(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
豆腐製造の副産物であるオカラ(おから)は、我が国で年間100万トンも生成されている。このオカラは、高い栄養価を有しているにも拘わらず、水分が多いため、腐敗し易い上に、食品としての応用範囲が狭いため、その大半が廃棄されているのが現状である。特に、食物繊維が多く、ザラついた食感であるため、食品としての利用が普及していないのが大きな原因である。このようなオカラの利用は、食料自給率の低い我が国では重要な課題である。また、近年の健康志向の高まりの点からも、植物性成分で形成されているオカラを利用する重要性は大きい。
【0003】
特開2004−41168号公報(特許文献1)には、オカラの品質改良方法として、生オカラに還元糖を加えて加熱処理する方法、及び乾燥オカラに還元糖及び水を加えて加熱処理する方法が開示されている。この文献の実施例では、オカラとブドウ糖果糖液糖とを混合した後に加熱処理し、ジューサーミキサーで粉砕し、さらに家庭用粉篩を通過させて、オカラと還元糖との混合粒子を調製している。さらに、得られた混合粒子を用いて、クッキー、食パンを製造している。
【0004】
しかし、この方法でも、還元糖により食感や風味の改善は見られるものの、十分ではなかった。また、ジューサーミキサーによる粉砕では繊維質が十分微細化されないため、用途が限定され、滑らかな食感の用途には適さない。
【0005】
特開2006−61033号公報(特許文献2)には、加温条件下でオカラを粉砕する粉砕工程を有し、この工程で得られるオカラ粉砕物を原料として用いるオカラ含有食品の製造方法が開示されている。この文献には、オカラ粉砕物の粒径は50〜500μmであり、最も好ましくは100〜200μmであると記載されている。このオカラ含有食品に配合する成分としては、ラードなどの油脂、山芋粉などのムチン類が記載され、実施例では、コロッケが製造されている。
【0006】
しかし、この方法では、コクや風味を向上させるために、動物性の油脂が必要であり、食感も十分ではなかった。このように、コロッケなどの調理加工材料では、動物性の油脂が使用されているのが現状であるが、製菓材料、特に洋菓子の材料においても、コクや風味を出すためには、乳成分などの動物性成分が配合されている。
【0007】
特開2004−313193号公報(特許文献3)には、豆腐製造工程で排出されたオカラに対して水を20〜150重量部加えた状態で粉砕処理し、平均粒子径が200μm以下に形成された食品材料用微粒子状生オカラが開示されている。この文献では、この微粒子状生オカラを用いて、パン、麺、ソーセージが製造されている。
【0008】
しかし、この微粒子状生オカラでは、大豆由来の青臭さを抑制できない。また、パンの製造では、動物性成分である脱脂粉乳が配合されている。
【0009】
特開平7−71014号公報(特許文献4)には、切断されたオカラ繊維と、オカラ繊維から放出された水可溶性多糖類とを含む高粘性液体からなるオカラ加工品が開示されている。この文献の実施例では、平均繊維長230μmの切断繊維を含むオカラ加工品に、乾燥マッシュポテト、白生餡(あん)生地及び転化糖液を加えて煮つめた後、練り上げて白餡を製造している。
【0010】
しかし、このオカラ加工品でも、大豆由来の青臭さを抑制できない上に、コクや風味も向上できない。
【0011】
特許第3414274号公報(特許文献5)には、生餡、晒し餡等に糖類を加えて練り餡を製造する方法において、生餡、晒し餡の一部又は全部に替えて、微細化オカラを用いる餡類の製造方法であって、前記微細化オカラが、膨潤大豆を回転刃型剪断力を作用させて平均粒子径20〜100μmに微細化した後、摩擦剪断力を作用させて平均粒子径15〜40μmに微細化し、豆乳と分離して得られ、細胞壁への損傷が少ない微細化オカラである餡類の製造方法が開示されている。
【0012】
しかし、この微細化オカラを含む餡類もコクや風味が十分ではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[オカラ含有組成物]
本発明のオカラ含有組成物は、平均粒径400μm以下の微細オカラ及び豆乳を含むことにより、優れた食感及び風味を実現できる。
【0022】
