(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つ以上のプロセッサは、さらに、前記選択された時間間隔に従って、前記複数の箇所の各々に対する周波数スペクトルを計算することによって、前記電気解剖学的データに対応する前記臓器の表面の複数の箇所に対して周波数を分析するように構成され、
前記ユーザ入力装置は、さらに、別の時間間隔である別の選択をしたユーザ入力を受取るように構成され、
前記1つ以上のプロセッサは、さらに、前記選択された別の時間間隔に従って、前記複数の箇所の各々に対して周波数スペクトルを計算するために、前記少なくとも1つの分析方法を前記電気解剖学的データに再適用するように構成された、請求項1に記載の医療装置。
前記ユーザ入力装置は、さらに、前記臓器の表面の所定の位置に対応する位置データを定義する別の入力を受取るように構成され、少なくとも1つの仮想電極は、前記臓器の表面の対応する領域のグラフィック表示上に表示されて、
前記1つ以上のプロセッサは、
前記少なくとも1つの分析方法の前記位置データおよび前記電気解剖学的データへの適用に基づいて、各少なくとも1つの仮想電極に対する電気生理学データの独立した視覚表示を生成し、
前記独立した視覚表示は、前記臓器の表面の対応する領域の前記グラフィック表示上に空間的に表されている前記表示とともに表示され、
前記ユーザ入力に応答して、前記臓器の表面の対応する領域の対話型グラフィック表示に、前記少なくとも1つの仮想電極のグラフィック表示を重ね合わせることをさらに備える、
ように構成された、請求項1に記載の医療装置。
前記1つ以上のプロセッサは、さらに、前記電気的活動の波形表示において視覚化された現在時刻の指示を生成するように構成され、前記現在時刻は、前記変更された視覚表示に対応する、前記選択された時間間隔における時間を特定し、
前記選択された時間間隔は、前記臓器の表面の対応する領域上の少なくとも1つの箇所に対する時間的電気生理学情報の対話型グラフィック表示から選択され、
前記現在時刻の指示は、前記現在時刻を示すための、前記時間的電気生理学情報のグラフィック表示におけるある位置に表示されるグラフィック要素をさらに備える、
請求項7に記載の医療装置。
前記電気解剖学的データは、前記臓器の表面全体にわたって分布する複数の箇所の各々に対して、前記期間にわたって時間インデックスが付けられている瞬間的な電気的活動に対応する、請求項1に記載の医療装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一般に、患者の電気的活動の視覚化に関し、より具体的には、患者のための電気生理学データの空間的視覚化に関する。
【0012】
一実施形態において、電気解剖学的データは、ある期間にわたる臓器の表面での電気的活動に対する電気解剖学的データを示すために記憶装置に格納することができる。ユーザが該期間内の間隔を選択できるようにツールが設けられている。該間隔のユーザ選択に応動して、生理学的情報の視覚表示は、少なくとも1つの方法を該電気解剖学的データに適用することにより、該ユーザが選択した間隔に対して生成される。所望の生理学的情報のそれぞれの空間的視覚化を実現するのに、様々な方法を用いることができる。例えば、該視覚表示は、臓器の表面の所定領域のグラフィック表示上に、(例えば、電気解剖学的マップとして)空間的に示すことができる。追加的な実施例として、1つ以上の仮想電極を、対応する電気記録図を生成するために、または、該電極に対する他の生理学的情報のプロットを生成するために、臓器表面のある箇所に配置することができる。従って、ユーザは、該電気記録図から収集された空間的な関連情報、または、他の生理学的情報のプロットを利用して、該間隔の選択をガイドすることができる。ユーザはさらに、該間隔を変えて、その結果として生じる視覚表示を動的に変更することができる。
【0013】
電極または他の選択された解剖学的部位に関連する「仮想」という用語は、本願明細書において用いる場合、該選択された部位または構造は、物理的電極構造ではなく、ある箇所、ある箇所の集合、または、ユーザによって選択される実質的に連続する表面領域におけるデータにより(例えば、数学的モデルとして)パラメータ化されることを意味する。このようにして、所与の仮想電極に対する生理学的データの結果として生じる視覚表示は、既に取得されている、既に計算されている電気生理学データを、または、患者の表面領域に関連する1つ以上の幾何学的位置からなるセットに対する取得データと計算データの組合せを示すことができる。
【0014】
当業者は、本発明の一部を、方法、データ処理システムまたはコンピュータプログラムプロダクトとして具体化することできることを正しく認識するであろう。従って、本発明のそれらの部分は、全体的にハードウェアの実施形態、全体的にソフトウェアの実施形態またはソフトウェアとハードウェアを組合わせた実施形態のかたちをとることができる。さらに、本発明のそれらの部分は、コンピュータが使用できる記憶媒体上に、コンピュータ可読プログラムコードを有する該媒体上のコンピュータプログラムプロダクトであってもよい。限定するものではないが、静的および動的記憶装置、ハードディスク、光記憶装置および磁気記憶装置を含むどのような適当なコンピュータ可読媒体も用いることができる。
【0015】
本願明細書においては、本発明のいくつかの実施形態が、方法、システムおよびコンピュータプログラムプロダクトのフローチャート図を参照して説明されている。該図のブロックおよび該図におけるブロックの組合せは、コンピュータが実行可能な命令によって実施できることは理解されるであろう。これらのコンピュータが実行可能な命令は、汎用コンピュータの1つ以上のプロセッサ、専用コンピュータ、または、該プロセッサを介して実行する該命令が、該ブロックで指定された機能を実施するようにマシンを形成する他のプログラム可能なデータ処理装置(または、装置と回路の組合せ)に与えることができる。
【0016】
また、これらのコンピュータが実行可能な命令は、特定の方法で機能するようにコンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に指示することができるコンピュータ可読記憶装置に格納することもでき、その結果、該コンピュータ可読記憶装置に格納された命令は、該フローチャートブロックで指定された機能を実施する命令を含む製品をもたらす。また、該コンピュータプログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置上にロードして(
図17を参照)、該コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実行する命令が、該フローチャートブロックで指定された機能を実施するためのステップを実行できるように、該コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実行される一連の作動ステップに、コンピュータが実施するプロセスを生じさせる。
【0017】
図1は、患者の生理学的データを視覚化するためのシステム10の実施例を示す。システム10は、スタンドアロンのコンピュータ、ワークステーション、特定用途向けマシン、または、1つ以上のモジュールまたはデータが、ユーザがシステム10と情報をやりとりする場所に対してローカルまたはリモートに存在することができるネットワーク環境に実装することができる。
【0018】
システム10は、(例えば、ローカルまたはリモートの)関連する記憶装置に格納できるような1人以上の患者のための患者データ12を含む。患者データ12は、各々が、インデックスが付けられ、または、他の方法で患者の解剖学的構造と関連付けられている複数の箇所に対する電気的情報を表す電気解剖学的データ14を含むことができる。また、患者データ12は、患者形状モデルとして具体化することができるような患者形状データ16も含むことができる。一実施形態において、該患者形状データは、2次元または3次元の表示としてグラフィックに描くことのできる、心臓等の患者の臓器全体のモデルの表面に対応させることができる。
【0019】
患者の電気解剖学的データ14は、電気生理学マッピングカテーテル、または、患者の(例えば、心臓等の臓器の)選択した領域に対する電気生理学データを収集するのに利用することのできる他の手段から集められているような生データとすることができる。加えて、または別法として、電気解剖学的データ14は、生データから計算して、患者の選択した領域(例えば、心臓等の臓器の表面)に対する電気生理学情報を生成することができるように、処理データに対応することができる。
【0020】
実施例として、接触または非接触型の電気生理学カテーテルは、患者の心臓に配置することができ、および例えば、多数の心拍間隔中に、経時的に複数の空間的位置で電気生理学データを収集することができる。このようなデータは、患者の心臓のための画像データと共に、空間的かつ一時的に統合して、患者の心臓のための電気解剖学的データ14を生成することができる。別法として、他の装置(例えば、カテーテルまたはパッチ)を、例えば、開胸中や低侵襲処置中に、患者の心臓の上または近傍に心内膜的および/または心外膜的に配置して、患者の心臓の表示にマッピングして対応する同様の電気解剖学的データ14を生成することのできる電気的活動データを記録することができる。
【0021】
別の実施例として、非侵襲電気生理学マッピング(例えば、心臓に対する心電イメージング)を患者に対して実行して、電気解剖学的データ14を生成することができる。この手法は、患者の臓器の所定の表面に対する電気的活動を再構成するようにプログラムされた反転法を介して、体表面の電気的測定と、患者形状情報とを組合わせることにより、電気生理学データを生成することができる。このようにして、該反転法の結果が、患者形状データ16に対して記録(または、インデックス付け)される対応する電気解剖学的データ14を生成することができる。
【0022】
当業者は、システム10は、侵襲または非侵襲であってもよいこれらまたは他のアプローチのいずれかによって収集および/または得ることのできる患者の電気解剖学的データ14に同様に適用可能であることを理解および正しく認識するであろう。加えて、電気解剖学的データ14は、どのような形態でも生成して、システム10で処理するための適切な形態に変換することができることは理解され、かつ正しく認識されるであろう。
【0023】
システム10は、患者の電気解剖学的データ14に加えて、患者の解剖学的構造の所定の表面領域を表すことができるように、患者形状データ16も用いる。例えば、患者形状データ16は、患者の電気解剖学的データがそれに対して記録されている臓器または他の構造の表面の患者固有の表示に対応することができる。例えば、患者形状データ16は、患者に対して取得された画像データの適切な画像処理によって生成できるように、患者の臓器のある領域のグラフィック表示を含むことができる。このような画像処理は、デジタルイメージセットからの臓器の抽出またはセグメンテーションを含むことができる。従って、セグメント化された画像データは、患者の臓器の表面領域の2次元または3次元のグラフィック表示に変換することができる。別法として、患者形状データ16は、患者の臓器に対する画像データに基づいて構成されている患者の臓器の数学的モデルに対応することができる。後の処理およびシステム10における視覚化を容易にするために、適切な解剖学的ランドマークまたは他のランドマークを、臓器のための解剖学的データによって表された該臓器と関連付けることができる。
【0024】
上述したように、電気解剖学的データ14は、患者形状データ16と共に共通の座標系に記録することができる。例えば、電気解剖学的データ14は、(異なる解剖箇所に対応する)行と、(サンプルに対応する)列とからなるデータ構造で格納することができ、この場合、該行のデータは、患者形状データ16上に存在する各箇所と同じインデックスを有し、または、各箇所に記録される。電気的データ14と患者形状データ16との間のこの記録またはインデックス付けの関係は、符号18の点線によって示されている。一実施形態において、該列の各々における該サンプルは、患者の全表面領域(例えば、心臓)にわたる同時情報を表すことが可能である。
【0025】
