(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む単量体Fc含有ポリペプチドであって、CH3ドメインが、CH3−CH3二量体化界面において操作されたN連結型グリコシル化部位を含み、操作されたN連結型グリコシル化部位が、a)S364NおよびY407N−X−K409T、b)S364N−X−T366SおよびY407N−X−K409T、c)S364NおよびY407N−X−K409S、ならびにd)S364N−X−T366SおよびY407N−X−K409Sからなる群から選択され、XがProを除く任意のアミノ酸であり、ここで、アミノ酸残基の番号はKabatのEU番号付けスキームに基づくものである、単量体Fc含有ポリペプチド。
組換えによって連結した少なくとも2つの請求項1に記載の単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドであって、各Fc含有ポリペプチドが、CH3−CH3二量体化界面において同一のまたは異なる操作されたN連結型グリコシル化部位を有する、ポリペプチド。
CH2ドメインにおけるアミノ酸修飾が、S239N−X−F241S、S239N−X−F241T、F241N−X−243T、F241N−X−243S、E258N、E258N−X−T260S、T260N−X−V262T、T260N−X−V262S、V262N−X−V264S、V262N−X−V264T、K288T、K288S、K288N−K290T、K288N−K290S、V305N、およびV305−X−T307Sからなる群から選択され、ここで、アミノ酸残基の番号はKabatのEU番号付けスキームに基づくものである、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
組換えによって連結した2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含み、各Fc含有ポリペプチドが、各CH3−CH3二量体化界面において同一の操作されたN連結型グリコシル化部位を有し、さらに、操作されたN連結型グリコシル化部位が、S364N−X−T366SおよびY407N−X−K409Tであり、ここで、アミノ酸残基の番号はKabatのEU番号付けスキームに基づくものである、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、疎水性CH3−CH3二量体化界面における、または疎水性CH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方における、1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位によって安定化された、単量体Fc含有ポリペプチドを提供する。本発明者らは、Fc含有ポリペプチドの特異的部位でのN−グリコシル化の組み込みが、CH3−CH3二量体化界面を破壊し得、CH3ドメインの暴露された疎水性表面をマスクし得、Fc二量体を単量体化し得、抗体のFcドメインの安定な単量体形態を提供し得、かつ/またはFc単量体の物理化学的特性(例えば、溶解度および安定性)を向上させ得ることを発見した。さらに、操作されたグリカン部分もまた、突然変異したアミノ酸残基を立体的に遮蔽し得、潜在的な免疫認識または抗薬剤抗体の結合をマスクし得た。単量体Fc含有ポリペプチドは、新生児Fc受容体(FcRn)への結合アフィニティーを、pH依存的に維持する。本明細書において提供される開示を知れば、当業者には、単量体Fc含有ポリペプチドの結晶構造が糖質による安定化とFcRn介在性のリサイクルのための分子認識とについての論拠を提供することが理解されよう。本明細書において開示されているデータは、さらに、単量体Fc含有ポリペプチドがまた、抗体Fabドメインのインビボでの半減期を延ばすことを実証する。本発明者らは、さらに、疎水性CH3−CH3二量体化界面における、または疎水性CH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方における、1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位によってそれぞれ安定化された、組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドが、操作されたN連結型グリコシル化部位の不存在下での同一のポリペプチドよりも高いFcRnに対するアフィニティーおよび長い半減期を有することを発見した。いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドによって実証された、増大したアフィニティーは、酸性pHでエンドソームにおけるFcRnからのポリペプチドの解離が減速し、それによってポリペプチドがリソソームにおける分解経路に入ることが妨げられたことに起因する可能性がある。
【0019】
通常の技術および定義
本明細書において別段の規定がない限り、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有する。さらに、文脈により別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。全体として、本明細書において記載される、細胞培養および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質化学および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して用いられる命名と、これらの技術とは、当技術分野において周知であり、一般的に用いられている。
【0020】
本発明の方法および技術は、別段の指示がない限り、当技術分野において周知の従来の方法に従って、かつ本明細書の全体にわたり引用および議論される様々な一般的な参考文献およびさらに具体的な参考文献において記載されているように、一般的に実施される。例えば、Sambrook J.およびRussell D.Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,N.Y.(2000);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Wiley,John & Sons,Inc.(2002);Harlow and Lane Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,N.Y.(1998);ならびにColiganら、Short Protocols in Protein Science、Wiley,John & Sons,Inc.(2003)を参照されたい。酵素反応および精製技術は、製造者の仕様に従って、当技術分野において一般的に行われるように、または本明細書において記載されるように、行われる。本明細書において記載される、分子生物学、生化学、免疫学、分析化学、合成有機化学、ならびに医化学および薬化学に関連して用いられる命名と、これらの実験手順および実験技術とは、当技術分野において周知であり、一般的に用いられている。本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」という語または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変型は、言及された整数または整数群を含むことを含意するがいかなる他の整数または整数群も排除するものではないことが理解される。
【0021】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、あらゆる長さの、好ましくは比較的短い(例えば、10〜100アミノ酸)のアミノ酸鎖を指すために、本明細書において区別せずに用いられる。鎖は、直鎖状または分枝鎖状であり得、これは、修飾されたアミノ酸を含み得、かつ/または非アミノ酸によって中断され得る。この用語はまた、天然にまたは介入によって修飾されている、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、またはあらゆる他の操作もしくは修飾、例えば標識構成要素とのコンジュゲーションによって修飾されている、アミノ酸鎖を含む。同様にこの定義に含まれるものは、例えば、アミノ酸の1つまたは複数の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)および当技術分野において知られている他の修飾を含有するポリペプチドである。ポリペプチドが一本鎖または会合鎖として生じ得ることが理解される。
【0022】
本明細書において用いられる用語「Fc含有ポリペプチド」は、免疫グロブリン重鎖のカルボキシル末端のポリペプチド配列を含むポリペプチド(例えば、抗体またはイムノアドヘシン)を指す。Fc含有ポリペプチドは、非変性Fc領域または変異体Fc領域(すなわち配列)を含み得る。免疫グロブリンのFc領域は、通常、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、CH4ドメインを含んでいてもよい。Fc含有ポリペプチドは、野生型ヒンジ配列の一部または全てを含み得る(通常、そのアミノ末端に)。Fc含有ポリペプチドは、あらゆる適切な免疫グロブリンから、例えば、様々なIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4サブタイプの少なくとも1つから、またはIgA、IgE、IgD、もしくはIgMから、得ることができるか、またはそれに由来し得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得、例えば、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Glu216位のアミノ酸残基から、またはAla231から、そのカルボキシル末端まで延びると定義される。Fc領域における残基の番号付けは、KabatにおけるようなEUインデックスの番号付けである。Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1991。
【0023】
本明細書において用いられる「操作されたN連結型グリコシル化部位」は、天然アミノ酸配列ではN連結型グリコシル化部位が存在していなかったタンパク質配列内に導入されている、グリコシル化部位を意味する。すなわち、操作されたN連結型グリコシル化部位は、基準のN連結型グリコシル化配列、すなわち、Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であるN−X−SまたはTが、このような配列が存在していなかったタンパク質内に導入されている場合を包含する。1つの実施形態において、N−X−SまたはTの1つの位置でアミノ酸をNと置換するアミノ酸置換によって、第2のアミノ酸残基がプロリンではなく、さらに第3のアミノ酸残基が既にセリン残基またはスレオニン残基である、グリコシル化部位が生じる。別の実施形態において、第1のアミノ酸は既にアスパラギンであり、第2のアミノ酸はプロリンではなく、その結果、第3のアミノ酸のみがセリンまたはスレオニンによって置換されればよい。さらに別の実施形態において、第1のアミノ酸残基はアルギニンによって置換される必要があり、第2のアミノ酸はプロリンではなく、別の非プロリンアミノ酸によって置換される必要はないが置換されてもよく、第3のアミノ酸残基は、セリンまたはスレオニンによって置換される。別の実施形態において、第3のアミノ酸はセリンであり得、スレオニンによって置換され、または逆の場合も同様である。上記のあらゆる順列が本発明に包含される。
【0024】
本明細書において用いられる用語「組換えによって連結した」は、複数のタンパク質またはペプチド(例えば、単量体Fc含有ポリペプチド)の、1本のポリペプチド鎖としての連結を指す。複数のタンパク質またはペプチド(例えば、単量体Fc含有ポリペプチド)の連結は、タンパク質/ペプチドのカルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかを介して直接的に行われ得る。複数のタンパク質またはペプチド(例えば、単量体Fc含有ポリペプチド)の連結は、また、一続きのグリシンおよびセリンなどの非機能的なポリペプチドスペーサーを介して間接的に行われ得る。複数のタンパク質は、単一の核酸から組換えによって発現されて、複数のポリペプチドを1本のポリペプチド鎖として含む融合タンパク質を提供し得る。あるいは、各ポリペプチドは、カルボキシル−アミノ(C−N)末端の化学的コンジュゲーションを介して化学的に連結されて、複数のポリペプチドを含む融合タンパク質を提供し得る。両方法は、本明細書において用いられる「組換えによって連結した」タンパク質を提供する。
【0025】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、糖質、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合し得る、免疫グロブリン分子である。本明細書において用いられる場合、この用語は、別段の特定がない限り、無傷のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけではなく、特異的結合について無傷抗体と競合するあらゆるその抗原結合部分、抗原結合部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のあらゆる他の修飾された立体構造も含む。抗原結合部分には、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fd、Fv、ドメイン抗体(dAb、例えば、サメ抗体およびラクダ抗体)、相補性決定領域(CDR)を含む断片、一本鎖可変断片抗体(scFv)、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v−NARおよびbis−scFv、ならびにポリペプチドへの特異的な抗原結合を付与するために十分な免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチが含まれる。抗体には、IgG、IgA、またはIgMなどのあらゆるクラス(またはそのサブクラス)の抗体が含まれ、抗体は、いずれかの特定のクラスのものである必要はない。抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。
【0026】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分のみを含み、ここで、前記部分は、無傷抗体内に存在する場合に前記部分と通常関連している機能の少なくとも1つ、好ましくはほとんどまたは全てを、好ましくは保持している。
【0027】
「Fab断片」は、1つの軽鎖およびCH1および1つの重鎖の可変領域を含む。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成し得ない。
【0028】
本願における残基の指定は、KabatのEU番号付けスキームに基づく(Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、第5版)。
【0029】
「二価抗体」は、分子(例えばIgG)1個当たり2つの抗原結合部位を含む。一部の場合において、2つの結合部位は同一の抗原特異性を有する。しかし、二価抗体は二重特異的であり得る。
【0030】
「一価抗体」または「単量体抗体」は、分子(例えばIgG)1個当たり1つの抗原結合部位を含む。一部の場合において、一価抗体または単量体抗体は、2つ以上の抗原結合部位を有し得るが、これらの結合部位は異なる抗原に由来する。
【0031】
「多重特異的抗体」は、2つ以上の抗原またはエピトープを標的化するものである。「二重特異的(bispecific)」、「二重特異的(dual−specific)」、または「二機能性」抗体は、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異的抗体は、多重特異的抗体の一種であり、限定はしないが、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含む、様々な方法によって生産することができる。例えば、SongsivilaiおよびLachmann(1990)、Clin.Exp.Immunol.79:315〜321;ならびにKostelnyら(1992)、J.Immunol.148:1547〜1553を参照されたい。二重特異的抗体の2つの結合部位は、同一のまたは異なるタンパク質標的上に存在し得る2つの異なるエピトープに結合する。
【0032】
本明細書において用いられる用語「モノクローナル抗体」は、ほぼ均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個別の抗体は、微量で存在し得る考えられる天然の突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
