特許第6396089号(P6396089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396089
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20180913BHJP
【FI】
   A63B53/04 A
   A63B53/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-125971(P2014-125971)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-2401(P2016-2401A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591002382
【氏名又は名称】株式会社遠藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100106770
【弁理士】
【氏名又は名称】円城寺 貞夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 光信
(72)【発明者】
【氏名】下妻 朗
(72)【発明者】
【氏名】笠原 信行
(72)【発明者】
【氏名】塚田 大輔
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−200339(JP,A)
【文献】 特開2011−136110(JP,A)
【文献】 特開平10−024129(JP,A)
【文献】 特開2010−029590(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0177881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に接地面を有するソール部、上部にクラウン部、及びシャフト接続部であるホーゼル部とからなるボディ部と、
前記ボディ部に溶接されボールを打撃するための打球面を有するフェース部とからなり、全体が鍛造で成形される金属製中空クラブヘッドを有するゴルフクラブにおいて、
前記ヘッドがフリー状態でフェース部を叩いた時のピーク周波数と、他の二箇所を拘束して、前記ソール部、クラウン部及びフェース部の各々を叩いた時のピーク周波数が3800Hzから4700Hzの範囲内で、かつ、±4%以内にほぼ一致するように、前記ソール部の底面の内面にリブを形成して
前記リブの位置、長さ、高さ、厚さ、及び材質のうちの少なくとも一つを変化させて、前記ソール部の前記ピーク周波数を目標とする周波数に合わせ、
ヘッドスピードが40m/sで打球した時の残響音の長さが40ms以上である
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフクラブにおいて、
前記ヘッドがフリー状態でフェース部を叩いた時の前記ピーク周波数、及び、他の二箇所を拘束して、前記ソール部、前記クラウン部及び前記フェース部の各々を叩いた時のピーク周波数の内、前記ソール部の前記ピーク周波数が他の前記ピーク周波数より低い場合、前記ソール部の前記ピーク周波数を高くするために、前記リブを形成する
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴルフクラブにおいて、
前記ソール部及び前記クラウン部の曲率、形状、板厚、材質、及びケミカルミーリングデザインのうちの少なくとも一つを変化させて、前記ソール部及び前記クラウン部のピーク周波数を目標とする周波数に合わせる
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項4】
請求項に記載のゴルフクラブにおいて、
前記残響音の長さは、残響音波形が環境音の波形になるまでの時間である
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルウッドのゴルフクラブに関する。さらに詳しくは、クラブヘッド全体が鍛造で成形された金属製中空クラブヘッドであって、打球音が好ましく残響時間が長いゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
全体が鍛造で成形された金属製中空クラブヘッドは、ゴルフボールを打撃する際の反発特性を向上させるために各部の肉厚を薄くし、しかもクラブヘッドの体積を大きくしている。そのため、打球音が低く、かつ大きくなる傾向になる。このような打球音は多くのゴルファーにとって好まれない音質となっている。人間の聴覚の特性上、一次共振周波数が4000Hz以上の打球音は、ゴルファーにとって心地良いものと評価され、3000Hz以下の打球音はゴルファーにとって心地良いものとは評価され難い。また打球音の残響時間は、長い方がゴルファーにとって心地良いものと評価され、短くなるほどゴルファーにとって心地良いものとは評価され難い。これに対して、全体が鋳造製のクラブヘッドは、ヘッドの内部にリブを配置することが比較的容易なため、ゴルファーにとって心地良い4000Hz以上の打球音を出すことができ、残響時間も長くすることができる。
