【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の少なくとも一つの実施形態にかかる過給機は、
回転軸と、
前記回転軸の一端側に設けられるコンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラを収容するためのコンプレッサハウジングと、
前記コンプレッサハウジングと軸受ハウジングの一方側端部において連結される軸受ハウジングであって、前記回転軸の軸直交方向に沿って延伸し、前記コンプレッサインペラによって圧縮された吸気が流れるディフューザ流路を前記コンプレッサハウジングとの間で画定するように構成されるとともに、前記軸受ハウジングの内周壁面から突出する突出壁部を内部に有する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングに収容され、前記回転軸を軸方向に支持するためのスラストプレートと、
前記回転軸の軸方向において、前記スラストプレートよりも前記軸受ハウジングの一方側端部に近い位置において前記軸受ハウジングに収容されるインサート部材であって、前記突出壁部との間で前記スラストプレートを保持するように構成されたインサート部材と、
前記軸受ハウジングに収容されるスナップリングであって、前記軸受ハウジングの内周壁面に形成される第1周方向溝に挿入されることで、前記インサート部材を前記スラストプレートに押し付けた状態で固定するように構成されたスナップリングと、
前記軸受ハウジングに収容されるディフューザ部材であって、前記軸受ハウジングの一方側端部における内周壁面と前記コンプレッサインペラの外周縁との間を前記回転軸の軸直交方向に沿って延在する、前記ディフューザ流路の一部を画定するディフューザ面を有するディフューザ部材と、を備える。
【0012】
上記(1)に記載の過給機は、軸受ハウジングに収容されるディフューザ部材を備えている。ディフューザ部材は、軸受ハウジングの一方側端部における内周壁面とコンプレッサインペラの外周縁との間を回転軸の軸直交方向に沿って延在し、ディフューザ流路の一部を画定するディフューザ面を有している。よって、このディフューザ部材のディフューザ面によって、コンプレッサインペラの外周縁と軸受ハウジングの一方側端部における内周壁面との間の隙間を埋めることで、ディフューザ流路を流れる吸気の隙間への流入を防止し、過給機の圧縮効率を高めることが出来る。
【0013】
したがって、例えば、コンプレッサインペラを小型化するに際し、従来の過給機と軸受ハウジング及び軸受ハウジングに収容される各種部品の共通化を図ることも可能となる。
【0014】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の記載の過給機において、上記インサート部材は、回転軸の軸直交方向に沿って延在する内周側壁部を有する内周部と、内周側壁部よりも軸受ハウジングの一方側端部から遠い位置において回転軸の軸直交方向に沿って延在する外周側壁部、及び外周側壁部からスラストプレートに向かって突出する突出部、を有する外周部とを含んでいる。そして、スナップリングは、インサート部材の前記内周部よりも外周側に位置し、第1周方向溝に挿入された状態でインサート部材の外周側壁部と当接するように構成される。また、ディフューザ部材は、インサート部材の内周部よりも外周側に位置するように構成される。
【0015】
上記(2)に記載の実施形態によれば、インサート部材は、その外周部の外周側壁部が、内周部の内周側壁部よりも軸受ハウジングの一方側端部から遠い位置になるように構成されている。このため、内周部の外周側には、軸受ハウジングの内周壁面との間にスペースが形成されることとなる。したがって、このスペースにスナップリング及びディフューザ部材を配置することで、インサート部材、スナップリング、及びディフューザ部材を軸受ハウジングの内部にコンパクトに配置することが出来る。
【0016】
また、スナップリングが、第1周方向溝に挿入された状態でインサート部材の外周側壁部と当接するように構成されている。このため、スナップリングからインサート部材に伝達される押付力を、外周側壁部から突出している突出部を介してスラストプレートに効率的に伝達させることが出来るようになっている。
【0017】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の過給機において、上記ディフューザ部材は、ディフューザ面を有する板状のディフューザ部と、ディフューザ部の外周端部から回転軸の軸方向に沿って延在する板状の外周側板部とを含んでいる。そして、外周側板部は、軸受ハウジングの内周壁面と回転軸の軸方向に沿って当接するように構成される。
【0018】
上記(3)に記載の実施形態によれば、ディフューザ部材の外周側板部が、軸受ハウジングの内周壁面と回転軸の軸方向に沿って当接するように構成されている。このため、軸受ハウジングの内部において、ディフューザ部材の回転軸の軸直交方向における位置決め精度を高めることが出来る。
【0019】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の過給機において、上記インサート部材は、内周部の外周端面から外周側に向かって突出する凸部を有する。ディフューザ部材は、ディフューザ部の内周端部からインサート部材の内周部に向かって延在する板状の内周側板部を含んでいる。そして、インサート部材およびディフューザ部材が軸受ハウジングの内部に収容された状態において、内周側板部の内周端は、回転軸の軸方向において、凸部よりも軸受ハウジングの一方側端部から遠くに位置し、且つ、回転軸の軸直交方向において、凸部の外周端よりも回転軸の近くに位置するように構成される。
