(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された超音波振動子から発生する超音波パルスを被検体内に放射し、被検体組織や血流からの反射波を超音波振動子により受信して画像データ等を生成及び表示する装置である。
【0003】
このような超音波診断装置において、超音波が生体に及ぼす指標値として、例えば、MI(mechanical index)値、TI(thermal index)値及びIspta(spatial - peak temporal - average intensity:空間ピーク時間平均強度)値などがある。
【0004】
MI値は、超音波が生体に及ぼす非熱的作用(機械的作用)の安全性を評価する指標値であり、負のピーク音圧を中心周波数の平方根で割った値で定義される。MI値により、体液内に溶け込んでいる気体が超音波による圧力変化で気泡となるなど、生体組織に影響を及ぼすキャビテーションの発生程度を表すことができる。
【0005】
TI値は、超音波が生体に及ぼす熱的作用の安全性を評価する指標値であり、超音波の吸収減衰によって生体組織の温度を1度上昇させる超音波の出力を1として、超音波出力の強さをその比率で表したものである。
【0006】
Ispta値は、音の強さが音場中で最大値をとる点での音の強さの時間的平均値であり、超音波パルスの瞬時強度を時間積分した値(パルス強度積分、PII:pulse - intensity integral)をパルス繰返し周期で平均したときの超音波出力の強度値で定義される。
【0007】
これらの指標値は推奨最大値がガイドラインで示されている。なお、ガイドラインの内容は国により異なる。例えばイギリスの場合、胎児、眼球及び頭蓋スキャンでは、超音波による非熱的作用が大きいことから、他の診断領域よりも低いMI値が推奨最大値(推奨最大MI値)として示されている。また、イギリスの場合、超音波による熱的作用を鑑み、TI値毎に推奨される最大スキャン時間が示されている。ただし、研究目的又は必要な場合に限り、操作者の責任の下、推奨条件以上の生体影響を与えうる条件での検査が認められている。
【0008】
以上のような超音波出力に関する指標値は、検査中に焦点(focus)や周波数等のパラメータの変更により、意図せず高くなる場合がある。
【0009】
そのため、超音波診断装置には、パラメータを変更した場合でも、予め設定した目標MI値を維持するように超音波出力を制御する機能が存在する。この機能は、一般的に、超音波の機械的作用の影響による気泡の破裂を抑えるために、造影検査モードで使用されている。また、造影剤を用いるような特殊な診断か否かといった診断の種類に応じて、予め設定した目標MI値を維持するように超音波出力を制御するか又は目標超音波出力を維持するように超音波出力を制御するかを選択可能な機能も存在する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、各実施形態に係る超音波診断装置について図面を用いて説明する。各実施形態は、超音波出力に関する指標値としてMI値を用いた場合を述べるが、MI値に限らず、TI値、Ispta値などの任意の指標値が同様にして適用可能となっている。ここで、「超音波出力」の用語は、「音響出力」又は「音響パワー」と読み替えてもよい。また、第2の実施形態以降では、先行する実施形態とは略同一の構成要素には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、先行する実施形態とは異なる構成要素について主に説明する。
【0021】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。超音波診断装置1は、超音波プローブ2、装置本体3、送受信部4、Bモード処理部5、ドプラ処理部6、画像生成部7、画像メモリ8、表示制御部9、ディスプレイ10、制御プロセッサ11、内部記憶部12、入力部13、インタフェース部14、MI最大値選択ダイヤル15、MIリミットボタン16及び超音波出力調整ダイヤル17等を備えている。
【0022】
超音波プローブ2は、送受信部4からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する。
【0023】
超音波プローブ2から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ2に受信される。
【0024】
また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0025】
