(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを備え、
前記中央リンク部材は、板厚方向の曲がり部を2箇所以上有する第1の板材と、この第1の板材よりも板厚方向の曲がり部の数が少ない第2の板材とを備えることを特徴とするパラレルリンク機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパラレルリンク機構は、構成が比較的簡単であるが、各リンクの作動角が小さいため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定すると、リンク長が長くなることにより、機構全体の寸法が大きくなって装置の大型化を招くという問題がある。また、機構全体の剛性が低く、トラベリングプレートに搭載されるツールの重量、つまりトラベリングプレートにおける可搬重量が小さいものに制限されるという問題もある。
【0005】
特許文献2のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、4節連鎖の3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結した構成としたことにより、コンパクトでありながら、高速、高精度で、広範な作動範囲の動作が可能である。
【0006】
しかし、特許文献2のパラレルリンク機構は、部品構成が複雑であり、組立性が悪いという問題がある。また、剛性や強度を確保するために、各部品が複雑な形状をしており、量産性が悪く、製作コストが高いという問題もある。
【0007】
この発明の目的は、高速、高精度で、広範な作動範囲の動作を行うことができ、組立てが容易で、量産性に優れ、安価に製作できるパラレルリンク機構を提供することである。
この発明の他の目的は、2自由度の角度を制御することが可能で、かつ広範な作動範囲の動作を精度良く行うことができ、低コストで製作できるリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを備え、
前記中央リンク部材は、板厚方向の曲がり部を2箇所以上有する第1の板材と、この第1の板材よりも板厚方向の曲がり部の数が少ない第2の板材とを備える、ことを特徴とする。
【0009】
この明細書において、「基端側」および「先端側」とは、以下の意味で用いられる。すなわち、リンクハブと端部リンク部材の各回転対偶、および、端部リンク部材と中央リンク部材の各回転対偶の中心軸がそれぞれ交差する点をリンクハブの「球面リンク中心」と称し、この球面リンク中心を通り前記リンクハブと端部リンク部材の回転対偶の中心軸と直角に交わる直線を「リンクハブの中心軸」と称する場合、それぞれのリンクハブから基端側および先端側の各リンクハブの中心軸が交差する交点から見て基端側の球面リンク中心方向を基端側、先端側の球面リンク中心方向を先端側としている。
【0010】
この構成によれば、基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、3組以上のリンク機構とで、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成される。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、先端側のリンクハブの可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の最大折れ角は約±90°であり、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。
【0011】
中央リンク部材を板材としたため、中央リンク部材を低コストで製造することができ、かつ量産性に優れる。また、中央リンク部材が板材であると、端部リンク部材と中央リンク部材の回転対偶部の構成を簡略にでき、組立て性が向上する。このパラレルリンク機構では、機構上の理由から、中央リンク部材は、中間部が内側に突出する湾曲形状をしている。中央リンク部材が曲がり部を2箇所以上有すると、中央リンク部材の中間部の内側への突出量を少なくすることができる。これにより、各リンク機構同士の干渉や、基端側もしくは先端側のリンクハブに装着される器具との干渉を回避することができ、前記機構上の可動範囲における実質的に有効な可動範囲を広くとれる。
また、中央リンク部材を2つの板材で構成するため、中央リンク部材の強度を確保しつつ、板材の板厚を薄くすることができる。それにより、中央リンク部材を安価に製造できると共に、軽量化を図ることができる。
なお、前記のように中央リンク部材は、板厚方向の曲がり部を2箇所以上有する第1の板材と、この第1の板材よりも板厚方向の曲がり部の数が少ない第2の板材とを備えていているが、この場合、中央リンク部材の湾曲形状に合わせて、曲がり部の数が多い第1の板材を湾曲の内周側に配置し、かつ曲がり部の数が少ない第2の板材を湾曲の外周側に配置してもよい。
【0012】
この発明において、前記中央リンク部材を構成する前記板材は金属板であり、前記曲がり部を板金曲げ加工により形成すると良い。
この場合、曲がり部の加工が容易である。
【0014】
上記構成において、前記端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部は、前記第1の板材および第2の板材の間に、軸受を内蔵した前記端部リンク部材を配置し、前記第1の板材および第2の板材にそれぞれ設けられた貫通孔および前記軸受の内輪に回転軸を挿通し、前記第1の板材および第2の板材、前記軸受の内輪、および前記回転軸を互いに固定すると良い。