【0020】
上記(4)に記載の実施形態によれば、ディフューザ部材が軸受ハウジングの一方側端部の開口から抜け出ようとした際に、ディフューザ部材の内周側板部が、インサート部材の凸部に引っ掛かる。これにより、ディフューザ部材の抜け出しを防止できる構造となっている。
【0021】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)に記載の過給機において、上記ディフューザ部材の外径は、軸受ハウジングの一方側端部における内径よりも大きく形成されている。そして、ディフューザ部材は、軸受ハウジングの内部に圧入されることで、軸受ハウジングの内部に固定されるように構成されている。
【0022】
上記(5)に記載の実施形態によれば、軸受ハウジングの内部にディフューザ部材を圧入するだけの簡単な構造によって、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部に固定することが出来る。
【0023】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)から(5)の何れかに記載の過給機において、上記ディフューザ部材の内径は、インサート部材の内周部の外周端面における外径よりも小さく形成されている。そして、ディフューザ部材は、インサート部材の内周部の外周端面と嵌合することで、軸受ハウジングの内部に固定されるように構成されている。
【0024】
上記(6)に記載の実施形態によれば、インサート部材の内周部の外周端面にディフューザ部材を嵌合するだけの簡単な構造によって、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部に固定することが出来る。
【0025】
(7)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)に記載の過給機において、上記軸受ハウジングの内周壁面には、回転軸の軸方向において第1周方向溝よりも軸受ハウジングの一方側端部に近い位置に第2周方向溝が形成されている。ディフューザ部材は、外周側板部から外周側に向かって延在する板状の挿入板部を含んでいる。そして、挿入板部は、第2周方向溝に挿入されるように構成される。
【0026】
上記(7)に記載の実施形態によれば、ディフューザ部材の挿入板部を第2周方向溝に挿入するだけの簡単な構造によって、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部に固定することが出来る。また、このような実施形態によれば、ディフューザ部材の外周側における寸法公差を緩く設定することが出来る。
【0027】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載の過給機において、上記第2周方向溝は、軸受ハウジングの内周壁面の全周に亘って形成されている。そして、挿入板部は、軸受ハウジングの内周壁面の全周に亘って第2周方向溝に挿入されるように構成される。
【0028】
上記(8)に記載の実施形態によれば、軸受ハウジングの内周壁面の全周に亘ってディフューザ部材の挿入板部を第2周方向溝に挿入するため、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部に確実に固定することが出来る。
【0029】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載の過給機において、上記第1周方向溝は、軸受ハウジングの内周壁面の全周に亘って形成されている。スナップリングは、円弧状の両端部が互いに離間してなる離間部を有している。ディフューザ部材の外周側板部は、第1外周側板部と、第1外周側板部と周方向の異なる位置に形成される第2外周側板部であって、第1外周側板部よりも延在距離が短い第2外周側板部とを含んでいる。ディフューザ部材の挿入板部は、第1外周側板部から外周側に向かって延在する第1挿入板部と、第2外周側板部から外周側に向かって延在する第2挿入板部とを含んでいる。そして、第2挿入板部は、第2周方向溝に挿入されるとともに、第1挿入板部は、第1周方向溝に挿入されているスナップリングの離間部において、第1周方向溝に挿入されるように構成される。
【0030】
上記(9)に記載の実施形態によれば、スナップリングは、円弧状の両端部が互いに離間してなる離間部を有している。そして、第1挿入板部は、第1周方向溝に挿入されているスナップリングの離間部において、第1周方向溝に挿入されるように構成されている。このように、スナップリングを挿入するために形成されている第1周方向溝を有効利用することで、軸受ハウジングに対する加工箇所を最小限に留めることが出来る。また、第1挿入板部を第1周方向溝に挿入することに加えて、第2挿入板部を第2周方向溝に挿入することで、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部に確実に固定することが出来る。
【0031】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の過給機において、上記ディフューザ部材を前記回転軸の軸方向から視た場合に、第2挿入板部は、第1挿入板部に対して周方向において対向する位置に形成される。
