態]
図10は、本発明の第4実施形態の主要部を示す模式図である。図10を参照して、本実施形態では、図8に示す第3実施形態の構成に加えて、統合制御部71、および、電力制御用バス72が設けられている。統合制御部71は、CPU、RAM、および、ROMなどを備えている。
【0170】
本実施形態では、統合制御部71は、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14に接続されている電気機器の必要電力を基に、各フライホイールバッテリ制御装置35,35Aを制御する。
【0171】
統合制御部71は、電力制御用バス72、および、インターフェース部353,353Aを介して、各フライホイールバッテリ制御装置35,35Aの動作設定部351,351Aに接続されている。また、統合制御部71は、第1高圧バス11から給電される各電気機器(エアコンディショナ31など)に電力制御用バス72を介して接続されている。統合制御部71は、第1高圧バス11から給電されている各電気機器に流れている電流値などから、これらの各電気機器に必要な必要電力量を算出する。また、統合制御部71は、各動作設定部351,351Aからの信号を参照して、各電動モータ43,43’の必要電力量を算出する。すなわち、統合制御部71は、第1高圧バス11に必要な電力量と、FCS用高圧バス14に必要な電力量とを検出する。
【0172】
そして、統合制御部71は、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14のうち、配電の余力が相対的に大きいバスからフライホイールバッテリ27,27Aの何れか一方へ配電させるように、フライホイールバッテリ27,27Aの何れか一方を動作させる。また、統合制御部71は、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14のうち、配電の余力が相対的に小さいバスへ向けてフライホイールバッテリ27,27Aの何れか他方から電力を出力するように、フライホイールバッテリ27,27Aの何れか他方を動作させる。
【0173】
なお、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14のうち、配電の余力が相対的に大きい一方のバスから電力を各フライホイールバッテリ27,27Aのモータジェネレータ272に供給し、これらのモータジェネレータ272の駆動によって発電する電力を、他方のバスへ供給してもよい。
【0174】
以上の次第で、本実施形態によると、統合制御部71は、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14のうち配電の余力が相対的に大きいバスからフライホイールバッテリ27、27Aへ配電させるようにフライホイールバッテリ27,27Aを動作させることが可能である。また、統合制御部71は、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14のうち配電の余力が相対的に小さいバスへフライホイールバッテリ27,27Aから電力を出力させることが可能である。この構成によると、第1高圧バス11およびFCS用高圧バス14間の電力負荷の偏りをより小さくすることができる。よって、主発電機21〜23、および、フライホイールバッテリ27の定格出力をより小さくでき、その結果、主発電機21〜23、および、フライホイールバッテリ27などをより小型且つ軽量にできる。
【0175】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られず、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。たとえば、次のように変更して実施することができる。
【0176】
(1)上述の各実施形態では、補助発電機およびラムエアタービンが設けられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。上述の各実施形態では、スマートグリッドにより、複数のDCバス間の電力融通が可能である結果、補助発電機およびラムエアタービンの少なくとも1つが省略されてもよい。補助発電機およびラムエアタービンの少なくとも1つが省略されることで、電力システムのさらなる小型化および軽量化が可能となる。
【0177】
(2)また、上述の各実施形態では、主発電機、補助発電機、ラムエアタービン、および、フライホイールバッテリのモータジェネレータが、交流発電機である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、主発電機、補助発電機、ラムエアタービン、および、フライホイールバッテリのモータジェネレータの少なくとも一つは、直流発電機であってもよい。このような構成であれば、直流発電機については、交流直流変換装置(ATRU:Auto Transformer Rectifier Unit。AC/DCコンバータ。)を省略できる。その結果、電力システムのさらなる小型化および軽量化が可能となる。
【0178】
(3)また、上述の各実施形態において、フライホイールバッテリに代えて、燃料電池またはスーパーキャパシタなど、他の蓄電および放電可能なバッテリが用いられてもよい。上記の燃料電池が用いられる場合、より大きな蓄電容量を確保できるとともに、燃料電池から排出される水の再利用も可能である。
【0179】
(4)また、上述の各実施形態において、電動アクチュエータによって動作される舵面として、エルロンおよびスポイラを例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、エレベータ(昇降舵)、方向舵(ラダー)、フラップ、スポイラなどの他の舵面に関して本発明が適用されてもよい。また、航空機に設置される機器としてのランディングギアの脚などを駆動する電動アクチュエータに関して本発明が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、航空機用電力システムに関して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0181】
1 電力システム
11 第1高圧バス(直流電源バス)
14 FCS用高圧バス14(直流電源バス)
21,22,23 主発電機(電源装置)
27 フライホイールバッテリ(電源装置)
31 エアコンディショナ(負荷)
41,51 電動アクチュエータ(負荷)
100 航空機
図1
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図10