(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の断面形状の流路幅は、前記ハブの軸線方向における少なくとも一部の領域において、前記タービン動翼上と前記ハブ上の少なくとも一方に溶接により形成された肉盛部によって規定されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のタービン動翼列。
前記タービン動翼の各々において、前記ハブの軸線方向の翼幅をWとし、前記ハブの径方向の翼高さをHとすると、のH/Wが1.0未満であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のタービン動翼列。
前記ハブの径方向における前記ハブの周面からの距離を前記ハブの径方向における前記タービン動翼の翼高さで除した値を翼高さ比rとすると、前記第1の位置の翼高さ比r1と、前記第2の位置の翼高さ比r2は、それぞれ0<r1<0.3及び0.3<r2<0.7を満たすことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のタービン動翼列。
請求項1〜8の何れか1項に記載のタービン動翼列と、前記タービン動翼列の上流側に設けられ複数のタービン静翼を含むタービン静翼列と、を備えることを特徴とするタービン段落。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のタービン動翼は、翼間流路の入口から出口に向かって流路幅が徐々に狭くなるように構成されている。特許文献1に記載される軸流タービン翼についても同様であり、該軸流タービン翼は、翼間流路の出口における流路幅に、翼高さ方向で分布を与えているにすぎない。
【0006】
このように、翼間流路の入口から出口に向かって流路幅が徐々に狭くなる構成では、ある程度流れの剥離を抑制することができるが、なおも翼間流路の上流側で流れが剥離し易く、二次流れが発生して成長し易いという問題がある。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、二次流れ損失を抑制することでタービン動翼列の性能を向上することが可能なタービン動翼列、タービン段落及び軸流タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るタービン動翼列は、互いの間に翼間流路が形成された状態でハブの周方向に沿って配列される複数のタービン動翼を備え、前記翼間流路は、前記ハブの径方向にて第1の位置に、前記径方向と垂直な第1の断面形状を有するとともに、前記ハブの径方向にて前記第1の位置よりも前記ハブから遠方の第2の位置に、前記径方向と垂直な第2の断面形状を有し、前記第1の断面形状は、前記ハブの軸線方向にて前記翼間流路の入口と出口との間にスロート部を有し、前記翼間流路の出口における前記第1の断面形状の流路幅幅をA1とし、前記スロート部における前記第1の断面形状の流路幅をB
1とし、前記翼間流路の出口における前記第2の断面形状の流路幅をA
2とし、そして、前記ハブの軸線方向にて前記スロート部と同位置における前記第2の断面形状の流路幅をB
2とすると、A1/B1>A2/B2である。
【0009】
上記(1)に記載のタービン動翼列によれば、第1の断面形状がハブの軸線方向にて翼間流路の入口と出口との間にスロート部を有するため、スロート部よりも入口側の流れが加速され、スロート部より入口側での剥離の発生を抑制することができる。また、このようにスロート部を設けた場合、何も工夫しなければスロート部の出口側が減速流路となってしまい、二次流れ損失を抑制することが困難となりやすいが、上記(1)に記載のタービン動翼列によれば、さらに、A1/B1>A2/B2を満たすことにより、翼間流路の入口と出口の間において、二次流れがハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることが抑制されるような、ハブの径方向の圧力勾配を形成することができる。これにより、二次流れ損失を効果的に低減し、タービン動翼列の性能を向上することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービン動翼列において、前記第2の断面形状の流路幅は、前記翼間流路の入口から出口にかけて単調減少する。
【0011】
