(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主流を発生させる送風ファンと、前記送風ファンが発生させた前記主流を案内して流す主流ガイド部と、前記主流ガイド部から吐出された前記主流を縮流させて先端開口より吹き出すノズル部と、を備え、
前記ノズル部が、前記主流に沿う壁面に、当該ノズル部の内部に空気を誘引するための吸気口を有し、
前記先端開口の端縁に前記ノズル部の内側に膨出する膨出部が形成されており、
前記吸気口から誘引されて前記壁面に沿って層状に流れる前記空気の層厚が前記膨出部の膨出高さよりも大きいことを特徴とする送風装置。
主流を発生させる送風ファンと、前記送風ファンが発生させた前記主流を案内して流す主流ガイド部と、前記主流ガイド部から吐出された前記主流を縮流させて先端開口より吹き出すノズル部と、を備え、
前記ノズル部が、前記主流に沿う壁面に、当該ノズル部の内部に空気を誘引するための吸気口を有し、
前記送風ファンおよび前記主流ガイド部を収容し、前記主流ガイド部から吐出された前記主流を通過させる筐体開口を有する筐体と、
前記ノズル部の周囲に装着されて前記吸気口を掩蔽するカバー部と、を更に有し、
前記カバー部が、前記ノズル部および前記筐体との間にそれぞれ間隙を有しており、
前記間隙の面積はいずれも前記吸気口の開口面積よりも大きく、前記間隙を通じて外部の前記空気が前記吸気口に誘引されることを特徴とする送風装置。
主流を発生させる送風ファンと、前記送風ファンが発生させた前記主流を案内して流す主流ガイド部と、前記主流ガイド部から吐出された前記主流を縮流させて先端開口より吹き出すノズル部と、を備え、
前記ノズル部が、前記主流に沿う壁面に、当該ノズル部の内部に空気を誘引するための吸気口を有し、
前記送風ファンは、回転翼が旋回して前記主流を発生させる軸流ファンであり、
整流方向が互いに交差し前記主流をそれぞれ所定の前記整流方向に整流する複数のルーバーが互いに離間して多段に設けられており、
前記吸気口が、複数の前記ルーバー同士の間に形成されていることを特徴とする送風装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図面において同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。以下の説明では上下および左右の方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものであり、重力方向および水平方向とは必ずしも一致しない。
【0012】
図1は本発明の実施形態の送風装置100を示す正面図である。
図2は本実施形態の送風装置100を模式的に示す右側面図である。便宜上、
図2には筐体96の内部の機器を模式的に図示してある。
【0013】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
送風装置100は、主流F1を発生させる送風ファン10と、送風ファン10が発生させた主流F1を案内して流す主流ガイド部20と、主流ガイド部20から吐出された主流F1を縮流させて先端開口32より吹き出すノズル部30と、を備えている。そして、本実施形態の送風装置100においては、上記のノズル部30が、主流F1に沿う壁面34に、当該ノズル部30の内部に空気を誘引するための吸気口50を有することを特徴とする。
【0014】
次に、本実施形態の送風装置100について詳細に説明する。
【0015】
送風装置100は、扇風機、換気扇または送風機など、送風ファン10によって周囲の空気を搬送する装置である。このうち、本実施形態の送風装置100は気液接触部90で空気と水とを接触させて空気を加湿する加湿機能付きの扇風機である。送風装置100は、具体的には、常温の水または常温未満の冷水を空気と接触させることで水の気化潜熱を空気から奪って冷風を生成する気化式冷風器(冷風扇)である。
【0016】
送風装置100は、送風ファン10の吸込側に設けられた気液接触部90と、この気液接触部90に水Wを供給する給水部92と、を備えている。気液接触部90は、送風ファン10に吸引される空気を液体の水Wと接触させる。給水部92は、貯水容器92a、揚水ポンプ92bおよび揚水管92cを備えている。貯水容器92aには常温の水Wが貯留される。揚水ポンプ92bは貯水容器92aの内部に設けられて水Wに浸漬されてもよく、または貯水容器92aの外部に設けられてもよい。揚水管92cは、下端が貯水容器92aの内部に配置され、上端が気液接触部90の上部に配置されており、揚水ポンプ92bに揚水された水Wを気液接触部90に連続的に供給する。
