特許第6396418号(P6396418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396418質量誘導クロマトグラフィーのための装置、システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396418
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】質量誘導クロマトグラフィーのための装置、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/72 20060101AFI20180913BHJP
   G01N 30/80 20060101ALI20180913BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G01N30/72 G
   G01N30/80 E
   G01N30/80 F
   G01N30/86 R
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-503665(P2016-503665)
(86)(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公表番号】特表2016-512892(P2016-512892A)
(43)【公表日】2016年5月9日
(86)【国際出願番号】EP2014055622
(87)【国際公開番号】WO2014147186
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年1月17日
(31)【優先権主張番号】13160714.5
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515264698
【氏名又は名称】バイオタージ アクチボラゲット
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワルングレン、アンデルス
(72)【発明者】
【氏名】ウェスマン、アンデルス
(72)【発明者】
【氏名】ハーリン、エリク
(72)【発明者】
【氏名】ヨンソン、ラルス
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−198123(JP,A)
【文献】 特開平04−104053(JP,A)
【文献】 特開2000−214151(JP,A)
【文献】 米国特許第06402946(US,B1)
【文献】 特表2011−503549(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0301865(US,A1)
【文献】 特開2001−004594(JP,A)
【文献】 特開2013−019672(JP,A)
【文献】 特開2005−241580(JP,A)
【文献】 特開2012−193999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体流を流入させる第1流入口(11)と、
第2流体流を流入させる第2流入口(12)と、
迂回遅延ループ状流路(14)と、
流出口(15)と、
前記第1流入口(11)と前記迂回遅延ループ状流路(14)との間に配置される能動分流器(13)と、を備える第1流路(10)を備え、
前記能動分流器(13)は使用状態では、前記第1流路(10)を流れる流体流の一部を、第2流路(20)を流れる流体流に移動させ、
前記第2流路(20)は、前記能動分流器(13)の上流に位置する流入口(21)と、前記能動分流器(13)の下流に位置する流出口(22)と、を備える、装置(100)。
【請求項2】
前記第1流路(10)は、第1バルブ(16)を、前記第1流路(10)の前記第1流入口(11)と前記能動分流器(13)との間に備え、前記第1バルブ(16)は、一方の位置では、前記流体流を前記第1流路(10)の前記流出口(15)に真っ直ぐに誘導し、別の位置では、前記流体流を前記能動分流器(13)に誘導する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1流路は、第2バルブ(17)を、前記能動分流器(13)と前記迂回遅延ループ状流路(14)との間に備え、前記第2バルブ(17)は、一方の位置では、前記流体流を前記第1流路の前記流出口(15)に誘導し、別の位置では、前記流体流を前記迂回遅延ループ状流路(14)に誘導する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2流入口(12)は、流体サンプルを手動で直接注入するように構成される、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記第2流路(20)内に、前記能動分流器の上流に配置され、かつ溶媒を溶媒容器から前記第2流路(20)に流入させるように構成されるポンプ(26)と、任意であるが、前記第2流路(20)内の圧力を測定するように構成される圧力センサ(28)と、を更に備える、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記第2流路内に、前記能動分流器の下流に配置されるフィルタ(24)を更に備える、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記能動分流器(13)は、流路(10)を流れる前記流体流の一部を、少なくとも1:100〜1:1000に、例えば1:250、1:500、または1:750に希釈して、前記第2流路(20)を流れる前記流体流に流入させる、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
質量誘導フラッシュクロマトグラフィーシステムであって、
請求項1〜7のいずれかに記載の装置(100)と、
第1流路(10)の第1流入口(11)に流体接続される流出口(202)を有するクロマトグラフィーカートリッジ(201)を備えるフラッシュクロマトグラフィー測定器(200)と、
前記装置(100)の前記第1流路(10)の流出口(15)に流体接続されるフラクションコレクタ(400)と、
前記装置(100)の第2流路(20)の流入口(21)に流体接続される溶媒容器(600)と、
前記第2流路(20)の流出口(22)に流体接続される破壊質量検出器(300)と、
前記装置(100)と第1データ通信リンク(5100)を介してデータ通信し、前記フラッシュクロマトグラフィー測定器(200)と第2データ通信リンク(5200)を介してデータ通信し、前記破壊質量検出器(300)と第3データ通信リンク(5300)を介してデータ通信し、かつ前記フラクションコレクタ(400)と第4データ通信リンク(5400)を介してデータ通信するデータ処理ユニット(500)と、を備える、システム。
【請求項9】
前記破壊質量検出器(300)は使用状態では、化合物が第2流路(20)の流体流から検出されると、検出信号を生成し、前記データ処理ユニット(500)は、前記検出信号、前記第1および第2流路(10、20)の寸法を表すデータ、および前記第1および第2流路(10、20)を流れる流量を表すデータをそれぞれ受信し、前記破壊質量検出器(300)における前記化合物の検出時刻と、前記フラクションコレクタ(400)への前記化合物の到達時刻との間の経過時間を計算し、回収信号を生成して、前記フラクションコレクタ(400)に指示することにより、前記化合物を含む流体流のフラクションを回収させるように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記データ処理ユニット(500)は、制御信号を生成して、前記第1流路(10)を流れる流量が閾値を下回る場合に、遅延ループ状流路(14)を迂回させ、前記第1流路を流れる流量が閾値を上回る場合に、前記遅延ループ状流路(14)を迂回させないように構成される、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