上記(2)に記載のタービン動翼列によれば、翼間流路の入口と出口の間において、二次流れがハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることが抑制されるような、ハブの径方向の圧力勾配を容易に形成することができる。これにより、二次流れ損失を効果的に低減しタービン動翼列の性能を向上することができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービン動翼列において、前記第2の断面形状は、前記翼間流路の入口と出口の間にスロート部を有する。
【0013】
上記(3)に記載のタービン動翼列によれば、第1の断面形状及び第2の断面形状がそれぞれスロート部を有する場合であっても、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすことによって、二次流れがハブの表面から径方向で外側へ浮き上がることが抑制される。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載のタービン動翼列において、前記第2の断面形状の前記スロート部は、前記第1の断面形状の前記スロート部よりも、前記ハブの軸線方向において前記翼間流路の出口側に位置する。
【0015】
上記(4)に記載のタービン動翼列によれば、第1の断面形状及び第2の断面形状がそれぞれスロート部を有する場合であっても、翼間流路の入口と出口の間において、二次流れがハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることが抑制されるような、ハブの径方向の圧力勾配を容易に形成することができる。これにより、二次流れ損失を効果的に低減しタービン動翼列の性能を向上することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービン動翼列において、前記第2の断面形状の流路幅は、前記翼間流路の入口から出口に向かうにつれて単調減少した後、一定に維持される。
【0017】
上記(5)に記載のタービン動翼列であっても、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすことによって、二次流れがハブの表面から径方向で外側へ浮き上がることが抑制される。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)に記載のタービン動翼列において、前記複数のタービン動翼の各々において、翼高さ方向と垂直な断面形状が、翼根部から翼先端部にかけて一定である。
【0019】
上記(6)に記載のタービン動翼列のように複数のタービン動翼の各々が
二次元翼であっても、第1の断面形状と第2の断面形状はハブの径方向における位置が互いに異なるため、周長差を利用して上述の条件を満たすようにタービン動翼列を構成することが可能である。したがって、複数のタービン動翼の各々に
二次元翼を採用することにより、タービン動翼の加工性(製造性)向上、性能向上、製造コスト低減を実現することができる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)に記載のタービン動翼列において、前記第1の断面形状の流路幅は、前記ハブの軸線方向における少なくとも一部の領域において、前記タービン動翼上と前記ハブ上の少なくとも一方に溶接により形成された肉盛部によって規定される。
【0021】
上記(7)に記載のタービン動翼列によれば、タービン動翼列の性能を向上するとともに、タービン動翼の翼型の設計自由度を高めることができる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載のタービン動翼列において、前記第1の断面形状における前記スロート部は、前記少なくとも一部の領域に設けられる。
【0023】
上記(8)に記載のタービン動翼列によれば、タービン動翼列の性能を容易に向上するとともに、タービン動翼の翼型の設計自由度を高めることができる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)に記載のタービン動翼列において、前記タービン動翼の各々において、前記ハブの軸線方向の翼幅をWとし、前記ハブの径方向の翼高さをHとすると、H/Wが1.0未満である。
【0025】
上記(9)に記載のタービン動翼列によれば、タービン動翼のアスペクト比が比較的低い場合(H/Wが1.0未満の場合)には、翼間流路の形状に何も工夫をしなければ、ハブ側からの二次流れと、チップ(翼先端)側からの二次流れとの干渉が生じやすい。これに対して、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすよう翼間流路を形成することにより、このような二次流れの干渉をも抑制することができる。これにより、タービン動翼列の性能を効果的に向上することができる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)に記載のタービン動翼列において、前記ハブの径方向における前記ハブの周面からの距離を前記ハブの径方向における前記タービン動翼の翼高さで除した値を翼高さ比rと定義すると、前記第1の位置の翼高さ比r1と、前記第2の位置の翼高さ比r2は、それぞれ0<r1<0.3及び0.3<r2<0.7を満たす。
