特許第6396064号(P6396064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 兵神装備株式会社の特許一覧

特許6396064多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法
<>
  • 特許6396064-多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法 図000002
  • 特許6396064-多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法 図000003
  • 特許6396064-多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法 図000004
  • 特許6396064-多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法 図000005
  • 特許6396064-多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法 図000006
  • 特許6396064-多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法 図000007
  • 特許6396064-多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法 図000008
  • 特許6396064-多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法 図000009
  • 特許6396064-多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396064
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23P 20/20 20160101AFI20180913BHJP
   A23P 30/25 20160101ALI20180913BHJP
   A21C 11/16 20060101ALI20180913BHJP
   F04C 2/107 20060101ALI20180913BHJP
   A23L 15/00 20160101ALI20180913BHJP
   B65B 9/213 20120101ALI20180913BHJP
【FI】
   A23P20/20
   A23P30/25
   A21C11/16 B
   F04C2/107
   A23L15/00 E
   A23L15/00 Z
   B65B9/213
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-79081(P2014-79081)
(22)【出願日】2014年4月8日
(65)【公開番号】特開2015-198602(P2015-198602A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239758
【氏名又は名称】兵神装備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】杉野 祥弘
【審査官】 黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−193175(JP,A)
【文献】 特開2013−233138(JP,A)
【文献】 特開2013−001398(JP,A)
【文献】 特開2008−295428(JP,A)
【文献】 特開2008−273630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23P 20/20
A21C 11/16
A23L 15/00
A23P 30/25
B65B 9/213
F04C 2/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外被内に粘性を有する一の材料を粘性を有する他の材料によって包んだ多層物を収容した多層製品の製造装置であって、
粘性を有する一の材料を粘性を有する他の材料によって包んだ多層物を前記外被内に吐出可能な吐出ノズルを備えた吐出機構と、
前記外被を封止するシール機構と
前記多層物において内外に隣接する任意の二つの層をA層及びB層と仮定した場合に、前記A層を構成するA層材料及び前記B層を構成するB層材料の供給制御を行う制御手段とを有し、
内部に前記多層物を収容した前記外被を前記シール機構によって封止することにより、前記多層物を前記外被によって包装した多層製品を製造可能であり、
記吐出ノズルが、
前記A層材料を吐出するための一の吐出領域を、前記B層材料を吐出するための他の吐出領域によって取り囲んだノズル構造を有するものであり、
前記吐出機構が、
前記A層材料を供給可能なA層材料供給装置を備えたA層材料供給部と、
前記B層材料を供給可能なB層材料供給装置を備えたB層材料供給部と、
前記A層材料供給部及び前記B層材料供給部から供給された前記A層材料及び前記B層材料を吐出する吐出部とを有し、
前記A層材料供給装置及び前記B層材料供給装置が、動力を受けて偏心回転する雄ねじ型のロータと、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを有する一軸偏心ねじポンプ機構を備えたものであり、
前記多層製品が、前記多層物が内部に吐出された状態の前記外被を所定位置において封止することにより製造されるものであり、
前記制御手段が、
前記外被内において前記多層物が前記所定位置に到達する以前のタイミングで前記A層材料及び前記B層材料の供給を終了させる供給制御を実施するものであり、
前記A層材料及び前記B層材料の供給終了時に、前記A層材料供給装置及び前記B層材料供給装置をなす一軸偏心ねじポンプ機構のロータを、供給時とは逆方向に回転させることを特徴とする多層製品製造装置。
【請求項2】
外被を成型する成形機構と、
前記成形機構により成形された外被の中に粘性を有する一の材料を粘性を有する他の材料によって包んだ多層物を吐出可能な吐出ノズルを備えた吐出機構と
前記多層物において内外に隣接する任意の二つの層をA層及びB層と仮定した場合に、前記A層を構成するA層材料及び前記B層を構成するB層材料の供給制御を行う制御手段とを有し、
前記成形機構により成形された外被を封止することによって前記吐出機構により吐出された前記多層物を前記外被によって包装した多層製品を製造可能であり、
記吐出ノズルが、
前記A層材料を吐出するための一の吐出領域を、前記B層材料を吐出するための他の吐出領域によって取り囲んだノズル構造を有するものであ
前記吐出機構が、
前記A層材料を供給可能なA層材料供給装置を備えたA層材料供給部と、
前記B層材料を供給可能なB層材料供給装置を備えたB層材料供給部と、
前記A層材料供給部及び前記B層材料供給部から供給された前記A層材料及び前記B層材料を吐出する吐出部とを有し、
前記A層材料供給装置及び前記B層材料供給装置が、動力を受けて偏心回転する雄ねじ型のロータと、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを有する一軸偏心ねじポンプ機構を備えたものであり、
前記多層製品が、前記多層物が内部に吐出された状態の前記外被を所定位置において封止することにより製造されるものであり、
前記制御手段が、
前記外被内において前記多層物が前記所定位置に到達する以前のタイミングで前記A層材料及び前記B層材料の供給を終了させる供給制御を実施するものであり、
前記A層材料及び前記B層材料の供給終了時に、前記A層材料供給装置及び前記B層材料供給装置をなす一軸偏心ねじポンプ機構のロータを、供給時とは逆方向に回転させることを特徴とする多層製品製造装置。
【請求項3】
外被を成型する成形機構を有し、
前記成形機構が、フィルムを外被として用いて成形するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層製品製造装置。