【0033】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、特定の実施形態において、所望の生物学的活性を示す限りの、「キメラ」抗体が具体的に含まれ得、この「キメラ」抗体において、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくは抗体サブクラスに属する抗体における対応する配列に同一または相同であるが、鎖の残り部分は、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくは抗体サブクラスに属する抗体における対応する配列に同一または相同である(米国特許第4,816,567号、およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851〜6855(1984))。
【0034】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えばマウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、アフィニティー、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種の超可変領域(ドナー抗体)の残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。ヒト化抗体は、さらに、レシピエント抗体またはドナー抗体において見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに高めるために行われる。通常、ヒト化抗体は、全てまたはほぼ全ての超可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつ全てまたはほぼ全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインのほぼ全てを含む。ヒト化抗体はまた、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分を含んでいてよい。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature 332:323〜329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593〜596(1992)を参照されたい。また、以下の総説およびそれにおいて引用される参考文献も参照されたい:VaswaniおよびHamilton、Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105〜115(1998);Harris、Biochem.Soc.Transactions 23:1035〜1038(1995);HurleおよびGross、Curr.Op.Biotech.5:428〜433(1994)。
【0035】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、および/または本明細書において開示されるヒト抗体を作製するための技術のいずれかを用いて作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に排除する。
【0036】
本明細書において用いられる場合、用語「イムノアドヘシン」は、異種タンパク質(「アドヘシン」、例えば、受容体、リガンド、または酵素)の「結合ドメイン」と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター構成要素とを組み合わせる、抗体様分子または免疫グロブリン様分子を指す。構造的に、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識および結合部位(抗原結合部位)以外の(すなわち「異種の」)、望ましい結合特異性を有するアドヘシンアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合体を含む。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、あらゆる免疫グロブリン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD、またはIgMから得ることができる。
【0037】
本明細書において用いられる「Fc融合タンパク質」は、1つまたは複数のポリペプチドがFcポリペプチド(例えば、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチド)に機能可能に連結しているタンパク質を意味する。Fc融合体は、免疫グロブリンのFc領域(例えば、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチド)と、通常はあらゆるタンパク質、ポリペプチド、または低分子であり得る融合パートナーとを組み合わせる。事実上、あらゆるタンパク質または低分子が、Fcに連結されてFc融合体を生成し得る。タンパク質融合パートナーには、限定はしないが、受容体の標的結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、または一部の他のタンパク質もしくはタンパク質ドメインが含まれ得る。低分子融合パートナーには、Fc融合体を治療標的に向ける、あらゆる治療用物質が含まれ得る。このような標的は、あらゆる分子、例えば、限定はしないが、疾患に関与する細胞外受容体であり得る。
【0038】
本明細書において用いられる「ヒンジ領域」、「ヒンジ配列」、およびその変型には、当技術分野において知られている意味が含まれ、それは、例えば、Janewayら、ImmunoBiology:the immune system in health and disease(Elsevier Science Ltd.、NY)(第4版、1999);Bloomら、Protein Science(1997)6:407〜415;Humphreysら、J.Immunol.Methods(1997)、209:193〜202において説明されている。
【0039】
本明細書において用いられる用語「ベクター」は、自らが連結している別の核酸を輸送し得る核酸分子を指すことを意図したものである。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントをその中にライゲーションすることができる環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターは、ファージベクターである。別のタイプのベクターは、その中でさらなるDNAセグメントをウイルスゲノム内にライゲーションすることができる、ウイルスベクターである。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム性の哺乳動物ベクター)における自律的な複製が可能である。他のベクター(例えば、非エピソーム性の哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内への導入の際に宿主細胞のゲノム内に組み込まれ得、それによって、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが機能可能に連結している遺伝子の発現を指示し得る。このようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単純に「組換えベクター」)と呼ばれる。通常、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドが最も一般的に用いられるベクター形態であるため、区別せずに用いられ得る。
【0040】
本明細書において区別せずに用いられ得る「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は、多量体の、単離されている可能性のある、少なくとも10塩基長のヌクレオシドまたはヌクレオチドの形態を指す。この用語には、一本鎖形態および二本鎖形態が含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらの類似体、あるいは、DNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼによってまたは合成反応によって多量体内に組み込まれ得る、あらゆる基質であり得る。
【0041】
ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドおよびその類似体などの、修飾されたヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、多量体のアセンブリの前または後に行われ得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、合成後に、標識とのコンジュゲーションなどによって、さらに修飾され得る。他のタイプの修飾には、例えば、「キャップ」、類似体での天然ヌクレオチドの1つまたは複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)および荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)でのヌクレオチド間修飾、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、poly−L−リジンなど)などの懸垂部分を含有するヌクレオチド間修飾、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレンなど)でのヌクレオチド間修飾、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するヌクレオチド間修飾、アルキル化剤を含有するヌクレオチド間修飾、修飾された連結(例えば、アルファアノマー核酸など)でのヌクレオチド間修飾、ならびに未修飾形態のポリヌクレオチドが含まれる。さらに、糖内に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、例えばホスホネート基、リン酸基によって置換され得るか、標準的な保護基によって保護され得るか、またはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を準備するために活性化され得るか、または固体もしくは半固体の担体にコンジュゲートされ得る。5’末端および3’末端のOHは、リン酸化され得るか、またはアミンもしくは1から20炭素原子の有機キャップ基部分で置換され得る。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化され得る。ポリヌクレオチドはまた、当技術分野において一般に知られている類似の形態のリボース糖またはデオキシリボース糖を含有し得、これには、例えば、2’−O−メチルリボース、2’−O−アリルリボース、2’−フルオロリボース、または2’−アジドリボース、炭素環式の糖類似体、アルファアノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース、もしくはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、および脱塩基ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。1つまたは複数のホスホジエステル連結は、代替的な連結基によって置換することができる。これらの代替的な連結基には、限定はしないが、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR
2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH
2(「ホルムアセタール」)(式中、RまたはR’のそれぞれは、独立して、Hであるか、または、エーテル(−O−)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルを含有していてよい、置換されたもしくは置換されていないアルキル(1〜20C)である)によって置換されている実施形態が含まれる。ポリヌクレオチド内の全ての連結が同一である必要はない。先の記載は、RNAおよびDNAを含む、本明細書において言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0042】
本明細書において用いられる「オリゴヌクレオチド」は、短い、通常は一本鎖の、通常は合成のポリヌクレオチドを通常指し、これは通常、約200ヌクレオチド未満の長さであるが、必ずしもそうではない。用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドについての上記の記載は、オリゴヌクレオチドに等しくかつ完全に適用可能である。
【0043】
本明細書において用いられるヌクレオチド配列についての言及は、別段の特定がない限り、その相補体を包含する。したがって、特定の配列を有する核酸への言及は、文脈によって別段の規定がない限り、その相補配列を有するその相補鎖を包含すると理解される。
【0044】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチドインサートの組み込みのためのベクターのレシピエントであり得るか、またはそれである、個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、天然の、偶発的な、または意図的な突然変異に起因して、必ずしも元の親細胞に完全に同一である必要はない(形態学的に、またはゲノムDNA相補体において)。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドでインビボでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0045】
「個体」または「対象」は、哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。哺乳動物にはまた、限定はしないが、家畜、スポーツ用動物、ペット、霊長類、馬、犬、猫、マウス、およびラットが含まれる。
【0046】
本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる添加剤」には、活性成分と組み合わされるとその活性成分に生物学的活性を保持させ、かつ対象の免疫系と非反応性である、あらゆる材料が含まれる。例には、限定はしないが、標準的な薬学的担体、例えば、リン酸緩衝溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤のいずれかが含まれる。エアロゾルまたは非経口投与のための好ましい賦形剤は、リン酸緩衝溶液(PBS)または通常の(0.9%)生理食塩水である。このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990;およびRemington、The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Mack Publishing、2005を参照されたい)。
【0047】
当技術分野において用いられる場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好ましいFcRは、非変性配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体を結合するもの(ガンマ受容体)であり、対立遺伝子変異体を含むFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体、またあるいはこれらの受容体のスプライシングされた形態を含む。FcγRII受容体には、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれる。FcRは、RavetchおよびKinet、Ann.Rev.Immunol.、9:457〜92、1991;Capelら、Immunomethods、4:25〜34、1994;およびde Haasら、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41、1995において概説されている。「FcR」にはまた、胎児への母親のIgGの移入に関与する新生児受容体、FcRnが含まれる(Guyerら、J.Immunol.、117:587、1976;およびKimら、J.Immunol.、24:249、1994)。
【0048】
「機能的Fc領域」は、非変性配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を有する。典型的な「エフェクター機能」には、C1qの結合、相補体依存性の細胞傷害性、Fc受容体の結合、抗体依存性の細胞介在性細胞傷害性、食作用、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方調節などが含まれる。このようなエフェクター機能には、通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることが必要であり、このような抗体エフェクター機能を評価するための当技術分野において知られている様々なアッセイを用いて評価することができる。