この構成によると、第1の板材と第2の板材とで回転軸の両端を支持し、前記2つの板材の間に軸受が位置する。このため、端部リンク部材と中央リンク部材の回転対偶部のモーメント荷重に対する剛性が高くなり、パラレルリンク機構全体の剛性が向上する。
【0015】
上記構成において、前記第1の板材および第2の板材のうちの一方の板材に設けられた前記貫通孔は、この貫通孔に挿通される前記回転軸との間にすきまが生じないタイトな孔とし、もう一方の板材に設けられた前記貫通孔は、この貫通孔に挿通される前記回転軸との間にすきまが生じるルーズな孔とするのが良い。
中央リンク部材の両端にそれぞれ連結される2つの回転軸は互いに角度を持っている。このため、板材の貫通孔がタイトな孔であると、2つの回転軸と2つの貫通孔を互いに位置合わせしてから、回転軸を進出させて貫通孔に回転軸を挿通することはできても、位置固定されている2つの回転軸に対して、板材を移動させて貫通孔に回転軸を挿通することはできない。
上記構成のように、2つの板材の貫通孔をそれぞれタイトな孔およびルーズな孔とすると、次の手順で組立を行うことができる。すなわち、先に、タイトな孔である貫通孔を有する板材に対して2つの回転軸を位置合わせし、板材は位置固定したまま2つの回転軸を進出させることで貫通孔に回転軸を挿通する。後で、位置固定された2つの回転軸に対して、ルーズな孔である貫通孔を有する板材を移動させて、回転軸と貫通孔の位置合わせをしながら貫通孔に回転軸を挿通する。貫通孔がルーズな孔であれば、回転軸と貫通孔の正確な位置合わせをする必要がなく、しかも板材をずらしたり傾けたりしながら回転軸を貫通孔に挿通することができるため、組立て作業性が良い。一方の板材のタイトな孔である貫通孔に回転軸が挿通されているため、中央リンク部材と回転軸の連結部の組立て精度を確保できる。
【0017】
この発明のリンク作動装置は、前記パラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更する姿勢変更用アクチュエータを設けたことを特徴とする。
3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に姿勢変更用アクチュエータを設ければ、基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を確定することができる。これにより、2自由度の角度を制御することが可能なリンク作動装置を低コストで実現できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを備え、
前記中央リンク部材は、板厚方向の曲がり部を2箇所以上有する第1の板材と、この第1の板材よりも板厚方向の曲がり部の数が少ない第2の板材とを備えるため、高速、高精度で、広範な作動範囲の動作を行うことができ、組立てが容易で、量産性に優れ、安価に製作できる。
【0019】
この発明のリンク作動装置は、前記パラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更する姿勢変更用アクチュエータを設けたため、2自由度の角度を制御することが可能で、かつ広範な作動範囲の動作を精度良く行うことができ、安価に製作できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の
基礎となる提案例に係るパラレルリンク機構を
図1〜
図5と共に説明する。
図1はこのパラレルリンク機構の一状態を示す斜視図、
図2は同パラレルリンク機構の一部を省略した正面図である。このパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3組のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。
図2では、1組のリンク機構4のみが示されている。リンク機構4の数は、4組以上であっても良い。
【0022】
各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5、先端側の端部リンク部材6、および中央リンク部材7で構成され、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材5,6は所定の角度に湾曲した形状をしており、一端がそれぞれ基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に回転自在に連結されている。中央リンク部材7は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材5,6の他端がそれぞれ回転自在に連結されている。3組のリンク機構4は、幾何学的に同一形状をなす。
【0023】
また、
図4のように、リンク機構4を直線で表現したモデルは、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状である。より詳しくは、各リンク部材5,6,7を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状である。
図4は、1組のリンク機構4のみを直線で表現している。この