【0017】
なお、本実施形態に代えて、給水部92は常温よりも高温の水(温水)を気液接触部90に供給してもよい。温水を空気と接触させることで送風装置100の加湿能力が高められる。この場合、貯水容器92aには加熱ヒータ(図示せず)を設けるとよい。
【0018】
送風ファン10、気液接触部90および給水部92は筐体96の内部に収容されている。筐体96の前面側(
図2の左側)にはノズル部30が設けられている。筐体96の背面側(
図2の右側)は開放されており、送風ファン10の旋回により生じた負圧により筐体96の周囲の空気が吸い込まれる。以下、この気流を吸込流F0という場合がある。また、送風装置100のうちノズル部30が設けられている側を先端側または下流側と呼称し、その反対側を基端側または上流側と呼称する場合がある。
【0019】
気液接触部90は、送風ファン10の背面側に設置されている。気液接触部90は、揚水管92cから供給された水Wを保持して吸込流F0と接触させる保水部91を備えている。保水部91は、吸込流F0の多数の流路が湾曲形成されて吸込流F0の通過長さを増大させる多孔部材である。保水部91は紙などの吸水性の材料からなり、保水部91の上方から水Wを吐出することで保水部91は全体的に濡れた状態となる。かかる保水部91を吸込流F0が所定の流速で通過することで保水部91の表面は負圧となり水Wが揮発する。これにより保水部91および吸込流F0は冷却され、吸込流F0は加湿される。
【0020】
本実施形態の送風ファン10は、回転翼が旋回して主流F1を発生させる軸流ファンである。送風ファン10はモータ(図示せず)で駆動される。送風ファン10として遠心ファンを用いてもよいが、軸流ファンを用いることで整流性に優れ、ノズル部30から吹き出された主流F1の到達距離を長くすることができる。
【0021】
筐体96には、送風ファン10および主流ガイド部20が収容されている。筐体96は、主流ガイド部20から吐出された主流F1を通過させる筐体開口94を有している。筐体開口94は筐体96の前面に形成されている。本実施形態の筐体開口94は角丸矩形状をなしている。後述するようにノズル部30は矩形ノズルであり、その基端側に設けられた大径基端部36は矩形の開口部(基端開口)を有している。筐体開口94は、送風装置100の正面視にて大径基端部36の基端開口に内接している。すなわち、角丸矩形状の筐体開口94における辺部95(
図4(a)を参照)は、大径基端部36の基端開口の直線状の内縁と略一致しており、辺部95同士の対向間隔は、大径基端部36の基端開口における対応する内縁同士の対向間隔と略等しい。筐体開口94の湾曲した4つの角部は、大径基端部36の基端開口のコーナー部にそれぞれ内接している。主流ガイド部20は、先端側に向って滑らかに縮径したのちに拡径するラバールノズルである。主流ガイド部20の基端は円形に開口し、先端側に向ってベルマウス型に縮径している。送風ファン10は主流ガイド部20の内部、具体的には円形に縮径した中間部に配置されている。主流ガイド部20の先端側は漏斗状に拡径したうえで筐体開口94と連通している。主流ガイド部20の先端の開口は、角丸矩形状の筐体開口94と略同一の形状および寸法であることが好ましい。これにより、主流ガイド部20に取り込まれた吸込流F0が主流ガイド部20から実質的に漏れることなく主流F1として筐体開口94を通過する。また、主流ガイド部20の先端の開口および筐体開口94がともに角丸矩形状であることで、主流ガイド部20のうち送風ファン10が設置された円形の中間部からノズル部30の大径基端部36の矩形の基端開口に亘って、吸込流F0および主流F1の流路が円形から矩形状に滑らかに変化している。このため、送風ファン10から吹き出される主流F1は、実質的に減速することなく筐体開口94を通過してノズル部30の大径基端部36に吐出される。
【0022】
送風装置100には、整流方向が互いに交差し主流F1をそれぞれ所定の整流方向に整流する複数のルーバー80、82が互いに離間して多段に設けられている。
図2に示すように、吸気口50は複数のルーバー80、82同士の間に形成されている。
【0023】
上流側に位置するルーバー80は、
図1に示すように送風装置100の幅方向に延在しており、吸込流F0を上下方向に整流する。ルーバー80はノズル部30における大径基端部36の内部に設けられている。ただし、これに代えて筐体96の内部かつ送風ファン10の下流側にルーバー80を設けてもよい。下流側に位置するルーバー82は、
