【実施例】
【0043】
以下に、実施例、比較例の概略を示す。
(実施態様:アルカリ・アンモニア・加熱処理)
Ti金属またはTi合金の基体をアルカリ処理する。続いて、アンモニウムイオンを含有するアンモニア水溶液に基体を接触(浸漬)させてアンモニア処理を行う。その後、基体を洗浄、乾燥させ、加熱処理する。上記したが、ここでは、これらの一連の処理を、「アルカリ・アンモニア・加熱処理」という。
【0044】
(比較態様1:未処理)
Ti金属またはTi合金の基体であって、アルカリ処理、アンモニア処理、あるいは加熱処理を含め、いずれの処理も行わない場合を、ここでは「未処理」という。
【0045】
(比較態様2:アルカリ・加熱処理)
Ti金属またはTi合金の基体をアルカリ処理する。その後、基体を加熱処理する。ここでは、これらの一連の処理を、「アルカリ・加熱処理」という。
【0046】
(比較態様3:アルカリ・硝酸・加熱処理)
Ti金属またはTi合金の基体をアルカリ処理する。続いて、硝酸イオンを含有する硝酸(HNO
3)に基体を接触(浸漬)させて硝酸処理を行う。その後、基体を洗浄、乾燥させ、加熱処理する。ここでは、これらの一連の処理を、「アルカリ・硝酸・加熱処理」という。
【0047】
以下に、実施例1〜6及び比較例1〜3を示し、更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0048】
(実施例1〜5)
アルカリ・アンモニア・加熱処理例:純Ti金属からなる基体(以下、「純Ti金属基体」または「Ti金属基体」という)を、5MのNaOH水溶液に60℃で24時間浸漬した。続いて、基体を所定の濃度のNH
4OH水溶液に40℃で24時間浸漬した。その後、基体を600℃で1時間加熱処理して、試料を得た。NH
4OH水溶液の濃度の低い順から、実施例1(0.1M)、実施例2(0.5M)、実施例3(1M)、実施例4(5M)、および、実施例5(10M)とした。
【0049】
(比較例1)未処理例:純Ti金属基体を、未処理の状態で、試料とした。
(比較例2)アルカリ・加熱処理例:純Ti金属基体を、5MのNaOH水溶液に60℃で24時間浸漬した。その後、基体を600℃で1時間加熱処理して、試料を得た。
(比較例3)アルカリ・硝酸・加熱処理例:純チタン金属基体を、5MのNaOH水溶液に60℃で24時間浸漬した。続いて、基体を1MのNH
4OH水溶液に40℃で24時間浸漬した。その後、600℃で1時間加熱処理して、試料を得た。
【0050】
以下に、実験に用いた、基体の形状、表面構造解析方法、アパタイト形成能試験方法、光触媒能試験方法について概略を記載する。
【0051】
(純Ti金属基体)
下記実施例、比較例とも、試料の基体として、以下の角板を用いた。
角板(10mm角、厚さ1mm:(株)高純度化学研究所、純度3N(99.9%)カタログ番号:TIE04CB)
なお、参考例として、丸板(直径15mm、厚さ0.3mm:(株)吉見製作所、純度JIS1種)を用いた。
【0052】
(表面構造解析)
実験により得られた試料(純Ti金属基体)表面の構造変化を、走査型電子顕微鏡(SEM)、薄膜X線回析(TF−XRD)およびX線光電子分光法(XPS)により調べた。
【0053】
(可視光下での光触媒能(メチレンブルー分解特性)試験)
得られた試料を、5mLの0.01mMメチレンブルー(MB)水溶液に浸漬し、蛍光灯(可視光)を6時間照射した後、MB濃度の変化を可視紫外分光光度計により調べた。
【0054】
(アパタイト形成能試験)
得られた試料を、ヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液(SBF)30mLに36.5℃で7日間浸漬し、3日後、7日後のアパタイト形成能を、以下の方法で調べた。
(a)走査型電子顕微鏡(SEM)像の観察。
(b)SEMによる写真から、形成されたアパタイトの粒径を計測。
なお、上記擬似体液(SBF)は、インプラント材料のアパタイト形成能をin vitroで調べるための水溶液として、ISOで認可(ISO23317:2007 Implants for surgery. In vitro evaluation for apatite−forming of implant materials)されているものを用いた。