患者形状データ16は、ほぼどのような画像診断法を用いても得られる画像データから生成することができる。画像診断法の実例は、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)、3D回転血管造影(3DRA)、磁気共鳴イメージング(MRI)、X線、陽電子放射断層撮影(PET)等を含む。このようなイメージングは、(例えば、電気解剖学的データ14を生成するのに用いられる測定の前後に)独立して実行することができる。別法として、イメージングは、患者の電気解剖学的データ14を生成するのに用いられる電気的活動の記録またはイメージングと同時に実行してもよい。
【0026】
当業者には、これらまたは他の画像診断法のうちのいずれか1つによって取得することのできる解剖学的データを採用するのに、システム10が同様に適用可能であることは理解され、かつ正しく認識されるであろう。別法として、または追加的に、患者形状データ16は、患者自身の臓器ではなくてもよい臓器の一般的またはカスタム表示に対応することができる。このような場合、電気解剖学的データ14は、識別された解剖学的ランドマークに従って、(登録18を介して)該臓器の表示にマッピングすることができる。解剖学的モデルを、もしあれば信号取得システムと共に登録するために、手動、半自動または自動の登録プロセスを採用することができる。
【0027】
さらに、入力データのフォーマットおよび種類により、適切なフォーマット化および対応する種類の表示への変換は、システム10によって実施できることは、理解され、かつ正しく認識されるであろう。例えば、患者データ12は、既知のフォーマットでシステム10へ与えられる電気解剖学的データを含むことができ、または、該システムにより、処理するための標準的なフォーマットに変換することができる。従って、患者データ12は、患者のための電気解剖学的データからなる集合セットを含むことができる。
【0028】
システム10は、例えば、患者の電気的活動に関連する原因箇所および機序を識別し、分類し、および視覚化するようにプログラムされている方法22でプログラムされている分析システム20を含む。分析システム20は、出力結果データに基づいて、対応する視覚表示26を生成する出力装置24に、該出力結果データを供給する。方法22は、全ての複雑な不整脈間に、確実かつ無矛盾のターゲットにアブレーションを実行するのに用いることもできる。方法22は、例えば、術前、術中および術後の経過観察中に、心房活動の変化および組織をモニタするのに用いることもできる。該システムは、すでに取得されたデータのための情報、ならびに実時間(または、ほぼ実時間)分析に対して取得されているデータを計算する方法を採用することができる。例えば、該方法は、アブレーション中の心臓活動のモニタリング、アブレーション結果の分析、およびアブレーション後の経過観察に有用である。
【0029】
また、システム10は、どの方法およびアルゴリズムが用いられるかを選択するのに、および該方法と、出力装置24に表示される、結果として生じる表示26との実行に関連するパラメータを制御するのに用いることができるインタフェース28を含むこともできる。例えば、ユーザインタフェース28は、ユーザが、本発明の態様に従って生成された出力表示を投入する際に用いるための計算を実行するのに用いられる1つ以上のアルゴリズムを選択できるようにする。ユーザに視覚的に示すことのできる対応する生理学的データを生成するために、複数の所定の、およびユーザがプログラム可能なアルゴリズムを採用することができる。加えて、各アルゴリズムは、本願明細書に記載されているように(位置データに基づいて)患者の臓器の表示に対して既に位置決めされている割当て仮想電極に対して、対応する生理学的データを計算するようにプログラムすることができる。仮想電極は、それのために、選択された方法または方法の組合せが、対応する出力表示を生成するための患者の電気的データに適用される、関心のある患者の解剖学的構造上のある箇所に(心外膜的または心内膜的に)対応する。さらに、ユーザは、該仮想電極上のリードごとのデジタル信号処理アルゴリズム、または、該仮想電極のリードの全てまたはいくつかからなる集合に対する統計分析を含む一般的な計算を含む1つ以上のアルゴリズムを動的に割当てることができる。
【0030】
方法22の各々は、ドロップダウンメニューまたはダイアログを作動させるためのグラフィック機能等の対応するユーザインタフェース要素を用いることができる。例えば、所定のアルゴリズムに対する該ユーザインタフェース要素の作動に応動して、ユーザは、対応するプログラミングダイアログにアクセスすることができ、このことは、ユーザが、選択したアルゴリズムに関連する特性および制約を決めるのに利用することができる。該特性は、結果として生じる出力データおよび対応する視覚表示がそれに応答して生成される1つ以上の時間間隔を設定することを含むことができる。また、ユーザインタフェース28は、ユーザが、それを介して該選択されたアルゴリズムに関連する関連制約を入力することのできるユーザエントリダイアログを提供することもできる。所定のアルゴリズムに対する制約入力ダイアログは、該電極のサブセットを選択し、および該ダイアログに関連する入力または出力制限を規定するメカニズムを含むことができる。
【0031】
方法22の各々は、結果として生じる出力表示26に生成されるある種の情報を定義することができる。方法22は、実際の電極によって測定することができる各種データ(例えば、電位)を生成することから、より複雑な統計的および比較的な各種情報を生成することまで複雑に及ぶ可能性がある。一つの種類のデータは、例えば、選択された電極構成に対する電位付勢時間または電気生理学信号の周波数を含む参照または測定値と考えることができる。他の種類のデータは、例えば、平均、最大または最小を含む、例えば、何らかの変数の勾配、または、変数の統計を含むそのような測定変数に基づいて計算することのできる情報を生成することができる。このような何らかの変数または変数の統計は、臓器、および該臓器に対して位置決めされている電極構成に関して空間的に、および電気生理学データが既に取得されているある期間にわたって時間的に計算することができることを正しく認識すべきである。時間的範囲(または間隔)は、所定の選択された方法またはアルゴリズムを実行するための制約または特性の一部として定義することができる。
【0032】
また、多数の出力表示およびそれらの表示の構成があり、表示される情報の種類は、ユーザが制御することができる。例えば、ユーザインタフェース28は、例えば、出力は、テキストベースの形式であるか、または、選択された臓器の上に、および選択された電極構成および/または波形表示のグラフィック表示に対して重ね合わせられるグラフィック形式であるかを制御するようにプログラムされるグラフィック制御法にアクセスするのに利用することができる。
【0033】
1つ以上のアルゴリズムのうちのいくつでも選択し、そのようなアルゴリズムを、1つ以上の仮想電極構成のうちのいくつにも適用する機会をユーザに与えることに加えて、方法22は、比較データを生成するようにプログラムされた方法および機能にアクセスできる比較機能を含むことができる。該比較データは、(例えば、異なる仮想電極または異なる解剖学的位置間の)空間的比較、時間的比較(例えば、時間内の異なる事例における同じ仮想電極)、あるいは空間的・時間的比較(例えば、異なる時間事例における異なる仮想電極)とすることができ、これらの比較は、比較されるデータの種類に非常に依存する可能性がある。さらに、比較されたデータは、異なる仮想電極構成にたいして得られた同じ種類の情報を比較することができる。
【0034】
時間的比較データの実施例として、(例えば、同じ仮想電極構成に対応する)同じ所定の解剖学的位置に対する1つ以上の測定値または取得値を、異なる心拍間隔に対して比較することができる。例えば、ユーザは、第1の間隔の場合の最も速い興奮伝達時間と、第2の間隔の場合の最も速い興奮伝達時間との比較を実行できる方法を採用することができ、この結果は、患者の臓器の同じ表示に重ね合わせて、または、患者の臓器の2つの異なる表示に対する並列比較として、出力表示に表示することができる。
【0035】
また別の実施例として、元のデータセットがユニポーラデータとして取得されている場合には、上記方法は、例えば、2つの異なる仮想電極間で既に決められている電気生理学データを減算することにより、対応するバイポーラデータを生成するのに用いることができる。2つの異なる仮想電極は、自動的に選択することができ、例えば、各ペアは、最近傍アルゴリズムを適用することにより選択される。別法として、該仮想電極のペアは、例えば、ポインタを用いて該電極を選択することにより、または、テキストベースのデータ入力法における名称によって該電極を識別することにより定義できる。
【0036】
本願明細書に記載されているように予め定義されたアルゴリズムのセットを適用することに加えて、ユーザインタフェース28は、ユーザがユーザ定義の新たなアルゴリズムを構成するための手段を生成することもできる。例えば、新たなアルゴリズムは、測定した変数の種類および得られた変数の種類を含むことができる1つ以上の特性を定義するように、および選択された電極間に相対的関係を与えるように構成することができる。該新たなアルゴリズムは、該システムによって用いられる定義済みのスクリプト言語に従って、生成することができる。
【0037】
また、1つ以上のアルゴリズムを、例えば、ユーザが選択したアルゴリズムまたは機能範囲に従って、ユーザ定義の基準に合う1つ以上の解剖学的位置を動的に決定および識別するのに用いることもできる。ユーザは、ユーザ定義の基準を満たす患者の臓器の解剖学的位置に、仮想電極(または、マップ等の他の識別子)からなるセットを含む視覚表示を自動的に動的に生成するようにプログラムされた方法を採用することができる。
【0038】
さらなる実施例として、ユーザインタフェース28は、患者の形状データ16から生成されたグラフィック表示上の位置をユーザが選択するための手段を生成することができる。選択された位置は、患者の形状データに一致する座標系の3次元位置に対応することのできる位置データに変換することができる。一実施例として、ユーザは、ポインティングデバイス(例えば、マウス)を介したカーソルを用いて、患者形状の2次元グラフィック表示上の位置を識別および選択することができる。2−Dスクリーン位置は、選択された位置に従って、該モデル上の対応する3−D位置に変換することができる。
【0039】
上述したように、分析システム20は、1つ以上の分析法22を電気解剖学的データ14および患者の形状データ16に適用することにより、視覚表示出力データを生成するようにプログラムされる。例えば、出力装置24は、患者の形状データ16のグラフィック表示に隣接する別のウィンドウ内に表示することのできるグラフ、テキストまたは数値の形式の視覚化26を実現できるディスプレイとすることができる。加えて、または別法として、分析システム20は、矢印30で示す患者モデルのグラフィック表示に対してグラフィックに重ね合わされたオブジェクトとして描画される(例えば、グラフまたは数値の形式の)対応する視覚表示を生成するように構成されている出力装置に、出力データを与えることができる。
【0040】
図2は、患者の生理学的データを視覚化するための別のシステム50の一実施例を示す。
図2の実施例においては、視覚表示の前処理、分析および生成を実行するためのシステム50の機能が図示されている。システム50の前処理部は、データを前処理して、1つ以上の拍動を含むことのできるような適切な時間間隔に対して適切な形式に変換するのに利用することができる。システム50は、ユーザ入力に応動する前処理グラフィカルユーザインタフェース(GUI)52を含む。前処理GUI52は、各々が、対応する前処理方法54を作動させることのできる複数の選択機構を含むことができる。
【0041】
図2の実施例において、前処理GUI52は、ユーザに関心のある可能性のある1つ以上の時間間隔を選択するのに利用することのできる間隔セレクタ56を含む。心電図解析の実施例の場合、該間隔は、電気的データ58がその期間にわたって取得されてきた、ユーザ定義の時間間隔の拍動または心周期(例えば、1つ以上の周期の一部)に対応させることができる。別の実施例として、該間隔は、スプライシングされた信号の延びた間隔による向上した周波数分解能を有するスプライシングされた信号を生成するように統合することのできるように、時間的に連続しないものとすることができる。
