(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基地局向けの上りデータ信号又は端末間直接通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第1の補正値、又は、前記端末間直接通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第2の補正値に対応する複数の候補値の中から、TPCコマンドを選択する設定部と、
前記TPCコマンドを含む制御信号を送信する送信処理部と、
を具備し、
前記TPCコマンドの候補値毎に、前記第1の補正値及び前記第2の補正値が設定され、
少なくとも1つの候補値では、前記第2の補正値は対応する前記第1の補正値よりもオフセット値の分だけ低く設定されており、
前記少なくとも1つの候補値で共通に用いられる前記オフセット値は、上位レイヤシグナリングによって前記端末に通知される、
基地局。
基地局向けの上りデータ信号又は端末間直接通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第1の補正値、又は、前記端末間直接通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第2の補正値に対応する複数の候補値の中から、TPCコマンドを設定部が選択する設定工程と、
前記TPCコマンドを含む制御信号を送信処理部が送信する送信工程と、
を具備し、
前記TPCコマンドの候補値毎に、前記第1の補正値及び前記第2の補正値が設定され、
少なくとも1つの候補値では、前記第2の補正値は対応する前記第1の補正値よりもオフセット値の分だけ低く設定されており、
前記少なくとも1つの候補値で共通に用いられる前記オフセット値は、上位レイヤシグナリングによって前記端末に通知される、
送信電力設定方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0019】
(実施の形態1)
[通信システムの概要]
本実施の形態に係る通信システムは、基地局100と端末200とを有する。基地局100は、LTE-Advancedシステムに対応する基地局であり、端末200は、LTE-AdvancedシステムにおいてD2D通信に対応する端末である。つまり、端末200は、D2D Tx UE又はD2D Rx UEとして動作可能である。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る基地局100の主要構成図である。基地局100において、設定部101は、基地局100向けの上りデータ信号又はD2D通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第1の補正値、又は、D2D通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第2の補正値に対応する複数の候補値の中から、端末200からの品質報告に基づいてTPCコマンドを選択し、送信処理部104は、上記TPCコマンドを含む制御信号(UL grant又はD2D grant)を送信する。
【0021】
図3は、本実施の形態に係る端末200の主要構成図である。端末200において、受信処理部203は、複数の候補値の中から選択されたTPCコマンドを含む制御信号(UL grant又はD2D grant)を受信し、送信制御部207は、受信されたTPCコマンドに対応する第1の補正値を用いて、基地局100向けの上りデータ信号に対する第1の送信電力を制御し、受信されたTPCコマンドに対応する第1の補正値又は第2の補正値を用いてD2D通信の信号に対する第2の送信電力を制御する。
【0022】
ただし、TPCコマンドの候補値毎に、第1の補正値及び第2の補正値が設定される。また、少なくとも1つの候補値では、第2の補正値は第1の補正値よりも低く設定されている。
【0023】
[基地局100の構成]
図4は、本実施の形態に係る基地局100の構成を示すブロック図である。
図4において、基地局100は、設定部101と、符号化・変調部102、103と、送信処理部104と、送信部105と、アンテナ106と、受信部107と、受信処理部108と、データ受信部109と、品質報告受信部110とを有する。
【0024】
設定部101は、D2D通信対象端末200に対して、D2D通信に関する情報を生成する。D2D通信に関する情報には、例えば、D2D通信用に割当可能なリソース(Data pool及びSA pool)を示すD2D設定情報が含まれる。設定部101によって生成されたD2D設定情報は、制御情報(設定情報)として、符号化・変調部102、送信処理部104、及び送信部105において送信処理がなされた後に、D2D通信対象端末200へ送信される。D2D設定情報を通知する制御情報の構成例として、システム情報(System information block)又は無線リソース制御の情報(RRC signalling)を用いることができる。
【0025】
また、設定部101は、D2D通信対象端末200のうち、D2D送信端末に対して、D2Dデータ及びSAの送信許可(D2D grant)に関するD2D grant情報を生成する。D2D grant情報には、D2D通信用のTPCコマンド(送信電力の補正値)、D2D受信端末またはD2D受信端末群の情報、D2Dデータ及びSAに用いる時間・周波数リソースの情報、適用される変調方式・符号化率の情報(MCS)、又は、周波数ホッピングの情報(適用の有無)などが含まれる。例えば、設定部101は、端末200から報告される品質報告(後述する)に基づいて、複数の候補値の中からD2D通信用のTPCコマンドを選択する。設定部101によって生成されたD2D grant情報は、制御情報(設定情報)として、符号化・変調部102、送信処理部104、及び送信部105において送信処理がなされた後に、D2D通信対象端末200へ送信される。
【0026】
また、設定部101は、端末200に対して、基地局100向け上りデータ信号(PUSCH)に対する送信許可(UL grant)に関するUL grant情報を生成する。UL grant情報には、例えば、上りデータ信号(PUSCH)用のTPCコマンド、上りデータ信号を割り当てる上りリソース、適用されるMCSなどが含まれる。設定部101によって生成されたUL grant情報は、制御情報(割当制御情報)として、受信処理部108に出力されるとともに、符号化・変調部102を介して基地局100から端末200へ通知される。