提案例のパラレルリンク機構1は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。
【0024】
このパラレルリンク機構1は、2つの球面リンク機構を組み合わせた構造であって、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の各回転対偶、および端部リンク部材5,6と中央リンク部材7の各回転対偶の中心軸が、基端側と先端側においてそれぞれの球面リンク中心PA,PB(
図2)で交差している。また、基端側と先端側において、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の各回転対偶とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じであり、端部リンク部材5,6と中央リンク部材7の各回転対偶とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じである。端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶の中心軸は、ある交差角γを持っていても良いし、平行であっても良い。
【0025】
図3は基端側のリンクハブ2、基端側の端部リンク部材5、および中央リンク部材7の断面図であって、同図に、リンクハブ2と端部リンク部材5の回転対偶の中心軸O1と、端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶の中心軸O2と、球面リンク中心PAとの関係が示されている。先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6の形状ならびに位置関係も
図3と同様である(図示せず)。図の例では、リンクハブ2と端部リンク部材5との各回転対偶の中心軸O1と、端部リンク部材5と中央リンク部材7との各回転対偶の中心軸O2とが成す角度αが90°とされているが、前記角度αは90°以外であっても良い。
【0026】
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3組のリンク機構4とで、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。
【0027】
例えば、球面リンク中心PA,PBを通り、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の各回転対偶の中心軸O1(
図3)と直角に交わる直線をリンクハブ2,3の中心軸(以下、「リンクハブ中心軸」とする)QA,QBとした場合、基端側のリンクハブ中心軸QAと先端側のリンクハブ中心軸QBの折れ角θ(
図1)の最大値を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φ(
図1)を0°〜360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ中心軸QAに対して先端側のリンクハブ中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ中心軸QAに対して先端側のリンクハブ中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。
【0028】
基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢変更は、基端側のリンクハブ中心軸QAと先端側のリンクハブ中心軸QBの交点である姿勢変更中心Oを回転中心として行われる。
図1の斜視図は、基端側のリンクハブ中心軸QAに対して先端側のリンクハブ中心軸QBが或る作動角をとった状態を示し、
図2の正面図は、基端側のリンクハブ中心軸QAと先端側のリンクハブ中心軸QBが同一線上にある状態を示す。姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離D(
図2)は変化しない。
【0029】
このパラレルリンク機構1において、各リンク機構4におけるリンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の回転対偶の中心軸O1の角度および球面リンク中心PA,PBからの長さが互いに等しく、かつ各リンク機構4のリンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の回転対偶の中心軸O1、および、端部リンク部材5,6と中央リンク7の回転対偶の中心軸O2が、基端側および先端側において球面リンク中心PA,PBと交差し、かつ基端側の端部リンク部材5と先端側の端部リンク部材6の幾何学的形状が等しく、かつ中央リンク部材7についても基端側の先端側とで形状が等しいとき、中央リンク部材7の対称面に対して、中央リンク部材7と端部リンク部材5,6との角度位置関係を基端側と先端側とで同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動く。
【0030】
次に、各リンク機構4における4つの回転対偶部、つまり、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部、先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部、および先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部の構造について説明する。基端側と先端側の互いに対応する回転対偶部は同じ構造であるので、ここでは、