【0003】
打球音を改善するために、ソール部内面にリブを形成して剛性を変化させた金属製中空クラブヘッドがある(特許文献1)。しかし、特許文献1の金属製中空クラブヘッドは、フェース部は鍛造であるが、フェース部以外の部分は鋳造の一体成形であって、クラブヘッド全体が鍛造で形成された金属製中空クラブヘッドに関するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−204604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、全体が鍛造で成形された金属製中空クラブヘッドで、打球音が心地良く打球音の残響時間を長くすることを可能にしたゴルフクラブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は以下の手段によって解決される。
すなわち、本発明1のゴルフクラブは、
下部に接地面を有するソール部、上部にクラウン部、及びシャフト接続部であるホーゼル部とからなるボディ部と、
前記ボディ部に溶接されボールを打撃するための打球面を有するフェース部とからなり、全体が鍛造で成形される金属製中空クラブヘッドを有するゴルフクラブにおいて、
前記ヘッドがフリー状態でフェース部を叩いた時のピーク周波数と、他の二箇所を拘束して、前記ソール部、クラウン部及びフェース部の各々を叩いた時のピーク周波数が3800Hzから4700Hzの範囲内で、かつ、±4%以内にほぼ一致するように、前記ソール部の底面の内面にリブを形成して
前記リブの位置、長さ、高さ、厚さ、及び材質のうちの少なくとも一つを変化させて、前記ソール部の前記ピーク周波数を目標とする周波数に合わせ、
ヘッドスピードが40m/sで打球した時の残響音の長さが40ms以上であることを特徴とする。
【0007】
本発明2のゴルフクラブは、本発明1において、前記ヘッドがフリー状態でフェース部を叩いた時の前記ピーク周波数、及び、他の二箇所を拘束して、前記ソール部、前記クラウン部及び前記フェース部の各々を叩いた時のピーク周波数の内、前記ソール部の前記ピーク周波数が他の前記ピーク周波数より低い場合、前記ソール部の前記ピーク周波数を高くするために、前記リブを形成することを特徴とする。
【0009】
本発明のゴルフクラブは、本発明1又は2において、前記ソール部及び前記クラウン部の曲率、形状、板厚、材質、及びケミカルミーリングデザインのうちの少なくとも一つを変化させて、前記ソール部及び前記クラウン部のピーク周波数を目標とする周波数に合わせることを特徴とする。
【0010】
本発明のゴルフクラブは、本発明において、前記残響音の長さは、残響音波形が環境音の波形になるまでの時間であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴルフクラブは、ソール部、クラウン部及びフェース部の各々のピーク周波数を測定して目標とする周波数になるようにソール部、クラウン部及びフェース部の各々の形状や寸法を求めることができるため、打球音が心地良く打球音の残響時間を長くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のゴルフクラブを示す全体斜視図である。
図2図2は、図1の分解斜視図である。
図3図3は、図1のヘッドの部品図を示し、(c)は平面図、(a)は(c)からクラウン部を取り外した状態を示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図である。
図4図4は、リブ無しのヘッドの打球音の周波数波形を示すグラフであり、(a)はヘッドがフリー状態でフェース部を叩いた時の通常の周波数波形を示すグラフ、(b)は他の二箇所を拘束してフェース部を叩いた時のフェース部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(c)は他の二箇所を拘束してクラウン部を叩いた時のクラウン部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(d)は他の二箇所を拘束してソール部を叩いた時のソール部だけの音の周波数波形を示すグラフである。
図5図5は、リブ高さHが5mmのヘッドの打球音の周波数波形を示すグラフであり、(a)はヘッドがフリー状態でフェース部を叩いた時の通常の周波数波形を示すグラフ、(b)は他の二箇所を拘束してフェース部を叩いた時のフェース部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(c)は他の二箇所を拘束してクラウン部を叩いた時のクラウン部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(d)は他の二箇所を拘束してソール部を叩いた時のソール部だけの音の周波数波形を示すグラフである。
