特許第6396528号(P6396528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6396528
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】水力機械の可動羽根操作システム
(51)【国際特許分類】
   F03B 11/00 20060101AFI20180913BHJP
   F03B 3/14 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   F03B11/00 C
   F03B3/14 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-60094(P2017-60094)
(22)【出願日】2017年3月24日
【審査請求日】2018年2月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】森 淳二
(72)【発明者】
【氏名】中薗 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】博多屋 龍司
(72)【発明者】
【氏名】稲田 浩也
(72)【発明者】
【氏名】今村 謙一
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−13443(JP,U)
【文献】 特開2016−156349(JP,A)
【文献】 特開平7−270148(JP,A)
【文献】 実開昭59−64480(JP,U)
【文献】 特開2008−57362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/14
F03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力機械の回転主軸とともに回転する可動羽根の開度を調整する水力機械の可動羽根操作システムであって、
前記可動羽根に連結されたピストンと、前記ピストンによって区画された第1シリンダ室および第2シリンダ室と、を有し、前記回転主軸内に設けられた油圧シリンダと、
前記第1シリンダ室および前記第2シリンダ室のいずれか一方に加圧された操作油を選択的に供給する双方向ポンプと、
前記双方向ポンプを駆動するポンプ駆動モータと、
前記ポンプ駆動モータを制御する制御部と、
前記水力機械内に設けられるとともに前記回転主軸を回転可能に連結し、前記双方向ポンプから前記第1シリンダ室および前記第2シリンダ室に供給される操作油が通過するオイルヘッドと、
前記第1シリンダ室および前記第2シリンダ室に供給する操作油を貯留する集油タンクと、を備え、
前記双方向ポンプ、前記ポンプ駆動モータ前記制御部および前記集油タンクは、前記水力機械の外部に設置され
前記双方向ポンプと前記オイルヘッドは、前記第1シリンダ室に連通した第1配管と、前記第2シリンダ室に連通した第2配管と、によって連結され、
前記第1配管と前記第2配管とは、バイパスラインによって連通し、
前記バイパスラインに、前記集油タンクから延びる補給ラインが連通し、
前記バイパスラインのうち、前記補給ラインとの連通点よりも前記第1配管の側に、前記第1配管と前記集油タンクとの間の操作油の流れを制御する第1の弁が設けられ、前記連通点よりも前記第2配管の側に、前記第2配管と前記集油タンクとの間の操作油の流れを制御する第2の弁が設けられている、水力機械の可動羽根操作システム。
【請求項2】
前記第1配管および前記第2配管は、前記水力機械の内部点検を行うための点検口を通るように配置されている、請求項に記載の水力機械の可動羽根操作システム。
【請求項3】
前記第1配管に、第1カウンターバランス弁が設けられ、
前記第2配管に、第2カウンターバランス弁が設けられている、請求項1または2に記載の水力機械の可動羽根操作システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記ポンプ駆動モータの回転速度指令値を発信する制御指令部と、前記制御指令部から発信された前記回転速度指令値に応じた電力を前記ポンプ駆動モータに供給するアンプと、を有し、
前記アンプは、前記可動羽根の開度位置検出値と前記可動羽根の開度位置指令値との偏差が所定値よりも大きい場合、前記ポンプ駆動モータの回転速度を増大させる切替機能を有している、請求項1乃至のいずれか一項に記載の水力機械の可動羽根操作システム。