(微細オカラ)
微細オカラは、繊維が絡合して形成された塊状であって、400μm以下の平均粒径を有しており、このような細かい粒径の微細オカラを豆乳と組み合わせることにより、オカラ独特のザラつきやパサついた食感を抑制できるだけでなく、乳成分などの動物性成分を含まずに、コク及び風味も向上できる。
【0023】
微細オカラの平均粒径は400μm以下であればよいが、好ましくは50〜380μm(例えば100〜350μm)、さらに好ましくは150〜300μm(特に200〜250μm)程度であればよい。平均粒径が大きすぎると、オカラ含有組成物の食感が低下する。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲において、微細オカラの平均粒径は、例えば、市販のUSB接続式デジタルマイクロスコープを用いて、撮影した画像に映った油滴の中から任意に選択した20個の平均値として求めることができ、詳しくは、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0025】
微細オカラを構成するオカラの種類としては、原料であるオカラを粉砕して形成された粒子状であれば特に限定されず、例えば、国産大豆、北米(アメリカ、カナダ)産大豆、中国産大豆、ブラジル産大豆由来のオカラなどが挙げられる。これらのうち、風味やコクに優れ、製菓材料に特に適する点から、国産大豆由来のオカラが好ましい。
【0026】
微細オカラを形成するための原料である原料オカラ(生オカラ)中の水分含量は70〜90重量%(特に75〜85重量%)程度である。原料オカラ中のタンパク質含量は1〜10重量%(特に3〜8重量%)程度である。原料オカラ中の脂質含量は1〜10重量%(特に2〜5重量%)程度である。原料オカラ中の糖質(炭水化物)含量は3〜15重量%(特に5〜12重量%)程度である。原料オカラ中の灰分含量は0.1〜5重量%(特に0.3〜1重量%)程度である。原料オカラ中の食物繊維含量は3〜15重量%(特に5〜12重量%)程度である。
【0027】
(豆乳)
豆乳としては、特に限定されず、JAS(日本農林規格)で分類されている慣用の豆乳などを利用できる。慣用の豆乳としては、国産大豆、北米(アメリカ、カナダ)産大豆、中国産大豆、ブラジル産大豆由来の豆乳などが挙げられる。これらのうち、風味やコクに優れ、製菓材料に特に適する点から、国産大豆由来の豆乳が好ましい。
【0028】
豆乳中の大豆固形分の割合は、特に限定されない。豆乳は、大豆固形分15重量%以上(例えば15〜20重量%)の濃縮豆乳であってもよく、15重量%未満の汎用の豆乳であってもよい。オカラ含有組成物の粘性やコクが重要な用途では、濃縮豆乳であってもよいが、風味やコクなどのバランスに優れる点から、汎用の豆乳が好ましい。
【0029】
汎用の豆乳中の大豆固形分の割合は15重量%未満であってもよく、例えば8〜14.8重量%、好ましくは10〜14.5重量%、さらに好ましくは12〜14.2重量%(特に13〜14重量%)程度である。大豆固形分の割合が少なすぎると、オカラ含有組成物のコク及び風味が低下する虞がある。また、大豆固形分の割合が多すぎても、青臭さにより風味が低下する虞がある。
【0030】
豆乳中の糖類の割合は0.5重量%以上(例えば1重量%以上)であってもよいが、オカラ含有組成物のコク及び風味を向上できる点から、1.5重量%以上が好ましく、例えば1.5〜5重量%、好ましくは1.6〜4重量%、さらに好ましくは1.8〜3重量%(特に2〜2.5重量%)程度である。
【0031】
豆乳に含まれる固形分(大豆固形分)の割合は、微細オカラに含まれる固形分(大豆固形分)100重量部に対して、例えば1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部(特に30〜50重量部)程度である。豆乳に含まれる固形分の割合が少なすぎると、オカラ含有組成物の風味やコクが低下する虞があり、多すぎると、青臭さにより風味が低下する虞がある。
【0032】
(糖類)
本発明のオカラ含有組成物は、用途に応じて、甘みを付与するために、微細オカラ及び豆乳に含まれる糖類(大豆由来の糖類又は第1の糖類)に加えて、糖類(第2の糖類)を含んでいてもよい。
【0033】