図6図6は、リブ高さHが8.5mmのヘッドの打球音の周波数波形を示すグラフであり、(a)はヘッドがフリー状態でフェース部を叩いた時の通常の周波数波形を示すグラフ、(b)は他の二箇所を拘束してフェース部を叩いた時のフェース部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(c)は他の二箇所を拘束してクラウン部を叩いた時のクラウン部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(d)は他の二箇所を拘束してソール部を叩いた時のソール部だけの音の周波数波形を示すグラフである。
図7図7は、鋳造製でリブが有る従来のヘッドの打球音の周波数波形を示すグラフであり、(a)はヘッドがフリー状態でフェース部を叩いた時の通常の周波数波形を示すグラフ、(b)は他の二箇所を拘束してフェース部を叩いた時のフェース部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(c)は他の二箇所を拘束してクラウン部を叩いた時のクラウン部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(d)は他の二箇所を拘束してソール部を叩いた時のソール部だけの音の周波数波形を示すグラフである。
図8図8は、ヘッドスピードが40m/sで打球した時の残響音の音圧振動波形を示すグラフであり、(a)はリブ無しのヘッドの音圧振動波形を示すグラフ、(b)はリブ高さHが5mmのヘッドの音圧振動波形を示すグラフである。
図9図9は、ヘッドスピードが40m/sで打球した時の残響音の音圧振動波形を示すグラフであり、(a)はリブ高さHが8.5mmのヘッドの音圧振動波形を示すグラフ、(b)は鋳造製でリブが有る従来のヘッドの音圧振動波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明のゴルフクラブを示す全体斜視図、図2図1の分解斜視図、図3図1のヘッドの部品図を示し、(c)は平面図、(a)は(c)からクラウン部を取り外した状態を示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図である。図1から図3に示すヘッド1は、クラブヘッド全体が鍛造で成形された金属製中空クラブヘッドである。
【0014】
ヘッド1には、正面にボールを打撃するための打球面を有するフェース部2、シャフト側にシャフト接続部であるホーゼル部3、上部にクラウン部4、地面に接する下部にソール部5が形成され、ホーゼル部3には、シャフト6が挿入されて接続されている。フェース部2、ホーゼル部3、クラウン部4、ソール部5はチタン合金(神戸製鋼所の規格ではKS100で公称組成がTi−Fe−O)の定尺の板材をプレス成形して形成され、各々の縁部を溶接して一体的に形成され、中空のヘッド1を形成している。ソール部5は、ヒール51、トウ52、バック53、底面54を有し、クラウン部4、ホーゼル部3に溶接されて、正面が開口した容器状のボディ部を形成している。
【0015】
ホーゼル部3は、管状で、下部に円盤状の鍔部31を有し、鍔部31の上部に円筒状部32を鍔部31と一体的に有している。クラウン部4には、ヒール51側の端部に円弧状の切欠き部41が形成され、ホーゼル部3の鍔部31が、切欠き部41とソール部5の上端部に溶接されている。
【0016】
図3に示すように、本発明の実施の形態のヘッド1の外径寸法は、フェース部2から背面までの長さAが111mm、ヒール51からトウ52までの長さCが104mm、ソール部5からクラウン部4までの長さBが58mmである。ソール部5の底面54の内面には、平板状のリブ7が溶接して一体的に形成されている。リブ7はフェース部2に平行で、トウ52からヒール51に向かって長さが85mmに形成されている。リブ7はフェース部2から34mm離れた位置に形成され、リブ7の厚さは1mmである。リブ7の高さHは、5mmと8.5mmの二種類を作製し、打球音の周波数波形と残響音の音圧振動波形を測定した。また、リブ7が無いヘッド1についても打球音の周波数波形と残響音の音圧振動波形を測定した。
【0017】
打球音が心地良いヘッド1の形状や寸法を求めるために、打球音の周波数波形の測定を次のようにして行った。すなわち、ヘッド1のフェース部2、クラウン部4、ソール部5の三箇所を、棒の先に取り付けたゴルフボールで軽く叩き、その音をマイクロフォンで収録し、収録したデータをFFT(高速フーリエ変換)にかけて周波数波形を確認した。
【0018】
より具体的には、ヘッド1をフリー状態にしてフェース部2の中心を叩いた時の周波数波形を測定する。また、他の二箇所を手で押さえるなどして拘束して鳴らないようにし、ソール部5、クラウン部4及びフェース部2の各々を叩いた時の周波数波形を測定する。