【請求項4】
前記B層材料として、前記A層材料の粘性と同等、あるいは前記A層材料の粘性よりも低粘性の材料を供給し、多層製品を製造可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層製品製造装置。
【請求項5】
記制御手段が、前記B層材料供給装置による前記B層材料の供給開始後、所定時間だけ経過したタイミングにおいて前記A層材料供給装置による前記A層材料の供給を開始させ、前記B層材料供給装置による前記B層材料の供給終了よりも所定時間だけ前のタイミングにおいて前記A層材料供給装置による前記A層材料の供給を終了させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層製品製造装置。
【請求項6】
前記多層物を前記外被によって包装したものに対し、加熱処理及び冷却処理のいずれか一方又は双方を実施可能な熱処理装置を備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の多層製品製造装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の多層製品の製造装置により製造することを特徴とする多層製品の製造方法。
【請求項8】
前記吐出機構による吐出動作が、
前記吐出ノズルにおいて前記B層材料の吐出を開始させるB層材料吐出開始工程と、
前記B層材料吐出開始工程の後、所定時間経過後に、前記吐出ノズルにおいて前記A層材料の吐出を開始させるA層材料吐出開始工程と、
前記A層材料吐出開始工程の後、前記A層材料の吐出を停止させるA層材料吐出停止工程と、
前記A層材料吐出停止工程の後、前記B層材料の吐出を停止させるB層材料吐出停止工程とを含む工程を経て実施されるものであることを特徴とする請求項に記載の多層製品の製造方法。
【請求項9】
前記A層材料を供給可能なA層材料供給装置、及び前記B層材料を供給可能なB層材料供給装置を、それぞれ動力を受けて偏心回転する雄ねじ型のロータと、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを有する一軸偏心ねじポンプ機構を備えたものとし、
前記A層材料吐出停止工程においてA層材料の吐出を停止する際に、前記A層材料供給装置のロータを前記A層材料の吐出時とは逆方向に作動させ、
前記B層材料吐出停止工程においてB層材料の吐出を停止する際に、前記B層材料供給装置のロータを前記B層材料の吐出時とは逆方向に作動させることを特徴とする請求項に記載の多層製品の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の多層製品製造装置による多層製品の製造方法であって、
前記外被を封止するシール機構を備える前記多層製品製造装置において、
前記吐出機構による吐出動作が、
前記吐出ノズルにおいて前記B層材料の吐出を開始させるB層材料吐出開始工程と、
前記B層材料吐出開始工程の後、所定時間経過後に、前記吐出ノズルにおいて前記A層材料の吐出を開始させるA層材料吐出開始工程と、
前記A層材料吐出開始工程の後、前記A層材料の吐出を停止させるA層材料吐出停止工程と、
前記A層材料吐出停止工程の後、前記B層材料の吐出を停止させるB層材料吐出停止工程とを含む工程を経て実施され、
前記A層材料吐出停止工程においてA層材料の吐出を停止する際に、前記A層材料供給装置のロータを前記A層材料の吐出時とは逆方向に作動させ、
前記B層材料吐出停止工程においてB層材料の吐出を停止する際に、前記B層材料供給装置のロータを前記B層材料の吐出時とは逆方向に作動させるものであり、
前記多層物の吐出が停止している状況において、前記外被を形成するフィルムを下流側に送る動作が行われ、内部に前記多層物を収容した前記外被が前記シール機構によって封止されるものであることを特徴とする多層製品の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の多層製品の製造装置により製造されたものであることを特徴とする多層製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性を有する一の材料を粘性を有する他の材料によって包んだ多層物をフィルムで包装した多層製品を製造するための製造装置、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、餡等の材料を別の材料からなる外被によって包んだ饅頭や菓子等の多層食品を製造するための装置として、下記特許文献1〜4に開示されているような食品用の製造装置、あるいは製造方法が提供されている。下記特許文献1に開示されている包餡製品製造装置は、内包材供給筒と同軸状に設定される外被材供給筒とを有し、外被材供給筒を上方に向けて動かしつつ、外被材を外被材供給筒から吐出させると共に、外被材が一定量供給された時点から外被材の供給を終了する前までの間に、外被材供給筒における外被材の吐出を継続しつつ内包材を内包材供給筒から吐出させることにより内包材を外被材によって包んだ多層材料を製造することができるものである。
【0003】
また、下記特許文献2に開示されている包あん食品の製造方法は、特許文献1の包餡製品製造装置によるのと同様に、二重ノズルと搬送部材の間隔を広げつつ、二重ノズルをなす外側ノズルから外被材の押し出しを開始し、その後一定時間経過した時点から、内側ノズルから内包材の押し出しを開始することにより包あん食品を製造するものである。
【0004】
ここで、下記特許文献1や特許文献2に係る従来技術においては、外層材料として粘性を有し内層材料(内包材)よりも軟らかい材料を用いて多層材料を製造することができない。すなわち、従来技術の包餡製品製造装置等においては、外層材料や内層材料として用いることができる材料が限定的であり、製造可能な多層材料のバリエーションが制限されるという問題がある。そこで、かかる問題を解消すべく、本発明者らは、下記特許文献3に開示されている多層製品製造装置等を提供した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−115113号公報
【特許文献2】特開平6−98684号公報
【特許文献3】特許5185455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献3に係る多層製品製造装置により製造される多層製品は、従来技術の製造方法や製造装置では製造し得ない、付加価値の高いものであるが、本発明者らはさらなる付加価値の向上を目指して種々の検討を行った。付加価値を向上させるための方策の一例として、例えば、多層製品の取り扱いや保存を容易にすべく方策を講じることが考えられる。また、粘性を有し柔らかい材料を用いて多層製品を製造する場合には、可搬性をさらに向上させることでさらなる付加価値の向上が見込める。また、多層製品が食品等の人が摂取するものや、人体に使用するものである場合には、衛生的に扱えるものとすることで、付加価値を向上させうる。さらに、手軽に加熱や冷却等の処理を行える形態で多層製品を提供できれば、多層製品の付加価値の向上や、用途の多様化を図ることが可能となる。
【0007】
上述した課題を解決すべく、本発明は、多層製品の付加価値をより一層向上させることが可能な多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の多層製品製造装置は、外被内に粘性を有する一の材料を粘性を有する他の材料によって包んだ多層物を収容した多層製品の製造装置であって、粘性を有する一の材料を粘性を有する他の材料によって包んだ多層物を前記外被内に吐出可能な吐出ノズルを備えた吐出機構と、前記外被を封止するシール機構とを有し、内部に前記多層物を収容した前記外被を前記シール機構によって封止することにより、前記多層物を前記外被によって包装した多層製品を製造可能であり、前記多層物において内外に隣接する任意の二つの層をA層及びB層と仮定した場合に、前記吐出ノズルが、前記A層を構成するA層材料を吐出するための一の吐出領域を、前記B層を構成するB層材料を吐出するための他の吐出領域によって取り囲んだノズル構造を有するものであることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の多層製品製造装置によれば、別途用意された外被によって多層製品を包み、封止することにより多層製品を製造できる。これにより、取り扱いや保存が容易で衛生的に取り扱い可能な多層製品を提供することが可能となる。また、柔らかい材料を用いて多層製品を製造する場合であっても、形を崩すことなく容易に搬送可能な可搬性に優れた多層製品を製造することが可能となる。さらに、本発明の多層製品製造装置により製造される多層製品は、外被によって包まれているため、手軽に加熱や冷却等の処理を行える。このように、本発明によれば、多層製品の付加価値の向上や、用途の多様化を図ることが可能となる。