単一のユーザ対話装置(700)を備え、該ユーザ対話装置(700)は、情報をユーザに供給し、指示をユーザから受信し、前記データ処理ユニット(500)と第5データ通信リンク(5700)を介してデータ通信するように構成される、請求項8〜10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
サンプルを複数種類の成分に分離し、少なくとも1種類の分離フラクションに含まれる前記複数種類の成分のうちの少なくとも1種類の成分を回収する方法であって、
ある分量のサンプルを破壊質量検出器に流し込んで、前記サンプルに含まれる複数種類の成分に関する個々の質量データを取得するステップと、
前記複数種類の成分に関する、または成分の一部に関する個々の質量データをデータ処理ユニットに転送するステップと、
ユーザに促して、質量データを取得したときに対象となった少なくとも1種類の成分を選択させて回収させるステップと、
前記サンプルに含まれる前記複数種類の成分をフラッシュクロマトグラフィーカラムで分離するステップであって、前記フラッシュクロマトグラフィーカラムの流出流のフラクションを迂回位置に継続的に流し、迂回させて前記破壊質量検出器に流入させることにより、前記サンプルに含まれる前記複数種類の成分に関する個々の質量データを取得し、前記流出流の残りの部分が、フラクションコレクタに誘導される、前記分離するステップと、
前記フラクションコレクタに指示して、選択した前記成分を含む前記流出流のフラクションを回収させるステップと、
を含み、
前記フラクションコレクタに指示して前記流出流のフラクションを回収させるステップでは、
前記破壊質量検出器における合物の検出時刻tと、前記フラクションコレクタへの前記化合物の到達時刻tとの間の経過時間Δtを、前記迂回位置から前記破壊質量検出器および前記フラクションコレクタそれぞれに向かう方向の下流側の流量および/または流体導管容積を表すデータに基づいて計算し、
回収信号を生成して、前記フラクションコレクタに指示することにより、前記化合物を含む流体流のフラクションを時刻tに回収させる、方法。
【請求項13】
1流路(10)を流れる体を、2流路に移送するときに、少なくとも1:100〜1:1000に、例えば1:250、1:500、または1:750に希釈する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コンピュータに指示して、サンプルを複数種類の成分に分離し、少なくとも1種類の分離フラクションに含まれる前記複数種類の成分のうちの少なくとも1種類の成分を回収する方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムであって、前記方法は、
ある分量のサンプルを破壊質量検出器に流し込んで、前記サンプルに含まれる複数種類の成分に関する個々の質量データを取得するステップと、
前記複数種類の成分に関する、または成分の一部に関する個々の質量データをデータ処理ユニットに転送するステップと、
ユーザに促して、質量データを取得したときに対象となった少なくとも1種類の成分を選択させて回収させるステップと、
前記サンプルに含まれる前記複数種類の成分をフラッシュクロマトグラフィーカラムで分離するステップであって、前記フラッシュクロマトグラフィーカラムの流出流のフラクションを迂回位置に継続的に流し、迂回させて前記破壊質量検出器に流入させることにより、前記サンプルに含まれる前記複数種類の成分に関する個々の質量データを取得し、前記流出流の残りの部分が、フラクションコレクタに誘導される、前記分離するステップと、
前記フラクションコレクタに指示して、選択した前記成分を含む前記流出流のフラクションを回収させるステップと、
を含み、
前記フラクションコレクタに指示して前記流出流のフラクションを回収させるステップでは、
前記破壊質量検出器における合物の検出時刻tと、前記フラクションコレクタへの前記化合物の到達時刻tとの間の経過時間Δtを、前記迂回位置から前記破壊質量検出器および前記フラクションコレクタそれぞれに向かう方向の下流側の流量および/または流体導管容積を表すデータに基づいて計算し、
回収信号を生成して、前記フラクションコレクタに指示することにより、前記化合物を含む流体流のフラクションを時刻tに回収させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュクロマトグラフィー測定器に関するものであり、特に破壊検出器をフラッシュクロマトグラフィー測定器およびフラクションコレクタに接続する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この技術分野では、種々の非破壊検出器(例えば、UV検出器)および破壊質量検出器(例えば、蒸着光散乱検出器(Evaporative Light Scattering Detectors:ELSD)または質量分析計(MS))を用いて、分離後の分子を、クロマトグラフィーカラムの流出流中に検出して、自動フラクションコレクタに指示することにより、分離後の分子を別体のバイアルに、検出器からの信号に基づいて回収させる高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)が知られている。
【0003】
Zengおよび共同研究者ら(Zeng,1998)は、質量分析法を利用したHPLCシステムを開発し、質量分析計を利用する化合物ライブラリーの自動精製により、シグナルフラクション回収を可能とした。
【0004】
米国特許第6,106,710号公報には、液体クロマトグラフィーを行うフラクション回収システムが開示されており、サンプルの流れは、破壊検出の影響を、サンプルを消費することなく受けてしまい、サンプル成分を破壊検出器で検出するために要する時間を利用して、当該サンプル成分を含む流れが、フラクションコレクタに到達すべき時刻を予測する。
【0005】
米国特許出願公開第2001/0038071号公報には、クロマトグラフィーカラムと、フラクションコレクタと、質量分析計と、を備える分離分析システムが開示されている。質量分析計に到達する流れを制御するために、送液モジュールを導入する。送液モジュールは、クロマトグラフィーカラムの流出流の微小部分を誘導して質量分析計に、制御性良く、かつ容易に調整できるように流入させる。米国特許出願公開第2001/0038071号公報に開示されているような送液モジュールは、この技術分野では、「能動分流器(active splitters)」とも表記される。
【0006】
フラッシュ精製は、不溶性固相担体(固相)および溶出溶媒混合物(移動相)で充填されたカラムまたはカートリッジを使用して、有機化合物の混合物を分離して精製するW.C.Stillによって開発された方法である(Still、1978)。固相および移動相は通常、非常に異なる極性を有し、これらの極性が一体となって作用して、化合物の混合物を分離する。次に、分離後の分子を、フラクションコレクタを利用して精製状態で回収することにより、次の合成時に使用する、または最終生成品として使用する。普通、UV検出器のような非破壊検出器を使用して、分離後の分子を、カラムの流出流中に検出して、UV検出器からの検出信号を使用して、フラクション回収を監視するか、または開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,106,710号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2001/0038071号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Still,W.(1978).Rapid Chromatographic Technique for Preparative Separations with Moderate Resolution.43(14),pp.2923−2925.
