特許第6396075号(P6396075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6396075-汚染土壌の湿式分級洗浄方法及び装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396075
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】汚染土壌の湿式分級洗浄方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/02 20060101AFI20180913BHJP
   B03B 5/00 20060101ALI20180913BHJP
   B03B 9/06 20060101ALI20180913BHJP
   B03B 7/00 20060101ALI20180913BHJP
   B07B 1/42 20060101ALI20180913BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20180913BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B09C1/02
   B03B5/00 ZZAB
   B03B9/06
   B03B7/00
   B07B1/42 Z
   G21F9/28 Z
   G21F9/28 521A
   G21F9/28 531Z
   G21F9/28 561A
   G21F9/06 521A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-107273(P2014-107273)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-221421(P2015-221421A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】山本 達生
(72)【発明者】
【氏名】岩田 将英
(72)【発明者】
【氏名】野田 兼司
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−069157(JP,A)
【文献】 特開2005−040764(JP,A)
【文献】 特開2004−130217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/00− 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌を分級洗浄して減容化するための方法であって、
処理前の汚染土壌を粘土塊解砕装置に投入して粘土塊を解砕するとともに、洗浄水を加水して礫の洗浄を行う粘土塊解砕・礫洗浄工程と、
前記粘土塊解砕・礫洗浄工程で発生した礫を含む土粒子を、振動ふるい上を通過させながら洗浄水を散布するとともに、振動ふるい上を通過する土粒子に直接接触するようにして高周波バイブレーターを設置し、礫の動きを大きくして洗浄水の水みちをより多く発生させ、当該土粒子の洗浄を促進させることにより、礫を分級・回収する礫洗浄・分級工程と、
前記礫洗浄・分級工程で洗浄・分級した砂を含む土粒子を、吹付け装置を用いて壁面に吹き付け、当該土粒子に衝撃力を作用させて、砂から細粒分を分離させる砂洗浄工程と、
前記砂洗浄工程で分離した細粒分を除去するとともに、砂の脱水を行い減容化する砂分級工程と、
を含むことを特徴とする汚染土壌の湿式分級洗浄方法。
【請求項2】
前記砂洗浄工程において、前記吹付け装置は砂洗浄槽内に設置されており、砂洗浄槽内の壁面に砂を含む土粒子を吹き付けるとともに、当該砂洗浄槽内に貯留した砂を含む土粒子を攪拌装置により攪拌して、砂の沈降分離を抑制する、
ことを特徴とする請求項に記載の汚染土壌の湿式分級洗浄方法。
【請求項3】
汚染土壌を分級洗浄して減容化するための装置であって、
粘土塊解砕装置と、洗浄水を加水する加水装置とを有し、当該粘土塊解砕装置を用いて粘土塊を解砕するとともに、当該加水装置を用いて洗浄水を加水して礫の洗浄を行う粘土塊解砕・礫洗浄装置と、
前記粘土塊解砕・礫洗浄装置で洗浄した礫を含む土粒子に直接接触させて、礫を含む土粒子に対して礫の動きを大きくして洗浄水の水みちをより多く発生させ、当該土粒子の洗浄を促進させるようにした状態で設置した高周波バイブレーターと、振動ふるい及び洗浄水散布装置とを有し、前記粘土塊解砕・礫洗浄装置で洗浄した礫を含む土粒子を洗浄するとともに、礫を分級して回収する礫洗浄・分級装置と、