送受信部4は、送信系としてのパルス発生器、遅延回路およびパルサを有している。パルサでは、所定のレート周波数fr[Hz](周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。パルス発生器は、このレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ2に駆動パルスを印加する。
【0026】
また、送受信部4は、受信系としてのプリアンプ、A/D変換器、受信遅延部、加算器等を有している。プリアンプは、超音波プローブ2を介して取り込まれたエコー信号(受信信号)をチャンネル毎に増幅する。受信遅延部は、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、遅延時間が与えられたエコー信号を加算する。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0027】
Bモード処理部5は、検波器及び対数圧縮器等を有している。検波器は、送受信部4からエコー信号を受け取り、包絡線検波処理を実行する。対数圧縮器は、上記検波処理における検波後のエコー信号に対して対数増幅を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。
【0028】
ドプラ処理部6は、送受信部4から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は、画像生成部7等にて所定の処理を受けた後、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてカラー表示される。
【0029】
画像生成部7は、Bモード処理部5及びドプラ処理部6から出力されるデータに基づきBモード画像及びCFM(color flow mapping)モード画像等の超音波画像を生成する。生成された超音波画像は、画像メモリ8に出力される。
【0030】
画像メモリ8は、画像生成部7から出力されたフレーム毎の超音波画像を格納する記憶メモリから成る。この超音波画像は、例えば診断の後に読み出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能である。
【0031】
表示制御部9は、画像メモリ8から超音波画像を読み出すとともに、読み出した画像と文字情報等とを合成した診断画面を生成し、ディスプレイ10に表示させる。なお、超音波プローブ2を所定時間幅ずつ駆動して超音波の送受信を行う際に、表示制御部9は、画像メモリ8に記憶された各モード画像の同一フレームの超音波画像(被検体の断層像)を同一画面上にレイアウトし、これに文字情報等を合成した診断画面を生成して、ディスプレイ10に表示させる。
【0032】
ディスプレイ10は、例えばLCD(liquid crystal display)であり、表示制御部9に制御されて上記診断画面等を表示する。
【0033】
入力部13は、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体3に取り込むための各種スイッチ、ボタン、トラックボールの他、マウス、キーボード等を有している。
【0034】
インタフェース部14は、各種の入出力デバイス、通信ネットワーク、及び外部記憶装置等を装置本体3に接続するためのインタフェースである。超音波診断装置1において得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェース部14を介して上記入出力デバイス、通信ネットワークに接続された他の装置、及び上記外部記憶装置に出力可能である。
【0035】
MI最大値選択ダイヤル15は、内部記憶部12内のプリセット情報に書込まれるスキャン部位別のMI値の最大値を操作者の操作によって調整するものである。
【0036】
MIリミットボタン16は、操作者の操作によって制御プロセッサ11による超音波出力制御機能の入(オン)/切(オフ)を制御するものであり、例えば、TCS(touch command screen)又はディスプレイ10上に表示される。但し、MIリミットボタン16は、ハードウェアキーとして設けられてもよい。超音波出力制御機能は、超音波出力抑制機能と呼んでもよい。
【0037】
超音波出力調整ダイヤル17は、超音波出力を操作者の操作によって調整するものである。
【0038】
内部記憶部12には、各種スキャンシーケンスや超音波の送信条件等のデータ、制御プロセッサ11に種々の機能を実現させるための制御プログラム、システム情報、プリセット情報、患者情報及び操作者識別情報等が記憶されている。プリセット情報は、例えば
図2に示すプリセット選択画面G1により、腹部(abdomen)、胎児(OB:産科、fetal heart:胎児心臓)、頭蓋(TCD)等のスキャン部位別に、選択的に設定可能となっている。このプリセット情報は、通常のプリセット情報の他に、被検体のスキャン部位別に、超音波出力に関する指標値の最大値を含んでいる。