【非特許文献2】Zeng,L.e.(1998).Automated analytical/preparative high performance liquid chromatography−mass spectrometry system for the rapid characterization and purification of compound libraries.794,3−13.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、本発明は、フラッシュクロマトグラフィー測定器をフラクションコレクタおよび質量検出器に接続して、質量誘導フラッシュクロマトグラフィーを実行するために使用することができる装置を提供することを目的とし、この場合、クロマトグラフィーカラムから流出する流量は、1〜200ml/分の範囲とすることができる。この目的は、クロマトグラフィーカラムの流出流を、フラクションコレクタに至る一次流体流、および質量検出器に至る二次流体流に分流するときの下流側のフラクションコレクタに至る流路に、迂回可能な遅延ループ状流路を設けることにより達成される。
【0010】
別の態様では、本発明は、フラッシュクロマトグラフィーおよび質量分析の一体化システムを提供することを目的とし、この場合、ユーザは、サンプルを、質量検出器を使用して分析し、質量誘導フラッシュクロマトグラフィーに関する取得データを使用することができるので便利である。これは、個別の流入口を、フラッシュクロマトグラフィーカラムから質量検出器に至る流路に設けることにより達成される。
【0011】
更に別の態様では、本発明は、フラッシュクロマトグラフィーおよび質量分析の一体化システムを提供することを目的とし、当該システムは能動分流器を備え、この場合、能動分流器は、フラッシュクロマトグラフィーカラムの平衡化を行っている間は迂回することができる。これは、能動分流器を迂回する別の流路を設けることにより達成される。
【0012】
更に別の態様では、本発明は、サンプルを複数種類の成分に分離し、少なくとも1種類の分離フラクションに含まれる前記成分群のうちの少なくとも1種類の成分を回収する方法に関するものであり、該方法は、
ある分量のサンプルを破壊質量検出器に流し込んで、前記サンプルに含まれる複数種類の成分に関する個々の質量データを取得するステップと、
前記複数種類の成分に関する、または成分の一部に関する個々の質量データをデータ処理ユニットに転送するステップと、
ユーザに促して、質量データを取得したときに対象となった少なくとも1種類の成分を選択させて回収させるステップと、
前記サンプルに含まれる前記成分群をフラッシュクロマトグラフィーカラムで分離するステップであって、前記フラッシュクロマトグラフィーカラムの流出流のフラクションを迂回位置に継続的に流し、迂回させて前記質量分析計に流入させることにより、前記サンプルに含まれる前記複数種類の成分に関する個々の質量データを取得し、前記流出流の残りの部分が、フラクションコレクタに誘導される、前記分離するステップと、
前記フラクションコレクタに指示して、選択した前記成分を含む前記流出流のフラクションを回収させるステップと、を含む。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、コンピュータに指示して、クロマトグラフィーシステムのフラクションコレクタを制御する方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムに関するものであり、前記クロマトグラフィーシステムは、クロマトグラフィーカラムと、フラクションコレクタと、破壊質量検出器と、前記カラムからフラクションコレクタおよび破壊質量検出器それぞれに至る分岐流路と、を備え、前記方法は、
ユーザに促して、分析対象のある分量のサンプルを、前記破壊質量検出器に至る前記流路に流し込むステップと、
質量スペクトルデータを、前記破壊質量検出器による前記サンプルの第1分析結果から取得するステップと、
ユーザに促して、注目サンプル成分に対応する少なくとも1つの質量データ値を選択させるステップと、
前記サンプルをクロマトグラフィー分離した後に、時間分解質量データを、前記破壊質量検出器による前記サンプルの第2分析結果から取得するステップと、
前記クロマトグラフィーカラムからそれぞれ前記フラクションコレクタおよび前記破壊質量検出器までの流動時間の差を表すデータを取得するステップと、
制御信号を生成して、前記フラクションコレクタに指示することにより、前記クロマトグラフィーカラムの流出流のフラクションを、前記注目サンプル成分に対応する前記質量の検出時刻に、前記クロマトグラフィーカラムからそれぞれ前記フラクションコレクタおよび前記破壊質量検出器までの流動時間の差を加算した値に対応する時刻に回収させるステップと、を含む。
【0014】
本発明は、添付の独立請求項に開示され、好適な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による装置の一実施形態の全体図である。
図2】本発明による装置の一実施形態の全体図である。
図3】本発明による装置の一実施形態の全体図である。
図4】本発明による装置の一実施形態の全体図である。
図5】本発明による装置の一実施形態の全体図である。
図6】本発明による装置の一実施形態の全体図である。
図7】本発明によるシステムの一実施形態の全体図である。