【0027】
上記(10)に記載のタービン動翼列によれば、二次流れがハブの表面から径方向で外側へ浮き上がることを効果的に抑制することができる。
【0028】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係るタービン段落は、上記(1)〜(10)の何れか1項に記載のタービン動翼列と、前記タービン動翼列の上流側に設けられ複数のタービン静翼を含むタービン静翼列と、を備える。
【0029】
上記(11)に記載のタービン段落によれば、これにより、二次流れ損失を低減し、タービン段落の性能を効果的に向上することができる。
【0030】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る軸流タービンは、ハブの軸方向に配列された複数のタービン段落を備える軸流タービンであって、前記複数のタービン段落の少なくとも一つが上記(11)に記載のタービン段落である。
【0031】
上記(12)に記載の軸流タービンによれば、二次流れ損失を低減し、軸流タービンの性能を効果的に向上することができる。
【0032】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)に記載の軸流タービンにおいて、前記ハブの径方向における前記第1の位置での反動度が0.25以下にて作動するよう構成される。この場合、反動度は負の値でもよい。
【0033】
反動度が小さい場合には、翼間流路の前後差圧も低いため、翼間流路の途中で圧力勾配が逆転して逆流が生じる領域が発生しうる。本発明者の検討によれば、典型的には反動度が0.25以下である場合に、特異的な渦流れ(翼間流路のハブ側かつ比較的入口に近い領域から、逆流を伴いながらスパイラル状にハブの径方向外側へ移動する渦流れ)が生じうることが明らかとなった。この点、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすよう形成された翼間流路によれば、このような特異的な渦流れに対しても、ハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることが抑制されるような、ハブの径方向の圧力勾配をに形成することができる。これにより、二次流れ損失を低減し軸流タービンの性能を効果的に向上することができる。
【0034】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)又は(13)に記載の軸流タービンにおいて、前記翼間流路の全領域における流体のマッハ数が1.0未満にて作動するよう構成される。
【0035】
このように亜音速で作動する軸流タービンであっても、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすよう形成された翼間流路によれば、二次流れ損失を低減しタービン動翼列の性能を効果的に向上することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、二次流れ損失を抑制することでタービン動翼列の性能を向上することが可能なタービン動翼列、タービン段落及び軸流タービンが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的な配置関係を表す表現は、厳密にそのような相対的配置関係を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0039】
図1は、幾つかの実施形態に係る軸流タービンについて、タービンロータの軸線を含む断面(子午断面)の一部を示す概略断面図である。
図2は、幾つかの実施形態に係るタービン動翼列の一部を示す概略斜視図である。
【0040】
幾つかの実施形態に係る軸流タービン1は、ハブ18の軸方向に配列される複数のタービン段落2を備えている。なお、
図1では説明の便宜上、1つのタービン段落2を拡大して記載している。タービン段落2の各々は、複数のタービン動翼4からなるタービン動翼列6と、外輪8と内輪10との間に配設された複数のタービン静翼12からなりタービン動翼列6の上流側に設けられたタービン静翼列14とを含む。複数のタービン動翼4は、
図2に示すように、互いの間に翼間流路16が形成された状態でハブ18(