前記礫洗浄・分級装置で分級した砂を含む土粒子を壁面に吹き付ける吹付け装置を有し、当該土粒子を壁面に吹き付けることにより、当該土粒子に衝撃力を作用させて、砂から細粒分を分離させる砂洗浄装置と、
前記砂洗浄装置で分離した細粒分を除去するとともに、砂の脱水を行い減容化する砂分級装置と、
を備えたことを特徴とする汚染土壌の湿式分級洗浄装置。
【請求項4】
前記砂洗浄装置は、砂洗浄槽を備えるとともに、当該砂洗浄槽内には、砂を含む土粒子を攪拌して砂の沈降分離を抑制する攪拌装置を設けた、
ことを特徴とする請求項に記載の汚染土壌の湿式分級洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚染土壌の湿式分級洗浄方法及び装置に関するものであり、例えば、除染作業により発生した汚染土壌を分級洗浄して、減容化するための方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射性物質や重金属類等の有害物質は、粒径が小さい土粒子ほど、単位重量あたりの吸着量が多くなるため、粘土のような極めて小さい粒径の土壌を分級することで、有害物質濃度を低下できることが知られている。このため、有害物質に汚染された土壌を湿式分級することにより、汚染濃度が低下した礫や砂と、汚染濃度が高くなった粘土とに分級することで、汚染土壌の減容化処理を行っている。
【0003】
汚染土壌の分級処理の技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された技術は、汚染土壌から有害物質が付着しがちな微細粒子を分級回収して、汚染土壌の減容化を実現する技術に関するものである。この汚染土壌の分級工法は、汚染土壌を10wt%以下の濃度に加水調整した泥水をキャビテーションジェット水で洗浄するとともに、流量変更可能な流量可変ジェット水で撹拌して、粗粒子分級タンク内で砂粒子を沈降分離する。さらに、遠心分離器でシルト粒子と粘土粒子とに遠心分離し、細粒子沈殿槽でシルト粒子を沈降分離するとともに粘土粒子を分級して、微細粒子沈殿槽で粘土粒子を沈降堆積させて、汚染土壌から粘土粒子を分級回収するようにしている。
【0004】
湿式分級処理の他にも、汚染土壌を浄化するための技術が、特許文献2に開示されている。特許文献2に開示された技術は、埋立処分される汚染土壌を減量するための技術である。この土壌浄化方法は、重金属を含有する汚染土壌を第1の粗粒分画と粒径の小さい第1の細粒分画とに分級し、第1の細粒分画を除去することで重金属を含有する汚染土壌を浄化するものである。そして、分級された第1の細粒分画を加圧水によって解砕する解砕工程と、解砕された第1の細粒分画を、第2の粗粒分画と粒径の小さい第2の細粒分画とに分級する分級工程とを含み、第2の細粒分画を除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−21062号公報
【特許文献2】特開2005−103489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術は、種々の問題点を有している。以下、従来の技術が有する問題点について、粘土塊解砕および礫洗浄・分級工程、砂洗浄・分級工程に大別して説明する。
【0007】
粘土塊解砕および礫洗浄・分級工程においては、一般的にドラムウォッシャーや特殊な摩砕洗浄機を用いている。ドラムウォッシャーを用いる場合には、50mm以上の大塊の処理も可能であるが、砂の少ない汚染土壌が処理対象であると、粘土塊や礫に作用するせん断力が小さくなり、十分な洗浄効果を発揮することができないという問題がある。
【0008】
また、特殊な摩砕洗浄機は、粘土塊解砕や礫洗浄の効果は高いものの、現有設備のほとんどが大型設備であり、処理設備の設置面積が大きくなるとともに、処理コストが高くなるという問題がある。さらに、礫が細かく砕け、汚染が濃縮される細粒分の重量が増加するという問題がある。なお、礫表面には凹凸が多いため、礫表面を特殊な摩砕設備で削ったとしても、凹部内に付着した有害物質は除去できないことも問題である。
【0009】
礫を分級する工程においては、一般的に振動ふるいが用いられている。例えば、2mm以上の礫や砂を分級する場合には、シャワー洗浄を行いながら2mm程度のふるいを用いてすすぎ洗いをし、ふるい分けを行うのが一般的である。この工程では、ふるい分けした2mm以上の礫に、2mm未満の土粒子が混入する割合を少なくすることが、処理効果を高めるうえで重要である。
【0010】
