特許第6396345号(P6396345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィの特許一覧

特許6396345改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール
<>
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000004
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000005
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000006
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000007
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000008
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000009
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000010
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000011
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000012
  • 特許6396345-改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396345
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】改善された光特性を有する発光ダイオードモジュール
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/00 20180101AFI20180913BHJP
   F21V 5/10 20180101ALI20180913BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20180913BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20180913BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20180913BHJP
   G09F 13/20 20060101ALI20180913BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20180913BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180913BHJP
【FI】
   F21V5/00 610
   F21V5/10
   F21V9/08 400
   F21V9/32
   G02B5/20
   G09F13/20 G
   G09F13/04 L
   F21Y115:10
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-562464(P2015-562464)
(86)(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公表番号】特表2016-519829(P2016-519829A)
(43)【公表日】2016年7月7日
(86)【国際出願番号】IB2014059574
(87)【国際公開番号】WO2014141030
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月8日
(31)【優先権主張番号】61/776,108
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ダイケン デュランダス コーネリウス
(72)【発明者】
【氏名】ユー ジャンホン
(72)【発明者】
【氏名】クルース ハンス
(72)【発明者】
【氏名】サンダース レナトゥス ヘンドリクス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ジャグト ヘンドリック ヨハネス ボウデワイン
(72)【発明者】
【氏名】アサディ カマル
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−501865(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/109100(WO,A2)
【文献】 特表2012−503290(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/047937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 9/08
