特許第6396468号(P6396468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396468機能性狭窄解析を向上させる局所FFR推定及び視覚化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396468
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】機能性狭窄解析を向上させる局所FFR推定及び視覚化
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   A61B6/00 350A
   A61B6/00 350D
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-536241(P2016-536241)
(86)(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公表番号】特表2017-501775(P2017-501775A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2014076477
(87)【国際公開番号】WO2015082576
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】13195675.7
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ニッキーシュ ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】グラス ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ティメル ヤン
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−534154(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0041318(US,A1)
【文献】 特表2014−534889(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0132054(US,A1)
【文献】 特表2004−529713(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0246034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/01
A61B 5/02 − 5/03
A61B 6/00 − 6/14
CSDB(日本国特許庁)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心物体の投影ビューを含む少なくとも1つの画像を受信する入力ポートと、
前記投影ビューに従って、前記関心物体の物体セグメンテーションを得るように、前記少なくとも1つの画像をセグメント化するセグメンタと、
前記物体セグメンテーションを成分に区分化するパーティショナと、
複数の局所作用伝達関数の1つ以上を、前記成分のそれぞれに記録される前記関心物体の局所形状に適応させて、複数の大域作用伝達関数を得る適応ユニットと、
前記複数の大域作用伝達関数を、前記関心物体の合成伝達関数にまとめるコンバイナと、
前記合成伝達関数から、前記関心物体を流れる流体の冠血流予備量比推定値を計算するエバリュエータと、
を含む、画像処理システム。
【請求項2】
前記エバリュエータは、少なくとも1つの物理的又は生理的パラメータを変化させることによって、冠血流予備量比推定値の範囲を計算し、前記画像処理システムは、
前記少なくとも1つの物理的又は生理的パラメータの関数として、冠血流予備量比推定値の前記範囲を、ディスプレイユニット上の表示のためにレンダリングするビジュアライザを更に含み、
前記ディスプレイユニットは、冠血流予備量比推定値の前記範囲を、前記冠血流予備量比推定値の関数依存性で表示する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記パラメータは、圧力及び流量の少なくとも一方であり、冠血流予備量比推定値の前記範囲は、圧力及び流量の少なくとも一方の関数として表示される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記パラメータは、ヘマトクリット値、血液粘度及び血液密度の少なくとも1つである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の局所作用伝達関数は、圧力対流量サンプル測定から、前もって学習されている重みに基づいて、線形結合される、請求項1乃至4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの画像は、Cアームタイプのプレーナ型X線装置又は回転式Cアームシステムによって取得される、請求項1乃至5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
関心物体の投影ビューを含む少なくとも1つの画像を受信するステップと、
前記投影ビューによる前記関心物体について、物体セグメンテーションを得るように、前記少なくとも1つの画像をセグメント化するステップと、
前記物体セグメンテーションを成分に区分化するステップと、
複数の局所作用伝達関数の1つ以上を、前記成分のそれぞれに記録される前記関心物体の局所形状に適応させて、複数の大域作用伝達関数を得るステップと、
前記複数の大域作用伝達関数を、前記関心物体の合成伝達関数にまとめるステップと、
前記合成伝達関数から、前記関心物体を流れる流体の冠血流予備量比推定値を計算するステップと、
を含む、画像処理方法。
【請求項8】
前記計算するステップは、少なくとも1つの物理的又は生理的パラメータを変化させることによって、冠血流予備量比推定値の範囲を計算するステップを含み、前記画像処理方法は、