一方、処理対象は汚染された土壌であるため、2mm以上の礫の含有量が大きくばらつく場合がある。特に、急激に2mm以上の礫が多くなると、振動ふるいでは十分なすすぎができなくなり、処理品質が低下するという問題がある。
【0011】
砂洗浄・分級工程は、前段の礫洗浄工程で砂の洗浄も終了していると判断し、砂洗浄を行わない技術、特殊な設備を用いてさらに砂を洗浄する技術に大別することができる。砂洗浄を行わない技術では、設備規模は小さくなる利点があるものの、礫に比較して粒径が小さい砂の洗浄が不十分となり、汚染濃度が目標値を満足しないリスクが高くなるという問題がある。
【0012】
また、高圧ジェット水流洗浄装置を使用し、キャビテーション効果を利用して砂を洗浄する方法が用いられることがある。しかし、この技術は特殊な設備であるため、大量処理が必要となる場合には、新規で設備を製作する必要があること、高速で水、砂、粘土、空気を移送しているにもかかわらず、コリジョン(衝突)効果を併用して利用していないなど、設備の入手や技術的原理の面で問題が内在している。
【0013】
また、他の技術として、スクラバーや特殊なミキサーを使用し、砂同士を衝突させて摩砕することで、汚染物質の濃度低減を図る技術があるが、この技術は特殊な設備が必要であるため、上述した技術と同様の問題がある。さらに、砂を回収する方法として、マイクロバブルを利用して粘土を浮上分離する方法、サイクロンや水平式バケット排出型分級機を利用して砂を回収する方法があるが、これらの技術においても、さらなる改良の余地が残っている。
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、汚染土壌を効率的に分級洗浄して、分級洗浄後の回収分における汚染物質の濃度を効果的に低下させるとともに、汚染土壌の減容化を図ることが可能な湿式分級洗浄方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法及び装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を備えている。すなわち、本発明に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法は、粘土塊解砕・礫洗浄工程と、礫洗浄・分級工程と、砂洗浄工程と、砂分級工程とを含んでいる。
【0016】
粘土塊解砕・礫洗浄工程は、処理前の汚染土壌を粘土塊解砕装置に投入して粘土塊を解砕するとともに、洗浄水を加水して礫の洗浄を行う工程である。礫洗浄・分級工程は、粘土塊解砕・礫洗浄工程で発生した礫を含む土粒子を、振動ふるい上を通過させながら洗浄水を散布するとともに、振動ふるい上を通過する土粒子に直接接触するようにして高周波バイブレーターを設置し、礫の動きを大きくして洗浄水の水みちをより多く発生させ、当該土粒子の洗浄を促進させることにより、礫を分級・回収する工程である。砂洗浄工程は、礫洗浄・分級工程で洗浄・分級した砂を含む土粒子を、吹付け装置を用いて壁面に吹き付け、当該土粒子に衝撃力を作用させて、砂から細粒分を分離させる工程である。砂分級工程は、砂洗浄工程で分離した細粒分を除去するとともに、砂の脱水を行い減容化する工程である。
【0017】
また、上述した構成からなる汚染土壌の湿式分級洗浄方法は、砂洗浄工程において、吹付け装置は砂洗浄槽内に設置されており、砂洗浄槽内の壁面に砂を含む土粒子を吹き付けるとともに、当該砂洗浄槽内に貯留した砂を含む土粒子を攪拌装置により攪拌して、砂の沈降分離を抑制することが可能である。
【0018】
本発明に係る汚染土壌の湿式分級洗浄装置は、粘土塊解砕・礫洗浄装置と、礫洗浄・分級装置と、砂洗浄装置と、砂分級装置とを備えている。
【0019】
粘土塊解砕・礫洗浄装置は、粘土塊解砕装置と、洗浄水を加水する加水装置とを有し、当該粘土塊解砕装置を用いて粘土塊を解砕するとともに、当該加水装置を用いて洗浄水を加水して礫の洗浄を行うための装置である。礫洗浄・分級装置は、粘土塊解砕・礫洗浄装置で洗浄した礫を含む土粒子に直接接触させて、礫を含む土粒子に対して礫の動きを大きくして洗浄水の水みちをより多く発生させ、当該土粒子の洗浄を促進させるようにした状態で設置した高周波バイブレーターと、振動ふるい及び洗浄水散布装置とを有し、粘土塊解砕・礫洗浄装置で洗浄した礫を含む土粒子を洗浄するとともに、礫を分級して回収するための装置である。砂洗浄装置は、礫洗浄・分級装置で分級した砂を含む土粒子を壁面に吹き付ける吹付け装置を有し、当該土粒子を壁面に吹き付けることにより、当該土粒子に衝撃力を作用させて、砂から細粒分を分離させるための装置である。砂分級装置は、砂洗浄装置で分離した細粒分を除去するとともに、砂の脱水を行い減容化するための装置である。