【0027】
このようにして、PUSCHに対する送信電力、及び、D2Dデータに対する送信電力に対する送信電力制御に用いられるTPCコマンドを含む制御信号(D2D grant情報及びUL grant情報)が送信される。なお、D2D grant情報及びUL grant情報を通知する制御情報の構成例として、下り制御信号(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)を用いることができる。
【0028】
また、設定部101は、下りデータ信号(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)を割り当てる下りリソースに関する下りリソース割当情報を生成する。下りリソース割当情報は、制御情報(割当制御情報)として送信処理部104に出力されるとともに、符号化・変調部102を介して基地局100から端末200へ通知される。また、設定部101は、参照信号が送信されるサブフレームを示す設定情報を生成する。この設定情報は、符号化・変調部102を介して基地局100から端末200へ通知される。
【0029】
符号化・変調部102は、設定部101から受け取る情報を符号化及び変調し、得られた変調信号を送信処理部104へ出力する。
【0030】
符号化・変調部103は、入力されるデータ信号(送信データ)を符号化及び変調し、得られた変調信号を送信処理部104へ出力する。
【0031】
送信処理部104は、符号化・変調部102及び符号化・変調部103から受け取る変調信号を、設定部101から受け取る下りリソースに関する割当制御情報の示すリソースにマッピングすることにより、送信信号を形成する。ここで、送信信号がOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号である場合には、送信処理部104は、変調信号を、設定部101から受け取る下りリソースに関する割当制御情報の示すリソースにマッピングし、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理を施して時間波形に変換し、CP(Cyclic Prefix)を付加することにより、OFDM信号を形成する。
【0032】
送信部105は、送信処理部104から受け取る送信信号に対して送信無線処理(アップコンバート、ディジタルアナログ(D/A)変換など)を施し、アンテナ106を介して送信する。
【0033】
受信部107は、アンテナ106を介して受信した無線信号に対して受信無線処理(ダウンコンバート、アナログディジタル(A/D)変換など)を施し、得られた受信信号を受信処理部108へ出力する。
【0034】
受信処理部108は、設定部101から受け取る上りリソースに関する割当制御情報に基づいて上りデータ信号及びACK/NACK情報がマッピングされているリソースを特定し、受信信号から、特定されたリソースにマッピングされている信号成分を抽出する。また、受信処理部108は、受信信号から、D2D通信対象端末200の品質報告を抽出する。なお、品質報告には、例えば、参照信号の受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)や受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)又は送信電力許容値(PHR:Power Headroom)、タイミング制御に関する情報などが含まれる。
【0035】
ここで、受信信号がOFDM信号である場合には、受信処理部108は、抽出された信号成分に対してIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)処理を施すことにより、時間領域信号に変換する。
【0036】
こうして受信処理部108によって抽出された上りデータ信号(受信データ)及びACK/NACK情報は、データ受信部109へ出力され、品質報告は、品質報告受信部110へ出力される。
【0037】
データ受信部109は、受信処理部108から受け取る信号を復号する。これにより、上りリンクデータ及びACK/NACK情報が得られる。
【0038】
品質報告受信部110は、受信処理部108から受け取る信号を他の構成部(図示せず)へ出力する。基地局100は、受信した各D2D通信対象端末200の品質報告に基づいて、D2D通信対象端末200の選択、又は、適用されるMCSの選択等を実施する。
【0039】
[端末200の構成]
図5は、本実施の形態に係る端末200の構成を示すブロック図である。以下では、まず、D2D送信端末(D2D Tx UE)の構成について説明する。
【0040】
図5において、端末200は、アンテナ201と、受信部202と、受信処理部203と、SA生成部204と、データ信号生成部205と、品質報告生成部206と、送信制御部207と、送信信号形成部208と、送信部209とを有する。
【0041】
受信部202は、アンテナ201を介して受信した無線信号に対して受信無線処理(ダウンコンバート、アナログディジタル(A/D)変換など)を施し、得られた受信信号を受信処理部203へ出力する。
【0042】
受信処理部203は、受信信号に含まれる制御情報及びデータ信号を抽出する。
【0043】
受信処理部203は、制御情報のうち、D2D設定情報(Data pool、SA pool)を送信制御部207及び受信部202へ出力し、D2D grant情報及びUL grant情報を送信制御部207へ出力し、設定情報を品質報告生成部206へ出力する。
【0044】
また、受信処理部203は、制御情報に含まれる下りリソース割当情報に従って抽出された下りデータ信号(PDSCH)に対して誤り検出処理を行い、誤り検出結果に応じたACK/NACK情報をデータ信号生成部205へ出力する。誤りの無い下りデータ信号は、受信データとして取り出される。
【0045】
また、受信処理部203は、別途通知される制御情報から、参照信号が送信されるサブフレームを示す設定情報を抽出し、設定情報を品質報告生成部206に出力する。
【0046】
なお、受信信号がOFDM信号の場合には、受信処理部203は、CP除去処理、FFT処理も行う。
【0047】
SA生成部204は、送信制御部207からSA生成の指示を受け取ると、D2D grant情報のうち、D2D受信端末へ通知するSAに関する情報に対して符号化及び変調を行うことによりSA信号を生成し、送信信号形成部208へ出力する。なお、SA生成部204は、複数のD2D受信端末からなるD2D受信端末群宛てのSA信号を生成してもよい。