F21V 5/00
F21V 5/10
F21V 9/32
G02B 5/20
G09F 13/04
G09F 13/20
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光出射窓、及び前記光出射窓の内表面上に配置される蛍光体コーティングと、
前記光出射窓を通る光路を有する光を提供する光源と、
を含む照明モジュールであって、
前記光出射窓は彫刻され、これにより前記蛍光体コーティングに後方散乱される光の量を増大させる
照明モジュール。
【請求項2】
前記照明モジュールは発光ダイオードモジュールであり、前記光源は発光ダイオードである、請求項1に記載の照明モジュール。
【請求項3】
前記光出射窓は、ガラス材料、PMMA等の半透明ポリマ材料、アルミナ等のセラミック材料、酸窒化アルミニウム(AlON)、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)又はルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG)等のセラミック蛍光体、サファイア又はスピネル等の鉱物系材料、及びセリウムをドープしたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)又はセリウムをドープしたルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG:Ce)等の蛍光性セラミックからなるグループから選択される材料を含む、請求項1又は2に記載の照明モジュール。
【請求項4】
前記光出射窓の表面は、前記表面の表面積の10%〜100%程度まで彫刻される、請求項1乃至の何れか一項に記載の照明モジュール。
【請求項5】
前記光出射窓は、視覚パターンに従って彫刻される、請求項1乃至の何れか一項に記載の照明モジュール。
【請求項6】
前記光出射窓の外表面に隣接して配置されるカバーを更に含む、請求項1乃至の何れか一項に記載の照明モジュール。
【請求項7】
前記光源は、反射性の内壁を有するハウジングの底面に配置される、請求項1乃至6の何れか一項に記載の照明モジュール。
【請求項8】
光出射窓、及び前記光出射窓の内表面上に配置される蛍光体コーティングと、前記光出射窓を通る光路を有する光を提供する光源とを含み、第1の出力色温度を有する、照明モジュールを提供するステップと、
前記光出射窓を彫刻するステップであって、これにより前記蛍光体コーティングに後方散乱される光の量を増大させるステップと、
を含む照明モジュールの出力色温度を調整するための方法。
【請求項9】
前記彫刻するステップは、レーザ彫刻によって実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の出力色温度を測定するステップを更に含み、前記彫刻するステップは測定された前記第1の出力色温度に基づいて実行される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記彫刻するステップは、前記光出射窓の表面上で、前記表面の10%〜100%の範囲の表面積上で実行される、請求項8乃至10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記彫刻するステップは、視覚パターンが彫刻されるように実行される、請求項8乃至11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記彫刻するステップの前に実行される、前記照明モジュールを組み立てるステップを更に含む、請求項8乃至12の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置の分野に関し、改善された照明モジュールを対象とする。
【背景技術】
【0002】
照明は、多種多様な様々なタイプの光源によって提供され得る。光源は、典型的には、ハウジング内の1以上の光源を含む照明モジュールの形式で提供される。
【0003】
今日十分に確立された光源の一例は、発光ダイオード(LED)である。LEDモジュールは、典型的には、ハウジング内に配置される1以上のLEDを含む。LEDは、典型的には、更なる構成要素を含むLEDチップ上に提供される。ハウジングは、LEDによって放射される光が光出射窓を通って出射する、当該光出射窓を有する。
【0004】
光出射窓は、アルミナ等のセラミックで作られる。提供される光の所望の色を提供するために、光出射窓はコーティングされる。一般的に用いられるコーティングは、例えば黄色光を提供するための蛍光体コーティングを含む。例として、白色光を達成するための1つの態様は、青色光を提供するLEDチップを、光出射窓を青色LED光が通過する、蛍光体コーティングされた当該光出射窓と組み合わせることである。組合せの結果として、白色の出力光が得られる。
【0005】
