特許第6396280号(P6396280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396280農業用フィルムの製造方法及び農業用フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396280
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】農業用フィルムの製造方法及び農業用フィルム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20180913BHJP
   A01G 13/02 20060101ALI20180913BHJP
   B65H 45/09 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A01G9/14 S
   A01G13/02 B
   B65H45/09
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-502925(P2015-502925)
(86)(22)【出願日】2014年2月25日
(86)【国際出願番号】JP2014054449
(87)【国際公開番号】WO2014132945
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-37269(P2013-37269)
(32)【優先日】2013年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 敏
(72)【発明者】
【氏名】千枝 学
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】軽部 純一
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−355460(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02305587(EP,A1)
【文献】 特開平11−127700(JP,A)
【文献】 特開2003−103630(JP,A)
【文献】 米国特許第04948638(US,A)
【文献】 特公昭53−022091(JP,B2)
【文献】 特開2011−161671(JP,A)
【文献】 特開2001−171914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
B65H 49/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰して一定幅の帯体とする偏平化工程と、
前記帯体の外周面に防曇塗膜を形成する防曇膜形成工程と、
前記防曇塗膜の乾燥の後に前記帯体の下側フィルムまたは上側フィルムの一方を幅方向における略中央で前記帯体の成形方向である長手方向に沿ってスリットを入れてカットしスリット端縁を形成するカット工程と、
前記帯体を、前記スリット端縁形成位置における前記下側フィルムまたは上側フィルムの他方を折り畳み中心とし前記外周面側を谷として折り、前記スリット端縁が外側となるように両スリット端縁と前記谷折りの位置を揃えて重ね、かつ前記幅方向の両端縁を重ねて四重に折り畳む折り畳み工程と、
前記四重に折り畳まれ、折り畳まれた後の幅方向の一方側で一対の山折り部が上下で重なり、折り畳まれた後の幅方向の他方側で前記両スリット端縁が一つの山折り部を挟んで重ねた半折り帯体とされた帯体を、ロール状に巻き取る巻き取り工程と、
を含むことを特徴とする農業用フィルムの製造方法。
【請求項2】
長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰して一定幅の帯体とする偏平化工程と、
前記帯体の外周面に防曇塗膜を形成する防曇膜形成工程と、
前記防曇塗膜の乾燥の後に前記帯体の下側フィルムまたは上側フィルムの一方を幅方向における所定箇所で前記帯体の成形方向である長手方向に沿ってスリットを入れてカットするカット工程と、
前記帯体を、前記幅方向の両端縁を重ね、前記スリットが内側となるように前記スリットに沿って前記帯体の下側フィルムまたは上側フィルムの他方を折って四重に折り畳み半折り帯体とする折り畳み工程と、
前記四重に折り畳まれた半折り帯体を、ロール状に巻き取る巻き取り工程と、
を含むことを特徴とする農業用フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の農業用フィルムの製造方法であって、
前記折り畳み工程における前記帯体の折り位置を、前記スリットに沿うとともに、スリット端縁から0〜10cmの位置とすることを特徴とする農業用フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項2または3記載の農業用フィルムの製造方法であって、
前記折り畳み工程において前記帯体の幅方向両側の両端縁を所定量ずらして折り畳むことを特徴とする農業用フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の農業用フィルムの製造方法であって、
前記所定量が、1〜30mmの範囲であることを特徴とする農業用フィルムの製造方法。
