特許第6396375号(P6396375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396375波形測定表示装置および波形測定表示方法
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  • 特許6396375-波形測定表示装置および波形測定表示方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396375
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】波形測定表示装置および波形測定表示方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   G01R13/20 R
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-148633(P2016-148633)
(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-17624(P2018-17624A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】峰田 香奈
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−317608(JP,A)
【文献】 特開2006−133114(JP,A)
【文献】 特開平06−324083(JP,A)
【文献】 特開平07−140177(JP,A)
【文献】 特開2013−168812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的な信号からなる対象信号をサンプリングして波形データを生成する波形データ生成部(3)と、
前記波形データ生成部にて生成された波形データをサンプル位置毎に積算した合計値として更新記憶する記憶部(4)と、
前記対象信号の波形数、前記波形データのサンプル数、前記対象信号のサンプリング時間の何れかを前記記憶部に更新記憶された波形データの読み出し開始条件として設定する設定部(2)と、
前記対象信号の波形を表示する表示部(5)と、
前記読み出し開始条件を満たしたときに、前記記憶部に更新記憶された1波形のサンプル位置毎に積算した合計値による波形データを読み出し、読み出した波形データに基づく1枚の表示画像による波形を前記表示部に描画制御する制御部(6)とを備えたことを特徴とする波形測定表示装置。
【請求項2】
周期的な信号からなる対象信号をサンプリングして波形データを生成するステップと、
前記生成された波形データをサンプル位置毎に積算した合計値として更新記憶するステップと、
前記対象信号の波形数、前記波形データのサンプル数、前記対象信号のサンプリング時間の何れかを前記更新記憶された波形データの読み出し開始条件として設定するステップと、
前記読み出し開始条件を満たしたときに、前記更新記憶された1波形のサンプル位置毎に積算した合計値による波形データを読み出し、読み出した波形データに基づく1枚の表示画像による波形を描画制御するステップとを含むことを特徴とする波形測定表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定によって得られる対象信号の波形を表示する波形測定表示装置および波形測定表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に知られている波形表示装置では、対象信号の波形を表示するにあたって、対象信号を所定のサンプリング周期でサンプリングして波形データを生成し、生成した波形データをビデオRAM(以下、VRAMという)に逐次記憶し、1波形(波形1周期)分の波形データがVRAMに記憶されると、その1波形分の波形データをVRAMから読み出して表示データ(ビデオ信号)に変換し、変換した表示データによる1枚分の表示画像を表示画面上に描画制御している。
【0003】
また、下記特許文献1に開示される波形表示装置では、複数のVRAM面で構成されるVRAMを備え、波形の表示にあたって、波形の描画更新レートの高低に応じてVRAM面毎に分けて描画を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−027505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に知られている従来の波形表示装置では、1波形分の波形データを生成してVRAMに記憶される度に表示画像の描画更新を行うため、画面更新にかかる負荷が大きく、高速な波形表示を行うことが困難であった。
【0006】