前記少なくとも1つの物理的又は生理的パラメータの関数として、冠血流予備量比推定値の前記範囲を表示するステップを更に含む、請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記パラメータは、圧力及び流量の少なくとも一方であり、冠血流予備量比推定値の前記範囲は、圧力及び流量の少なくとも一方の関数として表示される、請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項10】
処理ユニットによって実行されると、請求項7乃至9の何れか一項に記載の方法のステップを行うように適応される、請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステムを制御する、コンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項10のコンピュータプログラムを記憶した、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法、画像処理システム、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の人々は、心臓血管疾患に非常に苦しめられている。心臓血管疾患は、依然として、世界の主な死因の1つである。運動不足、不健康な食事及び他の要因が、例えば狭窄症、つまり、心血管系の一部が収縮された状態を引き起こす可能性がある。狭窄症は、狭窄部位の下流の組織の供給不足を引き起こす。狭窄症の治療法はあるが、これらは、大部分は、介入療法であり、リスクがないわけではない。例えば1つの介入処置は、血管内に、カテーテルを介して、ステントを導入することである。ステントは、狭窄部位までナビゲートされ、そこで展開させられ、損なわれている血管横断面を拡大し、したがって、修復する。しかし、これらのタイプの介入療法は、リスクがないわけではなく、既に資金不足である国民健康保険に、時には不必要に、負担をかける。例えば瀕死の組織に供給する血管の一部において狭窄が起きる場合、介入が、実際、健康に肯定的な作用をもたらすかどうかは疑わしい。瀕死の組織は回復させることはできず、狭窄によって制限されている血流量が、一部の例では、依然として過不足のない場合もある。ここで、冠血流予備量比(FFR)測定技術が役に立つ。当該技術は、スコア、つまり、数で、狭窄深刻度を評価することを可能にするからである。FFRは、冠動脈形状以外の狭窄深刻度の尺度である。これは、狭窄の血流量への影響を含むからである。カテーテル処置中の介入FFR測定の臨床的妥当性が、臨床研究において、証明されている。この結果、医療スタッフは、現場において、介入が正当であるかどうかをよりよく判断することができる。当該数を確立する1つのやり方は、狭窄部位の差圧と、狭窄部位の血流量とを含む現場測定を行う態様である。このために、測定を行う適切なプローブが具備された特別なカテーテルが使用される。カテーテルは、特に圧力差を確立するために、狭窄部位の遠位に配置され、次に、近位に配置される。しかし、ここでも、カテーテルを狭窄部位に強制的に通さなければならないため、リスクがないわけではない。また、介入ツール自体も複雑で、入手するのに費用がかかり、また、通常、心臓部位における充血を増加させるために、アデノシンといった潜在的に有害な物質を投与する必要がある。
【0003】
したがって、高価な現場圧力測定機器の使用を回避するために、カテーテル研究室応用のための非介入局所FFR推定方法が過去に提案されている。これらの方法の1つの変形は、CT投影から再構成されたボリュメトリックデータに基づいている。この方法の別の変形は、一般に、血管造影投影のセットから生成される冠動脈のボリュメトリックモデル(3D冠動脈造影法(3DCA))に基づいている。これらの変形は共に、計算流体力学(CFD)シミュレーションに基づいている。
【0004】
これらの既知の方法は、時に、計算コストが高く、及び/又は、患者への投与量が比較的多い傾向があることが観察されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、より効率的に、また、患者に負担が少ないように、冠血流予備量比値を決定する代替のやり方が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決される。更なる実施形態は、従属請求項に組み込まれている。なお、以下に説明される本発明の態様は、画像処理方法、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体に等しく適用される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、画像処理システムが提供される。当該画像処理システムは、
関心物体の投影ビューを含む少なくとも1つの画像を受信する入力ポートと、
投影ビューに従って、物体の物体セグメンテーションを得るように、画像をセグメント化するセグメンタと、
セグメンテーションを成分に区分化するパーティショナと、
複数の局所作用伝達関数の1つ以上を、成分のそれぞれに記録される物体の局所形状に適応させて、複数の大域作用伝達関数を得る適応ユニットと、
複数の大域作用伝達関数を、物体の合成伝達関数にまとめるコンバイナと、
合成伝達関数から、物体を流れる流体のFFR推定値を計算するエバリュエータとを含む。
【0008】
例えば狭窄部位周辺の冠状動脈の関連一部について、FFRをシミュレートするために、提案されるシステムを使用する場合、局所作用伝達関数は、基本的に、単独で、特定の物理的作用に起因する局所血圧降下を記述する一方で、大域作用伝達関数は、イメージングされた血管樹全体又は少なくとも狭窄部位周辺の関心領域全体にわたる各作用によって引き起こされる血圧降下を記述する。したがって、合成伝達関数は、物体の全体の血圧降下を記述する一方で、様々な作用間の相関関係及び相互作用を説明する。つまり、本明細書では、形状により導出される伝達関数によって規定され、例えば一実施形態では人間又は動物の血液循環である、考慮中の流体挙動のシミュレーションのために使用される「集中」パラメータモデルが提案される。