【請求項6】
長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰し偏平化して一定幅の帯体とした後、該帯体の外周面に防曇塗膜を形成し、該帯体の折り畳み部となる幅方向略中央の一方のフィルム側を長手方向に沿ってカットして、該カット部分を外側にカット端縁と他方のフィルム側の折り部を揃え、且つ前記帯体の幅方向両端縁を重ねるように折り畳んで四重に成形し、折り畳まれた後の幅方向の一方側で一対の山折り部が上下で重なり、折り畳まれた後の幅方向の他方側で前記両カット端縁が一つの山折り部を挟んで重ねた半折り帯体とされてロール状に巻き取られていることを特徴とする農業用フィルム。
【請求項7】
長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰し偏平化して一定幅の帯体とした後、該帯体の外周面に防曇塗膜を形成し、該帯体の折り畳み部となる箇所の一方のフィルム側を長手方向に沿ってカットして、該カット部分を折り畳み中心として該カット部分を内側に折り畳んで四重に成形し、折り畳まれた後の幅方向の一方側で一対の山折り部が上下で重なり、前記折り畳み中心側の折り畳まれた後の幅方向の他方側で内側に前記カット部分を収めた一つの山折り部となる半折りの帯体とされて、ロール状に巻き取られていることを特徴とする農業用フィルム。
【請求項8】
長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰し偏平化して一定幅の帯体とした後、該帯体の外周面に防曇塗膜を形成し、該帯体の折り畳み部となる箇所の一方のフィルム側を長手方向に沿ってカットして、該カット部分の端縁から0〜10cmの位置を折り畳み中心として該カット部分を内側に折り畳んで四重に成形し、折り畳まれた後の幅方向の一方側で一対の山折り部が上下で重なり、前記折り畳み中心側の折り畳まれた後の幅方向の他方側で二重の山折り部となるとともに、該二重の山折り部の内側に前記カット部分が位置する半折りの帯体とされて、ロール状に巻き取られていることを特徴とする農業用フィルム。
【請求項9】
請求項7または8記載の農業用フィルムであって、
前記帯体の幅方向両側の両端縁が所定量ずらして折り畳まれていることを特徴とする農業用フィルム。
【請求項10】
請求項9記載の農業用フィルムであって、
前記所定量が、1〜30mmの範囲であることを特徴とする農業用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウス栽培やトンネル栽培に使用される耐折り目破れに優れた広幅の長期展張型農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム、所謂農業用フィルムの製造方法及びその農業用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
インフレーション法によって成型された農業用ポリオレフィン系フィルムなどの農業用フィルムは、10m以上の広幅の生産が可能であり、幅継ぎの必要がなく継ぎ部の融着不足等の問題もないことから、好適に用いられている(例えば特許文献1参照)。
一般に農業用フィルムには、防曇性を付与するための防曇剤が多量に添加されたり、防曇塗布剤が塗布されたりしている。ところが、農業用フィルムは、透明性を付与するために表面が平滑であることからフィルム同志が密着し易く、特に夏場に成形されたフィルムはその傾向が著しい。そこで、フィルム同志の密着が解消可能となる農業用フィルムが提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
この農業用フィルムは、実施例において、ソルビタン系、グリセリン系の界面活性剤からなる防曇剤を配合して公知のインフレーション法により筒状に製造され、ガゼット折りされる。ガゼット折りは、開き口をフィルムの縦方向に沿って折り幅の中央付近に設ける例えば観音開きとされる。そして、フィルム同志の接触面にはエアーが注入される。エアーの注入は、開き口よりエアーノズル等を挿入し、折り目方向に向かってエアーを注入する。さらに、フィルム外面が折り込まれた部分もフィルム同志が密着している場合には、フィルム外面よりエアーノズル等を折り込み部に挿入し、エアーを注入することにより開反や展張時の作業性向上を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−355460号公報
【特許文献2】特開平11−127700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示の農業用フィルムに防曇塗膜を設け、手続補正書の図1に示すようにガゼット折りとした場合、防曇塗膜がフィルムの内側に折られる谷折り部が形成される箇所があり、この折り目で防曇塗膜がひび割れし易いという問題がある。また、ひび割れ後に剥離などを起こし防曇不良となる。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、防曇塗膜を形成した農業用フィルムの折り部でのひび割れや剥離などの不具合を生じにくくし、耐久性に優れた農業用フィルムを得ることができる農業用フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の農業用フィルム11の製造方法は、長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰して一定幅の帯体19とする偏平化工程と、