図8】本発明によるシステムの一実施形態の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
「質量検出器(mass detector)」という用語を用いて、分子またはイオンの質量を検出することができる検出器を指す。本発明に使用することができる質量検出器の例が、質量分析計および質量イオン検出器である。現時点では、質量分析計、特にエレクトロスプレーイオン化質量分析計(Electrospray Ionization Mass Spectrometer:ESI−MS)を使用することが好ましい。
【0017】
「質量誘導クロマトグラフィー(mass−directed chromatography)」という用語を用いて、クロマトグラフィーカラムの流出流に含まれる被分析物の質量の検出を指し、フラクションコレクタに指示することにより、流出流のフラクションを別体のバイアルに回収させる。
【0018】
「能動分流器(active splitter)」とは、1種類の流体流の一部を第2流体流に能動的に移送する装置を指す。
【0019】
「接続モジュール(coupling module)」という用語は、フラッシュクロマトグラフィー測定器をフラクションコレクタおよび質量検出器に接続して、質量誘導フラッシュクロマトグラフィーを行うために使用することができる装置を指す。
【0020】
詳細な説明
本発明者らは、質量誘導クロマトグラフィー、特に質量誘導フラッシュクロマトグラフィーに関連する既存の技術に多数の問題があることを認識している。
【0021】
質量検出器は、極めて微量のサンプル、およびμl/分またはnl/分の範囲の流量しか必要としない。フラッシュクロマトグラフィー測定器は、これとは異なり、1ml/分から最大100または200ml/分の非常に広い範囲の流量で動作する。これは、HPLCに使用される流量(1〜1000μl/分)よりも数桁高い流量であり、この流量は、今度は、質量検出器に許容される流量よりも数桁高い流量である。
【0022】
例えば、米国特許第2001/0038071号公報から分かるように、フラッシュクロマトグラフィーカラムからの高流量の流体流を迂回させて、能動分流器で大幅に低くした流量を有する2次流に流し込むことにより、二次流が、質量検出器に向かって流れ、一次流がフラクションコレクタに向かって流れる。
【0023】
しかしながら、一次流の流量は、システムのユーザが回収したいと考えている成分を含むフラクションが、質量検出器がフラクションを検出する前にフラクションコレクタに到達する場合の特定の流量を上回ることが許容されない。流量に関するこの上限は、システム内の流体導管の寸法、および質量検出器に流れ込む最大流量によって設定される。
【0024】
流量の上限は、分流器からフラクションコレクタに至る流路をより長くするか、またはより幅広にすることにより高くすることができる。しかしながら、これにより、帯状体が、より低い流量で不所望に幅広になって、特定の化合物の回収の確実性が低くなる。
【0025】
本願発明の発明者らは、この問題を、フラッシュクロマトグラフィー測定器を質量検出器およびフラクションコレクタに接続する接続モジュールを設けることにより解決し、前記接続モジュールは、能動分流器を備え、かつ迂回可能な遅延ループ状流路を能動分流器とフラクションコレクタに至る流出口との間に有する。クロマトグラフィーカラムからの流れは、流れが、フラクションコレクタに真っ直ぐに向かって流れる場合、注目成分を含むフラクションがフラクションコレクタに、質量検出器に到達するよりも前に到達するように設定されるときに、遅延ループ状流路を通過するように誘導される。
【0026】
これとは異なり、流量が、注目成分を含む対応する流れ部分がフラクションコレクタに到達する前に注目成分が量質量検出器によって検出されて、フラクションコレクタによる信号処理および自動動作に十分な時間をとることができるように設定される場合、遅延ループ状流路を迂回させて、帯状体が幅広になる現象を最小限に抑える。
【0027】
本発明者らの別の目的は、質量検出器をフラッシュクロマトグラフィーと組み合わせて使用する操作を簡易化し、かつフラッシュクロマトグラフィー測定器および質量検出器の一体化を可能にすることにある。
【0028】
この目的は、上記接続モジュールに、フラッシュクロマトグラフィーカラムの流入口と能動分流器との間に位置する流体流入口を設ける本発明により達成される。これにより、システムのユーザは、ある分量の分離前サンプルをシステムに注入する操作を容易に行うことができる。これにより更に、ユーザが質量検出器と直接対話する操作を最小限に抑えて、質量検出器をシステムによって全体的に制御し易くしている。
【0029】
フラッシュクロマトグラフィーに使用されるカラムに、シリカまたはポリマー樹脂のようなクロマトグラフィー媒体を充填する。フラッシュクロマトグラフィーカラムを使用する前に、カラムは普通、3〜5カラム分に相当する容積の溶媒を、カラムに充填されているクロマトグラフィー媒体に流入させることにより、平衡化される。
【0030】
この平衡化プロセスにより、クロマトグラフィー媒体の微細粒子が、カラムから外に溶媒によって洗浄除去される。これは、非破壊検出器を使用してフラクション回収を行う標準的なフラッシュクロマトグラフィー測定器では問題にならず、この場合、流体導管が比較的幅広であり、かつ平衡化に使用される溶媒をフラクションコレクタの廃棄容器に誘導することができる。