所定の光色、光拡散、色温度、光強度、色相、及び色値等の特性を有する光を提供する照明モジュールを達成することが望まれる。光特性を改善するための多くの様々なアプローチがある。例えば、コーティングを含む照明モジュールにとって、1つの問題点は、コーティングにおけるばらつきが出力光の特性に大きな影響を有する恐れがあることである。厚さ、均一性、及び層密度等の特性におけるばらつきは、ばらついた光特性をもたらす。したがって、所望の光特性が得られるように照明モジュールの製造を制御することは困難である恐れがある。更に、1バッチの照明モジュール内の各照明モジュールに対して同一の光特性を得ることは困難である恐れがある。
【0006】
改善されたコーティングの開発、及び当該コーティングの制御を改善することは、この欠点を軽減させ得る。例えば米国特許第7,879,258号は、光品質を改善し、蛍光体層を調節することによって光拡散特性を調整する方法を提供する、LEDモジュールのための蛍光体層を開示する。
【0007】
これは、光特性がどのように改善され得るかの一例である。LEDモジュール等の照明モジュールのために、光特性、及び光特性の制御を更に改善することがもちろん望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、改善された光特性を有する照明モジュールを提供することである。本発明の詳細な目的は、照明モジュールからの光出力の色温度の制御を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によると、上述の目的及び他の目的は、光出射窓と、光出射窓を通る光路を有する光を提供する光源とを含む照明モジュールであって、光出射窓の表面は、照明モジュールの出力色温度が調整されるように彫刻される照明モジュールによって達成される。したがって、彫刻の後の照明モジュールの出力色温度は、彫刻の前の出力色温度と異なる。すなわち言い換えると、彫刻された光出射窓は、彫刻を有しない光出射窓の色温度とは異なる色温度を有する。
【0010】
既知の技術は、照明モジュールのLED等の光源、光源チップ、及び/若しくはコーティングを修正することによって、又はディフーザ等の更なる構成要素を追加することによって、出力光の光拡散や光色等の光特性がどのように修正され得るかの例を含む。ここで驚くべきことに、照明モジュールの光出射窓を修正することによっても、出力光の特性は修正され得ることが、発明者によって理解された。詳細には、光出射窓を彫刻することによって、出力光の色温度が調整され得ることが理解された。光出射窓の表面が彫刻されるか、又は光出射窓のサブ面に、すなわち光出射窓の内部の内層上に彫刻されてもよい。
【0011】
光出射窓の表面の、又は光出射窓のサブ面の約10%の彫刻は、約20Kの色温度の下方調整を提供し得ることが示された。
【0012】
LEDモジュールのために、出力光の色温度は約20K〜約260Kの範囲で下方調整されることができ、すなわち、ここで第2の色温度は第1の色温度よりも20K〜260Kの間低いことが示された。調整の程度は、光出射窓のどれだけ多くが彫刻されているかに依存する。光出射窓の表面が彫刻された測定動作において、光出射窓の総表面積の10%を彫刻したときに20Kの下方調整が達成され、光出射窓の総表面積の100%を彫刻したときに260Kの下方調整が達成された。これらの調整値は、光出射窓の総表面積のどれだけ多くが彫刻されているかに依存して、LEDモジュールの測定された第1の色温度の0.7%〜9.6%に相当する。
【0013】
更に、彫刻された光出射窓を有するLEDモジュールの形式の照明装置にとって、いかなる彫刻も有しないLEDモジュールに対して有意な光出力損失のないことが示された。
【0014】
別の実施形態では、例えばレーザ彫刻されたパターンを用いて、散乱又は反射の量を制御するか、又は調整することによって、照明モジュールの色温度は増大される。この場合、光出射窓は所定の散乱特性を有する。例えば、光出射窓がセラミック層である場合、光出射窓の気孔率の修正は、散乱特性の修正を提供する。光出射窓の気孔率の増大は増大された散乱をもたらし、これは、散乱されてこの場合は蛍光体コーティングに戻る光の増大を提供し、よりウォームな色をもたらす。したがって、散乱の量の低減はよりクールな色、すなわち、より高い色温度を与える。代替的に、光出射窓は、光出射窓の上部に付与される拡散層又は一部反射層を含んでもよい。この層の少なくとも一部の、例えばレーザ彫刻等の彫刻による、制御された態様における除去は、色温度の増大をもたらす。
【0015】
表面は、光路を考慮した、すなわち光源の正面の、光出射窓の外表面である。したがって、照明モジュールは、彫刻の前に解体され、及び彫刻の後に組み立て直される必要がない。
【0016】
光出射窓はコーティングを含む。コーティングは蛍光体コーティングである。コーティングは、光路を考慮した、すなわち言い換えると光源の正面の、光出射窓の内表面上に配置される。内表面上に、又は照明モジュールの内部の任意の場所にコーティングを配置することによって、コーティングは彫刻の間、破損されるのを防止される。