前記帯体19の外周面に防曇塗膜を形成する防曇膜形成工程と、
前記防曇塗膜の乾燥の後に前記帯体19の下側フィルム23または上側フィルム21の一方を幅方向における略中央で前記帯体19の成形方向である長手方向に沿ってスリット37を入れてカットしスリット端縁61,61を形成するカット工程と、
前記帯体19を、前記スリット端縁61,61形成位置における前記下側フィルム23または上側フィルム21の他方を折り畳み中心とし前記外周面側を谷(谷折り部47)として折り、前記スリット端縁61,61が外側となるように両スリット端縁61,61と前記谷折りの位置を揃えて重ね、かつ前記幅方向の両端縁53,55を重ねて四重に折り畳む折り畳み工程と、
前記四重に折り畳まれ、折り畳まれた後の幅方向の一方側49で一対の山折り部45,45が上下で重なり、折り畳まれた後の幅方向の他方側51で前記両スリット端縁61,61が一つの山折り部45を挟んで重ねた半折り帯体とされた帯体19を、ロール状に巻き取る巻き取り工程と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
この農業用フィルム11の製造方法では、筒状の農業用フィルム11が帯体19に偏平化され、その外周面に防曇塗膜が形成される。帯体19は、幅方向略中央に入れられたスリット37に沿って、スリット37が外側となって折り畳まれることで、半折り帯体19となる。半折り帯体19は、幅方向の一方側49で一対の山折り部45が上下で重なり、幅方向の他方側51で一つの山折り部45とスリット端縁61とが重なる。つまり、半折り帯体19は、略M字状に折り畳まれて4層となる。このことから、幅広な農業用フィルムであっても、巻き取り状態がコンパクトとなる。
【0009】
本発明の請求項2記載の農業用フィルム11の製造方法は、長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰して一定幅の帯体19とする偏平化工程と、
前記帯体19の外周面に防曇塗膜を形成する防曇膜形成工程と、
前記防曇塗膜の乾燥の後に前記帯体19の下側フィルム23または上側フィルム21の一方を幅方向における所定箇所で前記帯体19の成形方向である長手方向に沿ってスリット37を入れてカットするカット工程と、
前記帯体19を、前記幅方向の両端縁53,55を重ね、前記スリット37が内側となるように前記スリット37に沿って前記帯体の下側フィルム23または上側フィルム21の他方を折って四重に折り畳み半折り帯体とする折り畳み工程と、
前記四重に折り畳まれた半折り帯体19を、ロール状に巻き取る巻き取り工程と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
この農業用フィルム11の製造方法では、筒状の農業用フィルム11が帯体19に偏平化され、その外周面に防曇塗膜が形成される。帯体19は、幅方向略中央に入れられたスリット37に沿って、スリット37が内側に折り畳まれることで、半折り帯体19となる。半折り帯体19は、幅方向の一方側49で一対の山折り部45が上下で重なり、幅方向の他方側51で一つの山折り部45となる。つまり、半折り帯体19は、4層となる。防曇塗膜は、これら山折り部45の各外側に形成されており、山折り部45の農業用フィルム11を挟んで内側となる部分、すなわち、谷折り部47には形成されていない。これにより、谷折り部47において、防曇塗膜のある面が対面して重ねられることによる展開後のひび割れ等が生じにくくなる。
【0011】
本発明の請求項3記載の農業用フィルム11の製造方法は、請求項1記載の農業用フィルムの製造方法であって、
前記折り畳み工程における前記帯体19の折り位置を、前記スリット37に沿うとともに、スリット端縁から0〜10cmの位置とすることを特徴とする。
【0012】
この農業用フィルム11の製造方法では、折り曲げ位置をスリット37の位置から0〜10cmずれた位置としており、折り畳まれた帯体19は4層となり、幅方向の一方側49で一対の山折り部45が上下で重なり、幅方向の他方側51ではフィルムが重なり二重の山折り部45,46となるとともにこの幅方向の他端側51には二重の谷折り部47,48が形成される。スリット37の端縁から折り曲げ位置(折曲端縁57)までの折り返し部分はフラップ状縁部59とされて、展開後の農業用フィルム11としての予備端縁部分となり、農業用ハウス等に展張した際の固定用の端縁部分とすることができる。
【0013】
本発明の請求項4記載の農業用フィルム11の製造方法は、請求項2または3記載の農業用フィルム11の製造方法であって、
前記折り畳み工程において前記帯体19の幅方向両側の両端縁53,55を所定量ずらして折り畳むことを特徴とする。
【0014】
この農業用フィルム11の製造方法では、重なり合った両端縁53,55の長くずれて位置している一方側の端縁53を手がかりにして、他方側の端縁55に対して捲るように操作することが可能となり、互いを容易に引き離すことが可能となる。
【0015】
本発明の請求項5記載の農業用フィルム11の製造方法は、請求項4記載の農業用フィルム11の製造方法であって、
前記所定量が、1〜30mmの範囲であることを特徴とする。