【請求項5】
記集油タンクと前記オイルヘッドとを連結した回収配管を更に備え、
前記回収配管は、前記オイルヘッド内の操作油の一部を、前記集油タンクに回収する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水力機械の可動羽根操作システム。
【請求項6】
操作油を浄化する活線浄油機を更に備えた、請求項に記載の水力機械の可動羽根操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、水力機械の可動羽根操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水力機械には、発電機を回転駆動するために水流から力を受けるランナベーンが設けられている。バルブ水車やカプラン水車等の水力機械では、ランナベーンは、その開度が調整可能に構成されている。このようなランナベーンの開度を調整するために、可動羽根操作システムが設けられている。この可動羽根操作システムは、ランナに流入する水流の流量を調整するために設けられるガイドベーンの開度調整にも用いることができる。
【0003】
可動羽根操作システムの一例としては、圧油タンクとコンプレッサとを備えた可動羽根操作システムが知られている。この可動羽根操作システムでは、コンプレッサによって圧油タンク内の操作油の圧力が上昇し、圧油タンク内の加圧された操作油が、油圧シリンダに供給されて、可動羽根の開度の調整が行われる。圧油タンクやコンプレッサなどの構成部品は、水力機械本体(例えば、バルブ水車のバルブ)の外部に設置されている。
【0004】
しかしながら、このような圧油タンクを備えた可動羽根操作システムでは、操作油の使用量が増大する。このため、万が一の漏油の場合には、漏油量が多くなり、環境には好ましくないという懸念がある。
【0005】
そこで、中小容量の水力機械では、電動サーボモータを駆動部として用いる電動サーボ式の可動羽根操作装置が知られている。この場合、操作油の使用量を低減することができるため、万が一の漏油の場合であっても、漏油量を低減することができ、環境に配慮することができる。
【0006】
しかしながら、この電動サーボ式の可動羽根操作装置では、電動サーボモータと可動羽根とが、特殊部品となるボールねじを介して連結される。このため、故障等によるボールねじの交換の際には、多くの時間を要していた。
【0007】
そこで、ガイドベーン用として、電動サーボ式の可動羽根操作装置の代わりに、汎用品で構成されている直接加圧式の可動羽根操作システムが用いられるようになってきている。直接加圧式の可動羽根操作システムでは、上述した圧油タンクを用いることなく、油圧シリンダに、ポンプ等により加圧された操作油を直接的に供給する。このため、操作油の使用量を低減することができる。
【0008】
しかしながら、ランナベーンの油圧シリンダ(油圧サーボモータ)は、ランナと共に回転する回転主軸内に設けられている。このため、ランナベーン用として直接加圧式の可動羽根操作システムを用いる場合には、油圧シリンダに加圧された操作油を供給するためのポンプ等を含むランナベーン制御装置を、水力機械本体内に設けて、回転主軸に近づけて設置される。
【0009】
このため、上述した圧油タンク等を用いた可動羽根操作システムを、直接加圧式の可動羽根操作システムに改修する場合には、水力機械本体内にランナベーン制御装置を設置することになり、水力機械本体が大幅に改造される。この場合、可動羽根操作システムの改修量および作業時間が増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−303301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、既設の可動羽根操作システムの改修を容易に行うことができる水力機械の可動羽根操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施の形態による水力機械の可動羽根操作システムは、水力機械の回転主軸とともに回転する可動羽根の開度を調整する。この可動羽根操作システムは、回転主軸内に設けられた油圧シリンダと、双方向ポンプと、双方向ポンプを駆動するポンプ駆動モータと、ポンプ駆動モータを制御する制御部と、水力機械内に設けられたオイルヘッドと、を備えている。