(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記方形波パルス列(300)が、バックグラウンド段(301)と、測定パルス(302)と、回復パルス(304)と、ベース段(305)とを含む、請求項1に記載の導電率計(100)。
サーミスタ回路(110)をさらに含んでいて、前記サーミスタ回路(110)及び前記制御ユニット回路(150)が、前記セル(125)内の流体の温度を計算し、前記流体の生の導電率値に温度補正を加えて温度補正された導電率値を生成するように構成されている、請求項1に記載の導電率計(100)。
前記サーミスタ回路(110)が、サーミスタスイッチ(111)と、サーミスタドライブ(112)と、サーミスタ(113)と、トランスインピーダンスアンプ(114)とを含む、請求項7に記載の導電率計(100)。
前記セル回路トランスインピーダンスアンプ(126)が、利得制御回路(127)の位置により決定される帰還抵抗値を有し、前記利得制御回路(127)の位置が以前の生の導電率値により決定される、請求項1に記載の導電率計(100)。
前記セル回路(120)が極性切換回路(121)をさらに含んでいて、前記極性切換回路(121)が、前記方形波ドライブアンプ(124)に電圧を渡して、前記方形波ドライブアンプ(124)によって前記セル(125)に印加される電圧の極性を決定するように構成される、請求項1に記載の導電率計(100)。
前記セル(125)内の流体の温度を測定するステップと、前記流体の生の導電率値に温度補正を加えて温度補正された導電率値を生成するステップとをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様では、流体の導電率を測定するための導電率計は、セル回路と、制御ユニット回路とを含み、セル回路は、方形波ドライブアンプと、セルと、トランスインピーダンスアンプとを含み、流体は、セルを通って流れ、制御ユニット回路及び方形波ドライブアンプは、電圧を有する方形波パルス列をセルの流体に印加するように構成され、それによって、セル内の流体を流れる電流を誘起し、セル回路トランスインピーダンスアンプ及び制御ユニット回路は、セル内の流体を流れる電流の複数の測定値を取得し、電流測定値を用いてセル内の流体の生の導電率を推定するように構成される。
【0007】
本発明の別の態様では、方形波パルス列は、バックグラウンド段と、測定パルスと、回復パルスと、ベース段とを含む。
【0008】
本発明の別の態様では、方形波パルス列は、静止段をさらに含む。
【0009】
本発明の別の態様では、測定パルスは、前の生の導電率値で決定される持続時間を有する。
【0010】
本発明の別の態様では、測定パルスは、1/(2×駆動周波数)の持続時間を有し、駆動周波数は、前の生の導電率値で決定される。
【0011】
本発明の別の態様では、電流測定値は、セル内の流体を流れる正味の電流の値である。
【0012】
本発明の別の態様では、制御ユニット回路は、電流測定値を二重指数減衰関数にフィッティングすることによって、セル内の流体の生の導電率値を推定する。
【0013】
本発明の別の態様では、導電率計は、サーミスタ回路をさらに含み、サーミスタ回路及び制御ユニット回路は、セル内の流体の温度を計算し、流体の生の導電率値に温度補正を加えるように構成され、それによって、温度補正された導電率値を生成する。
【0014】
本発明の別の態様では、サーミスタ回路は、サーミスタスイッチと、サーミスタドライブと、サーミスタと、トランスインピーダンスアンプとを含む。
【0015】
本発明の別の態様では、セル回路トランスインピーダンスアンプは、利得制御回路の位置により決定される帰還抵抗値を有し、利得制御回路の位置は、前の生の導電率値により決定される。
【0016】
本発明の別の態様では、セル回路は、極性切換回路をさらに含み、極性切換回路は、方形波ドライブアンプに電圧を渡して、方形波ドライブアンプによってセルに印加される電圧の極性を決定するように構成される導電率計。
【0017】
本発明の別の態様では、極性切換回路は、セルスイッチと、極性スイッチとをさらに含む。
【0018】
本発明の別の態様では、セル回路は、トランスインピーダンスアンプの出力を整流するように構成される整流器をさらに含む。
【0019】
本発明のさらに別の態様では、流体の導電率を測定するための方法は、導電率を有する流体を収容するセルを有するセル回路を提供するステップと、方形波パルス列をセルに印加し、それによってセル内の流体に電流が流れるようにするステップと、セル内の流体を流れる電流の複数の測定値を取得するステップと、電流測定値に方程式をフィッティングすることによって、流体の生の導電率値を推定するステップとを含み、方程式は1/Rの項を含み、ここで、Rはセル内の流体の抵抗に等しい。
【0020】
本発明の別の態様では、電流測定値は、セル内の流体を流れる正味の電流の値である。
【0021】
本発明の別の態様では、方程式は、二重指数減衰関数である。