【0049】
本明細書における「約」のついた値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体に向けられた実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」と言及する記載には、「X」の記載が含まれる。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。「約」または「およそ」は、計数可能な数値変数に関して用いられる場合、示された変数値と、示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)または示された値の10パーセント内のいずれか大きい方の、全ての変数値とを指す。
【0050】
実施形態が「含む(comprising)」という語を用いて本明細書において記載されているところではどこでも、「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載されている他の類似の実施形態もまた提供されることが理解される。
【0051】
本発明の態様または実施形態がマーカッシュグループまたは選択肢の他のグルーピングの用語で記載されている場合、本発明は、列挙されるグループ全体をまとめて含むだけではなく、グループの各メンバーおよびも個別に含み、メイングループの全ての考えられるサブグループも含み、また、グループメンバーの1つまたは複数が欠けたメイングループも含む。本発明はまた、特許請求の範囲に記載の発明におけるグループメンバーのいずれかの、1つまたは複数を明確に排除することを想定する。
【0052】
別段の規定がない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。典型的な方法および材料が本明細書において記載されるが、本明細書において記載されるものに類似または同等の方法および材料もまた、本発明の実施または試験において用いることができる。本明細書において言及される全ての刊行物および他の参考文献は、参照することによってその全体が組み込まれる。矛盾するケースでは、定義を含み、本明細書が優先される。多くの文献が本明細書において引用されるが、この引用は、これらの文献のいずれかが当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することの承認を構成するものではない。本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」という語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変型は、言及された整数または整数群を含むことを含意するが、いかなる他の整数または整数群も排除するものではないことが理解される。文脈により別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。
【0053】
典型的な方法および材料が本明細書において記載されるが、本明細書において記載されるものに類似または同等の方法および材料もまた、本発明の実施または試験において用いることができる。材料、方法、および例は、説明のためのものにすぎず、限定することを意図したものではない。
【0054】
単量体Fc含有ポリペプチド
1つの態様において、本発明は、IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む単量体Fc含有ポリペプチドであって、CH3ドメインが、CH3−CH3二量体化界面において1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位を含み、操作されたN連結型グリコシル化部位が、XがProを除く任意のアミノ酸であるAsn−X−SerまたはAsn−X−Thrのコンセンサス配列を提供するための少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、単量体Fc含有ポリペプチドを提供する。
【0055】
本明細書において用いられるProを除く任意のアミノ酸には、天然アミノ酸残基、例えばMet、Ala、Val、Leu、Ile、Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、Gly、Trp、Tyr、Phe、およびHisが含まれる。一部の態様において、Xは、プロリンまたはシステインを除く任意のアミノ酸である。一部の態様において、Xは、G、A、I、L、V、M、F、W、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、およびHからなる群から選択される。一部の態様において、Xは、G、A、I、L、V、M、F、W、S、T、Y、N、Q、D、E、K、R、およびHからなる群から選択される。一部の態様において、XはGである。一部の態様において、XはAである。一部の態様において、XはIである。一部の態様において、XはLである。一部の態様において、XはVである。一部の態様において、XはMである。一部の態様において、XはFである。一部の態様において、XはWである。一部の態様において、XはSである。一部の態様において、XはTである。一部の態様において、XはCである。一部の態様において、XはYである。一部の態様において、XはNである。一部の態様において、XはQである。一部の態様において、XはDである。一部の態様において、XはEである。一部の態様において、XはKである。一部の態様において、XはRである。一部の態様において、XはHである。先の記載は、明らかに別のことが指示されていない限り、または技術的に禁止されていない限り、明細書におけるXの全ての参照に適用される。
【0056】
N連結型グリコシル化部位(Asn−X−SerまたはAsn−X−Thr)を疎水性CH3−CH3二量体化界面のどこに組み込むかを決定するために用いられる方法(
図1を参照されたい)は、実施例1において記載されており、1)結晶構造に基づいてCH3−CH3二量体化界面上に位置する残基を同定し(例えば、ヒトガンマ1Fc)、Fc二量体とFc二量体の一方の鎖(本発明者らの知る限りでは、本発明の前には単量体Fcについて結晶構造は誘導されていなかったため、理論的Fc単量体)との両方における各残基のアクセス可能な表面のパーセント(%ASA)を計算すること、2)タンパク質の構造的フレームワークの維持において重要な役割を有するアミノ酸残基(例えば、プロリン残基、グリシン残基、およびシステイン残基)の突然変異生成を避けること、3)CH3−CH3二量体化界面における同定されたアミノ酸残基で、XがProを除く任意のアミノ酸であるAsn−X−SerまたはAsn−X−Thrのコンセンサス配列を組み込むこと、ならびに4)Fcドメインの一方の鎖の三次元構造上にマッピングされたアミノ酸残基を手作業で調べ、操作されたN連結型グリコシル化部位がCH3−CH3界面を分離するためにほとんど影響を有し得ない位置(例えば、Leu256および276Asp)を排除すること、を含む。
【0057】
したがって、一部の実施形態において、CH3−CH3二量体化界面におけるアミノ酸修飾は、XがProを除く任意のアミノ酸である、Q347N−X−Y349T、Q347N−X−Y349S、Y349N−X−L351T、Y349N−X−L351S、L351N−X−P353T、L351N−X−P353S、S354N−X−D356T、S354N−X−D356S、D356N−X−L358T、D356N−X−L358S、E357N−X−T359S、K360N−X−Q362T、K360N−X−Q362S、S364N−X−T366S、L368N−X−K370T、L368N−X−K370S、K370N−X−F372T、K370N−X−F372S、K392N−X−T394S、V397N−X−D399T、V397N−X−D399S、S400N−X−G402T、S400N−X−G402S、D401N−X−S403T、F405N−X−Y407T、F405N−X−Y407S、Y407N−X−K409T、Y407N−X−K409S、K409N−X−T411S、K439N−X−L441T、K439N−X−L441S、S444N−X−G446T、およびS444N−X−G446Sからなる群から選択される。
【0058】
一部の実施形態において、CH3−CH3二量体化界面におけるアミノ酸修飾は、S364N−X−T366S、L368N−X−K370T、L368N−X−K370S、F405N−X−Y407T、F405N−X−Y407S、Y407N−X−K409T、およびY407N−X−K409Sからなる群から選択される。一部の実施形態において、CH3−CH3二量体化界面におけるアミノ酸修飾は、S364N−X−T366S、Y407N−X−K409T、またはY407N−X−K409Sである。
【0059】
一部の実施形態において、CH3領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 CH3領域である。一部の実施形態において、CH3領域は、ヒトIgG CH3領域(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 CH3領域および/またはCH2領域)を含む。本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドの例は、配列番号17〜52に示されている。
【0060】
別の態様において、本発明はまた、IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む単量体Fc含有ポリペプチドであって、CH3ドメインが、CH3−CH3二量体化界面において2つの操作されたN連結型グリコシル化部位を含み、操作されたN連結型グリコシル化部位が、Asn−X−SerまたはAsn−X−Thrのコンセンサス配列を有する1つまたは複数のアミノ酸修飾を含み、XがProを除く任意のアミノ酸である、単量体Fc含有ポリペプチドを提供する。
【0061】
したがって、一部の実施形態において、CH3−CH3二量体化界面におけるアミノ酸修飾は、a)S364NおよびY407N−X−K409T、b)S364N−X−T366SおよびY407N−X−K409T、c)S364NおよびY407N−X−K409S、ならびにd)S364N−X−T366SおよびY407N−X−K409Sからなる群から選択される。2つの操作されたN連結型グリコシル化部位を含む本発明の典型的な単量体Fc含有ポリペプチドは、配列番号53〜58に示されている。
【0062】
別の態様において、本発明はさらに、CH2−CH2界面において1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位を含み、操作されたN連結型グリコシル化部位は、Asn−X−SerまたはAsn−X−Thrのコンセンサス配列を有する1つまたは複数のアミノ酸修飾を含み、XはProを除く任意のアミノ酸である。一部の実施形態において、CH2ドメインにおけるアミノ酸修飾は、S239N−X−F241S、S239N−X−F241T、F241N−X−F243T、F241N−X−F243S、E258N、E258N−X−T260S、T260N−X−V262T、T260N−X−V262S、V262N−X−V264S、V262N−X−V264T、K288T、K288S、K288N−K290T、K288N−K290S、V305N、およびV305−X−T307Sからなる群から選択される。他の実施形態において、CH2ドメインにおけるアミノ酸修飾は、E258N、E258N−X−T260S、T260N−X−V262T、T260N−X−V262S、K288T、K288S、V305N、およびV305−X−T307Sからなる群から選択される。CH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方において操作されたN連結型グリコシル化部位を含む単量体Fc含有ポリペプチドの例は、配列番号59〜66に示されている。
【0063】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの操作されたN連結型グリコシル化部位を含む単量体Fc含有ポリペプチドであって、操作されたN連結型グリコシル化部位が、XがProを除く任意のアミノ酸である、E258N−X−T260S、T260N−X−V262T、T260N−X−V262S、V305N、V305N−X−T307S、Q347N−X−Y349T、Q347N−X−Y349S、S364N−X−T366S、T366N−X−L368T、T366N−X−L368S、L368N−X−K370T、L368N−X−K370S、D401N、D401N−X−S403T、F405N−X−Y407T、F405N−X−Y407S、Y407N−X−K409T、Y407N−X−K409S、およびK409N−X−T411Sからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、単量体Fc含有ポリペプチドを提供する。
【0064】
別の態様において、本発明は、組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドであって、各Fc含有ポリペプチドが、CH3−CH3二量体化界面においてまたはCH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方において、同一のまたは異なる操作されたN連結型グリコシル化部位を有する、ポリペプチドを提供する。
【0065】
単量体Fc含有ポリペプチドのそれぞれは、カルボキシル−アミノ(C−N)末端連結を介して直接的に、またはリンカーもしくはスペーサーを介して間接的に、別の単量体Fc含有ポリペプチドに組換えによって連結し得る。一部の実施形態において、リンカーまたはスペーサーは、短い連結ペプチドであり得る。連結ペプチドの例は、(GGGGS)
n(配列番号89)であり、式中、nは、1〜20、1〜15、1〜10、または1〜5のいずれかであり得る。例えば、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20のいずれかであり得る。リンカーまたはスペーサーの他の例は、設計および使用されている(Birdら、Science 242:423〜426(1988))。リンカーまたはスペーサーは、短い柔軟なポリペプチドであり、好ましくは、約20未満のアミノ酸残基を含む。リンカーまたはスペーサーは、次いで、さらなる機能、例えば、薬剤の付着または固体担体への付着のために、修飾され得る。
【0066】
したがって、一部の実施形態において、本発明は、組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドであって、各Fc含有ポリペプチドが、CH3−CH3二量体化界面において同一の操作されたN連結型グリコシル化部位を含み、各Fc含有ポリペプチドが、リンカーを介して組換えによって連結している、ポリペプチドを提供する。一部の実施形態において、各Fc含有ポリペプチドは、操作されたN連結型グリコシル化部位S364N、および、XがProを除く任意のアミノ酸(例えば、LeuおよびSer)であるY407N−X−K409Tを含む。他の実施形態において、各Fc含有ポリペプチドは、操作されたN連結型グリコシル化部位S364N−X−T366SおよびY407N−X−K409Tを含む。一部の実施形態において、リンカーは、GGGGS(配列番号89)、GGGGSGGGGS(配列番号90)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号91)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号92)、またはGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号93)である。組換えによって連結した少なくとも2つの同一の本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドの例は、配列番号79〜88に示されている。
【0067】
他の実施形態において、本発明は、組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドであって、各Fc含有ポリペプチドが、CH3−CH3二量体化界面において、異なる操作されたN連結型グリコシル化部位を含み、各Fc含有ポリペプチドが、リンカーを介して組換えによって連結している、ポリペプチドを提供する。一部の実施形態において、第1のFc含有ポリペプチドは、操作されたN連結型グリコシル化部位S364NおよびY407N−X−K409Tを含み、第2のFc含有ポリペプチドは、操作されたN連結型グリコシル化部位S364N−X−T366SおよびY407N−X−K409Tを含み、式中、Xは、Proを除く任意のアミノ酸(例えば、LeuおよびSer)である。一部の実施形態において、リンカーは、GGGGS(配列番号89)、GGGGSGGGGS(配列番号90)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号91)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号92)、またはGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号93)である。