【0017】
光出射窓は、全体又は一部が透明材料、半透明材料、又は蛍光材料で作られる。特に、光出射窓は、ガラス材料、PMMA等の半透明ポリマ材料、アルミナ等のセラミック材料、酸窒化アルミニウム(AlON)、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)又はルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG)等のセラミック蛍光体、サファイア又はスピネル等の鉱物系材料、及びセリウムをドープしたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)又はセリウムをドープしたルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG:Ce)等の蛍光性セラミックからなるグループから選択される材料を含む。
【0018】
彫刻は、光出射窓の表面上で実行される。好ましくは、彫刻は全表面の10〜100%の表面積上で実行される。
【0019】
代替的に又は追加的に、彫刻は、光出射窓のサブ面で、すなわち光出射窓の内部の内層上で実行されてもよい。したがって、彫刻は光出射窓の内部に配置される。サブ面の彫刻は、レーザ彫刻によって達成され得る。
【0020】
照明モジュールは、表面に隣接して配置されるカバーを含んでもよい。カバーは、彫刻、及び例えば射出成形されているいかなる視覚パターンも、例えば埃又は物理的損傷から保護し得る。
【0021】
本発明の第2の態様によると、この目的及び他の目的は、光出射窓と、光出射窓を通る光路を有する光を提供する光源とを含み、第1の出力色温度を有する、照明モジュールを提供するステップと、光出射窓を、照明モジュールの出力色温度が第2の出力色温度に調整されるように彫刻するステップとを含む、照明モジュールの出力色温度を調整するための方法によって達成される。
【0022】
方法は、彫刻するステップの前に実行される、照明モジュールを組み立てるステップを更に含む。したがって、LEDモジュールの調整は、LEDモジュールの組立てに対して分離したステップとして実行され得る。
【0023】
彫刻は、光出射窓の外表面上で実行される。この特徴によると、照明モジュールは、彫刻の前に解体され、及びその後組み立て直される必要がない。
【0024】
代替的に、彫刻は、光出射窓のサブ面上で実行されてもよい。サブ面レーザ彫刻(SSLE)等のサブ面彫刻を用いることによって、照明モジュールは、彫刻の前に解体され、及びその後組み立て直される必要がない。
【0025】
方法は、第1の出力色温度を測定するステップを更に含む。測定は積分球によって実行される。彫刻は、測定された第1の出力色温度に基づいて実行される。したがって、色温度は所定値に調整され得る。例えば、1バッチの照明モジュール内の各照明モジュールが固定の目標色温度に調整され得る。
【0026】
彫刻は、視覚パターンが彫刻されるように実行される。視覚パターンは、情報を提供する文字列を含むか、又は例えば製造業者のロゴタイプ若しくは商標を含む。ロゴタイプ等の視覚パターンが彫刻されることによって、出力光の量は、印刷するか又は塗装を加える等の視覚パターンを加えるための従来の方法に対して大幅に影響されない。こうした従来の方法は、光が照明モジュールを出射するのを妨げるパターンを生成する。従来の視覚パターンは、光出力レベルを許容可能なレベルに保つために、光出射窓の表面積の10%を超えて覆ってはならない。ライトバルブに対しては、視覚パターンはこうした小さな表面積上で達成され得る。LEDモジュール等のより小さなモジュールに対しては、ロゴタイプの形式の視覚パターンは、表面積の10%までを覆うことしか許されない場合、ユーザにとって読み取り可能ではない。本発明によると、彫刻された視覚パターンは、出力光の量の大幅な減少なしに、光出射窓の表面又はサブ面の100%まで覆うことができる。したがって、視覚パターンは、LEDモジュール等の小さな照明モジュール上でも読み取り可能とされ得る。
【0027】
彫刻は、照明モジュール内のコーティングの形式に基づいて選択される。例えば、コーティングが様々な変換特性を有する複数の領域を含む場合、彫刻は様々な調整効果を有し得る。光は彫刻の位置に依存して、彫刻によってコーティングの様々な領域に後方散乱される。したがって、彫刻の位置は、所望の調整効果に基づいて配置される。
【0028】
代替的に又は追加的に、彫刻の位置は、照明モジュールの光源の位置に依存して選択されてよい。LEDの真上に相当する光出射窓の位置での彫刻は、例えば2つのLEDの間に相当する位置といったLEDの真上に相当しない位置での彫刻よりも、色温度の調整に、より大きな影響を有することが示された。
【0029】
光出射窓は射出成形されてもよい。こうした光出射窓は、ロゴタイプ又は情報を提供する文字列等の射出成形されたパターンを含む。射出成形されたパターンは、ネガ又はポジであってよい。光出射窓の彫刻は、射出成形されたパターン内で実行されてよい。