【0022】
本発明の別の態様では、方形波パルス列は、持続時間中に電流測定値が取得される測定パルスを含む。
【0023】
本発明の別の態様では、方形波パルス列は、バックグラウンド段と、回復パルスと、ベース段とをさらに含む。
【0024】
本発明の別の態様では、方形波パルス列は、静止段をさらに含む。
【0025】
本発明の別の態様では、本方法は、セル内の流体の温度を測定するステップと、流体の生の導電率値に温度補正を加えるステップとをさらに含み、それによって、温度補正された導電率値を生成する。
【0026】
本発明の利点は、例示のために図示され記載された本発明の実施形態についての以下の説明から、当業者には明らかになるであろう。理解されるように、本発明は他の及び異なる実施形態が可能であり、その詳細は様々な点で変更が可能である。
【0027】
本発明のこれらの及び他の特徴、並びにそれらの利点は、例として、添付の図面を参照して、ここで記載される本発明の実施形態では具体的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
いずれの図も、概略的なものであって、一定の比率で描かれているわけではないことに留意されたい。これらの図面のうちの一部の相対的な寸法及び比率は、図面を明瞭にするため、及び図面の便宜のために、サイズを誇張又は縮小して示してある。同じ符号は、異なる実施形態における対応する又は類似の特徴を示すために、一般的に用いられる。したがって、図面及び説明は、本質的に例示的なものとしてみなされるべきであって、限定的なものとみなされるべきではない。
【0030】
ここで
図1A〜
図1Cを参照すると、対象流体の導電率及び温度を測定するための導電率計100の回路が示されている。
図1A〜
図1Cの導電率計100の一実施形態のブロック図を参照すると、導電率計100は、電圧レギュレータ105と、セル回路120と、制御ユニット回路150と、ディスプレイ160と、サーミスタ回路110とを含む。セル回路120は、極性切換回路121と、方形波ドライブアンプ124と、セル125と、トランスインピーダンスアンプ126と、利得制御回路127と、整流器128とを含む。サーミスタ回路110は、サーミスタスイッチ111と、サーミスタドライブ112と、サーミスタ113と、トランスインピーダンスアンプ114とを含む。制御ユニット回路150は、マルチプレクサ153と、アナログ/デジタル変換器152と、制御ユニット151とを含む。制御ユニット151は、メモリ152を有する。
【0031】
電圧レギュレータ105は、アナログ/デジタル変換器152と、セルスイッチ123と、整流器128と、サーミスタスイッチ111と、に基準電圧を提供する。整流器128は、アナログ/デジタル変換器152に到達する電圧が負でないことを確実にするのに役立つ。
【0032】
サーミスタ回路110の一実施形態では、サーミスタスイッチ111は、制御ユニット151から温度イネーブル信号を受信し、この信号により、制御ユニット151は、サーミスタドライブ112の出力を制御することができる。サーミスタスイッチ111は、制御ユニット151からの高い温度イネーブル信号を受信すると、サーミスタスイッチ111は、電圧レギュレータ105からの基準電圧をサーミスタドライブ112に渡し、サーミスタドライブ112は、セル125に配置されたサーミスタ113に正確な電圧を印加する。サーミスタ113の抵抗値は、セル125内の流体の温度に応じて大きく変化し、その変化は標準的な抵抗よりも大きい。トランスインピーダンスアンプ114は、サーミスタ113を流れる電流の量を測定し、サーミスタ113を流れる電流の量を表す出力電圧を生成する。サーミスタトランスインピーダンスアンプ114の出力電圧、すなわちサーミスタ回路電圧出力は、マルチプレクサ153へ導かれる。
【0033】
セル回路120の一実施形態では、極性スイッチ122は、制御ユニット151から極性信号を受信し、セルスイッチ123は、制御ユニット151からセルイネーブル信号を受信する。極性切換回路121は、制御ユニット151と連携して、方形波ドライブアンプ124を制御する。
【0034】
セルスイッチ123は、制御ユニット151から高いセルイネーブル信号を受信すると、セルスイッチ123は、電圧レギュレータ105からの基準電圧を方形波ドライブアンプ124に渡し、方形波ドライブアンプ124は、セル125内の流体に正確な電圧を印加し、セル125内の流体を流れる電流が生じる。極性スイッチ122は、制御ユニット151から高い極性信号を受信すると、極性スイッチ122は、方形波ドライブアンプ124の非反転入力を接地し、方形波ドライブアンプ124は、セル125内の流体に印加される高精度の電圧の極性を変化させる。一実施形態では、セル125は、互いに離れて配置され、セル125内の流体に露出されるように構成される2つの金属電極、すなわち第1及び第2の電極を含むが、他の実施形態では、当業者であれば、異なる適切なタイプの導電率セルを使用することを選択できると考えられる。方形波ドライブアンプ124は、セル125の第1の電極を介してセル125内の流体に電圧を印加する。