【0010】
なお、本願に記載の各発明は、中核をなす部分(中核層)の外周を単一の外層で包んだ二重構造の「多層物」を製造するためのものに留まらず、さらに多重構造のものを製造するためのものも含む概念である。例えば中核側から外側に向けて中核層、中間層、及び外層からなる三重構造の多層製品を製造するものとする場合には、図7に示すように、中核層P4及び中間層P5をそれぞれ上述したA層及びB層と捉えて構成される第一のノズル構造と、中間層P5及び外層P6をそれぞれ上述したA層及びB層と捉えて構成される第二のノズル構造とを備えたものとすることが可能である。このようにノズル構造を多重に形成したものについても、本願に記載の各発明、及び以下の説明における概念に含まれるものである。
【0011】
また、同様の課題を解決すべく提供される本発明の多層製品製造装置は、外被を成型する成形機構と、前記成形機構により成形された外被の中に粘性を有する一の材料を粘性を有する他の材料によって包んだ多層物を吐出可能な吐出ノズルを備えた吐出機構とを有し、前記成形機構により成形された外被を封止することによって前記吐出機構により吐出された前記多層物を前記外被によって包装した多層製品を製造可能であり、前記多層物において内外に隣接する任意の二つの層をA層及びB層と仮定した場合に、前記吐出ノズルが、前記A層を構成するA層材料を吐出するための一の吐出領域を、前記B層を構成するB層材料を吐出するための他の吐出領域によって取り囲んだノズル構造を有するものであることを特徴としている。
【0012】
本発明の多層製品製造装置によれば、成形機構により外被を形成しつつ、形成された外被によって多層製品を包み、封止することにより多層製品を製造できる。これにより、外被の形成から多層製品の製造までの一連の製造工程をスムーズに進めつつ、多層製品を製造することができる。
【0013】
本発明の多層製品製造装置で製造される多層製品は、外被によって多層物を包んだものであるため、取り扱いや保存が容易で衛生的に取り扱い可能なものであり、付加価値が高い。また、本発明によれば、柔らかい材料を用いて多層製品を製造する場合であっても、形を崩すことなく容易に搬送可能な可搬性に優れた多層製品を製造することが可能となる。さらに、本発明の多層製品製造装置により製造される多層製品は、外被によって包まれているため、手軽に加熱や冷却等の処理を行える。このように、本発明によれば、多層製品の付加価値の向上や、用途の多様化を図ることが可能となる。
【0014】
上述した本発明の多層製品製造装置においては、前記成形機構が、フィルムを外被として用いて成形するものであっても良い。
【0015】
本発明の多層製品製造装置によれば、フィルムによって形成された外被により多層物を包装した多層製品を製造可能であり、より一層多層製品の付加価値の向上や、用途の多様化を図ることが可能となる。
【0016】
上述した本発明の多層製品製造装置は、前記B層を構成する材料として、前記A層を構成する材料の粘性と同等、あるいは前記A層材料の粘性よりも低粘性の材料を供給し、多層製品を製造可能であることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、従来技術の包餡製品製造装置等においては製造しえなかった、内層側にあるA層材料をこれよりも低粘性のB層材料によって包んでなる多層製品を製造することが可能となる。
【0018】
上述した本発明の多層製品製造装置は、前記吐出機構が、前記A層材料を供給可能なA層材料供給装置を備えたA層材料供給部と、前記B層材料を供給可能なB層材料供給装置を備えたB層材料供給部と、前記A層材料供給部及び前記B層材料供給部から供給された前記A層材料及び前記B層材料を吐出する吐出部とを有し、前記A層材料及び前記B層材料の供給制御を行う制御手段とを有し、前記制御手段が、前記B層材料供給装置によるB層材料の供給開始後、所定時間だけ経過したタイミングにおいて前記A層材料供給装置による前記A層材料の供給を開始させ、前記B層材料供給装置による前記B層材料の供給終了よりも所定時間だけ前のタイミングにおいて前記A層材料供給装置による前記A層材料の供給を終了させるものとすることができる。
【0019】
本発明の多層製品製造装置においては、A層材料供給装置及びB層材料供給装置による供給開始及び供給終了のタイミングを調整することにより、多層食品の製造品質を高精度かつ安定したものとすることが可能となる。
【0020】
上述した本発明の多層製品製造装置は、前記A層材料及び前記B層材料の供給制御を行う制御手段を有し、前記多層製品が、前記多層物が内部に吐出された状態の前記外被を所定位置において封止することにより製造されるものであり、前記制御手段が、前記外被内において前記多層物が前記所定位置に到達する以前のタイミングで前記A層材料及び前記B層材料の供給を終了させる供給制御を実施するものであることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、多層製品を包む外被においてシールを施すべきところに多層製品が付着してしまう可能性を低減し、封止不良の発生を抑制することができる。
【0022】
上述した本発明の多層製品製造装置は、前記吐出機構が、前記A層材料を供給可能なA層材料供給装置を備えたA層材料供給部と、前記B層材料を供給可能なB層材料供給装置を備えたB層材料供給部と、前記A層材料供給部及び前記B層材料供給部から供給された前記A層材料及び前記B層材料を吐出する吐出部とを有し、前記A層材料供給装置及び前記B層材料供給装置が、動力を受けて偏心回転する雄ねじ型のロータと、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを有する一軸偏心ねじポンプ機構を備えたものであることが望ましい。
【0023】
本発明の多層製品製造装置においては、A層材料供給装置及びB層材料供給装置が、一軸偏心ねじポンプ機構を備えた構成とされている。そのため、A層材料及びB層材料の供給状態を精度よく制御し、A層材料及びB層材料を吐出ノズルから適切な量及びタイミングで吐出させうる。従って、本発明の多層製品製造装置によれば、多層製品の製造品質をより一層高品質なものとすることができる。
【0024】
上述した本発明の多層製品製造装置は、前記A層材料及び前記B層材料の供給制御を行う制御手段を有し、A層材料及びB層材料の供給終了時に、前記A層材料供給装置及び前記B層材料供給装置をなす一軸偏心ねじポンプ機構のロータを、供給時とは逆方向に回転させるものであることがより一層好ましい。
【0025】
本発明の多層製品製造装置においては、A層材料供給装置及びB層材料供給装置が、一軸偏心ねじポンプ機構を備えたものであるため、ロータの回転方向を切り替えることにより、A層材料及びB層材料の流れ方向を切り替えることができる。本発明では、A層材料及びB層材料の供給停止時に、ロータを供給時とは逆方向に回転させることとしているため、A層材料及びB層材料の吐出を確実に停止させうる。従って、本発明によれば、A層材料及びB層材料に相当する粘性を有する材料が予期せず過剰に吐出されてしまうことを防止し、多層製品の製造品質を高精度かつ安定したものとすることが可能となる。
【0026】
上述した本発明の多層製品製造装置は、前記多層物を前記外被によって包装したものに対し、加熱処理及び冷却処理のいずれか一方又は双方を実施可能な熱処理装置を備えたものとすることも可能である。
【0027】