【0030】
上述の第1の態様の特徴は、この第2の態様にも当てはまる。更に、上述の第2の態様の特徴は、第1の態様にも当てはまる。
【0031】
本発明は、請求項に記載される特徴の全ての可能な組合せに関することが留意される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のこの態様及び他の態様は、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【0033】
図1】本発明による照明モジュールを示す。
図2a】照明モジュールの出射窓の様々な実施形態を示す。
図2b】照明モジュールの出射窓の様々な実施形態を示す。
図2c】照明モジュールの出射窓の様々な実施形態を示す。
図2d】照明モジュールの出射窓の様々な実施形態を示す。
図2e】照明モジュールの出射窓の様々な実施形態を示す。
図2f】照明モジュールの出射窓の様々な実施形態を示す。
図3】本発明による彫刻によって光出力がどのように影響を受けるかについての図である。
図4】本発明による彫刻によって光出力がどのように影響を受けるかについての図である。
図5】発光ダイオードモジュールの出力色温度を調整するための方法を示す。
【0034】
図は、本発明の実施形態の全体的構造を示すために提供される。全体にわたり、類似の参照番号は類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の現在好ましい実施形態が示される添付の図面を参照して、本発明は以下に更に十分に説明される。しかしながら、本発明は多くの様々な形式で具体化されることができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、当業者に対し徹底かつ完全性のために提供され、本発明の範囲を十分に伝える。
【0036】
以下の開示は、光源として発光ダイオード(LED)を含む発光ダイオードモジュールの形式の照明モジュールを参照する。添付の請求項の範囲内で、他のタイプの照明モジュール及び光源も同様に利用され得ることが理解される。
【0037】
図1において、照明モジュールがどのように構成されるかの例として提供される、LEDモジュールの形式の照明モジュール1の断面が示される。添付の請求項の範囲内で、他の構成、形式、及び形状の照明モジュールが可能であることが理解される。
【0038】
図1のLEDモジュールは、ハウジング11の底面上に配置されるLEDチップの形式の光源10を含む。ハウジング11は環状の形状を有し、したがって円盤状のLEDモジュールを提供する。ハウジング11の内壁は、光源10によって提供される光を反射するための反射性材料であるか、又はこうした反射性材料を備えてよい。ハウジング11は、例えば透明樹脂の化合物で充填される。
【0039】
光源10は、例えば青色、赤色、緑色及び/又は紫外線(UV)波長の光を生成する1以上のLEDを含む。
【0040】
LEDモジュールの形式の照明モジュール1は、光出射窓12を更に含む。光出射窓12は、外表面Sと内表面とを有し、光源10によって生成された光は、最初に内表面において光出射窓に入り、次いで外表面Sを介して光出射窓を出射する。光出射窓12は、全体又は一部が透明材料、半透明材料、又は蛍光材料で作られる。実施可能な材料の非限定的な例は、アルミナ等のセラミック材料、ガラス材料、又は酸窒化アルミニウム(AlON)である。特に、光出射窓12は、高熱伝導性アルミナの窓であってよい。代替的に、光出射窓12は、アルミナセラミックと類似するイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)又はルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG)等のセラミック蛍光体であってよい。代替的に、光出射窓12は、サファイア(単結晶酸化アルミニウム)又はスピネル等の鉱物系材料で作られてもよい。代替的に、光出射窓12は、PMMA等のポリマ材料で作られてもよい。代替的に、光出射窓12は、セリウムをドープしたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)又はセリウムをドープしたルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG:Ce)等の蛍光性セラミックで作られてもよい。
【0041】
光出射窓12の内表面にコーティング13が配置される。コーティング13は蛍光体コーティングである。コーティング13は、コーティングを通過する光の波長を変換する効果を有する。光は、例えば黄色、赤色、又は緑色へと変換され得る。コーティング13は、例えば2以上の蛍光体コーティングの混合といった様々なコーティングの混合であってよい。コーティング13は、積層構造内に配置される複数の様々なコーティングを含んでよい。コーティング13の異なる領域は異なる効果を有してよく、例えば、第1の領域は光を緑色へと変換し、第2の領域は光を赤色へと変換してよい。