【0068】
別の実施形態において、本発明は、組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドであって、各Fc含有ポリペプチドが、CH3−CH3二量体化界面において、同一のまたは異なる操作されたN連結型グリコシル化部位を含み、各Fc含有ポリペプチドが、C−N末端を介して直接的に組換えによって連結している、ポリペプチドを提供する。したがって、一部の実施形態において、各Fc含有ポリペプチドは、操作されたN連結型グリコシル化部位S364NおよびY407N−X−K409T(例えば、配列番号77〜78を参照されたい)またはS364N−X−T366SおよびY407N−X−K409Tを含む。一部の実施形態において、第1のFc含有ポリペプチドは、操作されたN連結型グリコシル化部位S364NおよびY407N−X−K409Tを含み、第2のFc含有ポリペプチドは、操作されたN連結型グリコシル化部位S364N−X−T366SおよびY407N−X−K409Tを含む。
【0069】
組換えによって連結した2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドは、操作されたN連結型グリコシル化部位を含まない野生型IgGのアフィニティーに類似の高いアフィニティーでFcRnに結合する。実施例5を参照されたい。本明細書において記載されるこのようなポリペプチドはまた、酸性pHでFcRnに堅く結合し、中性pHでFcRnから効率的に解離し1つの操作された単量体Fcを含むポリペプチドよりも少なくとも2倍長い血清半減期を示す。例えば、実施例5〜6を参照されたい。したがって、一部の実施形態において、組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドは、2つの操作されたN連結型グリコシル化部位を含む1つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドによって示される血清半減期よりも少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、および9倍のいずれか長い血清半減期を有する。
【0070】
Fcドメインを含むいかなる分子も、本発明の単量体Fc含有ポリペプチドを含み得る。例えば、単量体Fc含有ポリペプチドは、例えばFabまたは異種ポリペプチド配列(例えば、Fc融合タンパク質)に連結、コンジュゲート、または融合し得る。したがって、一部の実施形態において、Fabは、CH3−CH3二量体化界面においてまたはCH2−CH2界面とCH3−CH3二量体化界面との両方において1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位を含む単量体Fc含有ポリペプチドに融合する。例えば、実施例5および6を参照されたい。他の実施形態において、Fabは、組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドに融合する。例えば、実施例5および6を参照されたい。
【0071】
他の実施形態において、単量体Fc含有ポリペプチドは、別のポリペプチドまたは分子作用物質に連結した単量体Fc含有ポリペプチドの全てまたは一部を含む融合抗体またはイムノアドヘシンを作製することなどによって、修飾または誘導体化され得る。本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドは、より安定な融合分子を生産することによって、かつ/または、一般的に「ペグ化」と呼ばれる、ポリエチレングリコール(PEG)などの生体適合性ポリマーでの処理によって、または当技術分野において周知の多くの他の操作方法のいずれかによって、例えばインビボ半減期をさらに延ばすために、修飾または誘導体化され得る。
【0072】
単量体Fc含有融合タンパク質は、周知の技術を用いて、限定はしないがポリエチレングリコール(PEG)、メチル基またはエチル基、エステル、糖質基などを含む、化学基で誘導体化され得る。これらの化学基(および、インビボで治療用化合物を安定化するために用いられている、それに類似の他のもの)は、単量体Fc含有ポリペプチドの生物学的特徴を向上させるため、例えば血清半減期および生物活性を増大させるために、有用である。
【0073】
単量体Fc含有融合タンパク質はまた、当技術分野において知られている多数の方法のいずれかを用いて標識され得る。本明細書において用いられる場合、用語「標識する」または「標識された」は、抗体内への別の分子の組み込みを指す。1つの実施形態において、標識は、検出可能なマーカー、例えば、放射性標識されたアミノ酸の組み込み、またはマーカー付けされたアビジン(例えば、光学的方法または比色分析方法によって検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出され得るビオチニル部分のポリペプチドへの付着である。別の実施形態において、標識またはマーカーは、治療用のもの、例えば、薬剤コンジュゲートまたは毒素であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が、当技術分野において知られており、使用され得る。ポリペプチドの標識の例には、限定はしないが、放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、第2のレポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、磁気作用物質、例えばガドリニウムキレート、毒素、例えば百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにその類似体またはホモログが含まれる。一部の実施形態において、標識は、潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサーアームによって付着される。
【0074】
本発明の別の態様において、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドは、例えばPCT公開WO98/52976およびWO00/34317において記載されているもののような既知の技術を用いて、対象に投与する際の免疫原性を低減するために脱免疫化され得る。
【0075】
本発明の別の態様において、単量体Fc含有ポリペプチドは、ポリペプチドの特徴(例えば、PK、免疫原性、凝集、または血清半減期)を改変するためにさらなる突然変異および/または修飾を含み得る。例えば、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドは、428位にロイシン、および434位にセリンをさらに含み得る。例えば、米国特許第8,088,376号を参照されたい。
【0076】
核酸、ベクター、および細胞
本発明はまた、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドをコードする核酸分子および核酸配列を包含する。一部の実施形態において、異なる核酸分子が、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドの1つもしくは複数または一部をコードする。他の実施形態において、同一の核酸分子が、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドをコードする。
【0077】
本発明の核酸分子には、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、例えば、本発明の核酸配列に少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%、またはそれ以上同一な核酸が含まれる。
【0078】
核酸配列の文脈における用語「配列同一性パーセント」は、最大の対応でアラインされた場合に同一である、2つの配列における残基を意味する。配列同一性の比較の長さは、一続きの少なくとも約9ヌクレオチド、通常は少なくとも約18ヌクレオチド、さらに通常は少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、さらに典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、そして好ましくは少なくとも約36、48、またはそれ以上のヌクレオチドにわたり得る。ヌクレオチド配列の同一性を測定するために用いることができる、当技術分野において知られている多くの異なるアルゴリズムが存在する。例えば、ポリヌクレオチド配列は、Wisconsin Package Version 10.0、Genetics Computer Group(GCG)、マディソン、ウィスコンシン州のプログラムであるFASTA、Gap、またはBestfitを用いて比較することができる。例えばプログラムFASTA2およびFASTA3を含むFASTAは、クエリー配列とサーチ配列との間の最良のオーバーラップの領域のアラインメントおよび配列同一性パーセントを提供する(参照することによって本明細書に組み込まれる、Pearson、Methods Enzymol.183:63〜98(1990);Pearson、Methods Mol.Biol.132:185〜219(2000);Pearson、Methods Enzymol.266:227〜258(1996);Pearson、J.Mol.Biol.276:71〜84(1998))。別段の特定がない限り、特定のプログラムまたはアルゴリズムのデフォルトパラメータが用いられる。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、参照することによって本明細書に組み込まれる、FASTAをそのデフォルトパラメータ(語長6およびスコアリングマトリクスのためのNOPAM因子)と共に用いて、またはGapをGCG Version 6.1において提供されているそのデフォルトパラメータと共に用いて、決定することができる。
【0079】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドの1つまたは複数または一部をコードする核酸配列を含むベクターを提供する。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドの1つまたは複数または一部を発現するために適切なベクターを提供する。
【0081】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、特異的アミノ酸配列、例えば、CH2および/またはCH3ドメイン領域などの特異的抗体配列のためのプローブまたはPCRプライマーとして用いられる。例えば、核酸は、診断方法におけるプローブとして、または有用な配列をコードするさらなる核酸分子をとりわけ単離するために用いられ得る、DNAの領域を増幅するためのPCRプライマーとして、用いることができる。一部の実施形態において、核酸分子は、オリゴヌクレオチドである。一部の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、目的の抗体の重鎖のCH2および/またはCH3ドメイン領域に由来する。一部の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、単量体Fc含有ポリペプチドの修飾されたCH3領域の1つまたは複数の全てまたは一部をコードする。
【0082】
本発明の組換え発現ベクターは、一部の実施形態において、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有し得る。当業者には、調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要素に応じ得ることが、理解されよう。哺乳動物宿主細胞の発現のための好ましい調節配列には、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、レトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマに由来する、プロモーターおよび/またはエンハンサー、ならびに強力な哺乳動物プロモーター、例えば非変性免疫グロブリンおよびアクチンプロモーターが含まれる。ウイルスの調節エレメントのさらなる説明およびその配列については、例えば、米国特許第5,168,062号、米国特許第4,510,245号、および米国特許第4,968,615号を参照されたい。プロモーターおよびベクターの説明、ならびに植物の形質転換を含む、植物において抗体を発現させるための方法は、当技術分野において知られている。例えば、US6,517,529を参照されたい。細菌細胞または真菌細胞、例えば酵母細胞においてポリペプチドを発現させるための方法もまた、当技術分野において周知である。
【0083】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)および選択マーカー遺伝子を有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、米国特許第4,634,665号、および米国特許第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。例えば、選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(dhfr
−宿主細胞におけるメトトレキサート選択/増幅との使用のため)、neo遺伝子(G418の選択のため)、およびグルタミン酸合成酵素遺伝子が含まれる。
【0084】
本明細書において用いられる用語「発現制御配列」は、ポリヌクレオチド配列であって、それらがライゲーションされるコード配列の発現およびプロセシングを生じさせるために必要である、ポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列には、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列、効率的なRNAプロセシングシグナル、例えばスプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナル、細胞質mRNAを安定化させる配列、翻訳効率を増強させる配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列)、タンパク質の安定性を増強させる配列、ならびに望ましい場合は、タンパク質の分泌を増強させる配列が含まれる。このような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なり、原核生物においては、このような制御配列には、通常、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が含まれ、真核生物においては、通常、このような制御配列には、プロモーターおよび転写終結配列が含まれる。用語「制御配列」は、最低でも、その存在が発現およびプロセシングに必須の全構成要素を含むことが意図され、また、その存在が有利であるさらなる構成要素、例えばリーダー配列および融合パートナー配列も含み得る。
【0085】
単量体Fc含有ポリペプチドを生産する方法
1つの態様において、本発明は、単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドを生産する方法を提供する。
【0086】
一部の実施形態において、a)IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む単量体Fc含有ポリペプチドをコードする核酸分子を含む宿主細胞を培養するステップであって、CH3ドメインが、CH3−CH3二量体化界面においてまたはCH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方において1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位を含み培養された宿主細胞が単量体Fc含有ポリペプチドを発現する、ステップ、ならびに、場合により、b)宿主細胞培養物から単量体Fc含有ポリペプチドを回収するステップを含む、単量体Fc含有ポリペプチドを生産する方法が提供される。一部の実施形態において、操作されたN連結型グリコシル化部位は、XがProを除く任意のアミノ酸であるAsn−X−SerまたはAsn−X−Thrのコンセンサス配列を有する、1つまたは複数の(例えば2つの)アミノ酸修飾を含む。
【0087】