【0055】
<可視光下での光触媒能とアパタイト形成能について>
(1)可視光下での光触媒能とアンモニア水の濃度について
図1は、左から、比較例1、2、及び、実施例1〜5の、光触媒能(MBの分解率(%))を示す棒グラフである。可視光における光触媒能の指標であるMB分解率(%)は、比較例1(未処理:Untreated)では約3.3であった。これに対して、実施例1(0.1M NH
4OH)では11.1、実施例2(0.5M NH
4OH)では14.6、実施例3(1M NH
4OH)では11.5、実施例4(5M NH
4OH)では11.9、実施例5(10M NH
4OH)では6.1であった。即ち、MB分解率について、実施例1〜5は、未処理の比較例1に対し、何れも高値を示した。また、比較例2(アルカリ(5M NaOH)・加熱処理)では、9.6、比較例3では、未処理例(比較例1)のレベルであった。
【0056】
なお、一般的にTiO
2は、300〜400nmの限定された紫外線領域の光照射で光触媒能(抗菌、殺菌等)を有する。本実施例では、全て、手術室等と同様の可視光下で光触媒能を有した。
【0057】
(2)アパタイト形成能とアンモニア水の濃度について
以下の実施例1〜5、および比較例1〜3では、上記実験(1)の実施例1〜5、および比較例1〜3と同様の条件で処理したTi金属の基体を用いた。
【0058】
アパタイト形成能を調べた結果、比較例1(未処理)や比較例2(アルカリ(5MのNaOH)・加熱処理)ではアパタイト形成能が見られなかった。これに対して、実施例1〜5つまり、アルカリ・アンモニア・加熱処理においては、アンモニア濃度が0.1〜10Mの何れの場合でも、大部分が5〜20μmレベルの大きなアパタイトが形成された。これにより、実施例1〜5が顕著に優れたアパタイト形成能を示すことが判明した。
図2に実施例3の走査型電子顕微鏡像を示す。
【0059】
図3は、この実施例の「アルカリ・アンモニア・加熱処理」したチタン金属基体表面に、7日間で形成されたアパタイトの粒径分布である。左から、アンモニア濃度を0.1M、0.5M、1Mとした実施例1〜3における、アパタイトの粒径分布を示す。粒径が5〜10μmのものが多く、さらに粒径10〜20μmの大きなアパタイト形成も顕著に見られた。因みに、5〜20μmレベルの大きなアパタイトは、0.1Mで、72.0%、0.5Mで、87.3%、1Mで63.3%を占めていた。
【0060】
また、形成されたアパタイトの平均粒径は、比較例1、2のゼロに対して、実施例1で6.34μm、実施例2で7.20μm、実施例3で6.01μmであった。
【0061】
参考例として、基体を他社製の丸板とした場合の結果を示す。未処理(比較例1と同様の条件)では、上記と同様にアパタイト形成能は見られなかった。これに対し、アルカリ・加熱処理(比較例2と同処理)の場合は、7日間で、粒径が平均3.29μmのごく小さなアパタイト形成が観察された。この場合の、アパタイト粒径分布を
図4に示す。この参考例では、5μm以下の小さなアパタイト形成が見られ、全体の96.5%を占めていた。
【0062】
以上の結果、実施例1〜5は、比較例1〜3ではアパタイト形成能がないのに対して、顕著なアパタイト形成能を有することが判明した。ここで、例え、上記、実施例1〜3の粒径分布(
図3)を、アルカリ・熱処理した参考例(丸板)の粒径分布(
図4)や平均粒径と比較したとしても、実施例1〜3のアパタイト形成能は、顕著に優れたものであることは明らかであった。例えば、実施例2は、この比較例2に比して、平均粒径が2倍以上大きい、つまり、表面積にすれば4倍以上大であった。また、7日間で形成されたアパタイトの粒径分布で比較すると、実施例2は、5〜20μmの粒径の大きなアパタイトが全体の87.3%であるのに対し、参考例の場合は、5〜10μmのものは3.5%と極端に少ない。以上のことからも、本実施例では、大変優れたアパタイトの形成能を獲得していることが分かった。
【0063】
<表面構造解析について>