【0031】
しかしながら、質量検出器に流れ込む流れが極めて小さいため、非常に小さい直径を持ち、かつ質量検出器をカラムに接続する流体導管を有することが望ましい。微細粒子が、平衡化中にフラッシュクロマトグラフィーカラムから放出されると、質量検出器に接続された状態で使用されるより幅狭の流体導管の目詰まりが生じて、これらの導管のクリーニングまたは取り替えが必要になる。更に、クロマトグラフィー媒体の微細粒子は、これらの粒子が質量検出器を損傷する可能性があるので、通り抜けて質量検出器に到達することができないようにする必要がある。
【0032】
本発明の一実施形態では、この問題は、能動分流器を迂回し、従って質量検出器を迂回する別の流路を設けることにより解決する。別の流路は、平衡化中に使用することができる、または能動分流器および/または質量検出器を迂回するのが望ましい他のいずれかの状況において使用することができる。1つのこのような状況は、システムのユーザが、フラッシュクロマトグラフィー測定器内に標準的に設けられる非破壊検出器のみを使用して、フラクション回収を、接続モジュールを物理的に遮断することなく、開始したい、または監視したいと考えるような状況である。
【0033】
フラッシュクロマトグラフィーが高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)と異なる1つの形態は、サンプルの量および濃度が普通、フラッシュクロマトグラフィーにおいては、HPLCと比較して、約1桁大きいことである。HPLCに使用される機器は従って、フラッシュクロマトグラフィーには、サンプルの量が多くなると閉塞が生じる虞があるので、直接適用することはできない。
【0034】
閉塞を回避する本発明による1つの方法では、流れが質量検出器に向かって流れる2次流に分割される場合に、フラッシュクロマトグラフィーカートリッジの流出流を希釈する。希釈比は、1:250、1:500、1:750のような1:100〜1:1000とすることができる。現時点で好ましい比は1:500である。
【0035】
閉塞を回避する本発明による1つの方法では、フィルタを導入して、流路内の粒子材料を質量検出器の手前で除去する。このようなフィルタは、1〜5μm、好適には2μmの細孔径を有することにより、粒子が質量検出器に流入するのを防止する。
【0036】
本発明による質量誘導フラッシュクロマトグラフィーシステムでは、特定の質量対電荷比の化合物が検出されると、検出信号を質量検出器からプロセッサに送信する。プロセッサが今度は、ユーザおよび/または測定器の供給業者から出される指示に基づいて、この化合物が、回収する必要がある注目分析対象物に対応しているかどうかを判断して、信号をフラクションコレクタに送信して、分析対象物を含む流出流体流の一部を回収させる、または信号を送信して廃棄させる。
【0037】
質量検出器で検出された分析対象物の検出値を、流出流体流の特定部分に関連付けるために、プロセッサは、それぞれの流路内を流れる現在の流量、およびそれぞれの流路の容積に関する情報を使用して、分析対象物がフラクションコレクタに到達する時刻を計算する。注目分析対象物を含むある分量のサンプル流は、フラクションコレクタに指示して、ある分量をサンプル流から、分析対象物がフラクションコレクタに到達する予測到達時刻に回収させることにより選択的に回収することができる、またはサンプルコレクタが、ある分量のサンプル流を継続的に回収する場合、予測到達時刻に回収される特定の分量は、分析対象物を含んでいるものとして特定することができる。質量検出器における検出値と、フラクションコレクタへの到達時刻との関連付けは、この技術分野で公知の種々の方法で行うことができ、この関連付け自体は、本発明の一部ではない。
【0038】
別の態様では、本発明は、質量誘導フラッシュクロマトグラフィーの一体化システムに関するものである。この態様によるシステムにより、質量検出器によるサンプルの事前の簡易クロマトグラフィー分析、取得分析データを質量検出器からデータ処理ユニットに自動転送する動作、および取得分析データの使用が容易になって、クロマトグラフィーカラムの流出流のフラクションの回収を制御することができる。これまで、質量誘導フラッシュクロマトグラフィーに関するシステムは、当該システムのクロマトグラフィー部分、および質量検出器部分にそれぞれ対応する個別のユーザインターフェースを有していた。本発明によるシステムの構造により、ユーザは、システム全体および作業フロー全体を、単一のユーザインターフェースを介して制御することができるので、システムの操作がより容易になる。
【0039】
当該システムは、上に説明した接続モジュールと、フラッシュクロマトグラフィー測定器と、破壊質量検出器と、フラクションコレクタと、を備える。破壊質量検出器、および任意であるが、フラクションコレクタだけでなく、スタンドアローン型フラクションコレクタを含むフラッシュクロマトグラフィー測定器は、市販されており、かつ本発明による接続モジュールを用いるために変更して、本発明による一体化システムを実現することができる。フラクションコレクタを含む現時点で好適なフラッシュクロマトグラフィーシステムは、Biotage AB社(スウェーデン)からIsolera(商標)Spektraという商品名で市販されている。
【0040】
更に別の実施形態では、本発明は、サンプルを分離して、少なくとも1種類の分離フラクションとし、少なくとも1種類の分離フラクションに含まれる前記成分群のうちの少なくとも1種類の成分を回収する方法に関するものであり、当該方法は、