図1参照)の周面20にハブ18の周方向に沿って配列される。
【0041】
ベルヌーイの定理によれば、翼間流路の入口から出口へ向かうにつれて流路断面積(流路の主流方向に垂直な断面の面積)が大きくなる領域が存在すると、その領域で流体の圧力が上昇するとともに流速が低下するため、剥離現象が生じやすい。そのため、従来のタービン動翼列における翼間流路は、剥離現象を抑制する目的で、翼間流路の入口から出口にかけてハブの径方向位置によらず流路幅が単調減少するように形成されていた。
【0042】
これに対し、以下で説明する翼間流路16は、ハブ18の径方向に垂直な断面形状として、ハブ18の軸線方向にて翼間流路16の入口と出口との間にスロート部を有する断面形状を含んでいる。以下、翼間流路16の形状について詳細に説明する。
【0043】
翼間流路16は、ハブ18の径方向にて第1の位置r1(
図1参照)に、ハブ18の径方向と垂直な第1の断面形状を有するとともに、ハブ18の径方向にて第1の位置r1よりもハブ18から遠方の第2の位置r2(
図1参照)に、径方向と垂直な第2の断面形状を有する。ここで、ハブ18の径方向におけるハブ18の周面20からの距離をハブ18の径方向におけるタービン動翼4の翼高さで除した値を「翼高さ比」と定義すると、以下で説明する第1の断面形状を規定する第1の位置の翼高さ比r1と、第2の断面形状を規定する第2の位置の翼高さ比r2は、典型的には、それぞれ0<r1<0.3及び0.3<r2<0.7を満たす。
【0044】
以下、第1の断面形状と第2の断面形状について
図3〜
図8を用いて説明する。
図3〜
図5は、幾つかの実施形態に係る第1の断面形状の例を示す模式的な断面図である。
図6〜8は、幾つかの実施形態に係る第2の断面形状の例を示す模式的な断面図である。なお、
図3〜8では、翼間流路16の断面形状を説明するために、互いに隣接するタービン動翼4のうち、一方のタービン動翼4の腹面22と、他方のタービン動翼4の背面24とを図中に示している。
【0045】
幾つかの実施形態では、例えば
図3〜5に示すように、第1の断面形状100は、ハブ18の軸線方向にて翼間流路16の入口26と出口28との間の位置Eにスロート部30を有している。ここで、「翼間流路の入口」とは、タービン動翼4の前縁29と該タービン動翼4に隣接するタービン動翼4の背面24とに接する仮想内接円を描いた際の内接円直径で示される最短距離部を意味し、「翼間流路16の出口28」とは、タービン動翼4の後縁31と該タービン動翼4に隣接するタービン動翼4の背面24とに接する仮想内接円を描いた際の内接円直径で示される最短距離部を意味することとする。また、「スロート部」とは、ハブ18の軸線方向にて翼間流路16に接する仮想内接円を描いた際の内接円直径で示される流路幅が極小値をとる部分を意味することとする。
【0046】
図3〜
図5に示すように、翼間流路16の出口28における第1の断面形状100の流路幅をA1とし、スロート部30における第1の断面形状100の流路幅をB1とし、
図6〜
図8に示すように、翼間流路16の出口28における第2の断面形状200の流路幅をA2とし、ハブ18の軸線方向にてスロート部30と同位置Eにおける第2の断面形状200の流路幅をB2とすると、翼間流路16は、A1/B1>A2/B2を満たすように形成されている。すなわち、スロート部30における第1の断面形状100の流路幅B1に対する、翼間流路16の出口28における第1の断面形状100の流路幅A1の比A1/B1が、ハブ18の軸線方向にてスロート部30と同位置Eにおける第2の断面形状200の流路幅B2に対する、翼間流路16の出口28における第2の断面形状200の流路幅A2の比A2/B2よりも大きい。
【0047】
図9は、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たす翼間流路16における第1の断面形状100と、その流路内の各位置での流体のマッハ数についての解析結果を示している。
図10は、
図9に示すハブ18の軸線方向位置H,I,J及びKの各々における、翼高さ比と静圧との関係についての解析結果を示している。
図10において、
点線、一点鎖線、破線、実線が、それぞれ軸線方向位置H,I,J及びKについての解析結果を示している。
【0048】
図9に示されるように、第1の断面形状100において、翼間流路16の入口26から出口28に向かうにつれて流体のマッハ数が概して増加していることがわかる。また、