上記の各処理後におけるTi金属表面の構造変化を、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、薄膜X線回折(TF−XRD)及びX線光電子分光法(XPS)により調べた。
【0064】
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果(
図5〜7)
アルカリ・アンモニア・加熱処理を行った実施例では、
図5に示す様な、微細な網目構造(多孔質構造)が観察されたことが特徴的であった。全体としては、1μmかそれ以上の大きな孔を多く含有する多孔質構造が、掘り深く、くっきりと形成されていた。それに対して、未処理(比較例1)の場合はほぼ平坦な構造で、アルカリ・硝酸・加熱処理(比較例3)の場合も、同様にほぼ平坦な構造が観察された(
図6)。即ち、比較例1,3では網目状、多孔質状の構造は見られなかった。なお、微細な構造上の違いは判然としないが、アルカリ・加熱処理(比較例2)の場合は、全体として1μmより小さめで浅めの網目構造が観察された(
図7)。
【0065】
(2)薄膜X線回析(TF−XRD)の結果(
図8A、8B)
図8Aは、上から比較例3、実施例3、比較例2、比較例1のTF−XRDの解析結果である。
図8Bは、この実施例3、比較例2の回折線を部分拡大したものである。
ここで、アナターゼ(アナターゼ型酸化チタン:可視光下で高い光触媒能)、ルチル(ルチル型酸化チタン:可視光下で極少ない光触媒能)、ST(非晶質のアルカリチタン酸塩、Na
2Ti
5O
11)のそれぞれのX線の最強回折線の2θを、それぞれ25.4°、27.4°、24.6°として、おおよそのピーク高さを求めた。アルカリ・アンモニア・加熱処理(実施例3)では、アナターゼ:404、ルチル:114、ST:99となった。アルカリ・硝酸・加熱処理(比較例3)では、アナターゼ:30、ルチル:497、ST:33となった。アルカリ・加熱処理(比較例2)では、アナターゼ:283、ルチル:200、ST:466となった。一方、純Tiに帰属される40°付近のピーク強度は、実施例のアルカリ・アンモニア・加熱処理では567であった。比較例のピーク強度は、アルカリ・硝酸・加熱処理では397、アルカリ・加熱処理では930であった。これらの値と上記の各結晶相のピーク高さとの合計(アナターゼ(A)+ルチル(R)+ST+Ti)を分母として、各結晶相のピーク高さの比を算出した。同じ結晶相でも試料によってピーク位置が少し異なるため、異なる試料間での直接比較は難しい。しかしながら、一つの試料の中での各結晶の析出量の大凡の存在比は、このピーク高さの比から推測することができた。
【0066】
算出したピーク高さの比(X100)を表1に示す。
【表1】
【0067】
TF−XRDの測定において、アナターゼとSTの最強回折線の2θが、25.4°、24.6°と非常に近接している。かつ、アナターゼのピークが高くブロードなため、アナターゼのピークの裾野にSTの2θ領域が重なってしまう。従って、後述のXPS測定では、ほとんどSTが存在しないレベルであるにもかかわらず、TF−XRD測定では、誤差範囲と推定されるSTのピーク高さが、計算上、実際値より大きく算出されてしまうことに留意すべきである。
【0068】
(3)X線光電子分光法(XPS)の結果(
図9)
XPS測定による結果を以下に示す。本実施例3のアルカリ(5MのNaOH)・アンモニア(1MのNH
4OH)・加熱処理試料では、0.4 atomic%のNと、1.4 atomic%のNaが検出された。比較例2のアルカリ(5MのNaOH)・加熱処理では、0.67 atomic%のNと、11.1 atomic%のNaが検出された。比較例3のアルカリ(5MのNaOH)・硝酸(1MのHNO
3)・加熱処理では、1.73 atomic%のNと、0.0 atomic%のNaが検出された。
【0069】
<Na原子の含有率>
上記XPSの結果から、本実施例(アルカリ・アンモニア・加熱処理)の基体試料に形成された改質層の表面におけるNa原子の含有率は、全くゼロではない。しかしながら、この含有率は、比較例2(アルカリ・加熱処理)(11.1 atomic%)と比較して、約1/10程度(1.4 atomic%)である。このような低い含有率は、この技術分野では誤差範囲のレベル(実質的に含有しないレベル)である。