【0035】
セル回路のトランスインピーダンスアンプ126は、セル125内の流体を流れる電流の量を測定し、セル125内の流体を流れる電流の量を表す出力電圧を生成する。セル回路のトランスインピーダンスアンプ126は、第2の電極を介してセル125から電流を受け取る。トランスインピーダンスアンプ126の利得は、利得制御回路127の利得制御回路スイッチ130の設定によって決定され、その設定は制御ユニット151からのGAIN1信号及びGAIN0信号によって制御される。トランスインピーダンスアンプ126の電圧出力の方程式は、V
TIA=I
CELLR
FEEDBACKであり、ここでV
TIAはトランスインピーダンスアンプ126の出力電圧であり、I
CELLはセル125を流れる電流の量であり、R
FEEDBACKはトランスインピーダンスアンプ126によって認識される帰還抵抗値であって、利得制御回路127によって決定される。
【0036】
一実施形態では、トランスインピーダンスアンプ126のR
FEEDBACKは、利得制御回路127の抵抗値と並列な4.99Mの抵抗である。利得制御回路127は、4つの位置、すなわちTIA0〜3を有する。TIA0では、499Ωの抵抗がトランスインピーダンスアンプ126の4.99Mの抵抗と並列に配置され、トランスインピーダンスアンプ126のR
FEEDBACKは499Ωとなる。TIA1では、27.4kの抵抗がトランスインピーダンスアンプ126の4.99Mの抵抗と並列に配置され、トランスインピーダンスアンプ126のR
FEEDBACKは27.3kとなる。TIA2では、499kの抵抗がトランスインピーダンスアンプ126の4.99Mの抵抗と並列に配置され、トランスインピーダンスアンプ126のR
FEEDBACKは454kとなる。TIA3では、抵抗がトランスインピーダンスアンプ126の4.99Mの抵抗と並列に配置されず、トランスインピーダンスアンプ126のR
FEEDBACKは4.99Mとなる。
【0037】
制御ユニット151は、トランスインピーダンスアンプ126の出力が電源線に乗らないように、必要に応じてトランスインピーダンスアンプ126の利得を調整する。これはオートレンジ動作として知られており、これによって、導電率計が、トランスインピーダンスアンプ126が非可変帰還抵抗値を有する場合よりも、広い範囲の流体の導電率値を読み出すことができる。セルトランスインピーダンスアンプ126の出力電圧は、整流器128により整流される。それから、整流器128の出力電圧、すなわちセル回路電圧出力は、マルチプレクサ153へ導かれる。
【0038】
マルチプレクサ153は、制御ユニット151から温度イネーブル信号を受信し、その信号によって、制御ユニット151は、マルチプレクサ153が、アナログ/デジタル変換器152に、セル回路電圧出力を渡すか、或いはサーミスタ回路電圧出力を渡すか、を制御することができる。マルチプレクサ153は、アナログ/デジタル変換器152に、セル回路電圧出力及びサーミスタ回路電圧出力を導き、アナログ/デジタル変換器152は、制御ユニット151に、セル回路電圧出力及びサーミスタ回路電圧出力のデジタル値を渡す。アナログ/デジタル変換器152は、制御ユニット151からVIO、SDI、SCK、CONV信号を受信し、これらの信号によって、制御ユニット151はアナログ/デジタル変換器152を制御することができる。
【0039】
他の実施形態では、制御ユニット151は、フィールドプログラマブルゲートアレイ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブル論理コントローラ、又は同様の機能を有する別のタイプのコントローラであってもよいと考えられる。さらに、他の実施形態では、当業者は、アナログ/デジタル変換器152としても、或いはマルチプレクサ153及びアナログ/デジタル変換器152としても機能する制御ユニット151を使用することを選択し得ると考えられる。
【0040】
ディスプレイ160は、制御ユニット151内に含まれる情報を導電率計100のユーザに利用可能にする。一実施形態では、ディスプレイ160は、セル125内の流体の導電率の表示をユーザに提供する。別の実施形態では、ディスプレイ160は、セル125内の流体の温度及び導電率の表示をユーザに提供する。その他の実施形態では、当業者であれば、ディスプレイ160が、制御ユニット151に含まれる情報のいずれかをユーザに提供するように選択することができると考えられる。さらに、いくつかの実施形態では、ディスプレイ160はタッチパネルであり、ユーザは、以下のステップ410に関連して説明される情報を選択し入力するなど、導電率計100と対話することができる。他の実施形態では、キーパッドが設けられており、ユーザは、以下のステップ410に関連して説明される情報を選択し入力するなど、導電率計100と対話することができる。