図4は、図3のリブ7が無いヘッド1の打球音の周波数波形を示すグラフであり、(a)はヘッド1がフリー状態でフェース部2を叩いた時の通常の周波数波形を示すグラフ、(b)は他の二箇所を拘束してフェース部2を叩いた時のフェース部2だけの音の周波数波形を示すグラフ、(c)は他の二箇所を拘束してクラウン部4を叩いた時のクラウン部4だけの音の周波数波形を示すグラフ、(d)は他の二箇所を拘束してソール部5を叩いた時のソール部5だけの音の周波数波形を示すグラフであり、横軸が周波数(KHz)、縦軸が音圧(dB)である。
【0019】
すなわち、ソール部5、クラウン部4及びフェース部2の各々の周波数波形を個別に測定し、ソール部5、クラウン部4及びフェース部2の各々のピーク周波数(最も音圧レベルの高い周波数)が4000Hz以上の周波数でほぼ一致するように、ソール部5、クラウン部4及びフェース部2の各々の形状や寸法等を変更し、最も適切な各々の形状や寸法等を求める。このようにしてヘッド1を作製すれば、ヘッド1がフリー状態でフェース部2を叩いた時の通常のピーク周波数が、4000Hz以上の周波数で強く共振し、打球音が心地良く、打球音の残響時間を長くすることが可能となる。
【0020】
図4に示すようにリブ7が無いヘッド1は、(a)の通常のピーク周波数が4515Hz、(b)のフェース部2だけのピーク周波数が4590Hz、(c)のクラウン部4だけのピーク周波数が4685Hz、(d)のソール部5だけのピーク周波数が3630Hzである。(b)のフェース部2だけのピーク周波数と(c)のクラウン部4だけのピーク周波数は(a)の通常のピーク周波数に比較的近い高い周波数である。しかし、(d)のソール部5だけは、周波数が低く音圧レベルの高い二つの周波数3630Hzと2945Hzを有している。その結果、(a)の通常の周波数波形は、音圧レベルの高い複数の周波数(4685Hz、4515Hz、4230Hz、3630Hz、2945Hz)で共振するため、共振度合いが弱く、心地良い打球音とは評価されない。
【0021】
ソール部5のピーク周波数を高くするには、ソール部5の重量を大きくしないようにしながら剛性を上げる必要がある。そのために、図3に示すように、ソール部5の底面54の内面に平板状のリブ7を溶接して一体的に形成した。リブ7はフェース部2に平行で、トウ52からヒール51に向かって長さを85mmに形成した。リブ7はフェース部2から34mm離れた位置に形成され、リブ7の厚さは1mmである。リブ7の高さHは、5mmと8.5mmの二種類を作製して各々周波数波形を測定した。ソール部5のピーク周波数を目標とする周波数にするためには、リブ7の位置、長さ、高さ、厚さ、及び材質のうちの少なくとも一つを変化させて、ソール部5の周波数を測定する。
【0022】
図5は、リブ7の高さHが5mmのヘッド1の打球音の周波数波形を示すグラフであり、(a)はヘッド1がフリー状態でフェース部2を叩いた時の通常の周波数波形を示すグラフ、(b)は他の二箇所を拘束してフェース部2を叩いた時のフェース部2だけの音の周波数波形を示すグラフ、(c)は他の二箇所を拘束してクラウン部4を叩いた時のクラウン部4だけの音の周波数波形を示すグラフ、(d)は他の二箇所を拘束してソール部5を叩いた時のソール部5だけの音の周波数波形を示すグラフである。
【0023】
図5に示すようにリブ7の高さHが5mmのヘッド1は、(a)の通常のピーク周波数が4430Hz、(b)のフェース部2だけのピーク周波数が4490Hz、(c)のクラウン部4だけのピーク周波数が4655Hz、(d)のソール部5だけのピーク周波数が4270Hzである。(b)のフェース部2だけのピーク周波数は(a)の通常のピーク周波数に比較的近い高い周波数である。しかし、(c)のクラウン部4だけのピーク周波数は(a)の通常のピーク周波数から離れた高い周波数である。また、(d)のソール部5は、周波数が低く音圧レベルの高い周波数3970Hzを有している。すなわち、(b)のフェース部2だけのピーク周波数、(c)のクラウン部4だけのピーク周波数及び(d)のソール部5だけのピーク周波数の三つの周波数が、(a)の通常のピーク周波数の±4%以内には入っていない。その結果、(a)の通常の周波数波形は、ソール部5とクラウン部4が低い周波数の3970Hzで共振するため、ピーク周波数4430Hzのパワーを落とすため、、共振度合いが弱く、心地良い打球音とは評価されない。
【0024】
図6は、リブ7の高さHが8.5mmのヘッド1の打球音の周波数波形を示すグラフであり、(a)はヘッド1がフリー状態でフェース部2を叩いた時の通常の周波数波形を示すグラフ、(b)は他の二箇所を拘束してフェース部2を叩いた時のフェース部2だけの音の周波数波形を示すグラフ、(c)は他の二箇所を拘束してクラウン部4を叩いた時のクラウン部4だけの音の周波数波形を示すグラフ、(d)は他の二箇所を拘束してソール部5を叩いた時のソール部5だけの音の周波数波形を示すグラフである。
