【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タンデム質量分析法を含む、質量分析法によって、アンジオテンシン1の量を測定し、血漿試料中のレニン活性を測定するための方法を提供する。
【0008】
一側面では、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(b)質量分析法によって、アンジオテンシン1イオンの量を検出するステップであって、イオンは、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択されるステップと、(c)検出されたアンジオテンシン1イオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、を含むことができる。ある実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、この方法は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、試料からアンジオテンシン1を精製するステップを含む。ある実施形態では、この方法は、固相抽出カラムによって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップをさらに含む。他の実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
【0009】
別の側面では、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のアンジオテンシン1をイオン化して1つ以上のイオンを生成するステップと、(b)質量分析法によって、少なくとも1つのイオンの量を検出するステップであって、イオンは、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択されるステップと、を含むことができ、検出されたアンジオテンシン1イオンの量は、試料中のア
ンジオテンシン1の量の測定を提供する。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
【0010】
別の側面では、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下でレニンに対して有効ではない水安定性プロテアーゼ阻害剤と予混合された試料をインキュベーションするステップと、(b)液体クロマトグラフィーによって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップと、(c)精製されたアンジオテンシン1をイオン化して質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(d)質量分析法によって、1つ以上のアンジオテンシン1イオンの量を検出するステップと、(e)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、を含むことができる。ある実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、質量分析法によって生成されたイオンは、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される。関連実施形態では、イオンは、433.0±0.5の質量/電荷比をもつ前駆体イオンと、619.4±0.5および647.4±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される、1つ以上の断片イオンとを含む。他の実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試験試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。他の好ましい実施形態では、この方法は、固相抽出カラムによって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップをさらに含む。他の好ましい実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
【0011】
別の側面では、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下で試料をインキュベーションするステップと、(b)固相抽出によって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップと、(c)オンライン処理を備えた液体クロマトグラフィーによって、ステップ(b)の後、アンジオテンシン1をさらに精製するステップと、(d)ステップ(c)から精製されたアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(e)質量分析法によって、1つ以上のアンジオテンシン1イオンの量を検出するステップと、(f)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、を含むことができる。ある好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。他の実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、この方法は、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される1つ以上のイオンを含むイオンを生成するステップを含む。関連実施形態では、この方法は、アンジオテンシン1の前駆体イオンを生成するステップを含み、前駆体イオンのうちの少なくとも1つは、433.0±0.5の質量/電荷比を有する。好ましい関連実施形態では、この方法は、アンジオテンシン1前駆体イオンのうちの1つ以上の断片イオンを生成するステップであって、断片イオンのうちの少なくとも1つは、619.4±0.5または647.4±0.5の質量/電荷比を有するステップを含むことができる。さらなる実施形態では、インキュベーションは、レニンに対して有効ではない水安定性プロテアーゼ阻害剤の存在下において行う。ある好ましい実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試験試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後の
アンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
【0012】