糖類には、単糖、オリゴ糖、糖アルコール、多糖類などが含まれる。単糖としては、例えば、アラビノース、キシロースなどのペントース;ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトース、マンノース、ソルボースなどのヘキソース、プシコースに代表される希少糖、蜂蜜などが挙げられる。オリゴ糖としては、例えば、ショ糖(例えば、白糖や精製白糖、粉糖、グラニュー糖、きび糖、黒糖、三温糖など)、乳糖(ラクトース)、異性化乳糖(ラクチュロース)、麦芽糖(マルトース)、イソマルトース、イソマルトオリゴ糖、トレハロースなどが挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、還元麦芽糖水飴(マルチトール)、還元澱粉糖化物、還元パラチノース、還元乳糖(ラクチトール)などが挙げられる。多糖類としては、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、小麦デンプン、米デンプン、タピオカデンプン、緑豆デンプン、サゴデンプン、エンドウ豆デンプンなどの水可溶性デンプン;エステル化デンプン、エーテル化デンプン、架橋デンプン、酸化デンプンなどの加工デンプン;デキストリン、シクロデキストリン、難消化性デキストリンなどのデンプン分解物などが挙げられる。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
これらの糖類のうち、大豆由来の青臭さを低減できる点から、還元澱粉糖化物などの糖アルコールを含む糖類が好ましい。
【0035】
糖アルコールを含む糖類は、糖アルコール単独であってもよく、糖アルコールと他の糖類との混合物であってもよい。他の糖類としては、単糖及び/又はオリゴ糖が好ましく、ショ糖などのオリゴ糖が特に好ましい。糖アルコールと他の糖類(特に単糖及び/又はオリゴ糖)とを組み合わせることにより、大豆の青臭さを抑制しつつ、甘みも有効に付与できるため、オカラ含有組成物の風味を向上できる。
【0036】
糖アルコールと他の糖類(特に単糖及び/又はオリゴ糖)とを組み合わせる場合、糖アルコールの割合は、他の糖類100重量部に対して10重量部以上であってもよく、例えば10〜100重量部、好ましくは15〜80重量部、さらに好ましくは20〜50重量部(特に30〜40重量部)程度である。糖アルコールの割合が少なすぎると、青臭さを低減する効果が低下する虞がある。
【0037】
糖類(第2の糖類)の割合は、微細オカラ100重量部に対して1000重量部以下であってもよく、例えば10〜1000重量部、好ましくは30〜300重量部(例えば50〜200重量部)、さらに好ましくは60〜150重量部(特に80〜120重量部)程度である。糖類の割合が多すぎると、微細オカラの配合による効果が低下する虞がある。
【0038】
(他の成分)
本発明のオカラ含有組成物が糖類(第2の糖類)を含む場合、甘みを調整するために、食塩をさらに含んでいてもよい。食塩の割合は、糖類100重量部に対して、例えば0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部(特に0.2〜0.5重量部)程度である。食塩の割合が少なすぎると、甘みの調整効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、甘みが低下する虞がある。
【0039】
本発明のオカラ含有組成物は、保存性を向上させるために、日持ち向上剤をさらに含んでいてもよい。日持ち向上剤の割合は、微細オカラ100重量部に対して、例えば0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.2〜1重量部(特に0.3〜0.7重量部)程度である。日持ち向上剤の割合が少なすぎると、保存安定性の向上効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、コクや風味が低下する虞がある。
【0040】
本発明のオカラ含有組成物は、製菓材料(特に、モンブラン用トッピング材などの洋菓子材料)として利用される場合、果肉又は果実材料(マロンペースト、紫芋ペースト、アーモンドプードルなど)をさらに含んでいてもよい。果肉又は果実材料の割合は、微細オカラ100重量部に対して、例えば1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜80重量部(特に30〜50重量部)程度である。
