特許第6396132号(P6396132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396132
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】スライドレールのブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/57 20170101AFI20180913BHJP
   A47B 88/40 20170101ALI20180913BHJP
【FI】
   A47B88/16 B
   A47B88/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-185911(P2014-185911)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-55084(P2016-55084A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 正彦
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−005063(JP,A)
【文献】 特開2004−162250(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0218762(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのアウターメンバーと、リテーナに回転自在に保持された複数個のボールを介してアウターメンバーに摺動自在としたインナーメンバーからなり、スライドレールの最大伸長状態では、インナーメンバーの先端部分と、アウターメンバーの先端部分とのガタツキ(離間寸法)が最大となり、インナーメンバーの後端部分とアウターメンバーの先端部分とのガタツキ(離間寸法)が最小となるスライドレールの厚み方向で、インナーメンバーがアウターメンバーから離間する方向に、インナーメンバーに常に弾性的に当接する弾性当接部材を、インナーメンバーが引出される方向のアウターメンバーの端部に設けたスライドレールにおいて、アウターメンバーは、基板と、基板の両端部を内向き円弧状に屈曲させ、内面にボール摺動面と、ボール摺動面と基板内面に連続する変形案内面が形成された両折曲縁を有し、弾性当接部材は、インナーメンバーに弾性的に当接する弾性当接基板と、アウターメンバーの一部と連係して摺動方向への移動を防止する固定部と、摺動方向以外の方向への脱落を防止する脱落防止部より合成樹脂材にて一体に形成され、インナーメンバーが装着されていない状態では、脱落防止部はボール摺動面に嵌合し、インナーメンバーが装着された状態では、インナーメンバーの折曲縁の端部が弾性当接基板に弾圧して、脱落防止部はボール摺動面から変形案内面に押し付けられると同時に、弾性当接基板は、アウターメンバーの基板側に湾曲状態に弾性変形して、インナーメンバーが常にアウターメンバーから離間する方向に弾溌力を付与し、かつ、スライドレールの最短縮小状態で、弾性当接基板とアウターメンバーの基板は、所定間隔を有し、スライドレールの最大伸長状態で、弾性当接基板とアウターメンバーの基板は接触するように設定され、スライドレールの最短縮小状態より、スライドレールの最大伸長状態でインナーメンバーに対しての弾溌力が増すことを特徴とするスライドレールのブレーキ装置。
【請求項2】
弾性当接基板は、脱落防止部との連設箇所よりアウターメンバーの基板側で厚みを大きく形成したことを特徴とする請求項1に記載のスライドレールのブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターメンバーとインナーメンバーの摺動が円滑でありながら両者間にガタツキが発生せず、しかも、スライドレールが最大伸長状態となる手前で、インナーメンバーの摺動スピードにブレーキがかかるスライドレールのブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドレールの摺動を円滑にするには(摺動力を軽くするには)、アウターメンバーとインナーメンバー間に設けられるボールの径を小さくして、アウターメンバーとインナーメンバーの嵌合力を弱くしていた。
このため、アウターメンバーおよびインナーメンバーの摺動面と、ボール間に隙間ができるので、インナーメンバーとアウターメンバー間にガタツキが発生していた。(図8に示す状態。)
【0003】