ある分量のサンプルを破壊質量検出器に流し込んで、サンプル中に含まれる複数種類の成分に関する個々の質量データを取得するステップと、
前記複数種類の成分に関する、またはこれらの成分の一部に関する個々の質量データをデータ処理ユニットに転送するステップと、
ユーザに促して、質量データを取得したときに対象となった少なくとも1種類の成分を選択して回収させるステップと、
前記サンプル中に含まれるこれらの成分をフラッシュクロマトグラフィーカラムで分離するステップであって、フラッシュクロマトグラフィーカラムの流出流のフラクションを、迂回位置に継続的に流し、迂回させて前記質量分析器に流入させることにより、サンプル中に含まれる複数種類の成分に関する個々の質量データを取得し、流出流の残りの部分をフラクションコレクタに誘導する、分離するステップと、
フラクションコレクタに指示して、選択した成分を含む流出流のフラクションを回収するステップと、を含む。
【0041】
この態様による方法により、質量検出器によるサンプルの事前の簡易クロマトグラフィー分析、取得分析データを質量検出器からデータ処理ユニットに自動転送する動作、およびデータ処理ユニットによる取得分析データの使用が容易になって、クロマトグラフィーカラムの流出流のフラクションの回収を制御することができる。
【0042】
更に別の実施形態では、本発明は、上に説明したシステムのデータ処理ユニットに使用されるコンピュータプログラムに関するものであり、前記コンピュータプログラムは、コンピュータに指示して、システムのフラクションコレクタを制御する方法を実行するようにする命令を含み、当該システムは、クロマトグラフィーカラムと、フラクションコレクタと、破壊質量検出器と、前記カラムからフラクションコレクタおよび破壊質量検出器に至る分岐流路と、をそれぞれ備え、前記方法は、
ユーザに促して、分析対象のある分量のサンプルを、破壊質量検出器に至る流路に流入させるステップと、
破壊質量検出器によるサンプルの第1分析結果から得られる質量スペクトルデータを取得するステップと、
ユーザに促して、注目サンプル成分に対応する少なくとも1つの質量データ値を選択するステップと、
サンプルをクロマトグラフィー分離した後に、破壊質量検出器による前記サンプルの第2分析結果から得られる時間分解質量データを取得するステップと、
クロマトグラフィーカラムからそれぞれフラクションコレクタおよび破壊質量検出器までの流動時間の差を表すデータを取得するステップと、
制御信号を生成して、フラクションコレクタに指示することにより、前記クロマトグラフィーカラムの流出流のフラクションを、注目サンプル成分に対応する前記質量の検出時刻に、前記クロマトグラフィーカラムからそれぞれ前記フラクションコレクタおよび前記破壊質量検出器までの流動時間の差を加算した値に対応する時刻に回収させるステップと、を含む。
【0043】
本明細書において開示されるコンピュータプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体に格納することができることを理解できるであろう。
【0044】
本発明によるシステムまたは方法のユーザに、上に説明した接続モジュールの流路に注入される未分離サンプルの構成成分に関する利用可能な情報を提示するために、質量検出器からの検出信号を処理して、例えばピーク積分、ノイズ減算を行い、ベースピーククロマトグラム(BPC:各スペクトル上で最も強度の高いピークの強度のみを使用して作成したクロマトグラム)、および抽出イオンクロマトグラム(EIC)を解析すると有利である。これに関する標準的なソフトウェアソリューションは普通、質量検出器の製造業者から入手することができる。
【0045】
本発明において適宜使用される四重極質量分析器は、複数の質量対電荷比(m/z比)に対応する時間分解トータルイオン電流(TIC)信号を生成し、複数は、検出器の分解能によって異なる。サンプルを接続モジュールの二次流に注入する場合、質量検出器で測定される強度は、経時的に変化し、TIC強度信号の時間軸ピークとして現れる。TIC信号はまた、均一に分布する低強度のノイズに対する感度が高く、かつ高強度のランダムスパイクに対する感度が高い。
【0046】
本発明の1つの態様は、質量分析計からの検出信号データを処理して、当該データをユーザに提示する方法を改良することに関するものであり、当該方法は、
複数のm/z比に対応する複数の信号強度値を質量分析計から取得するステップと、
Nを整数>1の関係を満たす整数とした場合に、各m/z比に対応する前記信号強度値のうちのN個の最大信号強度値を情報格納バッファに継続的に格納するステップと、
1つよりも多くの信号強度値が、前記特定のm/z比に対応して格納されている場合に、特定のm/z比に対応する最大格納信号強度値よりも小さい格納信号強度値を選択するステップと、
各m/z比に対応する前記選択信号強度値をユーザに、ユーザ対話インターフェースを介して継続的に提示するステップと、を含む。
【0047】
一実施形態では、ユーザに提示されるN=5および当該値は、情報格納バッファに継続的に格納される最小値である。
【0048】