また、特許文献1の波形表示装置では、多数VRAM面で構成されるVRAMを必要とし、構成の複雑化、コストアップになり、近年における半導体技術の進化に伴う対象信号の大容量化や高速化により、VRAMの速度によるボトルネックが生じ、高速な波形表示を行う上での妨げとなっていた。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、画面更新にかかる負荷を軽減し、より高速に波形表示することができる波形測定表示装置および波形測定表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された波形測定表示装置は、周期的な信号からなる対象信号をサンプリングして波形データを生成する波形データ生成部3と、
前記波形データ生成部にて生成された波形データをサンプル位置毎に積算した合計値として更新記憶する記憶部4と、
前記対象信号の波形数、前記波形データのサンプル数、前記対象信号のサンプリング時間の何れかを前記記憶部に更新記憶された波形データの読み出し開始条件として設定する設定部2と、
前記対象信号の波形を表示する表示部5と、
前記読み出し開始条件を満たしたときに、前記記憶部に更新記憶された1波形のサンプル位置毎に積算した合計値による波形データを読み出し、読み出した波形データに基づく1枚の表示画像による波形を前記表示部に描画制御する制御部6とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された波形測定表示方法は、周期的な信号からなる対象信号をサンプリングして波形データを生成するステップと、
前記生成された波形データをサンプル位置毎に積算した合計値として更新記憶するステップと、
前記対象信号の波形数、前記波形データのサンプル数、前記対象信号のサンプリング時間の何れかを前記更新記憶された波形データの読み出し開始条件として設定するステップと、
前記読み出し開始条件を満たしたときに、前記更新記憶された1波形のサンプル位置毎に積算した合計値による波形データを読み出し、読み出した波形データに基づく1枚の表示画像による波形を描画制御するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示部の描画更新回数が大幅に減り、制御部にかかる負荷を軽減することができ、表示部の描画表示制御を行う際に表示以外の別の処理に要する負荷の影響を受けにくく、より高速な波形表示を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る波形測定表示装置のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面(図1)を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る波形測定表示装置および波形測定表示方法は、例えば被測定物(DUT)から入力される既知のパターン信号に基づく対象信号(周期的な信号)の波形を表示するものである。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態の波形測定表示装置1は、設定部2、波形データ生成部3、記憶部4、表示部5、制御部6を含んで概略構成される。
【0015】
設定部2は、例えば装置本体のキー、スイッチ、表示部5の表示画面上のソフトキーなどを含むユーザインターフェースで構成され、測定の開始や停止の指示、被測定物Wの各種測定に関するパラメータなどの設定情報を設定する際に操作される。
【0016】
また、設定部2は、制御部6が記憶部4に更新記憶された波形データの読み出しを開始するタイミングを決める読み出し開始条件を設定する際に操作される。この読み出し開始条件としては、対象信号の波形数(波形の周期数)、波形データのサンプル数、対象信号のサンプリング時間の何れかが設定される。例えば対象信号の1波形をサンプル数:1350でサンプリングする場合、対象信号の波形数:「1000」、波形データのサンプル数:「1350000」、対象信号のサンプリング時間(秒):「10」の何れかを読み出し開始条件として設定する。
【0017】
波形データ生成部3は、被測定物Wからの対象信号を入力とし、対象信号を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、所定サンプル数の波形データを生成する。例えば、1波形(波形1周期)の対象信号からサンプル数:1350の波形データ(測定データ)を生成する。
【0018】
なお、被測定物Wには、例えばPRBS(Pseudo-random bit sequence:擬似ランダム・ビット・シーケンス)パターンや任意のパターンからなるプログラマブルパターンによる既知パターンの周期的な信号が不図示のパターン発生部から入力される。このパターン発生部は、波形測定表示装置1に備えた構成としてもよい。
【0019】