そして、スライドレールは、インナーメンバーとアウターメンバーが重なった状態(インナーメンバーがアウターメンバーに収納された最短収縮状態)では、ボール部分(複数個のボールを回転自在に保持したリテーナ部分)がアウターメンバー及びインナーメンバーの前後方向の中央部に位置している。
次に、インナーメンバーがアウターメンバーの前方に引き出されると、ボール部分もインナーメンバー移動距離の2分の1前方に移動し、インナーメンバーが最も引き出された最大伸長状態では、ボール部分は、アウターメンバーの先端部分とインナーメンバーの後端部分間に位置する。
【0004】
すなわち、ボール部分が位置する箇所におけるアウターメンバーとインナーメンバーのガタツキ(離間寸法)は、アウターメンバーおよびインナーメンバーの摺動面とボール間の隙間寸法だけである。
【0005】
しかしながら、インナーメンバーが引き出されつつある状態では、ボール部分が位置する箇所がガタツキの基準点(ガタツキの回動中心点)となるので、インナーメンバーの定点箇所であっても、ボール部分が位置する箇所から離れるにしたがって、アウターメンバーとインナーメンバー間に生じるガタツキ(離間寸法)は大きくなる。
つまり、スライドレールの最大伸長状態では、インナーメンバーの先端部分と、アウターメンバーの先端部分とのガタツキ(離間寸法)が最大となり、インナーメンバーの後端部分とアウターメンバーの先端部分(ボールが位置する箇所)とのガタツキ(離間寸法)が最小となる。
【0006】
そして、このガタツキをなくす為、ボールの径を大きくして嵌合力を強くすると、摺動力が重くなるという問題があった。
又、ボールの径を小さくしたままで、軽い摺動力を維持しながら、引き出し方向でのアウターメンバーの先端部分の摺動面に絞り加工を施して、先端部分のみ嵌合力を強く調整し、ガタツキを防止する方法も提供されているが、上記加工は、スレイドレールを一本ずつ調節する必要があり、しかもその作業は高度の熟練を必要とするので、生産効率が悪く高価なものになる欠点があった。
【0007】
上記のガタツキの問題を解決するため、出願人は、少なくとも一つのアウターメンバーと、アウターメンバーに摺動自在としたインナーメンバーからなるスライドレールにおいて、スライドレールの厚み方向でインナーメンバーがアウターメンバーから離間する方向に、インナーメンバーに弾性力を付与する弾性当接部材を、インナーメンバーが引出される方向のアウターメンバーの端部に設けたスライドレールを提案した。(特許文献1参照)
この場合、上記ガタツキの問題は解決されるものの、摺動力が軽いままとなっているため、スライドレールが最大伸長状態となって停止するときに、アウターメンバーのストッパーとインナーメンバーのストッパーが衝突することによる大きな衝突衝撃が生じるという別の問題が発生することとなった。
この問題を解決するには、双方のストッパーに緩衝部材などの新たな部材を取り付ければよいが、その場合、部品点数が増え、コストアップにつながるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5280746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、嵌合力が弱く、摺動力の軽いスライドレールに取り付けるだけでガタツキを防止し、摺動力にほとんど影響を与えることがなく、しかも、スライドレールが最大伸長状態となる手前で、インナーメンバーの摺動スピードにブレーキをかけることで、スライドレールの最大伸長時の衝突衝撃をなくす、部品点数が増加することなく、生産効率にも優れ、構造が簡単で、安価に製作できるスライドレールのブレーキ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、少なくとも一つのアウターメンバーと、リテーナに回転自在に保持された複数個のボールを介してアウターメンバーに摺動自在としたインナーメンバーからなり、スライドレールの最大伸長状態では、インナーメンバーの先端部分と、アウターメンバーの先端部分とのガタツキ(離間寸法)が最大となり、インナーメンバーの後端部分とアウターメンバーの先端部分とのガタツキ(離間寸法)が最小となるスライドレールの厚み方向で、インナーメンバーがアウターメンバーから離間する方向に、インナーメンバーに常に弾性的に当接する弾性当接部材を、インナーメンバーが引出される方向のアウターメンバーの端部に設けたスライドレールにおいて、アウターメンバーは、基板と、基板の両端部を内向き円弧状に屈曲させ、内面にボール摺動面と、ボール摺動面と基板内面に連続する変形案内面が形成された両折曲縁を有し、弾性当接部材は、インナーメンバーに弾性的に当接する弾性当接基板と、アウターメンバーの一部と連係して摺動方向への移動を防止する固定部と、摺動方向以外の方向への脱落を防止する脱落防止部より合成樹脂材にて一体に形成され、インナーメンバーが装着されていない状態では、脱落防止部はボール摺動面に嵌合し、インナーメンバーが装着された状態では、インナーメンバーの折曲縁の端部が弾性当接基板に弾圧して、脱落防止部はボール摺動面から変形案内面に押し付けられると同時に、弾性当接基板は、アウターメンバーの基板側に湾曲状態に弾性変形して、インナーメンバーが常にアウターメンバーから離間する方向に弾溌力を付与し、かつ、スライドレールの最短縮小状態で、弾性当接基板とアウターメンバーの基板は、所定間隔を有し、スライドレールの最大伸長状態で、弾性当接基板とアウターメンバーの基板は接触するように設定され、スライドレールの最短縮小状態より、スライドレールの最大伸長状態でインナーメンバーに対しての弾溌力が増すものである。
【0011】
上記課題を解決する為、本発明が第2の手段として構成したところは、上記第1の手段に加え、弾性当接基板は、脱落防止部との連続部分よりアウターメンバーの基板側で厚みを大きく形成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の手段として構成したところによると、スライドレールの厚み方向でインナーメンバーがアウターメンバーから離間する方向で、インナーメンバーに常に弾性的に当接する弾性当接部材を、インナーメンバーが引出される方向のアウターメンバーの端部に設けたものであるから、インナーメンバーはボールを介してアウターメンバーの厚み方向の外方に押し付けられて、インナーメンバーの摺動面とアウターメンバーの摺動面と、ボール間の隙間がなくなりガタツキが発生しない。そして、インナーメンバーに取り付けられる移動体の寸法、あるいは、重量が異なっても、インナーメンバーは弾性当接部材に弾性的に接触しているだけであるから必要以上の摩擦抵抗が発生せず、インナーメンバーの摺動力に影響を及ぼすことがない。
【0013】
又、弾性当接部材は、弾性当接基板と、固定部と、脱落防止部より合成樹脂材より一体に形成されているので、生産効率がよく、取り付けも一回の手間で済み、安価に製作できる、摩擦抵抗も少なく、摩擦接触音を発生することもない。
そして、アウターメンバーは、基板と、基板の両端部を内向き円弧状に屈曲させ、内面にボール摺動面と、ボール摺動面と基板内面に連続する変形案内面が形成された両折曲縁を有し、弾性当接部材の脱落防止部は、インナーメンバーが装着されていない状態では、ボール摺動面に嵌合するので取り付けが容易である。
【0014】
そして、インナーメンバーが装着された状態では、インナーメンバーの折曲縁の端部が弾性当接基板に弾圧して、脱落防止部はボール摺動面から変形案内面に押し付けられるため脱落防止部間の直線距離が縮まり、脱落防止部の脱落防止部間の直線距離が縮まることによって、弾性当接基板は、アウターメンバーの基板側に湾曲状態に弾性変形して、インナーメンバーが常にアウターメンバーから離間する方向に弾溌力を付与した状態となる。そして、スライドレールの最短縮小状態より、スライドレールの最大伸長状態で、インナーメンバーの後端部分とアウターメンバーの先端部分(ボールが位置する箇所)とのガタツキ(離間寸法)が最小となるから、スライドレールの最大伸長状態の手前では、インナーメンバーに対する弾性当接基板の前記弾溌力は最大に近づくので、必然的にインナーメンバーの摺動スピードにブレーキがかかり、スライドレールが最大伸長状態となって停止するときに、大きな衝撃が発生することもない。
【0015】
本発明の第2の手段として構成したところによると、弾性当接基板は、脱落防止部との連続部分より厚みを大きく形成しているので、大きく湾曲状態に弾性変形したとき(スライドレールの最大伸長状態)、より大きな弾溌力を有し、ブレーキ効果をさらに発揮することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の要部分解斜視図
図2】弾性当接部材の取付前のアウターメンバー先端部の斜視図
図3】弾性当接部材の取付後のアウターメンバー先端部の斜視図
図4】インナーメンバー装着前のアウターメンバーとインナーメンバーの要部正面図
図5】インナーメンバー装着後の最短収縮時のスライドレールの要部正面図
図6】スライドレールの最大伸長時のスライドレールの要部正面図
図7】スライドレールの最大伸長時のインナーメンバー後端部の要部断面図
図8】従来のスライドレールの要部正面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