図1に示すように送風装置100の上下方向に延在しており、主流F1を幅方向に整流する。ルーバー82はノズル部30の小径先端部38に設けられている。なお、本実施形態に代えて、上流側のルーバー80の整流方向を左右方向とし、下流側のルーバー82の整流方向を上下方向としてもよい。ノズル部30の先端にはメッシュ84が任意で装着されており、小径先端部38から吹き出される主流F1を更に整流する。
【0024】
送風ファン10の旋回により筐体96に吸い込まれた吸込流F0は、主流ガイド部20を通じてノズル部30に送られ、ノズル部30の内部で縮流される。
【0025】
ノズル部30は、大径基端部36と小径先端部38とを連続的に接続する縮径部37を有している。ノズル部30の内部に空気を誘引する吸気口50は、縮径部37の壁面34に形成されている。このため、吸気口50から吸引された空気は縮径部37および小径先端部38の内壁面に沿ってノズル部30の内部を下流側に流動する。これにより、後述するように吸気口50から誘引された空気はノズル部30の内壁面に沿って層状の補助流F2を構成する(
図4(a)を参照)。
【0026】
吸気口50には、主流F1の上流側から下流側に向かってノズル部30に対して斜め内向きに突出する案内部60が設けられている。案内部60は、ノズル部30の外部の空気が吸気口50の内部に誘引されることを促進する部材である。以下、案内部60の機能について更に詳細に説明する。
【0027】
図3(a)はノズル部30の正面図である。
図3(b)は
図3(a)のB−B線断面図である。なお、
図3(a)においてはメッシュ84を図示省略し、
図3(b)においてはルーバー82およびメッシュ84を図示省略してある。
【0028】
ノズル部30は、正面視にて矩形状をなす矩形ノズルである。基端側から大径基端部36、縮径部37および小径先端部38が滑らかに連続しており、大径基端部36の基端側にはフランジ部39が設けられている。フランジ部39は筐体96(
図2を参照)の前面にノズル部30を固定するために用いられる。矩形の四辺を構成する4枚の傾斜する縮径部37には、吸気口50がそれぞれ形成されている。吸気口50は縮径部37の周方向に長く延在する矩形状をなしている。案内部60は、吸気口50の外側から内側に向って突出するように縮径部37に固定されている。
【0029】
吸気口50の形状、位置および個数は特に限定されないが、ノズル部30の周囲に等間隔で均等に配置されていることが好ましい。これにより、主流F1の周囲を取り囲む補助流F2を均一な厚さで形成することができる(
図4(a)を参照)。
【0030】
案内部60は板材を屈曲させてなる。案内部60は、縮径部37の外壁面に固定される取付部64と、ノズル部30の内部に突出する先端62とを備えている。
図3(a)に示すように、案内部60の幅寸法は吸気口50の開口幅と同等である。本実施形態の案内部60は矩形の板材を吸気口50の基端側の縁に沿って屈曲させたものである。先端62は案内部60のうち取付部64に対向する一辺であり、先端62は吸気口50の開口幅方向に延在している。取付部64を除き、先端62を含む案内部60の先端側は平板状をなしている。ただし本実施形態に代えて、先端62が縮径部37の壁面34と略平行になるよう、先端62の近傍において案内部60を下流側に向って滑らかに湾曲させてもよい。
【0031】
ノズル部30は、大径基端部36と、この大径基端部36よりも小径で先端開口32を有する小径先端部38と、を有している。案内部60の先端62は、主流F1の流れ方向(
図3(b)の左右方向)にみて、小径先端部38の内側に貫入している。小径先端部38の内壁面のラインを
図3(b)に一点鎖線で示す。同図に示すように案内部60の先端62は小径先端部38の内壁面よりも軸心側(ノズル部30の中心側)に達している。
【0032】
先端開口32の端縁33には、ノズル部30の内側に膨出する膨出部70が形成されている。膨出部70は樹脂材料からなり、小径先端部38の端縁33を被覆している。これにより、ユーザの手指などを端縁33で損傷することがない。
図3(a)に示すように、膨出部70は先端開口32の周囲に周回状に設けられている。膨出部70は、ノズル部30の内側に加えて外側に膨出していてもよい。
【0033】
本実施形態の案内部60の先端62は、主流F1の流れ方向にみて、小径先端部38の内側を超えて、更に先端開口32の内側まで貫入している。本実施形態における先端開口32の内側とは膨出部70の内縁よりも内側をいう。
図3(a)に示すように、ノズル部30の正面視において、案内部60の先端62は膨出部70よりも内側に位置し、先端開口32に露出している。
【0034】
