(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、それぞれ独立に、カーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エステル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、オレフィン樹脂、セルロースアセテート樹脂、シリコーン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリロニトリル樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂、及びポリエーテルサルホンから選択される少なくとも1種を含有する請求項1に記載の積層シート。
前記(メタ)アクリル系共重合体は、前記構成単位Aの含有率が、(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマー由来の構成単位の総モル数に対して、50モル%〜99モル%である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層シート。
前記(メタ)アクリル系共重合体は、前記構成単位Bの含有率が、(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマー由来の構成単位の総モル数に対して、1モル%〜50モル%である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の積層シート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
[積層シート]
本発明の積層シートは、第1樹脂層と、第2樹脂層と、少なくとも前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間に積層され、複数の粒子と前記粒子の間に形成される空隙とを含む粒子含有層と、前記第1樹脂層と前記粒子含有層との間及び前記第2樹脂層と前記粒子含有層との間から選択される少なくとも一方の間に積層され、重量平均分子量(Mw)が30万以上であり、且つ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)が6.0以下である共重合体、及び前記共重合体を架橋し得る架橋剤に由来する構造部分を含み、架橋密度が0を超えて450mol/m
3以下である中間層と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
従来、導光シート(導光板)では、第1光学層と第2光学層との間に、複数の粒子により空間又は空隙が形成された低屈折率層を設けることで、第1光学層を伝播する光を第1光学層と低屈折率層との境界において反射させ、低屈折率層への光の入射を低減させる試みがなされていた。低屈折率層への光の入射が低減されると、光の伝播が適切に行なわれるので、光の入射面と遠い場所でも良好な輝度が得られる。しかしながら、層内に空隙が存在する低屈折率層は、第1光学層との密着性に劣るため、第1光学層と低屈折率層との間には中間層が設けられている。
ところが、この中間層に外部からの衝撃又は応力が加わると、中間層を形成する樹脂が低屈折率層内の粒子間に形成された空隙に侵入することがある。樹脂の侵入により低屈折率層内の空隙が減少すると、屈折率が上昇し、所望の光学特性(例えば、輝度、導光性等)が得られなくなる。低屈折率層内の空隙への樹脂の侵入を抑制するためには、樹脂の硬度を高めることも考えられるが、そうすると第1光学層と中間層との密着性が低下する。
【0023】
本発明においては、中間層の構成と物性とを制御することで、優れた層間密着性と層内の空隙の減少抑制との両立を可能とした点に意義がある。
なお、本明細書においては、主として、本発明の積層シートが光学用途(例えば、導光シート)に使用される場合について説明するが、本発明の積層シートの用途は、これに限定されるものではない。本発明の積層シートによれば、製造時又は使用時に、外部から衝撃又は応力が加わった場合でも、粒子間に形成された空隙に、隣接する樹脂が侵入し難い。したがって、本発明の積層シートは、層内に存在する空隙により機能が発現される樹脂シート、例えば、断熱シート、低誘電率シート、電気絶縁シート等として、好適に用いることができる。
【0024】
本発明の第1実施形態に係る導光シートの断面図を
図1に示す。
なお、本明細書において、以下に示す各図(
図1〜
図3)は、模式的に示した図であり、各部の大きさ及び形状は、理解を容易にするために適宜誇張して示している。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態に係る導光シートの断面における構造の様子を示す図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る導光シート1は、第1樹脂層10と、第2樹脂層20と、第2樹脂層20上に積層された粒子含有層30と、第1樹脂層10と粒子含有層30との間に積層された中間層40と、を主な構成として備える。そして、第1実施形態に係る導光シート1においては、第1樹脂層10の中間層側と反対側の面11が光の出射面とされ、導光シート1の一側面7が光の入射面とされる。なお、導光シートの一側面7とは、第1樹脂層10の一側面17と、中間層40の一側面47と、粒子含有層30の一側面37と、第2樹脂層20の一側面27とからなる面のことである。
【0026】
つまり、第1実施形態に係る導光シート1は、入射面から入射する光を面方向に沿って伝播し、更に面方向に沿って伝播する光の少なくとも一部を出射面から出射する光拡散シートとしての機能を備える。
【0027】
第1樹脂層10は、光透過性の材料であるカーボネート樹脂で形成されている。第1樹脂層10は、導光シート1の面方向全体をカバーするように設けられており、第1樹脂層10の一側面17は、入射面の一部とされる。また、第1樹脂層10においては、光の出射面とされる一方の面11側に複数のプリズム15が形成されており、出射面が凹凸形状のプリズム面となっている。プリズム15の形状は、特に限定されるものではなく、それぞれのプリズム15により、少なくとも一側面17の長手方向と平行に溝が形成されていることが好ましい。上述のように、一側面17は、入射面の一部であるため、入射面から入射する光は、一側面17の長手方向に垂直に伝播する傾向がある。したがって、このように溝が形成されることにより、それぞれのプリズム15により形成される溝の方向と、光の伝播方向とが略垂直になり、入射面から入射する光を出射面から出射し易くすることができる。
【0028】
第2樹脂層20は、第1樹脂層10と同様に、光透過性の材料であるカーボネート樹脂で形成されている。第2樹脂層20は、導光シート1における第1樹脂層10と反対側において、面方向全体をカバーするように設けられており、第2樹脂層20の一側面27は、入射面の一部とされる。さらに、第2樹脂層20の粒子含有層30側と反対側の面21は、光の反射面とされている。第2樹脂層20における反射面側には、多数のプリズム25が形成されており、反射面は、凹凸形状のプリズム面とされている。プリズム25の形状は、特に限定されるものではなく、それぞれのプリズム25により、少なくとも一側面27の長手方向と平行に溝が形成されていることが好ましい。そして、プリズム25は、導光シート1の反対面側のプリズム15と面対象の形状でもよく、異なる形状でもよい。
【0029】
プリズム25の形状は、光を分散、屈折、及び全反射させることができる形状である。プリズム25の形状としては、例えば、V字状リニアプリズム、U字状リニアプリズム、三角錐プリズム、四角錐プリズム等が挙げられる。
第2樹脂層20の屈折率は、特に限定されるものではなく、例えば、第1樹脂層10と同様とされる。
【0030】
図2は、
図1に示す粒子含有層30の一部を拡大した部分拡大断面図である。
図2に示すように、粒子含有層30は、複数の中空粒子50で形成されている。
【0031】
図3は、中空粒子50を拡大した図である。
図3に示すように、中空粒子50は、シェル51を備え、シェル51によって囲まれた空間52が形成されている。シェル51は、光透過性の材料であるSiO
2で主に形成されている。
【0032】
図2に示すように、粒子含有層30では、
図3に示す中空粒子50同士が、直接接触して、互いに結合している。つまり、粒子含有層30では、中空粒子50同士を結合するための結着剤が、中空粒子50間に充填されていない。中空粒子50間の結合は、中空粒子50の凝集力により生じると考えられる。このように、中空粒子50同士を結合するための結着剤が、中空粒子50間に充填されず、中空粒子50同士が、直接接触して、互いに結合しているため、中空粒子50間には、空隙36が形成されている。
【0033】