【0042】
図1に関して説明したように、患者の電気的データは、侵襲的または非侵襲的なアプローチを含む様々な手法で取得することができる。従って、患者の電気的データ58は、複数の電極の各々に対して取得された信号を表すように、患者のために取得されている実質的な生データに対応させることができる。
【0043】
また、前処理GUI52は、どの電極を、さらなる処理および分析に利用するための出力結果セットを投入するのに用いるべきかを選択するのに用いられる電極セレクタ60を含むこともできる。電極の選択は、自動式、手動式または手動と自動の組合せとすることができる。電極セレクタ60は、対応する解剖学的位置で、患者の電気的データを取得するのに利用されている複数の電極の各々を、ユーザが選択的に作動可能または作動不能にできるGUIを介して設けることができる。一実施例として、複数の電極を、サンプリング期間中に、電気的情報を取得するために、患者の胴の表面に分散させることができる。従って、該電極セレクタは、どのセンサが、患者の電気的データ58のサブセットを取得および定義するのに用いられるかを設定するのに利用することができる。また、自動化した方法は、不良チャネルを検出して除去するのに利用することもできる。
【0044】
また、前処理GUI52は、患者の電気的データ58の選択したセットのための1つ以上の前処理フィルタ64を選択するのに利用することのできるフィルタセレクタ62を含むこともできる。該前処理フィルタは、例えば、ローパスフィルタ、DC除去フィルタ、トレンド除去フィルタまたはウィルソン結合電極(WCT)フィルタを含むような、電気的データ58をフィルタリングするようにプログラムされたソフトウェア方法を含むことができる。当業者は、フィルタセレクタ62を介して選択的に作動可能または作動不能にすることのできる他の種類のフィルタ64について理解し、かつ正しく認識するであろう。
【0045】
該フィルタが作動され、または作動されていないか、あるいは他の方法で(パラメトリックに)調節されている場合、フィルタ方法64は、(選択された間隔、および選択されている電極に従って、低減することもできるように)電気的データ58に適用して、対応する患者の電気的データのフィルタリングされたセットを生成することができる。フィルタリング、電極/チャネル選択および時間間隔選択が実行された後、前処理GUI52(または、他の手段あるいは作動化)は、本願明細書に記載されているように、反転法66を作動させるのに用いることができる。反転法66は、(選択された時間間隔、選択されたチャネルおよびフィルタリングに対して)修正された患者電極データと共に、形状データ68を用いて、対応する電気的解剖学的表面データ70を生成する。電気解剖学的データ70は、所定の表面領域、例えば、患者の心臓の心外膜面または心内膜面に対してインデックス付けまたは登録される。
【0046】
体表面電極との用途に適した反転法の実例は、「非侵襲性心電イメージングのためのシステムおよび方法(System and Method for Non−invasive Electrocardiographic Imaging)」というタイトルの米国特許第6,772,004号明細書、および「非侵襲性心電イメージングのためのシステムおよび方法(System and Method for Non−invasive Electrocardiographic Imaging)」というタイトルの米国特許出願第11/996,441号明細書に開示されており、これらの明細書は参照によって本願に援用する。他のアプローチを、患者の電気的データ58を取得するのに利用される機構に従って、さらに変化する可能性のある該電気解剖学的データを生成するのに用いることができることは正しく理解されるであろう。
【0047】
また、視覚化システム50は、患者の臓器に関連する生理学的データの表示74を生成するための結果データを生成するようにプログラムされている分析法72も含む。表示74は、患者のための電気解剖学的データに基づいて生成することができる。表示74は、グラフィック、テキスト情報、またはグラフィックとテキストの組合せを含むことができる。システム50によって生成される表示は、実際に測定された量、または、電気解剖学的データ70中に他の方法で生成された量に限定されないが、ユーザが選択的に配置できるような1つ以上の仮想電極に対する電気生理学データに対応させることもできることは、正しく認識されるであろう。
【0048】
分析法72は、ユーザによって設定された、または、治療タイプごとに医師の選択により事前設定されたパラメータに基づいて、結果データを出力ジェネレータ76に供給することができる。出力ジェネレータ76は、表示されるデータの種類によって変化する可能性のある1つ以上の形式で表示74を生成するようにプログラムされる。
【0049】
一実施例として、出力ジェネレータ76は、患者の所定の表面領域におけるユーザが選択した1つ以上の位置に応答して、視覚表示74を生成するための仮想電極(VE)ジェネレータ78を含む。各選択位置は、形状データ68により定義または表すことのできる座標系での位置に対応させることができる。例えば、患者形状座標系での位置を選択することにより、最も近い幾何学的位置(または、最も近い位置の集合)に対する電気解剖学的データ70における対応する電気的情報は、結果をもたらすための分析法72によって利用することができる。また、仮想電極ジェネレータ78は、分析結果から生理学的データの対応する表示を生成する。
【0050】
仮想電極ジェネレータ78によって生成された表示74は、例えば、(各単一点仮想電極の場合)選択された位置に、ならびに多点または多次元仮想電極に対応する複数のユーザが選択した位置に沿って、データを生成するために、ユーザ選択に応答して空間的にローカライズされると考えることができる。各仮想電極に対して生成された生理学的データ74の表示は、グラフ、テキスト/数字情報、またはグラフとテキスト/数字情報の組合せの形式とすることができる。任意の複数の表示を、各仮想電極に対して生成することができる。
【0051】
また、出力ジェネレータ76は、患者の臓器の所定の表面領域上に重ね合わせられる電気解剖学的マップの形式で生理学的データを生成するためにプログラムされるマップジェネレータ80も含む。例えば、マップジェネレータ80は、例えば、2次元または3次元表示とすることができる、患者の臓器の全表面表示上に、1つ以上のマップを描画することができる。例えば、マップジェネレータ80は、どのような種類の電気解剖学的マップが生成されるかを選択するために、(例えば、ドロップダウンコンテクストメニューを介した)ユーザ選択に応答してプログラム可能にすることができる。
【0052】
出力ジェネレータ76は、取得した患者の電気的データから決めることのできる時間的または空間的特性を含む、本願明細書に記載されたいずれかの機構に従って生成された電気解剖学的データ70に基づいて生成できるものと同様の情報を含むように表示74を生成することができる。しかし、本願明細書に記載されているように、システム50は、ユーザが、表示74がそのために生成される臓器に対するそのようなカテーテルの所定の種類および配置の1つ以上の仮想電極の構成を決めることを可能にする。
【0053】
加えて、または別法として、該仮想電極の構成および配置は、例えば、ユーザ定義のパラメータによって定義することのできる所望の解剖学的位置(例えば、ランドマーク)に1つ以上の仮想電極の配列を配置するように、分析法72によって自動的に選択することができる。また、ユーザは、表示74が含むであろう出力の種類を定義するために、パラメータおよび特性を設定することもできる。従って、一旦、電気生理学データが、(何らかの手法を用いて)患者のために取得されて、電気解剖学的データ70として記憶装置に格納されると、ユーザは、システム50を用いて、該患者の臓器に対する関心のある生理学的データを視覚化することができる。それらの結果は、システム50のユーザが実際に何らかの新たな電気生理学データを患者から要求することなく得ることができる。その結果、システム50は、現存するシステムに対する有力な追加物とすることができ、また、独立型システムとして利用することができる。
【0054】
システム50は、分析法72を制御および作動させるためのヒューマン−マシンインタフェースを形成するようにプログラムされる分析ユーザインタフェースGUI82を含む。ユーザは、ユーザ入力装置(例えば、マウス、キーボード、タッチスクリーン等)を介してGUI82を用いてユーザ入力を入力して、パラメータおよび変数を設定し、および分析法72によって利用される表示方法およびアルゴリズムを制御することができる。
【0055】
ユーザインタフェース82は、1つ以上の結果として生じる表示74がそのために構成されることになる1つ以上の電極の構成および配置を決めるのに用いられる構成コンポーネント84を含むことができる。例えば、構成コンポーネント84は、複数の所定の電極タイプを含む電極構成データセットをユーザに提供することができる。該所定の電極構成は、どのような数の複数の電気生理学カテーテルにも対応することができ、これにより、市販製品に対応することが可能である。例えば、該所定の電極構成は、既に定義されている、またはユーザによって構成されている、あるいは他の方法で、使用可能な仮想電極構成のライブラリとして記憶装置に格納されている、どのような数の複数の電極構成にも対応することができる。上述したように、使用可能な電極構成は、(単一点に対応する)単一の電極または(例えば、カテーテルまたはプローブに沿って配置される)電極の直線上配列、2次元電極構成(例えば、パッチまたは面構成)または(例えば、電極の体積的構成を表す)3次元電極構成まで多岐にわたる可能性がある。これらおよび他の仮想電極構造は、電極構成コンポーネント84を介して決めることができる。また、ユーザは、電極の数と、所与の構成に対するそのような電極の空間的分布とを指定することもできる。一実施例として、単一の電極は、1つの仮想電極の場合のデフォルト設定として定義することができ、この設定は、構成GUI84を介して異なる構成に変更することができる。
【0056】
ユーザインタフェース82は、位置選択コンポーネント86も含む。位置選択コンポーネント86は、(例えば、1つ以上の電極を備える)選択された電極構成が、患者の臓器に対してそこに配置されることになる1つ以上の位置を識別するのに利用することができる。例えば、位置選択コンポーネント86は、ユーザがポインティングデバイス(例えば、マウス、タッチスクリーン等)で位置決めできるカーソル等のGUI要素を用いて、患者の形状のグラフィック表示上の対応する解剖学的位置を選択することができる。例えば、該位置は、臓器内の、または臓器に隣接する該臓器の選択された表面領域上とすることができる。上述したように、表示74は、位置データ、所与の仮想電極構成のための電気解剖学的データに基づいて、選択された位置にたいして生成することができる。
【0057】
実施例として、位置選択コンポーネント86は、ユーザ入力に応動して、選択された電極構成のグラフィック表示(例えば、カテーテル、パッチまたは他の種類の電気生理学測定装置の形態の単一の仮想電極または配列仮想電極)を選択した位置に配置させる。該位置選択コンポーネント86は、患者の臓器の解剖学的モデルのための2次元または3次元の座標系に対する、該選択された電極構造の方向(例えば、回転)および位置を調節するのに利用することもできる。すなわち、本願明細書に記載されているように、画像上のカーソルの選択位置は、既知の患者形状に対する(例えば、3次元座標系における)位置に変換することができる。加えて、または別法として、位置選択コンポーネント86は、1つ以上の予め定義された共通の解剖学的位置のリストを生成することができる。該共通の位置は、プログラム可能にすることができ、また、ユーザ定義の位置と、該臓器の場合の電気的活動を視覚化するために有用な位置になる当技術分野において既知の位置とを含むことができる。
【0058】
さらなる実施例として、ユーザが、仮想電極構成を、単一の電極を有するか、または、複数の電極を有するカテーテルとして定義する状況においては、位置選択コンポーネント86は、該カテーテルが配置されることになる位置を特定するのに利用することもできる。識別された位置は、該位置を特定するユーザに応答して、患者の人体の対話型表面領域のグラフィック表示上に重ね合わせられた該仮想電極構造のグラフィック表示と共に投入することができる。加えて、または別法として、カーソル自体は、例えば、選択された仮想電極構造が、臓器モデルが表示されているウィンドウを横断する間に、該構造の形態をとることもできる。