【0020】
また、上述した構成からなる汚染土壌の湿式分級洗浄装置において、砂洗浄装置は、砂洗浄槽を備えるとともに、当該砂洗浄槽内には、砂を含む土粒子を攪拌して砂の沈降分離を抑制する攪拌装置を設けることが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法及び装置によれば、特に、粘土塊解砕・礫洗浄工程において、二軸パドルミキサーを用いて粘土塊の解砕を行い、砂洗浄工程において、吹付け装置を用いて砂から細粒分を除去している。二軸パドルミキサーは、パドルが回転することにより発生するせん断力が直接土粒子に作用するため、礫を過度に摩砕することなく、粘土塊を確実に解砕することができる。また、吹付け装置を用いて土粒子を壁面に吹き付けることにより、砂粒子の表面に付着したシルト粒子や粘土粒子を確実に剥離することができる。
【0022】
また、礫洗浄・分級工程において、振動ふるい上を通過する土粒子に直接接触するようにして高周波バイブレーターを設置することにより、礫の動きが大きくなり、洗浄水の水みちがより多く発生して、洗浄水が素早くふるい下に排出される。このため、処理する汚染土壌の量が急激に変動しても、高い洗浄効果を保つことができる。
【0023】
また、砂洗浄工程において砂洗浄槽内で砂を含む土粒子を攪拌することにより、砂同士が衝突し、さらに攪拌装置の回転体付近で砂にせん断力が作用するため、砂の表面から粘土粒子を容易に剥離することができる。また、砂に対して過度の摩砕が働かないため、粘土粒子が極端に増加することがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る汚染土壌の湿式分級洗浄装置の構成を示す模式図。
図2】本発明の実施形態に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法及び装置の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る汚染土壌の湿式分級洗浄装置の構成を示す模式図、図2は本発明の実施形態に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法の手順を示すフローチャートである。
【0026】
<汚染土壌の湿式分級洗浄方法及び装置の概要>
本発明に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法及び装置は、例えば、除染作業により発生した汚染土壌を分級洗浄して、減容化するための技術である。汚染土壌の湿式分級洗浄方法は、図2に示すように、粘土塊解砕・礫洗浄工程と、礫洗浄・分級工程と、砂洗浄工程と、砂分級工程とを含んでいる。また、汚染土壌の湿式分級洗浄装置は、これらの各工程において使用する装置として、図1に示すように、粘土塊解砕・礫洗浄装置10と、礫洗浄・分級装置20と、砂洗浄装置30と、砂分級装置40とを備えている。
【0027】
なお、以下の説明において、土粒子を粒径により区分して、0.005mm未満の土粒子を粘土、0.005mm以上0.075mm未満の土粒子をシルト、0.075mm以上2.000mm未満の土粒子を砂、2.000mm以上75mm未満の土粒子を礫という。また、実施形態等において、礫及び砂と分離する土粒子を粘土と記載しているが、礫及び砂と分離する土粒子にはシルトが含まれている場合もある。
【0028】
<粘土塊解砕・礫洗浄工程/粘土塊解砕・礫洗浄装置>
粘土塊解砕・礫洗浄工程は、処理前の汚染土壌を二軸パドルミキサーに投入して粘土塊を解砕するとともに、洗浄水を加水して礫の洗浄を行う工程である。この粘土塊解砕・礫洗浄工程で使用する粘土塊解砕・礫洗浄装置10は、二軸パドルミキサー11及び加水装置12を主要な構成要素とする。
【0029】
粘土塊解砕・礫洗浄工程では、コンクリート混練ミキサーとして広く利用されている二軸パドルミキサー11を使用する。二軸パドルミキサー11には、連続式とバッチ式の二種類があるが、いずれの装置を用いてもよく、処理対象となる汚染土壌の量や土質等に応じて、適切な大きさの設備を設置することにより、装置の大きさを最適化することができる。
【0030】
本発明において、二軸パドルミキサー11を用いて粘土塊の解砕を行っているのは、以下の理由による。第1に、二軸パドルミキサー11は、礫を過度に摩砕することなく、粘土塊を確実に解砕することができるためである。第2に、二軸パドルミキサー11は、汎用機器であり、大型なものから小型なものまで、レンタル可能な設備が豊富に存在し、処理対象となる汚染土壌の種類、汚染土壌の処理量、処理を行う場所等に適切に対応することができるとともに、汚染土壌の処理量に応じて適切な大きさの設備を組み合わせることが可能なためである。