中間層40は、第1樹脂層10と粒子含有層30との間の全体に設けられている。中間層40は、特定の共重合体と該共重合体を架橋した架橋剤に由来する構造部分を含み、特定の架橋密度を有している。第1実施形態に係る導光シート1では、中間層40に、特定の共重合体として、重合平均分子量(Mw)が175万であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.6のアクリル系共重合体が含まれている。また、中間層40の架橋密度は、6.5mol/m
3である。
【0034】
このような第1樹脂層10、第2樹脂層20、粒子含有層30、及び中間層40からなる導光シート1は、上述のように光拡散シートとしての機能を有する。具体的には、入射面と対向するように、LED(Light Emitting Diode)等からなる光源(図示せず)が配置される。光源から出射する光は、入射面から入射する。そのうち、第1樹脂層10に入射する光は、主に、第1樹脂層10を伝播する。具体的には、中間層40と粒子含有層30との境界と、出射面とを反射しながら、第1樹脂層10を伝播し、出射面に対して、NA(Numerical Aperture、開口数)の大きな光が出射面から出射する。
【0035】
また、中間層40と粒子含有層30との境界に対して、NAの大きな光は、第1樹脂層10から粒子含有層30に入射して、更に、粒子含有層30から第2樹脂層20に入射する。第2樹脂層20に入射した光の少なくとも一部は、反射面において反射する。つまり、第2樹脂層20の反射面に対して、NAの小さな光は、反射面で反射し、再び、粒子含有層30から第1樹脂層10に入射する。一方、反射面に対して、NAの大きな光は、反射面を透過して、導光シート1から出射する。第1樹脂層10に入射した光は、再び、第1樹脂層10に伝播する。
【0036】
以上、説明したように、本発明の第1実施形態に係る導光シート1によれば、粒子含有層30が複数の中空粒子50を含むため、中空粒子50内の空間により、全体として、屈折率を下げることができる。また、本発明の第1実施形態に係る導光シート1においては、中空粒子50同士が、直接接触して、互いに結合することで、中空粒子50間に空間36が形成されているため、この空間により、更に粒子含有層30の屈折率を下げることができる。さらに、一般的に結合剤は、屈折率が高い傾向があるため、本発明の第1実施形態に係る導光シート1のように、結合剤を粒子含有層30に用いないことにより、更に適切に粒子含有層30の屈折率を下げることができる。
【0037】
また、本発明の第1実施形態に係る導光シート1では、中間層40を備えているので、第1樹脂層10と粒子含有層30とを良好に密着させることができるとともに、外部から衝撃又は応力が加わるときに、この衝撃又は応力が粒子含有層30にそのまま伝導することを抑制することができる。また、中間層40は、特定の共重合体と該共重合体を架橋した架橋剤に由来する構造部分を含み、特定の架橋密度を有しているので、外部から衝撃又は応力が加わった場合でも、中間層40を形成する樹脂が、粒子含有層30内に形成された粒子間の空隙に侵入し難い。したがって、粒子含有層30内の空隙の減少に伴う屈折率の上昇が生じ難い。
【0038】
なお、第1実施形態に係る導光シート1では、粒子含有層30は、中空粒子50同士が結合して形成されているが、内部に空間を有さない粒子同士が結合して形成されていてもよい。
【0039】
第1実施形態に係る導光シート1では、中間層40が、第1樹脂層10と粒子含有層30との間に設けられているが、中間層40は、第2樹脂層20と粒子含有層30との間に設けられていてもよいし、第1樹脂層10と粒子含有層30との間及び第2樹脂層20と粒子含有層30との間の両方に設けられていてもよい。
【0040】
第1実施形態に係る導光シート1では、第1樹脂層10における反射面側には、多数のプリズム15が形成され、また、第2樹脂層20における反射面側にも、多数のプリズム25が形成されているが、これらのプリズムの代わりに、第1樹脂層10における反射面側及び第2樹脂層20における反射面側に、マイクロレンズ、レンチキュラーレンズ等のレンズが多数形成されていてもよい。
【0041】
以下、本発明の積層シートを形成する各層について、詳細に説明する。
【0042】
<第1樹脂層>
第1樹脂層を形成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、本発明の積層シートを光学用途に用いる場合には、光透過性の材料で形成されていることが好ましい。光透過性の材料としては、全光線透過率が30%以上である材料が好ましく、全光線透過率が50%以上である材料がより好ましく、全光線透過率が70%以上である材料が更に好ましい。第1樹脂層が全光線透過率の高い材料で形成されていると、入射する光の損失をより抑制して出射することができるので、光の利用効率が良い。
なお、上記の全光線透過率は、JIS K7105に基づき、A光源を用いて測定される値である。A光源とは、CIE(国際照明委員会)が規定する標準光源の規格の一つであって、タングステン電球が発する光であり、色温度は2856ケルビンである。
【0043】
このような光透過性の材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、カーボネート樹脂、エステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等)、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、オレフィン樹脂(シクロオレフィン樹脂を含む)、セルロースアセテート樹脂、シリコーン系樹脂、アミド樹脂、エポキシ系樹脂、アクリロニトリル樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂、ポリエーテルサルホン等が挙げられる。
本発明においては、これらの中でも、全光線透過率が高いこと、屈折率が高いこと、熱成型が容易であること、低コストであること、及び入手し易いという観点から、光透過性の材料としては、(メタ)アクリル樹脂、カーボネート樹脂、エステル樹脂、及びオレフィン樹脂から選択される樹脂が好ましく、カーボネート樹脂が特に好ましい。
【0044】
本発明においては、上記光透過性の材料の1種又は2種以上を用い、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、インフレーション法等の成膜法を用いて成膜したフィルム又はシートを、第1樹脂層として、好適に用いることができる。また、第1樹脂層には、上市されている市販品を用いてもよい。
第1樹脂層の厚みは、軽薄性、低コスト、及び光透過性の観点から、本発明の積層シートの用途に要求される性能を満足する範囲において、薄い方が好ましい。なお、本発明の積層シートを導光シートとして用いる場合、シート製造時における導光シートの取り扱いが容易であること、及び第1樹脂層の表面に所望の深さのプリズム又はレンズを形成するための厚みを確保するという観点から、第1樹脂層の厚みは、20μm〜1000μmであることが好ましく、50μm〜600μmであることがより好ましい。
【0045】
<第2樹脂層>
第2樹脂層を形成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、本発明の積層シートを光学用途に用いる場合には、第2樹脂層と同様に、光透過性の材料で形成されていることが好ましい。第2樹脂層を形成する光透過性の材料は、上記の第1樹脂層を形成する光透過性の材料と同義であり、好ましい例も同様である。また、第2樹脂層には、上記の第1樹脂層と同様に、例示した光透過性の材料の1種又は2種以上を用いて成膜したフィルム又はシートを用いてもよいし、上市されている市販品を用いてもよい。
【0046】
第2樹脂層の厚みは、軽薄性、低コスト、及び光透過性の観点から、本発明の積層シートの用途に要求される性能を満足する範囲において、薄い方が好ましい。なお、本発明の積層シートを導光シートとして用いる場合、シート製造時における導光シートの取り扱いが容易であること、及び第2樹脂層の表面に所望の深さのプリズム又はレンズを形成するための厚みを確保するという観点から、第2樹脂層の厚みは、20μm〜1000μmであることが好ましく、50μm〜600μmであることがより好ましい。
【0047】
<粒子含有層>
本発明における粒子含有層は、少なくとも第1樹脂層と第2樹脂層との間に積層され、複数の粒子と該粒子の間に形成される空隙とを含む。
粒子含有層に含まれる粒子を形成する材料は、特に限定されるものではなく、有機材料であっても、無機材料であってもよい。本発明における積層シートは、加圧成型により作製されるため、加圧成型時の圧力及び温度に対する耐性を考慮すると、粒子を形成する材料は、無機材料であることが好ましい。
【0048】