【0009】
一実施形態では、エバリュエータは、少なくとも1つの物理的又は生理的パラメータを変化させることによって、様々なFFR推定値を計算する。
【0010】
つまり、エバリュエータは、物理的又は生理的パラメータ間の関数関係によって規定されるFFR表面をサンプリングする。
【0011】
一実施形態では、画像処理システムは更に、少なくとも1つの物理的又は生理的パラメータの関数として、FFR推定値の範囲を、ディスプレイユニット上の表示のためにレンダリングするビジュアライザを含む。一実施形態では、FFR推定値の範囲は、その関数依存性において、ディスプレイユニット上に表示される。血管における様々な生理学的状態のFFR値を視覚化することは、FFR計算の境界条件を推定するための解剖学的知識が、計算をより簡単、したがって、より速くするために、制限されるという事実を説明することを可能にする。
【0012】
一実施形態では、パラメータは、圧力及び流量の少なくとも一方であり、FFR推定値の範囲は、圧力及び流量の少なくとも一方の関数として表示される。表示されるFFR推定は更に、FFRを計算するために使用された他の変数/パラメータを変化させることに基づいていてもよい。例えば幾つかの実施形態では、ヘマトクリットレベル、血液粘度又は血液密度の何れか1つ(又はこれらの任意の組み合わせ)を、流量/圧力変化の代わりに又は加えて、変化させてもよい。一実施形態では、ユーザが、変化させる変数を選択することができる。
【0013】
一実施形態では、局所作用伝達関数は、圧力対流量サンプル測定/シミュレーションから、前もって学習されている重みを使用して、線形結合される。つまり、本発明は、以前の現場圧力/流量測定及び/又は冠状動脈CFD計算のデータコーパスを利用して、様々な物理的作用(例えばベルヌーイ(Bernoulli)及び/又は(ポアズイユ(Poiseuille))摩擦等)の冠状動脈の全体又は正味の血圧降下への(当該重みによって測定される)相対的寄与を学習する。重みを十分に大きいデータコーパスとなるようにトレーニングした後、提案されるシステムは、使用する準備が整う。提案されるシステムを使用すると、現場測定を行う及び/又は将来のFFRシミュレーションのために計算コストの高いCFDシミュレーションを実行する必要が回避される。
【0014】
一実施形態によれば、画像は、Cアームタイプのプレーナ型X線装置によって取得される。具体的には、提案される装置に、再構成されたCTボリュメトリック画像を供給する必要がない。幾つかの離散的な投影ビューの角度サンプルが十分であるが、様々な投影からの投影がより多く使用されるほど、シミュレーションの忠実性は良くなる。適応は、一実施形態では、3D血管中心線及びCSA(断面積)によって要約される形状に基づいている。中心線及び断面積は両方とも、例えば様々な視野角に沿って取得される1つ又は複数の2D血管造影図からの回転式X線取得(円形又はその他)から生成される。本明細書では、投影画像の取得のために、例えばCT、回転式Cアーム、MRI等といった多数の様々なイメージングモダリティが想定される。本明細書では、位相コントラストイメージング又はスペクトル画像も想定される。一実施形態では、位相コントラストイメージングは、造影剤の注入なしで使用される。
【0015】
提案される方法は、以前の現場(つまり、介入)圧力測定を利用して、合成関数にまとめるために使用される重みをトレーニングするために使用される。しかし、当該重みが得られた後は、圧力測定のための介入に依存することも、必要とすることもなくなる。しかし、このような現場圧力測定は、本明細書において、依然と使用してもよい。つまり、所与の患者のFFR情報を得るために、圧力測定を行うための冠状動脈介入が不要である。
【0016】
提案されるシステムは、カテーテル検査室において、血管形状に関する3D情報を使用して仮想FFR情報を生成し、当該情報を、介入心臓専門医に提示することを可能にする。
【0017】
更に、CT冠状動脈造影法(CTCA)及びCFDは、境界条件の広範なセットについて、エラーの多い推定値に依存することが観察されている。例えばCTCAベースの仮想FFRは、評価下の血管系の流入又は流出における境界条件を必要とする。しかし、血管系の圧力を供給する心筋に関連する境界条件は、推定することが困難である。したがって、本明細書において、一実施形態において提案されるように、様々な境界条件に対するFFR値のセットの比較的速い計算が、有利である。更に、充血を最大化する物質の投与も不要である。
【0018】
一実施形態では、提案されるシステムは、狭窄冠状動脈における血流挙動を調べるためにFFRシミュレーションにおいて使用されるが、システムは更に、人間(又は動物)の血管系の他の部分に関しても有利に使用できる。また、システムの使用は、医療的コンテキストに限らない。本明細書では、例えば土木工事におけるアクセスのできない複雑な配管システム、又は、生産設備若しくは(飛行機又は船といった)乗り物における水圧管網の検査も想定される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の例示的な実施形態について、以下の図面を参照して説明する。
【0020】
図1図1は、FFR情報をシミュレートする画像処理システムの略ブロック図を示す。
図2A図2Aは、血管中心線及び断面積推定値を示す人間の血管系の投影図を示す。
図2B図2Bは、血管中心線及び断面積推定値を示す人間の血管系の投影図を示す。
図3図3は、3D中心線点のエピポーラ幾何学的推定を示す。
図4図4は、様々なFFR値を表示するグラフィクス表示を示す。
図5図5は、画像処理方法のフローチャートを示す。
図6図6は、局所伝達関数を適応させるための形状依存パラメータ化のテーブルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照するに、FFRシミュレーションを可能にする画像処理システムIPSが示される。当該システムは、患者PATの血管樹形式の冠状動脈のそれぞれの投影ビュー(「フットプリント」)を特定するのに十分な画像コントラストをエンコードする画像Aiから、FFR値を計算することを可能にする。