【0016】
この農業用フィルム11の製造方法では、ずれ量が1mm以下である場合の手がかり量の不足が生じないとともに、ずれ量が30mm以上となってずらし部が折れたり、ずれて位置している一方側端縁53と他方側端縁55の距離が長くなりすぎたりして逆に捲りにくくなることがない。
【0017】
本発明の請求項6記載の農業用フィルムは、長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰し偏平化して一定幅の帯体19とした後、該帯体19の外周面に防曇塗膜を形成し、該帯体19の折り畳み部となる幅方向略中央の一方のフィルム側を長手方向に沿ってカットして、該カット部分を外側にカット端縁61,61と他方のフィルム側の折り部を揃え、且つ前記帯体19の幅方向両端縁53,55を重ねるように折り畳んで四重に成形し、折り畳まれた後の幅方向の一方側49で一対の山折り部45,45が上下で重なり、折り畳まれた後の幅方向の他方側51で前記両カット端縁61,61が一つの山折り部45を挟んで重ねた半折り帯体とされてロール状に巻き取られていることを特徴とする農業用フィルム。
【0018】
この農業用フィルム11では、筒状のフィルムが帯体19に偏平化され、折り畳み部となる箇所である幅方向略中央に長手方向に沿ってカットされスリット37が形成され、このスリット37が外側になるよう折り畳まれることで、半折りの帯体19となる。この半折りの帯体19は、幅方向の一方側49で一対の山折り部45が上下で重なり、幅方向の他方側51で一つの山折り部45と両スリット端縁61,61とが重なる。つまり、半折りの帯体19は、略M字状に所謂観音四つ折りとなって4層となる。
【0019】
本発明の請求項7記載の農業用フィルムは、長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰し偏平化して一定幅の帯体19とした後、該帯体19の外周面に防曇塗膜を形成し、該帯体19の折り畳み部となる箇所の一方のフィルム側を長手方向に沿ってカットして、該カット部分を折り畳み中心として該カット部分を内側に折り畳んで四重に成形し、折り畳まれた後の幅方向の一方側49で一対の山折り部45,45が上下で重なり、前記折り畳み中心側の折り畳まれた後の幅方向の他方側51で内側に前記カット部分を収めた一つの山折り部45となる半折りの帯体とされて、ロール状に巻き取られていることを特徴とする。
【0020】
この農業用フィルム11では、外周面に防曇塗膜が形成された筒状のフィルムが帯体19に偏平化され、折り畳み部となる箇所である幅方向略中央に長手方向に沿ってカットされスリット37が形成され、このスリット37が折り畳み中心として内側になるよう折り畳まれることで、半折りの帯体19となる。この半折りの帯体19は、幅方向の一方側49で一対の山折り部45が上下で重なり、幅方向の他方側51で一つの山折り部45となる。つまり、半折りの帯体19は、所謂観音四つ折りとなって4層となる。防曇塗膜は、外周面に形成され、これら山折り部45の各外側に形成されており、山折り部45を挟んで内側となる部分、すなわち、谷折り部47には形成されていない。これにより、谷折り部47において、防曇塗膜のある面が対面して重ねられることによる展開後のひび割れ等が生じにくくなる。
【0021】
本発明の請求項8記載の農業用フィルムは、長尺の筒状に成形したフィルムを平らに潰し偏平化して一定幅の帯体19とした後、該帯体19の外周面に防曇塗膜を形成し、該帯体19の折り畳み部となる箇所の一方のフィルム側を長手方向に沿ってカットして、該カット部分の端縁から0〜10cmの位置を折り畳み中心として該カット部分を内側に折り畳んで四重に成形し、折り畳まれた後の幅方向の一方側49で一対の山折り部45,45が上下で重なり、前記折り畳み中心側の折り畳まれた後の幅方向の他方側54で二重の山折り部45,45となるとともに、該山折り部45の内側に前記カット部分(スリット37)が位置する半折りの帯体とされて、ロール状に巻き取られていることを特徴とする。
【0022】
この農業用フィルム11では、筒状のフィルムが帯体19に偏平化された後に、幅方向略中央の長手方向に沿う位置を折り曲げ位置とし、この折り曲げ位置から0〜10cmずらした位置がカット部分とされスリット37が形成されている。折り畳まれた帯体19は4層となり、幅方向の一方側49で一対の山折り部45が上下で重なり、幅方向の他方側51ではフィルムが重なり二重の山折り部45,46となるとともにこの幅方向の他端側51には二重の谷折り部47,48が形成される。スリット37の端縁から折り曲げ位置(折曲端縁57)までの折り返し部分はフラップ状縁部59とされて、展開後の農業用フィルム11としての予備端縁部分となり、農業用ハウス等に展張した際の固定用の端縁部分とすることができる。
【0023】
本発明の請求項9記載の農業用フィルムは、請求項7または8記載の農業用フィルム11であって、
前記帯体19の幅方向両側の両端縁53,55が所定量ずらして折り畳まれていることを特徴とする。
【0024】
この農業用フィルム11では、重なり合った両端縁53,55の長くずれて位置している一方側の端縁53を手がかりにして、他方側の端縁55に対して捲るように展開操作することが可能となり、互いを容易に引き離すことが可能となる。
【0025】
