特許第6396058号(P6396058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396058
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】高含油水性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20180913BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20180913BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A61K8/92
   A61K8/34
   A61K8/67
   A61K8/63
   A61K8/86
   A61K8/02
   A61Q1/14
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-71327(P2014-71327)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193546(P2015-193546A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】新井 祐子
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−224713(JP,A)
【文献】 特開2011−241156(JP,A)
【文献】 特開2012−201622(JP,A)
【文献】 特開2004−143064(JP,A)
【文献】 特開平11−193213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E);
(A)油性成分 60〜84質量%
(B)多価アルコール 1〜25質量%
(C)ステロール骨格を有するノニオン性界面活性剤
(D)カロテノイド類
(E)水 0.01〜20質量%
を含有することを特徴とする高含油水性化粧料
【請求項2】
さらに成分(F)として、アルカリ可溶性乳化重合体を含有することを特徴とする請求項1記載の高含油水性化粧料
【請求項3】
成分(B)がグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2載の高含油水性化粧料
【請求項4】
成分(C)がポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステリルエーテルから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかの項記載の高含油水性化粧料
【請求項5】
成分(F)がアクリレート/セテス−20メタクリレート共重合体、アクリレート/ステアレス−50アクリレート共重合体、アクリレート/ステアレス−20メタクリレート共重合体、アクリレート/ベヘネス−25メタクリレート共重合体から選ばれる1種又は2種以上をポリマー分とするポリマーエマルションであることを特徴とする、請求項〜4の何れかの項記載の高含油水性化粧料
【請求項6】
次の成分(A)〜(E);
(A)油性成分 60〜84質量%
(B)多価アルコール 1〜25質量%
(C)ステロール骨格を有するノニオン性界面活性剤
(D)カロテノイド類
(E)水 0.01〜20質量%
を含有する高含油水性化粧料を用いて、マッサージ行為を行うことを特徴とするメイクアップのクレンジング方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高含油水性化粧料に関し、さらに詳細には、ウォータープルーフタイプのようなハードなメイクアップ汚れに対してもメイク除去能に優れ、使用時に指すべりが良く、適度な粘度を維持できるため、クレンジング行為と同時にマッサージができ、使用後の保湿感に優れた高含油水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
女性の社会進出を背景に、化粧行為に関しても「時短」や「2in1」志向が高まっている。メイクアップのクレンジング行為では、夜遅く疲れて帰宅しても使用できるよう、手軽にきちんとメイク汚れを落とせるクレンジング化粧料が人気である。加えて、1日の疲れをケアできるリラックス要素を持つ商品等、付加価値へのニーズが高まっている。
【0003】
一方、メイクアップのクレンジング化粧料としては、水性、乳化型、油性等様々なタイプが開発されている。この中で、油性タイプは油剤と活性剤が多く含有されるため、最もメイクアップ除去能が高い。しかしながら、例えば「2in1」発想でクレンジング行為と同時にマッサージを行うことを想定すると、粘度が低いために指すべりが悪く、肌を必要以上にこすることで逆に肌を痛めてしまう。さらに、肌の皮脂成分を過剰に除去してしまうこともあり、マッサージには適さなかった。
【0004】
これとは別に、高含油水性タイプとして、多価アルコール中に多量の油性成分を保持させたクレンジング化粧料も検討されている(例えば特許文献1、2)。高含油水性化粧料は比較的高粘度で、メイク汚れとなじませても液状化することなく、マッサージ行為に必要な指すべりの良さとその持続に優れるという特徴を有する。また、油性タイプに比べ、過剰な脱脂力はなく、使用後の肌はべたつかず感触が良好であるため、クレンジング料とマッサージ料の「2in1」発想に適した製剤と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−40522号公報