図4(a)は吸気口50から補助流F2が誘引される様子を示す縦断面模式図である。縦断面とはノズル部30の軸心を通る平面で切った断面である。
図4(b)は案内部60とノズル部30との位置関係を示す模式図である。
【0035】
送風装置100は、ノズル部30の周囲に装着されて吸気口50を掩蔽するカバー部72を有している。ノズル部30の小径先端部38はカバー部72よりも先端側に突出している。ノズル部30およびカバー部72は、いずれも筐体96の前面側に固定されている。ノズル部30のフランジ部39は筐体96に実質的に隙間なく固定されているのに対し、カバー部72はノズル部30および筐体96との間にそれぞれ間隙V1、V2を有して固定されている。
【0036】
カバー部72の基端部にはフランジ部75が形成されている。フランジ部75は、スペーサ74を介して筐体96に取り付けられている。具体的には、カバー部72のフランジ部75は、スペーサ74を貫通するネジ76(
図1を参照)により筐体96に固定されている。スペーサ74は、カバー部72の周囲に所定の間隔ごとに十分に離間して設けられている。これにより、筐体96とフランジ部75との間隙V1は、カバー部72の略全周に亘って開口している。
【0037】
カバー部72の先端にはカバー開口73が形成されている。カバー開口73にはノズル部30の小径先端部38が挿通されている。カバー開口73は小径先端部38の周囲に隙間なく密着していることが好ましいが、これに限られない。カバー部72はノズル部30の小径先端部38から縮径部37に亘って、その外壁面を覆っている。先端開口32を除き、カバー部72とノズル部30との間には間隙V2が存在しており、言い換えるとカバー部72はノズル部30から離間してこのノズル部30を覆っている。間隙V2は、縮径部37および小径先端部38の全周に亘って開口している。
【0038】
これにより、間隙V1、V2の面積は、いずれも吸気口50の開口面積よりも大きい。ここで、吸気口50の開口面積とは、ノズル部30の壁面に形成された複数の吸気口50の面積の合計である。ノズル部30の内部を主流F1が高速で通過することで、ノズル部30の外部の空気は間隙V1および間隙V2を通じて吸気口50に誘引され、補助流F2となる。このとき、間隙V1、V2が吸気口50の開口面積よりも大きいため、吸気口50から補助流F2を誘引する吸引圧に対してカバー部72が圧力損失を生じることはない。
【0039】
送風ファン10の旋回によって主流ガイド部20に取り込まれた吸込流F0は、主流F1となって筐体開口94を通過し、ノズル部30に導入される。ノズル部30の縮径部37で主流F1は縮流して加速される。主流F1の一部は案内部60の背面63に衝突する。ただし、案内部60は下流側に向かって斜め内向きに突出しており、主流F1は案内部60に対して斜めに衝突するため、主流F1に生じる圧力損失は無視できる。なお、案内部60の背面63とは、ノズル部30の正面視にて案内部60の背後側に位置する面である。また、筐体開口94からみて吸気口50は案内部60の背後に完全に隠れている。このように、案内部60によって吸気口50を主流F1から遮蔽することで主流F1が吸気口50から外側に噴出することがない。これにより、主流F1を縮流する縮径部37に吸気口50を形成したとしても、主流F1が吸気口50を通じてノズル部30の外部に漏れ出すことなく、逆に吸気口50を通じてノズル部30の外部から補助流F2を誘引することができる。
【0040】
そして、主流F1が案内部60の先端62を回り込んで通過することで、案内部60の前面側および吸気口50は負圧となる。これにより、ベンチュリ効果によって間隙V1および間隙V2を通じて外部の空気が吸気口50から吸引されて補助流F2となる。また、上述のように角丸矩形状の筐体開口94の辺部95は大径基端部36の基端開口の辺と略一致している。このため、
図4(a)に示すように、筐体開口94の辺部95の近傍を通過して主流ガイド部20からノズル部30に流入する主流F1aは、大径基端部36の内部で拡径することなく、大径基端部36および縮径部37の内壁面および案内部60の背面63に沿って流動する。これにより、縮径部37で縮流されて加速した主流F1aは実質的に減速せずに案内部60の背面63を高速で通過するため、吸気口50に大きなベンチュリ効果を発生させて補助流F2を好適に誘引する。
【0041】