【0042】
光源10は、光出射窓12を通る光路を有する出力光を提供する。出力光とは、照明モジュール1によって提供され、この場合においては光出射窓12を通って提供される光が意味される。
【0043】
図1は、光源10によって提供される光が照明モジュール1の内部をどのように進むかの例を示す。第1の光路101は、コーティング13及び光出射窓12を通って真っ直ぐ進む光を表す。第2の光路102は、ハウジング11の内表面で反射され、その後コーティング13及び光出射窓12を通って進む光を表す。第3の光路103は、コーティング13で反射され、ハウジング11の内表面に向かって戻り、ハウジング11の内表面で反射され、その後コーティング13及び光出射窓12を通って進む光を表す。
【0044】
照明モジュール1の代替的な構成では、光出射窓12及び/又はコーティング13は、光源10に直接接触して配置される。こうした実施形態では、光出射窓12及び光源10は、好ましくは同様のサイズである。例えば、蛍光性コーティング又は蛍光体層が、光源10を形成するLEDチップの上部に接着される。こうした構成は、典型的なLED構造の例である。実施可能な構成の別の例は、光源10を形成するLEDチップの上部に配置された光出射窓12の内表面に配置される蛍光体コーティングを有する光出射窓12である。
【0045】
照明モジュール1からの出力光、すなわち光出射窓12から出て提供される光の特性は、光源10とコーティング13との組合せに依存する。例えば、光を黄色光へと変換する蛍光体コーティングは、白色の出力光を提供するために、青色光を生成する光源との組合せで用いられる。白色の出力光は、LEDチップから放射される青色光と、当該青色光の一部を励起源として用いて蛍光体コーティングから放射される黄色光との組合せによって形成される。
【0046】
また、ここで驚くべきことに、光出射窓12の修正によっても、出力光の他の特性が修正され得ることが発明者によって理解された。詳細には、光出射窓12を彫刻することによって、出力色温度とも呼ばれる出力光の色温度が調整され得ることが理解された。
【0047】
本発明は、光源10からの光出力の一部が彫刻された表面層に当たり、部分的に散乱するという原理に基づく。したがって、この出力光の一部は、照明モジュール内へと戻って進む。
【0048】
本実施形態では、光源10からの青色光の一部はコーティング13に当たり、後方散乱された光は、コーティング13において別の波長へと変換される。青色光を提供する光源及び蛍光体コーティングの場合、後方散乱された青色光は、蛍光層内でよりウォームな光色をもたらす、より高い波長へと変換される。変換された光が照明モジュールから出て進み、残りの出力光と混合するとき、全体の出力光がよりウォームになる。
【0049】
彫刻の技術は、いかなる特定の技術にも限定されないが、しかしながら、レーザ彫刻が好ましい。化学的エッチング、電子ビーム処理、機械的彫刻、ブラスト加工、及び紙やすり加工等の他の彫刻技術も実施可能である。以下の開示はレーザ彫刻を参照するが、他の彫刻技術も同様に利用され得ることが理解される。
【0050】
光出射窓12の外表面Sは、例えば1064nmのYAGレーザ等の短パルス固体レーザといったレーザを用いて彫刻される。外表面Sを彫刻することによって、光出射窓12の内表面上のコーティング13は、彫刻及び彫刻処理によって影響を受けるのを防止され得る。
【0051】
光出射窓12の外表面S及び/又は内部面を彫刻することによって、出力光の色温度が調整されることが理解された。調整の程度は、どれだけ多くの表面積が彫刻されているかに依存する。したがって、彫刻は、所定の色温度の調整を達成するために所定の態様で実行される。
【0052】
彫刻はパターンに従って実行される。パターンは視覚パターンである。図2a乃至図2fは、視覚パターンが彫刻された照明モジュール1の様々な実施形態を示す。図2a乃至図2fは、照明モジュール1の上から見た図であり、すなわち、外表面Sが観察者の方に向いている。これらの実施形態では、彫刻は外表面S上で実行される。彫刻された視覚パターンは、少なくとも照明モジュール1が当該照明モジュール1のオフ状態のとき、すなわち照明モジュール1がいかなる光も放射しないときに可視である。
【0053】
図2a及び図2bは、情報を提供する文字列20a、20bが彫刻によってどのように組み込まれるかを示す。
【0054】
図2c及び図2dは、均一なパターン20c、20dが彫刻によってどのように組み込まれるかを示す。
【0055】
図2eは、ロゴタイプ20eが彫刻によってどのように組み込まれるかを示す。
【0056】
図2fは、非均一的なパターン20fが彫刻によってどのように組み込まれるかを示す。
【0057】
示されるように、パターンは非常に自由に選択され得る。
【0058】