かかる構成によれば、外被によって包まれた多層物に加熱処理や冷却処理等の熱処理を施し、より一層付加価値の高い多層製品を提供することができる。
【0028】
本発明の多層製品の製造方法は、上述した本発明の多層製品の製造装置により製造することを特徴とするものである。
【0029】
本発明によれば、多層物をさらに外被で包装した多層製品を製造することができる。そのため、本発明によれば、付加価値が高く、多様な用途において使用可能な多層製品を製造することができる。
【0030】
本発明の多層製品の製造方法は、前記吐出機構による吐出動作が、前記吐出ノズルにおいて前記B層材料の吐出を開始させるB層材料吐出開始工程と、前記B層材料吐出開始工程の後、所定時間経過後に、前記吐出ノズルにおいて前記A層材料の吐出を開始させるA層材料吐出開始工程と、前記A層材料吐出開始工程の後、前記A層材料の吐出を停止させるA層材料吐出停止工程と、前記A層材料吐出停止工程の後、前記B層材料の吐出を停止させるB層材料吐出停止工程とを含む工程を経て実施されるものである。
【0031】
本発明の多層製品の製造方法においては、B層材料吐出開始工程においてB層材料の吐出を開始した後に、A層材料吐出開始工程によりA層材料の吐出を開始させることとしている。これにより、多層物の吐出を開始する段階において、内側の層をなすべきA層材料が外側の層をなすべきB層材料の外側に出てしまうことを抑制できる。また、本発明の多層製品の製造法方法では、多層物の吐出を終了する段階において、A層材料吐出停止工程において内側の層をなすべきA層材料の吐出を終了させた後に、B層材料吐出停止工程において外側の層をなすべきB層材料の吐出を終了させることとしている。そのため、本発明の多層製品の製造方法によれば、多層物の吐出を終了する段階においても、内側の層をなすべきA層材料が外側の層をなすべきB層材料の外側に出てしまうことを抑制できる。従って、本発明の多層製品の製造方法によれば、品質の高い多層製品を製造することが可能となる。
【0032】
ここで、上述したように、A層材料及びB層材料として高粘度液体材料等の粘性を有する材料を用いて多層製品を製造する場合には、A層材料やB層材料の供給を停止したとしても表面張力等の影響により吐出ノズルの端部近傍にA層材料やB層材料が残存してしまう可能性がある。A層材料及びB層材料の変質等を防止するためには、吐出停止中の僅かな期間であっても吐出ノズルの端部近傍に付着したまま外気にさらされる可能性を低減することが好ましく、A層材料及びB層材料が食品等である場合には特に外気にさらされることを防止することが望ましい。また、吐出ノズルの端部近傍にA層材料あるいはB層材料が付着した状態で、次のA層材料あるいはB層材料の吐出動作を行うと、吐出ノズルの端部近傍に付着していた分だけA層材料あるいはB層材料の吐出量が増加してしまい、多層製品の製造品質にバラツキが生じてしまいかねない。
【0033】
さらに、本発明の多層製品の製造方法において用いる吐出ノズルがA層材料吐出筒及びB層材料吐出筒を略同心状に配置した構造とされていることから、A層材料吐出筒及びB層材料吐出筒の端部に付着しているA層材料及びB層材料が吐出停止中に混ざり合う等してしまう可能性がある。A層材料及びB層材料が混合してしまうと、外観が悪くなるだけでなく、特性が変質してしまう等の問題が生じかねない。具体的には、A層材料及びB層材料が食品である場合には、混合に伴う外観上の問題に加え、食品衛生上の問題、あるいは味や香り等が変化してしまうといった問題等の様々な問題が生じ、多層製品としての商品価値が著しく損なわれてしまう可能性がある。これらの問題点を解消すべく、A層材料及びB層材料の吐出を停止する際には、A層材料及びB層材料を内側に引き戻すことが望ましい。
【0034】
かかる問題を解消すべく提供される本発明の多層製品の製造方法は、前記B層材料吐出筒に接続されたB層材料供給装置、及び前記A層材料吐出筒に接続されたA層材料供給装置を、それぞれ動力を受けて偏心回転する雄ねじ型のロータと、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを有する一軸偏心ねじポンプ機構を備えたものとし、前記A層材料吐出停止工程においてA層材料の吐出を停止する際に、前記A層材料供給装置のロータを前記A層材料の吐出時とは逆方向に作動させ、前記B層材料吐出停止工程においてB層材料の吐出を停止する際に、前記B層材料供給装置のロータを前記B層材料の吐出時とは逆方向に作動させるものである。
【0035】
かかる構成によれば、A層材料及びB層材料の供給停止時に、表面張力等の影響によって吐出ノズルの端部近傍にA層材料及びB層材料が残存してしまうことを抑制することができる。また、吐出ノズルの端部近傍にA層材料及びB層材料が残存することにより発生が想定される種々の問題を未然に防止できる。
【0036】
また、本発明は、上述した本発明の多層製品製造装置により製造されたものであることを特徴とする多層製品である。
【0037】
本発明の多層製品は、上述した本発明の多層製品製造装置によって製造されたものであり、多層物をさらに外被で包装したものである。そのため、本発明の多層製品は、多層物単体のものよりも付加価値が高く、多様な用途において使用可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、多層製品の付加価値をより一層向上させることが可能な多層製品製造装置、及び多層製品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る多層製品製造装置の正面図、(b)は側面図である。
図2】(a)は内層材料圧送装置の内部構造を示す断面図、(b)は外層材料圧送装置が備えている一軸偏心ねじポンプ機構を示す断面図である。
図3図1(a)に示した多層製品製造装置について、成形機構部、フィルム送り機構、及びシール機構部が設けられた部分を拡大した拡大図である。
図4】(a)は図1に示した多層製品製造装置が備える吐出部を示す正面図であり、(b)は吐出ノズルを開口側から見た状態を示す底面図、(c)は多層製品の断面構造を示す斜視図である。
図5図1に示す多層製品製造装置の動作を示すフローチャートである。
図6図1に示す多層製品製造装置の動作を示すタイミングチャートである。
図7】(a)は変形例に係る多層製品の断面構造を示す斜視図であり、(b)は吐出ノズルの変形例を示す底面図である。
図8】変形例に係る多層製品の製造方法を示す模式図である。
図9】変形例に係る多層製品の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態に係る多層製品製造装置10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。多層製品製造装置10は、図1に示すような外観形状を有するものであり、図4(c)に示すような構成の多層製品Pを製造するための装置である。多層製品Pは、中核層P1(A層)をなす材料(以下、「内層材料」とも称す)を外層P2(B層)をなす材料(以下、「外層材料」とも称す)によって包んでなるものである。多層製品製造装置10は、内層材料及び外層材料として、粘性を有する材料(材料)を用いて多層製品Pを製造することができる。
【0041】
図1に示すように、多層製品製造装置10は、吐出機構部10aと、成形機構部10bと、フィルム送り機構10cと、シール機構部10dと、制御部10eとを備えている。多層製品製造装置10は、成形機構部10bによって成形された筒状のフィルムFによって形成された外被Sによって吐出機構部10aにより吐出された多層物を包み、その両端部をシール機構部10dによってシールして包装した多層製品Pを製造可能なものである。以下、多層製品製造装置10をなす各部の構造について説明し、その後多層製品製造装置10の動作について説明する。
【0042】
≪吐出機構部10aについて≫
吐出機構部10aは、内層材料供給部20、外層材料供給部30、及び吐出部40を備えた構成とされている。内層材料供給部20は、多層製品Pをなす内層材料を吐出部40に対して供給するためのものである。内層材料供給部20は、内層材料を供給可能な内層材料供給装置22と、内層材料貯留槽24と、攪拌装置26とを具備している。