【0048】
データ信号生成部205は、送信制御部207から基地局100向けの送信信号生成の指示を受け取ると、ACK/NACK情報及び送信データを入力とし、送信制御部207から受け取るMCS情報に基づいてACK/NACK情報及び送信データを符号化及び変調することにより、上りデータ信号(PUSCH)を生成する。
【0049】
また、データ信号生成部205は、送信制御部207からD2D受信端末向けの送信信号生成の指示を受け取ると、送信制御部207から受け取るMCS情報に基づいて送信データを符号化及び変調することにより、D2Dデータを生成する。
【0050】
品質報告生成部206は、受信処理部203から受け取る設定情報に基づいて、参照信号を観測し、参照信号を用いて品質報告を生成する。例えば、品質報告生成部206は、受信信号電力(RSRP)や受信品質(RSRQ)、タイミング制御に関する情報、又は、送信信号形成部208から受け取る送信電力許容値(PHR)を用いて品質報告を生成する。品質報告生成部206は、生成した品質報告を送信信号形成部208へ出力する。
【0051】
送信制御部207は、受信処理部203から受け取るUL grant情報に基づいて、基地局100向けの送信信号生成の指示をデータ信号生成部205へ出力する。当該指示には、基地局100向けの送信信号(PUSCH)の割当リソース及びMCSが含まれる。
【0052】
また、送信制御部207は、受信処理部203から受け取るD2D grant情報に基づいて、SA生成の指示をSA生成部204へ出力するとともに、D2D受信端末向けの送信信号生成の指示をデータ信号生成部205へ出力する。
【0053】
また、送信制御部207は、受信処理部203から受け取るUL grant情報又はD2D grant情報に基づいて、上りデータ信号(PUSCH)、D2Dデータ、SA信号をマッピングする「マッピングリソース」を特定し、マッピングリソースに関する情報(以下、「マッピングリソース情報」と呼ばれることがある)を送信信号形成部208へ出力する。
【0054】
また、送信制御部207は、UL grant情報及びD2D grant情報に含まれるTPCコマンドを用いて、上りデータ信号の送信電力、及び、D2Dデータ及びSA信号の送信電力をそれぞれ制御する。送信制御部207は、上りデータ信号又はD2D通信の信号に対する送信電力制御の指示を送信部209へ出力する。なお、送信制御部207における送信電力の制御方法の詳細については後述する。
【0055】
送信信号形成部208は、SA生成部204から受け取るSA信号をSA信号用のマッピングリソースにマッピングする。また、送信信号形成部208は、データ信号生成部205から受け取るデータ信号(PUSCH信号又はD2Dデータ)を対応するマッピングリソースにマッピングする。また、送信信号形成部208は、品質報告生成部206から受け取る品質報告を、品質報告用のマッピングリソースにマッピングする。こうして送信信号が形成される。なお、送信信号がOFDM信号の場合には、送信信号形成部208は、データ信号をDFT(Discrete Fourier transform)処理した後に、マッピングリソースにマッピングする。また、形成された送信信号に対してCPが付加される。
【0056】
送信部209は、送信信号形成部208で形成された送信信号に対して送信無線処理(アップコンバート、ディジタルアナログ(D/A)変換など)を施してアンテナ201を介して送信する。この際、送信部209は、送信制御部207から指示される送信電力を用いて送信信号を送信する。
【0057】
次いで、
図5に示す端末200におけるD2D受信端末(D2D Rx UE)の構成について、D2D送信端末と異なる点について説明する。
【0058】
D2D受信端末200では、受信部202は、D2D設定情報を用いて、受信信号からSA信号がマッピングされたリソースの成分を抽出する。
【0059】
受信処理部203は、受信部202から受け取る信号成分を観測して、自機宛てのSA信号を検出する。受信信号処理部203は、自機宛てのSA信号を検出すると、SA信号の内容に従って、D2Dデータの検出、及び復調を実施する。復調されたD2Dデータは受信データとして取り出される。なお、ここでは端末200が自機宛てのSA信号を検出する動作としたが、これに限らず、自機を含む複数のD2D受信端末からなるD2D受信端末群宛てのSA信号が生成されるものとしてもよい。
【0060】
[基地局100及び端末200の動作]
以上の構成を有する基地局100及び端末200の動作について説明する。
【0061】
基地局100において、設定部101は、D2D通信対象端末200に対して、基地局100向け送信信号(つまり、PUSCH)に適用する送信電力制御値、及び、D2D通信におけるSA信号及びD2Dデータに適用する送信電力制御値を設定する。
【0062】
例えば、第iサブフレームにおけるPUSCHに対する送信電力P
PUSCH(i)は、式(1)に従って求められる。また、第iサブフレームにおけるSA信号及びD2Dデータに対する送信電力P
D2D(i)は、次式(2)に従って求められる。
【数2】
【0063】
式(2)において、P
cmax[dBm]は、端末200の最大送信電力を示し、M
D2D(i)は、第iサブフレームにおいて割り当てられたD2D通信の送信信号の周波数リソースブロック数を示し、PLは端末200が測定したパスロスのレベル[dB]を示し、P
O_D2D(j)[dBm]およびα
D2D(j)は、D2D通信の送信信号の送信電力の初期値、および、パスロス(PL)の補償割合を表す重み係数をそれぞれ示し、準固定割当(j=0)および動的割当(j=1)の種別に応じて個別に基地局100から設定されるパラメータである。Δ
TF_D2D(i)はD2D通信の送信信号上で制御情報を送信する場合に、制御情報量に応じて設定可能なオフセット値を示す。また、f
D2D(i)は、D2D通信用のTPCコマンドを示す。
【0064】
ここで、式(1)と式(2)とにおいて、パスロスPL、送信電力の初期値Po_
PUSCH、Po_
D2D、及び、重み係数α、α
D2Dを共通の値とすることが考えられる。具体的には、式(1)及び式(2)に示すPLとして、基地局100とD2D送信端末200との距離に対応するパスロスが設定される。また、式(2)のPo_
D2D、α