【0041】
本発明のオカラ含有組成物は、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、油脂類(大豆油、ヤシ油、パーム油、マロンオイル、アーモンドオイルなどの植物油など)、膨張剤又は発泡剤(重曹など)、増粘安定剤又は保水乳化安定剤(ペクチン、セルロースなどの増粘多糖類など)、pH調整剤(重曹、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどの無機塩など)、強化パウダー、保存料(防腐剤、抗菌剤など)、ビタミン類、消泡剤、調味料、着香料、着色料、乳化剤、酸化防止剤、光安定剤、醸造用剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。慣用の添加剤の割合は、微細オカラ100重量部に対して、例えば0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部程度である。
【0042】
(オカラ含有組成物の特性)
本発明のオカラ含有組成物は、液体状、ペースト状(半固体状)、固体状のいずれであってもよいが、製菓材料や調理加工材料への応用が容易である点から、ペースト状が好ましい。
【0043】
本発明のオカラ含有組成物の破断応力は10〜1000gf/cm
2程度の範囲から選択でき、餡やクリーム様の食感を発現できる点から、例えば100〜500gf/cm
2、好ましくは120〜400gf/cm
2、さらに好ましくは150〜300gf/cm
2(特に200〜250gf/cm
2)程度である。なお、本明細書及び特許請求の範囲では、破断応力は、食品に利用される慣用の圧縮試験により測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0044】
本発明のオカラ含有組成物の糖度(Brix)は、例えば40〜70%、好ましくは50〜60%、さらに好ましくは50〜55%程度である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、糖度は、慣用の糖度計(屈折計)を用いて測定できる。本発明のオカラ含有組成物の水分含量(自由水及び結合水の合計量)は、例えば30〜60%、好ましくは40〜50%、さらに好ましくは45〜50%程度であってもよい。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、水分は、慣用の食品分析における水分含量の測定方法、例えば、加熱乾燥法などにより測定できる。
【0045】
[オカラ含有組成物の製造方法]
本発明のオカラ含有組成物は、水及び/又は豆乳を含む希釈剤の存在下で、原料オカラ(原料の生オカラ)を湿式粉砕して微細オカラを含む水性組成物を得る粉砕工程を経て調製してもよい。
【0046】
(粉砕工程)
前記粉砕工程において、希釈剤は、水又は豆乳を含んでいればよく、水及び/又は豆乳のみであってもよく、水及び/又は豆乳と他の希釈剤との混合物であってもよい。他の希釈剤としては、例えば、醸造用アルコール(エタノール)、酒類(料理酒、ワイン、日本酒など)、果汁、牛乳などが挙げられる。水及び豆乳の合計割合は、希釈剤中50重量%以上であってもよく、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、100重量%(水及び/又は豆乳のみ)であってもよい。
【0047】
希釈剤は、水及び豆乳のいずれかを含んでいればよいが、微細オカラの調製が容易であり、得られるオカラ含有組成物の滑らかさも向上できる点から、水及び豆乳の双方を含むのが好ましい。水と豆乳とを組み合わせる場合、水と豆乳との重量割合は、水/豆乳=10/1〜1/10程度の範囲から選択でき、例えば5/1〜1/5、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.5(特に1.2/1〜1/1.2)程度である。
【0048】