【0032】
上記(10)に記載の実施形態によれば、第1挿入板部と第2挿入板部とが周方向において対向する位置に形成される。これにより、ディフューザ部材を周方向に対向する2箇所で支持することが出来るため、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部により確実に固定することが出来る。
【0033】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)に記載の過給機において、上記ディフューザ部材は、ディフューザ部の内周端部から回転軸の軸方向に沿ってインサート部材に向かって延在する板状の筒状板部を含んでいる。インサート部材は、内周部の外周端面から外周側に向かって突出する凸部を有するとともに、凸部は、周方向に少なくとも一つ、又は間隔を置いて複数形成されている。そして、筒状板部の内周面には、筒状板部がインサート部材の内周部の外周端面に嵌合される際に、凸部が挿入される凹部又はスリットが回転軸の軸方向に沿って形成されている。
【0034】
上記(11)に記載の実施形態によれば、上述した第1挿入板部を第1周方向溝に挿入すること、及び第2挿入板部を第2周方向溝に挿入することに加えて、ディフューザ部材の筒状板部をインサート部材の内周部の外周端面に嵌合する。このため、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部により確実に固定することが出来るようになっている。
【0035】
また、筒状板部の内周面には、筒状板部がインサート部材の内周部の外周端面に嵌合される際に、凸部が挿入される凹部又はスリットが回転軸の軸方向に沿って形成されている。このため、凸部が凹部又はスリットに挿入されるように、ディフューザ部材を回転軸の軸方向に沿って軸受ハウジングの内部に挿入することで、ディフューザ部材の周方向における位置決めを容易に行うことが出来る。
【0036】
(12)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載の過給機において、上記ディフューザ部材は、ディフューザ部の内周端部から回転軸の軸方向に沿ってインサート部材に向かって延在する板状の水平板部を含んでいる。水平板部の先端部には、水平板部の他の部分よりも膨らんだ膨出部が形成されている。そして、インサート部材の外周側壁部には、水平板部の先端部が嵌合可能に構成された嵌合溝が形成されている。
【0037】
上記(12)に記載の実施形態によれば、ディフューザ部材の水平板部の先端部を、インサート部材の嵌合溝に嵌合するたけの簡単な構造によって、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部に固定することが出来る。
【0038】
(13)幾つかの実施形態では、上記(3)から(12)の何れかに記載の過給機において、上記ディフューザ部材は、板金が折り曲げ加工されてなるプレート状部材から構成される。
【0039】
上記(13)に記載の実施形態によれば、板金を折り曲げ加工するだけの簡単な方法によって、ディフューザ部材を形成することが出来る。しかも、板金は、鋳物などと比べて面粗度が高い。よって、このような実施形態によれば、ディフューザ流路を画定するディフューザ部が板金から形成されるため、ディフューザ流路における圧力損失を低減することが可能である。
【0040】
(14)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の過給機において、ディフューザ部材のディフューザ部には、ネジ部材が螺合可能なネジ穴が形成されている。インサート部材の外周側壁部には、ネジ部材が螺合可能なネジ穴が形成されている。そして、ディフューザ部材のディフューザ面から、ディフューザ部材のネジ穴、及びインサート部材のネジ穴にネジ部材を螺合することで、ディフューザ部材がインサート部材に締結されるように構成されている。
【0041】
上記(14)に記載の実施形態によれば、ディフューザ部材をネジ部材によってインサート部材に螺合するだけの簡単な構造によって、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部に固定することが出来る。
【0042】
(15)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の過給機において、上記軸受ハウジングの内周壁面には、軸受ハウジングの一方側端部から回転軸の軸方向に沿って所定長さのネジ溝が形成されている。そして、ディフューザ部材は円環状に形成され、そのディフューザ部材の外周面には、ネジ溝と螺合可能なネジ山が形成されている。
【0043】
上記(15)に記載の実施形態によれば、ディフューザ部材の外周面と軸受ハウジングの内周壁面とを螺合するだけの簡単な構造によって、ディフューザ部材を軸受ハウジングの内部に固定することが出来る。
【0044】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、コンプレッサインペラの外周縁と軸受ハウジングの内周壁面との間に形成される隙間を簡単な構造によって埋めることで、圧縮効率を高めることのできる過給機を提供することが出来る。したがって、例えば、コンプレッサインペラを小型化するに際し、従来の過給機と軸受ハウジング及び軸受ハウジングに収容される各種部品の共通化を図ることも可能となる。