吸気口50からノズル部30の内部に誘引された補助流F2は、主流F1と衝突せず、主流F1およびノズル部30の内壁面に沿って流動する。このため、補助流F2は主流F1を取り囲む薄い層状になる。ここで、補助流F2が層状であるとは、補助流F2がノズル部30の先端開口32の一部領域から吹き出されることを意味し、補助流F2が主流F1と完全に混合している状態を排除するものである。補助流F2の層厚さは特に限定されず、ノズル部30の内部において主流F1の流れ方向に沿って、補助流F2の層厚は略一定でもよくまたは補助流F2の層厚は変化してもよい。また、ノズル部30の内部における補助流F2は層流であることが好ましいが、乱流であってもよい。
【0042】
図4(a)に示すように、吸気口50から誘引されてノズル部30の壁面34に沿って層状に流れる空気(補助流F2)の層厚Tは、膨出部70の膨出高さHよりも大きい。言い換えると、補助流F2は膨出部70を内包して先端開口32から吐出される。これにより、縮径部37で加速された主流F1は膨出部70と衝突せず、ノズル部30の軸心に沿って減速せずに先端開口32から噴出される。また、主流F1が膨出部70と衝突して流れが乱されることが抑制されるため、先端開口32から噴出される主流F1の噴流が径方向に拡散することが低減される。このため、本実施形態の送風装置100によれば、補助流F2を誘引して吸込流F0の気流量を増大させるとともに、主流F1を減速させることがない。このため、ユーザが手指を保護する膨出部70が先端開口32の端縁33に装着されていても、主流F1の噴出速度が実質的に低下せず、主流F1の騒音も軽減される。
【0043】
案内部60の先端62の位置および傾斜角度、ならびに吸気口50の開口面積を変化させることで補助流F2の流量および層厚Tが変化する。言い換えると、主流F1の流速に応じて、所定の流量の補助流F2が発生するよう案内部60および吸気口50の諸元を決定することができる。
【0044】
一例として、案内部60の先端62から小径先端部38までの軸方向距離L1(例えば、20mm以上50mm以下)に対し、小径先端部38の軸方向長さL2は、2倍以上かつ10倍以下が好ましく、2倍以上5倍以下がより好ましい。L2をL1の2倍以上とすることで、吸気口50から誘引された補助流F2が小径先端部38の内壁面に沿って十分に層状に整流され、またコアンダ効果が十分に発現して主流F1の到達距離を大きくすることができる。また、L2の上限を上記のように設定することで、ノズル部30の突出長が過大とならず、送風装置100の設置スペースを抑制することができる。
【0045】
なお本実施形態については種々の変形を許容する。
たとえば、上記実施形態では縮径部37に吸気口50を形成することを例示したが、これに代えて、吸気口50を大径基端部36に形成してもよく、小径先端部38に形成してもよい。ノズル部30の形状も上記実施形態に限らず、大径基端部36を設けずに縮径部37を筐体96に固定してもよい。
また、上記実施形態では、吸気口50の基端側の縁にあたる縮径部37の外壁面に案内部60の取付部64を取り付けることを例示したが、これに代えて、案内部60の取付部64を縮径部37の内壁面に取り付けてよい。
また、上記実施形態では案内部60を別部材としてノズル部30に取り付けることを例示したが、これに限らず、案内部60をノズル部30と一体に成形してもよい。
また、ノズル部30のフランジ部39と筐体96との隙間から補助流F2が進入しないよう、この隙間を気密に封止してもよい。
【0046】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
図5は本発明の実施例および比較例1、2にかかる風速分布を示すグラフである。
【0047】
WV1は、上記実施形態の送風装置100より噴出された主流F1の風速分布を示す。横軸はノズル部30の先端開口32からの距離[m]であり、縦軸は各距離における平均風速[m/秒]である。先端開口32の中心をノズル部30の軸心方向に延長した線上で複数回に亘って市販の風速計を用いて主流F1の風速を測定した。
【0048】
送風装置100の運転時の電力は168W(実測値)、電流は1.68A(実測値)であった。
【0049】
WV2は、ノズル部30を装着せず、またスペーサ74を介挿せずにカバー部72を筐体96に固定した比較例1の送風装置より噴出された主流の風速分布を示す。比較例1の送風装置の運転時の電力は167W(実測値)、電流は1.67A(実測値)であり、実施例の送風装置100と実質的に同一の消費エネルギーであった。
【0050】
WV3は、比較例1と同じくノズル部30を装着せず、またスペーサ74を介挿せずにカバー部72を筐体96に固定した送風装置であって、かつ比較例1よりも大型の送風装置を用いた場合の主流の風速分布を示す。比較例2の送風装置の運転時の電力は359W(実測値)、電流は3.63A(実測値)であり、実施例および比較例1の送風装置の約2倍の消費エネルギーであった。