希釈剤の割合は、原料オカラ100重量部に対して、例えば50〜300重量部、好ましくは60〜250重量部(例えば80〜230重量部)、さらに好ましくは100〜200重量部(特に120〜180重量部)程度である。希釈剤の割合が多すぎると、生産性が低下する虞があり、逆に少なすぎると、オカラ含有組成物の滑らかさが低下する虞がある。
【0049】
粉砕方法としては、特に限定されず、慣用の粉砕機、例えば、サンプルミル、ハンマーミル、ターボミル、カッターミル、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ジェットミル、アトマイザー、グラインダーなどにより粉砕する方法などを利用できる。これらの方法のうち、スーパーマスコロイダー(対向する石臼の片方が回転するミル)などのグラインダーで粉砕する方法が好ましい。スーパーマスコロイダーとしては、増幸産業(株)製のスーパーマスコロイダー(無気孔グラインダーを備えた石臼式超微粒湿式磨砕機)などを利用できる。
【0050】
グラインダー(特にスーパーマスコロイダー)において、クリアランスは−50μm以下であってもよく、例えば−50〜−300μm、好ましくは−100〜−200μm、さらに好ましくは−120〜−180μm(特に−140〜−160μm)程度である。回転数は、例えば500〜5000rpm、好ましくは1000〜3000rpm、さらに好ましくは1500〜2000rpm程度である。処理回数(パス回数)は、例えば1〜10回、好ましくは、1〜5回、さらに好ましくは1〜3回程度であってもよい。
【0051】
本発明のオカラ含有組成物は、このような粉砕工程を経て得られ、希釈剤が豆乳を含む場合は、得られた水性組成物をそのまま利用でき、希釈剤が豆乳を含まない場合は、さらに豆乳と混合して利用される。
【0052】
(加熱工程)
本発明のオカラ含有組成物が糖類を含む場合は、得られた微細オカラを含む水性組成物と糖類(第2の糖類)とを加熱下で混合(又は混練)してオカラ含有組成物を調製する加熱工程を経ることによりオカラ含有組成物を調製してもよい。
【0053】
糖類(第2の糖類)の割合は、原料オカラ100重量部に対して1000重量部以下であってもよく、例えば10〜1000重量部、好ましくは30〜300重量部(例えば50〜200重量部)、さらに好ましくは60〜150重量部(特に80〜120重量部)程度である。
【0054】
加熱温度は、例えば50〜98℃、好ましくは70〜95℃、さらに好ましくは80〜90℃(特に83〜87℃)程度である。加熱時間は、例えば10分以上であってもよく、例えば10〜120分、好ましくは20〜100分、さらに好ましくは30〜80分程度である。
【0055】
混合方法としては、特に限定されず、慣用の攪拌手段や混練手段を利用でき、慣用のミキサー(ホモミキサー、ホモジナイザー、ホモディスパー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンミキサー、V型ミキサーなど)、ミキシングローラ、ニーダー、攪拌機付き平釜、押出機などを用いた方法を利用でき、特に、開口部が大きく、水分を効率よく蒸発できる点から、攪拌機付き平釜を用いた方法が好ましい。攪拌機付き平釜の回転速度は、例えば3〜30rpm、好ましくは6〜20rpm、さらに好ましくは10〜15rpm程度である。
【0056】
なお、粉砕工程だけでなく、加熱工程においても、糖類に加えて、希釈剤(特に、豆乳)を添加してもよい。豆乳(粉砕工程及び/又は加熱工程で添加される豆乳の総量)の割合は、原料オカラ100重量部に対して、例えば10〜200重量部、好ましくは30〜150重量部(例えば50〜100重量部)、さらに好ましくは60〜90重量部(特に70〜80重量部)程度である。豆乳の割合が少なすぎると、オカラ含有組成物の風味やコクが低下する虞があり、多すぎると、青臭さにより風味が低下する虞がある。
【0057】
食塩や日持ち向上剤などの他の成分は、前記粉砕工程又は前記加熱工程において添加してもよいが、熱劣化を抑制する点などから、加熱工程を経た後に、他の成分を添加して、非加熱下でさらに混合するのが特に好ましい。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、用いた原料及び製造機械の詳細は以下の通りであり、得られたオカラ含有組成物の食感及び風味は、以下の方法で評価した。