図10に示されるように、翼間流路16において、翼高さ比によらず、翼間流路16の入口26から出口28へ向かうにつれて(ハブ18の軸線方向位置H,I,J,Kの順に)静圧が低下していることがわかる。したがって、第1の断面形状100が翼間流路16の入口26と出口28の間にスロート部30を有している(すなわち、スロート部30から下流側へ向かうにつれて流路幅が大きくなる領域が存在する)にも関わらず、翼間流路16が加速流路として良好に機能し二次流れが抑制されていることがわかる。
【0049】
以下、このような効果が得られる理由について
図11(a)及び
図11(b)を用いて考察する。
図11(a)は、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たす翼間流路16における動翼腹側の限界流線(動翼4の腹面22に無限に近い位置での流線)の解析結果を模式的に示した図であり、
図11(b)は、前述した従来の翼間流路における動翼腹側の限界流線の解析結果を模式的に示した図である。なお、従来の翼間流路とは、ハブの径方向における各位置の断面において翼間流路の入口から出口にかけて流路幅が単調減少するよう形成された翼間流路である(以下同様)。
【0050】
図11(a)と
図11(b)を比較すると、
図11(a)に示す翼間流路16における限界流線の方が、ハブの軸線方向に沿った比較的直線に近い流線となっている。これは、翼間流路16が上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすことよって、翼間流路16内でのハブの径方向における圧力勾配が、以下に説明するように二次流れを抑制する方向の圧力勾配になっているためと考えられる。
【0051】
図11(a)に示す翼間流路16おいて、ハブの軸線方向位置Eかつハブの径方向位置r1の点(スロート部30が存在する点)をM、ハブの軸線方向位置Eかつハブの径方向位置r2の点をNとする。と、
図11(a)における点Nの圧力から点Mの圧力を減じた圧力差ΔPが、
図11(b)に示す従来の翼間流路における点Nの圧力から点Mの圧力を減じた圧力差ΔPよりも正方向に大きくなる。したがって、ハブの表面で二次流れが生じても、圧力差ΔPの正方向への増大によって二次流れがハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることが抑制される。この作用により、タービン動翼列6の性能を向上することができる。
なお、従来の翼間流路にはスロート部30は存在しないが、
図11(a)の点M,点Nとそれぞれ同位置を示すために
図11(b)でも便宜的に点M、点Nと称している。
【0052】
また、翼間流路16の第1の断面形状100がスロート部30を有すると、スロート部30よりも入口26側で流体を良好に加速することができるため、スロート部30よりも入口26側での剥離発生を抑制することができる。ただし、このようにスロート部30を設けた場合、何も工夫しなければスロート部30の出口28側が減速流路となってしまい、二次流れ損失を抑制することが困難となりやすい。この点、上述のようにA1/B1>A2/B2を満たすことにより、二次流れがハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることが抑制されるような、ハブの径方向の圧力勾配を形成することができる。したがって、スロート部30よりも入口26側での剥離発生を抑制しつつ、二次流れ損失を効果的に低減し、タービン動翼列の性能を向上することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、例えば
図4及び
図5に示す第1の断面形状100において、ハブ18の軸線方向における少なくとも一部の領域において、タービン動翼4上とハブ18上の少なくとも一方に溶接により形成された肉盛部32によって規定される。この場合、第1の断面形状100におけるスロート部30は、該少なくとも一部の領域に設けてもよい。これにより、タービン動翼列6の性能を向上するとともに、タービン動翼4の翼型の設計自由度を高めることができる。
【0054】
なお、肉盛部32は、隣接するタービン動翼4のうち一方の腹面22側に形成されていてもよいし、他方の背面24側に形成されていてもよい。また、
図4に示すようにハブの軸線方向における入口26から出口28の全域にわたって形成されていてもよいし、
図5に示すようにハブの軸線方向における一部にのみ形成されていてもよい。
【0055】
一実施形態に係る第2の断面形状は、例えば
図6に示すように、入口26と出口28の間にスロート部34を有していてもよい。このように、第1の断面形状100、第2の断面形状200がそれぞれスロート部30,34を有する場合であっても、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすことによって、二次流れがハブ18の径方向で外側へ浮き上がることが抑制される。