粒子を形成する有機材料としては、例えば、上記の第1樹脂層及び第2樹脂層を形成する樹脂と同様のものが挙げられる。
粒子を形成する無機材料としては、例えば、シリカ、ガラス等が挙げられる。
粒子を形成する無機材料の市販品の例としては、例えば、日本触媒社製の「(商品名)エポスター」、「(商品名)シーホスター」、及び「(商品名)ソリオスター」、日産化学工業社製の「(商品名)オプトビーズ」、根上工業社製の「(商品名)アートパール」、大日精化社製の「(商品名)ダイミックビーズ」、ガンツ化成社製の「(商品名)ガンツパール」、積水化成品工業社製の「(商品名)テクポリマー」、並びに綜研化学社製の「(商品名)ケミスノー」を挙げることができる。
【0049】
粒子含有層に含まれる粒子は、中空粒子であることが好ましい。
本発明において、「中空粒子」とは、外殻の内部に空洞が形成されている粒子をいう。なお、空洞内は、真空であってもよいし、気体が充填されていてもよい。
中空粒子を含む粒子含有層では、粒子間に空隙が形成されていることに加えて、粒子自体も空間を有しているため、粒子含有層全体として、屈折率をより下げることができる。したがって、本発明の積層シートを導光シートとして用いる場合には、粒子含有層に含まれる粒子は、中空粒子であることが好ましい。
また、本発明の積層シートを断熱シートとして用いる場合にも、層内により多くの空気を包含させることができ、断熱性をより高めることができることから、粒子含有層に含まれる粒子は、中空粒子であることが好ましい。
【0050】
中空粒子は、シリカ系無機酸化物で形成されていることが好ましい。ここで、「シリカ系無機酸化物」とは、シリカ、又はシリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物をいう。
シリカ以外の無機酸化物としては、例えば、Al
2O
3、B
2O
3、TiO
2、ZrO
2、SnO
2、Ce
2O
3、P
2O
5、Sb
2O
3、MoO
3、ZnO
2、TiO
2−Al
2O
3、ZrO
2−Al
2O
3等挙げられる。
中空粒子の詳細については、特開平7−133105号公報、及び特開2001−233611号公報の記載を適用することができる。
中空粒子の市販品の例としては、例えば、日鉄鉱業社製の「シリナックス(登録商標)」、及び日揮触媒化成社製の「スルーリア(登録商標)」を挙げることができる。
【0051】
粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球状であっても、不定形状であってもよい。光学用途の観点からは、粒子の形状は、低い屈折率を示すものが好ましい。
【0052】
粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではなく、例えば、本発明の積層シートを光学用途として用いる場合には、粒子含有層における光の乱反射を抑制し、出射面からの意図しない光の出射を抑制する観点から、積層シートに入射する光、すなわち、第1樹脂層を伝播する光の波長よりも小さいことが好ましく、第1樹脂層を伝播する光の波長の1/2よりも小さいことがより好ましく、第1樹脂層を伝播する光の波長の1/4よりも小さいことが更に好ましい。
具体的には、粒子の平均粒子径は、5nm〜300nmであることが好ましく、30nm〜300nmであることがより好ましく、30nm〜120nmであることが更に好ましい。粒子の平均粒子径が5nm以上であると、粒子自体の強度を十分に保つことができる。なお、粒子が中空粒子の場合、平均粒子径が5nm未満であると、その製造が技術的に困難となるため好ましくない。粒子の平均粒子径が300nm以下であると、光を十分に透過し、且つ、有機溶媒に対してより良好に分散させることができる。
また、粒子がシリカで形成された中空粒子である場合には、粒子含有層内で粒子同士がより強く結合する観点から、粒子の平均粒子径は、30nm〜120nmであることが好ましい。
【0053】
粒子の粒度分布は、上記の平均粒子径の90%〜110%の範囲内であることが好ましい。粒子の粒度分布が上記範囲内であれば、粒子の粒度がほぼ均一になるため、粒子含有層の強度をより一段と向上させることができる。
なお、上記の粒子の平均粒子径及び粒度分布は、動的光散乱法により測定されるものである。
【0054】
粒子含有層における粒子間に形成された空隙率は、粒子含有層の屈折率を低くする観点からは、より高いことが好ましく、粒子含有層の強度を確保する観点からは、26%〜50%であることが好ましい。
また、粒子含有層に含まれる粒子が中空粒子である場合、粒子内の平均空間率は、粒子含有層の屈折率を低くする観点からは、より高いことが好ましく、粒子の強度を確保する観点からは、10%〜60%であることが好ましい。
【0055】
<中間層>
本発明における中間層は、重量平均分子量(Mw)が30万以上であり、且つ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)が6.0以下である共重合体、及び前記共重合体を架橋し得る架橋剤に由来する構造部分を含み、架橋密度が0を超えて450mol/m
3以下である。
本発明においては、上記の中間層によって、粒子含有層と第1樹脂層とを良好に密着させつつ、中間層を形成する樹脂が粒子含有層内の粒子間に形成された空隙に侵入することを抑制することができる。樹脂の侵入により粒子含有層内の空隙が減少すると、粒子含有層の屈折率が上昇するため、所望の光学特性(例えば、輝度、導光性等)が得られなくなる。また、本発明の積層シートを断熱シートとして使用する場合には、断熱性が低下する。
【0056】
中間層に含まれる共重合体は、重量平均分子量(Mw)が30万以上であり、且つ、分子量分布(Mw/Mn)が6.0以下である。共重合体の重量平均分子量(Mw)が30万未満であると、粒子含有層の空隙に入り込み易いため、粒子含有層の屈折率の上昇等が生じる。また、共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が6.0を超えると、分布範囲内に、粒子含有層の空隙により入り込み易い分子量の低い共重合体が含まれることになるため、粒子含有層の屈折率の上昇等をより招きやすい。
共重合体の重量平均分子量(Mw)の下限値は、120万以上であることが好ましい。共重合体の重量平均分子量(Mw)の上限値は、製造し易さ及び取り扱い易さの観点から、500万以下であることが好ましく、200万以下であることがより好ましい。
また、共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の上限値は、4.5以下であることが好ましい。共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の下限値は、1以上であることが好ましい。
【0057】
上記の共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、下記のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出される値である。
【0058】
〜条件〜
測定装置:高速GPC(東ソー社製、HLC−8220)
検出器:示差屈折率計(RI)(東ソー社製、HLC−8220に組込)
カラム:TSKgel SuperMultipore HZ−H(東ソー社製)を直列に2本接続
カラムサイズ:4.6mmID×15cm
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:90mg/mL
注入量:10μL
流量:0.35mL/分
【0059】
中間層に含まれる共重合体は、上記の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を有していれば、特に限定されるものではなく、本発明の積層シートを光学用途に用いる場合には、光透過性を示し、粘着性を有するものが好ましい。このような共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル系共重合体、イソプロピレン系共重合体、エステル系共重合体、シリコーン系共重合体、ウレタン系共重合体等が挙げられる。これらの中でも、中間層に含まれる共重合体としては、変性の自由度、溶媒への溶解性、耐熱性、耐光性、第1樹脂層との接着性、及び透明性の観点から、(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル系共重合体としては、架橋反応させるための架橋点を確保するという観点から、(メタ)アクリレートに由来する構成単位Aと、水酸基、カルボキシ基、リン酸基、シアノ基、エポキシ基、及びアミノ基から選択される少なくとも1つの官能基を有する単量体に由来する構成単位Bと、を含むものが好ましい。