油圧シリンダは、可動羽根に連結されたピストンと、ピストンによって区画された第1シリンダ室および第2シリンダ室と、を有している。双方向ポンプは、第1シリンダ室および第2シリンダ室のいずれか一方に加圧された操作油を選択的に供給する。オイルヘッドは、回転主軸を回転可能に連結し、双方向ポンプから第1シリンダ室および第2シリンダ室に供給される操作油が通過するように構成されている。双方向ポンプ、ポンプ駆動モータおよび制御部は、水力機械の外部に設置されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、既設の可動羽根操作システムの改修を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施の形態における水力機械の可動羽根操作システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、図1のオイルヘッドを拡大して示す模式的な構造図である。
図3図3は、図1のランナベーン制御装置の詳細構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態における水力機械の可動羽根操作システムについて説明する。ここでは、水力機械の一例として、バルブ水車を例にとって説明する。
【0016】
まず、図1を用いて、バルブ水車10について説明する。
【0017】
バルブ水車10は、図示しない上池から流水を導く流水路内に設置されている。流水路は、土木構造物として形成された流路壁1によって画定されている。本実施の形態では、流路壁1は、鉛直方向に延びており、図1に示すバルブ水車10は、立軸バルブ水車となっている。
【0018】
バルブ水車10は、バルブ11(水力機械本体)と、バルブ11の下流端部に回転可能に設けられたランナ12と、を備えている。ランナ12は、ランナボス13と、ランナボス13に保持された複数のランナベーン14(可動羽根)と、を含んでいる。ランナベーン14は、ランナボス13に対して回動可能になっており、ランナベーン14の開度が調整可能になっている。バルブ11の内部には、図示しない発電機が収容されており、この発電機と、ランナボス13とが、回転主軸15を介して連結されている。このことにより、ランナベーン14が水流を受けると、ランナベーン14、ランナボス13および回転主軸15が共に回転し、この回転駆動力によって発電機が発電を行う。ランナ12から流出した流水は、図示しない下池(または放水路)に導かれる。
【0019】
なお、バルブ水車10のバルブ11と流路壁1との間には、ランナ12に流入する水が流れる流路2が形成されている。この流路2内におけるランナ12の上流側に、複数のガイドベーン16(案内羽根)が設けられている。ガイドベーン16は、ランナ12に流入する水流の流量を調整可能になっている。複数のガイドベーン16は、バルブ11に対して回動可能になっており、ガイドベーン16の開度が調整可能になっている。
【0020】
ガイドベーン16の上流には、点検口17が設けられている。この点検口17は、バルブ11から流路壁1に延びており、バルブ水車10のバルブ11の内部点検を行うためのものである。なお、点検口17は、図示しない他の部材とともにバルブ11を支持する機能も有している。
【0021】
本実施の形態による水力機械の可動羽根操作システム20は、上述したランナベーン14の開度を調整するためのものである。以下に、可動羽根操作システム20について説明する。
【0022】
図1に示すように、可動羽根操作システム20は、回転主軸15内に設けられた油圧シリンダ21(ランナベーンサーボモータ)と、油圧シリンダ21を制御するランナベーン制御装置30と、オイルヘッド50と、を備えている。本実施の形態では、ランナベーン制御装置30は、後述する双方向ポンプ31、ACサーボモータ32および制御部33を有しており、バルブ水車10のバルブ11の外部に設置されている。例えば、ランナベーン制御装置30は、バルブ水車10が設置された水力発電所の建屋に設置されることが好適である。
【0023】
油圧シリンダ21は、ランナベーン14に連結されたピストン22と、ピストン22によって区画された第1シリンダ室23aおよび第2シリンダ室23bと、を有している。このうちピストン22は、操作ロッドなどを含むランナベーン操作機構(図示せず)を介して、ランナベーン14に連結されている。本実施の形態では、油圧シリンダ21を回転主軸15内に設けて、ランナ12に近接させている。このことは、ランナベーン操作機構の構造を簡素化することができ、機械的強度の点で有利である。