【0043】
内層材料供給装置22は、回転容積式のポンプによって構成されている。図2(a)に示すように、内層材料供給装置22は、一軸偏心ねじポンプ機構100を備えた、いわゆる一軸偏心ねじポンプである。内層材料供給装置22は、ケーシング106の内部に、ロータ102、ステータ104、及び動力伝達機構108等を収容した構成とされている。ケーシング106は、金属製で筒状の部材であり、長手方向一端側に第一開口部110が設けられている。また、ケーシング106の外周部分には、第二開口部112が設けられている。第二開口部112は、ケーシング106の長手方向中間部分に位置する中間部114においてケーシング106の内部空間に連通している。
【0044】
第一開口部110及び第二開口部112は、それぞれ一軸偏心ねじポンプ機構100の吸込口及び吐出口として機能する部分である。内層材料供給装置22は、ロータ102を正方向に回転させることにより、第一開口部110を吐出口、第二開口部112を吸込口として機能させることができる。また、ロータ102を逆方向に回転させることにより、第一開口部110を吸込口、第二開口部112を吐出口として機能させることができる。
【0045】
ステータ104は、ゴム等の弾性体、又は樹脂等によって形成された略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ104の内周壁116は、n条で単段あるいは多段の雌ねじ形状とされている。本実施形態においては、ステータ104は、2条で多段の雌ねじ形状とされている。また、ステータ104の貫通孔118は、ステータ104の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)が略長円形となるように形成されている。
【0046】
ロータ102は、金属製の軸体であり、n−1条で単段あるいは多段の雄ねじ形状とされている。本実施形態においては、ロータ102は、1条で偏心した雄ねじ形状とされている。ロータ102は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状が略真円形となるように形成されている。ロータ102は、上述したステータ104に形成された貫通孔118に挿通され、貫通孔118の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0047】
ロータ102をステータ104に対して挿通すると、ロータ102の外周壁120とステータ104の内周壁116とが両者の接線で密接した状態になり、ステータ104の内周壁116とロータ102の外周壁120との間に流体搬送路122(キャビティ)が形成される。流体搬送路122は、ステータ104やロータ102の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
【0048】
流体搬送路122は、ロータ102をステータ104の貫通孔118内において回転させると、ステータ104内を回転しながらステータ104の長手方向に進む。そのため、ロータ102を回転させると、ステータ104の一端側から流体搬送路122内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路122内に閉じこめた状態でステータ104の他端側に向けて移送し、ステータ104の他端側において吐出させることが可能である。本実施形態の一軸偏心ねじポンプ機構100は、ロータ102を正方向に回転させることにより使用され、第二開口部112から吸い込んだ流動物を供給し、第一開口部110から吐出することが可能とされている。
【0049】
動力伝達機構108は、駆動機124から上述したロータ102に対して動力を伝達するためのものである。動力伝達機構108は、動力伝達部126と偏心回転部128とを有する。動力伝達部126は、ケーシング106の長手方向の一端側に設けられている。また、偏心回転部128は、中間部114に設けられている。偏心回転部128は、動力伝達部126とロータ102とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部128は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成された連結軸148を備えている。そのため、偏心回転部128は、駆動機124を作動させることにより発生した回転動力をロータ102に伝達させ、ロータ102を偏心回転させることが可能である。
【0050】
図1(a)に示すように、上述した内層材料供給装置22は、略水平に設置されている。内層材料の吐出に用いられる第一開口部110には、後に詳述する吐出部40が配管接続されている。また、第二開口部112は、上方に設置された内層材料貯留槽24に対して接続されている。内層材料貯留槽24は、内層材料を貯蔵する漏斗状の容器(ホッパー)であり、内部に貯蔵している内層材料を下部に設けられた排出口24aから第二開口部112に向けて供給することができる。また、内層材料貯留槽24には、上方から攪拌装置26の攪拌翼が差し込まれている。そのため、攪拌装置26を作動させることにより、内層材料貯留槽24内に貯蔵されている内層材料の沈殿等を防止し、槽内全体において略均一の組成とすることができる。
【0051】
外層材料供給部30は、多層食品をなす外層材料を吐出部40に対して供給するためのものである。図1(a),(b)に示すように、外層材料供給部30は、外層材料を供給可能な外層材料供給装置32と、外層材料貯留槽34とを具備している。外層材料供給装置32は、回転容積式のポンプによって構成されている。外層材料供給装置32は、一軸偏心ねじポンプ機構200を備えたポンプ機構部35と、駆動部36と、連結部38とを有する。
【0052】
図2(b)に示すように、ポンプ機構部35は、ケーシング201の内部に、ロータ202、ステータ204を収容した構成とされている。一軸偏心ねじポンプ機構200、及びこれを構成するロータ202及びステータ204の主要構成は、上述した内層材料供給装置22の一軸偏心ねじポンプ機構100、ロータ102及びステータ104と同様である。
【0053】
すなわち、一軸偏心ねじポンプ機構200は、ロータ202をステータ204に挿通することにより形成されている。ロータ202は、n−1条(本実施形態では1条)で単段あるいは多段の雄ねじ形状を有する金属製の軸体によって構成されている。また、ステータ204は、弾性体あるいは樹脂等によって形成された筒体であり、内部がn条(本実施形態では2条)で単段あるいは多段の雌ねじ形状とされている。ロータ202は、ステータ204に形成された貫通孔206に挿通され、貫通孔206の内部において自由に偏心回転可能とされている。また、ロータ202をステータ204に対して挿通することにより、螺旋状の流体搬送路208(キャビティ)が形成される。一軸偏心ねじポンプ機構200は、ロータ202をステータ204の内部において回転させることにより、流体搬送路208をステータ204の長手方向に進行させることができる。
【0054】
また、ロータ202は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成された接続部210を介してロッド212に接続されている。また、図1に示すように、ロッド212は、駆動機36の駆動軸に対して接続されている。そのため、駆動機214を作動させることにより、ロータ202を偏心回転させることが可能である。また、ロッド212の中間部分には、攪拌翼216が取り付けられている。
【0055】
上述したポンプ機構部35は、外層材料貯留槽34の直下に配置されている。外層材料貯留槽34は、外層材料を貯蔵する漏斗状の容器(ホッパー)であり、下部に設けられた排出口34aに対してポンプ機構部35が接続されている。これにより、外層材料貯留槽34に貯蔵されている外層材料を逐次、ポンプ機構部35に向けて供給可能とされている。ロッド212が、外層材料貯留槽34を上下方向に貫通するように設置されており、中間部分に取り付けられた攪拌翼216が外層材料貯留槽34の槽内に位置している。そのため、ロータ202を回転させるべく駆動機214を作動させると、攪拌翼216が外層材料貯留槽34内で回転し、貯蔵されている外層材料の沈殿等を防止することができる。