【0039】
通常のプリセット情報は、装置動作の初期状態の条件項目の値を含んでおり、条件項目には操作者が調整可能な調整項目が含まれている。調整項目は、検査モード、スキャンモード、スキャン条件、信号処理条件、表示条件等に関する項目である。
【0040】
患者情報は、例えば、
図3に示す患者情報登録画面G2内の項目と値を含む情報であり、患者識別情報(氏名、ID、誕生日)、スキャン部位(図中、「Exam Type」)等を含んでいる。
【0041】
操作者識別情報としては、例えば、操作者IDや操作者名が挙げられる。
【0042】
制御プロセッサ11は、超音波診断装置1の各部の動作を制御する。また、制御プロセッサ11は、内部記憶部12に記憶された制御プログラムを実行することにより、選択機能及び超音波出力制御機能を実現する。選択機能は、被検体のスキャン部位を任意に選択可能な機能であり、例えば、被検体の所望とする部位に関する選択肢を任意に選択可能としている。超音波出力制御機能は、当該選択機能により選択されたスキャン部位に対応する指標値の最大値を内部記憶部12から取得し、当該指標値の最大値に基づいて超音波出力を制御する機能である。
【0043】
超音波出力を制御する方法としては、送信周波数や、バースト波数等の送信条件を変更する以外に、超音波プローブ2に印加する電圧又は電流を増減させる方法が可能である。「超音波プローブ2に印加する電圧」は、「送信電圧」又は「駆動電圧」と呼んでもよい。本明細書では、送信条件を変更するのではなく、送信電圧を変更することで、超音波出力の大きさを変更する方法を用いている。
【0044】
次に、以上のように構成された超音波診断装置1の動作を
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0045】
超音波診断装置1では、操作者による入力部13の操作等によって起動すると(ST1)、操作者による入力部13の操作により、患者IDが入力される。制御プロセッサ11は、入力された患者IDに基づいて内部記憶部12を検索し、得られた患者情報に基いて患者情報登録画面G2をディスプレイ10に表示させる。操作者は、患者情報登録画面G2に表示されたスキャン部位“Abdomen”(腹部)を認識する。プリセット選択画面G1では、複数のプリセット情報からスキャン部位に応じたプリセット情報を選択可能である。
【0046】
超音波診断装置1では、プリセット選択画面G1内の選択ボタンが操作者にタッチ操作されると、制御プロセッサ11が、当該選択ボタンが示すスキャン部位を選択する。また、制御プロセッサ11は、当該選択されたスキャン部位に応じたプリセット情報を選択し(ST2)、当該プリセット情報を内部記憶部12から読み出す。
【0047】
次に、超音波診断装置1では、操作者の操作により、スキャンを開始する(ST3)。
【0048】
スキャン実行中、MI最大値選択ダイヤル15の操作により、スキャン部位別に所望のMI値の最大値が選択され(ST4)、図示しない保存ボタンが押し操作されると、制御プロセッサ11は、当該選択されたMI値の最大値をスキャン部位別にプリセット情報に保存する(ST5)。このプリセット情報は、内部記憶部12に更新保存される。
【0049】
以下、超音波診断装置1では、超音波プローブ2を駆動して患者(被検体)に超音波を送受信し、得られた受信信号に基づき、患者のスキャン部位の断層像を求めてディスプレイ10に表示する。
【0050】
このとき、制御プロセッサ11は、選択されたスキャン部位に対応するMI値の最大値(ステップST5で保存したMI値)を内部記憶部12から取得し、当該MI値の最大値を超えないように超音波出力を制御し、スキャンを実行する。
【0051】
以上が本実施形態での主な操作の流れである。
【0052】
本実施形態では、上述の装置構成を用いることにより、被検体のスキャン部位別にプリセットを作成することで、超音波出力に関する指標値(例、MI値)の最大値を記憶し、スキャン部位を選択すると、当該選択したスキャン部位に対応する指標値の最大値を取得し、当該指標値の最大値を超えないように超音波出力を制御する。従って、スキャンモードによらず、超音波による生体影響をスキャン部位別の指標値の最大値以下に抑制し、安全性を維持することができる。なお、ステップST5では、ステップST4で選択されたMI値の最大値を超音波プローブの種類別にプリセット情報に保存してもよい。また、メーカーから出荷する際に出荷国別に異なる超音波出力に関する指標値の最大値を保存しても良い。すなわち、MI値の最大値は、スキャン部位の他に、超音波プローブの種類に基づいて定めた値としてもよく、超音波診断装置の出荷国(の規制値)に基づいて定めた値としてもよい。選択された指標値(例、MI値)の最大値をスキャン部位別、超音波プローブの種類別及び出荷国別に記憶する場合、前述した効果に加え、超音波による生体影響を超音波プローブの種類別及び出荷国別の指標値の最大値以下に抑制することで各操作者のニーズに合った条件で安心して検査を実施することが可能となる。