別の側面では、試料中のレニン活性を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下で試料をインキュベーションするステップと、(b)固相抽出によって、試料からアンジオテンシン1を精製するステップと、(c)オンライン処理を備えた液体クロマトグラフィーによって、アンジオテンシン1をさらに精製するステップと、(d)精製されたアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(e)質量分析法によって、1つ以上のアンジオテンシン1イオンの量を検出するステップと、(f)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、(g)試料中で測定されたアンジオテンシン1の量を使用して、試料中のレニン活性を計算するステップと、を含むことができる。ある好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。別の実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、この方法は、アンジオテンシン1の前駆体イオンを生成するステップであって、前駆体イオンのうちの少なくとも1つは、433.0±0.5の質量/電荷比を有するステップと、619.4±0.5または647.4±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される、アンジオテンシン1前駆体イオンのうちの1つ以上の断片イオンを生成するステップと、を含む。ある実施形態では、インキュベーションは、水安定性プロテアーゼ阻害剤の存在下において行う。好ましい関連実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試験試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
【0013】
別の側面では、試料中のレニン活性を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下でレニンに対して有効ではない水安定性プロテアーゼ阻害剤と予混合された試料をインキュベーションするステップと、(b)液体クロマトグラフィーによって、アンジオテンシン1を精製するステップと、(c)精製されたアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(d)質量分析法によって、アンジオテンシン1イオンの量を検出するステップと、(e)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、(f)試料中のアンジオテンシン1の量を使用して、試料中のレニン活性を計算するステップと、を含む。ある好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。別の実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、この方法は、アンジオテンシン1の前駆体イオンを生成するステップであって、前駆体イオンのうちの少なくとも1つは、433.0±0.5の質量/電荷比を有するステップと、619.4±0.5または647.4±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から、アンジオテンシン1前駆体イオンのうちの1つ以上の断片イオンを生成するステップと、を含む。ある好ましい実施形態では、ステップ(b)は、固相抽出カラムによって、試料からアンジオテンシン1を精製するステップを含む。さらなる実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
【0014】
別の側面では、試料中のレニン活性を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下で試料をインキュ
ベーションするステップと、(b)液体クロマトグラフィーによって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップと、(c)精製されたアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(d)質量分析法によって、アンジオテンシン1イオンの量を検出するステップであって、イオンは、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択されるステップと、(e)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、(f)試料中のアンジオテンシン1の量を使用して、試料中のレニン活性を計算するステップと、を含む。ある実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。ある実施形態では、インキュベーションは、水安定性プロテアーゼ阻害剤の存在下において行う。好ましい関連実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。ある実施形態では、この方法のステップ(b)は、固相抽出カラムによって、アンジオテンシン1を精製するステップをさらに含む。さらなる実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試験試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
【0015】
ある実施形態では、インキュベーションから約3時間後、PRAが、毎時1mLあたり0.65ng未満のアンジオテンシンである場合、試験試料は、より長時間(例えば、最大約18時間)インキュベーションされ、PRA生成プロトコルを確立してもよい。
【0016】
好ましい実施形態は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を、単独で、あるいは、例えば、固相抽出技術またはタンパク質沈殿を含むがそれらに限定されない1つ以上の精製方法と組み合わせて利用して、試料中のアンジオテンシン1を精製する。
【0017】
本明細書に開示される方法のある好ましい実施形態では、質量分析法は、正イオンモードで行われる。あるいは、質量分析法は、負イオンモードで行うことが可能である。特に好ましい実施形態では、アンジオテンシン1は、正および負イオンモードの両方を使用して測定される。ある好ましい実施形態では、アンジオテンシン1は、正または負モードのいずれかにおいて、エレクトロスプレーオン化(ESI)あるいはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を使用して測定される。
【0018】
好ましい実施形態では、質量分析計において検出可能なアンジオテンシン1イオンは、1297±0.5、756±0.5、649±0.5、647.4±0.5、619.4±0.5、534±0.5、506±0.5、433.0±0.5、343±0.5、255±0.5、および110±0.5の質量/電荷比(m/z)をもつイオンから成る群から選択される。特に好ましい実施形態では、前駆体イオンは、433.0±0.5の質量/電荷比を有し、断片イオンは、619.4±0.5または647.4±0.5の質量/電荷比を有する。