【0070】
<N原子の含有率>
一方、窒素をドープしたTiO
2は可視光下で光触媒活性を示すことが知られている。実施例(アルカリ・アンモニア・加熱処理)で使用したアンモニア(1MのNH
4OH)や、比較例3(アルカリ・硝酸・加熱処理)で使用した硝酸(1MのHNO
3)は、Nドープの窒素源と考えられている。N原子の含有率は、XPS測定によれば、比較例3では1.73 atomic%と高値であったが、実施例3では0.40 atomic%と大変低かった。実施例3における値は、比較例2(アルカリ・加熱処理)の0.67 atomic%と比べてもさらに低値であり、全く予想外の結果であった。
【0071】
以上のように、硝酸を用いた比較例3は、一番高いN値(atomic%)を示したが、この基体は、光触媒能もアパタイト形成能も得られなかった。一方、アンモニア水を用いた実施例では、窒素源を用いない比較例2(アルカリ・加熱処理)のレベルより、NのXPS測定値が低かった。このことから、今回、実施例のTi金属基体における顕著な効果として得られた、優れたアパタイト形成能および光触媒能という特性の獲得に関して、NドープTiO
2が関与しているとの証拠は得られず、この点については、否定的な結果が示された。
【0072】
以下に、TF−XRDおよびXPSによる測定の結果をまとめたものを示す(表2)。
【0073】
【表2】
ここで、STは、非晶質のアルカリチタン酸塩、Sodium titanate(Na
2Ti
5O
11)を意味する。また、表2中の()は、少量含有され得る二酸化チタンの型を示す。
【0074】
上記のSEM観察およびTF−XRD測定によれば、比較例1(未処理、Ti金属基体)では、表面構造はほぼ平坦(SEM観察)で、表面はTi(TF−XRD測定)であることが確認された。また、他の比較例であるアルカリ・加熱処理(比較例2)では、表面に実施例より浅く1μmより小さめの網目構造が多数形成されていた(SEM観察)。比較例2において、Ti金属基体表面には、主に、アルカリチタン酸塩(ST)と、可視光下で低い光触媒しか示さないルチル型TiO
2を含有し、ごく少量のアナターゼ型TiO
2を含有する層が形成されていた(TF−XRD測定)。
【0075】
また、基体にアルカリ・硝酸(1MのHNO
3)・加熱処理を行った比較例3では、アルカリ処理したにもかかわらず、表面構造はほぼ平坦(SEM観察)で、網目構造は観察されなかった。また、光触媒能やアパタイト形成能も見られなかった。
【0076】
これら比較例に対して、実施例のアルカリ・アンモニア・加熱処理では、アルカリ処理後にアンモニア処理をすることにより、Ti金属基体表面に、比較例2(アルカリ・加熱処理)よりは、深くくっきりとした、1μmよりは大きめの孔を多数有する網目構造(多孔質構造)が形成された(SEM観察)。基体表面には、可視光下で高い光触媒能を有するアナターゼ型TiO
2を多く含み、ごく少量のルチル型TiO
2を含有し、かつ、光触媒能等に対して不活性なアルカリチタン酸塩(ST)を実質的に含有しない、改質層が形成されていた。
【0077】
一般に、Ti金属又はTi合金基体の場合、その表面には、元来TiO
2に近い酸化物よりなる極めて薄い膜が存在する。TiO
2は、強酸、強塩基のいずれとも反応する両性物質である。従って、Ti金属又はTi合金よりなる基体をアルカリ液中に浸漬すると、反応量の少ない内部から反応量の多い外部に向かって漸増する濃度勾配をもって、基体表面に非晶質のアルカリチタン酸塩が生成する。アルカリチタン酸塩は、光触媒作用はなく不安定といわれている。
【0078】
今回の、Ti金属またはTi合金からなる基体への、アルカリ・アンモニア・加熱処理の効果とその機序については全て解明されてはいない。本願の実施態様では、上記アルカリ処理後、基体を0.1M〜10Mのアンモニア水溶液に浸漬し、更に、Ti金属又はTi合金の転移温度以下の温度で1〜24時間加熱することによって、表面に生成されたアルカリチタン酸塩が消失した。最終的に、微細な網目構造を有し、かつ、アナターゼ型TiO