本発明の請求項10記載の農業用フィルムは、請求項9記載の農業用フィルム11であって、
前記所定量が、1〜30mmの範囲であることを特徴とする。
【0026】
この農業用フィルム11では、ずれ量が1mm以下である場合の手がかり量の不足が生じないとともに、ずれ量が30mm以上となってずらし部が折れたり、ずれて位置している一方側端縁53と他方側端縁55の距離が長くなりすぎたりして逆に捲りにくくなることがない。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る請求項1記載の農業用フィルムの製造方法によれば、幅広な農業用フィルムであっても、成形後に四重に折り畳まれることで、巻き取り状態をコンパクトにすることができる。
【0028】
本発明に係る請求項2記載の農業用フィルムの製造方法によれば、防曇塗膜を形成した農業用フィルムの折り部でのひび割れや剥離を生じにくくし、耐久性に優れた農業用フィルムを得ることができる。
【0029】
本発明に係る請求項3記載の農業用フィルムの製造方法によれば、折り畳まれた農業用フィルムを展張した後の端縁部分を、固定用の端縁部分として使用することができる。
【0030】
本発明に係る請求項4記載の農業用フィルムの製造方法によれば、折り畳まれた農業用フィルムを展張させる際に、容易に展張を行うことができる。
【0031】
本発明に係る請求項5記載の農業用フィルムの製造方法によれば、重なり合った両端縁を容易に引き離すことができる。
【0032】
本発明に係る請求項6記載の農業用フィルムによれば、幅広の農業用フィルムであっても、巻き取り状態をコンパクトにすることができる。
【0033】
本発明に係る請求項7記載の農業用フィルムによれば、防曇塗膜を形成した面を外側に、山折りとして折り畳むので、折り部でのひび割れや剥離を生じにくくし、作業性が良好で、耐久性に優れる効果を得ることができる。
【0034】
本発明に係る請求項8記載の農業用フィルムによれば、展張した状態での端縁部分を農業用フィルム固定用の端縁部分として使用することができる。
【0035】
本発明に係る請求項9記載の農業用フィルムによれば、折り畳まれた農業用フィルムを展張させる際に、両端縁が予め所定量ずれていることから容易に展張を行うことができる。
【0036】
本発明に係る請求項10記載の農業用フィルムによれば、手がかり量の不足が生じないとともに、ずらし部が折れたり、ずれて位置している一方側端縁と他方側端縁の距離が長くなりすぎて捲りにくくなることがなく、重なり合った両端縁を容易に引き離すことができ、作業性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態に係る製造方法を実施する製造装置の概念図である。
図2】(a)は乾燥後の帯体の斜視図、(b)は下側フィルムにスリットが入った帯体の正面図、(c)はスリットを内側として折り畳まれる途中の帯体の正面図である。
図3】折り畳まれた農業用フィルムの正面図である。
図4】展開開始時の農業用フィルムの正面図である。
図5】巻き取られた農業用フィルムの斜視図である。
図6】他の実施形態による下側フィルムにスリットが入った帯体の正面図である。
図7】他の実施形態による帯体の折り畳み時を示す正面図である。
図8】他の実施形態による折り畳まれた農業用フィルムの正面図である。
図9】他の実施形態による帯体の折り畳み時を示す正面図である。
図10】他の実施形態による折り畳まれた農業用フィルムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る製造方法を実施する製造装置の概念図、図2(a)は乾燥後の帯体の斜視図、(b)は下側フィルムにスリットが入った帯体の正面図、(c)はスリットを内側として折り畳まれる途中の帯体の正面図、図3は折り畳まれた農業用フィルムの正面図、図4は展開開始時の農業用フィルムの正面図、図5は巻き取られた農業用フィルムの斜視図である。
本実施形態に係る農業用フィルム11の製造方法は、偏平化工程、防曇膜形成工程、カット工程、折り畳み工程に大別される。本製造方法によって製造される農業用フィルム11は、公知なフィルム製法であるインフレーション法により製造され、単層タイプ、或いは透明性、防塵性、柔軟性、及び強度等が向上される積層タイプとされる。
【0039】
[偏平化工程]
この農業用フィルム11は、使用される場所、例えば地方や環境、さらには耐用年数などに応じて、その厚み等が選択されるが、一般的に0.05〜0.3mmの厚さとされる。農業用フィルム11は、ポリオレフィン系樹脂よりなるが、このポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体やα−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体であり、例えば、プロピレン単独重合体やエチレン、1−ブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセンとの共重合体であるプロピレン系重合体、エチレン単独重合体や1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、酢酸ビニルとの共重合体であるエチレン系重合体が挙げられ、これらの樹脂は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