一部の実施形態において、a)IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む第1の単量体Fc含有ポリペプチドをコードする核酸分子、ならびに第1の単量体Fc含有ポリペプチドと同一のまたは異なる操作されたN連結型グリコシル化部位を有する第2の単量体Fc含有ポリペプチドをコードする同一のまたは異なる核酸分子を含む宿主細胞を培養するステップであって、CH3ドメインが、CH3−CH3二量体化界面においてまたはCH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方において1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位を含み、培養された宿主細胞が、第1およびの第2の単量体Fc含有ポリペプチドを発現する、ステップ、ならびにb)ポリペプチドを回収するステップを含む、組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドを生産する方法が提供される。一部の実施形態において、操作されたN連結型グリコシル化部位は、XがProを除く任意のアミノ酸であるAsn−X−SerまたはAsn−X−Thrのコンセンサス配列を有する、1つまたは複数の(例えば2つの)アミノ酸修飾を含む。一部の実施形態において、第1および第2の単量体Fc含有ポリペプチドは、C−N末端連結を介して、または本明細書において開示されているリンカーを用いてリンカーを介して、組換えによって連結されている。
【0088】
一部の実施形態において、a)IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む第1の単量体Fc含有ポリペプチドを第1の宿主細胞において発現させるステップであって、CH3ドメインが、CH3−CH3二量体化界面においてまたはCH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方において1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位を含む、ステップ、b)第1の単量体Fc含有ポリペプチドと同一のまたは異なる操作されたN連結型グリコシル化部位を有する第2の単量体Fc含有ポリペプチドを第2の宿主細胞において発現させるステップ、c)ステップa)の第1の単量体Fc含有ポリペプチドおよびステップb)の第2の単量体Fc含有ポリペプチドを単離するステップ、ならびにd)ポリペプチドの形成のために(例えば、組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチド)、ステップc)の2つの単量体Fc含有ポリペプチドを適切な条件下でインキュベートするステップを含む、組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドを生産する方法が提供される。一部の実施形態において、XがProを除く任意のアミノ酸であるAsn−X−SerまたはAsn−X−Thrのコンセンサス配列を有する、操作されたN連結型グリコシル化部位は、1つまたは複数の(例えば2つの)アミノ酸修飾を含む。一部の実施形態において、ステップc)の2つの単量体Fc含有ポリペプチドは、本明細書において開示されているリンカー(例えば、nが1〜10である(GGGGS)
n(配列番号89))の存在下でインキュベートされる。
【0089】
一部の実施形態において、a)IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む第1の単量体Fc含有ポリペプチドを提供するステップであって、CH3ドメインが、CH3−CH3二量体化界面においてまたはCH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方において1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位を含む、ステップ、b)IgG CH2ドメインおよびIgG CH3ドメインを含む第2の単量体Fc含有ポリペプチドを提供するステップであって、CH3ドメインが、CH3−CH3二量体化界面においてまたはCH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方において1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位を含む、ステップ、c)第1の単量体Fc含有ポリペプチドを、第2の単量体Fc含有ポリペプチドと組換えによって連結させるステップを含む、組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドを生産する方法が提供される。一部の実施形態において、第1の単量体Fc含有ポリペプチドは、第2の単量体Fc含有ポリペプチドと同一であるか、または異なる。一部の実施形態において、操作されたN連結型グリコシル化部位は、XがProを除く任意のアミノ酸であるAsn−X−SerまたはAsn−X−Thrのコンセンサス配列を有する1つまたは複数の(例えば2つの)アミノ酸修飾を含む。一部の実施形態において、第1および第2の単量体Fc含有ポリペプチドは、C−N末端連結を介して、または本明細書において開示されているリンカーを用いてリンカーを介して、組換えによって連結されている。
【0090】
一部の実施形態において、本明細書において記載される方法は、さらに、クロマトグラフィーによる精製ステップを含む。
【0091】
クロマトグラフィーには、限定はしないが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、液相クロマトグラフィー(例えば、HPLC(高性能(または圧力)液体クロマトグラフィー)およびFPLC(高速タンパク質液体クロマトグラフィー))、サイズ排除クロマトグラフィー、ならびに弱分配クロマトグラフィーが含まれる。アフィニティークロマトグラフィーのためのカラムの例には、プロテインA(合成、組換え、または非変性)カラム、およびプロテインG(合成、組換え、または非変性)カラムが含まれる。
【0092】
当業者であれば、周知の技術を用いて、本明細書において開示されている方法に従って用いるための分子または抗体の相対量を容易に決定することができる。
【0093】
本明細書において開示される方法において、インキュベーションは、さまざまな温度で行うことができる。このような温度は、当業者によって認識され、例えば、混合された分子または抗体において変性または分解などの有害な物理的変化が生じないインキュベーション温度を含む。特定の実施形態において、インキュベーションは、37℃で行われる。
【0094】
多くの宿主細胞のいずれも、本発明の方法において用いることができる。このような細胞は、当技術分野において知られている(そのうちの一部は本明細書において記載されている)か、または、当技術分野において知られている通常の技術を用いて、本発明の方法において用いるための適合性に関して経験的に決定され得る。特定の実施形態において、宿主細胞は原核細胞である。一部の実施形態において、宿主細胞はグラム陰性細菌細胞である。他の実施形態において、宿主細胞は大腸菌(E.coli)である。一部の実施形態において、大腸菌は、内因性プロテアーゼ活性を欠いている株のものである。一部の実施形態において、大腸菌宿主細胞の遺伝子型は、degP遺伝子およびprc遺伝子を欠いており、突然変異spr遺伝子を有する。
【0095】
一部の実施形態において、本発明の方法は、さらに、宿主細胞において発現すると本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドの収量を増強させる分子をコードするポリヌクレオチドまたは組換えベクターを宿主細胞において発現させることを含む。例えば、このような分子は、シャペロンタンパク質であり得る。1つの実施形態において、前記分子は、DsbA、DsbC、DsbG、およびFkpAからなる群から選択される原核生物ポリペプチドである。これらの方法の一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DsbAとDsbCとの両方をコードする。
【0096】
非ハイブリドーマ宿主細胞およびタンパク質を組換えによって生産する方法
1つの態様において、本発明は、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドの組換え発現を可能にする組換え宿主細胞を提供する。このような組換え宿主細胞におけるこのような組換え発現によって生産された抗体断片は、本明細書において、「組換え抗体断片」と呼ばれる。本発明はまた、このような宿主細胞の子孫細胞、およびこの子孫細胞によって生産される抗体を提供する。本明細書において用いられる用語「組換え宿主細胞」(または単純に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を意味する。「組換え宿主細胞」および「宿主細胞」が、特定の対象細胞だけではなく、このような細胞の子孫も意味することが理解される。特定の修飾が、突然変異または環境的影響のいずれかに起因して、後の世代において生じ得るため、このような子孫は、実際には、親細胞に同一ではない可能性があるが、本明細書において用いられる用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。このような細胞は、上記のような本発明に従ったベクターを含み得る。
【0097】
別の態様において、本発明は、上記のような単量体Fc含有ポリペプチドを作製するための方法を提供する。1つの実施形態によると、前記方法は、上記のようなベクターでトランスフェクトまたは形質転換された細胞を培養すること、およびその前記単量体Fc含有ポリペプチドを回収することを含む。単量体Fc含有ポリペプチドをコードする核酸分子、およびこれらの核酸分子を含むベクターは、適切な哺乳動物宿主細胞、植物宿主細胞、細菌宿主細胞、または酵母宿主細胞のトランスフェクションに用いることができる。形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入するためのあらゆる既知の方法によるものであり得る。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞内に導入するための方法は、当技術分野において周知であり、デキストラン介在性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン介在性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内でのポリヌクレオチドのカプセル化、および核内へのDNAの直接的なマイクロインジェクションを含む。さらに、核酸分子は、ウイルスベクターによって哺乳動物細胞内に導入することができる。細胞を形質転換する方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、米国特許第4,912,040号、米国特許第4,740,461号、および米国特許第4,959,455号を参照されたい。植物細胞を形質転換する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、アグロバクテリウム介在性の形質転換、微粒子銃形質転換、直接的な注入、エレクトロポレーション、およびウイルス形質転換を含む。細菌細胞および酵母細胞を形質転換する方法もまた、当技術分野において周知である。
【0098】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は、当技術分野において周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系を含む。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK−293T細胞、293 Freestyle細胞(Invitrogen)、NIH−3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌腫細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、および多くの他の細胞系が含まれる。特に好ましい細胞系は、どの細胞系が高い発現レベルを有するかを決定することを介して選択される。用いることができる他の細胞系は、Sf9細胞またはSf21細胞などの昆虫細胞系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞内に導入される場合、抗体は、宿主細胞における抗体の発現、またはさらに好ましくは宿主細胞が成長する培養培地内への抗体の分泌を可能にするために十分な一定期間にわたって宿主細胞を培養することによって生産される。抗体(例えば、単量体抗体断片)は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、培養培地から回収することができる。適切な植物宿主細胞には、例えば、タバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、アオウキクサ、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモなどが含まれ得る。適切な細菌宿主細胞には、例えば、大腸菌およびストレプトミセス属(Streptomyces)種が含まれ得る。適切な酵母宿主細胞には、例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれ得る。
【0099】
生産細胞系からの本発明のポリペプチドまたはその一部分の発現は、多くの既知の技術を用いて増強させることができる。例えば、グルタミン合成酵素遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下での発現を増強させるための一般的なアプローチである。GS系は、欧州特許第0216846号、欧州特許第0256055号、欧州特許第0323997号、および欧州特許第0338841号に関連して、全体または一部が論じられている。
【0100】
単量体Fc含有ポリペプチドを使用する方法
本発明はまた、単量体Fc含有ポリペプチド、および組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドのための、様々な治療用途を提供する。1つの態様において、単量体Fc含有ポリペプチド、またはこのようなFc含有ポリペプチドを含むポリペプチドは、充実性腫瘍もしくは他の閉塞抗原内への、フルサイズの抗体と比較して良好な浸透およびアクセスを提供するため、またはフルサイズの抗体もしくは本明細書において記載される特異的な操作されたN連結型グリコシル化部位を有さない単量体Fc含有ポリペプチドと比較して凝集および不安定性を低減させるために用いることができる。
【0101】
医薬組成物
1つの態様において、本発明は、薬学的に許容できる担体内に、単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドを含む、医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、中性形態(両性イオン形態を含む)で、または正もしくは負に荷電した種として、存在し得る。一部の実施形態において、本明細書において記載されるポリペプチドは、対イオンと複合して「薬学的に許容できる塩」を形成し得、この塩は、1つまたは複数のポリペプチドおよび1つまたは複数の対イオンを含む複合体を指し、対イオンは、薬学的に許容できる無機および有機の酸および塩基に由来する。
【0102】
単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドは、単独で、または1つもしくは複数の他の本発明のポリペプチドと組み合わせて、または1つもしくは複数の他の薬剤と組み合わせて(または、そのあらゆる組み合わせとして)投与することができる。本発明の医薬組成物、方法、および使用は、したがって、以下に詳述するように、他の活性物質との組み合わせ(同時投与)の実施形態も包含する。
【0103】
本明細書において用いられる場合、本発明の単量体抗体断片および1つまたは複数の他の治療物質に関する、用語「同時投与」、「同時投与された」、および「と組み合わせて」は、(i)単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドと、治療物質とのこのような組み合わせの、治療を必要としている患者への同時の投与(このような構成要素が、前記構成要素を実質的に同時に前記患者に放出する単回投薬形態に、共に製剤される場合)、(ii)単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドと、治療物質とのこのような組み合わせの、治療を必要としている患者への、実質的に同時の投与(このような構成要素が、前記患者によって実質的に同時に摂取され、その際、前記構成要素が前記患者に実質的に同時に放出される、分離した投薬形態に、互いに分かれて製剤される場合)、(iii)単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドと、治療物質とのこのような組み合わせの、治療を必要としている患者への、連続投与(このような構成要素が、各投与の間に十分な時間間隔を置いて前記患者によって連続的な時点で摂取され、その際、前記構成要素が実質的に異なる時点で前記患者に放出される、分離した投薬形態に、互いに分かれて製剤される場合)、ならびに(iv)単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドと、治療物質とのこのような組み合わせの、治療を必要としている患者への、連続投与(このような構成要素が、前記構成要素を制御された様式で放出し、その際、構成要素が、同一のおよび/または異なる時点で、同時に、連続して、および/または重複して、前記患者に放出され、各部分が、同一のまたは異なる経路によって投与され得る、単回投薬形態に、共に製剤される場合)を意味することを意図したものであり、かつこれを指し、かつこれを含む。