【0059】
仮想電極が配置されることになる所望の位置を選択することに加えて、位置選択GUI86は、ユーザが、患者の臓器のグラフィック表示上の所望の位置に(例えば、左心室に)輪郭または閉曲面を描くための手段を設けることができる。その結果として生じる輪郭または閉曲面は、仮想電極構造のための対応する経路または境界を特定することができる。輪郭の場合、該輪郭の長さは、仮想電極の配列と共に自動的に投入することができる。同様に、パッチ境界の内部は、電極の配列と共に自動的に投入することができる。電極の空間的分布および数は、(電極構成コンポーネント84を介して)ユーザによって指定することができる。所与の構成に対する電極の配列および空間的分布は、(例えば、デフォルト設定として)均一にすることができ、あるいは、ユーザがプログラムできるように、不均一にしてもよい。
【0060】
また、ユーザインタフェース82は、生成される各表示74の場合の出力パラメータおよび特性を設定するのに利用される出力制御コンポーネント88を含むこともできる。出力制御コンポーネント88は、各仮想電極構成の場合の電極構成データおよび位置データに基づいて、表示74の一部として生成することのできる1つ以上の測定または取得電気生理学パラメータを選択するのに用いることができる。出力制御88は、各仮想電極に対して同じアルゴリズムの使用を実行できるようにプログラムすることができ、または、別法として、異なるアルゴリズムまたは制約を、各仮想電極に対して定義することができる。選択された出力制御に対する結果セットは、(例えば、ユニポーラまたはバイポーラ)電位、電気記録図、興奮伝達時間、周波数情報(例えば、パワースペクトル)および他の取得量にも関連する統計を含むことができる。
【0061】
出力制御コンポーネント88の別の適用は、比較目的のために、電極構成を選択的に替えることとすることができる。例えば、出力制御コンポーネント88は、単独で、または電極構成コンポーネント84と共に、患者の臓器に対して2つ以上の選択されたカテーテルを追加または除去ならびに再配置するのに用いて、出力表示74に生成された結果を変更することができる。
【0062】
出力制御88はさらに、アルゴリズム間、異なる電気生理学データの時間的セット間で比較機能を実施するのに用いることができ、あるいは、該出力装置上で視覚化されることになる結果として生じる出力データを他の方法で制約するのに用いることができる。
【0063】
実施例として、出力表示74は、興奮伝達時間の最大、最小、平均および標準偏差、および電位の最大、最小、平均および標準偏差を含む、(例えば、2−D仮想電極または仮想パッチの配置によって定義される)患者の臓器のある領域内の活動の統計値を含むことができる。当業者は、他の統計的分析または特性を、電気解剖学的データ70の一部とすることができること、または、該電気解剖学的データから導出できることを正しく認識するであろう。
【0064】
追加的な実施例として、出力制御88は、対応する出力表示を生成するのに、何の情報が分析法72によって利用されるかを制御するフィルタを制御または設定するのに用いることができる。例えば、ユーザは、出力制御88を用いて、興奮伝達時間を確認するための間隔、または各仮想電極に対する他の制約を設定することができる。別の実施例として、各仮想電極に対する優位周波数を判断するのに利用される間隔は、ユーザによって設定することができる。また、対応する優位周波数マップも生成することができる。従って、このような制約に基づいて、このような制限時間または他の制約を満たす(解剖学的位置に対応する)位置を決めて、臓器のグラフィック表示上にグラフィックに(または別の方法で)表示するために、表示用の出力装置に供給することができる。患者の臓器に対して配置された電極構成のために測定または計算することのできるどのような種類のデータも、電気解剖学的データ70に基づいて、仮想環境内で計算および生成することができることを正しく認識するであろう。
【0065】
(電気生理学信号データの前処理)
図1および
図2に関して説明したように、例えば、間隔選択およびフィルタリングを含む様々な種類の前処理を入力電気データに対して実行することができる。
【0066】
図3は、
図2のシステム50に対して実施することのできる前処理GUI100の一部の実施例を示す。前処理GUI100は、間隔選択およびフィルタ選択GUI要素を含む。
図3の実施例において、間隔選択は、波形ウィンドウ106内で、キャリパ102および104の配置によって決定される。この実施例においては、ウィンドウ106内に2つの波形が図示されているが、当業者は、任意の数のこのような波形をGUI100内に描くことができ、また、ユーザが波形の数を選択できることを、正しく認識し、かつ理解するであろう。間隔キャリパ102および104は、例えば、間隔選択ユーザインタフェース要素105の作動に応動して、最初に波形ウィンドウ106内の所定位置に配置することができる。ユーザは、カーソル(または、他のポインティング要素)108を介してキャリパ位置を調節することができる。従って、各キャリパ102および104の一方または両方の位置を調節することにより、本願明細書に記載されているようなさらなる処理のために、ユーザが所望の間隔または拍動を選択することができる。
図3には、キャリパ102および104によって単一の間隔が図示されているが、複数のうちの任意の数のこのような間隔を、追加的な種類の処理(例えば、
図4および
図5を参照)のために選択できることを理解し、かつ正しく認識すべきである。アクティブチャネルの各々のためのウィンドウ114には、選択された間隔に対する患者の電気信号のセットが示されている。従って、ウィンドウ114内には、(該間隔によって定義された)選択された期間の該チャネルの各々に対する信号が、該信号のセットに適用されるフィルタリングおよび他の補正係数に従って図示されている。
【0067】
図3には、例えば、
図2のフィルタセレクタ62に相当するフィルタ選択GUI要素110も描かれている。
図3の実施例においては、患者の電気的データに対して、WCT参照フィルタ、ローパスフィルタリング、DC除去フィルタ、トレンド除去フィルタ、ハイパスフィルタおよび基線変動補正を含む様々な種類の補正およびフィルタリングを動的かつ選択的に実行することができる。従って、所定のフィルタを選択すると、患者の電気的データに対して、対応するフィルタリング法が作動する。
【0068】
加えて、例えば、予想作動パラメータの範囲外にデータが生じた場合には、GUI要素112を介して、不良チャネル補正を実施することができる。不良チャネル補正GUI要素112は、不良チャネル(または、不良電極)に対応するように決められた波形を検出および選択する自動化方式を実施するように作動させることができる。また、該波形が、他の波形と比較して異常と思われる場合には、該波形は、対応するグラフィック波形ウィンドウ114からの除去のために手動で選択することができる。当業者は、異常性を除去するように実施することのでき、または、不良チャネルをセンサデータから除去することのできる様々なアプローチを正しく認識するであろう。
【0069】
図4は、1つ以上の連続周期を含む間隔を選択するのに利用することのできる前処理GUI120の一部の実施例を示す。GUI120の基本的な構成は、
図3に関して示しかつ説明したのと同様である。従って、同一の参照数字は、本願明細書において既に紹介されている対応する機能を指す。
【0070】
図4の実施例において、対応する間隔は、キャリパ122とキャリパ124の相対位置によって決まる。隣接する表示ウィンドウ126には、信号セグメントの対応するサンプル期間が図示されている。本願明細書に記載されているように、該ウィンドウ内の信号セグメントのセットは、キャリパ122および124を介して選択された対応する期間内の患者の電気的データを表す。この実施例において、1つの信号間隔は、複数の拍動、または、複数のチャネルの各々に対する周期を包含する。ウィンドウ126内に信号セグメントとして示されているチャネルの数は、本願明細書に記載されているように、ユーザにより、および他の種類の前処理によって制御することができる。後の分析のためにより大きな期間(例えば、1つ以上の周期まては拍動)を選択することにより、情報の追加的な種類の時間的分析および対応する空間的視覚化を実現することができる。
【0071】
(信号スプライシング)
特に、心房細動の場合のユニポーラ心房信号の分析中は、心室波形間の心房信号のセグメントを用いなければならない。心房信号の周波数分析中に、心拍数が高すぎて、心房セグメントの長さが短すぎる場合、それによって周波数分解能に影響を及ぼす。該信号の長さは、所定のサンプリング周波数に対して、周波数分解能に直接関連付けられる。例えば、サンプリング周波数が1000Hzで、信号長が1000サンプルの場合、周波数分解能は1Hzである。時間的に不連続なセグメントデータのより小さなセグメントは、向上した周波数分解能が得られるようにスプライシングまたは統合することができる。実際には時間的に連続していない時間領域信号のスプライシングによって導入された周波数成分は、心房信号の優位周期性と比較した相対的ランダム性により無視できる。
【0072】
図5は、上述した方法に従って決めることのできる、信号セグメント140、142および144と、結果として生じるスプライシングされた信号の実施例を示す。信号セグメント140、142および144は、時間の関数としての振幅を明示し、この時間は、間隔セレクタを介して、上述したように選択することができる。
図5には、それぞれ、信号セグメント140、142および144およびスプライシングされた信号146の各々に対するパワースペクトル150、152、154および156の実施例(例えば、パワーまたは振幅対周波数)も図示されている。また、パワースペクトル150、152、154および156には、それぞれの信号セグメント140、142、144およびスプライシングされた信号146の各々に対する対応する優位周波数も図示されている。従って、スプライシングされた信号セグメント146が、該スプライシングされた信号におけるより長いサンプルによる周波数情報の向上した分解能を含むことが実証される。
【0073】
図6は、一緒にスプライシングすることのできる電気生理学的波形の多数の時間的に不連続の間隔を選択するのに利用される前処理GUI160の実施例を示す。GUI160の基本的な構成は、
図3に関して示しかつ説明したのと同様である。従って、同一の参照数字は、本願明細書において既に紹介されている対応する機能を指す。
【0074】
図6の実施例においては、複数の時間的に不連続の間隔が、キャリパ162、164および166の相対位置によって選択されている。信号セグメントの対応するサンプル期間は、隣接する表示ウィンドウ168に示されている。上述したように、該ウィンドウ内の信号は、患者の電気的データのチャネルの各々の場合のスプライシングされた信号セグメントに対する患者の電気的活動を表す。その結果として、該信号セグメントは、例えば、本願明細書に記載されているような周波数分析に対する向上した分解能をもたらす。
【0075】
(基線除去)
前処理の別の機能は、フィルタリングユーザインタフェース要素(例えば、
図3、
図4および
図6におけるフィルタ機能)を介して、選択された患者電気的データに対して作動させることのできるような基線補正または基線除去である。
【0076】
該信号は、単純なハイパスフィルタで除去することのできない基線変動によって汚染される場合がある。基線補正法は、ウェーブレット変換を用いて無関係な基線変動を除去すると共に、関連のある信号内容を保存する多重解像度解析(MRA)を用いた信号調節の手法を含む。ウェーブレットを用いたECG信号のMRA中に、スケーリング関数およびウェーブレット関数が得られ、それらは、それぞれハーフバンドローパスフィルタおよびハーフバンドハイパスフィルタと関連付けられる。基線変動は、基線変動のレベルを表すウェーブレット変換の特定のスケーリング係数を除外することにより、実質的に除去される。
【0077】
図
7および図
8は、前処理方法の適用を実証する時間の関数としての電圧振幅の典型的なプロットを示す。図