【0041】
広い導電率の範囲のため、導電率計100は、1.46mS/cmのNIST較正標準との直接的な較正を可能にする。
【0042】
図1Cは、本発明の実施形態による、セルトランスインピーダンスアンプ126と利得制御回路127との間の相互作用をより詳細に示す。見て分かるように、セルトランスインピーダンスアンプ126は、トランスインピーダンスアンプ構成でオペアンプ129及び第1の帰還抵抗134を含む。オペアンプ129は、反転入力でセル125の第2の電極からの電流を受け取り、整流器128に電圧を出力する。
【0043】
利得制御回路127は、利得制御回路スイッチ130と、第2の帰還抵抗131と、第3の帰還抵抗132と、第4の帰還抵抗133とを含む。利得制御回路スイッチ130は、第1の位置(TIA0)、第2の位置(TIA1)、第3の位置(TIA2)、及び第4の位置(TIA3)を有する。利得制御回路スイッチ130は、制御ユニット151とインターフェースして、制御ユニット151からのGAIN1及びGAIN0制御信号を介して制御ユニット151によって制御される。一実施形態では、第1の帰還抵抗134の抵抗値は、第4の帰還抵抗133の抵抗値よりも大きく、第4の帰還抵抗133の抵抗値は、第3の帰還抵抗132の抵抗値よりも大きく、第3の帰還抵抗132の抵抗値は、第2の帰還抵抗131の抵抗値よりも大きい。
【0044】
R
FEEDBACKは、トランスインピーダンスアンプ126のオペアンプ129によって認識される帰還抵抗値である。利得制御回路スイッチ130が第1の位置(TIA0)にある場合には、第2の帰還抵抗131が第1の帰還抵抗134と並列に配置される。利得制御回路スイッチ130が第2の位置(TIA1)にある場合には、第3の帰還抵抗132が第1の帰還抵抗134と並列に配置される。利得制御回路スイッチ130が第3の位置(TIA2)にある場合には、第4の帰還抵抗133が第1の帰還抵抗134と並列に配置される。利得制御回路スイッチ130が第4の位置(TIA3)にある場合には、別の抵抗は、第1の帰還抵抗134と並列に配置されない。したがって、利得制御回路スイッチ130の第1の位置から第4の位置において、オペアンプ129によって認識されるR
FEEDBACKの値は以下のようになる。
【0045】
【表1】
ここで
図2A〜
図2Cを参照すると、導電率計100の回路図が示されている。導電率計100の極性切換回路121は、セルスイッチ123及び極性スイッチ122を含む。
【0047】
【表2】
極性スイッチ122は以下を含む。
【0048】
【表3】
方形波ドライブアンプ124は以下を含む。
【0049】
【表4】
セル125は、GE Analytical Instrumentsによって製造されている小型導電率セルモデル番号ACO08060などの、導電率セルを含む。
【0050】
トランスインピーダンスアンプ126は以下を含む。
【0051】
【表5】
利得制御回路127は以下を含む。
【0052】
【表6】
整流器128は以下を含む。
【0053】
【表7】
マルチプレクサ153は以下を含む。
【0054】
【表8】
電圧レギュレータ105は以下を含む。
【0055】
【表9】
アナログ/デジタル変換器152は以下を含む。
【0056】
【表10】
サーミスタスイッチ111は以下を含む。
【0057】
【表11】
サーミスタドライブアンプ112は以下を含む。
【0058】
【表12】
サーミスタ113は、GE Thermometrics部品番号P60AB104L−COEGKを含む。しかし、他の実施形態では、当業者は別の適切なサーミスタを使用することを選択できると考えられる。
【0059】
トランスインピーダンスアンプ114は以下を含む。
【0060】
【表13】
制御ユニット151は以下を含む。
【0061】
【表14】
電圧レギュレータ105は、アナログ/デジタル変換器152に電力を供給し、以下を含む。
【0062】
【表15】
動作について説明すると、方形波ドライブアンプ124は、セル125内の流体に、既知の周波数、振幅、及び持続時間を有する方形波パルス列を印加する。方形波パルス列は、セル125内の流体を流れる電流を生じさせる。トランスインピーダンスアンプ126は、セル125内の流体を流れる電流の量を測定し、セル125内の流体を流れる電流の量を表す出力電圧を生成する。
【0063】
セル125内の流体に印加される方形波パルス列の電圧(V)が既知であり、セル125内の流体を流れる電流(I)が既知であるから、セル125内の流体の抵抗値(R)を得るために、オームの法則(V=IR)を用いることができる。導電率(G)は抵抗の逆数(G=1/R)であるから、セル125内の流体の導電率を得るために、抵抗値を用いることができる。
【0064】