【0051】
図5に示す結果より、比較例1(WV2)では主流の到達距離は6m程度であったのに対し、実施例(WV1)では同等の消費エネルギーでありながら主流の到達距離が10m程度まで大幅に増大した。風速に関しても、距離3mにおいて約60%増(実施例:3.2m/秒、比較例1:2.0m)、距離5mにおいて約67%増(実施例:2.0m/秒、比較例1:1.2m)と、大幅に増大した。
【0052】
また、消費エネルギーが実施例の約2倍の比較例2(WV3)の送風装置では、距離3mにおいて4.5m/秒、距離5mにおいて3.0mであった。したがって、電力100Wあたりの風速に換算すると、距離3mにおいて1.3m/秒/100W、距離5mにおいて1.2m/秒/100Wで0.8/秒/100Wであった。これに対し、実施例(WV1)では、距離3mにおいて1.9m/秒/100W、距離5mにおいて1.2m/秒/100Wであった。以上より、実施例の送風装置は、比較例2の送風装置に比べて電力あたりの風速が大幅に向上していることが分かった。
【0053】
以上より、本発明の実施例にかかる送風装置100によれば、消費電力を抑制しつつ、送風能力を向上できることが確認された。
【0054】
本発明の送風装置100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0055】
上記の実施形態および実施例は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)主流を発生させる送風ファンと、前記送風ファンが発生させた前記主流を案内して流す主流ガイド部と、前記主流ガイド部から吐出された前記主流を縮流させて先端開口より吹き出すノズル部と、を備え、前記ノズル部が、前記主流に沿う壁面に、当該ノズル部の内部に空気を誘引するための吸気口を有することを特徴とする送風装置。
(2)前記主流の上流側から下流側に向かって前記ノズル部に対して斜め内向きに突出する案内部が前記吸気口に設けられている上記(1)に記載の送風装置。
(3)前記案内部の先端が、前記主流の流れ方向にみて前記先端開口の内側に貫入していることを特徴とする上記(2)に記載の送風装置。
(4)前記ノズル部が、大径基端部と、前記大径基端部よりも小径で前記先端開口を有する小径先端部と、を有し、前記案内部の先端が、前記主流の流れ方向にみて前記小径先端部の内側に貫入していることを特徴とする上記(2)または(3)に記載の送風装置。
(5)前記案内部の前記先端から前記小径先端部までの軸方向距離に対し、前記小径先端部の軸方向長さが2倍以上かつ5倍以下である上記(4)に記載の送風装置。
(6)前記ノズル部が、前記大径基端部と前記小径先端部とを連続的に接続する縮径部を有し、前記吸気口が前記縮径部の壁面に形成されている上記(4)または(5)に記載の送風装置。
(7)前記先端開口の端縁に前記ノズル部の内側に膨出する膨出部が形成されており、前記吸気口から誘引されて前記壁面に沿って層状に流れる前記空気の層厚が前記膨出部の膨出高さよりも大きい上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の送風装置。
(8)前記送風ファンおよび前記主流ガイド部を収容し、前記主流ガイド部から吐出された前記主流を通過させる筐体開口を有する筐体と、前記ノズル部の周囲に装着されて前記吸気口を掩蔽するカバー部と、を更に有し、前記カバー部が、前記ノズル部および前記筐体との間にそれぞれ間隙を有しており、前記間隙の面積はいずれも前記吸気口の開口面積よりも大きく、前記間隙を通じて外部の前記空気が前記吸気口に誘引されることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の送風装置。
(9)前記送風ファンは、回転翼が旋回して前記主流を発生させる軸流ファンであり、整流方向が互いに交差し前記主流をそれぞれ所定の前記整流方向に整流する複数のルーバーが互いに離間して多段に設けられており、前記吸気口が、複数の前記ルーバー同士の間に形成されている上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の送風装置。
(10)前記送風ファンの吸込側に設けられて前記送風ファンに吸引される空気を液体の水と接触させる気液接触部と、前記気液接触部に水を供給する給水部と、を備える上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の送風装置。