【0022】
画像Aiは、例えばプレーナ型X線ラジオグラフィ装置、回転式X線Cアームシステム又は他の適切なイメージングモダリティであるイメージャIMによって取得される。イメージャIMは、X線源XRと検出器Dとを含む。患者は、関係のある関心領域(例えば心臓領域)において、X線源XRから生じる放射線によって、被ばくされる。放射線は、関心領域(ここでは心臓領域)における物質と相互作用し、その後、検出器Dにおいて検出される。検出器Dにおいて検出される放射線は、上記デジタル画像Aiに変換される。デジタル画像Aiは、出力され、画像処理システムIPSによって、その入力ポートINにおいて、受信される。
【0023】
一実施形態では、画像Aiを供給するイメージャIMは、CアームX線蛍光透視システムである。FFRシミュレーションは、原理上は、関心の冠状動脈について取得された1つの画像Aiに基づいていてよいが、少なくとも2つの画像(幾つかの実施形態では、正確に2つの画像)を使用することが好適な実施形態である。一実施形態では、バイプレーン式X線Cアームシステムが使用され、異なる(例えば直交)投影方向において、2つの画像A1、A2が取得される。当該画像対A1、A2は、本目的の血管樹の3D構造に関する十分な画像情報を供給することが分かっている。血管組織の放射線吸収特性は低いため、一実施形態では、画像は、血管造影図である。つまり、造影剤が患者の血管系内にある間に取得されるX線画像である。しかし、これは、一実施形態に過ぎず、本明細書では、位相コントラストイメージングが可能な機器を有するイメージャの使用も想定される。これらのタイプのイメージングシステムは、場合によっては、血管内に造影剤がなくても十分なコントラストを提供できるからである。一実施形態では、位相コントラストイメージャは、X線管と検出器Dとの間に配置される一連の干渉格子を含む。
【0024】
広義には、本システムIPSは、計算又はシミュレーション時に、現場圧力測定を行うことなく、また、広範なCFDシミュレーションを実行することなく、特定の患者のFFR値を計算することを可能にする。これらの手法とは対照的に、当該システムは、過去に行われた測定のデータコーパスを使用する。より具体的には、トレーニングモジュールTRが、血流量対血圧降下サンプル対<f,Δp>の形のこの知識を利用する。このデータコーパスから、重みwのセットが学習される。重みwは、複数の局所的に適応された局所作用伝達関数又は基底関数テンプレートを組み合わせることによって、合成伝達関数を「作成」するために使用される。各局所作用伝達関数は、特定の血圧降下をそれぞれ引き起こす異なる個別の物理的作用を、単独で、表す。これらの基底関数のテンプレートは、ライブラリ、即ち、データベースDB内に保持され、実際の患者の受信画像A1、A2内の画像情報に適応される。これまで別々にのみ考慮されてきた個別の物理的作用が、今度は、これらの作用間の様々な相互作用をよりよくモデル化するために、組み合わせで考慮される。これにより、妥当な計算コストで、狭窄領域周辺の流体力学の際立って現実的なモデリングを提供することが分かった合成伝達関数を実現することができる。提案されるシステムは、計算コストの高いCFDに比べて、相対的に単純であることによって、非常に応答性が高いことが分かっている。FFR推定値は、(例えばセグメンテーションを介して)血管樹を特定するために、画像が処理される間に、略リアルタイムに提供される。これは、介入を行うか否かの素早い判断が求められる忙しいカテーテル検査室環境においてメリットである。合成関数を、現在の患者の画像情報に適応又は「テーラリング」した後、合成関数は、様々なFFR値を計算するために使用され、当該FFR値は、残りの不確実性をよりうまく対処するために、また、これにより、ユーザに、狭窄部位におけるFFR状況の現実的な高忠実度画像を与えるために、ビジュアライザVSによって、スクリーンMT上に視覚化される。この結果、医師は、狭窄深刻度をよりよく評価できる。次に、画像処理システムの動作について、より詳細に説明する。以下の説明の第1の部分は、計算側面に焦点を合わせ、第2の部分は、視覚化側面を中心に説明する。
【0025】
下記は、1つ以上の投影画像を取得するために、様々な実施形態において、様々なイメージングモダリティを使用することについてまとめている。上記されたように、一実施形態では、カテーテルを用いた局所コントラスト注入を介して、血管造影投影が生成される。
【0026】
一実施形態では、1つの血管造影投影が、プレーナ型X線イメージャによって取得される。
【0027】
代替実施形態では、1回のコントラストボーラス投与を伴うバイプレーン式システムを使用して、同じ時点における2つの投影が取得される。これは、より正確な3D血管モデルを生成することを可能にする。
【0028】
代替実施形態では、2回の取得及び2回以上のコントラスト注入を伴うシングルプレーン式Cアームシステムを使用して、様々な投影から、より正確なモデルが生成される。一実施形態では、同じ心位相の投影を組み合わせるために、ECG(心電図)が並行して取得される。
【0029】
1回のコントラスト注入を伴うシングルプレーン式Cアームシステムを使用して、また、当該Cアームシステムを動作させて、回転式取得が得られ、その後、このシーケンスから、ECG位相に対応する血管造影図が選択され、より正確なモデル樹血管モデルを生成するための様々な取得角度が実現される。
【0030】
一実施形態では、CTスキャナを使用して、投影画像が供給される。
【0031】
最後に、CT又はMRスキャナを使用して、ボリュメトリックデータセットから3Dの冠状動脈をセグメント化し、中心線及び横断面が決定される。しかし、動作は、必ずしもボリュメトリック画像データに依存しなくてもよい。
【0032】