図3Aは、導電率計100の一実施形態による、セル125内の流体に、方形波ドライブアンプ124によって印加される方形波パルス列300の1周期の表現を示す。方形波パルス列300は、バックグラウンド段301と、測定パルス302と、静止段303と、回復パルス304と、ベース段305とを含む。一実施形態では、方形波パルス列300のバックグラウンド段301は、0ボルトの振幅及び1/(2×駆動周波数)の持続時間を有する。セル125内の流体のバックグラウンド導電率は、方形波ドライブアンプ124によって流体に0ボルトが印加された時のセル125内の流体を流れる電流を測定することにより、バックグラウンド段301の期間に数回測定される。方形波パルス列300の測定パルス302は、2.5ボルトの振幅及び1/(2×駆動周波数)の持続時間(t
M)を有する。セル内の流体の導電率は、方形波ドライブアンプ124によって流体に2.5ボルトが印加された時のセル125内の流体を流れる電流を測定することにより、測定パルス302の期間に数回測定される。
【0065】
一実施形態では、方形波パルス列300の静止段303は、0ボルトの振幅及び50μsの持続時間を有する。静止段303は、測定パルス302と回復パルス304との間の分離を提供するように機能する。他の実施形態では、静止段303が存在しない(0秒の持続時間を有する)と考えられる。パルス列300の回復パルス304は、負の2.5ボルトの振幅を有し、可変持続時間を有する。回復パルス304は、測定パルス302によるセル125内に残っているすべての残留電荷を放電する。制御ユニット151内で生じる動作の最初の繰り返しでは、回復パルスの持続時間(t
R)は1/(2×駆動周波数)に等しい。以降の繰り返しでは、回復パルス304の持続時間(t
R)は次のようになる。
【0066】
【数1】
ここで、「t
M」は測定パルスの持続時間であり、「R」は、ステージ445、450、及び455で推定又は計算された、セル125内の流体の抵抗を表すパラメータであり、「C」は後述するステージ445、450で推定されたパラメータである。t
Rを計算するために、R及びCの最も新しい値が用いられる。
【0067】
ベース段305は、0ボルトの振幅を有し、方形波パルス列300のデューティサイクルの残りの部分に延在する持続時間を有する。約10個のデータ点がベース段の期間に取り込まれ、セル125内の流体の温度を計算するために用いられる。マルチプレクサ153が制御ユニット151から温度イネーブル信号を受信した場合に、セル125内の流体の温度が測定される。温度イネーブル信号が受信されると、マルチプレクサ153は、サーミスタ回路電圧出力をアナログ/デジタル変換器152に導き、アナログ/デジタル変換器152は、デジタル化されたサーミスタ回路電圧出力を制御ユニット151に渡す。駆動周波数及びデューティサイクルは、バックグラウンド段301、測定パルス302、回復パルス304、及びベース段305の持続時間を決定し、下記の表1によって表される。
図3Bは、方形波パルス列300の2周期分を示す。
【0068】
【表16】
図3C、
図3Dを参照すると、液体の導電率測定の等価回路を
図3Cに示す。それは単純化したランドルズ回路であって、抵抗(R)及びそれに直列に接続されたキャパシタ(Cs)から構成され、キャパシタ(Cs)は電極/溶液界面の二重層容量を表している。その組合せは、並列に接続された別のキャパシタ(Cp)を有する。抵抗Rは、測定しようとする量であり、導電率は1/Rである。測定は、方形波パルス列300(電圧)をモデル(セル125)に印加して、セル125の流体を流れる電流を測定することによって行われる。セル125内の流体の導電率は、
図3Dのt=0で測定された電流に正比例し、t=0でCpにより生じる大きな電流スパイクは、以下に説明するように無視される(又はスキップされる)。
【0069】
回路内のCpの存在によって、t=0で大きな電流スパイクが生じ、セル回路120の電子回路を短時間飽和させる(
図3Dの左側に網掛け領域として示す)。セル回路120の電子回路が飽和している間は、セル125を流れる電流の測定をすることができないか、又は用いることができない。しかし、t=0の電流スパイクに続いて、セル125内の指数関数的減衰電流曲線は、規則的に回復して、曲線の残りの部分に沿って測定を可能にする。したがって、t=0での測定は、制御ユニット151により、曲線の残りの部分で得られた測定値に曲線フィッティング技術を適用することによって近似される。
【0070】
制御ユニット151内で実行される動作は、
図4A、
図4Bのフローチャートに詳しく示してある。
図4A、
図4Bのフローチャートに詳細に示す動作を実行するためのプログラムは、制御ユニット151のメモリ152に記憶される。ステージ410では、第1の方形波パルス列を生成するためのサーミスタ定数、導電率推定パラメータ、及び初期方形波パルス列生成パラメータが、制御ユニット151に入力され、ロードされる。第1の方形波パルス列のための方形波パルス列発生パラメータ、すなわち、TIA利得、駆動周波数、測定点、及びデューティサイクルが制御ユニット151に入力され、ロードされる。制御ユニット151内で実行される動作の最初の繰り返しでは、回復パルスの持続時間は1/(2×駆動周波数)である。以降の繰り返しでは、回復パルスの持続期間は可変であり、その計算についてはステップ460で後述する。生の導電率の温度補正アルゴリズムは、ユーザによって選択される。導電率推定パラメータ、すなわちR、A、B、及びCはすべて1の値を持つように初期化される。