【特許文献2】特開平9−175935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、高含油水性タイプのクレンジング化粧料は、メイク除去能が比較的高く、マッサージ行為にも適しているが、本来クレンジング化粧料としての用途に着目して開発されていたため、「2in1」としてメイクアップ除去能とマッサージ性の両方を想定した場合には、それぞれの機能は充分満足できるものではなかった。そこで本発明は、斯かる事情に鑑み、ウォータープルーフタイプのようなハードなメイクアップも除去できるクレンジング効果と、マッサージ化粧料としての新たなニーズに応えうる使用性の良さ、使用後の肌の保湿感、これら全てに優れた高含油水性化粧料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究の結果、油性成分、多価アルコール、水を特定の量範囲で含有し、かつステロール骨格を有するノニオン性界面活性剤を含有すると、ステロール骨格を有する界面活性剤が肌との親和性が高く、効率よくメイクアップ化粧料を肌から浮かせることができるという知見を得た。さらに、カロテノイド類を組み合わせると使用後の肌の保湿感が優れ、また、ステロール骨格を有する界面活性剤がより安定化し、メイクアップ除去能が飛躍的に高まることを見出した。加えて、アルカリ可溶性乳化重合体を含有すると、化粧料の安定性がさらに良好で、マッサージ行為中の剤の粘度変化を抑えることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(E);
(A)油性成分 60〜84質量%
(B)多価アルコール 1〜25質量%
(C)ステロール骨格を有するノニオン性界面活性剤
(D)カロテノイド類
(E)水 0.01〜20質量%
を、含有することを特徴とする高含油水性化粧料を提供するものである。
【0009】
さらに成分(F)として、アルカリ可溶性乳化重合体を含有することを特徴とする高含油水性化粧料に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高含油水性化粧料は、ウォータープルーフタイプのようなハードなメイク汚れも容易に落とすことができるメイク除去能に優れ、使用時に指すべりが良く、適度な粘度を維持できるため、クレンジング行為と同時にマッサージができ、使用後の保湿感に優れた高含油水性化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において高含油水性化粧料とは、60質量%以上の油性成分を内相とし、多価アルコールと水の混合物を外相(連続相)としており、外相の多価アルコールが水に対して相対的に多いため、油性成分との界面張力差が小さくなり、内相中に多量の油性成分を微細分散することができ、油性成分の体積効果により構造を保つ化粧料を指す。また、「〜」はその前後の数値を含む範囲を示すものとする。
【0012】
本発明に用いられる成分(A)の油性成分は、メイクアップ汚れを溶解し、浮かせて除去するための成分として含有するものであり、さらには、多量に内包させることにより内相として構造を支え、系全体の構造を保つ役割を担うため、望ましい粘性を具現化するためにも必須の成分である。
【0013】
本発明で用いられる成分(A)の油性成分については、通常の化粧料に使用される固体、半固体及び液体油であれば、特に限定されるものではないが、常温においてペースト〜液状であれば、マッサージを行う際の指すべりが向上するため好ましい。具体的には動物油、植物油、鉱物油、合成油を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油、親油性界面活性剤等が挙げられる。例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、ワセリンなどの炭化水素油、2‐エチルヘキシルパルミテート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、イソプロピルステアレート、イソブチルステアレート、2‐エチルヘキシルステアレート、イソプロピルイソステアレート、ブチルイソステアレート、デシルイソステアレート、ラウリルイソステアレート、イソデシルイソデカノエート、イソデシルイソノナノエート、イソトリデシルイソノナノエート、イソノニルイソノナノエート、ネオペンチルグリコールジオクタノエート、トリ2‐エチルヘキサン酸グリセリル、プロピレングリコールジカプレート、プロピレングリコールジカプレート、トリ( カプリル・カプリン) 酸グリセリンなどのエステル油、小麦胚芽油、米胚芽油、メドウフォーム油、ローズマリー油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油などの植物油、ラノリン、ジメチコン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、油溶性美容成分等を挙げる事ができる。この中でも特にエステル類、シリコーン類、鉱物油、植物油が好ましい。さらにはトリ2‐エチルヘキサン酸グリセリル、パルミチン2−エチルヘキシル、ジメチコン、ミネラルオイル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ( カプリル・カプリン) 酸グリセリン、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、メドウフォーム油等が高いメイクなじみ効果を得る上で特に好ましく、これらは必要に応じて1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0014】