記憶部4は、例えばVRAMなどで構成され、波形データ生成部3が生成した波形データを、サンプル位置毎に逐次積算した合計値(サンプル数×波形数)として更新記憶する。例えば対象信号の1波形をサンプル数:1350でサンプリングする場合には、サンプル位置の1番目から1350番目までの1波形の各サンプル位置毎にサンプル数:1350の波形データを逐次積算した合計値(サンプル数:1350×波形数)として更新記憶する。これにより、波形データ生成部3にて生成された波形データのサンプル値は、サンプル位置毎に積算された合計値(サンプル数×波形数)として記憶部4に更新記憶される。
【0020】
表示部5は、例えば液晶表示器などで構成され、設定部2にて設定された読み出し開始条件(対象信号の波形数、波形データのサンプル数、対象信号のサンプリング時間の何れか)に基づいて記憶部4から読み出された波形データ(サンプル位置毎に積算された合計値:サンプル数×波形数)に基づく表示データ(ビデオ信号)により1枚の表示画像を制御部6の描画制御により表示する。
【0021】
制御部6は、例えばCPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータで構成され、設定部2にて設定された読み出し開始条件(対象信号の波形数、波形データのサンプル数、対象信号のサンプリング時間の何れか)を満足すると、サンプル位置毎に積算された合計値として更新記憶された記憶部4から波形データ(サンプル位置毎に積算された合計値:サンプル数×波形数)を読み出し、読み出した波形データを表示データ(ビデオ信号)に変換し、変換した表示データにより1枚の表示画像を表示部5の表示画面上に描画制御する。
【0022】
例えば波形数:「1000」が読み出し開始条件として設定されている場合には、記憶部4に1000波形分の波形データが1波形の各サンプル位置毎に更新記憶されると、この更新記憶された波形データ(サンプル数:1350×波形数:1000)を読み出し、読み出した波形データを表示データ(ビデオ信号)に変換して1枚の表示画像を表示部5の表示画面上に描画制御する。
【0023】
次に、上記のように構成される波形測定表示装置1を用いて対象信号を測定して波形を表示する際の波形測定表示方法について説明する。
【0024】
被測定物Wは、不図示のパターン信号発生部からパターン信号が入力されると、このパターン信号に応じた対象信号を出力する。波形データ生成部3は、被測定物Wからの対象信号を所定のサンプリング間隔でサンプリングして波形データの生成を繰り返す。例えば対象信号の1波形をサンプル数:1350でサンプリングして波形データを生成する動作を繰り返す。波形データ生成部3にて繰り返して生成される波形データは、1波形の各サンプル位置毎に逐次更新して記憶部4に記憶される。
【0025】
そして、制御部6は、設定部2にて設定された読み出し開始条件を満たすと、記憶部4から波形データ(サンプル位置毎に積算された合計値:サンプル数×波形数)を読み出して表示部5の表示画面上に波形表示する。具体的には、設定部2にて設定された読み出し開始条件の波形数:「1000」、サンプル数:「1350000」、時間(秒):「10」の何れかを満たすと、1波形のサンプル位置毎に積算して記憶部4に更新記憶された波形データ(サンプル位置毎に積算された合計値:サンプル数×波形数)を読み出し、読み出した波形データを表示データ(ビデオ信号)に変換し、変換した表示データにより1枚の表示画像を表示部5の表示画面上に描画制御する。これにより、表示部5は、波形データ生成部3にて波形データが生成されるたびに表示を行うことがなく、設定部2にて設定される読み出し開始条件の波形数(例えば1000)やサンプル数(例えば1350000)に達したり、時間(例えば10秒)が経過してからまとめて1枚の表示画像として波形表示する。
【0026】
このように、本実施の形態の波形測定表示装置では、設定部2にて波形数、サンプル数、時間の何れかを指定して読み出し開始条件を設定し、読み出し開始条件を満たしたときに、制御部6が記憶部4から波形データ(サンプル位置毎に積算された合計値:サンプル数×波形数)を読み出して1枚の表示画像を表示部5の表示画面上に描画表示制御する。これにより、従来と比較して、表示部5の描画更新回数が大幅に減るため、制御部6にかかる負荷が軽減して表示部5を描画表示制御でき、表示部の描画表示制御を行う際に表示以外の別の処理に要する負荷の影響を受けにくく、より高速な波形表示を実現することができる。
【0027】
具体的には、対象信号の1波形のサンプル数:1350にてサンプリングした場合、波形数:1000を読み出し開始条件として設定すると、一般的に知られている従来の波形表示装置よりも6%改善するという結果が得られた。この結果、対象信号のデータの大容量化や高速化によりVRAMの速度によるボトルネックが生じる問題を解決でき、特許文献1のように表示画面数が増大してもVRAMの数の増加を抑えることが可能となり、より高速な波形表示を行うことができる。
【0028】
以上、本発明に係る波形測定表示装置および波形測定表示方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 波形測定表示装置
2 設定部
3 波形データ生成部
4 記憶部
5 表示部
6 制御部
図1