【0071】
ステージ415では、制御ユニット151が始動される。ステージ420では、データ収集処理が制御ユニット151によって起動される。ステージ425及びステージ430では、バックグラウンド段301の期間にセル125を流れるバックグラウンド電流の値、測定パルスの期間にセル125を流れる生の電流の値、及びセル125内の流体の温度データが制御ユニット151によって取得され、インデックスが付けられる。温度データは、サーミスタ113を流れる電流の量の複数の値を含み、それらは平均化されている。サーミスタ113を流れる電流の値は、トランスインピーダンスアンプ114により生成される対応する電圧値から確認される。
【0072】
ステージ465では、サーミスタ113の平均抵抗値は、オームの法則V=IRを用いて算出される。「V」は、サーミスタドライブアンプ112によってサーミスタ113に印加される高精度電圧のボルト単位の振幅である。「I」は、サーミスタ113を流れる電流の平均量である。トランスインピーダンスアンプ114は、サーミスタ113を流れる電流の量を測定し、サーミスタ113を流れる電流の量を表す電圧を出力する。制御ユニット151は、パルス列のベース段の期間にトランスインピーダンスアンプ114から得られる電圧値を、サーミスタ113を流れる電流に対応する値に変換する。制御ユニット151は、VをIで除算して得られるサーミスタの平均抵抗値「R」を算出する。
【0073】
サーミスタ113の平均抵抗値が得られると、摂氏温度でのサーミスタ113の平均温度は、以下の公式を用いて制御ユニット151により計算することができる。
【0074】
【数2】
この式で、「T」はサーミスタ113及びセル125内の流体の平均温度であり、「R
T」はサーミスタ113の平均抵抗値である。「A
T」、「B
T」、及び「C
T」はサーミスタ113についてのデータシート上で利用可能なサーミスタに特有の定数である。
【0075】
ステージ435及びステージ440では、セル125のバックグラウンド電流の値を平均化し、ステージ425で収集された、方形波パルス列の測定パルスの期間にセル125の流体を流れる生の電流の各値から、平均バックグラウンド電流値を減算して、方形波パルス列の測定パルスの期間にセル125を流れる電流の正味の値を生成する。ステージ440に続いて、セル125内の流体の生の導電率値は、ステージ445、450、又は455の式のうちの1つを用いて計算される。
【0076】
最後の生の導電率測定値が高く(例えば約1mS/cmより大きく)なった場合には、制御ユニット151はステージ450の式を用いる。しかし、最後の生の導電率値測定が低く(例えば、約100nS/cm未満に)なった場合には、制御ユニット151はステージ455の式を用いる。最後の生の導電率値測定が中間の範囲、すなわち高導電率値と低導電率値との間になった場合には、制御ユニット151はステージ445の式を用いる。他の実施形態では、当業者であれば、異なる適切な高導電率値及び/又は低導電率値を用いることを選択できると考えられる。
【0077】
さらに、制御ユニット151は、方法400の最初の繰り返しの期間にステージ450の式を用いる。加えて、生の導電率測定値が中間範囲であって、制御ユニット151が所定の時間内にステージ445の式を、セル125を流れる電流の正味の値にフィッティングすることができない場合には、制御ユニット151は、ステージ450の式を用いてセル125内の流体の導電率(G
T)を算出する。以下に示すステージ445の二重指数方程式を用いる場合には、測定パルスの開始時における立ち上がりエッジに対する経過時間の関数として、測定パルスの期間にセル125を流れる電流の正味の値に式をフィッティングするために、制御ユニット151は非線形方程式に対する最小二乗法を採用している。
【0078】
【数3】
最小二乗法は、後続の繰り返しの式によって発生した誤差の二乗の和を最小にする。例えば、これに限定されないが、レーベンバーグ−マーカートアルゴリズムなどの、非線形方程式に対する任意の適切な最小二乗法を用いることができると考えられる。ステージ445の式において、「R」、「C」、「A」、及び「B」は、式フィッティング処理中に推定される導電率推定パラメータであり、「t」は測定パルスの開始時の立ち上がりエッジに対する秒単位の経過時間であり、「V」は測定パルスのボルト単位の振幅であり、「I」は所与の時間tにおいてセル125を流れるアンペア単位の電流の値である。
【0079】