上記の(メタ)アクリル系共重合体は、モノマー成分として、(メタ)アクリレート単量体と、水酸基、カルボキシ基、リン酸基、シアノ基、エポキシ基、及びアミノ基から選択される少なくとも1つの官能基を有する単量体と、を少なくとも共重合させて得られる共重合体である。
【0061】
(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が、好適に共重合反応に供される。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート等(好ましくはメチルアクリレ−ト);メタクリル酸エステル等(好ましくはメチルメタリレート)などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、粘着性、及び溶媒への溶解性の観点から、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、及びイソノニルアクリレートから選択されるアクリレート単量体が好ましく、n−ブチルアクリレートがより好ましい。
なお、(メタ)アクリレート単量体は、一種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
構成単位Aの含有率は、(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマー由来の構成単位の総モル数に対して、50モル%〜99モル%が好ましく、60モル%〜97モル%がより好ましく、70モル%〜95モル%が更に好ましい。構成単位Aの含有率が、上記範囲内であると、溶媒への溶解性に優れ、粘着力を高くすることができる。
【0063】
水酸基を有する単量体(以下、「水酸基含有単量体」ともいう。)としては、水酸基を有すること以外は、特に限定されるものではなく、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、水酸基含有単量体としては、溶媒への溶解性及び低コストの点において、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が好ましい。
【0064】
カルボキシ基を有する単量体(以下、「カルボキシ基含有単量体」ともいう。)としては、カルボキシ基を有すること以外は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸等の、炭素数3〜5のα,β−不飽和モノ−又はジ−カルボン酸が挙げられる。これらの中でも、カルボキシ基含有単量体としては、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を制御し易い点において、アクリル酸及びメタクリル酸から選択される単量体が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0065】
リン酸基を有する単量体(以下、「リン酸基含有単量体」ともいう。)としては、リン酸基を有すること以外は、特に限定されるものではなく、例えば、ユニケミカル社製の「PhosmerM」、「PhosmerCL」、「PhosmerPE」、「PhosmerMH」、「PhosmerPP」(いずれも商品名)等が挙げられる。これらの中でも、リン酸基含有単量体としては、低粘度で、且つ、取り扱いが容易である点において、「PhosmerM」が好ましい。
【0066】
シアノ基を有する単量体(以下、「シアノ基含有単量体」ともいう。)としては、シアノ基を有すること以外は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリロニトリル、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、シアノ基含有単量体としては、取り扱いが容易である点において、アクリロニトリルが好ましい。
【0067】
エポキシ基を有する単量体(以下、「エポキシ基含有単量体」ともいう。)としては、エポキシ基を有すること以外は、特に限定されるものではなく、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0068】
アミノ基を有する単量体(以下、「アミノ基含有単量体」ともいう。)としては、アミノ基を有すること以外は、特に限定されるものではなく、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
本発明においては、構成単位Bは、上記単量体の中でも、架橋剤との反応性、低コスト、共重合のし易さ、及び無着色性の観点から、水酸基含有単量体(好ましくは2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA))及びカルボキシ基含有単量体(好ましくはアクリル酸)から選択される単量体に由来することが特に好ましい。
なお、上記の単量体は、一種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記の具体例では、水酸基、カルボキシ基、リン酸基、シアノ基、エポキシ基、及びアミノ基から選択されるいずれか1つの官能基を有する単量体を挙げたが、本発明においては、これらに限定されるものではなく、水酸基、カルボキシ基、リン酸基、シアノ基、エポキシ基、及びアミノ基から選択される2つ以上の官能基を有する単量体も用いてもよい。
【0070】
構成単位Bの含有率は、(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマー由来の構成単位の総モル数に対して、1モル%〜50モル%が好ましく、3モル%〜40モル%がより好ましく、5モル%〜30モル%が更に好ましい。構成単位Bの含有率が、上記範囲内であると、(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とが反応することで、中間層を形成する樹脂が3次元架橋構造となり、粒子含有層内に存在する粒子間の空隙に侵入し難いものとなり、なおかつ、重合時のゲル化を抑制することができる。
【0071】
また、(メタ)アクリル系共重合体には、必要に応じて、上記以外の他のモノマー成分として、共単量体を共重合させることができる。
共単量体とは、(メタ)アクリレート単量体、水酸基含有単量体、カルボキシ基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、エポキシ基含有単量体、及びアミノ基含有単量体とは、異なる単量体(モノマー)であって、(メタ)アクリレート単量体、水酸基含有単量体、カルボキシ基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、エポキシ基含有単量体、及びアミノ基含有単量体と共重合可能な単量体である。
【0072】
共単量体は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において共重合させることができ、該共単量体を共重合させる場合には、その含有量は、(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマー由来の構成単位の総モル数に対して、0モル%を超えて30モル%以下であることが好ましい。
【0073】
本発明における中間層は、上記の共重合体及び該共重合体を架橋し得る架橋剤に由来する構造部分を含む。
中間層に配合される架橋剤は、上記の共重合体を架橋し得るものであれば、特に限定されるものではなく、従来公知の架橋剤を用いることができる。
架橋剤としては、例えば、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、金属キレート系等の架橋剤を挙げることができる。これらの中でも、架橋剤としては、ポットライフが長く、且つ、架橋反応の速度が早い点において、金属キレート系架橋剤が好ましい。
【0074】
金属キレート系架橋剤としては、多価金属原子が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものが挙げられる。多価金属原子としては、例えば、Al、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。これらの中でも、多価金属原子としては、低コスト及び入手し易さの観点から、Al、Zr、及びTiから選択される多価金属原子が好ましい。
共有結合又は配位結合する有機化合物中の原子としては、酸素原子等が挙げられ、有機化合物としては、アルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
本発明においては、特に安定で取り扱いが容易なアルミニウムトリスアセチルアセトネート等を好適に用いることができる。また、金属キレート系架橋剤としては、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0075】