この方法は、上に説明した問題に対処する。これらの最大強度が収集されるので、スペクトルの測定を、最大強度が質量検出器に現れる時刻に時間軸で同期させる必要はない。測定は、早期に開始して、遅く終了させることができる。低ノイズレベルが経時的に均一化されて、表示スペクトルが、実信号に最大低ノイズレベル振幅を加算した値に落ち着く。これらのスパイクは、これらのスパイクがランダムであるので、個々の質量点におけるスパイク群の数が、バッファのサイズ以上にならない限り、表示スペクトルに影響を及ぼすことがない。
【0049】
この態様において説明される方法は、図7に示すように、コンピュータプログラムとして実行することにより、データ処理ユニット500上で実行することができる。方法および/またはコンピュータプログラムは、上に説明した種々の態様に取り入れて、処理検出信号を使用してユーザに促すことにより、質量データを取得したときの対象となった少なくとも1種類の成分を選択して回収することができる。
【0050】
本発明によるコンピュータプログラムは、本発明の方法形態を実行し、かつ本発明の装置形態およびシステム形態のコンピュータ制御可能な形態を実現するように構成することができる。本発明の方法形態は、本発明の製品形態を使用して実行することができる。
【0051】
これらの図を参照するに、図1は、接続モジュールとも表記される装置100が、流入口11および流出口15を備える第1流路10を有する様子を示している。流入口11は、フラッシュクロマトグラフィー測定器に接続されるように適合させ、流出口15は、フラクションコレクタに接続されるように適合させる。装置100は更に、1つ以上の溶媒容器に接続されるように適合させた流入口21と、破壊質量検出器に接続されるように適合させた流出口22とを有する第2流体流20を備える。
【0052】
第1流路および第2流路は能動分流器13を通過する。適切な能動分流器は、Rheodyne(米国カリフォルニア州のRohnert Park(ローナートパーク)にあるレオダイン社)からMRA(登録商標)の商品名で市販されている。この分流器は、流路(10)の流体流を流路(10)および(20)に分流するだけでなく、好ましくは流路(10)を流れる流体を希釈して、流路(20)の流体に流し込む。希釈比は、1:100〜1:1000、例えば1:250、1:500、または1:750とすることができる。現時点で好適な比は、1:500である。希釈は、図7に示すデータ処理ユニット(500)により制御することができる。
【0053】
流路(10)は、能動分流器の下流側に続いて延びており、2つの並列流路、流出口15に真っ直ぐに到達する一方の流路10’と、より長い遅延ループ状流路14と、を含む。従って、流路10を流れる流体流は、流出口に、より短い流路10’に沿って真っ直ぐに誘導されて流れるか、またはより長い遅延ループ状流路14に沿って誘導されて流れるかのいずれかとすることができるが、より短い流路10’、および遅延ループ状流路14の両方に同時に誘導されることもできる。図3に示す好適な実施形態では、バルブ17を流路10に設けて流れを、より短い流路10’または遅延ループ状流路14のいずれかに誘導する。バルブ17は、以下に説明するように、流体流を誘導して、システムを流れる流量が閾値を上回る場合に遅延ループ状流路14に流入するようにし、システムを流れる流量が閾値を下回る場合に、より短い流路10’に流入するようにすることが好ましい。バルブ17は、図7に示すデータ処理ユニット500による制御を受けることが好ましい。
【0054】
流路10は更に、別の流入口12を備え、流入口12は好適には、サンプルを手動で直接注入して、適宜、適切な溶媒に溶解させるか、または適切な溶媒で希釈するように適合させる。
【0055】
図2では、本発明の一実施形態が図示されており、この実施形態では、能動分流器13を迂回することができ、その結果として更に、質量検出器を迂回することができる。この実施形態では、流路10はバルブ16を備え、バルブ16は、流路10を流れる流体流を誘導して、流出口15に向かって、短縮流路10’’を通って真っ直ぐに流れるようにする。バルブ16は、図2の第1流路10の第1流入口11と第2流入口12との間に位置するものとして図示されている。しかしながら、バルブ16は、第2流入口12と能動分流器13との間に位置するようにしてもよい。短縮流路10’’の使用は、流路10を流れる流体流が、システムの能動分流器、質量検出器、または他のいずれかの構成部材を詰まらせる、またはその他には、損傷する可能性のある粒子を含んでいる危険がある場合に有用である。これが生じ得る状況として、とりわけ、フラッシュクロマトグラフィーカラムの平衡化を挙げることができる。バルブ16は、図7に示すデータ処理ユニット500による制御を受けることが好ましい。
【0056】
図4Aは、本発明の一実施形態を示しており、この実施形態は、第2流路20に配置されて溶媒を外部溶媒容器から流入させるポンプ26を備える。任意であるが、圧力センサ28を取り入れて、第2流路20内の圧力を監視する。ポンプ26は、1つよりも多くの、例えば2つ、3つ、または4つの流入口21に接続されるようにしてもよい。図4Bに示す一実施形態では、ポンプ26は、異なる種類の溶媒を収容する溶媒容器に接続される3つの流入口21’、21’’、21’’’に接続される。
【0057】
図5は、本発明の一実施形態を示しており、この実施形態は、フィルタ24を能動分流器と質量検出器との間の第2流路20に含む。フィルタ24は、1〜5μm、好適には2μmの細孔サイズを有することにより、粒子が質量検出器に流入するのを防止することが好ましい。
【0058】
図6は、図1図5に示す特徴の全てを含む接続モジュール100の好適な実施形態を示している。