【0019】
好ましい実施形態では、別々に検出可能な同位体標識アンジオテンシン1が内部標準物質として試料に添加される。これらの実施形態では、試料中に存在する内因性アンジオテンシン1と内部標準物質の両方の全部または一部は、イオン化され、質量分析計において検出可能な複数のイオンを生成し、それぞれから生成された1つ以上のイオンが質量分析法によって検出される。関連実施形態では、同位体標識アンジオテンシン1は、
13Cおよび
15N同位体標識バリン、アルギニン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、プロリンサブユニット、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。さらに好ましい実施形態では、同位体標識アンジオテンシン1は、炭素原子が
13C同位体と置換さ
れ、窒素原子が
15N同位体と置換されており、天然アンジオテンシン1と比較して6Daの質量の増加をもたらす、バリンサブユニットを有する。好ましい関連実施形態では、同位体標識アンジオテンシン1は、炭素原子が
13C同位体と置換され、窒素原子が
15N同位体と置換されているバリンおよびイソロイシンサブユニットを有する。この同位体標識アンジオテンシン1の質量は、通常、天然アンジオテンシン1より13Da高い。
【0020】
好ましい実施形態では、アンジオテンシン1イオンの有無および/または量は、内部標準物質との比較によって、アンジオテンシン1の有無および/または試験試料中の量と関連付けられる。
【0021】
本明細書に開示される側面のある好ましい実施形態では、アンジオテンシン1の定量限界(LOQ)は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLであって、アンジオテンシン1の定量上限(ULOQ)は、100,000fmol/mL以上である。
【0022】
別の側面では、アンジオテンシン1定量アッセイのためのキットが提供される。キットは、リン酸緩衝生理食塩水溶液中のフッ化アミノエチルベンジルスルホニル(AEBSF)を含み、リン酸緩衝生理食塩水溶液中のAEBSFは、少なくとも1つのアッセイのために十分な量として存在する。加えて、キットは、少なくとも1つのアッセイのために十分な量の内部標準物質およびマレイン酸を含んでいてもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、別途記載がない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形も含む。したがって、例えば、「タンパク質」とは、複数のタンパク質分子も含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「精製」または「精製する」とは、着目検体以外の試料から全成分を除去することを指すわけではない。そうではなく、精製とは、着目検体の検出に干渉し得る試料中の他の成分と比較して、1つ以上の着目検体の量を濃縮する手順を指す。本発明において、試料は種々の手段によって精製されて、1つ以上の干渉物質、例えば、質量分析法において選択されたアンジオテンシン1親および娘イオンの検出に干渉するであろう1つ以上の物質を除去することができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「試験試料」とは、アンジオテンシンを含有し得る、任意の試料を指す。本明細書で使用される場合、用語「体液」とは、個体の身体から単離可能な任意の流体を意味する。体液の例としては、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗等が挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「クロマトグラフィー」とは、液体またはガスによって搬送される化学混合物が固定液相または固相の周囲またはまわりで流動するにしたがって、化学的単体が異なるように分布する結果として、成分に分離されるプロセスを指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「液体クロマトグラフィー」または「LC」とは、流体が微粉化物質のカラムを通して、または毛細管路を通して、均一に浸透するにしたがって、流体溶液のうちの1つ以上の成分が選択的に遅延するプロセスを意味する。遅延は、流体が固定相に対して移動するにしたがって、1つ以上の固定相とバルク流体(すなわち、移動相)との間に混合物の成分が分布する結果として生じる。「液体クロマトグラフィー」を利用する分離技術の例としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、および乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)(高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)または高スループット液体クロマトグラフィーとしても知られる)が挙げられる。ある実施形態では、SPEカラムは、LCカラ
ムと組み合わせて使用されてもよい。例えば、試料は、TFLC抽出カラムで精製後、HPLC分析カラムでさらに精製されてもよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「高性能液体クロマトグラフィー」または「HPLC」(「高圧液体クロマトグラフィー」としても知られる)とは、固定相、典型的には、高密度に充填されたカラムを通して、移動相に圧力をかけることによって、分離度が増加する液体クロマトグラフィーを指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「乱流液体クロマトグラフィー」または「TFLC」(高乱流液体クロマトグラフィーまたは高スループット液体クロマトグラフィーとしても知られる)とは、分離を行うための基礎として、カラム充填を通してアッセイされる成分の乱流を利用する、クロマトグラフィーの形態を指す。TFLCは、質量分析法による分析の前に、2つの不特定の薬物を含有する試料の調製に適用されている。例えば、Zimmer et al.,J Chromatogr A 854:23−35(1999)を参照されたい(また、TFLCについてさらに説明している、米国特許第5,968,367号、第5,919,368号、第5,795,469号、および第5,772,874号も参照)。当業者は、「乱流」について理解しているであろう。流体がゆっくりかつ平滑に流動する時、その流動は、「層流」と呼ばれる。例えば、低流速でHPLCカラムを通って移動する流体は、層流である。層流では、流体の粒子の運動は、整然としており、粒子は、略直線に移動する。より高速では、水の慣性によって、流体摩擦力が圧倒され、乱流が生じる。不規則境界に接触していない流体は、摩擦によって減速される、または不均一表面によって偏向される、流体を「追い越して流動する」。流体が乱流として流動する場合、渦流および環流(すなわち、渦動)状に流動し、流動が層流である場合より「遅滞」が生じる。流体流動が層流または乱流である場合の判定の補助として、多くの参考文献が利用可能である(例えば、