中間層における架橋剤の配合量は、上記の共重合体100質量部(固形分)に対して、0.01質量部〜3.6質量部であることが好ましく、0.05質量部〜3.0質量部であることがより好ましく、0.1質量部〜1.5質量部であることが更に好ましい。架橋剤の配合量が上記範囲内であると、中間層を形成する樹脂が、粘着性を保ったまま、3次元架橋構造となり、粒子含有層内に存在する粒子間の空隙に侵入し難いものとなる。
【0076】
中間層には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、更に、公知の添加剤、例えば、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、希釈剤、充填剤、増粘剤、消泡剤、難燃剤、防腐剤等の添加剤を含有してもよい
【0077】
本発明における中間層の架橋密度は、0を超えて450mol/m
3以下である。本発明においては、中間層の架橋密度が0を超えて450mol/m
3以下であることで、層間密着性(特に、第1樹脂層と中間層との密着性)が優れたものとなり、また、中間層を形成する樹脂が、粒子含有層内に存在する粒子間の空隙に侵入し難いものとなる。
本発明における中間層の架橋密度は、好ましくは10mol/m
3以上250mol/m
3以下であり、より好ましくは10mol/m
3以上150mol/m
3以下である。
【0078】
上記架橋密度は、添加した架橋剤の官能基の密度であり、架橋剤の官能基のモル数を架橋点のモル数であると見なして、単位体積当たりの架橋点数の値を計算して求めるものである。中間層を形成する共重合体の官能基密度が、計算上の最大架橋点密度となる。
具体的には、共重合体溶液の固形分(g)を、共重合体の密度(g/ml)で割り、共重合体の体積(ml)を求める。次に、架橋剤溶液(g)の固形分(g)を、架橋剤の分子量で割り、架橋剤1分子当たりの官能基数を掛けて、官能基のモル数(mmol)を求める。そして、官能基のモル数(mmol)を、共重合体の体積(ml)で割ることにより、架橋密度(mmol/ml)を求め、SI単位(mol/m
3)換算する。
【0079】
本発明における中間層の貯蔵弾性率は、50,000Pa〜300,000Paであることが好ましく、60,000Pa〜280,000Paであることがより好ましく、80,000Pa〜160,000Paであることが更に好ましい。中間層の貯蔵弾性率が上記範囲内であると、粒子含有層との界面における粘着性に優れ、中間層を形成する樹脂が粒子含有層内に存在する粒子間の空隙に侵入し難いものとなる。
【0080】
中間層の厚みは、粘着性及び低コストの観点から、2μm〜30μmであることが好ましく、5μm〜20μmであることがより好ましく、8μm〜12μmであることが更に好ましい。
【0081】
[積層シートの製造方法]
以下、本発明の積層シートの製造方法の一例を説明する。本発明の積層シートは、例えば、下記(1)〜(5)の手順により製造することができる。但し、本発明は、これに限定されるものではない。
【0082】
(1)上記共重合体と上記架橋剤と溶剤とを混合した後、脱泡して、中間層形成用塗工液を得る。
(2)得られた中間層形成用塗工液を、離型処理されたフィルム上に塗工し、乾燥させて、離型処理されたフィルム上に中間層が形成された中間層形成シートを得る。
(3)上記粒子を溶剤に分散させた分散液を粒子含有層形成用塗工液とし、この塗工液を、第2樹脂層となるフィルム上に塗工し、乾燥させて、第2樹脂層上に粒子含有層が形成された粒子含有層形成シートを得る。
(4)中間層形成シートと第1樹脂層となるフィルムとを、中間層と第1樹脂層とが対向するように貼り合わせ、中間層を第1樹脂層上に転写させる。
(5)粒子含有層形成シートと、第1樹脂層上に中間層が転写されたシートとを、粒子含有層と中間層とが対向するように貼り合わせた後、第1樹脂層及び第2樹脂層の両側から金型で挟み、加熱成型を行ない、積層シートを得る。
【0083】
本発明の積層シートの製造方法において、各塗工液を塗工する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法にて行なうことができる。各塗工液を塗工する方法としては、例えば、スピンコート法、グラビアコート法、コンマダイレクトコート法、コンマリバースコート法、リップコート法、ダイコート法等が挙げられる。
また、第2樹脂層上に粒子含有層が形成された粒子含有層形成シートと、第1樹脂層上に中間層が転写されたシートとを積層する方法は、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
−アクリル系共重合体の製造−
<製造例1>アクリル系共重合体1
アクリル系共重合体1を、以下の手順により製造した。
(1)温度計、攪拌機、窒素導入管、滴下漏斗、及び還流冷却器を備えた2Lの丸底セパラブルフラスコ容器内に、ブチルアクリレート(BA)291質量部、アクリル酸(AA)9質量部、及び酢酸エチル190質量部を入れて混合した。
(2)得られた混合溶液に対して、100rpmで攪拌を行ないながら、流量0.3L/分で30分間窒素ガスの吹き込み(バブリング)を行なった。
(3)その後、混合溶液に対する窒素ガスの吹き込み(バブリング)を中止し、反応容器の上部にある窒素導入管から窒素ガスを吹き込み、反応容器内のヘッドスペースの窒素置換を行ないながら、引き続き100rpmで攪拌し、30分かけて内温を70℃に昇温させた。
(4)次に、酢酸エチル15質量部、及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という。)0.006質量部を混合して得られたAIBNの酢酸エチル溶液を上記フラスコ容器に取り付けた滴下漏斗に入れた。
(5)昇温が終了し、内温が70℃で安定した後、滴下漏斗に入れた上記AIBNの酢酸エチル溶液を10分かけて滴下し、重合反応を開始させた。
(6)上記AIBNの酢酸エチル溶液の滴下が終了した5分後、更に酢酸エチル20質量部を30分かけて滴下した。
(7)この滴下が終了した後すぐに、酢酸エチル70質量部及びAIBN0.007質量部を混合して得られたAIBNの酢酸エチル溶液を55分間かけて滴下した。
(8)一連の反応の間、内温が70℃〜73℃の範囲に収まるように調節した。
(9)反応終了後、得られた反応混合物を酢酸エチル635質量部で希釈し、アクリル系共重合体1の溶液を得た。
【0086】
なお、アクリル系共重合体1の溶液の粘度は、8.48Pa・sであり、固形分は、12.0質量%であった。また、アクリル系共重合体1の重量平均分子量(Mw)は、175万であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0087】
<製造例2>アクリル系共重合体2
製造例1において、(7)の滴下が終了した後すぐに続けて、酢酸エチル259質量部及びAIBN0.047質量部を混合して得られたAIBNの酢酸エチル溶液を80分間かけて滴下し、反応終了後、得られた反応混合物を酢酸エチル376質量部で希釈したこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体2の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体2の溶液の粘度は、12.0Pa・sであり、固形分は、15.5質量%であった。また、アクリル系共重合体2の重量平均分子量(Mw)は、175万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、4.3であった。
【0088】
<製造例3>アクリル系共重合体3
製造例1において、(7)の滴下が終了した後すぐに続けて、酢酸エチル259質量部及びAIBN0.047質量部を混合して得られたAIBNの酢酸エチル溶液を100分間かけて滴下し、反応終了後、得られた反応混合物の酢酸エチルによる希釈を行なわなかったこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体3の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体3の溶液の粘度は、14.6Pa・sであり、固形分は、18.7質量%であった。また、アクリル系共重合体3の重量平均分子量(Mw)は、175万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、5.5であった。
【0089】
<製造例4>アクリル系共重合体4