ステージ445の式が方形波パルス列の測定パルスの期間にセル125を流れる電流の正味の伝導率データ値にフィッティングされて、パラメータR、C、A、及びBが推定されると、制御ユニット151は、セル125内の流体の生の導電率(G
T)を確認することができ、これは1/Rである。しかし、所定時間内に、制御ユニット151が、ステージ445の式を方形波パルス列の測定パルスの期間にセル125を流れる電流の正味の値にフィッティングすることができない場合には、制御ユニット151は、ステージ450の式を用いてセル125内の流体の導電率(G
T)を算出する。
【0080】
一実施形態では、ステージ445の式を電流の正味の値にフィッティングするための所定時間は、約1ms〜100msである。しかし、他の実施形態では、当業者であれば、制御ユニット151の計算能力だけでなく、ユーザが最終的な導電率の結果をどの程度速く必要とするかに応じて、異なる適切な所定時間を選択できると考えられる。
【0081】
ステージ450の単一指数方程式を用いる場合には、測定パルスの開始時における立ち上がりエッジに対する経過時間の関数として、方形波パルス列の測定パルスの期間にセル125を流れる正味の電流の値に式をフィッティングするために、制御ユニット151は、リニア曲線(対数プロットで)に対する最小二乗を最小にする通常のフィッティングアルゴリズムを採用する。したがって、単一指数方程式の解は、代数を用いて到達することができる。
【0082】
【数4】
上記のステージ450の式において、「R」及び「C」は、曲線フィッティング処理中に算出されるパラメータであり、「t」は測定パルスの開始時の立ち上がりエッジに対する秒単位の経過時間であり、「V」は測定パルスのボルト単位の振幅であり、「I」は所与の時間「t」においてセル125を流れるアンペア単位の正味の電流の値である。ステージ445の式がR及びCについて解かれると、制御ユニット151は、セル125内の流体の導電率(G
T)を確認することができ、これは1/Rである。
【0083】
ステージ455の式を用いる場合には、制御ユニット151は、セル125内の流体の生の導電率(G
T)を確認するためにRの平均値を算出し、これは1/Rである。
【0084】
【数5】
上記のステージ455の式において、「R」はセル125内の流体の抵抗であり、「N」はデータセットのデータ数であり、「t」は測定パルスの開始時の立ち上がりエッジに対する秒単位の経過時間であり、「V」は測定パルスのボルト単位の振幅であり、「i
t」は所与の時間tにおいてセル125を流れるアンペア単位の正味の電流の値である。
【0085】
セル125内の流体の導電率(G
T)がステージ445、450、又は455の式のうちの1つを用いて確認されると、プログラムはステージ460及び480に進む。
【0086】
流体の導電率の測定値は流体の温度に依存しているので、産業界では、一般に導電率測定値を、温度25℃の流体で得られたように、正規化(又は温度補正)している。したがって、ステージ480では、温度補正された伝導率値「G
T25」を得るために、ステージ410でユーザによって選択されたモデル化合物を用いて、導電率の温度補正アルゴリズムが生の導電率「G
T」に適用される。「G
T」はステージ445、450、又は455のうちの1つで算出されたセル125を流れる流体の最新の生の伝導率(1/R)であり、「G
T25」は、流体が温度25℃である場合の、セル125を流れる流体の導電率である。補正は、以下の補正公式を用いて計算される。
【0087】
【数6】
ここで、「Gt
25(H
2O)」は25℃における純水の導電率であり、「Gt(H
2O)」は温度T(セル125内を流れる流体の平均温度)における純水の導電率であり、Pは以下の形式の多項式である。
【0088】
【数7】
ここで、a
0、a
1、a
2、及びa
3は選択されたモデル化合物に専用のパラメータであって、The Equivalent Conductance of the Separate Ions table in Smithsonian Physical Tables,Volume 71,by Smithsonian Institution,Frederick Eugene Fowle;page 352,Table424(1920)から導出されたものであり、これは参照により本明細書に組み込まれ、
図6に示すように関係する部分を複製した。
【0089】
さらに、「Gt
25(H
2O)」及び「Gt(H
2O)」の値をTable3,Physical Parameters and Calculated Conductivity and Resistivity,of Light,Truman S.,Stuart Licht,Anthony C.Bevilacqua,and Kenneth R.Morashc;The Fundamental Conductivity and Resistivity of Water;Electrochemical and Solid−State Letters.Vol.8,No.1(2005):E16−E19から得ており、これは参照によって本明細書に組み込まれ、