【0104】
通常、単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドは、1つまたは複数の薬学的に許容できる添加剤を伴う製剤として投与されるのに適している。用語「添加剤」は、本発明の化合物以外のあらゆる成分を記載するために、本明細書において用いられる。添加剤の選択は、特定の投与態様、溶解度および安定性に対する添加剤の効果、ならびに投薬形態の性質などの要素に大きく依存する。本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容できる添加剤」には、生理学的に適合するあらゆるおよび全ての溶媒、分散媒質、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容できる添加剤の一部の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝溶液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびその組み合わせである。多くのケースにおいて、組成物内に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。薬学的に許容できる物質のさらなる例は、湿潤剤または微量の補助物質、例えば、抗体の保存期間または有効性を増強させる、湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤、または緩衝剤である。
【0105】
本発明の医薬組成物およびそれを調製するための方法は、当業者に容易に明らかとなろう。このような組成物およびそれを調製するための方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第21版(Mack Publishing Company、2005)において見ることができる。医薬組成物は、好ましくは、GMP条件の下で製造される。
【0106】
本発明の医薬組成物は、単回単位用量として、または複数の単回単位用量として、バルクで、調製、包装、または販売され得る。本明細書において用いられる場合、「単位用量」は、所定の量の活性成分を含む、医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、通常、対象に投与される活性成分の投与量、またはこのような投与量の都合の良い画分、例えばこのような投与量の2分の1もしくは3分の1に等しい。当技術分野において許容される、ペプチド、タンパク質、または抗体を投与するためのいかなる方法も、本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドに適切に採用され得る。
【0107】
本発明の医薬組成物は、典型的には、非経口投与に適している。本明細書において用いられる場合、医薬組成物の「非経口投与」には、対象の組織の物理的破損、および組織における破損を介する医薬組成物の投与によって特徴付けされ、その結果、血流内、筋肉内、または内臓内への直接的な投与を通常もたらす、あらゆる投与経路が含まれる。非経口投与には、したがって、限定はしないが、組成物の注入による、外科的切開を介する組成物の適用による、組織を貫通する非外科的創傷を介する組成物の適用による、およびそれに類するものによる、医薬組成物の投与が含まれる。具体的には、非経口投与には、限定はしないが、皮下の、腹腔内の、筋肉内の、胸骨内の、静脈内の、動脈内の、髄腔内の、脳室内の、尿道内の、頭蓋内の、滑液嚢内の注入または点滴、および腎臓透析点滴技術が含まれることとする。好ましい実施形態には、静脈内経路および皮下経路が含まれる。
【0108】
非経口投与に適切な医薬組成物の製剤は、典型的には、通常、薬学的に許容できる担体、例えば滅菌水または無菌等張生理食塩水と組み合わされた活性成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適切な形態で調製、包装、または販売され得る。注入可能な製剤は、単位投与形態で、例えば、アンプルで、または防腐剤を含有する多回用量容器で、調製、包装、または販売され得る。非経口投与のための製剤には、限定はしないが、懸濁剤、液剤、油性媒体または水性媒体内の乳剤、パスタ剤などが含まれる。このような製剤は、さらに、限定はしないが、懸濁化剤、安定化剤、または分散剤を含む、1つまたは複数のさらなる成分を含み得る。非経口投与のための製剤の1つの実施形態において、活性成分は、適切な媒体(例えば、発熱性物質を含まない滅菌水)で再構成し、その後、再構成された組成物を非経口投与するために、乾燥(すなわち、粉末または粒状)形態で提供される。非経口製剤にはまた、塩、糖質、および緩衝化剤(好ましくは、3から9のpHまで)などの添加剤を含有し得る水溶液が含まれるが、一部の適用では、非経口製剤は、無菌非水溶液として、または発熱性物質を含まない滅菌水などの適切な媒体と組み合わせて用いるための乾燥形態として、より適切に製剤され得る。典型的な非経口投与形態には、無菌水溶液中の溶液または懸濁液、例えば、プロピレングリコール水溶液またはデキストロース水溶液が含まれる。このような投薬形態は、必要に応じて、適切に緩衝され得る。他の有用な非経口投与可能な製剤には、微晶質形態の、またはリポソーム調製物中の活性成分を含むものが含まれる。非経口投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出されるように製剤され得る。調節放出製剤には、制御放出製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、標的放出製剤、およびプログラム放出製剤が含まれる。例えば、1つの態様において、単量体Fc含有ポリペプチドを、適切な溶媒中に所要の量で、上記に列挙された成分の1つまたは組み合わせと共に組み込み、必要に応じて、その後、濾過滅菌することによって、無菌注入可能溶液を調製することができる。通常、分散体は、活性化合物を、塩基性分散媒質および上記に列挙されたものからの所要の他の成分を含有する無菌媒体中に組み込むことによって調製される。無菌注入可能溶液の調製のための無菌粉末のケースでは、好ましい調製方法は、先に滅菌濾過された溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を用いることによって、分散体のケースでは所要の粒子サイズを維持することによって、および界面活性を用いることによって、維持することができる。注入可能組成物の吸収の延長は、組成物中に吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって、もたらされ得る。
【0109】
典型的な、非限定的な本発明の医薬組成物は、約5.0から約6.5の範囲のpHを有し、約1mg/mLから約200mg/mLの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチド、約1ミリモルから約100ミリモルのヒスチジン緩衝液、約0.01mg/mLから約10mg/mLのポリソルベート80、約100ミリモルから約400ミリモルのトレハロース、および約0.01ミリモルから約1.0ミリモルのEDTA二ナトリウム二水和物を含む、無菌水溶液として製剤される。
【0110】
投薬レジメンは、最適な所望の応答をもたらすように調整され得る。例えば、単回ボーラスが投与され得るか、複数回の分割用量が経時的に投与され得るか、または、用量は、治療状況の緊急的要件によって指示されるように比例的に低減もしくは増大し得る。投与を容易にするため、および投薬の均一性のために、非経口組成物を投薬単位形態で製剤することが特に有利である。本明細書において用いられる投薬単位形態は、治療される患者/対象のための単位投与量として適している物理的に個別の単位を指し、各単位は、所要の薬学的担体を伴って所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の投薬単位形態についての仕様は、(a)化学療法剤の固有の特徴、および達成されるべき特定の治療的または予防的効果、ならびに(b)個体における感受性の治療のためのこのような活性化合物の配合の分野に固有の制限によって、通常決定され、またそれに直接的に左右される。
【0111】
したがって、当業者には、本明細書において提供される開示に基づいて、用量および投薬レジメンが、治療分野において周知の方法に従って調整されることが理解されよう。すなわち、最大耐用量は容易に確立することができ、検出可能な治療利益を患者に提供する有効量はまた、検出可能な治療利益を患者にもたらすために各作用物質を投与するための時間的要求を決定することができるように、決定することができる。したがって、特定の用量および投与レジメンが本明細書において例示されるが、これらの例は、本発明の実施において患者に提供され得る用量および投与レジメンを限定するものでは決してない。
【0112】
投与量の値は、軽減するべき状態のタイプおよび重症度に応じて変化し得、単回投与または複数回投与を含み得ることに留意されたい。あらゆる特定の対象に対して、具体的な投薬レジメンが、個体の要求および投与する人または組成物の投与を監督する人の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであること、ならびに本明細書において示される投与量の範囲は典型的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載の組成物の範囲または実施を限定することを意図したものではないことがさらに理解される。さらに、本発明の組成物を用いる投薬レジメンは、疾患のタイプ、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、状態の重症度、投与経路、および採用される特定の抗体を含む様々な要素に基づき得る。したがって、投薬レジメンは広く変化し得るが、標準的な方法を用いて通常通り決定することができる。例えば、用量は、毒性効果などの臨床効果および/または臨床検査値を含み得る薬物動態学的パラメータまたは薬力学的パラメータに基づいて調整することができる。したがって、本発明は、当業者によって決定される、患者内での用量増加を包含する。適切な投与量およびレジメンの決定は、関連分野において周知であり、本明細書において開示されている教示がひとたび提供された当業者には、包含されていることが理解される。
【0113】
ヒト対象への投与では、単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドの一月総用量は、当然のことながら投与態様に応じて、典型的には、患者当たり約0.5から約1500mgの範囲である。例えば、静脈内の一月用量は、患者当たり約1から約1000mgを要し得る。一月総用量は、単回用量または分割用量で投与することができ、また、医師の裁量で、本明細書において示される典型的範囲から逸脱してもよい。
【0114】
単量体Fc含有ポリペプチド、または組換えによって連結した少なくとも2つの本明細書において記載される単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドの治療的または予防的に有効な量の、例示的な非限定的範囲は、一月当たり、患者当たり約1から約1000mgである。特定の実施形態において、単量体Fc含有ポリペプチドまたはそれを含むポリペプチドは、一月当たり、患者当たり約1から約200、または約1から約150mgで投与され得る。
【実施例】
【0115】
以下の実施例は、CH3−CH3二量体化界面においてまたはCH3−CH3二量体化界面とCH2−CH2界面との両方において1つまたは複数の操作されたN連結型グリコシル化部位を含む、単量体Fc含有ポリペプチドの生成および特徴付けを記載する。組換えによって連結した少なくとも2つの単量体Fc含有ポリペプチドを含むポリペプチドの生成および特徴付けもまた提供される。以下に提供される実施例は、本発明の方法および材料を説明するためのものである。当業者に自明の、当技術分野において通常遭遇する記載された条件およびパラメータの適切な変更および適合は、本発明の趣旨および範囲のうちにある。
【0116】
(実施例1)
CH3−CH3界面内にN−グリコシル化部位を組み込むことによる、本来は二量体であるFcの単量体化
糖鎖工学戦略を用いて、抗体のFcドメインの安定な単量体形態を操作した。さらに具体的には、嵩高い親水性の糖質部分を、Fcの二量体形態を単量体形態に分離していたCH3−CH3界面内に導入した。驚くべきことに、この糖鎖工学はまた、CH3ドメインの暴露された界面を安定化させた。4つの基準を採用して、(Asn−X−Ser/Thrの基準のN連結型グリコシル化シグナル配列を生じさせるために)どこにN−グリコシル化突然変異部位を組み込むかを決定した。第一に、Igドメイン核内に埋まっている残基、または溶媒に暴露されている残基が選択されることを回避するために、CH3−CH3の界面上に位置する残基を同定した(
図1)。ヒトガンマ1Fc(PDB ID:1HZH)の結晶構造を用いて、プログラムMOE(Chemical Computing Group)で、両Fc二量体(非変性形態)における、およびFc二量体の一方の鎖(すなわち、仮想のFc単量体)における各残基のアクセス可能な表面のパーセント(%ASA)を計算した。より高い%ASA(二量体)を有する残基は、溶媒に暴露されている残基である。高い%ASA(単量体)値を有する残基ほど、溶媒に暴露されているかまたはC
H3−C
H3界面内に埋まっている可能性が高いと仮定された。したがって、界面の関与の程度を、ΔASA=%ASA(単量体)−%ASA(二量体)としてFc二量体の%ASAから単量体の%ASAを差し引くことによって決定し、ΔASAが閾値である10%を超えた22の界面残基を選択した。表1を参照されたい。第二に、プロリン残基、グリシン残基、およびシステイン残基は通常、タンパク質の構造的フレームワークの維持において重要な役割を有するため、これらの残基の突然変異生成を回避した。第三に、グリコシル化の占有の可能性を考慮した。残基Asn−X−Ser/Thr−Yを、X(AsnとSer/Thrとの間に位置するアミノ酸)もY(Ser/Thrの次に位置するアミノ酸)もプロリン残基ではない領域内に組み込み、それは、これらの位置にあるプロリンはグリコシル化効率を強力に阻害するためである。Asn−X−Ser/Thrの基準のN連結型グリコシル化シグナル配列の第3の位置(すなわち、Ser/Thr)にある残基が突然変異していなくてはならない場合、スレオニンがセリンよりも選択され、それは、第3の位置にあるスレオニンが第3の位置にあるセリンよりもアスパラギン残基でのより高いグリカン占有をもたらすことが示されているためである。最後に、残基をFcドメインの一方の鎖の三次元構造上でマッピングし、手作業で調べ、操作された糖質がCH3−CH3界面を分離するためにほとんど影響を有し得なかった位置(Leu
256およびAsp
276)を排除した。したがって、全部で9つの位置を、N−グリコシル化のために合理的に選択した。これらの選択された残基は、ヒトIgGの全アイソタイプ(1、2、3、および4)ならびにマウスIgG(2、2a、2b、および3)アイソタイプの間でよく保存されている(
図2)。個々のN−グリコシル化突然変異体は、ヒンジ領域(Gly
226からLys
497)を有さないヒトIgG1およびIgG4のFcドメインを鋳型として用いることによって構築した。これらのペプチドをコードする核酸を、HEK293細胞において一過性発現させた。N−グリコシル化の発現および効率を評価するために、培地上清を、還元条件下でのSDS−PAGE、およびウェスタンブロット分析にかけた。全ての突然変異体の発現レベルは、366位の突然変異体の発現が弱かったことを除いて、野生型Fcドメインに類似していた。N−グリコシル化変異体はおよそ25kDaの分子量に対応する移動度で移動したが、非グリコシル化変異体はおよそ22kDa移動したようであった。5つの部位(364、366、368、405、および407)は効率的なN−グリコシル化を示したが、4つの部位(347、390、401、409)はN−グリカンのおよそ50%以下の組み込みを示した。IgG1突然変異体およびIgG4突然変異体の発現およびグリコシル化のプロファイルは類似であったため、IgG1突然変異体をさらなる研究のために用いた。
【0117】
【表1】