【0053】
また、制御プロセッサ11は、全てのスキャンモードにおいて、指標値の最大値を超えないように超音波出力を制御してもよい。すなわち、指標値の最大値は、全サブモード間で共通とし、一度、プリセット情報を作成した後には、全てのスキャン方法(Bモード、カラーモード、パルスドプラモード等)に適用することが可能である。
【0054】
次に、操作者の判断の下、プリセット情報内のMI値の最大値を超えるMI値でスキャンをする場合に関し、プリセット情報内のMI値の最大値よりも上の最大値を選択する方法について説明する。例えば、超音波出力に関する指標値の最大値に対し、国の基準が臨床用と研究用とで異なる場合や、プリセット情報に保存してある最大値では診断対象(例、胎児)が見えない場合に、以下のような操作により対応することも可能である。
【0055】
スキャン実行中、MI最大値選択ダイヤル15の操作により、プリセット情報内のMI値の最大値よりも上の最大値が選択される。但し、保存ボタンは操作されない。
【0056】
これにより、超音波出力調整ダイヤル17の操作により、プリセット情報内のMI値の最大値を超える超音波出力で患者の対象部位をスキャンすることができる。但し、このときの超音波出力は、MI最大値選択ダイヤル15の操作により選択された最大値を超えないように、制御プロセッサ11によって制御される。
【0057】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る超音波診断装置について
図1を参照しながら説明する。
【0058】
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、超音波診断装置1の制御プロセッサ11が、制御プログラムの実行により、第1表示機能(f1)、調整機能(f2)、第1切替機能(f3)及び書込機能(f4)を実現する構成となっている。
【0059】
(f1)超音波出力に関する現在の指標値を表示制御部9を介してディスプレイ10に表示する第1表示機能。第1表示機能、表示制御部9及びディスプレイ10は、第1表示手段を構成している。なお、第1表示機能(f1)は、(関連する機能(f2)〜(f4)を実施しない場合でも)単独で各実施形態に実施してもよい。
【0060】
(f2)超音波出力制御機能がオフ状態のとき、超音波出力調整ダイヤル17に対する操作者の操作に応じて超音波出力を調整する調整機能。超音波出力調整ダイヤル17及び調整機能(f2)は、調整手段を構成している。調整手段としては、超音波出力調整ダイヤル17に限らず、任意の入力インタフェースが使用可能となっている。
【0061】
(f3)MIリミットボタン16に対する操作者の操作により、超音波出力制御機能のオン状態及びオフ状態を互いに切り替える第1切替機能。MIリミットボタン16及び第1切替機能(f3)は、第1切替手段を構成している。第1切替手段としては、MIリミットボタン16に限らず、任意の入力インタフェースが使用可能となっている。
【0062】
(f4)第1切替機能により超音波出力制御機能がオン状態に切り替えられると、当該調整された超音波出力に応じて表示中の現在の指標値を最大値として内部記憶部12内のプリセット情報(又はシステム情報)に書き込む書込機能。
【0063】
ここで、調整機能(f2)及び第1切替機能(f3)は、操作者の操作に応じて、書込機能(f4)を介して内部記憶部12内の最大値を現在の指標値に変更可能である。
【0064】
例えば、超音波出力に関する指標値の最大値に対し、国の基準が臨床用と研究用とで異なる場合や、現在の最大値では超音波診断の診断対象が見えない場合がある。
【0065】
これらの場合でも、超音波診断装置1は、調整機能(f2)及び第1切替機能(f3)の操作に応じて、内部記憶部12内の(超音波出力に関する)最大値を変更する構成により、対応することができる。
【0066】
また、制御プロセッサ11は、制御プログラムの実行により、以下の各機能(f5)〜(f10)を実現してもよい。
【0067】
(f5)ディスプレイ10に表示された現在の指標値と、内部記憶部12内の(スキャン部位別の)最大値とを比較する比較機能。
【0068】