Turbulent Flow Analysis:Measurement and Prediction,P.S.Bernard & J.M.Wallace,John Wiley & Sons,Inc.,(2000);
An Introduction to Turbulent Flow,Jean Mathieu & Julian Scott,Cambridge University Press(2001))。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「固相抽出」または「SPE」とは、それを通して、またはその周囲を溶液が通過する固体(すなわち、固体相)のための溶液(すなわち、移動相)中に溶解または懸濁される成分の親和力の結果として、化学混合物が成分に分離されるプロセスを指す。ある例では、移動相が固体相を通してまたはその周囲を通過するにしたがって、移動相の望ましくない成分は、固相によって滞留され、移動相中の検体が精製される。他の例では、検体は固体相によって滞留され、移動相の望ましくない成分を、固体相を通してまたはその周囲を通過させてもよい。これらの例では、次いで、第2の移動相を使用して、さらなる処理または分析のために、滞留された検体を固相から溶離させる。抽出カラムとして乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)の利用を含むSPEは、一体型または混合モード機構を介して作動させることができる。混合モード機構は、同一カラム内において、イオン交換および疎水性滞留を利用する。例えば、混合モードSPEカラムの固相は、強アニオン交換および疎水性滞留を示してもよく、または強カチオン交換および疎水性滞留を示してもよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「分析カラム」とは、検体の有無または量の判定を可能にするよう十分にカラムから溶離させるように、試料中の成分の分離をもたらすのに十分なクロマトグラフィープレートを有する、クロマトグラフィーカラムを指す。そのようなカラムは、多くの場合、さらなる分析のための精製された試料を得るために、非滞留成分から滞留成分を分離または抽出するという一般的目的を有する、「抽出カラム」と区別
される。好ましい実施形態では、分析カラムは、直径約4μmの粒子を含有する。
【0032】
本明細書で使用される場合、例えば、「オンライン自動式」または「オンライン抽出」において使用される場合、用語「オンライン」または「インライン」とは、操作者の介入を必要とせずに行われる手順を指す。例えば、弁とコネクタ配管の精選によって、固相抽出および液体クロマトグラフィーカラムは、任意の手動ステップを必要とせずに成分が順次通過されるように、必要に応じて接続可能である。好ましい実施形態では、弁および配管の選択は、必要なステップを行うように、予めプログラムされたコンピュータによって制御される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムもまた、そのようなオンライン式で、検出器システム、例えば、MSシステムに接続される。したがって、操作者は、自動試料注入器内に多穴または多管試料のトレイを定置し、残りの操作は、コンピュータ制御下で行われ、選択される全試料を精製および分析することができる。対照的に、本明細書で使用される場合、用語「オフライン」とは、操作者の手動介入を必要とする手順を指す。したがって、試料が沈殿状態にあって、次いで、上清が自動試料注入器に手動で装填される場合、沈殿および装填ステップは、続くステップからオフラインとなる。この方法の種々の実施形態では、1つ以上のステップがオンライン自動式で行われてもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「質量分析法」または「MS」とは、その質量によって化合物を同定する分析技術を指す。MSとは、その質量対電荷比または「m/z」に基づいて、イオンを濾過、検出、および測定する方法を指す。MS技術は、概して、(1)化合物をイオン化して荷電化合物を形成するステップと、(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量対電荷比を計算するステップと、を含む。化合物は、任意の好適な手段によって、イオン化および検出することができる。「質量分析計」は、概して、イオン化装置と、イオン検出器と、を含む。一般に、1つ以上の着目分子がイオン化され、続いて、イオンは質量分析装置に導入され、ここでイオンは磁場と電界の組み合わせによって質量(「m」)および電化(「z」)に応じた空間内の経路を辿る。例えば、米国特許第6,204,500号「Mass Spectrometry From Surfaces」、第6,107,623号「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」、第6,268,144号「DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry」、第6,124,137号「Surface−Enhanced Photolabile
Attachment And Release For Desorption And Detecton Of Analytes」、Wright et al.,Prostate Cancer and Prostatic Diseases 2:264−76(1999)、およびMerchant and Weinberger,Electrophoresis 21:1164−67(2000)を参照されたい。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「正イオンモード操作」とは、正イオンが生成および検出される質量分析法を指す。本明細書で使用される場合、用語「負イオンモード操作」とは、負イオンが生成および検出される質量分析法を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「イオン化」または「イオン化ステップ」とは、1つ以上の電子単位に等しい正味電荷を有する検体イオンを生成するプロセスを指す。負イオンは、1つ以上の電子単位の正味負電荷を有するものであり、一方、正イオンは、1つ以上の電子単位の正味正電荷を有するものである。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「電子イオン化」または「EI」とは、気相または蒸気相にある着目検体が電子流と相互作用する方法を指す。