【0024】
第1シリンダ室23aおよび第2シリンダ室23bには、ランナベーン制御装置30の双方向ポンプ31から供給される操作油が充填されている。第1シリンダ室23a内の操作油の圧力が、第2シリンダ室23b内の操作油の圧力よりも高くなると、ランナベーン14が第1方向(例えば開方向)に回動し、第2シリンダ室23b内の操作油の圧力が第1シリンダ室23a内の操作油の圧力よりも高くなると、ランナベーン14が第1方向とは反対の第2方向(例えば閉方向)に回動するように構成されている。
【0025】
図2に示すように、バルブ水車10の回転主軸15内には、第1シリンダ室23aに連通した第1内部経路24aが設けられているとともに、第2シリンダ室23bに連通した第2内部経路24bが設けられている。本実施の形態では、第1内部経路24aが、回転主軸15の回転中心に設けられており、第2内部経路24bが、円筒状に形成されており、第1内部経路24aの周囲に同心状に設けられている。
【0026】
図1に示すように、ランナベーン制御装置30は、第1シリンダ室23aおよび第2シリンダ室23bのいずれか一方に加圧された操作油を選択的に供給する双方向ポンプ31と、双方向ポンプ31を駆動するACサーボモータ32(ポンプ駆動モータ)と、ACサーボモータ32を制御する制御部33と、を有している。このうち双方向ポンプ31は、第1ポート31aと、第2ポート31bと、を有しており、第1ポート31aおよび第2ポート31bのいずれか一方から操作油を吸引して他方から吐出するように構成されている。
【0027】
制御部33は、ACサーボモータ32の回転速度指令値を発信するレギュレータ34(制御指令部)と、レギュレータ34から発信された回転速度指令値に応じた電力をACサーボモータ32に供給するサーボアンプ35(アンプ)と、を有している。このうちサーボアンプ35から、回転速度指令値に応じた電力がACサーボモータ32に供給されると、ACサーボモータ32は、双方向ポンプ31を正転方向または逆転方向に駆動し、双方向ポンプ31から第1シリンダ室23aおよび第2シリンダ室23bのいずれか一方に加圧された操作油が供給される。
【0028】
また、ランナベーン制御装置30は、バルブ水車10のバルブ11の外部に設置された、第1シリンダ室23aおよび第2シリンダ室23bに供給する操作油を貯留する集油タンク36と、油圧調整部80と、を更に有している。第1シリンダ室23aまたは第2シリンダ室23bに供給される操作油の油量が少ない場合には、この集油タンク36に貯留されている操作油が、後述する第1配管70aまたは第2配管70bに補給される。なお、図3に示すように、集油タンク36には、排出弁37が設けられており、集油タンク36内の操作油が排出可能になっている。また、集油タンク36には、ベント部38が設けられており、集油タンク36内の圧力が、大気圧に維持されるようになっている。このベント部38には、フィルタ39が設けられている。油圧調整部80の詳細は、後述する。
【0029】
図1に示すように、バルブ水車10のバルブ11内には、オイルヘッド50が設けられている。図1に示す形態では、オイルヘッド50は、バルブ11の上流側端部に配置されている。オイルヘッド50には、回転主軸15が回転可能に連結されており、双方向ポンプ31から第1シリンダ室23aおよび第2シリンダ室23bに供給される操作油が通過するようになっている。
【0030】
図1および図2に示すように、オイルヘッド50は、双方向ポンプ31の第1ポート31aと第1シリンダ室23aとを連通する第1ヘッド室51aと、双方向ポンプ31の第2ポート31bと第2シリンダ室23bとを連通する第2ヘッド室51bと、を有している。より詳細には、第1ヘッド室51aは、第1配管70a(後述)と第1内部経路24aとを連通し、第2ヘッド室51bは、第2配管70b(後述)と第2内部経路24bとを連通している。
【0031】
第1ヘッド室51aと第2ヘッド室51bは、回転主軸15の軸線方向(図2における上下方向)に互いに隣接して配置されている。第1ヘッド室51aには、第3ヘッド室51cが隣接して設けられており、第2ヘッド室51bには、第4ヘッド室51dが隣接して設けられている。本実施の形態では、第4ヘッド室51d、第2ヘッド室51b、第1ヘッド室51aおよび第3ヘッド室51cが、この順番で、油圧シリンダ21から遠ざかる方向に並設されている。