(f6)当該比較した結果、当該現在の指標値が当該最大値以上のとき、操作者に警告を出力する警告機能。警告には、色表示、音声出力、メッセージ表示又はその組合せが適宜、使用可能となっている。例えば、警告はディスプレイ10に表示出力してもよく、図示しないブザーから警告音を出力してもよく、図示しないスピーカから警告音声を出力してもよい。
【0069】
(f7)図示しない警告入/切ボタンに対する操作者の操作により、警告機能(f6)のオン状態及びオフ状態を互いに切り替える第2切替機能。警告入/切ボタン及び第2切替機能(f7)は、第2切替手段を構成している。第2切替手段としては、警告入/切ボタンに限らず、任意の入力インタフェースが使用可能となっている。
【0070】
(f8)プリセット起動時に、内部記憶部12内の(スキャン部位別の)最大値の確認を促す確認メッセージを、表示制御部9を介してディスプレイ10に表示する第2表示機能。第2表示機能、表示制御部9及びディスプレイ10は、第2表示手段を構成している。
【0071】
(f9)図示しない確認メッセージ入/切ボタンに対する操作者の操作により、第2表示機能のオン状態及びオフ状態を互いに切り替える第3切替機能。確認メッセージ入/切ボタン及び第3切替機能(f9)は
、切替手段を構成している
。切替手段としては、確認メッセージ入/切ボタンに限らず、任意の入力インタフェースが使用可能となっている。
【0072】
(f10)内部記憶部12内のスキャン部位別の最大値が、プリセットされている最大値以下であるかどうかを、表示制御部9を介してディスプレイ10に表示する第3表示機能。ここで、「プリセットされている最大値」は、「プリセットされているスキャン部位別の推奨最大値」と読み替えてもよい。
【0073】
但し、各機能(f1)〜(f10)は任意の付加的事項であり、省略可能である。
【0074】
次に、以上のように構成された超音波診断装置の動作を
図5のフローチャートにより説明する。
【0075】
始めに、超音波診断装置1は、前述したステップST1〜ST3と同様にステップST11〜ST13を実行し、スキャンを開始する。ここで、超音波診断装置1では、制御プロセッサ11の超音波制御機能がオフ状態であるとする。また、超音波診断装置1では、制御プロセッサ11が、超音波出力に関する現在のMI値を表示制御部9を介してディスプレイ10に表示するとする。
【0076】
超音波診断装置1では、超音波出力調整ダイヤル17に対する操作者の操作に応じて超音波出力を調整し、スキャン部位別に、表示中のMI値が所望のMI値の最大値となる状態まで超音波出力を下げる(ST14)。これにより、現在表示中のMI値が、スキャン部位に応じた所望の最大値となる。
【0077】
超音波診断装置1では、制御プロセッサ11が、MIリミットボタン16に対する操作者の操作により、超音波出力制御機能のオフ状態をオン状態に切り替える(ST15)。
【0078】
超音波診断装置1では、超音波出力制御機能がオン状態に切り替えられると、当該調整された超音波出力に応じて表示中の現在のMI値を最大値として内部記憶部12内のプリセット情報に書き込む(ST16)。このように、超音波診断装置1では、操作者の操作に応じて、内部記憶部12に記憶されたプリセット情報内のMI値の最大値を現在の最大値に変更することができる。
【0079】
次に、第1の実施形態で述べたとおり、ある目的のために、操作者の判断の下、プリセット情報内のMI値の最大値を超えるMI値でスキャンをする場合に関し、プリセット情報内のMI値の最大値よりも上の最大値を選択する方法について説明する。
【0080】
スキャン実行中、MIリミットボタン16に対する操作者の操作により、制御プロセッサ11が、超音波出力制御機能のオン状態をオフ状態に切り替える。この状態で、再度、ステップST14〜ST16を実行することにより、プリセット情報内のMI値の最大値よりも上の最大値を選択し、当該選択した最大値にプリセット情報を変更することができる。
【0081】
上述したように本実施形態によれば、超音波出力に関する現在の指標値を表示し、超音波出力制御機能がオフ状態のとき、操作者の操作に応じて超音波出力を調整し、操作者の操作により、超音波出力制御機能のオン状態及びオフ状態を互いに切り替え、当該超音波出力制御機能がオン状態に切り替えられると、当該調整された超音波出力に応じて表示中の現在の指標値を最大値として書き込む。すなわち、制御プロセッサ11の調整機能(f2)及び第1切替機能(f3)は、操作者の操作に応じて、書込機能(f4)を介して内部記憶部12内の指標値の最大値を現在の指標値に変更する。
【0082】