【0056】
上述した内層材料供給部20及び外層材料供給部30は、吐出部40に対して接続されている。吐出部40は、内層材料供給部20及び外層材料供給部30から供給されてきた内層材料及び外層材料を吐出することにより多層食品を成形するためのものである。図1図3に示すように、吐出部40には、図4に示すような吐出ノズル42が設けられている。なお、本実施形態においては、内層材料供給装置22及び外層材料供給装置32に対して隣接する位置に吐出部40を配置しているが、内層材料供給装置22及び外層材料供給装置32と、吐出部40とを離れた位置に配置し、両者の間をチューブや配管等によって接続した構成としても良い。
【0057】
図4(b)に示すように、吐出ノズル42は、内層材料を吐出するための内層材料吐出筒52を、外層材料を吐出するための外層材料吐出筒54の内側に略同心になるように配した二重管構造とされている。すなわち、内層材料吐出筒52の内側に形成される第一吐出領域42aを、内層材料吐出筒52の外周面と外層材料吐出筒54の内周面との間に形成される第二吐出領域42bによって取り囲んだノズル構造44を有する。そのため、内層材料吐出筒52及び外層材料吐出筒54から内層材料及び外層材料を吐出させることにより、内層材料の外周を外層材料によって包んだ多層物を形成することができる。
【0058】
≪成形機構部10bについて≫
成形機構部10bは、図1図3に示すような、帯状のフィルムFを筒状に成形して外被Sを形成するための動作機構を備えた部分である。具体的には、成形機構部10bは、成形部材60と、フィルムFの供給源62と、ガイドロール64a,64bと、溶着装置66とを備えている。成形部材60は、供給源62に設けられた原反62aから引き出された帯状のフィルムFが円筒状の形状になるように湾曲させるための部材である。フィルムFは、ガイドロール64a,64bによって導かれつつ成形部材60によって円筒状に成形される。
【0059】
溶着装置66は、成形部材60により湾曲形状とされたフィルムFの端部同士を溶着するための装置であり、例えば一対の高周波電極等によって構成することができる。成形部材60によってフィルムFの端部同士を溶着することにより、帯状であったフィルムFが中空であって円筒状の形状とされる。これにより、吐出機構部10aの吐出ノズル42から吐出された多層物を収容することが可能となる。
【0060】
≪フィルム送り機構10cについて≫
フィルム送り機構10cは、上述した成形機構部10bからシール機構部10dに向けてフィルムF(外被S)を送るためのものである。フィルム送り機構10cは適宜のものとすることが可能であるが、例えばフィルム送りローラ70,70を備え、ローラ70,70の間に配されたフィルムFを回転力により送るものとすることができる。
【0061】
≪シール機構部10dについて≫
シール機構部10dは、フィルムFをシールするために設けられた機構である。具体的には、図1及び図3に示すように、シール機構部10dは、ヒータを内蔵した一対のシールローラ80,80(図1(b)参照)を備えている。図3に矢印を用いて示すように、シールローラ80,80は、互いに近接離反する方向に移動可能とされている。シールローラ80,80は、両者の間に配されたフィルムFを外側から挟み込んで溶着することにより、シール84を形成してフィルムFを封止することができる。
【0062】
≪制御部10eについて≫
制御部10eは、上述した吐出機構部10aや、成形機構部10b、フィルム送り機構10c、及びシール機構部10dの動作制御を実行するものである。すなわち、制御部10eは、吐出機構部10aを構成する内層材料供給装置22及び外層材料供給装置32の動作制御を実行し、内層材料及び外層材料の供給制御を行う。また、吐出機構部10aの制御の下、多層物の吐出状況に応じて成形機構部10bやフィルム送り機構10c、シール機構部10dの動作制御を行うことにより多層物をフィルムFによって形成された外被Sで包装し、多層製品Pとする。
【0063】
≪多層製品Pの製造方法について≫
以下、制御部10eによる動作制御の下で実行される多層製品Pの製造方法について、図5に示すフローチャート及び図6に示すタイミングチャートを参照しつつ詳細に説明する。
【0064】
(ステップ1)
ステップ1においては、多層製品製造装置10の運転信号がオン状態になるか否かが確認される。運転信号がオン状態になったことが確認されると、制御フローがステップ2に進められる。
【0065】
(ステップ2)
ステップ2においては、制御部10eの制御の下、フィルムFにより外被Sを形成する動作が開始される。その後、制御フローはステップ3に進められる。
【0066】
(ステップ3)
ステップ3においては、外層材料供給装置32による外層材料の供給が開始される(図6参照)。これにより、吐出部40に設けられた吐出ノズル42において、内層材料吐出筒52と外層材料吐出筒54との間に形成された隙間から下方に向けて吐出される(外層材料吐出開始工程)。
【0067】
(ステップ4)
ステップ4においては、ステップ3において外層材料の吐出が開始された後、所定時間t3(図6参照)が経過したか否かの確認がなされる。ここで、所定時間t3は、外層材料及び内層材料の粘性、吐出速度、吐出ノズル42の形状、多層材料をなす外層材料の厚み等の各種条件を加味して設定され、条件によっては所定時間t3を設けず外層材料及び内層材料の吐出を同時に開始する(t3=0)こととしても良い。ステップ4において所定時間t3の経過が確認されると、制御フローがステップ5(内層材料吐出開始工程)に進められる。
【0068】
(ステップ5)
ステップ5においては、上述したステップ3において開始された外層材料の吐出を継続しつつ、吐出ノズル42の内層材料吐出筒52から内層材料を下方に向けて吐出する動作が開始される。すなわち、ステップ3における外層材料の吐出開始から所定時間t3だけ遅れたタイミングから、外層材料の吐出に加え、内層材料の吐出も開始される。
【0069】
(ステップ6)
ステップ6においては、ステップ4において内層材料の吐出を開始した後、所定時間t4(図6参照)が経過したか否かの確認がなされる。所定時間t4は、製造する多層物のサイズ(長さ)に応じて適宜調整される。ステップ6において所定時間t4の経過が確認されると、制御フローがステップ7に進められる。
【0070】
(ステップ7)
ステップ7においては、内層材料供給装置22のロータ102の回転方向が、所定時間t5に亘って内層材料の吐出時とは逆方向に切り替えられる。すなわち、図6に示すように、ステップ6において時間t4の経過が確認されるまでとは逆転した制御信号をロータ102の制御用信号として出力する。これにより、内層材料供給装置22は、ステップ6までの期間において吐出ノズル42に向けて供給していた内層材料を引き戻す動作を行う。内層材料の引き戻し動作の開始後、所定時間t5が経過すると、制御フローがステップ8に進められる。
【0071】
(ステップ8)
ステップ8においては、内層材料を引き戻す方向に作動していたロータ102の回転が停止される(ステップ7〜8:内層材料吐出停止工程)。その後、制御フローがステップ9に進められる。
【0072】
(ステップ9)
ステップ9においては、外層材料の吐出開始後、所定時間t1(図6参照)が経過したか否かの確認がなされる。ここで、内層材料の吐出は上述したステップ8までの間に完了しているが、外層材料の吐出は未だ完了しておらず、継続している。その後、外層材料の吐出を開始してから所定時間t1が経過したことが確認されると、制御フローがステップ10に進められる。
【0073】
(ステップ10)
ステップ10においては、外層材料供給装置32に設けられたロータ202の回転方向が、所定時間t2に亘って外層材料の吐出時とは逆方向に切り替えられる。すなわち、外層材料供給装置32は、先のステップまでの期間において吐出ノズル42に向けて供給していた外層材料を引き戻す動作を行う。図6に示すように、外層材料の引き戻しに要する所定時間t2は、所定時間t1に対して十分短い。外層材料の引き戻し動作の開始後、所定時間t2が経過すると、制御フローがステップ11に進められる。
