(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396521
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】下方クラウン支持特徴を備えたピストン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/00 20060101AFI20180913BHJP
F02F 3/26 20060101ALI20180913BHJP
F16J 1/16 20060101ALI20180913BHJP
F16J 1/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
F02F3/00 K
F02F3/26 A
F16J1/16
F16J1/02
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-26983(P2017-26983)
(22)【出願日】2017年2月16日
(62)【分割の表示】特願2014-519000(P2014-519000)の分割
【原出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2017-115894(P2017-115894A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年2月20日
(31)【優先権主張番号】61/502,602
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィル,カート
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,マーク
(72)【発明者】
【氏名】テッベ,マイク
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−185214(JP,A)
【文献】
特開2010−236406(JP,A)
【文献】
特開平08−312454(JP,A)
【文献】
特開2001−289117(JP,A)
【文献】
特開平10−18908(JP,A)
【文献】
米国特許第4989559(US,A)
【文献】
国際公開第2006/014741(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00−3/28
F16J 1/02−1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンであって、
長手方向の中心軸に沿って延在するピストン本体を備え、前記ピストン本体は、燃焼壁を備えたクラウン部分と、前記クラウン部分から垂下する1対のピンボスと、前記燃焼壁に形成された燃焼ボウルとを有し、
前記クラウン部分は、前記クラウン部分と一体的に形成された少なくとも2つのリブを含み、前記少なくとも2つのリブは、円弧形状の第1および第2のリブを含み、前記第1のリブは、前記燃焼ボウルの直下において前記燃焼壁から垂下し、前記第2のリブは、前記燃焼ボウルから径方向に間隔を空けて配置される、ピストン。
【請求項2】
前記リブの各々は前記ピンボス間に延在する、請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記リブの各々は、前記ピンボア軸から外側に向かって湾曲する、請求項2に記載のピストン。
【請求項4】
前記リブの各々は、前記長手方向の中心軸に対して湾曲する、請求項2に記載のピストン。
【請求項5】
前記燃焼ボウルは概して半球形状である、請求項1に記載のピストン。
【請求項6】
前記第1のリブは、前記ピンボスに向かって下方に湾曲する、請求項5に記載のピストン。
【請求項7】
前記少なくとも2つのリブは、互いに正反対の位置に配置される、請求項1に記載のピストン。
【請求項8】
ピストンであって、
長手方向の中心軸に沿って延在するピストン本体を備え、前記ピストン本体は、燃焼壁を備えたクラウン部分と、前記クラウン部分から垂下する1対のピンボスと、前記燃焼壁に形成された燃焼ボウルとを有し、
前記クラウン部分は、前記クラウン部分と一体的に形成された少なくとも2つのリブを含み、前記少なくとも2つのリブは、第1および第2のリブを含み、前記第1のリブは、前記燃焼ボウルの直下において前記燃焼壁から垂下し、前記第2のリブは、前記燃焼ボウルから径方向に間隔を空けて配置され、
前記第1のリブは、前記長手方向の中心軸に沿って前記第2のリブよりも低く垂下する、ピストン。
【請求項9】
前記燃焼ボウルは、前記長手方向の中心軸に対して非対称的に配置される、請求項1に記載のピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年6月29日に提出された米国仮出願連続番号第61/502,602号の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、概して、内燃機関のためのピストンに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