7は、元の信号202、フィルタリングされた信号204および該元の信号に付随する計算された基線変動に対応する信号206を含むプロット200を示す。同様に、図
8は、元の信号212と、フィルタリングされた信号214と、該元の信号に付随する計算された基線変動に対応する信号216とを含むプロット210を示す。複数の信号の各々に対して基線変動206および216を識別することにより、ウェーブレット変換の対応するスケーリング成分を排除して、このような各信号から基線変動を実質的に取除くことができる。
【0078】
追加的な実施例として、ECG信号の長さは、MRAの場合の分解のレベルの最大数を決める。また、分解の各レベルは、それに関連する特定の帯域の周波数を有する。所定のサンプリングレート、例えば、1000サンプル/秒の場合、9分の1のレベルの分解は、[0,1]Hzからの周波数成分からなることになり、また10分の1のレベルの分解の場合は、[0,0.5]Hzの範囲の周波数からなることになる。該基線変動(低周波数成分)は、スケーリング係数上に現れる。例えば、1Hz帯域以下の周波数を表す信号における変動は、9分の1のレベルの分解に相当するスケーリング係数を排除することによって除去することができる。
【0079】
(分析方法および関連する視覚化)
以下は、本発明の態様による、生理学的データの対応する空間的視覚化を生成するために、分析システム(例えば、
図1または
図2)によって用いることのできる方法のうちのいくつかの説明である。
【0080】
(興奮伝達時間)
本願明細書に示され、かつ記載されている分析法(例えば、
図1および
図2)は、ユーザが選択した間隔に応動して、患者の臓器の表面の1つ以上の選択位置に対して興奮伝達時間を計算するようにプログラムすることができる。また、興奮伝達時間は、電気解剖学的データが、対応する期間、それに対して取得または計算される該患者の臓器上の各箇所に対して計算することもできる。従って、ユーザは、(例えば、ポインティングユーザインタフェース要素を介した)ユーザ入力に応動して、間隔を選択することができる。該間隔は、該間隔を変更するさらなるユーザ入力に応動して変更することができ、あるいは、該間隔は、該間隔に対して変更が行われない場合には、固定したままでもよい。
【0081】
興奮伝達時間は、上記GUIに付随する仮想電極機能を用いて、心臓上のいずれかの空間的位置における部位特異的データとして表すことができる。該データは、例えば、
図16に関して示され、かつ説明されている空間的に分散された興奮伝達時間に対応する波面伝播(スタートマップ)を示す3Dマップまたはアニメーションとして表すことができる。この伝播マップの変動は、興奮伝達シネマップである。ここで、ユーザは、電気記録図上で、固定した周期長の間隔を選択する。該電気記録図は、この間隔を介して段階的に移動され、該間隔を介した該電気記録図の各ステップに対して、等時線マップの動的に変化する視覚化を生成する。
【0082】
図9は、患者の心臓254の表面のグラフィック表示上に重ね合わせられた等時線マップとして示されている興奮伝達時間の視覚化を説明するGUI250の実施例を示す。
図9の実施例のGUI250においては、複数の仮想電極252A、252B、252C、252D、252E、252F、252Gおよび252Hが、患者の心臓254の表示上のユーザが選択した位置に配置されている。本願明細書に記載されているように、任意の数の仮想電極の構成を、表面254に配置できることは正しく理解されるであろう。表面の表示254が描かれているウィンドウに隣接して、追加的な分析および評価ツールが図示されている。
【0083】
図9の実施例において、電気記録図ウィンドウ256には、それぞれ、仮想電極252A、252B、252C、252D、252E、252F、252Gおよび252Hの各々に対する電気記録
図258A、258B、258C、258D、258E、258F、258Gおよび258Hが投入されている。従って、各電気記録図は、それぞれの仮想電極がそこに配置されている各箇所に対して決められた電気解剖学的データに従って、電気的活動(電圧対時間)を表示する。
【0084】
図9には、仮想電極252A、252B、252C、252D、252E、252F、252Gおよび252Hの各々に対するパワースペクトルグラフ260A、260B、260C、260D、260E、260F、260Gおよび260Hを含むウィンドウ259がさらに図示されている。パワースペクトルは、例えば、それぞれの仮想電極252A、252B、252C、252D、252E、252F、252Gおよび252Hの各々と関連付けられた電気記録
図258A、258B、258C、258D、258E、258F、258Gおよび258Hから算出できるような周波数対振幅を説明する。
【0085】
また、図
9の実施例において、座標軸A1が、患者の心臓モデル254の相対方向を説明する表面モデルに隣接して図示されている。さらに、ユーザは、仮想電極を選択して、1つ以上の選択された表面領域に適用するために(例えば、カーソルまたは他のイメージ制御を介して)3次元表面モデル254を所望の方向に回転させることができる。
【0086】
また、GUI250は、興奮伝達時間をそれのために計算することのできる電気記録図ウィンドウ内で時間間隔相対を定義する機構も含む。例えば、間隔選択ユーザインタフェース要素(例えば、ボタン)262を選択するユーザに応動して、スタートおよびストップ時間を決めるキャリパユーザインタフェース264を、電気記録図ウィンドウ256内の各電気記録図上に設けることができる。間隔選択機能を作動させるこのようなユーザ選択に応動して、興奮伝達時間を、選択された間隔に従って計算することができる。興奮伝達時間の指示は、指定された間隔に従って、該電気記録図の各々に対して生成することができる。該心臓の全表面での複数個所の各々に対する興奮伝達時間は、該間隔に対して計算することができ、また、対応する興奮伝達(または等時線)マップは、図に示すように、表面254の上に興奮伝達時間を空間的に表すように生成することができる。等時線マップ268は、電気記録図ウィンドウ258内で(GUI要素またはボタン262を介して)選択された間隔の関数として計算されている興奮伝達時間を示す。グラフィックスケール(または、カラーキー)272は、該マップ内の各陰影または色が表すことをユーザに知らせるために、等時線マップ268に隣接して設けることができる。各電気記録図に対する計算された興奮伝達時間は、各電気記録
図258A、258B、258C、258D、258E、258F、258Gおよび258Hに対する符号265A、265B、265C、265D、265E、265F、265Gおよび265Hにも示されている。
【0087】
図
9で論証するように、該キャリパユーザインタフェース要素264は、2つの時間の間の差が時間間隔を決めるように、該間隔のための第1の時間を定義する第1のキャリパと、該間隔のための第2の時間を定義する第2のキャリパとを含むことができる。この時間間隔は、図で論証するように、該電気記録図の各々に対して共通とすることができる。ユーザはさらに、該時間間隔を変更して、患者の心臓上に重ね合わせられている興奮伝達マップ内に表示されている興奮伝達時間に対する対応する変更を生じることができる。例えば、カーソル267を利用してキャリパ264の一方または両方を選択的に調節し、表示されている電気記録図内の間隔を調節することができる。所与のキャリパの変化に応動して、該電気記録図の選択された間隔が変化する。キャリパ264が調節された場合、対応する興奮伝達時間を、それぞれの仮想電極に対する電気記録
図258A、258B、258C、258D、258E、258F、258Gおよび258Hの各々に対して再計算することができる。複数の箇所(例えば、何千箇所)の各々に対する興奮伝達時間は、該間隔の変化に応動して同様に計算される。周波数スペクトルを計算するための対応する方法は、ユーザが選択した間隔の変更に応動して再適用することもできる。視覚表示(例えば、心臓の上に重ね合わせられた電気解剖学的マップ)は、ユーザが選択した間隔の変更に応動して動的に変更される。
【0088】
追加的な実施例として、興奮伝達時間は、選択された時間間隔内での経時的な電圧の変化を分析することによって計算することができる。別法として、または追加的に、例えば、波形の種類により、所定の波形の場合の興奮伝達時間を確定するために、ウェーブレット解析を実行することができる。しかし、心房細動の場合には、周期長は、雑然とした分割波形からは識別できず、その結果として、周期長に関係なく、およびある間隔内で、またはリアルタイムで所定の電気記録図内で1つ以上の興奮伝達時間を識別できる興奮伝達時間方法が必要となる。
【0089】
本発明の態様による分析システムは、ウェーブレット解析を利用して、所定の電気記録図内に存在する全ての局所的な興奮伝達を識別するようにプログラムされた方法を含むことができる。すなわち、ウェーブレット解析は、それぞれの波形内に存在する可能性のある任意の数の複数の局所的な興奮伝達を判断することができる。このような解析は、特別にデザインされたウェーブレット(「固有ウェーブレット」とも呼ばれる)を利用する。固有ウェーブレットは、典型的な局所的興奮伝達である。従って、全てのまたは選択された位置からの1つ以上の電気記録図は、固有ウェーブレットの段階的な拡大縮小および変換バージョンを備えるウェーブレット変換を介して分解される。結果として得られるウェーブレット係数は、該電気記録図の各時間フレームに対して解析される。より小さなスケールにおいては、ウェーブレット係数は、近接効果を含む信号における詳細を反映する。低位から中間のスケールにおいては、ウェーブレット係数は、前記電気記録図の近傍での心筋の束を反映する。より大きなスケールにおいては、該ウェーブレット変換は、該電気記録図の広範囲の構造に対して好適である。局所的な近接効果は、該信号内で同時にどこにでも存在し、そのため、全ての分解レベルを介して反映される。多くの興奮伝達時間検出法は、この特性を利用して局所的な活動を識別し、対応する時間フレームを妥当な興奮伝達時間として割当てる。このウェーブレット判断基準を満たす時刻がない場合、興奮伝達時間は当該箇所には割当てられない。このことはさらに、(例えば、瘢痕組織のような)不活動の領域を自動的に識別するのに役立つ可能性がある。
【0090】
追加的な実施例として、各スケールの場合の時間に関するウェーブレット係数曲線の変化が計算される。該曲線のピークが検出されて、最大ピークの指定された閾値(「ピーク−閾値」)内の優位ピークが、各スケールに対して選択される。ピークがそこで全てのスケールにわたって登録される指定された許容範囲または幅(「ウィンドウ−幅」)内の時間フレームが、興奮伝達時間として選択される。変換は、該電気記録図の元のサンプリング周波数で行うことができ、あるいは、アップサンプリングまたはダウンサンプリングすることができる。該ピーク−閾値は、より少ないピークまたはより多くのピークを含むように調節することができる。同様に、ウィンドウ−幅は、ユーザがプログラム可能であり、従って、より厳密にまたはより柔軟にすることができる。
【0091】
興奮伝達時間を検出するために、多くの方法をプログラムすることができる。プログラムされた方法のうちの所与の1つは、所定の電気記録図の周期長を容易に確定できるか否かにより選択することができる。当業者は、興奮伝達時間を計算するための異なる方法を、該電気記録図の各々に対して選択的に採用できることを正しく認識するであろう。例えば、識別可能な周期長を有する各電気記録図に対して興奮伝達時間を決定するために、dV/dt計算を利用することができ、一方、ウェーブレット解析は、該周期長をそれのために確定することのできない電気記録図に対して利用することができる。
【0092】
図10は、電気記録
図300と、ウェーブレット係数曲線308と、本願明細書に記載されている方法に基づいて計算することのできる連鎖ウェーブレット係数のプロット310とを示すプロットの実施例を示す。電気記録図セグメント300に対する計算された興奮伝達時間は、符号302、304および306における星印によって明示されている。当業者は、本願明細書に記載されているように興奮伝達時間を計算する1つ以上の方法を選択的に実施するように、システムまたは方法をプログラムすることができることを理解するであろう。
【0093】