図3と共に、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部を説明する。
【0031】
リンクハブ2の円周方向の3箇所に軸部11が形成され、この軸部11の外周に2つの軸受12の内輪(図示せず)が嵌合し、端部リンク部材5の基端に形成された軸受設置孔13の内周に軸受12の外輪(図示せず)が嵌合している。つまり、軸受12は、内輪が固定で外輪が回転する。前記軸受12は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、軸部11のねじ部11aに螺着したナット15による締付けでもって所定の予圧量が付与された状態で軸部11に固定されている。軸受12とナット15との間には、それぞれスペーサ16が介在している。
【0032】
また、中央リンク部材7の端部に軸部材21が固定して設けられ、この軸部材21の外周に2つの軸受22の内輪(図示せず)が嵌合し、端部リンク部材5の先端に設けられた軸受設置孔23の内周に軸受22の外輪(図示せず)が嵌合している。軸部材21は、中央リンク部材7の軸挿通孔24に圧入等により挿通されている。前記軸受22は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、軸部材21のねじ部21aに螺着したナット25による締付けでもって所定の予圧量が付与された状態で軸部材21に固定されている。軸受22と中央リンク部材7との間、および軸受22とナット25との間には、それぞれスペーサ26,27が介在している。
【0033】
このように、各回転対偶部に軸受12,22を設けた構造とすることにより、各回転対偶での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。この軸受12,22を設けた構造では、軸受12,22に予圧を付与することにより、ラジアル隙間とスラスト隙間をなくし、回転対偶のがたつきを抑えることができ、基端側のリンクハブ2側と先端側のリンクハブ3側間の回転位相差がなくなり等速性を維持できると共に振動や異音の発生を抑制できる。特に、前記軸受12,22の軸受隙間を負すきまとすることにより、入出力間に生じるバックラッシュを少なくすることができる。
【0034】
中央リンク部材7は、一定厚さ、一定幅で両端が半円形に形成された細長い1枚の金属板からなり、この金属板を2箇所の曲がり部7aで板厚方向に折り曲げて、両端間が所定の角度γを持つ湾曲形状としてある。この湾曲形状は、中央部がパラレルリンク機構1の内側、すなわち姿勢変更中心O(
図1、
図2)に近い側に突出する形状である。曲がり部7aの折り曲げは、板金曲げ加工により行われる。金属板からなる中央リンク部材7の両端部には、前記軸挿通孔24が設けられている。
【0035】
このように、中央リンク部材7を板材とすると、中央リンク部材7を安価に製造することができ、かつ量産性が良い。また、中央リンク部材7が板材であると、端部リンク部材5,6と中央リンク部材7の回転対偶部の構成を簡略にでき、組立て性が向上する。特に、中央リンク部材7を構成する板材を金属板とすると、輪郭形状の切り出し、曲がり部7aの折り曲げ、および軸挿通孔24の形成を板金加工で行うことができ、加工が容易である。
【0036】
パラレルリンク機構1の機構上の理由から、中央リンク部材7は、中間部が内側に突出する湾曲形状をしている。中央リンク部材7が曲がり部7aを2箇所有すると、曲がり部7aが1箇所である場合と比べて、中央リンク部材7の中間部の内側への突出量を少なくすることができる。これにより、各リンク機構4同士の干渉や、リンクハブ2,3に装着される器具との干渉を回避することができ、機構上の可動範囲(例えば、折れ角θが90°、旋回角φが360°)における実質的に有効な可動範囲を広くとれる。
【0037】
図5は、中央リンク部材7の曲がり部7aが2箇所であるパラレルリンク機構1(同図(A))と1箇所であるパラレルリンク機構1´(同図(B))とについて、先端側のリンクハブ3にエンドエフェクタ100を基端側へ突出させた状態で装着した場合を比較した図である。基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を同じ角度だけ姿勢変更しても、曲がり部7aが2箇所であると、
図5(A)のように、エンドエフェクタ100が中央リンク部材7に干渉することを回避できる(丸で囲った部分)が、曲がり部7aが1箇所であると、
図5(B)のように、エンドエフェクタ100が中央リンク部材7に干渉してしまう(丸で囲った部分)ことが分かる。なお、曲がり部7aの数は、3箇所以上であっても良い。
【0038】
図6〜
図8は、
他の提案例を示す。このパラレルリンク機構1も、前記
提案例と同様に、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3組のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結している。各部の位置関係や動作特性も、前記
提案例と同じである。以下、前記
提案例と異なる点について説明する。
【0039】