好適な実施形態では、正確に2つの血管造影画像A1、A2が受信される。これらは、好適には、直交投影方向において取得されるが、必ずしもそうでなくてよい。以下の実施形態は、これらの2つの画像を参照して説明される。当然ながら、(上記のような)代替実施形態では、1つの画像が使用されてもよい。又は、更に別の実施形態では、3又は4つの画像といったように、3つ以上の画像が使用されてもよい。
【0033】
何れにせよ、イメージングモダリティが何であれ、本目的には、入力される投影画像の数は、関心領域における血管樹の局所断面積を、十分な近似度で、計算することを可能にすべきである。つまり、1つの画像しか使用されない場合、ここに含まれる(そして、以下により詳細に説明される)計算は、本質的に近似であり、また、最終的には、信号画像内に記録されていない寸法に沿って血管は延在するので合理的な仮定に依存する。
【0034】
しかし、血管を取り扱う場合は、円形、又は、少なくとも楕円形の横断面を仮定することが合理的であるので、2つの画像が、一般には、本目的の十分な詳細で断面積を推定するための短軸及び主軸を推定するのに十分である。
【0035】
提案されるシステムは、入力として、関心領域周辺のほんの幾つかの離散的な「サンプル」投影方向において取得された投影画像を受信すると、申し分のない結果を提供することができる。ボリュメトリック(つまり、再構成されたCT画像データ)が不要である。しかし、代替実施形態におけるその使用も、本明細書において想定される。
【0036】
動作
1つの非限定的な実施形態において、2つの画像A1、A2が、入力ポートINにおいて受信される。
【0037】
次に、画像A1、A2は、セグメンタSEGに渡される。セグメンタSEGは、各ビューにおいて、血管樹フットプリントについて、2つの画像をセグメント化する。一実施形態では、血管樹全体がセグメント化される。別の実施形態では、実際の狭窄部位の周辺の半径(ROI半径)によって画成される関心領域のみがセグメント化される。これは、一般に、簡単に特定できる。一実施形態では、狭窄部位周辺のROI半径は、調節可能であり、狭窄部位の両側に、約2〜5cmまで延在するが、これは、非限定的な例に過ぎない。他のROI半径定義が、他の使用シナリオにおいて有益に使用されてもよい。
【0038】
次に、当該ROIにおけるセグメント化された血管フットプリントの画像座標が、パーティショナPARに渡される。パーティショナPARは、セグメント化された血管樹部に沿って進み、当該血管樹部を、一実施形態では、約5〜10mmに設定されるステップ幅でセクションに区分化する。幾つかの実施形態では、ステップ幅は、ユーザによって調節可能である。画像取得中のイメージャの形状が分かっているので、必要なステップ幅は、画素単位に変換される。パーティショナPARは、これに基づいて、各入力画像A1、A2に対して、複数の画像部を画成する。この画像部は、以下、「血管樹セグメント」jと呼ぶ。各血管樹セグメントjは、各投影ビューにおいて、対応する血管樹セクションの局所形状を画成する特定の幾何学パラメータを記録する。一実施形態では、幾何学パラメータは、血管の中心線の一部、血管の局所断面積A、局所中心線曲率k、血管セグメント長l、局所血管外周P、及び、局所血管半径rのうちの何れか(又はこれらの任意の組み合わせ)を含む。
【0039】
次に、各画像A1、A2の血管樹セグメントjは、アダプタADPに渡される。アダプタADPは、「基底」関数h(f)のライブラリが保持されるデータベースDBに通信可能に結合される。各基底関数は、局所伝達関数のテンプレートに対応する。各伝達関数は、流体力学的挙動に変化を引き起こす特定の物理的作用の専用の流体力学的モデルを規定する。より具体的には、また、一実施形態では、ライブラリ内の各局所作用伝達関数は、流量fと、所与の関心管状構造体の特定の局所的形状とを所与として、1つの特定の物理的作用によってのみ引き起こされる特定の血圧降下Δpを記述する。
【0040】
局所作用伝達関数h(f)の個々のテンプレートは、次数dを有する奇数の多項式としてモデル化される:
(f)=αsign(f)|f| (1)
【0041】
関数は、各作用eに関連付けられる局所形状係数αとして示されるパラメータ化を含む意味で、テンプレートである。場合によっては、血管の特定の流体特性まで、局所形状係数αは、局所血管形状、即ち、血管のセグメント化された外形又は内腔と、そこから係数が計算される各血管樹セグメンテーションjによって捕捉されるその中心線とだけに依存する。符号関数sign(f)は、流量fの方向(「+」/「−」)を示す。
【0042】
図6の表は、局所形状係数αに関して、一実施形態によるライブラリDB内に保持される様々な局所作用伝達関数テンプレートの例を含む。
【0043】
表において、局所形状パラメータA、k、l、P及びrは、上で定義されており、ρ及びμは、関心の流体の特性を示す。一実施形態では、ρ及びμは、生理的パラメータ、具体的には、血液密度及び血液粘度をそれぞれ示す。
【0044】
データベースは、以下により詳細に説明されるように、人間の血液循環のシミュレーションに使用される集中パラメータモデルを保持する。つまり、図6の表は、最左列に名称が挙げられている圧力作用のそれぞれについて、個々に、つまり、単独に説明するために、各局所伝達関数テンプレートがどのように(局所形状係数αによって表される)血管の局所形状に適応されるのかをまとめている。例えば第1の行は、ベルヌーイ(Bernoulli)作用のみによって引き起こされる血圧降下をモデル化するやり方について記述する。つまり、血管が、局所的な血管セクションにおいて、最右列に図示される「ダンベル」状の局所形状を有する場合、また、血圧変化の唯一の原因として、ベルヌーイ作用しかない場合、当該血圧変化は、当該血管セクションについて、式(1)から、当該式を局所形状パラメータAin、Aoutに適応させた後、計算することができる。
【0045】