【0056】
また、この場合、第2の断面形状200のスロート部34は、第1の断面形状100のスロート部30よりも、ハブ18の軸線方向において翼間流路16の出口28側に位置してもよい。すなわち、ハブ18の軸線方向において、スロート部34の位置Fは、スロート部30の位置Eよりも出口28側に位置してもよい。これにより、ハブ18の軸線方向におけるスロート部30が設けられる位置Eにおいて、上述の圧力差ΔPを正方向へ大きくすることが容易となり、二次流れがハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることが効果的に抑制される。
【0057】
一実施形態では、例えば
図7に示す第2の断面形状200において、流路幅が、入口26から出口28に向かうにつれて単調減少した後一定に維持されてもよい。このような形状においても、翼間流路16が上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすことによって、二次流れがハブ18の径方向で外側へ浮き上がることが抑制される。
【0058】
また、
図7に示す第2の断面形状においては、ハブ18の軸線方向における位置Eよりも出口28側の位置Gまで流路幅が単調減少した後、流路幅がA2に維持される。これにより、ハブ18の軸線方向におけるスロート部30が設けられる位置Eにおいて、上述の圧力差ΔPを正方向へ大きくすることが容易となり、二次流れがハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることが効果的に抑制される。したがって、タービン動翼列6の性能を効果的に向上することができる。
【0059】
一実施形態では、例えば
図8に示す第2の断面形状200において、流路幅が入口26から出口28にかけて単調減少してもよい。これにより、ハブの軸線方向におけるスロート部30が設けられる位置Eにおいて、上述の圧力差ΔPを正方向へ大きくすることが容易となり、二次流れがハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることが効果的に抑制される。
【0060】
幾つかの実施形態では、例えば
図1〜
図8に示されるタービン動翼4の各々において、翼高さ方向と垂直な断面形状(断面プロファイル)が、翼根部36(
図2参照)から翼先端部38(
図2参照)にかけて一定であってもよい。すなわち、複数のタービン動翼4の各々は、
二次元翼であってもよい。
【0061】
複数のタービン動翼4の各々が
二次元翼であっても、上述の第1の断面形状100と第2の断面形状200はハブの径方向における位置が互いに異なるため、周長差を利用して上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすようにタービン動翼列6を構成することが可能である。したがって、複数のタービン動翼4の各々に
二次元翼を採用することにより、タービン動翼4の加工性(製造性)向上、性能向上、製造コスト低減を実現することができる。
【0062】
また、二次流れは反動度(タービン段落での熱落差に占めるタービン動翼での熱落差の割合)が小さい程生じやすいが、典型的には反動度が0.25以下である場合に、特異的な渦流れが生じうることが本発明者の検討により明らかとなった。なお、本明細書における反動度は以下の式にて定義される値である。
反動度=(P
1S−P
2S)/(P
0−P
2S)
ここで、P
1S,P
2S,P
0は、
図1に示す各位置での静圧又は全圧である。すなわち、P
1Sはハブの径方向の第1の位置r1における動翼入口の静圧であり、P
2Sはハブの径方向の第1の位置r1における動翼出口の静圧であり、P
0は静翼入口における全圧である。
【0063】
図12には、翼間流路の子午断面にて翼間流路16中で発生する特異的な渦流れ40が示されている。
図12から、この渦流れ40が、翼間流路16のハブ側かつ比較的入口26に近い領域Rから、逆流を伴いながらスパイラル状にハブの径方向外側へ(矢印42の方向へ)移動している様子がわかる。
【0064】
反動度が小さい場合には、翼間流路16の前後差圧も低いため、翼間流路の途中で圧力勾配が逆転して逆流が生じる領域が発生しうる。このため、典型的には反動度が0.25以下である場合に、上述のように特異的な渦流れ40が生じやすくなる。
【0065】
この点、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすよう形成された翼間流路16では、従来の翼間流路と比較して、