図6において、リンクハブ2,3は、その中心部にそれぞれ貫通孔30A,30Bがリンクハブ中心軸QA,QB方向に沿って形成され、外形が球面状をしたドーナツ形状をしている。貫通孔30A,30Bの中心は、リンクハブ中心軸QA,QBと一致している。これらリンクハブ2,3の外周面の円周方向に等間隔の位置に、端部リンク部材5,6がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0040】
図8と共に、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部を例にとって、各回転対偶部の構造を説明する。
リンクハブ2には、外周と貫通孔30A間を貫通する軸受設置孔31が円周方向に等配で3箇所に形成され、各軸受設置孔31内に設けた2つの軸受32により軸部材33がそれぞれ回転自在に支持されている。軸部材33の外側端部はリンクハブ2から突出しており、その先端にねじ部33aが形成されている。軸部材33のリンクハブ2から突出した部分を、端部リンク部材5の一端に設けられた軸挿通孔5aに挿通し、軸部材33のねじ部33aに螺着したナット34を締め付けて、軸部材33に端部リンク部材5を結合する。
【0041】
前記軸受32は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記軸受設置孔31の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部材33の外周に嵌合している。外輪は止め輪35によって抜け止めされている。また、内輪と端部リンク部材5の間にはスペーサ36が介在し、ナット34の締付力が端部リンク部材5およびスペーサ36を介して内輪に伝達されて、軸受32に所定の予圧を付与している。
【0042】
この
提案例では、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の回転対偶部に設けられる軸受32は、外輪が固定で内輪が回転する。この軸受32をリンクハブ2,3に埋め込んだ状態で設けたことにより、パラレルリンク機構1全体の外形を大きくすることなく、リンクハブ2,3の外形を拡大することができる。そのため、リンクハブ2,3を他の部材に取り付けるための取付スペースの確保が容易である。
【0043】
端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部は、端部リンク部材5に固定された軸部材41に、軸受42を介して中央リンク部材7を回転自在に支持している。軸受42は例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、軸受42の内輪(図示せず)が軸部材41の外周に嵌合し、軸受42の外輪(図示せず)が、中央リンク部材7に固定して設けられた軸受ハウジング43の内周に嵌合している。軸部材41は、端部リンク部材5に設けられた軸挿通孔5bと、端部リンク部材5と軸受42間に介在するスペーサ44と、軸受42の内輪とに挿通し、軸部材41のねじ部41aに螺着したナット45を締め付けて、軸部材41に端部リンク部材5を結合する。ナット45の締付力がスペーサ44を介して内輪に伝達されて、軸受42に所定の予圧を付与する。
【0044】
中央リンク部材7は、前記
提案例と同様に、一定厚さ、一定幅で両端が半円形に形成された細長い1枚の金属板を、2箇所の曲がり部7aで板厚方向に折り曲げて両端間が所定の角度γを持つ湾曲形状としてある。曲がり部7aの折り曲げは、板金曲げ加工により行われる。両端部には、内部に前記スペーサ44が配置される貫通孔46が設けられている。中央リンク部材7をこの構成としたことによる効果は、前記実施形態の場合と同様である。
【0045】
この発明の一実施形態を図9〜図11と共に説明する。上記各
提案例は、中央リンク部材7が1つの板材からなるが、
この実施形態では中央リンク部材7が2つ以上の板材
からなる。
図9〜
図11に示すパラレルリンク機構は、
図1〜
図4に示すものに対して、中央リンク部材7を2つの板材からなる構成に変更している。また、
図12、
図13に示すパラレルリンク機構は、
図6〜
図8に示すものに対して、中央リンク部材7を2つの板材からなる構成に変更している。
【0046】
図9〜
図11に示すパラレルリンク機構1の中央リンク部材7は、板面同士を向き合わせて互いに一定間隔を開けて並ぶ第1の板材51および第2の板材52からなり、これら第1および第2の板材51,52の両端間に、軸受53を内蔵した端部リンク部材5が配置される。内側すなわち姿勢変更中心Oに対して近い側に位置する第1の板材51は、板厚方向の曲がり部51aを2箇所有し、外側すなわち姿勢変更中心Oに対して遠い側に位置する第2の板材52は、板厚方向の曲がり部52aを1箇所有する。つまり、第1の板材51の曲がり部51aの数よりも第2の曲がり部52aの数が少ない。曲がり部51a,52aの曲がり方向は、各板材51,52の中間部が内側に突出する方向である。各板材51,52は、例えば金属板からなり、曲がり部51a,52aを板金曲げ加工により折り曲げている。
【0047】