本発明に用いられる成分(A)の油性成分は、化粧料中60〜84質量%(以下単に%と略す)を含有することが必要であり、65〜80%がさらに好ましい。この範囲であれば、高いメイク除去能が得られ、また構造も良好である。60% 未満では、メイクアップ量の溶解が不十分のためメイク除去能が不良となり、また良好な構造が得られないために、経時安定性が悪くなる場合がある。一方、84% を超えて含有するとぬるつき感が強くなり、また外相が内油相を保持しきれないため、経時安定性が悪くなる場合がある。
【0015】
本発明に用いられる成分(B)多価アルコールは、成分(A)と構造を構築し、望ましい粘性を得るために必須の成分である。また、後肌の保湿感を付与する成分として含有されるものである。
【0016】
本発明で用いられる成分(B)多価アルコールについては、通常の化粧料に使用されるものであれば特に限定されず、具体的にはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール及び1,2−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。これらのうち、高い構造形成能と保湿効果が得られることから、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコールが特に好ましい。
【0017】
本発明に用いられる成分(B)の多価アルコールは、化粧料中1〜25%含有することが必要であり、5〜20%がさらに好ましい。この範囲であれば良好な構造が得られ、また使用後の肌の保湿感が良好である。1%未満では、良好な構造が得られないために、経時安定性が悪くなる場合がある。一方、25%を超えて含有すると後肌のべたつきが強くなる場合がある。
【0018】
本発明に用いられる成分(C)ステロール骨格を有するノニオン性界面活性剤は、肌との親和性が高いことから、効率よくメイク汚れを肌から浮かせることができ、メイク除去能を飛躍的に向上させる。
【0019】
成分(C)のステロール骨格部分の構造としては、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、セレブロステロール、デヒドロコレステロール、コプロスタノール等の動物系ステロール骨格;β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール及びエルゴステロール、フコステロール、スピナステロール及びブラシカステロール等の植物系ステロール骨格;ミコステロール及びチモステロール等の微生物系ステロール骨格等が例示され、これらに水素付加又は水付加した誘導体でも良い。特に好ましくは、フィトステロール、コレステロールである。
【0020】
本発明の成分(C)は、前記ステロール骨格にポリオキシアルキレンがエーテル結合したものであり、ポリオキシエチレン基(以下POEと略す)、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等がランダム状、ブロック状に適宜付加したものが挙げられる。
より具体的には、POE(10)コレステリルエーテル、POE(15)コレステリルエーテル、POE(20)コレステリルエーテル、POE(24)コレステリルエーテル及びPOE(30)コレステリルエーテル等のポリオキシエチレンコレステリルエーテル類;POE(20)コレスタノール、POE(25)コレスタノール及びPOE(30)コレスタノール等のポリオキシエチレンコレスタノール類;POE(5)フィトステロール、POE(10)フィトステロール、POE(20)フィトステロール、POE(25)フィトステロール及びPOE(30)フィトステロール等のポリオキシエチレンフィトステロール類;POE(20)フィトスタノール、POE(25)フィトスタノール及びPOE(30)フィトスタノール等のポリオキシエチレンフィトスタノール類等が挙げられ、これらは必要に応じて1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。なお、前記例示における括弧内の数値は、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示す。このうち、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル類及びポリオキシエチレンフィトステロール類が、洗浄性、安定性の点から好ましい。さらに、POE(10〜30)コレステロール及びPOE(10〜30)フィトステロール、POE(20〜30)コレステロール及びPOE(20〜30)フィトステロールがより好ましい。
これらの市販品としては、EMALEX CS−10、EMALEX CS−20、EMALEX CS−30(以上、全て日本エマルジョン社製)、NIKKOL BPS−10、NIKKOL BPS−20、NIKKOL BPS−30(以上、全て日本サーファクタント工業社製)、ベルポール DC−30(日本精化社製)等が挙げられ、いずれも本発明において好適に使用することができる。
【0021】
本発明に用いられる成分(D)カロテノイド類は、使用後の肌の保湿感を高め、さらには成分(C)の製剤中における界面安定性を向上させ、メイク除去能を増強させる。さらに、本発明品を用いてマッサージを行った際には、肌の活性化成分としての効果も有するものである。
【0022】
成分(D)としては、カロテノイド類であればカロテン、キサントフィル、いずれも好適に使用することが可能であり、具体的にはカロテン、リコピン、フコキサンチン、アスタキサンチン、ルテイン等が挙げられる。このうち、アスタキサンチンがメイク除去能をより高めるため、特に好ましい。これらは必要に応じて1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0023】