また、信号セグメントに対する興奮伝達時間は、周期長、ならびに、全心外膜面を含む患者の心臓の表面領域上の複数の箇所の各々に対する関連する統計的量を計算するのに用いることができる。実施例として、
図11は、電気記録図の波形312の選択された間隔の実施例である。本願明細書に記載されている方法のうちのいずれか1つ以上に基づいて、1つ以上の興奮伝達時間314A、314B、314Cおよび314Dを電気記録
図280のために計算することができる。従って、
図11の実施例においては、該電気記録図の間隔に対して、4つの興奮伝達時間が決定されている。電気記録図の各順次的なペア間の時間的距離は、符号316A、316Bおよび316Cで示す興奮伝達時間のペア間の周期長に一致する。興奮伝達時間の数、周期長の情報、およびそのような情報に基づいて算出される量は、本願明細書に示し、かつ説明されているように、(例えば、電気解剖学的マップ上に)空間的に表示することができる。
【0094】
このような周期長分析は、複雑な断片化された電気記録図(CFE、例えば、
図16を参照)、ならびに、よりシンプルな組織的リズムによって特徴付けられる他の種類の電気記録図に対して適用可能であることは、正しく認識されるであろう。加えて、本願明細書に記載されている方法は、ユニポーラ電気記録図に対して利用されるように記載されているが、当業者は、バイポーラ電気記録図に対しても同じ方法を利用できることを理解し、正しく認識するであろう。
【0095】
また、本願明細書に記載されているように、関連する周波数成分を抽出する信号前処理は、いくつかの場合に適用することができる。それらは、例えば、時間的平均の減算を介したDCオフセット除去、キャリパ波形の始まりと終わりのゼロ補正、1Hz未満カットオフのハイパスフィルタリング、および有効な低周波数帯域リミッタと見なすことのできる移動平均およびカルマンフィルタリングのような適応フィルタリング法を含む基線補正方法を含む。30Hz以上カットオフのローパスフィルタ、およびサビツキー・ゴーレイ・フィルタのような特殊フィルタは、有効な高周波数帯域リミッタと見なすことができる。
【0096】
ウェーブレット解析の変形例は、全ての電気記録図にわたる絶対最大変換係数を検出して、対応する時間フレームを興奮伝達時間として割当てることである。別の変形例は、より低いスケールで優位係数を有する時間フレームに対して、さらに詳細なウェーブレット解析を実行することである。
【0097】
(周波数解析)
本願明細書に記載されている方法は、心臓の複雑な電気的活動の周波数スペクトルを抽出して解析する方法の概要を述べている。周波数マッピングは、心房細動様興奮伝播を持続する「トリガ」に関連する高速で周期的な活動の部位の識別および局所化を容易にする。周波数解析における最初のステップは、電気記録図信号を関連する周波数の帯域に帯域制限することを実行することである。除去されるべき低い周波数は、DCオフセット、呼吸およびその他による基線変動を含む。
【0098】
時間的平均の減算を介したDCオフセット除去、キャリパ波形の始まりと終わりのゼロ補正、1Hz未満のカットオフでのハイパスフィルタリング、移動平均およびカルマンフィルタリングのような適応フィルタリング法を含む基線補正技術は、有効な低周波数帯域意リミッタと見なすことができる。30Hz以上のカットオフでのローパスフィルタ、およびサビツキー・ゴーレイ・フィルタのような特殊フィルタは、有効な高周波数帯域リミッタと見なすことができる。また、0.5〜30Hzの帯域内の信号を制限する帯域通過フィルタも、上述した2ステップフィルタリングプロセスの代わりに考慮することもできる。
【0099】
次に、電気記録図の周波数スペクトルを抽出するために、高速フーリエ変換(FFT)を用いる。FFTは、入力信号(N)の長さに最も近い2の最高パワーを用いて計算することができ、および第1の(N+1)/2ポイントが抽出される。次いで、FFTの大きさは、Nの関数にならないように、該長さでスケーリングされた後、2乗される。(後半は冗長であるため)該スペクトルの前半のみを用いることが必要であるため、該スペクトル全体のエネルギは、2を乗算することによって考慮される。DC成分およびナイキスト成分が存在する場合(すなわち、Nが偶数)、それらは固有であり、そのため2は乗算されない。FFTは、信号の元のサンプリング周波数で(例えば、1000Hzで)実行することができ、または、アップサンプリングあるいはダウンサンプリングすることができる。該信号の長さは、周波数分解能を改善するためのいくつかのケースにおいては、ゼロ詰めすることによって延長することができる。時間が不連続な電気記録図セグメントは、スプライシングして、(「スプライシング」の項で述べる)結果として生じる結合信号に対して周波数解析を実行することができる。電気記録図の周波数解析は、断続的な心室活動の除去のための手法(「QRS減算」)を用いることにより、リアルタイムで連続的に実行することができる。
【0100】
心臓の各空間的位置で計算された周波数スペクトルは、逆参照により、および該GUIの仮想電極機能を介して再現することができる。各電気記録図の周波数スペクトルから、最強のパワーが優位周波数(DF)として指定される。パワー対周波数を実証する例示的な周波数スペクトルを
図12に示す。
【0101】
図13は、マッピング制御が、符号332で示す患者の心臓のグラフィック表示上に重ね合わせられた優位周波数マップを描くように作動されている例示的なGUI330を示す。
図11の実施例においては、4つの仮想電極334A、334B、334Cおよび334Dが、患者の心臓の所望の位置に配置されている。対応する電気記録
図336A、336B、336Cおよび336Dと、パワースペクトルプロット338A、338B、338Cおよび338Dとが、それぞれウィンドウ340および342内に図示されている。
【0102】
また、
図13においては、該優位周波数マップは、例えば、カラーコードまたはグレースケールコードとして実装することのできるようなスケール344に従って、心臓332の表面での優位周波数に関する空間的情報を生成する。従って、画面を見る際にスケール344を参照すると、心臓332の優位周波数マップは、ユーザに対して、該心臓の各領域の場合の優位周波数を明示する。
【0103】
該優位周波数は、その間に該優位周波数が計算される該間隔により、変化する可能性がある。従って、
図13においては、例えば、ポインタまたはカーソルを介して、ユーザが、該優位周波数がその間に計算される時間間隔を選択または変更できるようにするために、キャリパユーザインタフェース要素348を該電気記録図ウィンドウ内に設けることができる。キャリパユーザインタフェース要素348は、例えば、ボタンまたは他のユーザインタフェース機能である対応する間隔セレクタユーザインタフェース要素350の作動に応動して、該間隔を選択するために作動させることができる。
【0104】
また、
図13には、どのような種類の電気解剖学的マップが心臓332上に重ね合わせられるかを決めるユーザインタフェース要素(例えば、ドロップダウンコンテクストメニュー)352も図示されている。従って、
図13の実施例において、優位周波数が選択されて、図示のマップが生じる。例えば、本願明細書に示し、かつ記載されているような該心臓上に重ね合わせられた表示のために、(ユーザインタフェース要素352を介して)ユーザが他の種類のマップを選択できることは、正しく理解されるであろう。
【0105】
本発明の一実施形態において、各電気記録図における優位周波数は、心臓332の3D形状の上に空間的に表示され、このことは、リアルタイムスペクトルマップ(RTSM)と呼ぶことができる。最低から最高の各周波数は、固有のカラーマップによって視覚的に識別される。様々な電気記録図セグメントからのRTSMは、独立した心臓フレームで視覚的に、あるいは、差異マップおよび相関係数を含む評価基準を利用して統計的に比較することができる。各RTSMにおける優位周波数の空間的変動性、勾配および分散は、計算して、例えば、数値データとして示し、該GUIの仮想電極を介して問合せ、あるいは、3Dマップとして示すこともできる。
【0106】
スペクトル内の優位周波数の時間的構成、規則性は、例えば、該優位周波数の狭帯域(パワーが該優位周波数における最大パワーの50%を下回る+/−帯域)および指定された帯域(例えば、約5Hz)内の全範囲に対する高調波の各々の下で該範囲を分割することによって、数学的に評価することができる。優位周波数部位のこのような規則性の判断基準は、RTSMの観察および問合せによって、空間的に識別することが可能である。従って、所与の仮想電極の場合の規則性は、計算して、規則性インデックスとして示すことができる。整合性または再現性インデックスは、連続的なセグメントからのRTSMを比較することによって導出することができる。
【0107】
該優位周波数は、解析データのセグメントにわたるDF部位、すなわち、スタースペクトルマップの整合性および/または分布を示す経時的な3Dアニメーションとして示すこともできる。
【0108】
(関心領域の分析)
適当なGUI要素を介して実施できる別の機能は、比較機能であり、これは、電気的活動を空間的および/または時間的に比較するのに利用することができる。例えば、ユーザは、同じ心拍に対する患者の心臓の2つの異なる空間的位置に対して、電気的活動を比較することができる。加えて、または別法として、ユーザは、2つの異なる心拍に対して、同じ空間的位置の電気的活動を比較することができる。実施例として、ユーザは、例えば、(例えば、仮想電極に対応する)患者の心臓の同じ空間的位置に対して、不整脈拍動と一定速度の拍動を、あるいは、不整脈拍動と正常収縮を比較することができる。この比較の結果は、例えば、本願明細書に示し、かつ記載されている表示と同様の患者の心臓の3D表示上に重ね合わせられたマップのかたちでユーザに対して表示することができる。この比較は、数値比較および何らかの統計的比較とすることができる。
【0109】
また、本願明細書に記載されているように、該システムおよび方法は、例えば、電気生理学試験時に、説明的に利用することができる。例えば、ユーザは、アブレーション前に、アブレーション手術中ならびにアブレーション後に、所定の解剖学的関心領域に対する拍動を比較することができる。このような比較の結果は、マップとして、または複数の表示として、該比較の関数として示すことができる。
【0110】
実施例として、
図14は、関心領域分析が、患者の心臓362の表面の1つ以上の領域の電気生理学的評価のために作動されている例示的なGUI360を示す。
図14の実施例においては、点線36
9および366で示す2つの領域が、評価のために識別されている。当業者は、該領域を選択するのに利用できる様々な方法を正しく認識するであろう。一つの実施例として、ユーザは、各関心領域36
9および366上に個別の仮想電極を配置することができ、例えば、電極368を領域36
9に、および仮想電極370を領域366に配置する。図示されている実施例において、領域36
9は、患者の左心室に相当し、領域366は、患者の右心室に相当する。
【0111】
例えば、該仮想電極を伴う各関心領域をマークするのに利用される色、サイズおよび方法を制御するために、GUI制御部372を隣接するウィンドウ内に設けることができる。また、GUI制御部372は、仮想電極または各領域の一部の配置を選択的に除去または編集するのに用いることもできる。
【0112】
実施例として、始動ユーザインタフェース要素(例えば、ボタン)374を選択することにより、所定の領域に対して選択モードを入力することができる。所望数の仮想電極を該領域に配置した後、ユーザは、別のユーザインタフェース要素376を介して、当該領域に対する配置モードを終了する。別のユーザインタフェース要素378は、所定領域に対する仮想電極の数または分布を編集するために利用することができる。
【0113】
分析のための領域をマークするためには、他のアプローチを採用することができる。例えば、ユーザは、描画ツールまたは同様のユーザインタフェース機能を用いて、心臓362の上の1つ以上の領域36
9および366の各々を識別することができる。そして、識別された各領域には、仮想電極368および370の配置を自動的に投入することができる。該電極の数および空間的分布は、ユーザがプログラムすることができる。また別の代替的アプローチとして、(患者の形状データに基づく)所定の解剖学的ランドマークのリストを、選択のためにユーザに提供することができる。選択された各ランドマークには、分析用の1つ以上の仮想電極からなるセットを自動的に投入することができる。