少なくとも一つのアウターメンバーと、リテーナに回転自在に保持された複数個のボールを介してアウターメンバーに摺動自在としたインナーメンバーからなり、スライドレールの最大伸長状態では、インナーメンバーの先端部分と、アウターメンバーの先端部分とのガタツキ(離間寸法)が最大となり、インナーメンバーの後端部分とアウターメンバーの先端部分とのガタツキ(離間寸法)が最小となるスライドレールの厚み方向で、インナーメンバーがアウターメンバーから離間する方向に、インナーメンバーに常に弾性的に当接する弾性当接部材を、インナーメンバーが引出される方向のアウターメンバーの端部に設けたスライドレールにおいて、アウターメンバーは、基板と、基板の両端部を内向き円弧状に屈曲させ、内面にボール摺動面と、ボール摺動面と基板内面に連続する変形案内面が形成された両折曲縁を有し、弾性当接部材は、インナーメンバーに弾性的に当接する弾性当接基板と、アウターメンバーの一部と連係して摺動方向への移動を防止する固定部と、摺動方向以外の方向への脱落を防止する脱落防止部より合成樹脂材にて一体に形成され、インナーメンバーが装着されていない状態では、脱落防止部はボール摺動面に嵌合し、インナーメンバーが装着された状態では、インナーメンバーの折曲縁の端部が弾性当接基板に弾圧して、脱落防止部はボール摺動面から変形案内面に押し付けられると同時に、弾性当接基板は、アウターメンバーの基板側に湾曲状態に弾性変形して、インナーメンバーが常にアウターメンバーから離間する方向に弾溌力を付与し、かつ、スライドレールの最短縮小状態で、弾性当接基板とアウターメンバーの基板は、所定間隔を有し、スライドレールの最大伸長状態で、弾性当接基板とアウターメンバーの基板は接触するように設定され、スライドレールの最短縮小状態より、スライドレールの最大伸長状態でインナーメンバーに対しての弾溌力が増すものである。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1から図3において、符号100は、スライドレールを示し、スライドレール100は、アウターメンバー1と、リテーナ2に回転自在に保持された複数個のボール4・・・を介して、アウターメンバー1に摺動自在に装着されたインナーメンバー3と、インナーメンバー3が引出される方向のアウターメンバー1の端部に設けられた弾性当接部材5より構成されている。
【0019】
アウターメンバー1は、基板11と、基板11の左右端部を上向きで内向き円弧状に屈曲させ、内面に左右のボール摺動面121、121と、基板11の左右端部から上方に広がる方向に傾斜し、ボール摺動面121、121に連続する左右の変形案内面122、122が形成された左右の折曲縁12、12より、断面上向き略C字型に形成されている。
そして、インナーメンバー3の摺動方向の中央部やや後方に位置して、基板11の一部を上向きに突出させて、リテーナ後端ストッパー13が形成され、基板11の前端部には、左右方向に所定間隙を有して、互いに向き合って上向きに基板11を突出させた逆L字型のリテーナ前端ストッパー14、14が形成され、基板11の後端部には、基板11の一分を上方に折り曲げてアウターメンバー後端ストッパー17が形成されている。
そして、前記リテーナ前端ストッパー14、14間の所定間隙が、前記弾性当接部材5の嵌入部15となる。
符号16・・・は、アウターメンバー1を固定側(図示せず。)と連結する為の連結孔を示している。
【0020】
図4から図5に示すようにリテーナ2は、摺動方向に複数個のボール4・・・を回転自在に保持する互いに向き合うL字形の左右ボール保持突片22、22と、左右ボール保持突片22、22の内側に位置して連設され下向きコ字型に形成されて、上方に突出する基板21より、アウターメンバー1のほぼ4分の1程度の長さに形成されている。
【0021】
インナーメンバー3は、アウターメンバー1とほぼ同長で、基板31と、基板31の左右端部を下向きで、外向き円弧状に屈曲させ、外面にボール摺動面321が形成された左右の折曲縁32、32より、断面下向き略C字型に形成されている。
そして、インナーメンバー3の摺動方向で基板31の後端部には下方に突出し、リテーナ2の基板21の後端面に当接するインナーメンバー後端ストッパー311が形成されている。
符号35・・・は、インナーメンバー3に連結される移動体(図示せず。)との連結孔を示している。
【0022】
アウターメンバー1と、複数個のボール4・・・を回転自在に保持したリテーナ2と、インナーメンバー3は、上記の如く構成され、アウターメンバー1の後端からインナーメンバー3が装着され、所定範囲で次のように摺動する。