D2Dとして、式(1)のPUSCHの送信電力の算出に用いられるPo_
PUSCH、αと同じ値が設定される。
【0065】
すなわち、ここでは、D2D通信の送信電力の算出において、基地局100とD2D通信端末との間の通信環境が考慮される。こうすることで、基地局100がD2D送信端末以外の他の端末からの上りデータ信号(PUSCH)又は上り制御信号(PUCCH)を受信する際、D2D送信端末から送信される信号が、基地局100とD2D送信端末との間のパスロスPLを上回る電力によって送信されることを回避できる。これにより、基地局100において、D2D送信端末からの信号が他の端末からの信号に対して過度に干渉を及ぼすことを回避できる。更に、D2D受信端末において、D2D送信端末からの信号(所望信号)が他の端末から基地局100向けの上り信号(干渉信号)から受ける干渉を抑えることができる。
【0066】
一方、
図6に示すように、D2D通信が適用される環境としては、基地局100(eNB)から離れた位置にあるD2D送信端末と、D2D送信端末の周辺に存在するD2D受信端末とが通信を行うことが想定される。この環境において、D2D通信の送信電力制御を行う際、本来であればD2D送信端末とD2D受信端末との間のパスロスPL'を補償すればよい。ただし、ここでは、上述したように、式(2)に示すD2D通信の送信電力制御において、基地局100とD2D送信端末との間のパスロスPLを用いる。このため、式(2)に示すD2D通信の送信電力制御では、D2D通信端末間の距離が短い場合(PL'<PL)でも、PLに対応する大きな送信電力が設定され、D2D通信の適用による電力効率の改善効果が得られない場合も考えられる。
【0067】
そこで、本実施の形態では、D2D grantによって通知されるD2D通信用のTPCコマンドに対応する送信電力の補正値を、UL grantによって通知されるPUSCH用のTPCコマンドに対応する送信電力の補正値と異ならせる。具体的には、D2D通信用のTPCコマンドによる電力低減量を、PUSCH用のTPCコマンドによる電力低減量よりも大きくする。こうすることで、D2D通信での送信電力制御による最適な送信電力値への収束を、PUSCHに対する送信電力制御よりも早めることが可能となる。
【0068】
具体的には、式(1)に示すPUSCH用のTPCコマンドの累計値f
PUSCH(i)(式(1)に示すf(i)に相当する)は、次式(3)に従って更新される。
【数3】
【0069】
式(3)において、δ
PUSCH(i-K
PUSCH)は、第iサブフレームからK
PUSCHサブフレーム前に指示されたTPCコマンドに対応する送信電力の補正値[dB]を示す。つまり、K
PUSCHはPUSCH用のTPCコマンドの指示タイミング(サブフレーム)を示す。
【0070】
例えば、
図7Aに示すように、2ビットで表されるTPCコマンドフィールド(「コードポイント」と呼ぶこともある)において異なる値のδ
PUSCHがそれぞれ対応づけられる。
図7Aでは、TPCコマンドの候補値0,1,2,3(00,01,10,11)に対して、δ
PUSCH=−1,0,1,3がそれぞれ設定されている。
【0071】
これに対して、式(2)に示すD2D通信用のTPCコマンドの累計値f
D2D(i)は、次式(4)に従って更新される。
【数4】
【0072】
式(4)において、δ
D2D(i-K)は、第iサブフレームからKサブフレーム前に指示されたTPCコマンドに対応する送信電力の補正値[dB]を示す。つまり、KはD2D通信用のTPCコマンドの指示タイミング(サブフレーム)を示す。
【0073】
例えば、
図7Bでは、2ビットのTPCコマンドの候補値0,1,2,3(00,01,10,11)に対して、δ
D2D=−1-β,0−β,1−β,3−βがそれぞれ設定されている。
図7Bに示すβは、D2D送信端末に対して別途設定された所定値(正の整数値)である。
【0074】
図7Aに示すδ
PUSCHと
図7Bに示すδ
D2Dとを比較すると、TPCコマンドの各候補値においてδ
D2Dはδ
PUSCHよりも低い。具体的には、各δ
D2Dは、対応するδ
PUSCHよりもβの分だけ低い値を採る。つまり、D2D通信の送信電力制御では、PUSCHの送信電力制御と比較して、送信電力値をより早く低減させることが可能となる。
【0075】
例えば、
図7Bにおいて、β=2とすると、TPCコマンド=3ではδ
D2D=1となり、電力増大が指示される。一方、TPCコマンド=0ではδ
D2D=-3dBとなり、δ
PUSCH(最小値:-1dB)では採ることができない、より大きな値の電力低減が指示可能となる。また、例えば、
図7Bにおいて、βを4以上の値(つまり、
図7Aに示すδ
PUSCHの最大値(3dB)より大きい値)とすると、全てのTPCコマンドにおいてδ
D2Dの値は0未満となる。すなわち、全てのTPCコマンドによってD2D通信の送信電力の低減が指示可能となる。
【0076】
なお、βを指示する制御信号としては、例えば、無線リソース制御の情報(RRC signalling)、又は、MAC signallingなどの上位レイヤのシグナリングを用いてもよい。
【0077】
以上のように、基地局100は、補正値δ
PUSCH又は補正値δ
D2Dに対応する複数の候補値の中から、端末200からの品質報告に基づいてTPCコマンドを選択する。一方、端末200は、基地局100との通信時には、受信されたTPCコマンドに対応する補正値δ
PUSCHを用いて基地局向けの上りデータ信号に対する送信電力を制御し、D2D通信時には、受信されたTPCコマンドに対応する補正値δ
D2Dを用いてD2D通信の信号に対する送信電力を制御する。
【0078】
このとき、D2D通信の送信電力制御に用いられるTPCコマンドによって通知される補正値δ
D2Dと、PUSCHの送信電力制御に用いられるTPCコマンドによって通知される補正値δ
PUSCHとを異ならせ、D2D通信での電力低減量を、PUSCH送信での電力低減量よりも大きくする。具体的には、TPCコマンドの各候補値において、D2D通信の送信電力の制御に用いられる補正値δ
D2Dは、PUSCHの送信電力の制御に用いられる補正値δ
PUSCHよりも低く設定される。これにより、D2D通信の送信電力制御では、PUSCHの送信電力制御と比較して、1度のTPCコマンドの通知による電力低減量をより大きくすることができる。
【0079】
例えば、