【0114】
一旦、領域36
9、366が、仮想電極構造として構成されると、隣接する表示ウィンドウ380内に、電気的情報を表示することができる。各領域の電気的活動に関連する情報は、仮想電極の構成および配置に従って生成することができる。該情報は、各領域に対する統計的情報、例えば、平均、最大および最小興奮伝達時間を含むことができる。また、対応する電気解剖学的マップを、心臓362の表面に重ね合わせることもできる(例えば、
図14の実施例に図示されている等時線マップ)。当業者は、仮想電極368および370の配置に基づいて計算して、ユーザに提示できる、数値およびグラフィック情報を含むことができる他の様々な種類の情報を理解し、および認識するであろう。
【0115】
(電気記録図の形態学的分析)
複雑な断片化した電気記録図(CFE)のアブレーションターゲットとしての関連性が、臨床的に観察されている。これらの電気記録図は、病変または梗塞組織の領域、遅い伝導領域、あるいは、細動ウェーブレットが、機能的または解剖学的なブロックのラインで反転する回転中心で主に見られる。本発明のこのサブパートでは、CFEを識別して、それらを関連付けてまたは一時的に分類するために、方法およびアルゴリズムを説明している。該電気記録図の断片化の評価基準または断片化インデックス(FI)は、信号内の遷移の数を計数し、それを本開示に記載されている多数の興奮伝達時間検出アルゴリズムによって検出される局所的活動の数と結合することによって導出することができる。FIのより厳密な定義は、振幅閾値と、本開示にも記載されている周波数解析から得られる周期長とを含むことができる。本発明の一実施形態において、断片化の程度は、3Dの複雑な断片化電気記録図マップ(CFEM)として、空間的に表示することができる。断片化の最低から最高の程度は、固有のカラーマップによって、視覚的に識別することができる。様々な電気記録図セグメントからのCFEMは、別の心臓フレームで視覚的に比較することができ、または、差異マップおよび相関係数を含む評価基準を用いて、統計的に分析することができる。各CFEMの空間的変動は、定量化して、関連のあるCFE領域を処理ターゲットとして分類するのに用いることも可能である。
【0116】
該電気記録図の形状および形態は、解析して、RS、rS、QRS、qRS、QS、RSRのような既知のまたは典型的な形態に分類することができる。この分類化は、カラーコードとすることができ、3Dマップとして表示することができる。EPマッピングに対してよく知られているものは、複雑な電気記録図を伴う複雑な不整脈において、この種の空間的形態マッピングが、医師が良性部位と原因部位を分類することを可能にすること、例えば、遅い活動領域を除外することができ、および速い活動領域の可能性をさらに分析することができることを認識するであろう。
【0117】
(周期長および周期長変動(CLV))
図10に関して示し、かつ説明したように、周期長は、本願明細書に示し、かつ記載されているような多数の興奮伝達時間方法から評価および計算することができる。連続的または逐次的活動の各ペア間の時間差は、対応する周期長を構成する。電気記録図内の、および全てのまたは選択された電気記録図の空間的に間の周期長の変動の評価基準は、定量化して、周期長の変動を評価することができる。例えば、優位周波数の逆数は、平均周期長を算出するのに用いることができる。
【0118】
周期長の判断に対する空間的時間領域アプローチは、周期長を代表する箇所を選択し、その値を用いて、他の全ての空間的電気記録図に対する自動関連インデックスを導出することによる。このことは、特定の周期長に属する領域と、異常値である箇所とを示す空間的マップとして表示することができる。このプロセスは、処理ターゲットを識別する際に重要である変化の領域および異常値の周期長を速やかに評価するために、他の電気記録図−周期長の組合せに対して繰返すことができる。
【0119】
この周期長、および変動の領域は、空間的な3Dマップ、周期長マップ(CLM)として提示される。また、CLの変動および分散も、3Dマップとして提示することができる。
【0120】
実施例として、
図15は、CFEマップが、心臓モデル402のグラフィック表示の表面に重ね合わせられているGUI400の実施例を示す。
図15の実施例においては、GUI400は、選択された間隔の場合の各箇所に対する多数の活動に基づいて、心臓の表面の複数の箇所に対して計算することのできる最小活動面周期長のマップを含む。
図15の実施例においては、2つの仮想電極404および406が、ユーザが選択した位置に配置されている。電気記録
図410および412は、仮想電極404および406の各々に対する電気解剖学的データおよび位置データに基づいて、隣接するウィンドウ408内に生成される。
【0121】
時間間隔も設定されている。本願明細書に記載されているのと同様に、ユーザは、間隔選択機能を作動させるために、ボタンまたは他のユーザインタフェース要素414を利用することができる。該間隔セレクタの作動に応動して、それぞれのキャリパ416および418が、該間隔を調節するために表示される。心臓上の複数の箇所の各々に対する興奮伝達時間および周期長も、該間隔に従って計算することができる。心臓上の各箇所に対する最小周期長の対応する静的表示は、
図15に示すようにグラフィックに表示することができる。該最小周期長が心臓402の表面に重なっていることをユーザが分かるように、対応するスケールを表示することができる。
【0122】
図15は、生成されているマップの場合の振幅範囲を定義するために作動および設定することのできる振幅キャリパ420および422も図示している。従って、選択された範囲から外れる電気記録図は、興奮伝達時間を計算し、該興奮伝達時間から最小値(または、他の統計学的量)を判断する際の考慮事項から除外することができる。
【0123】
図16は、実装することのできる別のGUI430の別の実施例を示す。この実施例においては、患者の心臓の3D表示上に重ね合わせられた伝播マップが、所定の時間的事例に対して符号432に図示されている。(心臓の心外膜面での興奮伝達時間の伝播に対応する)該伝播マップが、該心臓の電気的活動に従って、時間の関数として変化することを理解し、および正しく認識すべきである。該表面の複数の箇所での興奮伝達時間は、例えば、本願明細書に示し、かつ記載されている方法に従って計算することができる。
図16の実施例においては、隣接する電気記録図ウィンドウ438が対応する電気記録
図442および444を表示することに応答して、2つの仮想電極434および436が、患者の心臓432のグラフィック表示上のユーザが選択した位置に配置されている。
【0124】
間隔セレクタは、間隔セレクタユーザインタフェース要素440を選択することによって作動させることができる。該間隔セレクタの作動に応答して、該間隔を選択的に調節するために、それぞれのキャリパ446および448が表示される。心臓の上の複数の箇所の各々に対する興奮伝達時間は、該選択された間隔に従って計算することができる。
【0125】
図16の実施例においては、活動面の伝播は、動画マップとして動的に視覚化することができる。例えば、この動的な視覚化は、利用可能なツールの「シネ(CINE)」キャリパ機能の利用に基づいて、ユーザに対して視覚化および選択的に表示することができる。例えば、GUI430は、間隔キャリパ446および448間の動きのための電気記録図ウィンドウ438上に重ね合わせられているカーソルまたはキャリパ450によって、ユーザに示すように選択することのできるGUI要素を含むことができる。実施例、すなわち、
図16において、カーソル450は、電気記録図ウィンドウ438内で水平方向に移動可能である垂直線として描かれている。該CINEキャリパの水平位置は、活動情報が符号432において該マップ上に表示される現在時刻に対応する。当業者は、加えて、または別法として、表示されている該マップに関連する該現在時刻を識別するために、他の手段を設けることができることを正しく理解するであろう。例えば、該動的マップに対する経過時間を示すために、クロックまたはカウンタを設けることができる。対応するマップが、そのために表示されている該電気記録図に対して、現在位置を時間的に明示するために、他のグラフィック要素も設けることができる。この結果、CINEカーソル450は、スタートおよびストップ時間キャリパ446および448間を横断することができ、これらのキャリパは、該動的マップが経時的に変化する間、固定することができる。当然、該キャリパは、本願明細書に示し、かつ記載されているように調節することができ、このことは、手動で、または自動的に実行することができる。
【0126】
追加的な実施例として、ユーザは、例えば、マウスまたは他のユーザ入力装置(例えば、タッチスクリーン)を用いることにより、カーソル450のグラフィック表示を、スタートおよびストップ時間間隔446および448間の所望の位置にドラッグすることができる。該CINEカーソルは、該電気記録図の全域にドラッグされるため、患者の心臓の対応する表示は、該電気記録図に対するCINEカーソル
450の位置に従って、該マップフレーム内に情報を表示するように変更される。加えて、または別法として、ユーザは、対応するユーザインタフェース要素を用いて、CINEカーソル450を、該電気記録図の全域にわたるスタート時間からストップ時間まで、該電気記録図の全域で自動的に移動させることができる。該カーソルは、該スタート時間からストップ時間まで自動的に横断するため、符号432における対応する可能性のあるマップは、変化して、該CINEカーソルに関連する時間に従って、現在のデータを反映することになる。
【0127】
適切なユーザインタフェース要素を設定して、該CINEカーソルを、スタートおよびエンドキャリパ446および448間で繰り返し前後に揺すらせるために、別のワークフローツール機能を利用することができる。該カーソルのこの前後の動きは、通常の将来の時間に、および逆の時間的方向に、符号
452に表示される可能性マップの変化を視覚化する機会をユーザに与える。
【0128】
ユーザは、スタートおよびストップ位置
446および
448を適当な位置にドラッグすることにより、それらの各位置を手動で調節することができる。別法として、または加えて、本願明細書に記載されている方法は、例えば、所定の心拍、ある種の心拍、1つ以上の心拍のセット、または、所定の種類の電気的活動を中心とするある期間に対応して、ユーザ定義の間隔を自動的に選択するのに利用することができる。
【0129】
(組織インデックス(OI))
心房細動アブレーション手術の間、雑然としたリズムは、粗動や頻脈を含むよりまとまりのあるリズムになる場合がある。組織インデックスは、各リアルタイム電気記録図セグメントに対する心臓全体にわたる電気記録図の周期性を測定することによって導出することができる。1というOIは、マクロリエントリー性粗動のような周期性の高い活動を示す。ある間隔における一様な周期長の領域は、高度にまとまりのある領域として表示されることになる。該GUIにおけるOIインジケータは、手術中に該リズムがまとまる回数および箇所を定量化する際に非常に有用となる。
【0130】
(ペースマッピング)
特別なケースとして、1〜4に記載されている分析法は、ペースマッピングとの関連で用いることができる。ペースマッピングは、心臓上の異なる部位をシミュレートして、ペーシング拍動を導き出すことを含む。ペーシングは、前述の方法によって識別された部位で実行することができる。結果として生じるペーシング拍動は、複雑な電気的活動の場合に対して説明した同じ方法を用いて分析および提示することができる。結果として生じるマップは、固有の電気的活動マップと共に心臓フレーム内に提示することができ、また問合せおよび比較を行うこともできる。固有の活動およびペーシング活動のためのマップは、視覚的に、または、3D空間マップとしても表示される相関係数のような数学的手段を用いて、空間的に比較することができる。
【0131】
(再分極マッピング)
興奮の後の心臓の各領域の回復は、該心臓の回復を理解するために分析することができる。心臓の回復は、興奮とは異なり、各心臓細胞の特性である。疾患は、細胞の特性を変え、それによって、広範囲の再分極を変える。また、一定期間、カオス的活動中の心室は、その回復の変化を進展させることを始める。マッピング局所回復特性は、細動伝導を維持しかつ持続する際に役に立つ可能性のある領域を識別する潜在力を有する。