インフレーション法により製造される農業用フィルム11は、まず、押出機13に取り付けられているインフレーションダイ15から押し出されるとともに、内側より空気が送り込まれ、所定の幅に膨張されて、成形直後は、筒状に形成される。インフレーション法にて長尺の筒状に形成されるフィルム原反は、ピンチロール17に挟まれて引き取られ、図2(a)に示すように、平らに潰されて一定幅の帯体19とされる。なお、図2〜4及び図6〜8にに示す帯体19は、本発明を説明するために空間を有する偏平に図示しているが、実際には互いが密着した状態となる。つまり、帯体19は折り目が二筋生じて、図中左右位置となるような幅方向に両端縁53,55が形成され、上側フィルム21と下側フィルム23とが重なる。帯体19は、搬送路の所定位置に設けられる複数のガイドロール25に張架されて、搬送方向下流側となる防曇膜形成部、カット部、折り畳み部へと順次搬送され、最終段の巻き取り部にて農業用フィルム11として巻き取られる。
【0041】
[防曇膜形成工程]
この農業用フィルム11のフィルム片面には、所望に応じて塗布型防曇剤などの改質剤が塗布され、防曇性を有する塗膜が形成される。インフレーション成形時における内側層は、一般的には、ハウス栽培における使用時に外層となる。つまり、防曇塗膜は、インフレーション成形時における外側層に形成される。この塗布型防曇剤が塗布される工程は、フィルムを切断し折り畳む以前に行われる。すなわち、帯体19となった状態での外周面となる上下両面22,24に、コロナ処理機27によるコロナ放電処理が施された後に、防曇剤などの改質剤の入った槽を備える塗布装置29を通過し、乾燥装置31によって乾燥させることでフィルム表面に塗膜を形成する。なお、図1においては、押出機13が1台であるが、押出機が3〜5台を用いた複層インフレーション法を用いることが好ましい。
【0042】
防曇塗膜は、無機質コロイドゾルと熱可塑性樹脂バインダーとからなり、例えば、無機質コロイドゾルを熱可塑性樹脂バインダーに分散させた分散液として使用する。
無機質コロイドゾルとしては、例えばシリカゾル、アルミナゾル及びこれらの混合物が挙げられる。シリカゾルとしては、球状或いは鎖状のコロイド状シリカなどが挙げられ、平均粒子径5〜200nm、好ましくはl0〜130nmのものが使用される。このようなものとしては、スノーテックス20、スノーテックスXL、スノーテックスUP(商品名:日産化学工業社製)などが挙げられる。また、アルミナゾルとしては、5〜200nmのコロイドの大きさを持つ球状、羽毛状、棒状のアルミナ水和物を挙げることができ、このようなものとしては、アルミナゾル−100、アルミナゾル−200(商品名:日産化学工業社製)などが挙げられる。
熱可塑性樹脂バインダーとしては、無機質コロイドゾルをフィルムの外側層に固着できるものであればよいが、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル変成ウレタン樹脂などの樹脂バインダーが挙げられ、特に、水性アクリル変成ウレタン樹脂が好適である。この水性アクリル変性ウレタン樹脂としては、ポリエステル系アニオン性のものが好ましく、例えばポリエステル系アニオン性の水性ウレタン樹脂の存在下に、ヒドロキシ基含有アクリル系化合物を重合させたのち、活性イソシアネート化合物を反応させることにより、製造することができる。
【0043】
また、防曇塗膜を形成する分散液には、分散性及び塗布性の向上のため、また消泡剤として、必要に応じ、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を含有させてもよい。シリコーン系界面活性剤としては、例えばポリエーテル変成シリコーン、ポリグリセリン変成シリコーン、アルキル・ポリエーテル共変成シリコーンが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、例えばフルオロアルキル基やフルオロアルケニル基を有する界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、前記分散液に対し0.01〜2重量%となるよう配合する。
前記無機質コロイドゾルと熱可塑性樹脂バインダーとの割合は、固形分重量比で9:1ないし3:7の範囲にあるのが望ましい。これよりも熱可塑性樹脂バインダーの割合が少ないと防曇塗膜とフィルム表面との接着が不十分になり、またこれよりも無機質コロイドゾルの割合が少ないと十分な防曇性が得られない。
【0044】
防曇塗膜は、無機質コロイドゾルを熱可塑性樹脂バインダーに分散させた分散液を、例えば浸漬法或いはグラビアコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーターなどによるコーティング法などを用いて塗布するが、フィルム屈曲部付近に希釈液を供給し、フィルムの屈曲部に塗布した分散液を希釈してその濃度を下げ、上記方法によって得た筒状積層フィルムの外側層上に塗布し、50〜150℃程度の温度で熱風乾燥して形成する(希釈法)。
別の方法として、上記コーティング法にて無機質コロイドゾルを熱可塑性樹脂バインダーに分散させた分散液を上記方法によって得た筒状積層フィルムの外側層上に塗布した後、前記筒状積層フィルム屈曲部にエアーを吹き付けて余分な分散液を吹き飛ばし、50〜150℃程度の温度で熱風乾燥して形成(エアー法)してもよい。