【0059】
[原料]
国産大豆の豆乳:大豆固形分13.4重量%
北米産大豆の豆乳:大豆固形分12重量%
異性化液糖:群栄化学工業(株)製「スリーシュガーHF55」、糖度約74%
還元水あめ:三菱商事フードテック(株)製「アマミール」、還元デンプン糖化物、糖度58%
上白糖:日新製糖(株)製「上白糖P」
食塩:赤穂化成(株)製「赤穂の天然塩」
日持ち向上剤:ウエノフードテクノ(株)製「SM−G」
アーモンドプードル:(株)カネカ製「KNアーモンドプードル100%」
アーモンドフレーバー:横山香料(株)製「アーモンドフレーバーA1023」
アーモンドオイル:横山香料(株)製「アーモンドオイルB1667」
渋皮マロンペースト:メグミフーズ(株)製「国産渋皮付マロンピュアペースト」
和栗強化ペースト:横山香料(株)製「フロランチーヌ和栗強化ペースト」
マロンオイル:横山香料(株)製「マロンオイルB5784」
紫芋ペースト:澁谷食品(株)製「アヤ紫芋ペースト」
紫芋パウダー:横山香料(株)製「フロランチーヌ紫芋強化パウダー」
紫芋フレーバー:横山香料(株)製「ムラサキイモフレーバーB4760」
市販微細オカラ:さとの雪食品(株)製「おからパウダー」。
【0060】
[製造機械]
石臼式湿式摩砕機:増幸産業(株)製「スーパーマスコロイダーMKZA10−20JM」
攪拌機付き平釜:(株)品川工業所製「蒸気式二重釜SRBシリーズ(容量300L)」。
【0061】
[微細オカラの平均粒径]
微細オカラの平均粒径は、石臼式湿式摩砕機で粉砕後のオカラに対し、自重の2倍量の水で希釈し、市販のUSB接続式デジタルマイクロスコープで観察し、撮影し、印刷した顕微鏡写真に基づいて、微細オカラ20個の粒径を測定し、平均値を算出した。
【0062】
[オカラ含有組成物の硬さ]
オカラ含有組成物の硬さ(破断応力)は、圧縮による破断応力測定措置((有)タケトモ電機製、商品名「テンシプレッサー(登録商標)」)を用いて測定した。詳しくは、直径18mmの円筒形状プランジャーを用いて速度2mm/sで圧縮し、H値(硬さ(破断応力):gf/cm
2)及びL値(脆さ(破断点):mm)を測定した。
【0063】
実施例1
(原料オカラの製造)
国産丸大豆60kgを用いて、水に浸漬、常法に従い、磨砕、煮沸、遠心分離により、80kgの原料オカラを得た。オカラの組成は、水分75.4重量%、タンパク質4.8重量%、脂質3.6重量%、炭水化物6.4重量%、灰分0.8重量%、食物繊維9.8重量%であった。
【0064】
(微細オカラの製造)
得られた原料オカラ81.6kgに対して豆乳61.2kg、水61.2kg及び日持ち向上剤0.41kgを添加し、石臼式湿式摩砕機を用いて、クリアランスを−150μmに調整し、140kg/1hrの処理量でオカラを粉砕し、微細オカラを含む水性組成物を得た。微細オカラの平均粒径は220μmであった。
【0065】
(オカラ含有組成物の製造)
得られた水性組成物に、上白糖62kg、還元水飴33.4kg及び食塩0.29kgを添加し、攪拌機付き平釜を用いて85℃で30分混練し、オカラ含有組成物を得た。原料組成物及び得られた組成物の組成を表1に示す。なお、組成物の糖度は50%であり、水分含量は45%であった。また、表1中の水(総量)とは、微細オカラ及び豆乳に含まれる水分も含む意味である(以下、同様)。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例1で得られたオカラ含有組成物は、滑らかであり、風味及びコクも優れていた。詳しくは、得られたオカラ含有組成物をガラス板状に載置し、スパチュラでスライドさせると、軽い力で滑らかにスライドできた。水で希釈し、顕微鏡で観察した結果、微細オカラが十分に分散しており、軽く液状に近い状態であった。組成物の硬さを測定したところ、H値は234.1gf/cm
2であり、L値は8.7mmであった。
【0068】
実施例2
(微細オカラの製造)
実施例1で得られた原料オカラ81.6kgに対して水122.4kg及び日持ち向上剤0.41kgを添加し、石臼式湿式摩砕機を用いて、クリアランスを−150μmに調整し、140kg/1hrの処理量でオカラを粉砕し、微細オカラを含む水性組成物を得た。微細オカラの平均粒径は220μmであった。