しかし、局所的な血圧降下は、通常、1つよりも多い作用によって引き起こされる。したがって、本明細書において提案されるFFRシミュレーションの忠実性を高めるために、アダプタADPが、(2つの画像A1、A2からの)各血管樹セグメントjの対について、特定の作用の1つの局所作用伝達関数を計算するだけでなく、当該セグメントjにおける各作用の専用の局所伝達関数を計算する。当然ながら、一般に、各セクションjが、各作用eに非ゼロの局所作用伝達関数寄与を引き付けるわけではない。例えば比較的真っすぐな血管セグメントは、ボルダ−カルノー(Borda-Carnot)拡大作用に、実質的にゼロの寄与を戻す。画像対A1、A2に記録される各血管セクションjについて、同様のことが行われる。各血管樹セグメントjについて、出力は、1つの異なる作用につき1つの関数で、複数の局所作用伝達関数である。つまり、各血管樹セグメントjについて、異なる作用に依存する係数αejが計算される。すべての血管樹セクションjを、このように処理した後、同じ作用に属する係数αe,jが、血管樹セクションj全体で合計されて、各作用について、全体的な大域(つまり、血管全体又は血管ROIの)係数α=Σαe,jが計算される。この合計によって生成される大域係数を使用すると、血管全体又は血管ROIの各作用について、(1)に従って、大域作用伝達関数が形成される。要するに、各血管セクションjからの個別の局所作用に固有の血圧降下に関する情報は、式(1)に従って、それぞれの大域作用伝達関数h(f)=Σαe,jsign(f)|f|にまとめられる。
【0046】
局所係数は、血管樹セグメントjに記録される局所形状パラメータから、図6の表に従って計算される。例えばアダプタADPは、冠状動脈モデリング技術を使用して、ポアズイユ(Poiseuille)摩擦係数α及び曲率作用係数αを決定する。より具体的には、これらの係数は共に、図3に示されるエピポーラ取得形状を使用して、2つの投影画像A1、A2(又はそれ以上の投影画像)からモデリングされた3D血管中心線に基づいて決定される。図3において、
【数1】
は、2つの投影画像A1、A2を取得する際のイメージャのX線源XRの対応する焦点位置を示す。2つの投影画像A1、A2間の幾何学的関係は分かっているので、3D中心線点は、図3に示されるように、決定される。各投影画像A1、A2における中心線は、このエピポーラ幾何学的に点で形成される。焦点位置の空間的情報は、画像のヘッダ内のDICOMメタデータから取り出されるか、又は、そうでなければ、取得中のイメージャの形状の記録から取り出される。
【0047】
すべての他の作用は、2つの血管造影投影画像A1、A2における対応する血管位置から決定される少なくとも2つの半径に基づいて計算される。つまり、元になっている血管形状は、3D血管中心線に沿って取られた断面積CSAによって集約される。したがって、これらの作用を計算するために、血管のフルボリュームデータ(ボクセルデータセット)又は3D表面モデルを生成する必要がない。最低必要要件は、2つ以上の投影及び取得形状の知識からの3D中心線の決定である。要約すれば、中心線上の1つの3D点について、3D中心線及び取得形状を使用すると、対応する血管及び血管半径が、関連の投影について決定され、また、図6の表に従って、A、P又はrといった関連の幾何学的パラメータが決定される。
【0048】
図2Aは、血管の中心線をはっきりと示す血管造影投影としてA1又はA2を示す。図2Bは、中心線を横断して取られた局所血管半径を示す血管造影投影としてA1又はA2を示す。幾何学的パラメータの画像内測定は、グレイスケール閾値に基づいている。図2Bから分かるように、中心線の例について、幾何学的パラメータは、一般に、2つの投影A1、A2における対応する血管樹セクション対jにおいて記録される集合的画像情報から導出される。
【0049】
次に、図1における提案される画像処理システムIPSにおける処理フローに戻るに、複数の大域作用伝達関数(つまり、各作用eにつき1つ)が、コンバイナΣに渡され、様々な大域作用伝達関数の線形結合によって、合成伝達関数Δp=Σ(f)が形成される。これは、狭窄部位周辺の血管ROIにおける流体挙動を計算するためのより単純化されたモデルを形成することを可能にする。所与のボリュメトリック流量fにおける狭窄血管セグメントの血圧降下Δpは、今度は、i)ベルヌーイの原理、ii)血管の楕円率及び/又は曲率によって引き起こされる摩擦による圧力損失、及び/又は、膨張及び収縮といった横断面形状の変化のうちの何れか1つ又はこれらの任意の組み合わせによる血圧変化を説明するために、様々な大域血圧降下作用の加重和f(f)としてモデリングされる。
【0050】
重みwは、合成伝達関数を形成する際の(又は異なる)データベースDBから導出される。一実施形態では、作用の重みは、統計的トレーニング学習手順の学習段階において、トレーニングモジュールTRによって前もって計算される。特に、ボリュメトリック流量及び血圧降下の例f、Δpのセットを、血管樹の形状と共に所与として、重みのフィッティングは、一実施形態では、重みベクトルw=[wが、w=ang minΣ(Δp−Σ(f))(ここで、iは、サンプルの指数を表し、eは、トレーニング段階における、説明が望まれる各作用eを表す指数)と類似する損失関数を最小限にすることによって見つけられる、最小二乗フィッティング、正規化最小二乗フィッティング、又は、非負最小二乗フィッティングとして実施される。例えば図6に従ってライブラリを使用すると、作用は、そこに示される通りであり、また、e=5であり、これは、当然ながら、図6のライブラリは、ほんの1つの実施例であり、様々な作用が他の実施形態において使用されてもよい。本明細書では、トレーニングサンプルは、測定結果f、Δpだけでなく、各測定結果測定結果f、Δpの少なくとも局所形状を記述する(上記された)A、r等といった対応する幾何学的パラメータも含むと仮定される。
【0051】
トレーニングサンプルは、CFDシミュレーションによって、又は、血圧/流量又は血圧/速度の同時測定によって得られる。本明細書において提案されるように、重みは、様々な作用e間の相互作用、相互依存性及び相関関係を説明するように、適応的に選択される。これは、作用は、単独で、個別に試験される以前の手法とはかなり異なる。これに対し、本明細書において実施される方法は、既存のデータコーパスから、様々な血圧損失作用間の相互作用を推測することを目的とする。
【0052】