【0031】
<礫洗浄・分級工程/礫洗浄・分級装置>
礫洗浄・分級工程は、粘土塊解砕・礫洗浄工程で発生した礫を含む土粒子を、振動ふるい上を通過させながら洗浄水を散布して、礫を分級・回収する工程である。この礫洗浄・分級工程で使用する礫洗浄・分級装置20は、2mm以上の礫を回収するための振動ふるい21(2mm目)及び洗浄水散布装置22を主要な構成要素とし、振動ふるい21上に高周波バイブレーター23を設置することが好ましい。
【0032】
高周波バイブレーター23は、振動ふるい21上を通過する礫に対し直接接触するようにして、振動ふるい21上に設置する。そして、振動ふるい21上に洗浄水散布装置22を設置し、振動ふるい21上を流下する土粒子に対して洗浄水を散布しながら、高周波バイブレーター23により振動を与えることにより、2mm以上の礫と、2mm未満の土粒子(砂、シルト、粘土)とを分離して、礫を回収する。
【0033】
本発明では、礫洗浄・分級工程において、高周波バイブレーター23を用いて、礫に直接振動を与えることにより、以下の効果を得ることができる。第1に、高周波バイブレーター23により付与される振動により礫が動くため、振動ふるい21による振動付与のみの場合と比較して、洗浄水の水みちがより多く発生する。このため、洗浄水が素早くふるい下に排出され、汚染土壌の処理量が急激に変動しても、高い洗浄効果を保つことができる。
【0034】
第2に、汚染土壌が二軸パドルミキサー11で撹拌される際に、礫表面の窪みに入り込んだ粘土は、水の作用で緩んでくるが、礫同士の摩砕効果のみでは排出されない場合がある。このため、礫に直接高周波を作用させることにより、礫表面の窪みから粘土を剥離することができる。さらに、振動ふるい21上に洗浄水散布装置22を設置して、土粒子に洗浄水を散布することにより、礫に含まれる粒径の小さい土粒子を、振動ふるい21の下方に効率的に落下させてゆくことができる。
【0035】
<砂洗浄工程/砂洗浄装置>
砂洗浄工程は、礫洗浄・分級工程で洗浄・分級した砂を含む土粒子を、吹付け装置を用いて壁面に吹き付け、当該土粒子に衝撃力を作用させて、砂から細粒分を分離させる工程である。この砂洗浄工程で使用する砂洗浄装置30は、例えばコンクリート吹付け機等からなる吹付け装置32を有しており、礫分級工程で分級した砂を含む土粒子を砂洗浄槽31に投入し、この砂洗浄槽31内で、吹付け装置32を用いて、砂を含む土粒子を砂洗浄槽31の壁面や、衝接板33に吹き付けるようになっている。また、砂洗浄槽31内には、貯留した砂を含む土粒子を攪拌して砂の沈降分離を抑制する攪拌装置34を備えることが好ましい。攪拌装置34は、例えば、水中ポンプや回転軸に取り付けた攪拌翼等からなる。そして、水中ポンプで砂洗浄槽31内に貯留した砂及び粘土の土粒子を含む水(泥水)を吸い込んで吐出することにより泥水を攪拌し、あるいは、回転軸を回転中心として攪拌翼を回転させることにより泥水を攪拌する。
【0036】
礫洗浄・分級工程で発生するふるい下成分は、砂洗浄槽31に移送される。すなわち、砂洗浄槽31には、砂、シルト、粘土などの土粒子と水が移送されてくる。この際、必要に応じて洗浄水を追加してもよい。砂洗浄槽31内では、砂が沈降分離しないよう、撹拌ポンプや撹拌翼等の攪拌装置34を用いて砂洗浄槽31内の土粒子を含む水を高速撹拌する。さらに、吹付け装置32(例えば、コンクリート吹付け機)に砂洗浄槽31内の土粒子を含む水を供給し、水を含む土粒子を高圧で砂洗浄槽31の内壁面、もしくは別途、砂洗浄槽31内に設置した衝接板33に吹き付ける。
【0037】
本発明では、砂洗浄工程において、砂洗浄槽31内には砂、シルト、粘土などの土粒子を含む水が存在し、攪拌装置34を用いて当該土粒子を含む水を高速撹拌することにより、砂同士の衝突や、攪拌装置34を構成するポンプや撹拌翼の回転体付近で砂に作用するせん断力を利用して、砂表面から粘土等の剥離が促進される。このように、攪拌装置34を用いて土粒子を含む水を攪拌することにより、砂に過度な摩砕が働かないため、極端に粘土等が増加することがない。
【0038】
また、吹付け装置32(コンクリート吹付け機)を用いて、砂を高速で壁面に衝突させることにより、砂から粘土が剥離する。このように粘土が剥離する現象は、例えば、汚れたテニスボールを壁に投げつけると、ボールの汚れが壁に付着してボールの汚れが落ちていく現象と同様である。
【0039】