製造例1において、ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)を用いたところを、ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AA)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を用い、配合量をそれぞれ249質量部、6質量部、及び45質量部としたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体4の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体4の溶液の粘度は、14.2Pa・sであり、固形分は、12.6質量%であった。また、アクリル系共重合体4の重量平均分子量(Mw)は、175万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0090】
<製造例5>アクリル系共重合体5
製造例1において、ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)を用いたところを、ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AA)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を用い、配合量をそれぞれ270質量部、6質量部、及び24質量部としたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体5の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体5の溶液の粘度は、12.3Pa・sであり、固形分は、12.6質量%であった。また、アクリル系共重合体5の重量平均分子量(Mw)は、175万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0091】
<製造例6>アクリル系共重合体6
製造例1において、(1)の工程で加える酢酸エチルを190質量部から150質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体6の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体6の溶液の粘度は、10.0Pa・sであり、固形分は、12.8質量%であった。また、アクリル系共重合体6の重量平均分子量(Mw)は、200万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0092】
<製造例7>アクリル系共重合体7
製造例1において、(1)の工程で連鎖移動剤の1−ドデカンチオールを0.15質量部加えたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体7の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体7の溶液の粘度は、7.1Pa・sであり、固形分は、11.9質量%であった。また、アクリル系共重合体7の重量平均分子量(Mw)は、120万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0093】
<製造例8>アクリル系共重合体8
製造例1において、(1)の工程で連鎖移動剤の1−ドデカンチオールを0.20質量部加えたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体8の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体8の溶液の粘度は、5.3Pa・sであり、固形分は、11.8質量%であった。また、アクリル系共重合体8の重量平均分子量(Mw)は、100万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0094】
<製造例9>アクリル系共重合体9
製造例1において、(1)の工程で連鎖移動剤の1−ドデカンチオールを0.25質量部加えたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体9の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体9の溶液の粘度は、4.2Pa・sであり、固形分は、12.0質量%であった。また、アクリル系共重合体9の重量平均分子量(Mw)は、80万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0095】
<製造例10>アクリル系共重合体10
製造例1において、(1)の工程で連鎖移動剤の1−ドデカンチオールを0.30質量部加えたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体10の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体10の溶液の粘度は、2.9Pa・sであり、固形分は、12.0質量%であった。また、アクリル系共重合体10の重量平均分子量(Mw)は、50万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0096】
<製造例11>アクリル系共重合体11
製造例1において、(7)の滴下が終了した後すぐに続けて、酢酸エチル259質量部及びAIBN0.047質量部を混合して得られたAIBNの酢酸エチル溶液を140分間かけて滴下し、反応終了後、得られた反応混合物を酢酸エチル376質量部で希釈したこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体11の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体11の溶液の粘度は、16.7Pa・sであり、固形分は、21.2質量%であった。また、アクリル系共重合体11の重量平均分子量(Mw)は、175万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、6.5であった。
【0097】
<製造例12>アクリル系共重合体12
製造例1において、(1)の工程で連鎖移動剤の1−ドデカンチオールを0.50質量部加えたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体12の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体12の溶液の粘度は、0.9Pa・sであり、固形分は、12.2質量%であった。また、アクリル系共重合体12の重量平均分子量(Mw)は、20万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0098】
<製造例13>アクリル系共重合体13
製造例1において、ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)を用いたところを、ブチルアクリレート(BA)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を用い、配合量をそれぞれ286質量部及び14質量部としたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体13の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体13の溶液の粘度は、15.3Pa・sであり、固形分は、12.6質量%であった。また、アクリル系共重合体13の重量平均分子量(Mw)は、175万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0099】
<製造例14>アクリル系共重合体14
製造例1において、ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)を用いたところを、ブチルアクリレート(BA)及びN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)を用い、配合量をそれぞれ283質量部及び17質量部としたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体14の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体14の溶液の粘度は、12.3Pa・sであり、固形分は、12.2質量%であった。また、アクリル系共重合体14の重量平均分子量(Mw)は、175万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0100】
<製造例15>アクリル系共重合体15
製造例1において、ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)を用いたところを、ブチルアクリレート(BA)及びグリシジルメタクリレート(GMA)を用い、配合量をそれぞれ283質量部及び17質量部としたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系共重合体15の溶液を得た。