図1に示すように、D2D通信では、1回のD2D grant(リソース割当)によって複数のD2Dデータの割当がまとめて行われることが想定される。つまり、D2D通信では、PUSCHなどの基地局100と端末200との通信と比較して、リソース割当の頻度が少ないことが想定される。これに対して、本実施の形態によれば、PUSCHの送信電力制御と比較して、1度のD2D grantによる電力低減量を、より大きくすることにより、適切な送信電力へより早く収束するような送信電力制御が可能となる。
【0080】
また、PUSCH用のTPCコマンド(2ビット)と同様、D2D通信用のTPCコマンドは、制限されたビット数にて通知できるような設計を要求されることが考えられる。これに対して、本実施の形態では、
図7A及び
図7Bに示すように、D2D通信用のTPCコマンドは、PUSCH用のTPCコマンド(2ビット)と同数のビット数を用いて設定され、かつ、同一候補値に対応する送信電力の補正値をPUSCH用のTPCコマンドよりも低く設定される。こうすることで、D2D通信においても、PUSCHの送信電力制御と同程度の送信電力制御の柔軟度を損なうことなく、制限されたビット数にて、より低く設定された電力低減量を通知できるような設計が可能となる。
【0081】
以上より、本実施の形態では、D2D通信において、基地局100向けのPUSCHの通信と同様の送信電力制御機構を適用しつつ、より小さな送信電力値の設定をより早く実現することができる。
【0082】
また、本実施の形態では、D2D通信用のTPCコマンドは、UL grantとは別のD2D grantによって通知される。このため、基地局100向けの送信信号に対する送信電力制御に影響を与えることなく、D2D通信の送信電力制御を行うことができる。
【0083】
よって、本実施の形態によれば、D2D通信を行う端末200において、基地局100向けの信号及びD2D通信向けの信号の双方に対する送信電力制御を適切に行うことができる。
【0084】
<実施の形態1の変形例A>
上記実施の形態では、
図7Bに示すように、PUSCH送信用のδ
PUSCHに対するオフセット値βを全てのTPCコマンドの候補値(0〜3)に適用する場合について説明した。しかし、TPCコマンドの複数の候補値のうち、少なくとも1つの候補値においてδ
D2Dをδ
PUSCHよりも低くなるように設定してもよい。そこで、本変形例では、D2D通信用のTPCコマンドの複数の候補値のうち一部の候補値のみにPUSCH送信用のδ
PUSCHに対するオフセット値を適用する。
【0085】
例えば、D2D通信では、電力低減の指示がより多く要求されるのに対し、大きく電力増加させる機会がほとんどないと考えられる。そこで、
図8に示すδ
D2Dでは、この点に着目して、
図7Aに示すδ
PUSCHのうち最大値に対応するTPCコマンド=3においてオフセットγが適用される。
図8に示すγは、D2D送信端末に対して別途通知された所定値(正の整数値)である。こうすることで、D2D通信では指示機会がほとんどないと想定されるδ
D2D=3を用いる代わりに、δ
D2D=3−γ(3未満の値)を用いることができるので、D2D通信に対する送信電力制御をより柔軟に実施することが可能となる。
【0086】
また、他の例として、
図9に示すδ
D2Dでは、
図7Aに示すδ
PUSCHのうち電力低減を指示するTPCコマンド=0(δ
PUSCH<0)においてオフセットγが適用されてもよい。また、
図9に示すδ
D2Dでは、
図7Aに示すδ
PUSCHのうち最大値に対応するTPCコマンド=0においてオフセットγが適用されているとも言える。こうすることで、D2D通信の送信電力制御において送信電力を低減させる際、1度のTPCコマンドの通知による電力低減量をより大きくすることができる。
【0087】
すなわち、変形例Aでは、TPCコマンドの各候補値においてδ
D2Dはδ
PUSCH以下に設定され、少なくとも1つの候補値では、δ
D2Dはδ
PUSCHよりも低く設定されている。
【0088】
なお、
図8及び
図9では、TPCコマンドの1つの候補値に対してのみオフセットγを適用する場合について説明したが、これに限定されず、2つ以上の一部の候補値に対してオフセットγを適用してもよい。例えば、2ビットで表される4個のTPCコマンドのうち、最大の電力増加量(最大の補正値)に対応するTPCコマンド、及び、最大の電力低減量(最小の補正値)に対応するTPCコマンドに対してオフセットγを適用してもよい。
【0089】
<実施の形態1の変形例B>
上記実施の形態では、累積型のクローズループ制御(式(3)及び式(4)を参照)を行う場合について説明した。これに対して、本変形例では、累積値を用いるのではなく、絶対値を指示するクローズループ制御を行う場合について説明する。
【0090】
具体的には、式(1)に示すPUSCH用のTPCコマンドの指示値f
PUSCH(i)(式(1)に示すf(i)に相当する)は、次式(5)に従って設定される。
【数5】
【0091】
例えば、
図10Aに示すように、TPCコマンドの候補値0,1,2,3(00,01,10,11)に対して、δ
PUSCH=−4,−1,1,4がそれぞれ設定されている。
【0092】
これに対して、式(2)に示すD2D通信用のTPCコマンドの指示値f
D2D(i)は、次式(6)に従って更新される。
【数6】
【0093】
例えば、
図10Bに示すように、TPCコマンドの候補値0,1,2,3(00,01,10,11)に対して、δ
PUSCH=−4−β,−1−β,1−β,4−βがそれぞれ設定されている。
図10Bに示すβは、D2D送信端末に対して別途通知された所定値(正の整数値)である。
【0094】
図10Aに示すδ
PUSCHと
図10Bに示すδ
D2Dとを比較すると、TPCコマンドの各候補値においてδ
D2Dはδ
PUSCHよりもβの分だけ低い値を採る。つまり、D2D通信の送信電力制御では、PUSCHの送信電力制御と比較して、送信電力値をより早く低減させることが可能となる。
【0095】
このようにして、送信電力の補正値を絶対値にて指示する送信電力制御を適用する場合でも、上記実施の形態と同様にして、D2D通信の送信電力制御において、基地局100向けのPUSCHの通信と同様の送信電力制御機構を適用しつつ、適切な送信電力へより早く収束するような送信電力制御が可能となる。
【0096】
なお、変形例Aと同様、D2D通信用のTPCコマンドの複数の候補値のうち一部の候補値のみにPUSCH送信用のδ
PUSCHに対するオフセット値を適用してもよい。例えば、