また別の方法として、上記コーティング法にて無機質コロイドゾルを熱可塑性樹脂バインダーに分散させた分散液を上記方法によって得た筒状積層フィルムの外側層上に塗布した後、前記筒状積層フィルム屈曲部の塗布液をさらに掻き取り、50〜150℃程度の温度で熱風乾燥して形成(多重法)してもよい。
上記方法にて形成された乾燥後の防曇塗膜の平均膜厚は、防曇塗膜の種類や必要とする防曇性能によっても異なるが、0.3〜5μmとすることが好ましく、0.5〜2μmとすることがさらに好ましい。
【0045】
屈曲部の防曇塗膜の厚さは、平坦部の平均厚さにできるだけ近づけることが好ましいが、少なくとも上記平坦部の平均厚さの2倍以下に抑えることが、フィルムの長期使用時における折り目箇所からの破れの発生を低下させる上で好ましい。
また、屈曲部の塗膜の厚さは、少なくとも上記平坦部の平均厚さの0.5倍以上とすることが、防曇性能を確保する上で好ましい。
【0046】
なお、上記フィルムの製造時に、このフィルム自体に機能を付与するために、各種防曇剤、ハイドロタルサイト類やアルミニウムシリケート等の保温剤、防霧剤、熱安定剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0047】
[カット工程]
次に、防曇塗膜の形成された帯体19であるフィルム原反は、切断折り畳み装置33において、搬送方向である縦方向に沿って、図2(b)に示すように、カッター35などの切断手段を用いて一部を切断する。この切断は、防曇塗膜の乾燥の後に帯体19の下側フィルム23または上側フィルム21の一方を幅方向における所定箇所、例えば略中央で帯体19の成形方向である長手方向に沿って、外側に配置されるカッター35と内側に配置される切断支持板38にてスリット37を入れてカットする。なお、図1に示す切断折り畳み装置33においては、ガイドロール34の手前でスリット37が入る。
【0048】
[折り畳み工程]
スリット37の入った帯体19は、図2(c)に示すように、上記カット部分が折り畳み部とされ、このカット部分を折り畳み中心としてスリット37が内側となるようにスリット37に沿って、折り曲げ支持体39などによって折り畳まれる。図1に示すように、例えば帯体19の搬送をガイドするガイドロール25,34とは軸線方向が直交するピンチロール36を具備することで、スリット37形成後のガイドロール34を通過した後に、スリット37を内側に谷折りしながら折り畳み、この折り畳み状態で挟み搬送される。これにより、帯体19は、折り目が三筋生じて4層に重なり、所謂観音四つ折りとされる。ここで、折り畳まれる帯体19は、図3に示すように、帯体19の幅方向両側の両端縁53,55が所定量ずらされて折り畳まれる。幅方向の両端縁53,55は、幅方向に、1mm以上30mm以内、好ましくは3mm以上20mm以内に設定される所定の長さのずれAを有した状態で重合される。これにより、重なり合うフィルムの一方の端縁53は、他方の端縁55より長く延出することになる。
【0049】
ずれAの所定量が、1〜30mmの範囲であることにより、ずれ量が1mm以下である場合の手がかり量の不足が生じないとともに、ずれ量が30mm以上となってずらし部が折れたれり、ずれて位置している一方側と他方側の距離が長くなりすぎたりして逆に捲りにくくなることがない。これにより、図4に示すように、重なり合った両端縁53,55を容易に引き離すことができるようになる。
【0050】
そして、四重に折り畳まれたフィルムは、図1に示すように変向ガイドロール26を介して巻取機41にて紙管43を芯として、図5に示すように巻き取られロール状とされる。このロール状とされた農業用フィルム11は、保管・輸送の行われる開反前の原反となる。
【0051】
このように構成された農業用フィルム11は、農業用ハウスに展張させる際に、ロール状のフィルムを巻き戻して繰り出し、そしてずれAの設定される縁部分にて、折り畳まれて互いに密着しているフィルムを互いに引き離すようにして開反させることとなる。
【0052】
この開反の作業において、農業用フィルム11は、ずれAを有している縁部分において、重なり合った端縁の一方(53)が、他方(55)より長く延出しているので、一方側の端縁53を手がかりにして、図4に示すように、他方側55に対して捲るように操作することで容易に互いを引き離すことが可能となる。このことから、折り畳まれている農業用フィルム11の展張作業を煩雑なものとすることなく、容易に農業用ハウスなどに対して展張させることが可能となる。
【0053】
また、折り畳まれた状態でフィルム面同士が密着してしまったり、柔軟な樹脂素材のフィルムであったり、フィルム自体に添加された各種添加剤がブリードしてフィルム面がベタついても、上述したようにずれAを有して重合された端縁53,55により容易に互いを引き離すことができ、折り畳まれたフィルムを展開させることが可能となるので、展張の作業性を低下させることがない。
【0054】