多くのエンジン製造業者は、電力生産および燃料効率を向上させることを目的として、直接噴射、ターボチャージャおよびスーパーチャージャなどの先進技術を彼らのガソリン供給型エンジンに組込んでいる。これらおよび他の先進技術では、しばしば、エンジンのシリンダボア内で燃焼の圧力および温度を高めることによってエンジンの性能を向上させる。しかしながら、圧力および温度が高められると、エンジンのピストンの上側クラウン部分に不要な屈曲または他の破損がもたらされるおそれがある。このような破損により、結果として、エンジンの性能が低下してしまうか、またはさらには、エンジンが完全に故障してしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高い燃焼圧力および燃焼温度に耐えるようピストンを強化するために、いくつかのピストン製造業者は、燃焼壁の厚みを増したピストンを製造し始めた。このようなピストンは高い圧力および温度下では曲がりにくくなる可能性があるが、厚みを増したためにピストンの質量も増加してしまい、先進技術から得られる出力および燃料の改善益が損なわれる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の一局面に従うと、長手方向の中心軸に沿って延在するピストン本体を有するピストンが提供される。ピストン本体は、燃焼壁を備えたクラウン部分と、クラウン部分から垂下する1対のピンボスとを有する。クラウン部分は、当該クラウン部分と一体的に形成される少なくとも2つのリブを含み、各々のリブは燃焼壁から垂下している。リブのうち一方のリブは、長手方向の中心軸に沿って他方のリブよりも低く垂下する(または延在する)。リブは、ピストンの質量を実質的に増やすことなく、ピンボア軸のまわりの屈曲に耐えるよう、上側クラウンの強度を高める。加えて、リブは、熱を燃焼壁から抜取ってピストンを冷却するようヒートシンクとして作用する。
【0006】
本発明の別の局面に従うと、リブは、ピンボス間に延在してピンボア軸から外側に向かって湾曲する。こうして、ピストンの質量を実質的に増やすことなく、リブの長さが延ばされる。
【0007】
本発明のさらに別の局面に従うと、長手方向の中心軸に沿って延在するピストン本体を含むピストンが提供される。ピストン本体は、燃焼壁を備えたクラウン部分と、大部分がクラウン部分から垂下する1対のピンボスとを有する。燃焼壁は、その内部に形成された少なくとも1つの燃焼ボウルを含む。クラウン部分は、当該クラウン部分と一体的に形成
された少なくとも1つのリブを含む。少なくとも1つのリブは、少なくとも1つの燃焼ボウルの直下において燃焼ボウルから垂下する。こうして、少なくとも1つのリブは、燃焼ボウルのうち、しばしばシリンダボアにおける燃焼の中心に位置する箇所において上側クラウンの強度を高める。
【0008】
図面の簡単な説明
本発明のこれらおよび他の局面、特徴および利点は、現在好ましい実施例およびベストモードについての以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲および添付の図面に関連付けて考慮されると、より容易に認識されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一局面に従って構成されるピストンを示す斜視図である。
【
図4】概して
図3の線4−4に沿った断面図である。
【
図5】概して
図3の線5−5に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実現可能な実施例の説明
図面を参照すると、同様の数字がいくつかの図全体にわたって対応する部分を示しており、本発明の現在好ましい一局面に従って構成されるピストン20が、
図1〜
図5に概略的に示される。具体的な実施例のピストン20は1つの一体型部品から構成されている。この一体型部品は、好ましくはほぼ最終の形状に鋳造され、次いで、その最終寸法にまで機械加工されたものである。しかしながら、ピストン20が、代替的には、任意の所望のプロセスによって形作られて互いに接合され得る複数の部品からなり得ることが認識されるべきである。ピストン20は好ましくはアルミニウム合金から形成されるが、代替的には、鋼または任意の所望の金属またはその合金から形成されてもよい。
【0011】
図1に図示のとおり、例示的な一体型ピストン20は、長手方向の中心軸A
1に沿って延在するピストン本体22を有する。ピストン本体22は、上側クラウン部分24と、1対のピンボス26と、1対のスカート部分28とを有する。上側クラウン部分24は、燃焼壁30と、燃焼壁30から軸方向に間隔を空けて配置されてピストン20のリング(図示せず)を受けるための複数のリング溝32とを含む。ピンボス26は、上側クラウン部分24から長手方向の中心軸A
1に沿って下方向に延在する。ピンボス26の各々はピンボア34を有し、これらピンボア34は、リストピン(図示せず)を受けてピストン20を連接棒(図示せず)の小端と相互に接続させるために、(
図3に示される)ピンボア軸A
2に沿って互いに位置合わせされる。