合成伝達関数が得られ、患者の血管樹に適応されると、エバリュエータEVALが、
【数2】
に従って、任意の所与の対p、fについて、様々なFFR値を計算する。
【0053】
つまり、狭窄部位の後ろの遠位圧pが、狭窄部位の前の近位圧によって除算される。FFR値は、近位圧と狭窄領域を流れる流量との両方に依存する。このように計算されたFFR値は、次に、出力ポート(図示せず)において、記憶のために出力されるか、及び/又は、そうでなければ処理される。
【0054】
FFR式(2)は、FFRが2つの未知数p、fに依存する2D表面を規定する。一実施形態では、エバリュエータEVALは、(2)に従って、FFR表面をサンプリングして、それぞれ、生理学的に妥当な間隔内で、流量及び/又は近位圧を変化させることによって、様々なFFR値の範囲を生成する。
【0055】
一実施形態では、エバリュエータEVALによって出力される複数のデータトリプル<p,f,FFR(p,f)>は、次に、ビジュアライザVSに渡される。一実施形態では、ビジュアライザVSは、サンプリングされた表面<p,f,FFR(p,f)>を平面上にマッピングされることによってグラフィクス表示を形成し、また、FFR値の大きさは、ユーザ定義可能なパレットに従って、色又はグレイスケールでコーディングされる。グラフィクス表示GDは、次に、ビジュアライザVSの出力によって制御されるシステムビデオカードを駆動することによって、モニタMT上の表示のためにレンダリングされる。図4は、そのようなグラフィクス表示の一実施形態を示す。サンプリングされたFFR表面のグラフィカルレンダリングは、FFRを近位圧とボリュメトリック流量との関数として提示することによって、医師が、狭窄深刻度をよりよく評価することを可能にする。近位血圧の測定結果が利用可能である場合、2Dグラフィクス表示を、1D曲線に折り畳むことができる。この近位血圧値は、大動脈における血圧のカテーテルベース測定結果から、又は、外部血圧測定結果(アームカフ)から推定可能である。色のコーディングは、特定の作業レジームにおける狭窄深刻度を示す。画像取得が血管造影法に基づいている場合、造影剤が投与されているカテーテルを用いて、近位圧の測定結果が得られる。専用の血圧測定カテーテル(「血圧ワイヤ」)を使用する必要がない(しかし、これは、依然として行われてもよい)。
【0056】
同様に、ヘマトクリット値、血液粘度、血液密度といった計算の一部であるが、正確には分かっていない他の数量に依存して、FFRを視覚化することもできる。
【0057】
更に、複数の2D画像からのCSA推定は、本質的に近似であるので、CSA推定のFFR値にもたらす作用を視覚化することもできる。ユーザは、この場合、これらのプロットを切り替えるか、又は、これらを3Dプロットに組み合わせ及び統合してもよい。つまり、ビジュアライザは、式(1)、(2)における特定のユーザ選択可能な値を「固定する」又は一定に保ち、また、残りの値のうちの1つ以上を、ユーザ定義可能なエラー間隔において変化させることによって、ユーザが、FFR値に付随する不確実性を調べることを可能にする。例えばユーザには、すべての変数のリストを有するユーザインターフェースが提示される。ユーザは、次に、一定に保ちたい変数をクリックする又は特定する。残りの変数は、各エラーマージン内で変えられ、結果として得られるFFR値は、これらの変化に依存して、表示される。例えばCSA推定Aを変える場合、ユーザは、一実施形態では、どの血管樹セグメンテーションjにおいて、変化が適用されるべきかを特定する。しかし、より単純な実施形態では、固定のエラー推定値が、すべての血管樹セグメンテーションセクションjにわたるすべてのCSA推定に適用される。
【0058】
臨床研究によって、0.75又は0.8未満のFFR値は、介入を必要とする狭窄深刻度の数値表示である点で重大であることが示されている。一実施形態では、重大な0.8FFR値では、図1の通りに、グラフィクス表示上に輪郭線を重ねることが提案される。しかし、0.8(又は任意の他の適切に示唆的な閾値)の輪郭線は、1つの実施形態に過ぎず、本明細書では、限定と解釈されるべきではない。別のコンテキストでは、代わりに、異なる値における輪郭線が求められてもよい。
【0059】
代替実施形態では、2D又は3Dプロットに表示されるのはFFR値自体ではなく、計算されたプロットにおける所与の血管形状についての0.8閾値を上回る又は下回るFFR値の領域又はボリュームであってもよい。これは、利用可能な情報を1つの数に縮約することを可能にする。
【0060】
図1に関連して上記されたアダプタADPに関する実施形態では、すべての作用が、各血管樹セクションjについて考慮されるが、当然ながら、これは、一実施形態に過ぎない。代替実施形態では、血管樹セグメンテーションセクションに適用されるのは、データベース内に保持される局所作用伝達関数のサブ選択だけである。例えば一実施形態では、ユーザは、様々なセクションjにおいてどの作用を考慮したいのかを決定することができる。一実施形態では、ユーザは、図6の表の最右列と同様で、様々な局所的形状の示唆的記号を示すグラフィカル記号を含むグラフィカルユーザインターフェースが提示される。ユーザは、局所伝達関数を計算する際に、システムによってどの局所作用伝達関数が考慮されるべきであるかをクリックするか、又は、特定する。
【0061】
図5を参照して、画像処理方法のフローチャートが示される。
【0062】
ステップS505において、関心物体の投影ビューを含む少なくとも1つの画像が受信される。一実施形態では、関心物体は、人間又は動物の心血管系の一部である。
【0063】
ステップS510において、画像は、投影ビューにおいて捕捉された物体のフットプリントについてセグメント化され、血管樹セグメンテーションといった物体セグメンテーションが得られる。一実施形態では、セグメンテーションは、狭窄部位を中心とした関心領域に制限される。
【0064】
ステップS515において、セグメンテーションは、画像成分jに区分化される。一実施形態では、成分は、ROI内の血管樹に沿ったセクションである。
【0065】