2を主成分として含有する改質層が表面から内部へ向かって形成された。これらの処理によって、結果的に、可視光に対して光触媒特性を有し、更に、優れたアパタイト形成能を有する、インプラント用基体を得ることができた。
【0079】
以上より、Ti金属からなる基体は、顕著なアパタイト形成能と、可視光下での光触媒活性(抗菌性)という、生体インプラントとしての2つの優れた特性を、アルカリ処理後、さらにアンモニア水で処理することによって、同時に付与されることが明らかとなった。
【0080】
(実施例6)
実施例1〜5と同様に、10mm角、厚さ1mmの純Ti板から純Ti金属基体を作成した。純Ti金属基体を、5mLの5MのNaOH水溶液に60℃で24時間浸漬した後、基体を7mLの純水に80℃で48時間浸漬した(以下、「NaOH−温水処理」という。)。続いて、基体を洗浄し乾燥させた。その後、基体を大気圧のアンモニア雰囲気中にて600℃で1時間加熱処理して、試料を得た。
【0081】
試料に対し、前述の実施例1〜5と同様に、表面構造解析、可視光下での光触媒能(MB分解特性)試験及びアパタイト形成能試験を行った。
【0082】
<表面構造解析について>
(1)SEM観察の結果
未処理の試料表面(
図10)に、NaOH−温水処理によって網目構造が形成された。この網目構造は、アンモニア雰囲気中での加熱処理後にも残存していた(
図11)。実施例6においても、網目構造の孔の大きさおよび多孔質構造の明確さは、実施例1〜5と同様であった。
【0083】
(2)TF−XRDの結果
図12に示すように、上記の処理後の試料表面にはアナターゼ型TiO
2が形成されていた。
【0084】
(3)XPSの結果
図13に表面処理後の試料のN
1s XPSスペクトルを示す。図中の「N−Ti」は、NがTiに結合していることを示す。
図13から分かるように、N−Tiに帰属されるピークが396eV付近に観察された。ピークの面積から、N原子の含有率は、3.25 atomic%と見積もられた。実施例6での含有率を
図9の結果と比較すると、実施例3の0.40 atomic%よりも高く、比較例3の1.73 atomic%よりも更に高い値であった。
【0085】
<可視光下での光触媒能とアパタイト形成能について>
実施例6は、可視光下において約27%と高いMB分解率を示した。この値は、前述の実施例1〜5(最高が実施例2の14.6%)および比較例1〜3(最高が比較例2の9.6%)よりも高い。これは、実施例6では実施例1〜5および比較例1〜3よりも多量の窒素をTiO
2にドープできたためと考えられる。
【0086】
図14に、SBFに浸漬後の試料表面のSEM写真を示す。
図14から分かるように、SBF中で試料の表面の一部にアパタイトが形成された。実施例6でのアパタイトの粒径分布は、1〜5μmが31%、5〜10μmが54%、10〜20μmが15%であった。この結果は、
図3に示した実施例1〜3と同様に、5〜20μmの大きなアパタイトの割合が高いことを示す。
【0087】
以上のように、本実施例では、純Ti基体をNaOH−温水処理後にアンモニア雰囲気中で加熱処理する。これにより、多量の窒素を担持するアナターゼ型TiO
2をTi表面に形成させることが可能となる。その結果、実施例6は、実施例1〜5よりも更に高いMB分解能と、アパタイト形成能と、を併せ持つことが分かった。
【0088】
最後に、本明細書に開示された本発明の実施形態は、本発明の原理の例示であることを理解すべきである。可能性のある他の修正は、本発明の範囲内である。それ故、例示の方法によって、制限なく、本発明の別の構成が、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は、示され記述されたものに正確に限定されるものではない。
【0089】
本出願は、2013年3月7日に出願された日本国特許出願2013−045704号に基づく。本明細書中に、日本国特許出願2013−045704号の明細書、特許請求の範囲、及び図面全体を参照として取り込むものとする。