従って、本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、スキャン部位別に、超音波出力に関する指標値の最大値を所望の値に変更することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、比較機能(f5)及び警告機能(f6)により、表示された現在のMI値と、プリセット情報内のMI値の最大値とを比較し、現在のMI値が当該最大値以上のとき、操作者に警告を出力する場合、検査中に誤って超音波出力の高い生体作用を患者に与えることを防止できる。また、操作者の操作により、第2切替機能(f7)が警告のオン状態及びオフ状態を切り替える構成により、研究用などの正当な用途において、適宜、警告を停止できるため、不要な警告から操作者を保護することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、第2表示機能(f8)により、プリセット起動時に、スキャン部位別の指標値の最大値の確認を促す確認メッセージを表示する場合、検査中に誤って超音波出力の高い生体作用を患者に与えることを防止できる。また、操作者の操作により、第3切替機能(f9)が確認メッセージの表示のオン状態及びオフ状態を切り替える構成により、前述同様に、研究用などの正当な用途において、適宜、不要な確認メッセージから操作者を保護することができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、第3表示機能(f10)により、スキャン部位別の指標値の最大値が、プリセットされている(スキャン部位別の推奨)最大値以下であることを表示する場合、スキャン部位別の指標値の最大値の設定が、安全な範囲内にあることを操作者が確認できる。
【0086】
また、制御プロセッサ11は、装置起動後からスキャン終了までの所望の期間中、プリセット情報内のスキャン部位別の指標値の最大値が、スキャン部位別の推奨最大値以下であることを、表示制御部9を介してディスプレイ10に表示できる。この推奨最大値以下の表示に関する事項は、以下の各実施形態でも同様である。
【0087】
また、制御プロセッサ11は、スキャン開始からの経過時間を、表示制御部9を介してディスプレイ10に表示できる。このとき、熱的作用に関するTI値別にスキャン時間の推奨があることから、推奨されるスキャン時間と、スキャン開始からの経過時間とを並べて表示してもよい。経過時間の表示に関する事項は、以下の各実施形態でも同様である。
【0088】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係る超音波診断装置について
図1を参照しながら説明する。
【0089】
本実施形態は、第1又は第2の実施形態の変形例であり、スキャン開始後の検査中にMI値の最大値を変更する必要は無いが、スキャン部位別に操作者がMI値の最大値を設定する場合に対応している。例えば、医療機関内で、国が定める基準とは異なる超音波出力に関する規制値の最大値を使用する場合や、各国の超音波安全性に関する基準が、遵守項目となり、個々の操作者が指標値の最大値をプリセット情報に入力する機能は不要となる場合が本実施形態の適用例である。具体的には本実施形態では、プリセット情報よりも上位のシステム情報に指標値の最大値を保存し、操作者毎のプリセット情報を一括して編集する。
【0090】
また、本実施形態では、超音波診断装置1の制御プロセッサ11が、制御プログラムの実行により、操作者識別情報の入力を促す機能(f11)と、操作許可機能(f12)とを実現する構成になっている。
【0091】
(f11)調整機能(f2)及び第1切替機能(f3)を操作する操作者に対し、当該操作者の操作者識別情報の入力を促す機能。
【0092】
(f12)入力部13から入力された操作者識別情報と、内部記憶部12に記憶された操作者識別情報とを照合し、両者が一致したとき、調整機能(f2)及び第1切替機能(f3)の操作を許可する操作許可機能。
【0093】
但し、各機能(f11)〜(f12)は任意の付加的事項であり、省略可能である。
【0094】
次に、以上のように構成された超音波診断装置の動作を
図6のフローチャートにより説明する。
【0095】
超音波診断装置1では、操作者による入力部13の操作等によって起動すると(ST21)、操作者による入力部13の選択操作により、システム情報の入力画面の表示が選択される(ST22)。
【0096】
制御プロセッサ11は、この選択に応じて操作者認証のために、編集権限のある操作者の操作者識別情報の入力を促すメッセージを表示制御部9を介してディスプレイ10に表示させる。また、超音波診断装置1では、操作者の操作により入力部13等から操作者識別情報が入力される。
【0097】
制御プロセッサ11は、入力された操作者識別情報と、内部記憶部12内の操作者識別情報とを照合する。
【0098】