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でキサントフィル類に分類され、化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione(C4052、分子量596.82)である。また、アスタキサンチンの誘導体としては、例えばアスタキサンチンエステル等があげられ、アスタキサンチンのジアセタート(C40502(OCOCH)やジパルミタート(C40502(OCOC1531)等がある。本発明においては、特に断らない限り、上記のアスタキサンチン及びアスタキサンチンエステル等の誘導体を含めて「アスタキサンチン」と称する。
【0024】
本発明に用いられるアスタキサンチンは例えば、オキアミ、サケ、マス、福寿草、赤色酵母、ヘマトコッカス藻等の天然物から抽出したものや合成品を用いることができるが、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(以下、ヘマトコッカス藻抽出物ともいう)が、品質、生産性の点から特に好ましい。天然物からアスタキサンチンを得る場合の抽出溶媒については、水系溶媒でも有機溶媒であってもよい。有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン等を用いることができる。また、超臨界状態の二酸化炭素等を用いることもできる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし2種類以上を混合して用いてもよい。
【0025】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。また、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同5F等、オリザ油化製のアスタキサンチン−5C、同20C、バイオジェニック社製のASTABIO(登録商標)AR1、AR5等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる成分(E)水は、成分(B)とともに本化粧料の外相をなす成分として含有される。水としては、通常化粧料製造のために用いられる水であれば特に限定されず、常水、精製水、温泉水、深層水や、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水等の植物由来の水蒸気蒸留水等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0027】
本発明に用いられる成分(E)水は、全化粧料中0.01〜20% であり、2〜15%がさらに好ましい。この範囲であれば良好な安定性を確保することができる。0.01%未満では水溶性成分である成分(B)、成分(C)を溶解するのに不充分な場合があり、構造が崩れて安定性が不良となる場合がある。20%を超えて含有すると構造が弱く軟化して経時安定性が悪くなる場合がある。
【0028】
本発明においては、さらに成分(F)として、アルカリ可溶性乳化重合体を含有することが望ましく、アルカリ剤で中和して使用する。成分(F)のアルカリ可溶性乳化重合体は、成分(C)の非イオン性界面活性剤と併用することで、油性成分と多価アルコールの界面を強化し、油性成分を多く含有しても良好な構造を形成することが可能となり、さらに経時安定性及び使い易さなどの使用性も向上する。また、成分(F)のアルカリ可溶性乳化重合体は耐塩性が高く、電解質による粘度低下が少ないため、肌上の塩の影響による粘度低下が起こらず、クレンジング行為やマッサージの使用性に有利である。
【0029】
本発明に用いられる成分(F)のアルカリ可溶性乳化重合体は、そのもの自身では低粘度のポリマー水分散液であり、ポリマーエマルションと称される白濁〜微白濁の液体である。アルカリ剤の添加により増粘し、且つ透明に変化する。本発明に用いられる成分(F)のアルカリ可溶性乳化重合体は、次の2種あるいは3種の共重合体をポリマー分とするポリマーエマルションである。
(I)アクリル酸及び/ 又はメタクリル酸
(I I)アクリル酸アルキルエステル及び/ 又はメタクリル酸アルキルエステルから選ばれる1種又は2種以上
(I I I)ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとアクリル酸のエステル、又はポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとメタクリル酸のエステル
上記の3 種単量体を選択し、共重合して得られる共重合体は、ICID( International Cosmetic Ingredient Dictionary)収載の、アクリレート/セテス−20メタクリレート共重合体(ACRYLATES/CETETH−20 METHACRYLATE COPOLYMER)、アクリレート/ステアレス−50アクリレート共重合体(ACRYLATES/STEARETH−50 ACRYLATE COPOLYMER)、アクリレート/ステアレス−20メタクリレート共重合体(ACRYLATES/STEARETH−20 METHACRYLATE COPOLYMER)、アクリレート/ベヘネス−25メタクリレート共重合体(ACRYLATES/BEHENETH−25 METHACRYLATE COPOLYMER)等が例示され、ポリマーエマルションの形態では、アキュリン22、アキュリン28(いずれもローム&ハース社製)等の市販品が、具体的に例示され、本発明品に好適に使用できる。これらは必要に応じて1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0030】
本発明に用いられる成分(F)アルカリ可溶性乳化重合体の固形分量は、特に限定されないが、良好な構造を得るには、0.01〜5%が好ましく、さらに0.05〜3%がより好ましい。
【0031】