【0118】
(実施例2)
N−グリコシル化変異体の特徴付け
完全なN−グリコシル化を有する4つの突然変異体(364位、368位、405位、および407位)を、さらなる精製および特徴付けのために選択した。CH23−N364(Fc−S364N)、CH23−N368(Fc−L368N/K370T)、CH23−N405(Fc−F405N/Y407T)、およびCH23−N407(Fc−Y407N/K409T)として示されるこれらのN−グリコシル化突然変異体を、本明細書の他の箇所に記載されるように精製し、SDS−PAGEによって判断される95%超の純度を得た。精製タンパク質の収量は、培地1リットル当たり20〜30mgの範囲であった。各位置でのグリコシル化変異体および非グリコシル化変異体の相対的収量を評価するために、PNGase Fの処理を行わない、および行う、精製タンパク質のキャピラリーゲル電気泳動(CGE)アッセイを行った。本明細書において開示されているデータは、これらの4つの突然変異体が最大10%の非グリコシル化変異体を含有することを示唆しており、これは、野生型Fcに類似している(表2)。分析用サイズ排除カラム(SEC)を用いて、N−グリコシル化変異体の見かけの分子量を推定した。4つの突然変異体の全ては、野生型Fc(約48kDa)よりも低い見かけの分子量(25〜30kDa)を示し、このことは、組み込まれたN−グリコシル化がFc二量体のCH3−CH3界面を破壊するのに成功したことを示唆する。N−グリコシル化突然変異体はSECによって単量体であると思われたが、SEC−MALS(サイズ排除クロマトグラフィー多角度光散乱検出器)を用いて、これらの突然変異体のオリゴマー種の分布のさらに厳密な分析を行った。屈折率のシグナル全体にわたる光散乱により決定された分子量は、CH23−N405が完全に単量体であることを示したが、CH23−N364、CH23−N405、およびCH23−N407は単量体形態と二量体形態との混合物であることが分かった。これらの4つのN−グリコシル化突然変異体の熱安定性を、示差走査熱量測定(DSC)によってさらに特徴付けした。野生型Fcのサーモグラムは、72℃および83℃の融解温度での2つの転移を示した。これらの値は、CH2ドメインおよびCH3ドメインの融解に割り当てられている70.8℃および83.3℃の値と同程度であった。逆に、個々のN−グリコシル化突然変異体は、より低い融解温度での単一の転移を示した(表2)。
【0119】
【表2】
【0120】
(実施例3)
複数のN−グリコシル化部位の組み合わせ
各変異体の非グリコシル化部分をさらに最小にするために、CH3ドメイン内の2つのN−グリコシル化部位を、364位、368位、405位、および407位での個々の突然変異を介して導入し、その結果、グリコシル化の90%から95%の占有を得た。
図3は、CH3ドメインの界面におけるSer
364、Leu
368、Phe
405、およびTyr
407の特別なアラインメントを強調する。これらの所見に基づいて、368、405、および407のうちの2つの部位にある2つの糖質部分が構造をさらに不安定化させることが仮定され、それは、これらの3つの残基が互いにごく接近して位置しているためである。したがって、これらのN連結型部位の3つの組み合わせ、すなわち、N364およびN368、N364およびN405、ならびにN364およびN407を、2つのN−グリコシル化部位の組み込みのために選択した。これらの3つの二重N−グリコシル化突然変異体、すなわち、CH23−N364/N368、CH23−N364/N405、およびCH23−N364/N407を、HEK293細胞において発現させ、ウェスタンブロットによって発現およびグリコシル化について試験した。単一N−グリコシル化突然変異体と比較したサイズの増大が、CH23−N364/N368およびCH23−N364/N407で観察され、一方、CH23−N364/N405は検出可能なレベルで分泌されなかった。CH23−N364/N405は細胞によって発現されるが排出はされないことが分かったため、この二重突然変異はタンパク質の分泌を無効にし得るか、またはタンパク質構造の不安定性を生じさせ得ると仮定される。PNGase Fの処理の結果、Fcドメインの還元形態に対応する分子サイズが生じたため、CH23−N364/N368およびCH23−N364/N407のサイズの増大は、各分子上の複数のN連結型グリカンの存在に寄与した。CH23−N364/N368タンパク質およびCH23−N364/N407タンパク質を精製し、オリゴマー状態、非グリコシル化分子の収量、および熱安定性を、本明細書の他の箇所に記載されるように調べた。CH23−N364/N368とCH23−N364/N407との両方の非グリコシル化分子を、検出不可能なレベルまで減少させた(表2)。生産されたCH23−N364/N407は、CH23−N364およびCH23−N407の個々の突然変異体が検出可能な量の二量体を形成したにもかかわらず、完全に単量体であった。注目すべきことに、CH23−N364/N368は、凝集傾向ならびにSEC−MALS分析およびDSC分析に基づく熱安定性の減少を示した。それにもかかわらず、364位および407位での二重突然変異は、安定性、グリコシル化効率、および単量体傾向に関して、単量体Fcの特性を向上させた(表2)。グリコシル化はまた、(タンパク質構成要素にのみ感受性の)280nMでのUV検出器、および(タンパク質構成要素と糖質構成要素との両方に感受性の)RI検出器を用いる分析的SEC−MALSによって確認された。
【0121】
CH2ドメインは、Asn
297でのN−グリコシル化を天然に含有する(
図1)。CH3ドメイン内の2つの操作されたグリカンは単量体形態で安定化されていることが示されたため、Asn
297の天然のN−グリコシル化に加えて、CH2ドメイン内のグリコシル化部位をさらに調べた。第一に、258位、260位、286位、および305位にあるCH2内の潜在的な操作されたグリコシル化部位を同定した(
図1)。これらの4つの残基は、ヒトIgGの全てのアイソタイプ(1、2、3、および4)の間で全て保存されており、マウスIgG(2、2a、2b、および3)アイソタイプの間でほとんど保存されている(
図3)。個々の操作されたN−グリコシル化部位を、CH23−N364/N407内に導入し、三重N−グリコシル化突然変異体をHEK293細胞において発現させた。したがって、これらの突然変異体は、N297にある天然のグリコシル化部位、ならびに3つの操作されたグリコシル化部位、すなわちCH2ドメイン内の1つおよびCH3ドメイン内の2つを含む。突然変異体の全てを精製し、非グリコシル化収量、単量体状態、および熱安定性について、先に記載したように調べ、結果を表1に示す。CH23−N258/N364/N407およびCH23−N286/N364/N407は、単量体であり、完全にグリコシル化されていることが分かったが、一方、CH23−N260/N364/N407およびCH23−N305/N364/N407は、単量体であったが、およそ5〜10%の非グリコシル化分子をもたらした。
【0122】
(実施例4)
CH23−N364/N407の結晶構造
CH23−N364/N407の結晶を成長させ、これは、1.9Åに対して回折した。構造を、Fc二量体の一方のポリペプチド鎖の座標(3DTS)をサーチモデルとして用いて、分子置換によって解明した。データの収集項目、ならびにデータセットおよびモデルについての精密化統計を、表3に示す。CH23−N364/N407の実験マップは、Gly224からSer447までの骨格全体についての明らかな密度をもたらし、側鎖の95%超は、電子密度にフィットした。S364N、Y407N、およびK409Tの置換は、CH3ドメイン上ではっきりと見ることができた。Asn
297に接続している糖質鎖のトポロジーを、その電子密度から決定した。8つの糖残基(GlcNAc1〜GlcNAc5、Man7、GlcNAc8、およびFuc)を同定した。逆に、各糖残基のみが、操作されたAsn
364残基およびAsn
407残基上で同定された。その電子密度に従ってAsn
364側鎖に付着したGlcNAc1を、位置決定した。しかし、密度マップはAsn
407側鎖にごく接近して、水分子よりも大きな重原子が存在することを示唆していたが、Asn
407に付着したGlcNAc1は、電子密度が低いために位置付けることができなかった。それでも、CH23−N364/N407結晶の非対称の単位内容物は、2つの同一のグリコシル化ポリペプチド鎖の二量体として存在する正規のFcドメインの1つのみの単量体単位を示した(
図4)。これらの結晶学的データは、CH3−CH3界面上の操作されたグリコシル化がFcドメインの単量体形態を安定化させ得ることを実証する。
【0123】
【表3】
【0124】
(実施例5)
Fab−CH23変異体の生産およびインビトロでの特徴付け
CH23の血清寿命におけるFcRnの関与を解明するために、抗KLH抗体に由来するFab断片をCH23に融合した(本明細書において「Fab−CH23」と呼ばれ、これはまた、Fab−CH23−N364/N407(S364N−L355−T366およびY407N−S408−K409T(例えば、配列番号71)とも呼ばれる)。同一のFab断片をまた、FcRnノックアウト変異体(Fab−CH23[H310A/H433A](例えば、配列番号75))およびFcRn増強変異体(Fab−CH23[M428L/N434S](例えば、配列番号73))にも融合した。2つの操作されたFcポリペプチドを含むタンデムCH23構築物(Fab−CH23−CH23(例えば、配列番号85))、および正規のIgG1フォーマット対照(すなわち、抗KLH抗体)もまた構築して、アビディティーがCH23の薬物動態学的特性を向上させ得るという仮説を試験した(
図5)。全ての構築物をCHO細胞内にトランスフェクトし、タンパク質をプロテインGカラムクロマトグラフィーによって精製した。対照として、HEK293細胞一過性発現系において生産されるFab−CH23(「Fab−CH23−HEK」と呼ばれる)を生産した。1対1の結合フォーマット(BIAcoreチップの表面に結合した「Fc変異体」およびチップ表面に浮遊する可溶性FcRn)と、アビディティーフォーマット(BIAcoreチップ表面に結合したマウスFcRnタンパク質およびチップ表面に浮遊する各Fc変異体)との両方のこれらの構築物のFcRnの結合を調べた。平衡結合データを表4にまとめる。Fab−CH23またはFab−CH23−HEKの1対1の結合アフィニティー(表4)は、CH23−N364/N407の結合アフィニティー(表1)に類似しており、このことは、Fab融合がFcRnへのFcの結合に影響しなかったことを示唆する。予想した通り、Fab−CH23[M428L/N434S]でFcRnへのより高い結合アフィニティーが観察されたが、一方、FcRnの結合は、Fab−CH23[H310A/H433A]では観察されなかった。1対1の結合アッセイにおいて、チップ表面上に局在化したFab−CH23−CH23は、FcRnへのFab−CH23の結合アフィニティーと類似の結合アフィニティーを示した。驚くべきことに、しかし、アビディティーアッセイ(チップ表面上に局在化したFcRn)において、Fab−CH23−CH23は、Fab−CH23よりもおよそ40倍高い、FcRnへのアフィニティー結合を示した。IgG FcおよびタンデムCH23−CH23のアーキテクチャは異なるが、Fab−CH23−CH23は、単一Fcドメインを含むIgGのアフィニティーに類似の、バイオセンサー表面上に局在化するFcRnに高いアフィニティーで結合することが分かった。Fab−CH23−CH23が中性pHでFcRnから解離したことを評価するために、解離相の間にpH7.4およびpH6.0で結合したFab−CH23−CH23のパーセントを測定した。Fab−CH23−23とIgGとの両方の結合%がほとんど同一であることが観察された。これらの結果は、Fab−CH23−CH23が、酸性pHでFcRnに堅く結合するだけではなく、野生型IgG Fcに類似して、中性pHで効率的にFcRnから解離することを実証する。
【0125】
【表4】
【0126】
(実施例6)
マウスにおけるFab−CH23変異体の薬物動態学
Balb/c雄マウスにおいて、二価抗体、または抗体と同一のFabを含む単量体Fc含有ポリペプチドの、5mg/kgの単回IV用量後の、平均血漿濃度のプロファイルを決定し、データを
図6に示し、PKパラメータを表5にまとめる。対象間のばらつきはFab−CH23で比較的高く、血漿濃度の有意な低下が投薬の96時間後に観察され、このことは、免疫原性(例えば、構築物に対するマウス抗ヒト抗体、AHAによるクリアランス)の可能性を示唆する。Fab−CH23についてのクリアランス(CL)は低く、0.3mL/時間/kgでの典型的なIgGのCLと同程度であり、T
1/2は173時間(約7.2日)であった。18および14mL/時間/kgでのFab−CH23−HEKおよびFab−CH23[H310A/H433A]についてのCL率は、それぞれ、0.3mL/時間での野生型IgGについてのCL率よりもはるかに高かった。結果として、T
1/2は、12時間および11時間でのこれらの2つの変異体について、それぞれ、野生型IgG(173時間)と比較して、はるかに短かった。Fab−CH23−HEKを、腹腔内経路を介して10mgのマンナン(マンノース受容体の天然阻害剤)と同時投与すると、CLはマンナンを伴わないFab−CH23と比較して2倍増大し、このことは、マンノース受容体介在性のクリアランスがFab−CH23−HEKの主要なクリアランスメカニズムであることを示す。Fab−CH23およびFab−CH23[M428L/N434S]は、CLが約9mL/時間/kgでありT
1/2がそれぞれ32時間および42時間であるFab−CH23−HEKおよびFab−CH23[H310A/H433A]よりも向上したPKを有していた。タンデムFab−CH23−CH23は、全ての単量体Fab融合体の間で、最も遅いCL(3mL/時間/kg)および最も長いT
1/2(97時間)を有していた。野生型IgGに類似して、Fab−CH23−CH23の血漿濃度もまた、投薬の96時間後に劇的に低下し、このことは、潜在的な免疫原性もまたFab−CH23−CH23のクリアランスに関与し得ることを示す。
【0127】
【表5】
【0128】
(実施例7)
実験手順
プラスミドの構築およびタンパク質の発現
野生型Fc断片のための発現プラスミドを、Gly
236で始まるヒトガンマ1定常領域の前にあるN末端ヘキサヒスチジンタグとして構築した。全てのプラスミド構築および突然変異生成は、In−FusionドライダウンPCRクローニングキット(Clontech、マウンテンビュー、カリフォルニア州)で行った。突然変異構築物は、所望のアミノ酸置換を生じさせるプライマーを用いてPCRによって生成した。得られたPCR産物を、In−Fusionクローニングエンハンサーで処理し、その後、XbaIおよびEcoRI(New England Biolab、イプスウィッチ、マサチューセッツ州)で処理した発現ベクター内に挿入した。Fab−monoFc変異体の発現ベクターを、抗KLH抗体のFab断片およびmonoFcをコードする構築物のPCR増幅によって構築した。N−グリコシル化Fc変異体のタンパク質生産のために、HEK293F細胞を、293fectin試薬を用いることによって発現プラスミドで一過的にトランスフェクトし、製造者のプロトコルに従って(Invitrogen)、FreeStyle293培地において成長させた。馴化培地を、トランスフェクションの6日後に、2000×gで10分間の遠心分離によって回収した。IgG変異体およびFab−monoFc変異体のために、CHO細胞を、リポフェクタミン2000(Invitrogen、グランドアイランド、ニューヨーク州)によって発現プラスミドをトランスフェクトした。安定なクローンを、50ug/mLのG418および50nMのメトトレキサートで2から3週間、選択した。馴化培地を遠心分離によって回収し、上清を、その後の精製のために、0.2umのフィルターによって濾過した。発現を、還元条件下でSDS−PAGEによって確認し、その後、抗His G HRPコンジュゲート(Invitrogen、グランドアイランド、ニューヨーク州)または抗ヒトFc抗体(Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)でブロットした。
【0129】
タンパク質の精製
野生型Fcドメインおよび操作されたN−グリコシル化Fc変異体の精製のために、馴化培地を、リン酸緩衝溶液(PBS)(1mMのKH
2PO
4、10mMのNa
2HPO
4、137mMのNaCl、および2.7mMのKCl、pH7.2)で事前に平衡化したHiTrapキレート化カラム(GE healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)にロードした。非特異的結合タンパク質を、緩衝液A(1mMのKH
2PO
4、10mMのNa
2HPO
4、137mMのNaCl、および2.7mMのKCl、10mMのイミダゾール、pH7.6)で洗浄除去し、タンパク質を、緩衝液Aから緩衝液B(1mMのKH
2PO
4、10mMのNa
2HPO