照合の結果、両者が一致したときには、制御プロセッサ11は、超音波出力調整ダイヤル17、MIリミットボタン16及びMI最大値選択ダイヤル15の操作を許可すると共に、システム情報の入力画面を表示制御部9を介してディスプレイに表示させる。
【0099】
システム情報の入力画面の表示中、超音波診断装置1では、操作者による入力部13等の操作により、制御プロセッサ11が、システム情報を編集し、編集後のシステム情報を内部記憶部12に保存する。このとき、制御プロセッサ11は、システム情報内のスキャン部位別に、超音波出力に関するMI値の最大値を編集及び保存する(ST23)。なお、システム情報がスキャン部位別、超音波プローブの種類別及び出荷国別に、超音波出力に関するMI値の最大値を含む場合には、スキャン部位別、超音波プローブの種類別及び出荷国別に、当該最大値が編集及び保存される。
【0100】
以下、超音波診断装置1では、操作者の操作により、操作者毎のプリセット情報に基づき、スキャンを開始する。
【0101】
スキャンの実行中、超音波診断装置1では、患者に超音波を送受信し、得られた受信信号に基づき、患者のスキャン部位の断層像を求めてディスプレイ10に表示する。
【0102】
このとき、制御プロセッサ11は、プリセット情報内のMI値の最大値を超えないように超音波出力を制御する。
【0103】
以上が本実施形態を用いた場合の操作の一連の流れである。
【0104】
本実施形態では、システム情報においてスキャン部位別に、超音波出力に関する指標値(例、MI値)の最大値を編集及び保存する構成により、第1又は第2の実施形態の効果に加え、操作者毎のプリセット情報を一括して編集できる。このシステム情報は、プリセット情報よりも上位の設定情報である。つまり、本実施形態では、システム情報として与えられている情報はプリセット情報に自動的に反映されるため、個々の操作者がプリセット情報内の指標値の最大値を調整する必要がない。更に、本構成を用いることで、スキャン部位や操作者毎に異なる超音波出力に関する規制値の最大値を設定したい場合には、システム情報で指定されている超音波出力に関する規制値の最大値以下の範囲で、プリセット毎に任意の最大値を含むことも可能である。
【0105】
従って、指標値の最大値として所望のMI値をシステム情報に設定した場合、出荷時に用意されているプリセット情報内のMI値の最大値がシステム情報に設定した所望のMI値に自動的に変更された状態となる。このため、超音波による生体への影響を抑制するためだけにMI値の最大値をプリセット情報に書込む必要がなくなる。なお、プリセット情報は、特に変更する必要は無いが、第1又は第2の実施形態と同様にして変更してもよい。システム情報(又はプリセット情報)においてMI値の最大値を変更する操作は、全操作者に許可してもよく、編集権限のある操作者だけに許可してもよい。本実施形態では、編集権限のある操作者だけに許可する場合を説明している。
【0106】
この場合、入力された操作者識別情報と、内部記憶部12内の操作者識別情報とを照合し、両者が一致したときには、操作者に編集権限のあることを認識し、超音波出力調整ダイヤル17、MIリミットボタン16及びMI最大値選択ダイヤル15の操作を許可する。これにより、編集権限のある操作者のみが超音波出力の指標値の最大値を変更することができる。
【0107】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態に係る超音波診断装置について
図1を参照しながら説明する。
【0108】
本実施形態は、第1の実施形態の具体例であり、操作者にMI値の最大値の編集権限を与えず、装置出荷時にスキャン部位別にMI値の最大値を設定する場合に対応している。
【0109】
具体的には例えば、超音波診断装置1は、予め装置メーカのみが書込み可能な内部情報を内部記憶部12に記憶した構成となっている。内部情報は、システム情報よりも上位の設定情報であり、スキャン部位別、超音波プローブの種類別及び出荷国別に、超音波出力に関する指標値の最大値を含んでいる。
【0110】
以上のような構成によれば、装置メーカが、操作者にMI値の最大値の編集権限を与えず、装置出荷時にスキャン部位別にMI値の最大値を内部情報に設定することができる。
【0111】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、被検体のスキャン部位別に、超音波出力に関する指標値(例、MI値)の最大値を記憶し、当該指標値の最大値を超えないように超音波出力を制御する。
【0112】
これにより、スキャンモードによらず、超音波による生体影響をスキャン部位別の指標値の最大値以下に抑制し、安全性を維持することができる。
【0113】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。