【0025】
図6に示すようにリブ7の高さHが8.5mmのヘッド1は、(a)の通常のピーク周波数が4395Hz、(b)のフェース部2だけのピーク周波数が4450Hz、(c)のクラウン部4だけのピーク周波数が4530Hz、(d)のソール部5だけのピーク周波数が4400Hzである。(b)のフェース部2だけのピーク周波数、(c)のクラウン部4だけのピーク周波数及び(d)のソール部5だけのピーク周波数の三つの周波数が、(a)の通常のピーク周波数のほぼ±4%以内に入っている。その結果、(a)の通常の周波数波形は、4395Hzの単一音で強く共振し、ソール部5の周波数3915Hzは、音圧が低くほとんど聞こえない。そのため、共振度合いが強く、心地良い打球音と評価される。
【0026】
本発明の実施の形態のヘッド1と性能を比較するために、鋳造製でリブが有る従来のヘッドの周波数波形を測定した。図7は、鋳造製でリブが有る従来のヘッドの打球音の周波数波形を示すグラフであり、(a)はヘッドがフリー状態でフェース部を叩いた時の通常の周波数波形を示すグラフ、(b)は他の二箇所を拘束してフェース部を叩いた時のフェース部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(c)は他の二箇所を拘束してクラウン部を叩いた時のクラウン部だけの音の周波数波形を示すグラフ、(d)は他の二箇所を拘束してソール部を叩いた時のソール部だけの音の周波数波形を示すグラフである。
【0027】
図7に示すように鋳造製でリブが有る従来のヘッドは、(a)の通常のピーク周波数が4315Hz、(b)のフェース部だけのピーク周波数が4455Hz、(c)のクラウン部だけのピーク周波数が4460Hz、(d)のソール部だけのピーク周波数が4175Hzである。(b)のフェース部だけのピーク周波数、(c)のクラウン部だけのピーク周波数及び(d)のソール部だけのピーク周波数の三つの周波数が、(a)の通常のピーク周波数のほぼ±4%以内の高い周波数になる。その結果、(a)の通常の周波数波形は、4315Hzの単一音で強く共振し、ソール部の周波数3550Hzは少し共振し、3590Hzでわずかに聞こえる。従って、本発明の実施の形態のリブ7の高さHが8.5mmのヘッド1の打球音は、鋳造製でリブが有る従来のヘッドと同等以上の心地良い打球音と評価することができる。
【0028】
次に、上記した4種類のヘッド(リブ無し、リブ高さHが5mm、リブ高さHが8.5mm、鋳造製でリブが有る従来のヘッド)で打球した時の残響音の長さを測定する。残響音の測定は、屋外の騒音の無い広いグリーン上で打球音を収録する。ヘッドスピードが40m/sでフェース部2の中心で打球する。残響音の長さは、残響音波形が環境音の波形になるまでの時間と定義する。
【0029】
図8(a)はリブ無しのヘッドの音圧振動波形を示すグラフ、図8(b)はリブ高さHが5mmのヘッドの音圧振動波形を示すグラフ、図9(a)はリブ高さHが8.5mmのヘッドの音圧振動波形を示すグラフ、図9(b)は鋳造製でリブが有る従来のヘッドの音圧振動波形を示すグラフであり、横軸が時間(ms)、縦軸が振幅(無次元量)である。図8図9に示すように、リブ無しのヘッドの残響音の長さは36ms、リブ高さHが5mmのヘッドの残響音の長さは41ms、リブ高さHが8.5mmのヘッドの残響音の長さは46ms、鋳造製でリブが有る従来のヘッドの残響音の長さは50msであった。従って、本発明の実施の形態のリブ7の高さHが8.5mmのヘッド1の残響音の長さは、鋳造製でリブが有る従来のヘッドと同等の残響時間と評価することができる。
【0030】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されることはない。例えば、前述した実施例では、ソール部5、クラウン部4及びフェース部2の各々のピーク周波数が4000Hz以上の周波数でほぼ一致するようにしているが、ピーク周波数は3800Hzから4700Hzの範囲内であればよい。また、前述した実施例では、ソール部5にリブ7を形成してソール部5のピーク周波数を目標とする周波数にしているが、さらに、ソール部5及びクラウン部4の曲率、形状、板厚、材質、及びケミカルミーリングデザインのうちの少なくとも一つを変化させて、ソール部5及びクラウン部4のピーク周波数を目標とする周波数に合わせてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…ヘッド
2…フェース部
3…ホーゼル部
31…鍔部
32…円筒状部
4…クラウン部
41…切欠き部
5…ソール部
51…ヒール
52…トウ
53…バック
54…底面
6…シャフト
7…リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9