図11は、2ビットで表される4個のTPCコマンドのうち、最大の電力低減量に対応するTPCコマンド=0に対してオフセットγを適用した例を示し、
図12は、2ビットで表される4個のTPCコマンドのうち、最大の電力増加量に対応するTPCコマンド=3に対してオフセットγを適用した例を示す。
【0097】
また、
図13Aに示すランダムアクセスの手順において用いられる3ビットのTPCコマンドに対して、
図13Bに示すように、オフセットβを適用して、D2D通信の送信電力制御に用いるTPCコマンドとして置き換えてもよい。また、変形例Aと同様、
図14及び
図15に示すように、TPCコマンドのうち一部のTPCコマンドのみにδ
msg2に対するオフセットγを適用してもよい。
【0098】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る基地局及び端末の基本構成は、実施の形態1と同様であるので、
図4(基地局100)と
図5(端末200)を援用して説明する。
【0099】
本実施の形態では、D2D通信におけるTPCコマンドの指示内容をPUSCH送信におけるTPCコマンドの指示内容と異ならせる状況を限定する場合について説明する。換言すると、端末200は、D2D通信の送信電力制御において、状況に応じて、基地局100から通知されるTPCコマンドの解釈を変える。
【0100】
以下、D2D通信のTPCコマンドの指示内容を判断する基準となる状況として、ケース1〜ケース3について説明する。
【0101】
<ケース1>
実施の形態1において説明したように、式(2)に示すD2D通信の送信電力制御のパラメータとして、D2D送信端末と基地局100との間のパスロスPLが用いられる。
【0102】
よって、例えば、
図6に示すように、D2D送信端末及びD2D受信端末が基地局100から離れている場合(例えば、セルエッジ付近に位置する場合)、式(2)に示す送信電力制御において用いられるパスロスPLは、実際の端末間のパスロスPL'よりも大きい。この場合、式(2)により設定される送信電力は、実際のD2D通信に要する最適な送信電力よりも大きい送信電力が設定されやすくなる。
【0103】
一方、D2D送信端末及びD2D受信端末が基地局100付近に位置する場合、式(2)に示す送信電力制御において用いられるパスロスPLと、実際の端末間のパスロスPL'との差は小さくなる。このため、式(2)により設定される送信電力は、実際のD2D通信に要する最適な送信電力値に近似する値が設定されやすくなる。
【0104】
つまり、D2D通信端末200が基地局100から離れている場合には、D2D通信端末200が基地局100付近に位置する場合よりも、送信電力を低減させる送信電力制御の行われる機会が多くなる。
【0105】
そこで、ケース1では、基地局100及び端末200は、D2D通信端末と基地局100との距離と比較して、D2D通信を行う端末同士が近接している状況であるか否かを特定する。そして、基地局100及び端末200は、D2D通信を行う端末同士が近接している状況である場合、より大きな電力低減量の補正値が設定されたTPCコマンドの対応付けを用いて、送信電力制御を行う。
【0106】
例えば、基地局100及び端末200は、D2D grantに含まれるタイミング制御値(例えば、Timing Advance値(TA値))が所定値を上回るか否かによって、設定されるTPCコマンドに対応する送信電力の補正値の解釈を異ならせる。
【0107】
D2D grantに含まれるタイミング制御値は、D2D送信端末の送信タイミング(D2D受信端末の受信タイミング)を調整するための値である。例えば、D2D通信端末200と基地局100との距離が離れているほど、タイミング制御値はより大きい値に設定される。また、タイミング制御値が大きいほど、D2D送信端末は、より早いタイミングにおいてD2D受信端末宛ての信号を送信する。これにより、D2D受信端末での受信タイミングを基準となるタイミングに揃える(調整する)ことができる。
【0108】
具体的には、まず、基地局100(品質報告受信部110)は、D2D通信対象端末200(D2D送信端末及びD2D受信端末)から品質報告を受け取る。次いで、基地局100(設定部101)は、品質報告に含まれるD2D受信端末のタイミング制御の情報を用いて、D2D grantに含めて指示するタイミング制御値を設定する。
【0109】
基地局100(設定部101)は、設定したタイミング制御値に応じて、D2D通信用のTPCコマンドの指示内容を設定する。具体的には、基地局100は、タイミング制御値が所定値を上回る場合には、より大きい電力低減量の補正値が設定されたTPCコマンド(例えば、
図7B)を用い、タイミング制御値が所定値以下の場合には、PUSCH送信と同様の補正値が設定されたTPCコマンドを用いて、D2D通信用のTPCコマンドを設定する。そして、基地局100は、決定したTPCコマンドをD2D送信端末へ通知する。
【0110】
同様に、D2D送信端末200は、検出したD2D grantによって通知されたタイミング制御値が所定値を上回る場合には、より大きい電力低減量の補正値が設定されたTPCコマンドの対応付け(例えば、
図7B)を用い、タイミング制御値が所定値以下の場合には、PUSCH送信と同様の補正値が設定されたTPCコマンドの対応付け(例えば、
図7A)を用いて、通知されたTPCコマンドの指示ビットに対応するTPCコマンドを特定する。そして、端末200は、特定したTPCコマンドを用いて制御した送信電力によってSA信号及びD2Dデータを送信する。
【0111】
なお、判断基準となる所定値は、例えば、制御信号により基地局100から端末200に別途通知される。
【0112】
このように、タイミング制御値が所定値を上回る場合、つまり、D2D通信端末が基地局100から離れている場合、PUSCH用のTPCコマンドの対応付けよりも電力低減量が大きい対応付けが用いられる。
【0113】
<ケース2>
ケース2では、基地局100及び端末200は、D2D grantに含まれるリソース割当情報の値に応じてTPCコマンドの指示内容の解釈を変える。
【0114】
ここで、リソース割当情報の1つとして周波数ホッピングの適用の有無を示す情報がある。例えば、周波数ホッピング無しが設定されるD2D通信環境は、ロバスト性の低い信号送信の適用が可能な環境であるとみなすことができる。換言すると、このようなD2D通信環境では、周波数ホッピングが不要と判断されていると言える。よって、例えば、周波数ホッピング無しが設定されている状況とは、D2D送信端末とD2D受信端末とが近接している状況であり、低い送信電力での通信が可能な状況であると言える。