前記軸受53は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が端部リンク部材5の軸受設置孔54の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が中央リンク部材7に固定された回転軸55の外周に嵌合している。回転軸55は、第2の板材52に設けられた貫通孔56、筒状のスペーサ57、軸受53の内輪、筒状のスペーサ58、および第1の板材51に設けられた貫通孔59に挿通される。そして、回転軸55のねじ部55aにナット60を螺着し、回転軸55の大径部55bと前記ナット60とで、板材51,52、軸受53、およびスペーサ57,58を挟み付けることで、軸受53に予圧を付与した状態で、回転軸55に端部リンク部材5,6を連結する。
【0048】
このように、中央リンク部材7を、2つの板材51,52が板面同士を互いに向き合わせて並列に配置した構成とすると、中央リンク部材7の強度を確保しつつ、各板材51,52の板厚を薄くすることができる。それにより、中央リンク部材7を安価に製造できると共に、軽量化を図ることができる。また、2つの板材51,52で回転軸55の両端を支持するため、回転対偶部のモーメント荷重に対する剛性が高くなり、パラレルリンク機構1全体の剛性が向上する。
【0049】
第2の板材52の貫通孔56は、
図11(B)のように、回転軸55(
図10)の直径とほぼ同径の円形であるのに対し、第1の板材51の貫通孔59は、
図11(A)のように、この板材51の長手方向に長い長孔とされている。つまり、第2の板材52の貫通孔56は、この貫通孔56に挿通される回転軸55との間にすきまが生じないタイトな孔であり、第1の板材51の貫通孔59は、この貫通孔59に挿通される回転軸55との間にすきまが生じるルーズな孔である。このような貫通孔56,59としたのは、組立て性を高めるための工夫である。
【0050】
中央リンク部材7の組立て方法を説明する。まず、回転軸55を第2の板材52の貫通孔56に外側から挿通した後、回転軸55に対して内側からスペーサ57、軸受53の内輪、スペーサ58を順に嵌め込む。そして、回転軸55の先端を第1の板材51の貫通孔59に挿通する。中央リンク部材7の両端に設けられる2つの回転軸55は互いに角度を持っているため、回転軸55の先端がスペーサ58よりも大きく突出していると、2つの回転軸55を貫通孔59に挿通することができない。
【0051】
そこで、回転軸55の突出量を少なくした状態で、回転軸55に対して第1の板材51の貫通孔59を位置合わせしてから、回転軸55を進出させて貫通孔59に挿通する。第1の板材51の貫通孔59は長孔であり、前記位置合わせに融通性があるため、回転軸55と貫通孔59の正確な位置合わせをする必要がなく、しかも回転軸55の先端がスペーサ58から少し程度突出しているだけなら、第1の板材51を適宜ずらしたり傾けたりすることで回転軸55を貫通孔59に挿入することができる。最後に、回転軸55の雄ねじ部55aにナット60を螺着して、このナット60を締め付けることで、中央リンク部材7の組立てが完了する。
この方法であると、先端が突出した回転軸55に対して貫通孔59を嵌める際に、目視での位置合わせが可能であり、組立て作業性が良い。タイトな孔である第2の部材52の貫通孔56に回転軸55が挿通されているため、中央リンク部材7と回転軸55の連結部の組立て精度は確保できる。
【0052】
図12、
図13に示すパラレルリンク機構1の中央リンク部材7は、板面同士を向き合わせて互いに一定間隔を開けて並ぶ第1の板材51および第2の板材52と、これら板材51,52の両端間に固定された2つの軸受ハウジング62とからなる。前記同様に、内側に位置する第1の板材51は、板厚方向の曲がり部51aを2箇所有し、外側に位置する第2の板材52は、板厚方向の曲がり部52aを1箇所有する。軸受ハウジング62には、端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部に設けられる回転軸63を回転自在に支持する軸受64が設置されている。この実施形態では、端部リンク部材5も板材からなり、この板材である端部リンク部材5の外径側に中央リンク部材7が配置される。
【0053】
前記軸受64は例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、軸受64の内輪(図示せず)が回転軸63の外周に嵌合し、軸受64の外輪(図示せず)が軸受ハウジング62の内周に嵌合している。回転軸64は、端部リンク部材5に設けられた軸挿通孔5b、筒状のスペーサ65、軸受64の内輪、および筒状のスペーサ66に内径側から挿通され、この回転軸63の頭部63aとねじ部63bに螺着されたナット67とで前記各部品を挟み付けることで、軸受64に予圧を付与した状態で端部リンク部材5に連結される。
【0054】
図14、
図15は、
図9〜
図11のパラレルリンク機構1を用いたリンク作動装置を示す。
図14において、このリンク作動装置70は、パラレルリンク機構1と、このパラレルリンク機構1を支持する土台71と、パラレルリンク機構1を作動させる複数の姿勢変更用アクチュエータ72とで構成される。姿勢変更用アクチュエータ72を動作させることで、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を変更する。土台71と、パラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2との間にはスペーサ73を介在させてある。先端側のリンクハブ3には、エンドエフェクタ74が設置される。
【0055】