なお、アクリル系共重合体15の溶液の粘度は、11.7Pa・sであり、固形分は、12.5質量%であった。また、アクリル系共重合体15の重量平均分子量(Mw)は、175万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、2.6であった。
【0101】
−光学シートの作製−
<実施例1>
実施例1の光学シートを以下の手順で作製した。
(1)上記製造方法により作製したアクリル系共重合体1の溶液8.37質量部と、アルミキレート系架橋剤溶液(川研ファインケミカル社製のアルミキレートA(6.5質量部)とアセチルアセトン(6.0質量部)とトルエン(87.5質量部)との混合物)0.010質量部と、酢酸エチル5質量部とを混合し、脱泡して、中間層形成用塗工液を得た。得られた塗工液を、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、13ミルのアプリケーターを用いて塗工し、120℃で2分間乾燥を行ない、中間層1を形成した。
PETフィルム上に形成された中間層1の乾燥後の膜厚は、10μmであった。
【0102】
(2)中空シリカの2−プロパノール分散液(日揮触媒化成社製、商品名:スルーリア4110、固形分:20.5質量%、平均粒子径:約60nm)1質量部と、2−プロパノール3質量部とを混合し、得られた混合液を0.45μmフィルターでろ過して、粒子含有層形成用塗布液を得た。この塗布液を、ポリカーボネートフィルム(三菱エンジニアリングプラスチック社製、商品名:ユーピロンFE−2000B、厚み:75μm、第2樹脂層)上に、ワイヤーバー#18を用いて、塗工し、100℃で1分間乾燥を行ない、粒子含有層1を形成した。
第2樹脂層上に形成された粒子含有層1の乾燥後の膜厚は、1.2μmであった。また、粒子含有層の屈折率は、1.17であった。なお、屈折率は、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製、M−2000V)を用い、波長633nmの光によって測定した。
【0103】
(3)離型処理されたPETフィルム上に形成された中間層1(膜厚:10μm)を、ポリカーボネートフィルム(三菱エンジニアリングプラスチック社製、商品名:ユニプラスLC−320F、厚み:300μm、第1樹脂層)上に、ハンドゴムローラーを用いて転写した。
(4)次に、一方の面に、粒子含有層1が形成されたポリカーボネートフィルム(第2樹脂層)と、一方の面に、中間層1が形成されたポリカーボネートフィルム(第1樹脂層)とを、粒子含有層1と中間層1とが対向するようにして、ハンドゴムローラーを用いて貼り合わせた。
(5)この貼り合わせたシートを、第1樹脂層及び第2樹脂層の両側から金型で挟み、温度170℃、圧力10MPaで5分間加熱成型を行ない、実施例1の光学シートを得た。
【0104】
<実施例2>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.019質量部に変更して中間層2を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光学シートを得た。
【0105】
<実施例3>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.063質量部に変更して中間層3を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光学シートを得た。
【0106】
<実施例4>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更して中間層4を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の光学シートを得た。
【0107】
<実施例5>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.185質量部に変更して中間層5を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の光学シートを得た。
【0108】
<実施例6>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.246質量部に変更して中間層6を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6の光学シートを得た。
【0109】
<実施例7>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.662質量部に変更して中間層7を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の光学シートを得た。
【0110】
<実施例8>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体2に変更して中間層8を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8の光学シートを得た。
【0111】
<実施例9>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体3に変更して中間層9を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の光学シートを得た。
【0112】
<実施例10>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体4に変更して中間層10を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10の光学シートを得た。
【0113】
<実施例11>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体5に変更して中間層11を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11の光学シートを得た。
【0114】
<実施例12>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体6に変更して中間層12を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例12の光学シートを得た。
【0115】
<実施例13>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体7に変更して中間層13を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例13の光学シートを得た。
【0116】
<実施例14>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体8に変更して中間層14を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例14の光学シートを得た。
【0117】
<実施例15>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体9に変更して中間層15を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例15の光学シートを得た。
【0118】
<実施例16>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体10に変更して中間層16を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例16の光学シートを得た。
【0119】
<実施例17>
実施例1において、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体13に変更し、且つ、(1)の工程で、アルミキレート系架橋剤溶液0.010質量部を、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL)0.0015質量部に変更して、塗工及び乾燥を行なった後、更に50℃で72時間養生を行なった以外は、実施例1と同様にして、実施例17の光学シートを得た。
【0120】
<実施例18>
実施例1において、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体14に変更し、且つ、(1)の工程で、アルミキレート系架橋剤溶液0.010質量部を、グルタルアルデヒド0.0003質量部に変更して中間層18を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例18の光学シートを得た。