【0069】
(オカラ含有組成物の製造)
得られた水性組成物に、豆乳61.2kg、上白糖62kg、還元水飴33.4kg及び食塩0.29kgを添加し、攪拌機付き平釜を用いて85℃で30分混練し、オカラ含有組成物を得た。原料組成物及び得られた組成物の組成を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例2で得られたオカラ含有組成物は、滑らかであり、風味及びコクも優れていたが、実施例1で得られたオカラ含有組成物と比較すると、実施例1で得られたオカラ含有組成物の方が優れていた。詳しくは、実施例2で得られたオカラ含有組成物をガラス板状に載置し、スパチュラでスライドさせると、実施例1に比べて、少し重みがある感じであった。水で希釈し、顕微鏡で観察した結果、実施例1に比べて粘性が強く、少し角が立つような状態であった。組成物の硬さを測定したところ、H値は228.8gf/cm
2であり、L値は8.7mmであった。
【0072】
実施例3
国産大豆の代わりに北米産大豆を使用して原料オカラを製造する以外は実施例1と同様にしてオカラ含有組成物を得た。得られたオカラ含有組成物は、滑らかであり、風味及びコクも優れていたが、実施例1で得られたオカラ含有組成物と比較すると、実施例1よりも、コク及び風味が若干低下し、色調も若干くすんでいた。
【0073】
実施例4
還元水飴の代わりに異性化液糖を使用してオカラ含有組成物を製造する以外は実施例1と同様にしてオカラ含有組成物を得た。得られたオカラ含有組成物は、滑らかであり、風味及びコクも優れていたが、実施例1で得られたオカラ含有組成物と比較すると、大豆由来の青臭さが若干感じられた。
【0074】
実施例5
攪拌機付き平釜を用いて85℃で30分混練した後、加熱を止めて、アーモンドプードル12.5kg、アーモンドフレーバー0.55kg及びアーモンドオイル0.1kgを添加して5分混練する以外は実施例1と同様にしてオカラ含有組成物を得た。原料組成物及び得られた組成物の組成を表3に示す。なお、組成物の糖度は51%であり、水分含量は47%であった。
【0075】
【表3】
【0076】
得られたオカラ含有組成物は、滑らかであり、アーモンドの風味がし、コクも優れていた。
【0077】
実施例6
攪拌機付き平釜を用いて85℃で30分混練した後、加熱を止めて、渋皮マロンペースト36.1kg、和栗強化ペースト3.25kg及びマロンオイル0.45kgを添加して5分混練する以外は実施例1と同様にしてオカラ含有組成物を得た。原料組成物及び得られた組成物の組成を表4に示す。なお、組成物の糖度は46%であり、水分含量は51%であった。
【0078】
【表4】
【0079】
得られたオカラ含有組成物は、滑らかであり、栗の風味がし、コクも優れていた。
【0080】
実施例7
攪拌機付き平釜を用いて85℃で30分混練した後、加熱を止めて、紫芋ペースト36.4kg、紫芋パウダー0.93kg及び紫芋フレーバー0.46kgを添加して5分混練する以外は実施例1と同様にしてオカラ含有組成物を得た。原料組成物及び得られた組成物の組成を表5に示す。なお、組成物の糖度は51%であり、水分含量は48%であった。
【0081】
【表5】
【0082】
得られたオカラ含有組成物は、滑らかであり、紫芋の風味がし、コクも優れていた。
【0083】
比較例1
豆乳61.2kg及び水61.2kgの代わりに水122.4kgを用いて微細オカラを製造する以外は実施例1と同様にしてオカラ含有組成物を得た。得られたオカラ含有組成物は、滑らかであったが、実施例1に比べて、風味及びコクが著しく低下した。組成物の硬さを測定したところ、H値は207.9gf/cm
2であり、L値は8.7mmであった。
【0084】
比較例2
市販微細オカラ17g、水68g、上白糖65g、還元水飴35g及び食塩0.3gを添加し、雪平鍋を用いて弱火で90℃まで加熱した後、15分混練し、オカラ含有組成物を得た。市販微細オカラの平均粒径は1.37mmであった。得られたオカラ含有組成物は、黄色く、くすんでおり、黒い胚芽のようなものが点々としているのが目立った。また、餡のような粘りがなく、ポロポロしており、口の中で直ぐにバラっと崩れるような食感であった。