【0132】
空間的回復時間は、第1の時間導関数を計算することによって、各空間的電気記録図(例えば、T波)の回復成分から推定することができる。この回復時間と、(本出願で前述した)興奮伝達時間との差は、局所的な回復/再分極特性を表す空間的興奮回復間隔(ARI)の推測を与える各空間的電気記録図に対して計算することができる。該ARIは、(例えば、電気記録図に対応する)電気解剖学的データが、それのために利用可能である心臓の表面の複数の箇所の各々に対して計算することができる。このARIは、本願明細書に示しかつ記載されている他のマップと同様に、心臓の表面の空間的3Dマップの形態で表示することができる。
【0133】
ARIは、ARIの分散の空間的推定(基礎疾患のインジケータ)を導出するために、心臓の解剖学的領域間で比較することができる。例えば、ユーザは、心臓上の箇所で2つ以上の仮想電極を選択することができる。仮想電極位置の各ペアの場合のARI間の差は、該仮想電極ペアの場合の分散の指示をもたらす。
【0134】
(動作環境の実施例)
図17は、患者の臓器に関連する生理学的データを視覚化するための、本願明細書に記載されているシステムおよび方法の1つ以上の実施形態を実施するのに用いることのできるタイプのコンピュータシステム500の一実施例を示す。コンピュータシステム500は、1つ以上の汎用ネットワークコンピュータシステム、組込型コンピュータシステム、ルータ、スイッチ、サーバ装置、クライアント装置、様々な媒介装置/ノードおよび/またはスタンドアロン型コンピュータシステムに実装することができる。また、コンピュータシステム500あるいはその一部は、例えば、ラップトップまたはノートブックコンピュータ、携帯情報端末(PDA)等のモバイルまたはポータブルクライアントに実装することができる。
【0135】
システムバス508は、例えば、2〜3例を挙げると、メモリバスまたはメモリコントローラ、周辺機器バス、およびPCI、VESA、マイクロチャネル、ISAおよびEISA等の様々な従来のバスアーキテクチャの何れかを用いたローカルバスを含むいくつかの種類のバス構造のうちの何れかとすることができる。システムメモリ506は、読出し専用メモリ(ROM)510と、ランダムアクセスメモリ(RAM)512とを含む。例えば、起動中に、コンピュータ502内の構成要素間で情報を転送するのに役に立つ基本的なルーチンを含む基本入出力システム(BIOS)は、ROM510に格納されている。
【0136】
コンピュータ502は、例えば、ハードディスクドライブ514と、例えば、リムーバブルディスク518から読出し、および該ディスクに書込むための磁気ディスクドライブ516と、例えば、CD−ROMディスク522または他の光学メディアから読出し、および該ディスクに書込むための光ディスクドライブ520とを含むことができる。ハードディスクドライブ514、磁気ディスクドライブ516および光ディスクドライブ520は、それぞれ、ハードディスクドライブインタフェース524、磁気ディスクドライブインタフェース526および光ディスクドライブインタフェース528によってシステムバス508に接続されている。これらのドライブおよび付随するコンピュータ可読媒体は、データ、データ構造、例えば、コンピュータ502のためのコンピュータが実行可能な命令の不揮発性記憶装置を形成する。上記のコンピュータ可読媒体の記載は、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスクおよびCDを指すが、当業者は、磁気カセット、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク、ベルヌーイカートリッジ等の、コンピュータによって読出し可能である他の種類の媒体も、例示的な動作環境500において利用できること、さらに、このような媒体はどれも、本発明の方法を実行するためのコンピュータが実行可能な命令を含むことができることを正しく認識すべきである。
【0137】
オペレーティングシステム530、1つ以上のアプリケーションプログラム532、他のプログラムモジュール534およびプログラムデータ536を含む多数のプログラムモジュールを、上記のドライブおよびRAM512に格納することができる。コンピュータ502におけるオペレーティングシステム530は、何らかの適当なオペレーティングシステムまたはオペレーティングシステムの組合せとすることができる。アプリケーションプログラム516、他のプログラムモジュール517およびプログラムデータ518は、本願明細書に示しかつ記載されているように、患者の臓器の場合の出力結果の視覚化を実行できるように協働することができる。
【0138】
ユーザは、コマンドおよび情報を、キーボード538およびポインティングデバイス(例えば、マウス540)等の1つ以上のユーザ入力装置を介してコンピュータ502に入力することができる。他の入力装置(図示せず)は、マイクロフォン、ジョイスティック、ゲームパッド、パラボラアンテナ、スキャナ等を含むことができる。これらおよび他の入力装置は、たいていの場合、システムバス508に結合されているシリアルポートインタフェース542を介して処理ユニット504に接続されているが、パラレルポート、ゲームポートまたはユニバーサルシリアルポート(USB)等の他のインタフェースによって接続してもよい。また、モニタ544または他の種類の表示装置も、ビデオアダプタ546等インタフェースを介してシステムバス508に接続されている。コンピュータ502は、モニタ544に加えて、スピーカ、プリンタ等の他の周辺出力装置(図示せず)を含むことができる。従って、仮想電極の場合の出力表示は、ディスプレイ上でのグラフィック表示に限定されない。
【0139】
コンピュータ502は、1つ以上のリモートコンピュータ560への論理接続を用いたネットワーク環境で作動することができる。リモートコンピュータ560は、ワークステーション、サーバコンピュータ、ルータ、ピアデバイスまたは他の共有ネットワークノードとすることができ、およびコンピュータ502に関連して記載されている構成要素の多くまたは全てを典型的に含むが、簡潔にするために、
図15には、記憶装置562のみが図示されている。
図15に示した論理接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)564およびワイドエリアネットワーク(WAN)566を含むことができる。このようなネットワーク環境は、オフィス、企業規模のコンピュータネットワーク、イントラネットおよびインターネットにおいて一般的である。
【0140】
LANネットワーク環境で用いる場合、コンピュータ502は、ネットワークインタフェースまたはアダプタ568を介してローカルネットワーク564に接続される。WANネットワーク環境で用いる場合、コンピュータ502は、典型的には、モデム570を含み、または、関連するLAN上の通信サーバに接続され、あるいは、WAN566を通じて通信を確立するための他の手段、例えば、インターネットを有する。内部または外部にあってもよいモデム570は、シリアルポートインタフェース542を介してシステムバス508に接続されている。ネットワーク環境において、コンピュータ502に関連して図示されているプログラムモジュール、またはその一部は、遠隔記憶装置562に格納することができる。図示されているネットワーク接続は、例示的なものであり、およびコンピュータ502とコンピュータ560との間で通信リンクを確立する他の手段を用いてもよいことは、正しく認識されるであろう。
【0141】
コンピュータプログラミングの当業者の実施に従って、本発明は、他に指示のない限り、コンピュータ502またはリモートコンピュータ560等のコンピュータによって実行される動作および機能の記号表示を参照して説明されている。そのような動作および機能は、コンピュータが実行するといわれる場合がある。該動作および記号的に表示された機能は、電気信号表示の結果として生じる変換または低減、および(システムメモリ506、ハードドライブ514、フロッピーディスク518、CD−ROM522および共用記憶装置510を含む)記憶システム内の記憶位置でのデータビットの維持が、それによって該コンピュータシステムの機能ならびに信号の他の処理を再構成または他に変更させるデータビットを表す電気信号の、処理ユニット504による操作を含むことは、正しく理解されるであろう。そのようなデータビットが維持される記憶位置は、該データビットに対応する特定の電気的、磁気的または光学的特性を有する物理的位置である。
【0142】
本願明細書に示しかつ記載されている特徴を考慮すれば、当業者は、利用することのできる空間的視覚化の様々な変更例および実施を理解し、および正しく認識するであろう。実施例として、ユーザは、心臓フレーム上に生成することのできる対応するユーザインタフェース要素を介して、様々な他の機能を選択することができる。例えば、ユーザは、1つ以上の電気記録図から1つ以上の拍動を分離することができる。拍動の分離は、例えば、本願明細書に示しかつ記載されているのと同様のキャリパを用いることによる手動操作とすることができる。別法として、または追加的に、所与の拍動の識別および分離は、対応する方法を実行することによって自動化することができる。
【0143】
加えて、一実施形態において、データは、心臓全体に対する心外膜データとして同時に取得される。このような方法でデータを取得する結果として、(例えば、心臓フレーム内に)提示されるデータの表示は、患者の心臓の単一の心室、2つの心室、3つの心室または4つ全ての心室の電気的活動に対応させることができる。該データは、全ての心室に対して同時に取得されるため、ユーザは、本願明細書に示しかつ記載されている方法を用いて、任意の数の心室に対する比較を実行することができる。このような比較は、関心のある分離拍動の場合の多数の心室に対する時間的比較を含むことができる。視覚表示はさらに、ユーザに追加的に提示することのできる患者の心臓の選択した心室の場合の比較を実行することができる。
【0144】
さらなる実施例として、上記方法は、関心のある1つ以上の間隔の各々に対する最小または最大の興奮伝達時間を計算するのに用いることができる。また、該方法は、選択されている1つ以上の間隔にわたる標準偏差、すなわち統計値を計算するのに用いることもできる。
【0145】
本願明細書に記載されているアプローチはさらに、パターンマッチングを容易にすることが可能である。例えば、パターンマッチング法は、(統計的可能性の程度に関して)パターンの再現性を判断するのに用いることができる。従って、パターンは、本願明細書に示しかつ記載されている方法に基づいて検出および分析することができる。該パターンマッチングは、周波数領域スペクトルにおいて、または、時間領域スペクトルにおいて用いることができる。
【0146】
心臓フレームと関連付けることのできる、および特に等時線マップと関連付けることのできる1つの追加的な機能性は、「ブロックのライン」を識別することである。該ブロックのラインは、例えば、所定の等時線マップに対して計算された勾配に基づいて計算することができる。従って、該方法は、該等時線マップの勾配を分析するのに、および最大伝導速度を計算するのに利用することができる。複数の拍動にわたる勾配の追加的な分析に基づいて、該ブロックのラインが、心拍間隔を変えて、通常、再現可能ではない、心臓に関連する機能状態に一致するか否かを判断することができる。また、このような分析から、そのようなブロックのラインが、該ブロックのラインが患者の心臓の所定領域に対して再現可能である可能性があるため、構造上の欠陥による可能性がある解剖学的条件に一致するか否かを判断することもできる。
【0147】
上述したことは、本発明の実施例および実施形態である。当然、本発明を説明するために、構成要素または方法の全ての考えられる組合せについて記載することは不可能であるが、当業者は、本発明の多数の追加的な組合せおよび置換えが可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付クレームの範囲内にある、そのような全ての代替例、変更例および変形例を包含することが意図されている。クレームにおいては、特に指示のない限り、「1つの」という用語は、「1つまたは1つ以上」を意味する。