【0074】
(ステップ11)
ステップ11においては、外層材料供給装置32のロータ202を回転停止状態とすることにより、外層材料の供給が停止される(ステップ10〜11:外層材料吐出停止工程)。これにより、ステップ3〜ステップ11に亘って実施されてきた一連の多層物の吐出が終了する。その後、制御フローがステップ12に進められる。
【0075】
(ステップ12)
ステップ12においては、フィルム送り機構10cを作動させ、シール84を形成するために必要な長さだけフィルムF(外被S)を下流側に送る処理が行われる。すなわち、シール84を形成する部分に多層物が存在すると、シール84がうまく形成されず、シール不良となる可能性がある。そこで、多層物の吐出が停止している状況においてシール84を形成するのに必要な長さ分だけフィルムFを下流側に送る動作が行われる。これにより、図5のフローチャート及び図6のタイミングチャートに示した一連の動作が完了する。
【0076】
上述したように、多層製品製造装置10によれば、成形機構部10bにより筒状に形成されたフィルムFによって形成された外被Sで多層物を包み、シール機構部10dを用いてフィルムF(外被S)をシールすることにより封止することができる。これにより、取り扱いや保存が容易であり、衛生的に取り扱い可能な多層製品Pを提供することが可能となる。また、上述したように吐出機構部10aから吐出された多層物を外被Sによって包むこととした場合、多層物が柔らかい材料を用いて製造されたものであっても、形を崩すことなく容易に搬送することができる。さらに、多層物を外被Sによって包んで提供できるため、手軽に加熱や冷却等の処理を行える。このように、本実施形態の多層製品製造装置10によれば、多層物の付加価値の向上や、用途の多様化を図ることが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態は、多層製品製造装置10は、中核をなす内層材料の外周を単一の外層材料で包んだ二重構造の多層物を製造するためのものとして例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに多重構造のものを製造するためのものとすることが可能である。例えば、中核側から外側に向けて中核層P4、中間層P5、及び外層P6からなる三重構造の多層製品Pを製造するものとする場合には、図7に示すように、上述した吐出ノズル42と同様に内層材料吐出筒52及び外層材料吐出筒54により第一吐出領域42a及び第二吐出領域42bを形成するノズル構造44(「第一ノズル構造44」とも称す)に加え、外層材料吐出筒54を取り囲む他の吐出筒(第三吐出筒56)を設けることで外層材料吐出筒54と第三吐出筒56との間に第三吐出領域42cを形成した構造とする。これにより、第一ノズル構造44に加え、外層材料吐出筒54及び第三吐出筒56によって構成される第二ノズル構造46が形成される。このようにしてノズル構造を多重に形成することにより、吐出機構部10aにおいて形成される吐出物のさらなる多層化を図ることが可能となる。
【0078】
上述したように、多層製品製造装置10によれば、外層材料として内層材料の粘性と同等、あるいは前記内層材料の粘性よりも低粘性の材料を用いることができる。そのため、多層製品製造装置10によれば、従来技術の包餡製品製造装置等においては製造しえなかった、外層材料の方が内層材料よりも低粘性の材料によって形成された多層製品Pを製造することが可能となる。
【0079】
上述したように、多層製品製造装置10においては、多層製品Pの製造過程において、吐出機構部10aにより吐出された多層物が筒状のフィルムF内においてシール84を形成すべき位置まで溜まる以前のタイミングで内層材料及び外層材料の供給を終了させる供給制御を実施することとしている。このような制御を実行することにより、フィルムFにシール84を形成するべき箇所に多層物が付着してしまう可能性を低減し、シール84がうまく形成できないといった不良の発生を抑制することができる。
【0080】
また、多層製品製造装置10においては、内層材料供給装置22及び外層材料供給装置32として、一軸偏心ねじポンプ機構100,200を備えたものを採用している。そのため、内層材料及び外層材料の供給状態を精度よく制御し、内層材料及び外層材料を多層食品を製造する上で適切な量及びタイミングで吐出させうる。従って、多層製品製造装置10によれば、多層食品の製造品質をより一層向上させることが可能となる。
【0081】
また、内層材料供給装置22及び外層材料供給装置32を構成する一軸偏心ねじポンプ機構100,200は、いずれもロータ102,202の回転方向を調整することにより、内層材料、外層材料の流れ方向を適宜切り替えることが可能である。そのため、内層材料及び外層材料として粘性の低い材料を用いたとしても、各材料の供給停止時にロータ102,202を逆回転させることにより、予期せず液だれしてしまうこと、及び液だれに伴う多層食品の品質低下を防止できる。また、内層材料供給装置22及び外層材料供給装置32をなす一軸偏心ねじポンプ機構100,200は、装置構成が極めてシンプルである。これにより、多層製品製造装置10の製造コストの抑制、及びメンテナンス特性の向上を図ることが可能となる。
【0082】
多層製品製造装置10においては、内層材料供給装置22及び外層材料供給装置32が、一軸偏心ねじポンプ機構100,200を備えたものとされているため、内層材料及び外層材料の吐出開始、及び終了を正確に制御することができる。そのため、上述したように、外層材料供給装置32による外層材料の供給開始後、所定時間t3だけ経過したタイミングにおいて内層材料供給装置22による内層材料の供給を開始させ、外層材料供給装置32による外層材料の供給開始から終了までの時間t1よりも所定時間だけ前のタイミングにおいて内層材料供給装置22による内層材料の供給を終了させることとすれば、高品質な多層食品を安定して製造することが可能となる。
【0083】
また、上述した実施形態の多層製品Pの製造方法は、図5に示す制御フローで示すように、外層材料吐出開始工程(ステップ3)、内層材料吐出開始工程(ステップ5)、内層材料吐出停止工程(ステップ7〜ステップ8)、及び外層材料吐出停止工程(ステップ10〜11)の各工程を順次行う例を示したが、これらの工程に加えて別の工程をさらに付加したものであっても良い。具体的には、外層材料吐出開始工程の後であって、内層材料吐出開始工程の前に、内層材料供給装置22のロータ102を内層材料の吐出時とは所定量だけ逆方向に作動させる外層材料吸引工程を設けることが可能である。
【0084】
上述した外層材料吸引工程を設けることにより、外層材料吐出開始工程の後、吐出ノズル42の外層材料吐出筒54から吐出され、先端部に付着している外層材料が、内層材料吐出筒52の内側に吸引される。従って、内層材料吐出開始工程の前に、内層材料吐出筒52の先端部に、幾ばくかの外層材料が充填された状態になる。このような状態において、製造工程が外層材料吸引工程から内層材料吐出開始工程に移行すると、内層材料吐出筒52の先端部に充填されている外層材料が吐出された後、内層材料が吐出されることになる。そのため、このようにして製造された多層製品Pは、内層材料吐出開始工程の開始直後に内層材料吐出筒52から吐出された外層材料によって内層材料の下部が補強されたような構造となる。これにより、内層材料の重量等の影響により、多層製品Pの底側から内層材料が漏れ出す等の製造不良を抑制し、歩留まりの向上に資することが可能となる。
【0085】
上述した多層製品製造装置10は、フィルムFによって形成された外被Sにより多層物を包んだ多層製品Pを製造可能なものであるが、多層製品Pに対して熱処理や殺菌処理等の何らかの後処理を加えることが可能なものとすることも可能である。具体的には、図1において二点鎖線で示すように、外被Sによって多層物を包んだ多層製品Pに対し、さらに加熱処理及び冷却処理のいずれか一方又は双方を実施可能な熱処理装置90を設けた構成とすることも可能である。このような構成とすれば、外被Sによって包まれた多層物に対して加熱処理や冷却処理といった熱処理等の後処理を施すことが可能となり、多層製品Pの付加価値をより一層向上させることが可能となる。具体的には、加熱処理を行うことにより、外被Sに包まれた多層物に熱を通して完成した製品とすることや、殺菌効果等の効果が期待できる。また、冷却処理を行うことにより、外被Sに包まれた多層物を冷却して製品を完成させることや、多層製品Pを冷蔵状態あるいは冷凍状態で保存するのに適した状態とする等の効果が期待できる。