そして、農業用フィルム11の製造方法では、外周面に防曇塗膜が形成された筒状の農業用フィルム11が、帯体19に偏平化される。帯体19は、幅方向略中央に入れられたスリット37に沿って、スリット37が内側に折り畳まれることで、図3に示すように、4層の半折り帯体19となる。半折り帯体19は、幅方向の一方側49で一対の山折り部45が上下で重なり、すなわち一方の端縁53と他方の端縁55とが重なり、また、幅方向の他方側51で一つの山折り部45よりなる折曲端縁57となる。防曇塗膜は、これら全ての山折り部45の外側に形成されており、山折り部45の農業用フィルム11を挟んで内側となる部分、すなわち、谷折り部47には形成されていない。これにより、谷折り部47において、防曇塗膜のある面が対面して重ねられることによる展開後のひび割れや剥離等が生じにくくなっている。
【0055】
従って、本実施形態に係る農業用フィルム11の製造方法によれば、防曇塗膜を形成した農業用フィルム11の折り部でのひび割れを生じにくくし、耐久性に優れた農業用フィルム11を得ることができる。
【0056】
なお、上述した実施の形態では、カット工程によるスリット37の形成位置と、折り畳み工程による折り畳み位置とを同じ位置として、スリット37による切断端縁が折り目にならない観音四つ折りにて4層に重なって折り畳まれる帯体19の例を示したが、このカット部分であるスリット37の位置と折り畳み位置とを一致させず、帯体19の折り位置をスリット37に沿わせながら、このスリット37の端縁と折り位置とをずらして折り畳むこととしても良い。
【0057】
図6に示すように、偏平化された帯体19は、その幅長Wの略中央が折り位置Cとされ、この略中央の折り位置Cから0〜10cm、好ましくは0〜5cmの成形幅B分ずれた位置を次段のカット工程で、上述と同様に切断支持板38とカッター35とで、帯体19の成形方向である長手方向に沿ってスリット37を成形する。すなわち折り位置Cとスリット37とは、所定幅Bを介して平行に配置される。
【0058】
スリット37の成形後は、折り畳み工程にて、図7に示すように、スリット37の端縁から所定幅Bを隔てた位置で、折り曲げ支持体39などによって、スリット37が内側となるようにスリット37に沿って折り畳まれる。この折り位置は折曲端縁57となり、この折り位置からスリット37までの所定幅B部分がである折り返し部分がフラップ状縁部59となる。この農業用フィルム11では、図8に示すように、折り畳まれた帯体19は4層となり、幅方向の一方側49で一対の山折り部45が上下で重なり、幅方向の他方側51ではフィルムが重なり二重の山折り部45,46となるとともに、この他端側51には二重の谷折り部47,48が形成される。フラップ状縁部59の形成される谷折り部48は、防曇塗膜同士が密着することになるが、折り畳まれた帯体19を展開した際に、最も外側の端縁に位置しており、展開後の農業用フィルム11としての予備端縁部分となる。このフラップ状縁部59は、農業用ハウス等に展張した際の、構造枠体への固定用の端縁部分とすることができ、ハウス内面に表出しない箇所となり、すなわち防曇性能を必須とする箇所ではないので、防曇塗膜にひび割れなどが生じても問題無い箇所となる。すなわち、ハウスへの固定用の端縁部分を、予めフラップ状縁部59として折り畳み時に形成することが可能となっている。
【0059】
また、上述した実施形態では、カット工程後の折り畳み工程の際に、スリット37が内側となるようにスリット37に沿って折り曲げ、4層の帯体19とした例を示したが、カット部分であるスリット37を外側となるように、このスリット37に沿って折り曲げ、折り畳むこととしてもよい。
【0060】
図9に示すように、スリット37は、帯体19の一方のフィルム側の幅方向略中央をカットされることで形成される。帯体19をカットした後の折り畳み工程では、折り曲げ支持体39などによって、スリット37を外側とし、このスリット37が形成される一方のフィルムと対向する他方のフィルム側を折り畳み中心として折り曲げ、ここを折曲端縁57とする。そして、幅方向両端縁53,55を重ねるように折り曲げ、折曲端縁57を谷折り部47とし、幅方向両端縁53,55を一対の山折り部45,45として重合させる。このときのスリット37による両スリット端縁61,61は揃えられることとなって、且つ、折曲端縁57の山折り部45とそれぞれ重合状態となり、幅方向の他方側51となる。なお、この折り畳み時に、幅方向の一方側49の一対の山折り部45の重なり状態を、上記したように所定の長さのずれを有するように重合したり、同様に、幅方向の他方側51の両スリット端縁61,61及び山折り部45とのそれぞれの重なり状態を所定の長さのずれをゆうするように重合させることとしてもよく、このようなずれを予め設定しておくことで、折り畳まれた帯体19を展開する際の手がかりとすることができ、捲るような操作を容易とすることができる。
【0061】
この農業用フィルム11では、図10に示すように、折り畳まれた帯体19は4層となり、幅方向の一方側49で一対の山折り部45,45が上下に重なり、幅方向の他方側51では、両スリット端縁61,61が山折り部45を挟んで重なることとなり、その折り畳まれた状態は、略M字状となる。このことから、幅広に製造される農業用フィルムであっても、幅長をコンパクトに縮めて巻き取ることが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
11…農業用フィルム
19…帯体
21…上側フィルム
23…下側フィルム
37…スリット
61…スリット端縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10