彫刻は、コーティング13の形式に基づいて選択される。例えば、コーティング13が様々な変換特性を有する複数の領域を含む場合、彫刻は様々な調整効果を有し得る。光は彫刻の位置に依存して、彫刻によってコーティング13の様々な領域に後方散乱される。したがって、彫刻の位置は、所望の調整効果に基づいて配置される。
【0059】
代替的に又は追加的に、彫刻の位置は、この場合にはLEDチップ10である光源の位置に依存して選択されてもよい。LEDチップ10内のLEDの真上に相当する光出射窓12の位置での彫刻は、例えば2つのLEDの間に相当する位置といったLEDの真上に相当しない位置における彫刻よりも、色温度の調整に、より大きな影響を有することが示された。
【0060】
光出射窓12の外表面Sの総面積の約10%を彫刻することによって、出力光の特性がどのように影響を受けるかを研究するために、最初の測定動作のセットが実行された。測定動作では、いかなる彫刻も有しないLEDモジュール1の光学性能が積分球を用いて測定された。その後、約10%の表面積を覆うロゴタイプが光出射窓12の外表面S上にレーザ彫刻された。最後に、レーザ彫刻の後のLEDモジュール1の光学性能が再び測定された。測定動作の結果は、下記の表1及び図3に提示される。
【0061】
図3は、光出射窓12を彫刻する前及び彫刻した後の、波長の関数としての出力電力を示す。実線の曲線30はレーザ彫刻の前を表し、破線の曲線31はレーザ彫刻の後を表す。
【表1】
【0062】
出力電力の測定動作から、出力光の電力はわずかに増大したことが結論付けられる。特に、彫刻は、光出力に有意に又は否定的に影響を及ぼさなかったことが結論付けられる。
【0063】
表1から、光出射窓12のレーザ彫刻は、出力光の色温度の調整のために付与され得ることが明らかである。これらの測定動作で用いられたような10%の表面積のレーザ彫刻を有すると、色温度は約20Kだけ下げて調整され得る。表1によると、総光出力(電力及び光束)は、約1%だけ増大される。
【0064】
また、光出射窓12の外表面Sの総面積の100%を彫刻することによって、出力光の特性がどのように影響を受けるかを研究するために、2番目の測定動作のセットが実行された。測定動作は、彫刻の程度の点を除き、前の測定動作と同じ態様で実行された。測定動作の結果は、下記の表2及び図4に提示される。
【0065】
図4は、光出射窓12を彫刻する前及び彫刻した後の、波長の関数としての出力電力を示す。実線の曲線40はレーザ彫刻の前を表し、破線の曲線41はレーザ彫刻の後を表す。
【表2】
【0066】
表2から、光出射窓12のレーザ彫刻は、出力光の色温度の調整のために付与され得ることが明らかである。これらの測定動作で用いられたような100%の表面積のレーザ彫刻を有すると、色温度は270Kだけ下げて調整され得る。
【0067】
測定動作のセットの結果は、色温度が約20K〜約260Kの範囲で下方調整され得ることを示す。測定動作のセットにおいて2774K〜2812Kの範囲内にある出力光の全体の色温度に対して、色温度の当該調整は微調整である。色温度は、どれだけ多くの表面が彫刻されているかに依存して、0.7%〜9.6%調整され得る。
【0068】
照明モジュール1の出力色温度を調整するための対応する方法が図5に示される。方法は、第1に照明モジュール1を組み立てるステップ500と、第2に照明モジュール1を提供するステップ501と、第3に照明モジュール1の第1の出力色温度を測定するステップ502と、第4に照明モジュール1の表面を彫刻するステップ503とを含む。
【0069】
測定動作のセットの上記の結果によると、LEDモジュール1からの出力光の色温度は、より低い色温度に下方調整され得る。また、出力色温度の調整は、彫刻の強度/粗さによっても影響を受ける。固定の強度/粗さを利用することで、出力色温度の調整は、彫刻される光出射窓12の表面積の量によって制御され得る。この場合、出力色温度と彫刻される面積とにおける変化の間の関係は、線形であることが予想される。
【0070】
別の実施形態では、照明モジュール1の色温度は、例えばレーザ彫刻されたパターンを用いて、散乱又は反射の量を制御し、又は調整することによって増大される。この場合、光出射窓12は所定の散乱特性を有する。例えば、光出射窓12がセラミック層である場合、光出射窓12の気孔率の修正は、散乱特性の修正を提供する。光出射窓12の気孔率の増大は、増大した散乱をもたらし、これは、散乱してこの場合は蛍光体コーティングであるコーティング13に戻る光の増大を提供し、よりウォームな出力光の色をもたらす。したがって、散乱の量の低減は、よりクールな色、すなわち、より高い色温度を与える。代替的に、光出射窓12は、光出射窓12の上部に付与される拡散層又は一部反射層(示されていない)を含んでもよい。この層の少なくとも一部の制御された態様における除去は、色温度の増大をもたらす。例えば、光出射窓12上に例えばパターンに従ってレーザ彫刻された散乱ガラス層又は散乱ポリマコーティングが提供され、これは色温度の増大をもたらす。
【0071】