本発明において、マッサージに適する粘度とは、おおむね5,000〜100万mPa・sである。粘度の測定方法としては、例えば、ブルックフィールド型粘度計を用いて、試料の粘度に応じて、1号〜4号ローターを適宜選択し、20℃ の粘度を測定する。ブルックフィールド型粘度計の一例としては、「単一円筒型回転粘度計ビスメトロン」(芝浦システム社製)が挙げられる。
【0032】
本発明の高含油水性化粧料には、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品に一般的に使用される界面活性剤、水溶性高分子、粉体、酸化防止剤、香料、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、保湿剤、清涼剤、美容成分等を含有することができる。
【0033】
成分(C)以外の界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性等、活性剤の種類を問わず含有することが出来る。そのなかでもアニオン性界面活性剤は、洗い流し使用をした際のぬるつきが少なく、構造も良好である。
【0034】
アニオン性界面活性剤は、通常化粧料に用いられるものであれば、特には限定されず、具体的には、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、ヒドロキシ脂肪酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩等が挙げられる。これらは必要に応じて1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0035】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム)、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0036】
成分(C)以外のノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、N−アルキルジメチルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
両性界面活性剤としては、例えば、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
水溶性高分子としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムチン、デルマタン硫酸、ヘパリン及びケラタン硫酸から選ばれるムコ多糖類及びその塩、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、アルゲコロイド、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリエチレンイミン、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト等の無機系水溶性高分子等が例示される。
【0039】
粉体としては、通常の化粧料に使用されるものであれば、その形状(球状、針状、板状、等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができる。
【0040】
防腐剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、イソプロピルメチルフェノール、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が例示される。
pH調整剤としては、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等、清涼剤としては、L−メントール、カンフル等が挙げられる。
【0041】
本発明の高含油水性化粧料の製造方法は、通常公知の方法で製造可能であり、製造機器としてはパドルミキサー、ディスパーションのような分散機器であれば特に限定されない。また、本発明品は段落番号0031に記載したマッサージに適した粘度範囲であれば良く、クリーム状、乳液状、ジェル状として、特に限定されず実施可能である。
【実施例】
【0042】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0043】
実施例1〜19及び比較例1〜8:高含油水性化粧料
表1〜3に示す組成の高含油水性化粧料を、下記製造方法により調製し、「メイクアップ除去能」、「マッサージのしやすさ」、「後肌の保湿感」の項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定した。結果を併せて表1及び表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
(製造方法)
(1)No.1〜5、13〜15を70℃で均一に溶解する。
(2)No.6〜12、16、17を70℃で均一に溶解する。
(3)(2)に(1)を添加して、ディスパーミキサーにて均一に混合する。
(4)(3)を混合しながら室温まで冷却し、容器に充填して高含油水性化粧料を得た。
【0048】
評価方法:「メイクアップ除去能」、「マッサージのしやすさ」、「後肌の保湿感」
化粧品評価専門パネル20名に、ウォータープルーフタイプのメイクアップ化粧料を用いて各自化粧をしてもらい、その後普段通りの生活をしてもらった。6時間後に実施例1〜19及び比較例1〜8の各試料を使用し、メイクアップを落とした時の「メイクアップ除去能」、「マッサージのしやすさ」、「後肌の保湿感」各項目について、「メイクアップ除去能」は各試料をメイク汚れによくなじませ、すすぎ洗いもしくは拭き取った後のメイクアップの残り具合のなさという観点、「マッサージのしやすさ」は各試料のタレ落ちのなさ、伸びの良さ、粘性の変化のなさ、クッション性の有無という観点、「後肌の保湿感」はすすぎ洗いもしくは拭き取った後の時間経過に伴う肌のうるおい感、乾燥感及びごわつきのなさという観点から、評価基準に従って5段階評価し、各試料に評点をつけてもらった。次に、全パネルの評点の平均点を、以下の判定基準に従って判定した。