【0121】
<実施例19>
実施例1において、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体15に変更し、且つ、(1)の工程で、アルミキレート系架橋剤溶液0.010質量部を、酸無水物系架橋剤(新日本理化社製、商品名:リカシッドMH−700)0.0010質量部に変更して中間層19を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例19の光学シートを得た。
【0122】
<比較例1>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体11に変更して中間層20を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の光学シートを得た。
【0123】
<比較例2>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.123質量部に変更し、且つ、アクリル系共重合体1をアクリル系共重合体12に変更して中間層21を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の光学シートを得た。
【0124】
<比較例3>
実施例1において、(1)の工程で加えるアルミキレート系架橋剤溶液を0.010質量部から0.697質量部に変更して中間層22を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の光学シートを得た。
【0125】
<比較例4>
実施例1において、(1)の工程でアルミキレート系架橋剤溶液を添加しないで中間層23を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の光学シートを得た。
【0126】
なお、PETフィルム上に形成された中間層2〜中間層23の乾燥後の膜厚は、いずれも10μmであった。また、実施例2〜実施例19、及び比較例1〜比較例4における粒子含有層の屈折率は、いずれも1.17であった。
【0127】
−測定方法−
(粘度の測定)
上記アクリル系共重合体の溶液の粘度は、粘度計(東機産業社製、BMII型粘度計)を用いて、測定条件(使用ローター:No.4、ローター回転数:12min
−1、温度:25℃)にて測定した。
【0128】
(重量平均分子量及び分子量分布の測定)
上記アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
GPCによる測定は、下記の条件にて行なった。
【0129】
〜条件〜
測定装置:高速GPC(東ソー社製、HLC−8220)
検出器:示差屈折率計(RI)(東ソー社製、HLC−8220に組込)
カラム:TSKgel SuperMultipore HZ−H(東ソー社製)を直列に2本接続
カラムサイズ:4.6mmID×15cm
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:90mg/mL
注入量:10μL
流量:0.35mL/分
【0130】
(貯蔵弾性率G’の測定)
中間層の貯蔵弾性率は、以下の方法により測定した。
中間層から約1gの樹脂を採取し、粘弾性測定装置(HAAKE社製、RS600)の試料台(円盤型プレート(固定平板、プレート名:TMP−10、材質:アルミニウム))の上に載せ、センサー(直径:10mm、センサー名:P10 CS L Disp Al、材質:アルミニウム)を徐々に近づけて、試料台から1mmの位置に測定ギャップを設定した。このとき、測定部のまわりに押し出された樹脂を除去して、測定に影響が出ないようにした。
プレートの温度を25℃に設定し、周波数1Hzでせん断応力を与えながら、温度を25℃から200℃まで、1050秒かけて昇温させて、貯蔵弾性率G’(Pa)を測定した。今回の測定では、貯蔵弾性率G’は、温度によらずほぼ一定の値を示したため、測定値の平均値(算術平均値)をそのまま貯蔵弾性率G’の値とした。
【0131】
(架橋密度の計算)
架橋密度は、添加した架橋剤の官能基の密度であり、架橋剤の官能基のモル数を架橋点のモル数であると見なして、単位体積当たりの架橋点数の値を計算して求めた。
中間層を形成する樹脂の官能基密度が、計算上の最大架橋点密度となる。
具体的には、例えば、中間層1の場合、樹脂溶液の(8.37g)の固形分(1.00g)を樹脂の密度(1.1g/ml)で割り、樹脂の体積(0.91ml)を求める。
次に、中間層1の形成に用いた架橋剤溶液(0.010g)の固形分(0.00065g)を架橋剤の分子量(327)で割り、架橋剤1分子当たりの官能基数(3)を掛けて、官能基のモル数(0.0060mmol)を求める。
そして、官能基のモル数(0.0060mmol)を樹脂の体積(0.91ml)で割ることにより、架橋密度(0.0065mmol/ml、SI単位換算値:6.5mol/m
3)求めた。
【0132】
−評価−
1.空隙の確認
実施例1〜実施例19、及び比較例1〜比較例4の光学シートを幅5mm、長さ20mmの短冊状に切断し、液体窒素に浸漬して凍結破断した。その凍結破断した光学シートの断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM:Field Emission Scanning Electron Microscope)により観察した。
その結果、いずれの光学シートの粒子含有層においても、粒子間に空隙が形成されていることを確認した。
【0133】
2.屈折率
実施例1〜実施例19、及び比較例1〜比較例4の光学シートにおける粒子含有層の屈折率を以下の手順により測定した。
図4に示すように、光学シートに三角プリズムを密着させて、三角プリズムを通して、光学シートの第1樹脂層側から、レーザー光を当て、該レーザー光の入射角を0度から徐々に増加させる。レーザー光は、当初、第2樹脂層側に抜けるが、途中で粒子含有層の界面での全反射に変わる。この全反射に変わる角度を測定し、その角度に基づき、粒子含有層の屈折率を下記式により算出し、下記の評価基準に従って評価した。
ここで、
図4に示す「A」は、三角プリズムに入射するレーザー光の入射角を示し、「B」は、三角プリズムに入射したレーザー光の屈折角を示し、そして、「C」は、三角プリズムから光学シートに入射するレーザー光の入射角(0度<C<90度)であって、且つ、0度から徐々に増加させて粒子含有層の界面での全反射に変わるときの角度を示す。
下記式において、「C」は、
図4に示す「C」に相当し、「1.779」は、三角プリズムの屈折率を示す。
屈折率=SinC×1.779
なお、実用上許容できる範囲は、「A」及び「B」に分類されるものである。評価結果を表1に示す。
【0134】
<評価基準>
A:屈折率が1.200以下である。
B:屈折率が1.200を超えて、1.250未満である。
C:屈折率が1.250以上である。
【0135】
3.密着強度
実施例1〜実施例19、及び比較例1〜比較例4の光学シートにおける密着強度を以下の手順により測定し、第1樹脂層と中間層との密着性を確認した。
(1)光学シートを幅25mm、長さ100mmに切り出し、片方の端部を手で約10mm剥離した。
(2)光学シートの第1樹脂層側に25mm幅の両面テープを貼付し、これをアルミニウム板に貼付した。
(3)引張試験機(オリエンテック社製、STA−1225)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下において、約10mm剥離した第2樹脂層の一端を掴み、剥離角90℃、剥離速度300mm/分の条件で引き剥がし、接着力(N/25mm)を測定し、下記の評価基準に従って評価を行なった。評価結果を表1に示す。
なお、実用上許容できる範囲は、「A」及び「B」に分類されるものである。
【0136】
<評価基準>
A:密着強度が3.0N/25mm以上である。
B:密着強度が1.0N/25mmを超えて、3.0N/25mm未満である。
C:密着強度が1.0N/25mm以下である。
【0137】
【表1】
【0138】
表1に示すように、実施例では、粒子含有層の屈折率の上昇が良好に抑制され、また、第1樹脂層と中間層との密着性が優れていた。
これに対し、特定のアクリル系共重合体を含まない組成物により形成される中間層を備えるか、或いは、特定のアクリル系共重合体を含む組成物を用いても架橋密度が特定の範囲にない中間層を備える比較例では、屈折率の上昇抑制と高い密着性とを両立させることはできなかった。
【0139】
日本出願2013−083271の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的に、かつ、個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。