図5に示すように関係する部分を複製した。「Gt
25(H
2O)」の値は、25℃の純水の理論的な導電率であり、55.01nS/cmである。「Gt(H
2O)」の値は、セル125内を流れる流体の温度によって決定される。
【0090】
したがって、セル125を流れる水の温度が30℃の場合には、「Gt(H
2O)」値は70.97nS/cmになる。セル125を流れる水の温度が
図5の2つの温度値の間である場合には、「Gt(H
2O)」の値を確認するために補間が用いられる。
図5及び
図6の表の内容は、制御ユニット151のメモリ152に記憶されると考えられる。制御ユニット151は、必要に応じて補間を用いて、セル125を流れる水の温度に基づいて「Gt(H
2O)」の値を確認する。
【0091】
したがって、セル125を流れる水が30℃であり、補正がNaClについて行われている場合には、補正公式は以下のようになる。
【0092】
【数8】
図7に示すように、
図6の各所与の流体温度におけるNaイオン及びClイオンのコンダクタンス値を加算して、NaClの合計コンダクタンス値を温度に対してプロットし、3次多項式をNaClの合計コンダクタンス値にフィッティングすることにより、NaClの多項式「P」が得られる。
図7では、3次多項式を用いているが、当業者であれば、より高次又はより低次の多項式を合計コンダクタンス値にフィッティングさせるように選択することができると考えられる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の一般的に使用されるモデル化合物についての多項式Pの係数は、工場出荷時にメモリ152にプログラムされると考えられる。
【0093】
一実施形態では、温度補正アルゴリズムは、モデル化合物NaClに基づいている。しかし、他の実施形態では、当業者であれば、KCl又はHClなどの異なるモデル化合物についての温度補正アルゴリズムを適用することを選択できると考えられる。したがって、1つ又は複数のモデル化合物に対応する多項式Pの係数の値は、メモリ152に記憶されると考えられる。ユーザに対して、利用可能なモデル化合物のリストが提供され、ステップ480で生の導電率値(G
T)に適用して温度補正された伝導率値(G
T25)を生成する温度補正アルゴリズムと共に用いるためのモデル化合物を選択するように、ステップ410で求められる。さらに、いくつかの実施形態では、ユーザがステップ410で多項式Pのユーザ自身の係数値を制御ユニット151に入力し、メモリ152に記憶することができると考えられる。
【0094】
ステージ485では、セル125内の流体の生の導電率(G
T)、温度、温度補正された導電率(G
T25)値は、ディスプレイ160を介してユーザに報告され、制御ユニット151に記憶される。
【0095】
ステージ460では、TIA利得、駆動周波数、測定点、及びデューティサイクルについての新たな方形波パルス列生成パラメータ値が、ステージ445、450、又は455のうちの1つで算出されたセル125を流れる流体の最新の生の導電率(G
T)値に基づいて、ルックアップテーブル(表1)から選択される。方法400の次の繰り返しのための回復パルス(t
R)の持続時間の新しい値は、上述したように、以下の式を用いて得られる。
【0096】
【数9】
ステージ490では、新たな方形波パルス列パラメータ値が制御ユニット151に記憶される。ステージ490の後、次のデータ収集処理がステージ420で制御ユニット151によって始動される。制御ユニット151に記憶された新たな方形波パルス列パラメータ値は、ステージ425及び430で次の方形波パルス列の特性を決定する。方法400の前の繰り返し期間に確認された生の導電率値(G
T)は、ステージ425で方形波パルス列の測定パルスの期間に取得されたセル125を流れる正味の電流の値を用いて次の生の導電率値を確認するために、ステージ445、450、又は455の式が制御ユニット151によって用いられるか否かを決定する。
【0097】
したがって、図から分かるように、方法400の前の繰り返し期間に確認された生の導電率値は、利得制御回路スイッチ130の位置を決定するために用いられ、その位置は、セル回路のトランスインピーダンスアンプの帰還抵抗値を決定する。さらに、方法400の前の繰り返し期間に確認された生の導電率値は、また、ステージ425及び430で新しい方形波パルス列生成パラメータ値、及び次の方形波パルス列の特性を決定するために用いられる。
【0098】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明から逸脱することなく変更が成されてもよいことが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定められ、字義的に又は均等的に特許請求の範囲の意味に含まれるあらゆる装置、処理、及び方法が含まれることが意図されている。