図15に示すように、パラレルリンク機構1の3組のリンク機構4のすべてに、基端側の端部リンク部材5を回動させる前記姿勢変更用アクチュエータ72と、この姿勢変更用アクチュエータ72の動作量を基端側の端部リンク部材5に減速して伝達する減速機構81とが設けられている。姿勢変更用アクチュエータ72はロータリアクチュエータ、より詳しくは減速機72a付きのサーボモータであって、モータ固定部材82により土台71に固定されている。減速機構81は、姿勢変更用アクチュエータ72の減速機72aと、歯車式の減速部83とでなる。
【0056】
歯車式の減速部83は、姿勢変更用アクチュエータ72の出力軸72bにカップリング85を介して回転伝達可能に連結された小歯車86と、基端側の端部リンク部材5に固定され前記小歯車86と噛み合う大歯車87とで構成されている。例えば、小歯車86および大歯車87は平歯車であり、大歯車87は、扇形の周面にのみ歯が形成された扇形歯車である。大歯車87は小歯車86よりもピッチ円半径が大きく、姿勢変更用アクチュエータ72の出力軸72bの回転が基端側の端部リンク部材5へ、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶の回転軸回りの回転に減速して伝達される。
【0057】
小歯車86は、歯部の両側に突出する軸部を有し、両軸部のそれぞれが2つの軸受88により回転自在に支持されている。2つの軸受88は、土台71に設置された回転支持部材89に設けられている。前記軸受88は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いても良い。
【0058】
図示例では、歯車式の減速部83に平歯車を使用しているが、その他の機構(例えば、かさ歯車やウォーム機構)でも良い。また、図示例では、大歯車87が基端側の端部リンク部材5と別部材であり、基端側の端部リンク部材5に対してボルト等により着脱可能に取付けられているが、大歯車87は基端側の端部リンク部材5と一体であっても良い。
【0059】
このリンク作動装置70は、3組のリンク機構4のすべてに姿勢変更用アクチュエータ72および減速機構81を設けたことで、パラレルリンク機構1や減速機構81のガタを詰めるように制御することが可能となり、先端側のリンクハブ3の位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置70自体の高剛性化を実現できる。
【0060】
また、減速機構81の歯車式の減速部83は、小歯車86と大歯車87の組合せからなり、例えば10以上の高い減速比を得ることができる。減速比が高いと、エンコーダ等による位置決め分解能が高くなるため、先端側のリンクハブ3の位置決め分解能が向上する。また、低出力の姿勢変更用アクチュエータ72を使用することができる。この実施形態では減速機72a付きの姿勢変更用アクチュエータ72を使用しているが、歯車式の減速部83の減速比が高ければ、減速機無しの姿勢変更用アクチュエータ72を使用することも可能となり、姿勢変更用アクチュエータ72を小型化できる。
【0061】
図16は、
図12、
図13のパラレルリンク機構1を用いたリンク作動装置を示す。このリンク作動装置90は、パラレルリンク機構1と、このパラレルリンク機構1を支持する土台92と、パラレルリンク機構1を作動させる複数の姿勢変更用アクチュエータ93と、これら姿勢変更用アクチュエータ93の動作によりパラレルリンク機構1を作動させるコントローラ94とを備える。姿勢変更用アクチュエータ93を制御する制御装置(図示せず)は、コントローラ94内に設けられていても良く、コントローラ94と別に設けられていても良い。
【0062】
前記土台92は縦長の部材であって、その上面にパラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2が固定されている。土台92の上部の外周にはつば状のアクチュエータ取付台95が設けられ、このアクチュエータ取付台95に前記姿勢変更用アクチュエータ93が垂下状態で取り付けられている。姿勢変更用アクチュエータ93の数は、リンク機構4と同数の3個である。姿勢変更用アクチュエータ93はロータリアクチュエータからなり、その出力軸に取り付けたかさ歯車96と基端側のリンクハブ2の軸部材33に取り付けた扇形のかさ歯車97とが噛み合っている。
なお、この例では、リンク機構4と同数の姿勢変更用アクチュエータ93が設けられているが、3組のリンク機構4のうち少なくとも2組に姿勢変更用アクチュエータ93が設けられていれば、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を確定することができる。
【0063】
このリンク作動装置90は、コントローラ94を操作して各姿勢変更用アクチュエータ93を回転駆動することで、パラレルリンク機構1を作動させる。詳しくは、姿勢変更用アクチュエータ93を回転駆動すると、その回転が一対のかさ歯車96,97を介して軸部材33に伝達されて、基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の角度が変更する。それにより、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の位置および姿勢が決まる。ここでは、かさ歯車96,97を用いて基端側の端部リンク部材5の角度を変更しているが、その他の機構(例えば、平歯車やウォーム機構)でも良い。