5段階評価基準:
[評 点]:[評価結果]
5点 :非常に良好
4点 :良好
3点 :普通
2点 :やや不良
1点 :不良
判定基準:
[判 定]:[評点の平均点]
◎ :4.5以上
○ :3.5以上〜4.5未満
△ :1.5以上〜3.5未満
× :1.5未満
【0049】
実施例1〜19は適度な粘性を有し、伸びが良好で、ウォータープルーフタイプのハードなメイクアップであってもきちんとクレンジングできる「メイクアップ除去能」に優れたものであった。使用中は粘度変化が少なくクッション性があり、タレ落ちることがないのでマッサージに好適であり、また伸びが良いので指すべりも良好で、「マッサージのしやすさ」に優れていた。使用後の肌は肌のうるおい感に優れ、時間が経ってもごわつかず乾燥感を感じない、「後肌の保湿感」に優れた製剤であった。
これに対し、成分(A)の含有量が60%未満である比較例1は、メイクアップ除去能が損なわれ、またマッサージ行為において粘度が低下し、マッサージのしやすさの点で満足できるものではなかった。成分(A)の含有量が85%を超える比較例2では、すすぎ洗いもしくは拭き取った後の油膜残りが多く、メイクアップ除去能として満足できるものではなかった。成分(B)の含有量が1%未満である比較例3では、構造を構築できず、タレ落ちが生じてマッサージしづらいものであり、また後肌の保湿性に欠けたものであった。成分(B)の含有量が25%を超える比較例4は構造を維持できず、適度な粘性が得られないため、安定性も不良であった。成分(C)を含有しない比較例5は、メイクアップ除去能が著しく低下した。成分(D)を含有しない比較例6では、カロテノイド類による成分(C)の安定化効果が得られず、メイクアップ除去能も低下した。成分(E)の含有量が20%を超える比較例7は、構造の構築が不良であり、軟化してしまいマッサージに適さなかった。成分(E)の含有量が0.01未満である比較例8は、構造が崩れてマッサージに適さなかった。
【0050】
実施例20 高含油水性化粧料
(成分) (%)
1.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 37
2.パルミチン酸2−エチルヘキシル 30
3.ヒドロキシステアリン酸コレステリル(注2) 0.05
4.アスタキサンチン(注6) 0.01
5.トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル 2.5
6.グリセリン 16
7.1,3−ブチレングリコール 5
8.精製水 残量
9.ステアロイルメチルタウリンナトリウム 0.05
10.ポリオキシエチレン(10)コレステリルエーテル 0.5
11.アクリル酸/アクリアルキル(C10−30))コポリマー(注10)
0.1
12.トリエタノールアミン 0.1
13.結晶セルロース 3
14.香料 0.3
(注2)サラコスHS(日清オイリオグループ株式会社製)
(注6)アスタキサンチン‐5C(オリザ油化社製)
(注10)PEMULEN TR−1(NOVEON社製)
【0051】
(製造方法)
(1)No.1〜5を70℃にて均一に溶解する。
(2)No.6〜12を70℃にて均一に溶解する。
(3)(2)に(1)を加え、乳化する。
(4)(3)を50℃まで冷却する。
(5)(4)にNo.13〜14を加え、混合する。
【0052】
実施例20の高含油水性化粧料はメイク除去能に優れ、適度な粘度を維持するため使用時に指すべりが良く、マッサージのしやすさに優れ、後肌の保湿感にも優れていた。
【0053】
実施例21 高含油水性化粧料
(成分) (%)
1.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 50
2.ジメチコン(注1) 10
3.ミネラルオイル 7
4.メドウフォーム油 0.01
5.カロチン(注7) 0.01
6.トコフェロール 0.001
7.精製水 残量
8.エタノール 0.05
9.グリセリン 8
10.ジグリセリン 2
11.ポリオキシエチレン(30)フィトステリルエーテル(注4)
0.1
12.オレイン酸ポリグリセリル‐10 0.001
13.PEG−10水添ヒマシ油 0.5
14.ステアロイルメチルタウリンNa 0.05
15.EDTA−2Na 0.01
16.(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー
(注9) 0.1
17.水酸化ナトリウム 0.01
18.1,3−ブチレングリコール 5
19.酸化チタン 0.36
20.トリラウレス‐4リン酸 0.02
(注1)KF−96−10CS(信越化学工業社製)
(注4)NIKKOL BPS−30(日本サーファクタント工業社製)
(注7)ベータ カロテン(和光純薬工業社製)
(注9)アキュリン22(ローム&ハース社製)
【0054】
(製造方法)
(1)No.18〜20を均一に三本ローラーで処理する。
(2)No.1〜6を70℃にて均一に溶解する。
(3)No.7〜17を70℃にて均一に溶解する。
(4)(3)に(2)を加え、乳化する。
(5)(4)を50℃まで冷却する。
(6)(5)に(1)を加え、混合する。
【0055】
実施例21の高含油水性化粧料はメイク除去能に優れ、適度な粘度を維持するため使用時に指すべりが良く、マッサージのしやすさに優れ、後肌の保湿感にも優れていた。