【0115】
そこで、ケース2では、基地局100及び端末200は、周波数ホッピングの有無に応じて、D2D送信端末とD2D受信端末とが近接している状況か否かを特定し、D2D通信における送信電力値をより早く低減させるべきか否かを判断する。
【0116】
具体的には、基地局100は、D2D grantに含まれる周波数ホッピングの適用の有無を示す情報が周波数ホッピング無しを示す場合には、より大きい電力低減量の補正値が設定されたTPCコマンド(例えば、
図7B)を用い、周波数ホッピング有りを示す場合には、PUSCH送信と同様の補正値が設定されたTPCコマンド(例えば、
図7A)を用いて、D2D通信用のTPCコマンドを設定する。そして、基地局100は、決定したTPCコマンドをD2D送信端末へ通知する。
【0117】
同様に、D2D送信端末200は、検出したD2D grantによって通知された周波数ホッピングの適用の有無を示す情報が周波数ホッピング無しを示す場合には、より大きい電力低減量の補正値が設定されたTPCコマンドの対応付け(例えば、
図7B)を用い、周波数ホッピング有りを示す場合には、PUSCH送信と同様の補正値が設定されたTPCコマンドの対応付け(例えば、
図7A)を用いて、通知されたTPCコマンドの指示ビットに対応するTPCコマンドを特定する。そして、端末200は、特定したTPCコマンドを用いて制御した送信電力によってSA信号及びD2Dデータを送信する。
【0118】
このように、周波数ホッピングの適用が無い場合、つまり、D2D通信端末同士が近接している場合、PUSCH用のTPCコマンドの対応付けよりも電力低減量が大きい対応付けが用いられる。
【0119】
なお、周波数ホッピングの有無の代わりに、信号の繰り返し送信数(Repetition Factor)を指示する情報において、繰り返し送信が無い場合、又は、繰り返し送信数が所定値以下の場合に、より大きい電力低減量の補正値が設定されたTPCコマンドの対応付け(例えば、
図7B)を用いることが決定され、繰り返し送信が有る場合、又は、繰り返し送信数が所定値を上回る場合に、PUSCH送信と同様の補正値が設定されたTPCコマンドの対応付け(例えば、
図7A)を用いることが決定されてもよい。
【0120】
繰り返し送信数がより少ないほど、D2D通信環境は、ロバスト性の低い信号送信の適用が可能な環境であるとみなすことができる。つまり、繰り返し送信数が少ない状況では、周波数ホッピング無しが設定されている状況と同様、D2D送信端末とD2D受信端末とが近接している状況であり、低い送信電力での通信が可能な状況であると言える。
【0121】
<ケース3>
ケース3では、基地局100及び端末200は、D2D grantに含まれるMCSの値に応じてTPCコマンドの指示内容の解釈を変える。
【0122】
MCSの値が高いほど、より高い周波数利用効率が得られる符号化率と変調方式との組み合わせに対応する。例えば、通信品質が良好な環境ほど、より高い周波数利用効率に対応するMCSが選択される。また、D2D送信端末とD2D受信端末との距離が近いほど、通信品質が良好になるので、より高い値のMCSが設定される。つまり、高い値のMCSが設定されている状況とは、D2D送信端末とD2D受信端末とが近接している状況であり、低い送信電力での通信が可能な状況であると言える。
【0123】
そこで、ケース3では、基地局100及び端末200は、MCSの値に応じて、D2D送信端末とD2D受信端末とが近接している状況か否かを特定し、D2D通信における送信電力値をより早く低減させるべきか否かを判断する。
【0124】
具体的には、基地局100は、D2D grantに含まれるMCSの値が所定値を上回る場合には、より大きい電力低減量の補正値が設定されたTPCコマンド(例えば、
図7B)を用い、MCSの値が所定値以下の場合には、PUSCH送信と同様の補正値が設定されたTPCコマンド(例えば、
図7A)を用いて、D2D通信用のTPCコマンドを設定する。そして、基地局100は、決定したTPCコマンドをD2D送信端末へ通知する。
【0125】
同様に、D2D送信端末200は、検出したD2D grantによって通知されたMCSの値が所定値を上回る場合には、より大きい電力低減量の補正値が設定されたTPCコマンドの対応付け(例えば、
図7B)を用い、MCSの値が所定値以下の場合には、PUSCH送信と同様の補正値が設定されたTPCコマンドの対応付け(例えば、
図7A)を用いて、通知されたTPCコマンドの指示ビットに対応するTPCコマンドを特定する。そして、端末200は、特定したTPCコマンドを用いて制御した送信電力によってSA信号及びD2Dデータを送信する。
【0126】
なお、判断基準となる所定値は、例えば、制御信号により基地局100から端末200に別途通知される。
【0127】
このように、MCSの値が所定値を上回る場合、つまり、D2D通信端末同士が近接している場合、PUSCH用のTPCコマンドの対応付けよりも電力低減量が大きい対応付けが用いられる。
【0128】
以上、ケース1〜ケース3について説明した。なお、ケース1〜ケース3において使用されるTPCコマンドの対応付けは、
図7A、
図7Bに限定されず、
図8〜
図15の何れかを用いてもよい。
【0129】
以上のように、補正値δ
PUSCHは、基地局100向けの上りデータ信号又はD2D通信の信号に対する送信電力制御に用いられる。また、補正値δ
D2Dは、D2D通信の信号に対する送信電力制御に用いられる。つまり、基地局100は、補正値δ
PUSCH又は補正値δ
D2Dに対応する複数の候補値の中から、端末200からの品質報告に基づいてTPCコマンドを選択する。この際、基地局100は、端末200の状況に応じて、補正値δ
PUSCH及び補正値δ
D2Dの何れを用いるかを判断する。
【0130】
一方、端末200は、基地局100との通信時には、受信されたTPCコマンドに対応する補正値δ
PUSCHを用いて、基地局向けの上りデータ信号に対する送信電力を制御する。また、端末200は、D2D通信時には、受信されたTPCコマンドに対応する補正値δ
PUSCH又は補正値δ
D2Dを用いてD2D通信の信号に対する送信電力を制御する。この際、端末200は、端末200の状況に応じて、補正値δ
PUSCH及び補正値δ
D2Dの何れを用いるかを判断する。
【0131】