インナーメンバー3とアウターメンバー1が上下に重なった最短縮小状態で、リテーナ2の後端部がリテーナ後端ストッパー13に当接した状態となっている。
この状態からインナーメンバー3が引出される、リテーナ2は、ボール4・・・を介して、インナーメンバー3の摺動距離の2分の1の距離移動し、やがて、リテーナ2の前端部がリテーナ前端ストッパー14に当接し、同時にインナーメンバー3のインナーメンバー後端ストッパー311がリテーナ2の後端に当接して、インナーメンバー3の摺動は停止し、スライドレール100は最大伸長状態となる。
【0023】
次に、最大伸長状態から、インナーメンバー3を収納していくと前記とは逆に、リテーナ2は、ボール4・・・を介して、インナーメンバー3の摺動距離の2分の1の距離移動し、やがて、リテーナ2の後端端部がリテーナ後端ストッパー13に当接し、同時にインナーメンバー3のインナーメンバー後端ストッパー311がアウターメンバー後端ストッパー17の内面に衝突してスライドレール100は最短縮小状態となる。
【0024】
スライドレール100の摺動は上記のように行われるが、特に、スライドレール100の摺動を円滑にするため(摺動力を軽くするため)、アウターメンバー1とインナーメンバー3間に設けられるボール4・・・の径を小さくして、アウターメンバー1とインナーメンバー3の嵌合力を弱くし、工作機械やあるいは自動車等の一部を固定側にアウターメンバー1が連結して使用されると、弾性当接部材5が取り付けられていない状態(図8に示めす。)では、固定側が振動するたびに、インナーメンバー3も摺動面321、321とボール4・・・の外周面間で振動し(図8の二点鎖線に示す。)、インナーメンバー3と連結された移動体もガタツク事となっていた。
特に、ボール4の位置する箇所が支点となって、ボール4が位置しない箇所でのインナーメンバー3のガタツキが大きかった。
【0025】
次に、上記ガタツキを防止する為に、インナーメンバー3の引出方向のアウターメンバー1の端部に取り付けられ弾性当接部材5は、スライドレール100の厚み方向でアウターメンバー1の基板11と所定間隔を有する弾性当接基板51と、アウターメンバー1に設けられるリテーナ前端ストッパー14、14間の嵌入部15に嵌入して、弾性当接基板51と共に摺動方向への移動を防止する固定部52と、弾性当接基板51左右両端に連設し、アウターメンバー1の折曲縁12、12のボール摺動面121、121に弾性的に嵌合し、摺動方向以外の方向への脱落を防止するともに、インナーメンバー3の装着時に弾性当接基板51とアウターメンバー1の基板11間の寸法が小さくなる方向に弾性変移することにより、スライドレール100の厚み方向でインナーメンバー3がアウターメンバー1から離間する方向に付勢する弾性力を弾性当接基板51に付与する左右の脱落防止部53、53よりなり、合成樹脂材にて一体に成形されている。そして、弾性当接基板51の厚みは、左右の脱落防止部53、53との左右の連続部分54、54の厚みより大きく形成されている。
【0026】
そして、左右の脱落防止部53、53は、アウターメンバー1への初期の取り付け状態(インナーメンバー3が装着されていない図4に示す状態)において、アウターメンバー1のボール摺動面121、121に密着する外周面を有し、該左右の脱落防止部53、53と、左右の脱落防止部53、53がボール摺動面121、121に密嵌した状態でアウターメンバー1の基板11と所定間隔を有して離間する弾性当接基板51とで略上向きC字形に形成されている。
【0027】
固定部52は、アウターメンバー1のリテーナ前端ストッパー14、14間の嵌入部15に嵌入する嵌入脚部521と、嵌入脚部521が嵌入部15に嵌入した状態で、リテーナ前端ストッパー14、14の収納側に当接する位置決め部522より形成されている。
そして、位置決め部522は、リテーナ2の基板21内に嵌入可能で、かつ、リテーナ前端ストッパー14、14の収納側端面の一部に当接する大きさに形成され、スライドレール100の最大伸長時、リテーナ2の基板21前端部が位置決め部522に外嵌して、リテーナ前端ストッパー14、14に当接する。
【0028】
弾性当接部材5は、上記の如く構成され、図2に示す状態から、嵌入脚部521が嵌入部15に嵌入する位置で、アウターメンバー1の左右の折曲縁12、12のボール摺動面121、121の内面に脱落防止部53、53を密嵌させると同時に、嵌入脚部521を嵌入部15に嵌入し、位置決め部522をリテーナ前端ストッパー14、14の収納側に当接せしめる。
すなわち、弾性当接基板51と位置決め部522によって、リテーナ前端ストッパー14、14を引出側と収納側から挟持する状態となり、弾性当接部材5は摺動方向への移動は阻止される。