電子の検体との衝突によって検体イオンが生成され、次いで、これを質量分析法技術に供する。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「化学イオン化」または「CI」とは、試薬ガス(例えば、アンモニア)が電子衝突を受け、検体イオンが試薬ガスイオンと検体分子の相互作用によって形成される方法を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「高速原子衝撃」または「FAB」とは、高エネルギー原子(多くの場合、XeまたはAr)のビームが不揮発性試料に衝突し、試料中に含有される分子を脱離およびイオン化する方法を指す。試験試料は、グリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミン等の粘性液体マトリクス中に溶解される。化合物または試料のための適切なマトリクスの選択は、経験的プロセスである。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「マトリクス支援レーザー脱離イオン化」または「MALDI」とは、不揮発性試料がレーザー照射に曝露され、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、およびクラスター崩壊を含む種々のイオン化経路によって、試料中の検体を吸収およびイオン化する方法を指す。MALDIの場合、試料は、検体分子の脱離を促進するエネルギー吸収マトリクスと混合される。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「表面増強レーザー脱離イオン化」または「SELDI」とは、不揮発性試料がレーザー照射に曝露され、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、およびクラスター崩壊を含む種々のイオン化経路によって、試料中の検体を吸収およびイオン化する別の方法を指す。SELDIの場合、試料は、典型的には、1つ以上の着目検体を優先的に滞留させる表面と結合される。MALDIにおけるように、このプロセスも、エネルギー吸収成分を用いてイオン化を促進してもよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「エレクトロスプレーオン化」または「ESI」とは、溶液が短毛細管に沿って通過し、その末端で、正または負の高電位が印加される方法を指す。管の末端に達する溶液は気化(噴霧)されて、溶媒蒸気中のジェットまたはスプレー状の溶液の極小液滴となる。この霧状の液滴は、凝縮を防止し溶媒を蒸発させるように若干加熱された蒸発チャンバを通して流れる。液滴が小さくなるにつれて、同電荷間の自然反発作用によってイオンならびに中性分子が放出されるまで、表面電荷密度が増加する。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「大気圧化学イオン化」または「APCI」とは、ESIと類似する質量分析法を指す。しかしながら、APCIは、大気圧のプラズマ中に生じるイオン分子反応によって、イオンを生成する。プラズマは、スプレー毛細管と対電極との間の放電によって維持される。次いで、イオンは、典型的には、一式の差動排気掬取段階の使用によって、質量分析器内に抽出される。乾燥かつ予加熱されたN
2のガスの対
向流を使用して、溶媒の除去を向上させてもよい。APCIにおける気相イオン化は、低極性種を分析するために、ESIよりも効果的であり得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「大気圧光イオン化」または「APPI」とは、質量分析法の形態を指し、分子Mの光イオン化のための機構は、分子イオンM+を形成するための光子吸収および電子放出である。光子エネルギーは、典型的にはイオン化電位を若干上回るため、分子イオンは解離を受けにくい。多くの場合、クロマトグラフィーの必要なく試料を分析することが可能であって、したがって、大幅な時間および費用を節約するであろう。水蒸気またはプロトン性溶媒の存在下で、分子イオンは、Hを抽出し、MH+を形成可能である。これは、Mが高プロトン親和力を有する場合に生じる傾向にある。これは、M+とMH+との和が一定であるため、定量の正確度に影響を及ぼさない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は、通常、MH+として観察されるが、一方、ナフタレンまたはテ
ストステロン等の非極性化合物は、通常、M+を形成する。例えば、Robb et al.,Atmospheric pressure photoionization:An ionization method for liquid chromatography−mass spectrometry.Anal.Chem.72(15):3653−59(2000)を参照されたい。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「誘導結合プラズマ」または「ICP」とは、大部分の元素が原子化およびイオン化されるように、十分な高温において、試料が部分的にイオン化されたガスと相互作用する方法を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「電界脱離」とは、不揮発性試験試料がイオン化表面上に定置され、強電界を使用して、検体イオンを生成する方法を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「脱離」とは、表面からの検体の除去および/または気相中への検体の流入を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「定量化限界」、「定量限界」、または「LOQ」とは、測定が定量的に有意義となる点を指す。このLOQにおける検体応答は、20%の精度および80%乃至120%の正確度によって、同定し、分離し、再現することができる。定量上限とは、検体応答の定量化可能な線形上限範囲を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「検出限界」または「LOD」とは、測定値がそれに付随する不確定性を上回る点である。LODは、任意単位で、ゼロ濃度から3標準偏差(SD)として定義される。
【0049】
本明細書で使用される場合、イオンの質量の測定以外の定量的測定を参照する際の用語「約」とは、表示値+/−10%を指す。質量分析装置は、所与の検体の質量を判定する際、若干変動し得る。イオンの質量またはイオンの質量/電荷比の文脈においては、用語「約」とは+/−0.5の原子質量単位を指す。
【0050】
上述の発明の開示は非限定的であって、本発明の他の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態および請求項から明白となるであろう。