【0032】
図2に示すように、第1ヘッド室51aと第3ヘッド室51cとは、第1仕切部材52によって仕切られている。回転主軸15は、この第1仕切部材52を貫通しており、第1仕切部材52と回転主軸15との間には、第1シール部材53が設けられている。この第1シール部材53と第1仕切部材52との間には、隙間X1が形成されている。このことにより、第1ヘッド室51a内の操作油の一部は、第3ヘッド室51cに流入するように構成されている。しかしながら、この隙間X1は、第1シリンダ室23a内の操作油の圧力を上昇させようとする場合に当該圧力を効果的に上昇させることが可能な程度の大きさになっている。なお、隙間X1による開口は、第1シール部材53の全周ではなく、周方向の一部分に形成されており、第1シール部材53は、第1仕切部材52によって支持されている。
【0033】
また、第2ヘッド室51bと第4ヘッド室51dとは、第2仕切部材54によって仕切られている。回転主軸15は、この第2仕切部材54を貫通しており、第2仕切部材54と回転主軸15との間には、第2シール部材55が設けられている。第2シール部材55と第2仕切部材54との間には、上述した隙間X1のような操作油を意図的に通流させるための隙間は形成されていない。すなわち、第2ヘッド室51bと第4ヘッド室51dとの間で、操作油が行き来することを防止している。しかしながら、微小な隙間などから、第2ヘッド室51bから第4ヘッド室51dに操作油が流入し、第4ヘッド室51dに貯留されるようになっている。なお、第4ヘッド室51dには、第4ヘッド室51d内の操作油がバルブ11に流入することを防止するための堰62が設けられている。
【0034】
第2ヘッド室51bには、第3ヘッド室51cに連通するヘッドラインX2が連結されており、第2ヘッド室51b内の操作油の一部は、第3ヘッド室51cに流入するように構成されている。このことにより、第3ヘッド室51c内の操作油が無くなることを防止しでき、回転主軸15を回転可能に支持するために第3ヘッド室51c内に設けられたベアリング(図示せず)を操作油に浸漬させることができる。また、後述するベント部60からの空気が、第1ヘッド室51a等に混入することも防止できる。このヘッドラインX2は、第2シリンダ室23b内の操作油の圧力を上昇させる場合に当該圧力を効果的に上昇させることが可能な程度の流路断面積を有している。
【0035】
第1ヘッド室51aと第2ヘッド室51bとは、第3仕切部材56によって仕切られている。回転主軸15は、この第3仕切部材56を貫通しており、第3仕切部材56と回転主軸15との間には、第3シール部材57が設けられている。第3シール部材57と第3仕切部材56との間には、上述した隙間X1やヘッドラインX2のような操作油を意図的に通流させるための隙間は形成されていない。すなわち、第1ヘッド室51aと第2ヘッド室51bとの間で、操作油が行き来することを防止している。
【0036】
図1に示すように、オイルヘッド50には、ランナベーン14の開度位置を検出する開度位置検出器58が設けられている。この開度位置検出器58で検出されたランナベーン14の開度位置検出値は、上述したレギュレータ34に送信される。レギュレータ34は、図示しない制御装置から送信されるランナベーン14の開度指令値から換算された開度位置指令値と、開度位置検出器58から送信されるランナベーン14の開度位置検出値との偏差を算出する。算出された偏差は、サーボアンプ35に送信され、サーボアンプ35は、この偏差が所定値よりも大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合、ACサーボモータ32の回転速度を増大させる切替機能を有している。
【0037】
また、オイルヘッド50には、第3ヘッド室51c内の操作油の油面を検出する油面検出器59が設けられている。この油面検出器59により検出された油面レベルが所定値よりも低い場合には、後述する第1配管70aまたは第2配管70b内に、集油タンク36から操作油が補給されることが好適である。このことにより、油面の低下で第1配管70aに、第3ヘッド室51c内の空気が混入することを防止することができる。また、オイルヘッド50には、第3ヘッド室51cの内部と、大気とを連通するベント部60が設けられており、第3ヘッド室51c内の圧力が大気圧に維持されるようになっている。このベント部60には、フィルタ61が設けられている。