図11を用いて説明したように、翼間流路16内でのハブの径方向における圧力差ΔPが正方向へ増大するため、この特異的な渦流れ40がハブの表面からハブの径方向外側へ浮き上がることも抑制することができる。これにより、タービン動翼列6の性能を効果的に向上することができる。
【0066】
幾つかの実施形態では、例えば
図1に示される軸流タービン1は、翼間流路16の全領域における流体のマッハ数が1.0未満にて作動するよう構成されてもよい。このように、亜音速で作動する軸流タービンであっても、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすよう形成された翼間流路16によれば、タービン動翼列6の性能を効果的に向上することができる。
【0067】
幾つかの実施形態では、例えば
図1〜8に示されるタービン動翼4の各々において、ハブの径方向の翼高さH(
図1参照)に対する、ハブの軸線方向の翼幅W(
図1参照)の比H/Wが1.0未満であってもよい。
タービン動翼4のアスペクト比が比較的低い場合(H/Wが1.0未満の場合)には、翼間流路16の形状に何も工夫をしなければ、ハブ側からの上述の渦流れ40(
図12参照)と、チップ側の二次流れとの干渉が生じ、損失が発生しやすい。これに対して、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすよう翼間流路16を形成することにより、このような渦流れ40とチップ側の二次流れとの干渉をも抑制することができる。これにより、タービン動翼列6の性能を効果的に向上することができる。
【0068】
幾つかの実施形態では、例えば
図1〜8に示されるタービン動翼4の各々において、アスペクト比(H/W)が1.0超であってもよい。
反動度はハブの半径方向に分布を有し、チップ側で高く、ハブ側で低くなる。このためアスペクト比が1.0超の場合、ハブ側で二次流れや剥離が発生し易い。この点、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすよう翼間流路16を形成することにより、二次流れや剥離の発生を抑制することができ、タービン動翼列6の性能を効果的に向上することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、
図13(a)に示すように、軸流タービン1(
図1参照)を例えばターボチャージー44に適用してもよい。すなわち、内燃機関46への吸気を加圧するコンプレッサ48を駆動するためのタービン1に、上述した翼間流路16を形成する複数のタービン動翼4からなるタービン動翼列6を適用してもよい。この場合、軸流タービン1は内燃機関46からの排気によって駆動されて動力を生成し、この動力によりコンプレッサ48が駆動される。軸流タービン1は、例えば発電機50に更に連結されていてもよい。
【0070】
内燃機関46のターボチャージー44のように負荷変動(流量変動)が存在する機器では、動翼に対する流体の流入角が変化するので、翼間流路において二次流れや剥離を抑制することが困難であった。この点、上述の条件(A1/B1>A2/B2)を満たすよう形成された翼間流路16を適用すれば、流入角が変化しても、翼間流路における二次流れや剥離を抑制することができる。このため負荷変動にかかわらずに、二次流れや剥離を効果的に抑制することができ、ロバスト性が向上する。
【0071】
なお、
図1に示した実施形態では、タービン段落2が1列のタービン静翼列14と1列のタービン動翼列6からなるラトー式の軸流タービン1を例示したが、一つのタービン段落2が備えるタービン静翼列14とタービン動翼列6の数は特に限定されない。例えばタービン段落2が1列のタービン静翼列14と2列のタービン動翼列6(又は2列のタービン静翼列14と3列のタービン動翼列6)からなるカーチス式の軸流タービン1であってもよい。
【0072】
また、
図1に示した軸流タービン1は、蒸気タービンであってもよいし、ガスタービンであってもよい。例えば、
図13(b)に示すように、発電設備52における蒸気タービンに適用してもよい。
図13(b)に示す発電設備52は、蒸気を発生させるボイラー54と、ボイラー54によって発生した蒸気によって駆動する蒸気タービン1と、蒸気タービン1に連結された発電機50と、蒸気タービン1の排気を冷却して凝縮させる復水器56と、復水器56で凝縮により生じた水をボイラー54に供給するためのポンプ58とを備えている。また、軸流タービン1の用途は特に限定されず、例えば舶用であってもよいし、自家発電用で定置式のものであってもよい。
【0073】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。