ステップS520において、複数の局所作用伝達関数の1つ以上(一実施形態では、それぞれ)が、各成分jに記録される物体の局所形状に適応されて、複数の大域作用伝達関数hが得られる。
【0066】
ステップS525において、複数の大域作用伝達関数は、物体の合成伝達関数となるように組み合わされる。
【0067】
ステップS530において、物体を流れる流体のFFR推定値が、合成伝達関数から計算される。一実施形態では、計算ステップは、少なくとも1つの物理的又は生理的パラメータを変えることによって、様々なFFR推定値を計算することを含む。
【0068】
ステップS535において、FFR推定値の範囲が、少なくとも1つの物理的又は生理的パラメータの関数として表示される。
【0069】
一実施形態では、図1の画像処理システムIPSの構成要素はすべて、単一のコンピュータシステム上で実行される。代替実施形態では、少なくとも部分的に分散されたアーキテクチャも同様に本明細書において想定され、上記構成要素のうちの1つ以上は遠隔配置され、適切な通信ネットワークにおいて、互いに及び/又は画像プロセッサIPSと接続される。
【0070】
一実施形態では、画像処理システムIPS(又は少なくともその構成要素の幾つか)は、専用FPGA又は配線(スタンドアロン)チップとして配置される。
【0071】
代替実施形態では、画像処理システムIPS又はその構成要素の少なくとも幾つかは、イメージャIMのワークステーション内に常駐する。
【0072】
画像処理システムIPSの構成要素は、Matlab(登録商標)といった適切な科学コンピュータプラットフォームにおいてプログラミングされ、(イメージャのワークステーションといった)コンピュータシステム上での実行に適したC++又はC+ルーティンに翻訳される。本発明の別の例示的な実施形態では、上記実施形態のうちの1つに従って方法のステップを、適切なシステム上で実行するように適応されることによって特徴付けられるコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0073】
したがって、コンピュータプログラム要素は、コンピュータユニットに記憶されていてもよい。当該コンピュータユニットも、本発明の一実施形態の一部であってよい。当該コンピュータユニットは、上記方法のステップを行うか、ステップの実行を誘導するように適応される。更に、当該コンピュータユニットは、上記装置の構成要素を動作させるように適応されてもよい。当該コンピュータユニットは、自動的に動作するか、及び/又は、ユーザの命令を実行するように適応される。コンピュータプログラムが、データプロセッサのワーキングメモリにロードされてもよい。したがって、当該データプロセッサは、本発明の方法を実行するように装備されている。
【0074】
本発明のこの例示的な実施形態は、本発明を初めから使用するコンピュータプログラムと、アップデートを介して既存のプログラムが、本発明を使用するプログラムに変換されるコンピュータプログラムとの両方を対象とする。
【0075】
更に、コンピュータプログラム要素は、上記方法の例示的な実施形態の手順を満たすために必要なすべてのステップを提供することが可能である。
【0076】
本発明の更なる例示的な実施形態では、CD−ROMといったコンピュータ可読媒体が提示される。当該コンピュータ可読媒体には、前段に説明されているコンピュータプログラム要素が記憶される。
【0077】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体又は固体媒体といった適切な媒体上に記憶される及び/又は分散配置されるが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介した形態といった他の形態で分配されてもよい。
【0078】
しかし、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブといったネットワーク上に提示され、当該ネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされてもよい。本発明の更なる例示的な実施形態によれば、ダウンロード用にコンピュータプログラム要素を利用可能にする媒体が提供され、当該コンピュータプログラム要素は、本発明の上記実施形態のうちの1つによる方法を行うように構成されている。
【0079】
なお、本発明の実施形態は、様々な主題を参照して説明されている。具体的には、方法タイプのクレームを参照して説明される実施形態もあれば、デバイスタイプのクレームを参照して説明される実施形態もある。しかし、当業者であれば、上記及び下記の説明から、特に明記されない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、様々な主題に関連する特徴の任意の組み合わせも、本願によって開示されていると見なされると理解できるであろう。しかし、すべての特徴は、特徴の単なる足し合わせ以上の相乗効果を提供する限り、組み合わされることが可能である。
【0080】
本発明は、図面及び上記説明において詳細に例示され、説明されたが、当該例示及び説明は、例示的に見なされるべきであり、限定的に見なされるべきではない。本発明は、開示される実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形態様は、図面、開示内容及び従属請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解され、実施される。
【0081】
請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、「a」又は「an」との不定冠詞も、複数形を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に引用される幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されることだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6