【0086】
上述した多層製品製造装置10は、吐出機構部10aに吐出ノズル42を一つ設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多数の吐出ノズル42を設けた構成としても良い。この場合、内層材料供給装置22及び外層材料供給装置32によって供給されてきた内層材料及び外層材料を分配する等して、吐出ノズル42に内層材料及び外層材料を供給することにより、一度に多数の多層物を吐出させることが可能となる。また、複数設けた吐出ノズル42のそれぞれに成形機構部10bやフィルム送り機構10c、シール機構部10d等を設けることにより、多層物を外被Sによって包んで多層製品Pの完成形とする作業についても複数、同時進行で実施可能となる。このような構成とすることにより、同一品質の多層食品を量産しうる。
【0087】
上述した実施形態では、吐出ノズル42を固定状態とし、成形機構部10bによって成形されたフィルムFによって形成された外被Sをフィルム送り機構10cによって送りつつ、多層物を吐出させる方式で多層製品を製造可能なものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、吐出ノズル42を外被Sに対して相対移動させることが可能なものであれば良い。すなわち、本実施形態において示した例では、吐出ノズル42を上下動可能な構成とし、吐出ノズル42を上方に移動させつつ外被S内に多層物を吐出させることとしても良い。
【0088】
上述した実施形態では、成形機構部10bを用いてフィルムFにより多層製品の外被を形成しつつ、フィルムFによって形成されつつある外被内に吐出機構部10aから多層物を吐出させるものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、成形機構部10bを設けず、別途準備した外被内に吐出機構部10aから多層物を吐出させることとしても良い。
【0089】
具体的には、例えば図8図9に示すように、ゴム、フィルム、あるいは樹脂等で作られたものを外被として準備し、この外被の中に吐出機構部10aのノズル42から多層物を吐出し、吐出完了後に封止するようにしても良い。外被として弾性を有するものを利用する場合には、図8に示すように、多層物を外被内に吐出させることにより風船を膨らませるが如く外被が変形する。これにより、外被をなすものの変形に合わせた形状(図示例ではボール状)の多層製品を製造することが可能となる。さらに具体的には、図8に示す例においては、先ず同図(a)に示すように外被Sの中に吐出ノズル42を差し込んだ状態で外層材料を吐出させる。これにより、同図(b)のように外層材料が外被S内に吐出された状態になる。その後、所定のタイミングから所定期間に亘って吐出ノズル42から内層材料を吐出させる(同図(c)参照)。その後、外被Sから吐出ノズル42を取り外し、外被Sを封止することで、同図(d)に示すように球状の多層製品が完成する。
【0090】
また、外被が内部に多層物を導入しても変形しないものである場合には、図9に示すように、予め形成されている外被の形状にあわせた多層製品を製造することが可能となる。さらに詳細には、図9(a)に示す例においては、先ず同図(a)に矢印で示すように外被Sの中に吐出ノズル42を差し込んだ状態とする。この状態において、同図(b)に示すように外層材料を吐出させつつ、吐出ノズル42を外被Sの底側から離れる方向に移動させる。これにより、同図(b)のように先ず外層材料が外被S内に吐出された状態になる。その後、外被S内に所定量の外層材料が吐出されたタイミングから所定期間に亘って、吐出ノズル42から外層材料を吐出させつつ内層材料を吐出させる(同図(c)参照)。その後、外被Sから吐出ノズル42が出た状態になると、同図(d)のように多層物が外被S内に収容された状態になる。この状態において、外被Sを封止することで、同図(e)に示すように球状の多層製品が完成する。
【実施例1】
【0091】
≪具入り食品製造装置・製造方法としての実施例≫
上述した多層製品製造装置10は、例えば具入りの蒲鉾やソーセージ、パン、饅頭等の具入りの多層食品を製造するために使用することができる。さらに具体的には、具入りの蒲鉾やソーセージを製造する場合には、外層材料として蒲鉾やソーセージの原料となるすり身を供給し、内層材料として具となる材料を供給する。また、パンや饅頭を製造する場合には、外層材料として生地材料を供給すると共に、内層材料として具材を供給する。このようにすることで、具入りの多層食品を製造することができる。また、上述したように熱処理装置90を設けておけば、具をすり身や生地材料で包んだ状態の多層物をフィルムFで包んだまま加熱し、食品を完成させることができる。また、具入りの多層物をフィルムFで包んだ状態で冷蔵あるいは冷凍することにより保存に適した状態とすることができる。また、多層製品製造装置10により製造された食品は、食する直前にフィルムFを被せたまま、あるいはフィルムFを取り除いて調理できるため、利便性に優れている。
【0092】
また、フィルムFをオブラート等のように食しても問題のない素材で形成されたものとすることも可能である。かかる構成とすることにより、フィルムFを外すことなくそのまま食べられる多層食品を提供できる。
【実施例2】
【0093】
≪工業製品の製造装置・製造方法としての実施例≫
上述した多層製品製造装置10は、食品以外の工業製品の製造にも用いることができる。具体的には、外層素材として内層素材の粘性と同等以下の素材を供給し、多層製品Pを製造することができる特性を活かし、液状あるいはゲル状の消臭剤あるいは芳香剤を内層素材とし、これを外被をなす外層素材によって包んで球状あるいはビーズ状とした消臭製品あるいは芳香製品や、石鹸や入浴剤等の内層素材をゼリー状の外層素材や水溶性の外層素材によって包んだ入浴製品等を筒状のフィルムF内に詰め込んで包むことにより多層製品Pとして提供できる。このようにして製造された多層製品Pは、使用時にフィルムFを取り外して使用するものであっても、フィルムFを被せたまま使用するものであっても良い。
【実施例3】
【0094】
≪人工卵の製造装置・製造方法としての実施例≫
上述した多層製品製造装置10は、人工的に調整した白身成分及び黄身成分をそれぞれ外層材料及び内層材料とすることにより人工的な卵を製造することが可能である。このようにして製造した卵は、白身の略中央部分に黄身がある断面形状となる。また、上述したように熱処理装置90を設けておけば、フィルムFを装着したまま加熱することにより、ゆで卵とすることができる。
【0095】
上述したようにして作成された卵は、フィルムFによって外層が形成されているため、自然状態の卵のように僅かな衝撃で割れてしまうといった不具合が生じない。従って、多層製品製造装置10によって人工的に製造された卵は、搬送や保存等に適している。また、白身成分及び黄身成分を任意の比率で調整できるため、自然状態の卵と同様の比率で再現するだけではなく、黄身成分の比率が高い卵等を製造することも可能である。また、上述したようにして卵を人工的に製造することにより、品質の均一化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の多層製品製造装置は、多層構造に形成された具入り食品や工業製品、人工卵等の製造に有効利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 多層製品製造装置
40 吐出部
42 吐出ノズル
44 ノズル構造
84 シール
90 熱処理装置
100 一軸偏心ねじポンプ機構
102 ロータ
104 ステータ
200 一軸偏心ねじポンプ機構
202 ロータ
204 ステータ
F フィルム
P 多層製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9