より具体的には、基地局100及び端末200は、D2D通信端末同士が近接している場合のみ、電力低減量のより大きいTPCコマンドの対応付けを用いて、適切な送信電力へより早く収束するような送信電力制御を行う。
【0132】
こうすることで、D2D通信端末同士が近接している場合には、1度のD2D grantによる電力低減量をより大きくすることにより、適切な送信電力(低い送信電力)へより早く収束するような送信電力制御が可能となる。一方、D2D通信端末同士が近接していない場合(つまり、送信電力の急速な低減が必要ない場合)には、PUSCHと同等の送信電力の補正値を用いることにより、適切な送信電力制御が可能となる。
【0133】
以上、本開示に係る各実施の形態について説明した。
【0134】
[他の実施の形態]
なお、上記各実施の形態では、D2D通信用のTPCコマンド及びPUSCH用のTPCコマンドが、D2D grant及びUL grantによってそれぞれ個別に通知され、各TPCコマンドに応じて送信電力の補正値(δ
D2D、δ
PUSCH)が個別に指示される場合(例えば、
図7A及び
図7Bを参照)について説明した。しかし、D2D通信用のTPCコマンド及びPUSCH用のTPCコマンドは、例えば、1つの共通する指示ビットを用いて通知され、D2D送信端末において、PUSCH送信及びD2D通信の何れに適用するかに応じて、当該指示ビットに対応付けられる送信電力の補正値の解釈を変えてもよい。
【0135】
また、上記各実施の形態では、式(1)、式(2)において、D2D通信用の送信電力の初期値Po_
D2D、及び、重み係数α
D2Dが、PUSCHの送信電力の初期値Po_
PUSCH、及び、重み係数αと同値を採る場合について説明した。しかし、D2D通信用の送信電力の初期値Po_
D2D、及び、重み係数α
D2Dは、PUSCHの送信電力とは別の値を採ってもよい。
【0136】
上記各実施の形態では、本開示の一態様をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0137】
また、上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0138】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。
【0139】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0140】
本開示における端末は、複数の候補値の中から選択されたTPCコマンドを含む制御信号を受信する受信処理部と、前記受信されたTPCコマンドに対応する第1の補正値を用いて、基地局向けの上りデータ信号に対する第1の送信電力を制御し、前記受信されたTPCコマンドに対応する前記第1の補正値又は第2の補正値を用いて端末間直接通信の信号に対する第2の送信電力を制御する送信制御部と、を具備し、前記TPCコマンドの候補値毎に、前記第1の補正値及び前記第2の補正値が設定され、少なくとも1つの候補値では、前記第2の補正値は前記第1の補正値よりも低く設定されている。
【0141】
本開示の端末において、前記各第2の補正値は、対応する前記第1の補正値よりもオフセット値の分だけ低い。
【0142】
本開示の端末において、前記オフセット値は、上位レイヤシグナリングによって前記端末へ通知される。
【0143】
本開示の端末において、前記制御信号には、さらに、前記基地局と前記端末との距離が離れるほどより大きな値が設定されるタイミング制御値が含まれ、前記送信制御部は、前記タイミング制御値が所定値を上回る場合、前記第2の補正値を用いて前記第2の送信電力を制御し、前記タイミング制御値が前記所定値以下の場合、前記第1の補正値を用いて前記第2の送信電力を制御する。
【0144】
本開示の端末において、前記制御信号には、さらに、前記端末間直接通信における周波数ホッピングの適用の有無を示す情報が含まれ、前記送信制御部は、周波数ホッピングの適用が有る場合、前記第2の補正値を用いて前記第2の送信電力を制御し、周波数ホッピングの適用が無い場合、前記第1の補正値を用いて前記第2の送信電力を制御する。
【0145】
本開示の端末において、前記制御信号には、さらに、前記端末間直接通信におけるMCSの値が含まれ、前記送信制御部は、前記MCSの値が所定値を上回る場合、前記第2の補正値を用いて前記第2の送信電力を制御し、前記MCSの値が前記所定値以下の場合、前記第1の補正値を用いて前記第2の送信電力を制御する。
【0146】
本開示に係る基地局は、基地局向けの上りデータ信号又は端末間直接通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第1の補正値、又は、前記端末間直接通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第2の補正値に対応する複数の候補値の中から、TPCコマンドを選択する設定部と、前記TPCコマンドを含む制御信号を送信する送信処理部と、を具備し、前記TPCコマンドの候補値毎に、前記第1の補正値及び前記第2の補正値が設定され、少なくとも1つの候補値では、前記第2の補正値は前記第1の補正値よりも低く設定されている。
【0147】
本開示に係る送信電力制御方法は、複数の候補値の中から選択されたTPCコマンドを含む制御信号を受信する受信工程と、前記受信されたTPCコマンドに対応する第1の補正値を用いて、基地局向けの上りデータ信号に対する第1の送信電力を制御し、前記受信されたTPCコマンドに対応する前記第1の補正値又は第2の補正値を用いて端末間直接通信の信号に対する第2の送信電力を制御する送信制御工程と、を具備し、前記TPCコマンドの候補値毎に、前記第1の補正値及び前記第2の補正値が設定され、少なくとも1つの候補値では、前記第2の補正値は前記第1の補正値よりも低く設定されている。
【0148】
本開示に係る送信電力設定方法は、基地局向けの上りデータ信号又は端末間直接通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第1の補正値、又は、前記端末間直接通信の信号に対する送信電力制御に用いられる送信電力の第2の補正値に対応する複数の候補値の中から、TPCコマンドを選択する設定工程と、前記TPCコマンドを含む制御信号を送信する送信工程と、を具備し、前記TPCコマンドの候補値毎に、前記第1の補正値及び前記第2の補正値が設定され、少なくとも1つの候補値では、前記第2の補正値は前記第1の補正値よりも低く設定されている。