【0059】
図7は、本発明による質量誘導フラッシュクロマトグラフィーシステムを示している。当該システムは、図1図6で上に説明した接続モジュール100を備える。システムは更に、接続モジュール100の流入口11に接続される流出口202を有するフラッシュクロマトグラフィーカートリッジ201を有するフラッシュクロマトグラフィー測定器200を備える。実線は、構成部材群の間の流体連通を示し、破線は、データ通信を示している。
【0060】
接続モジュールは更に、適切な溶媒または複数種類の溶媒を供給する溶媒容器600に接続されて、接続モジュール100の第2流路を通って質量検出器300に流れ込む流体流を調節する。一実施形態では、溶媒容器は、異なる種類の溶媒、例えば1種類の酸性溶媒、1種類の塩基性溶媒、および1種類の中性溶媒を収容する3つの補助溶媒容器を備える。このような場合では、バルブ群からなる集合体は、これらの補助容器から接続モジュール100の流入口21に至るこれらの流路に設けられて、各時点で、1種類の溶媒のみが流入口21に供給されるように構成される。このようなバルブ群は、接続モジュール100の内部に、または外部に物理的に配置することができ、かつデータ処理ユニット500による制御を受けることが好ましい。
【0061】
システムは更に、接続モジュール100の第2流路の流出口22に流体接続される質量検出器300を備える。適切な質量検出器は、Microsaic Systems plc(英国のワーキング市(Woking)にあるミクロザイクシステムズ株式会社)から3500MiDの製品名で販売されているようなエレクトロスプレーイオン化質量分析計である。
【0062】
システムは更に、接続モジュール100の第2流路20の流入口21に流体接続されるフラクションコレクタ400を備える。
【0063】
システムは更に、図7に破線で示すシステムの他の構成要素群とデータ通信リンク5100、5200、5300、および5400のそれぞれを介してデータ通信するデータ処理ユニット500を備える。関連データをこれらの構成要素の間で転送するように機能する任意のデータ通信リンクを使用することができる。これらのデータ通信リンクは、有線接続リンクまたは無線接続リンクとすることができる。
【0064】
データ処理手段500は、検出信号を質量検出器300からデータ通信リンク5300を介して受信し、かつフラクションコレクタ400および質量検出器300にそれぞれ接続される流路10、20の寸法、および/または流路10、20内を流れる流量を表す情報を受信するように構成される。この情報は、情報格納ユニット(図示せず)に格納することができる、またはシステムのユーザが入力することができる、或いはシステムにより監視することができる、またはこれらの形態の任意の組み合わせとすることができ、データ処理ユニットに供給することができる。
【0065】
使用状態では、質量検出器300は、化合物が検出されると、検出信号を生成する。データ処理ユニット500は、上記情報に基づいて、質量検出器300における化合物の検出時刻と化合物がフラクションコレクタ400に到達する時刻との間の経過時間を計算して、回収信号を生成して、フラクションコレクタ400に指示することにより、前記化合物を含む流体流のフラクションを回収させるように構成される。
【0066】
データ処理ユニットは更に、バルブ17(図3および図6に示す)に対する制御信号を生成して、第1流路10を流れる流量が閾値を下回る場合に遅延ループ状流路14を迂回させ、第1流路を流れる流量が閾値を上回る場合に遅延ループ状流路14を迂回させないように構成することができる。
【0067】
好適な実施形態では、システムは、単一のユーザ対話インターフェース700を備えることにより、図8に示すユーザ1との通常の対話が実現する。ユーザ対話インターフェースは、タッチスクリーンインターフェースであることが好ましく、このタッチスクリーンインターフェースにより、キーボードおよび他の手段がユーザ指示をシステムに供給する必要性を無くすことができる。単一のユーザ対話インターフェースは、サービス対話インターフェース群を接続する、とりわけ機器を接続する通信ポート群で補完されることにより、サービスデータをシステムの構成要素群から取り出して、更新ファームウェアをこれらの構成要素にアップロードする、またはシステムを、当該システムをサービスモードで実行することにより試験することができる。
【0068】
図7および図8に示すシステムの構成要素群は、個々の構成要素として例示のために図示されている。1つ以上の構成要素は、必要に応じて、かつ公知の慣例に従って1つの同じ物理的手段に一体化することができる。例えば、フラッシュクロマトグラフィー測定器には多くの場合、フラクションコレクタおよびデータ処理ユニットが設けられる。従って、フラッシュクロマトグラフィー測定器200、フラクションコレクタ400、データ処理ユニット500、およびこれらの構成要素に対応するデータ通信リンク5200および5400を1つの物理的エンティティに一体化して、システムの設置面積を全体的に低減することが実際に行われている。
【0069】
本発明は、上に説明した好適な実施形態に限定されない。種々の代替物、変形物、および等価物を用いることができる。従って、上に挙げた実施形態は、添付の請求項により規定される本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8