そして、脱落防止部53、53は内向き円弧状のボール摺動面121、121に密嵌しているので、スライドレール100の厚み方向に逸脱することはない。(図3図4に示す状態)
【0029】
この状態で、弾性当接基板51とアウターメンバー1の基板11は、スライドレール100の厚み方向で所定間隔を有しているが、インナーメンバー3の装着時(アウターメンバー1の後端部からインナーメンバー3の先端部を装着した時)には、インナーメンバー3の左右の折曲縁32、32の下端縁が弾性当接基板51を押し下げる。
【0030】
そして、弾性当接基板51がインナーメンバー3の左右の折曲縁32、32に押し下げられると、脱落防止部53、53が、ボール摺動面121、121から変形案内面122、122に押し付けられる。
この時、脱落防止部53、53はボール摺動面121、121から変形案内面122、122に押し付けられるため、必然的に脱落防止部間53、53の直線距離が縮まり、脱落防止部の脱落防止部間の直線距離が縮まることによって、弾性当接基板51は、脱落防止部53、53によって左右両端から押された状態となる。
そのため、弾性当接基板51は、アウターメンバーの基板側11に湾曲状態に弾性変形する。
そして、弾性当接基板51がアウターメンバーの基板側11に湾曲状態に弾性変形することによって、弾性当接基板51に、インナーメンバー3が常にアウターメンバー1から離間する方向の弾溌力が発生する。
【0031】
このように、弾性当接基板51は、アウターメンバーの基板側11に湾曲状態に弾性変形して、インナーメンバー3が常にアウターメンバー1から離間する方向に弾溌力が発生するので、インナーメンバー3は押し上げられ、ボール摺動面321、321の下側とボール4の外周面が密着した状態となる(図5に示す状態)。
【0032】
そして、アウターメンバー1の基板11の後端部を上方に折り曲げてアウターメンバー後端ストッパー17を形成しスライドレール100を完成させる。
【0033】
次に、スライドレール100のアウターメンバー1を固定側と連結し、インナーメンバー3を移動体と連結した状態(図7に示す状態)では、移動体の重量、あるいは移動体の左右幅(縦使いの左右のスライドレール100間に配設される移動体の左右幅)によってインナーメンバー3は、基板31がアウターメンバー1の基板11に接近する方向に変移し、折曲縁32、32の端部によって弾性当接基板51をアウターメンバー1の基板11側に押しやるので、脱落防止部53、53は、さらにボール摺動面121、121から変形案内面122、122に押し付けられ、弾性当接基板51はよりさらに湾曲する。
すなわち、インナーメンバー3が、スライドレール100の厚み方向で、アウターメンバーから離間する方向に常に弾溌力を付勢されているので、アウターメンバー1とインナーメンバー3のガタツキは防止され、インナーメンバー3の折曲縁32、32の下端縁に弾性当接基板51は弾性的に接触しているだけであるから、摺動力に影響を与えることはほとんどない。
【0034】
そして、スライドレール100の最短縮小状態より、スライドレール100の最大伸長状態で、インナーメンバー3の後端部分とアウターメンバー1の先端部分(ボール4・・・が位置する箇所)とのガタツキ(離間寸法)が最小となるから、スライドレール100の最大伸長状態の手前では、インナーメンバー3に対する弾性当接基板51の弾溌力は最大に近づくので、必然的にインナーメンバー3の摺動スピードにブレーキがかかり、スライドレール100が最大伸長状態となって停止するときに、大きな衝撃が発生することもない。
【0035】
このように構成された本発明品のスライドレール100は、最大伸長状態となって停止するときに、大きな衝撃が発生することがないので、自動車用の部品として使用のみならず、例えば、引き出しのレールに使用すれば、引き出しの最大開放時の衝撃によって、引き出しの内容物が飛び出すことがないため使い勝手がよい。
【符号の説明】
【0036】
1 アウターメンバー
11 基板
12、12 左右の折曲縁
121、121 ボール摺動面
14、14 リテーナ前端ストッパー
15 嵌入部
100 スライドレール
2 リテーナ
3 インナーメンバー
31 基板
32、32 左右の折曲縁
321,321 ボール摺動面
4 ボール
5 弾性当接部材
51 弾性当接基板
52 固定部
521 嵌入脚部
522 位置決め部
53、53 左右の脱落防止部
54、54 左右の連続部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8