また、吹付け装置32(コンクリート吹付け機)の筒先は絞られて(縮径して)おり、筒先には圧縮空気とともに砂を含む水が高圧で供給される。このため、筒先から噴射された砂及び空気を含む水は、急激に圧力解放されるため、キャビテーション現象が発生する。これにより、砂の表面から粘土が剥離しやすくなる。さらに、キャビテーション現象により、砂の表面に付着した有機物が分解されることも考えられ、汚染物が除去されやすくなる。
【0040】
<砂分級工程/砂分級装置>
砂分級工程は、砂分級装置を用いて、砂洗浄工程で洗浄した砂を分級するとともに脱水を行い減容化する工程である。この砂分級工程で使用する砂分級装置40は、例えば、骨材プラントで砂を回収したり、重金属汚染土壌の減容化処理で利用する水平式バケット排出型分級機を利用することができる。この砂分級工程により、75μm以上の砂と、75μm未満のシルト及び粘土を分級することができる。
【0041】
水平式バケット排出型分級機による砂の分級を具体的に説明する。水平式バケット排出型分級機は、砂分級水槽41内に砂洗浄工程で洗浄した砂を投入し、砂を沈降させるとともに、泥水中の粘土を浮遊させて、水とともに砂分級水槽41からオーバーフローさせる装置である。
【0042】
また、砂分級水槽41の下部に沈降した砂は、砂分級水槽41の長手方向に沿って設けたスクリュー状の羽根板42により砂回収装置43へ向かって搬送される。砂回収装置43は、スクリュー状の羽根板42と同軸に設けた水車であって、受け板43aをメッシュ状とした装置である。したがって、スクリュー状の羽根板42により、砂回収装置43まで搬送されてきた砂は、受け板43aにより水を切りながら掬い上げられる。そして、受け板43aにより掬い上げた砂をふるい44上に落下させて、さらなる脱水を行い、砂のみを分級して回収する。
【0043】
<汚染土壌の湿式分級洗浄方法の手順>
次に、図2を参照して、本発明に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法の手順を説明する。本発明に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法では、図2に示すように、処理対象となる汚染土壌に対して、粘土塊解砕・礫洗浄装置10を用いた粘土塊解砕・礫洗浄工程、礫洗浄・分級装置20を用いた礫洗浄・分級工程、砂洗浄装置30を用いた砂洗浄工程、砂分級装置40を用いた砂分級工程を、この順番で行う。粘土塊解砕・礫洗浄工程及び礫洗浄・分級工程による産物は洗浄された礫である。また、砂洗浄工程及び砂分級工程における産物は洗浄された砂であり、砂分級工程における副産物はシルト、粘土を含む泥水である。
【0044】
図2に示す例では、粘土塊解砕・礫洗浄工程、礫洗浄・分級工程、砂洗浄工程、砂分級工程をそれぞれ2回行っている。これは、各工程において、汚染物質を確実に除去するためであり、各工程の回数は、処理対象となる汚染土壌の性状、粒度分布、処理量等に応じて、適宜変更して実施することができる。すなわち、処理対象となる汚染土壌の性状等により、各工程を1回としてもよいし、2回以上としてもよい。また、工程毎に処理回数を異ならせてもよい。
【0045】
<砂を分離後の粘土を含む水>
砂を分離した後のシルト及び粘土を含む水(泥水)については、濃度の高い汚染物質が含まれていると考えられる。したがって、フィルタープレス等を用いて脱水を行い減容化した後、濃度の高い汚染物質が含まれているシルト及び粘土は、廃棄物の処理基準及び環境基準を満たした廃棄処分を行う。また、水については、廃棄物の処理基準及び環境基準を満たしていればそのまま放水し、廃棄物の処理基準及び環境基準を満たしていなければ、廃棄物の処理基準及び環境基準を満たすような処理を行った後に放水する。
【0046】
また、本発明における洗浄及び分級後の礫及び砂は、汚染物質が適切に取り除かれているため、廃棄物の処理基準及び環境基準を満たした廃棄処分を行う。このように、本発明に係る汚染土壌の湿式分級洗浄方法及び装置によれば、汚染土壌を効率的に分級洗浄して、分級洗浄後の回収分における汚染物質の濃度を効果的に低下させるとともに、汚染土壌の減容化を図ることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 粘土塊解砕・礫洗浄装置
11 二軸パドルミキサー
12 加水装置
20 礫洗浄・分級装置
21 振動ふるい
22 洗浄水散布装置
23 高周波バイブレーター
30 砂洗浄装置
31 砂洗浄槽
32 吹付け装置
33 衝接板
34 攪拌装置
40 砂分級装置
41 砂分級水槽
42 羽根板
43 砂回収装置
43a 受け板
44 ふるい
図1
図2