図3に最もよく示されるように、スカート部分28は互いに正反対の位置に配置されており、各々のスカート部分28は、ピンボス26の間に延在し、これらピンボス26を相互に接続する。エンジンの動作中、ピストン本体22は、連接棒(図示せず)を介してクランク軸(図示せず)を回転させるために、エンジンブロック(図示せず)のシリンダボア(図示せず)内において長手方向の中心軸A
1に沿って往復運動する。
【0012】
図1を再び参照すると、燃焼壁30は、概して平面の部分と、隆起部分(ポップアップ)と、その内部に形成された燃焼ボウル36とを含む。燃焼ボウル36は、長手方向の中心軸A
1に対して非対称的に構成される。すなわち、燃焼ボウル36の中心は長手方向の中心軸A
1に沿っては配置されない。しかしながら、燃焼ボウル36が代替的には中心軸A
1を中心として対称的に配置され得ることが認識されるべきである。直接噴射技術を用いたエンジンにおいてピストン20が使用されると、シリンダボアにおける燃料およびガスの燃焼がしばしば燃焼ボウル36のまわりに集中し、これにより、この位置において圧
力および熱が上昇する。結果として、燃焼ボウル36は、典型的には、クラウン部分24上において最も高い応力を受ける区域となる。例示的なピストン20は、これらの力に抵抗するよう上側クラウン部分24を補強するための下方クラウン支持構造を有する。
【0013】
ここで
図3を参照すると、ピストン20は、互いとは正反対の位置に間隔を空けて配置された1対のリブ38および40を含む。これら1対のリブ38および40は、概してピンボス26間に延在して、上側クラウン部分24を補強し、これにより、直接噴射エンジン、ターボチャージャ付きエンジンおよび/またはスーパーチャージャ付きエンジンの高い圧力および温度に燃焼壁30が晒されたときに、ピンボア軸A
2のまわりでの屈曲に対する上側クラウン部分24の抵抗を高める。このような屈曲に対する高い抵抗は、ピストン20の質量を実質的に増やすことなく達成される。具体的な実施例においては、リブ38および40の各々が概して湾曲しているかまたは円弧状であることで、燃焼壁30の下における支持区域を増やし、これにより、ピンボア軸A
2のまわりの屈曲に対する上側クラウンの抵抗をさらに高める。リブ38および40の円弧形状はまた、リブ38および40が、反対側のピンボス26と概して滑らかに噛合うかまたは反対側のピンボス26と相互に接続されることを可能にし、これにより、これらの要素の相互接続部において不所望な応力がもたらされるのを回避する。ここで
図5を参照すると、リブ38および40の各々は上側クラウン部分24から垂下し、この上側クラウン部分24と一体的に形成されている。このため、リブ38および40は、追加費用をほとんどまたは全くかけることなく、上側クラウンと「鋳造されるように」形成され得る。しかしながら、リブ38および40が、如何なる好適なプロセスによっても上側クラウンに形成され得ることが認識されるべきである。屈曲に対する上側クラウンの抵抗を高めることに加えて、リブ38および40はまた、上側クラウンの燃焼壁30から熱を抜取って燃焼壁30を冷却するようにヒートシンクとして機能してもよい。このヒートシンク効果により、上昇した燃焼温度に対するピストン20の抵抗がさらに高められる。リブが、代替的には、特定のピストン設計の要求に応じて、直線形状にされ得るかまたは内側に向かって円弧状にされ得ることが認識されるべきである。
【0014】
図5をさらに参照すると、リブ38、40とは別に、例示的なピストン20の燃焼壁30が、燃焼ボウル36の位置と、燃焼ボウル36を囲む区域との両方において、概して均一な厚さで形成される。リブ38、40のうち以下において「第1のリブ38」と称される一方のリブは、燃焼ボウル36の直下において燃焼壁30から垂下している。このため、第1のリブ38は、応力が最も高くなる位置において上側クラウン部分24に対して最適な支持をもたらすよう位置決めされる。以下において「第2のリブ40」と称される他方のリブは、第1のリブ38とは正反対の位置において燃焼壁30から垂下し、燃焼ボウル36から間隔を空けて配置される。燃焼壁30の下面は燃焼ボウル36の区域において窪んでいるので、(燃焼ボウル36の直下にある)第1のリブ38は第2のリブ40と比べて引っ込んだ位置にある。すなわち、第1のリブ38は第2のリブ40よりも低い位置まで延びている。このため、第1のリブ38および第2のリブ40が概して同様の長さを有しているにもかかわらず、燃焼壁30の下面は、断面図に見られるような非対称的な外観を有する。加えて、例示的な燃焼ボウル36は概して半球形状を有しているので、第1のリブ38は、ピンボア軸A
2から離れるように外側に向かってだけではなく、ピストン本体22のピンボス26に向かって垂直方向にも円弧をなす。
【0015】
ここで
図3を参照すると、スカート部分28は、リブ38および40と概して同心円状に延在する。このため、スカート部分28は、リブ38および40と同じまたはほぼ同じ曲率半径を有する。しかしながら、スカート部分28がリブ38および40と同心円状でなくてもよいことが認識されるはずである。
【0016】
上述の教示に鑑みると本発明の多くの変更例および変形例が実現可能であることが明ら
かである。したがって、この明細書から得られる最終的に許可される特許請求の範囲内であれば、本発明が具体的に記載された以外の態様でも実施され得ることが理解されるはずである。