光出射窓12を彫刻するステップの前の、照明モジュール1を組み立てるステップによって、照明モジュール1は製造ラインに沿ったある場所で組み立てられ、レーザ彫刻のために別の場所に運搬され得る。照明モジュール1は既に組み立てられているので、運搬中に照明モジュール1のいかなる内部構成要素も損傷するリスクはない。
【0072】
第1の出力色温度を測定するステップによって、照明モジュールの最終的な第2の出力色温度が所定値に基づいて調整され得る。例えば、1バッチの照明モジュール内の各照明モジュールが、2750Kの目標色温度に調整されるべきことが決定される。各照明モジュールに対して測定された第1の出力色温度が、目標色温度とどれだけ異なるかに依存して、照明モジュールは様々な程度に調整される必要がある。調整された第2の色温度は、当該色温度が目標色温度と一致することを確認するために測定されてよい。
【0073】
方法は、彫刻するステップ503の後に、出力色温度を測定し、測定された出力色温度を所定の目標色温度と比較するステップを更に含んでよい。測定された出力色温度と目標色温度との間に差がある場合、方法は、目標色温度が達成されるまで彫刻し、その後出力色温度を測定するステップを更に含んでよい。
【0074】
光出射窓12は上述の説明によって彫刻される。光出射窓12の外表面Sを彫刻することによって、照明モジュール1は彫刻プロセスの前に解体される必要がない。光出射窓12のサブ面、すなわち光出射窓12の内部の層が、代替的に又は追加的に、彫刻プロセスの前の照明モジュール1の解体の必要なしに彫刻されてもよい。
【0075】
照明モジュール1の解体が防止される場合、ハウジング11内に配置されるいかなるコーティング13も、彫刻プロセスの間、損傷から保護され得る。
【0076】
方法は、照明モジュール1にカバーを配置するステップ(示されていない)を更に含んでもよい。カバーは、光出射窓12の外表面Sに隣接して配置される。カバーによって、オプションで射出成形されたパターンを含む外表面Sは、例えば埃又は物理的損傷から保護され得る。カバーもまた彫刻されてよい。例えば、照明モジュール1にカバーを配置した後に、カバー内に視覚パターンが彫刻されてよい。
【0077】
光出射窓12は、射出成形されてもよい。こうした光出射窓12は、ロゴタイプ等の射出成形されたパターンを含む。射出成形されたパターンは、ネガ又はポジであってよい。光出射窓12の彫刻は、射出成形されたパターン内で実行されてよい。
【0078】
本発明のためのアプリケーションの範囲は広い。本明細書に開示されたように、アルミナの、及びオプションでガラスの窓を有する照明モジュールは、1つのアプリケーションである。これらの照明モジュールは蛍光体モジュールと近接し、蛍光体モジュールの近傍にあり、及び蛍光体モジュールの遠隔にあってもよい。また、同一の原理に基づく他の光学的アプリケーション、すなわち、光が光出射窓内の彫刻において後方散乱され、後方散乱された光が例えばコーティングによって照明モジュール内で別の波長に変換され、したがって照明モジュールの出力光の光特性、特に色温度を修正し得る光学的アプリケーションも含まれる。
【0079】
要約すると、本発明は、照明モジュール1の出力色温度を調整するための方法に関し、方法は、光出射窓12と、光出射窓12を通る光路101、102、103を有する光を提供する光源10と含む、第1の出力色温度を有する照明モジュールを提供するステップ501と、照明モジュールの出力色温度が第2の色温度に調整されるように光出射窓12の表面を彫刻するステップ503とを含む。また、本発明は、照明モジュールの光出射窓12が、照明モジュールの出力色温度が調整されるように彫刻される照明モジュール1に関する。
【0080】
当業者は、本発明が、上述の好ましい実施例に決して限定されないことを理解する。逆に、添付の請求項の範囲内で多くの改良及びバリエーションが可能である。例えば、照明モジュールは、複数のLEDチップ又は他の光源を有し、すなわち光源のアレイ及び/又は同一の光出射窓を共有するハウジングの形式である等の、多くの様々な形状及び構成であってよい。更に、照明モジュールは、LEDモジュール以外の他のタイプの照明モジュールであってもよく、他のタイプの光源を含んでもよい。他のタイプの照明モジュールの非限定的な例は、照明バルブ、照明管、及び有機発光ダイオードモジュール(OLEDモジュール)である。
【0081】
更に、当業者によって、特許請求された発明を実施するにあたり、図面、明細書、及び添付の請求項の研究から、開示された実施形態のバリエーションが理解され達成されることができる。請求項で、「含む」の文言は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。特定の手段が、相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に用いることができないことを意味するわけではない。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3
図4
図5