4、137mMのNaCl、および2.7mMのKCl、250mMのイミダゾール、pH7.6)への線形勾配で溶出した。プールした画分を、PBS緩衝液で事前に平衡化したHiTrapプロテインAカラム(GE healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)にロードし、プロテインA溶出緩衝液(50mMのクエン酸、pH3.3)で溶出した。得られたタンパク質溶液を、1Mのtris−HCl溶液(pH8.0)によって中和し、緩衝液をPBSに交換し、濃縮し、−80℃で保存した。純度を、SDS−PAGE(4〜20%線形勾配ゲル、Invitrogen、グランドアイランド、ニューヨーク州)によって確認した。Fab−monoFc変異体のために、馴化培地を、PBS緩衝液で事前に平衡化したHiTrapプロテインGカラム(GE healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)にロードし、プロテインG溶出緩衝液(100mMのクエン酸、pH2.5)で溶出した。プールした画分を、1Mのtris−HCl溶液(pH8.0)で中和し、10mLまで濃縮し、PBS緩衝液で事前に平衡化したSuperdex200カラム(Hiload 26/60 prep grade、GE healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)にロードした。純度を、SDS−PAGEによって確認し、N−グリコシル化タンパク質の単量体状態を、10×300mmのカラムを用いて、Superdex 200 10/300 GL(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)によって評価した。精製タンパク質溶液を、0.22umのフィルターによって滅菌し、−80℃で保存した。タンパク質の定量を、280nmでの吸光度を測定すること、およびPaceら、Protein Sci.4、2411〜2423(1995)に従ったモル吸光係数を用いて濃度を計算することによって達成した。
【0130】
生物物理学的特徴付け
サイズ排除クロマトグラフィー多角度光散乱検出器(SEC−MALS):野生型Fcドメインおよび操作されたN−グリコシル化Fc変異体の平均モル質量およびオリゴマー化状態を、SEC−MALSを用いて決定した。タンパク質試料を、PBS緩衝液中で4.5〜7.0mg/mlの範囲の濃度で調製した。各試料(200μg)を、Agilent 1100 HPLC系(フォスターシティー、カリフォルニア州)に接続した分析用Superdex 200 10/300 GLカラム(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に注入した。サイズ決定カラム上で分解されたタンパク質ピークを、HPLC系に一列に接続されたWyatt’s MiniDawn 3角度光散乱検出器およびOptilab−REX屈折計(サンタバーバラ、カリフォルニア州)を用いて分析した。クロマトグラフィー分析および光散乱分析は、25℃で行った。MiniDawn光散乱系を、製造者の指示に従ってトルエンで校正し、ウシ血清アルブミン(Thermo Scientific、ロックフォード、イリノイ州)を用いて正規化した。データの収集および分析は、タンパク質についてのΔn/Δc値が0.185ml/gであるWyatt’s Astraソフトウェアを用いて行った。グリカン質量の寄与を、糖部分についての近似Δn/Δc値0.14ml/gを用いて、Astraソフトウェアにおいてタンパク質コンジュゲーション鋳型を適用することによって決定した。
【0131】
示差走査熱量測定(DSC):野生型Fcドメインおよび操作されたN−グリコシル化Fc変異体の熱安定性を、MicroCal’sキャピラリーDSC系、VP−DSC(ノーサンプトン、マサチューセッツ州)を用いて分析した。タンパク質および緩衝溶液を遠心分離し、脱気し、その後、機器にロードした。PBS緩衝液中に0.02mMの濃度のタンパク質試料を、試料セル内に置いた。両セルを、1時間当たり100℃のスキャン速度で、10℃から100℃まで加熱した。試料セルと参照セルとの間の熱能力の差を、MicroCalのOrigin7.0ソフトウェアを用いて記録し、分析した。ベースラインのサーモグラムを、試料セルと参照セルとの両方におけるPBS緩衝液で作成した。データを用いて、タンパク質変性に関連しない、あらゆる系の熱を差し引いた。
【0132】
キャピラリーゲル電気泳動 − 各タンパク質試料におけるグリコシル化種および非グリコシル化種の相対的パーセンテージを、Caliper LabChip GXII(ホプキントン、マサチューセッツ州)を用いて、還元条件下で測定した。脱グリコシル化対照を、タンパク質とグリカナーゼF(ProZyme、ヘイワード、カリフォルニア州)とを3時間、37℃で、PBS緩衝液においてインキュベートすることによって調製した。Caliperアッセイのための試料を、製造者の指示に従って調製した。簡潔に述べると、2μlのタンパク質試料(4.5〜7.0mg/mL)を7μlのSDS試料緩衝液と混合し、100℃で5分間、96ウェルプレート上でインキュベートした。試料容積を、脱イオン水で、40μlの最終容積に調整した。タンパク質のロード、分離、染色、および脱染を、LabChip Protein Expressプログラムに従って、マイクロチャネルでフォトエッチングされた石英チップ上で行った。電気泳動図を、LabChip GX v.3.0ソフトウェアを用いて、各試料について作成し、分析した。
【0133】
FcRn結合アッセイ
FcRn結合アッセイを、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー、Biacore 3000(Biacore、ウプサラ、スウェーデン)を用いて行った。センサーチップCM5、界面活性剤P20、N−エチル−N−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、および1Mのエタノールアミン(pH8.5)を、GE Healthcare(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)から購入した。SPR実験を、25℃で、0.005%のP20を有するPBS緩衝液(pH6.0)において行った。マウスFcRnタンパク質を、ARVYS Proteins,Inc.(スタンフォード、コネティカット州)から購入した。全ての実験は、3回反復した。
【0134】
1対1の結合アッセイ − CM5センサーチップ上への操作されたN−グリコシル化Fc変異体またはFab−mono操作されたN−グリコシル化Fc変異体の固定を、アミンカップリング方法によって行った。簡潔に述べると、20μMのタンパク質溶液を、10mMの酢酸塩(pH4.5)中に20回希釈し、200mMのEDCおよび50mMのNHSの1:1混合物の20uLの注入で事前に活性化されたバイオセンサー表面上に注入し、その後、1Mのエタノールアミン−HCl(pH8.5)を注入した。参照表面では、1つのフローセルをEDC−NHS混合物によって活性化し、タンパク質を有さないエタノールアミンによって不活性化した。平衡結合を、150uLの可溶性マウスFcRnタンパク質を5uL/分の流量で注入することによって測定した。センサー表面を、ランニングPBS緩衝液(pH7.2)によって1分間、再生した。本発明者らは、各濃度の結合曲線の全てが注入の最後(30分)では安定状態に達することを観察した。定常状態のRUを注入の最後(28分)に記録し、平衡解離定数(Kd)を、BIAevaluationソフトウェア(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いて計算した。
【0135】
アビディティーアッセイ:分析物(移動相内の分子)のアビディティーを評価するために、SPRベースの「アビディティーアッセイフォーマット」を、以前に記載されているように行った。例えば、Zalevskyら、Nature Biotech.28、157〜159;Yeungら、J.Immunol.182、7663〜7671(2009);およびSuzukiら、J.Immunol.184、1968〜1976(2010)を参照されたい。すなわち、マウスFcRnタンパク質を、上記のように、アミンカップリング方法によってCM5センサーチップ上に固定した。平衡結合を、30μLのFab−monoFc変異体を2μL/分の流量でFcRn表面上に注入することによって測定した。センサー表面を、100mMのtris−HCl、pH8.0を1分間ランさせることによって再生した。定常状態のRUを注入の最後(14分)に記録し、平衡結合定数(Kd)を、BIAevaluationソフトウェア(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いて計算した。
【0136】
pHスイッチアッセイ:中性pHでのFcRnからのFab−monoFc変異体の解離効率を評価するために、先に報告された方法から変更した「pHスイッチアッセイ」を採用した。例えば、Wangら、Drug Metab.Dispos.39、1469〜1477(2011)を参照されたい。このアッセイにおいて、マウスFcRnタンパク質を、アミンカップリング方法によってCM5センサーチップ上に固定した。結合を、ランニング緩衝液(PBS、pH6.0)中の100uMのFab−monoFc変異体を注入し、その後、ランニング緩衝液(PBS、pH6.0)または中性緩衝液(PBS、pH7.2)を単独でFcRn表面上に50μL/分の流量で注入することによって測定した。
【0137】
結晶化および構造の決定
タンパク質を、monoFcの結晶化試験のために(Fc−CH23−N364/N407)、tris緩衝液(25mMのtris−HCl、150mMのNaCl、pH7.5)中に30mg/mlまで濃縮した。結晶化は、貯蔵器溶液に対して平衡化された0.2μLのタンパク質溶液および0.2μLの貯蔵器溶液を含有する滴剤を用いて、ハンギングドロップ蒸気拡散方法を18℃で用いて行った。大きな三方晶系結晶が、2.2Mの硫酸アンモニウムおよび200mMのフッ化ナトリウムを沈殿剤として用いて得られた。結晶を、母液中の20%グリセロールの存在下で凍結防止処理し、液体窒素中で即座にフラッシュ冷却した。X線回折データを、SER−CATビームライン22−ID、Advanced Photon Source(APS)、アルゴンヌ、イリノイ州で、最大1.9Åの分解能まで、単結晶から回収した。データにインデックスを付け、積分し、HKL2000でスケーリングした(統計を表2に示す)。結晶は、格子定数がa=b=64.22Åでありc=146.94Åである空間群P3
12に属していた。構造を、突然変異したADCC増強ヒトFcドメイン(PDB ID:2QL1)(Oganesyanら、Mol.Immunol.45、1872〜1882(2008))の結晶構造をサーチモデルとして用いて、PHASERでの分子置換によって解明した。monoFc単量体を位置決定した後、最初のモデルをBUSTERでの最小化にかけ、COOT(分子グラフィックスプログラム)を用いてさらに再構成した。再校正を伴う数回の精密化改変によって、0.25のR
crystおよび0.259のR
freeに対応する最終精密化モデルが得られた(精密化統計を表6に示す)。
【0138】
【表6】
【0139】
マウスにおける薬物動態学的研究
動物研究 − 雄Balb/cマウス(約8週齢の雄)を、Charles River(ウィルミントン、マサチューセッツ州)から購入した。全ての研究は、National Institutes of Healthの動物資源のケアおよび使用についてのガイドに従って行った。1群当たり6頭のマウスに、単回用量のFab−monoFc変異体を静脈内経路を介して投与した。5mg/kgの投与用量は、最近の予定体重に基づくものであった。試験試料をPBS中に調製し、投薬容積は4mL/kgであった。投薬の0分、10分、6時間、24時間、2日、3日、4日、7日、14日、および21日後、10μLの血液試料を毛細管を介して尾静脈から回収し、90μlのRexxip A緩衝液(Gyros AB、ウプサラ、スウェーデン)中に即座に希釈した。試料を3000×gで10分間、4℃で遠心分離し、上清を別の試験管に移し、今後の分析のために−80℃で凍結した。
【0140】
試料分析 − 試験試料を、ストレプトアビジン被覆ビーズ(Gyrolab CD微細構造のアフィニティー捕捉カラム)上に捕捉されたビオチン化されたヤギ抗ヒトIgG(Bethyl Laboratories)を用いて定量した。参照標準および質対照をRexxip A緩衝液中に調製し、研究試料を定量のアッセイ範囲に希釈した。アフィニティー捕捉カラム上に捕捉された後、結合したFab−monoFc変異体または二価野生型IgGは、Alexa647で標識されたヤギ抗ヒトIgG(分子プローブ)で検出された。カラム上の蛍光シグナルによって、結合した変異体の検出が可能になった。応答単位を、1%光電子増倍管の設定で、Gyrolab機器によって読み取った。試料濃度を、ワトソン(バージョン7.4)の1/y
2応答重み付けにフィットする5パラメータロジスティック曲線を用いてフィットした標準曲線からの補間によって決定した。Fab−monoFc変異体についての定量のアッセイ範囲は、100%Balb/cマウス血漿中に10.0μg/mLから41.0ng/mLであった。二価IgG変異体についての定量のアッセイ範囲は、100%Balb/cマウス血漿中に4.0μg/mLから16.3ng/mLであった。
【0141】
薬物動態学的分析 − Fab操作されたN−グリコシル化monoFc変異体についての血漿薬物動態学的パラメータを、ワトソン(Watson)(バージョン7.4)を活用する非区画方法を用いて計算した。終点のログ線形位相におけるデータを線形回帰によって分析して、終点の速度定数(k)および半減期(T
1/2=0.693/k)を推定した。少なくとも最後の3つの時点を用いて、kを計算した。総AUC
infを、AUC
0−lastとAUC
extrapとの合計として決定し、ここで、AUC
0−lastは、線形台形公式を用いて0から最後の測定可能な濃度(C
last)を有する最後の時点(T
last)まで計算し、AUC
extrapは、C
last/kを用いる、T
lastから無限までの面積の外挿部分であった。血漿濃度に基づく総ボディークリアランス(CL)を用量/AUC
infとして計算し、定常状態(V
dss)での分布の容積を、CL×AUMC/AUCとして計算し、式中、AUMCは、一次モーメント曲線下面積であった。対象間のばらつきは、他の構築物よりもIgGで比較的高かった。
【0142】
配列表
配列番号1〜8において、太字の残基は、本発明に従ったN−グリコシル化について合理的に選択された位置を指す。配列番号17〜88において、太字の残基は、アミノ酸/核酸の変化を指し、第1の下線を引かれた領域はシグナル/リーダー配列であり、存在する場合、第2の下線を引かれた領域はリンカーを指す。
【0143】
【表7-1】
【0144】
【表7-2】
【0145】
【表7-3】
【0146】
【表7-4】
【0147】
【表7-5】
【0148】
【表7-6】
【0149】
【表7-7】
【0150】
【表7-8】
【0151】
【表7-9】
【0152】
【表7-10】
【0153】
【表7-11】
【0154】
【表7-12】
【0155】
【表7-13】
【0156】
【表7-14】
【0157】
【表7-15】
【0158】
【表7-16】
【0159】
【表7-17】
【0160】
【表7-18】
【0161】
開示された教示は、様々な適用、方法、および組成に関して記載されているが、本明細書における教示および以下の特許請求の範囲に記載の発明から逸脱しない限り、様々な修正および変更がなされ得ることが理解される。先の実施例は、開示された教示をより良く説明するために提供され、本明細書において示される教示の範囲を限定することを意図したものではない。本教示は、これらの典型的な実施形態に関して記載されているが、当業者には、これらの典型的な実施形態の多くの変型および変更が、不必要な試験を行うことなく可能であることが容易に理解されよう。全てのこのような変型および変更は、現教示の範囲内である。
【0162】
特許、特許出願、文書、教科書など、およびそれにおいて引用されている参考文献を含む、本明細書において引用される全ての参考文献は、それらが既に組み込まれていない限りにおいて、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。限定はしないが、定義された用語、用語の使用方法、記載された技術などを含む、組み込まれた文献および類似の材料の1つまたは複数が本願と異なるかまたは矛盾する事象においては、本願が優先される。
【0163】
先の記載および実施例は、本発明の特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって検討された最良の態様を記載する。しかし、先の記載が文章上いかに詳述されているように見えても、本発明は多くの方法で実施することができ、本発明は添付の特許請求の範囲およびそのあらゆる同等物に従って解釈されるべきであることが理解される。