【0038】
双方向ポンプ31とオイルヘッド50は、第1配管70aおよび第2配管70bによって連結されている。このうち第1配管70aは、双方向ポンプ31の第1ポート31aとオイルヘッド50の第1ヘッド室51aとを連通している。すなわち、第1配管70aは、バルブ11内に設けられたオイルヘッド50の第1ヘッド室51aから、バルブ11の外部に延び、双方向ポンプ31の第1ポート31aに連通している。
【0039】
同様に、第2配管70bは、双方向ポンプ31の第2ポート31bとオイルヘッド50の第2ヘッド室51bとを連通している。すなわち、第2配管70bは、バルブ11内に設けられたオイルヘッド50の第2ヘッド室51bから、バルブ11の外部に延び、双方向ポンプ31の第2ポート31bに連通している。このようにして、双方向ポンプ31の第1ポート31aが、第1ヘッド室51aを介して第1シリンダ室23aに連通するとともに、第2ポート31bが、第2ヘッド室51bを介して第2シリンダ室23bに連通している。
【0040】
なお、第1配管70aおよび第2配管70bは、上述した点検口17を通るように配置してもよい。この場合、第1配管70aおよび第2配管70bが、水流に曝されることを回避でき、配管70a、70bの構造を簡素化することができ、機械的強度の点で有利である。また、第1配管70aおよび第2配管70bの各々は、複数の配管をつなぎ合わせて構成してもよい。
【0041】
図1に示すように、第1配管70aには、第1カウンターバランス弁71aが設けられている。この第1カウンターバランス弁71aは、オイルヘッド50の第1ヘッド室51a内の操作油の圧力低下を防止するためのものである。より具体的には、第1カウンターバランス弁71aは、双方向ポンプ31の第1ポート31aから第1ヘッド室51aに向かう方向の操作油の流れを許容するが、第1ヘッド室51aから第1ポート31aに向かう方向の操作油の流れを阻止するように構成されている。このことにより、第1ヘッド室51a内の操作油の圧力が低下すると、双方向ポンプ31から第1ヘッド室51aに操作油が流れて、当該圧力を上昇させる。このことにより、第1ヘッド室51a内の操作油の圧力が一定圧力以上となるように維持されている。また、第1カウンターバランス弁71aは、第1ヘッド室51a内の操作油の圧力が所定値以上に上昇した場合には、第1ヘッド室51aから双方向ポンプ31に向かう方向の操作油の流れを許容する。なお、本実施の形態では、第1カウンターバランス弁71aおよび第2カウンターバランス弁71bは、バルブ水車10のバルブ11の外部に設置されているとともに、ランナベーン制御装置30の外部に設置されている。
【0042】
同様にして、第2配管70bには、第2カウンターバランス弁71bが設けられている。この第2カウンターバランス弁71bは、第1カウンターバランス弁71aと同様の機能を有しており、ここでは詳細な説明は省略する。
【0043】
図1に示すように、集油タンク36とオイルヘッド50とは、回収配管72によって連結されている。この回収配管72は、バルブ11内に設けられたオイルヘッド50の第3ヘッド室51cおよび第4ヘッド室51dから、バルブ11の外部に延び、集油タンク36に連通している。そして、回収配管72は、第3ヘッド室51c内の操作油と第4ヘッド室51d内の操作油を集油タンク36に回収する。この回収配管72は、第1配管70aおよび第2配管70bと同様に、点検口17を通るように配置されていてもよい。
【0044】
集油タンク36に、貯留した操作油を循環させる循環配管73が連結されている。この循環配管73には、循環ポンプ74と活線浄油機75が設けられている。このうち活線浄油機75は、循環配管73を通過する操作油を浄化するように構成されている。なお、図3においては、図面を明瞭にするために、循環配管73は省略している。
【0045】
次に、図3を用いてランナベーン制御装置30の油圧調整部80について、より詳細に説明する。
【0046】
油圧調整部80は、第1配管70aの側の系統における操作油の圧力、および第2配管70bの側の系統における操作油の圧力を調整する。すなわち、可動羽根操作システム20の運転中、第1配管70aの側の系統内の操作油の油量が低減したり、第2配管70bの側の系統内の操作油の油量が低減したりする。油量が低減すると、操作油の圧力の低下を招く。このことに対処するために、本実施の形態によるランナベーン制御装置30は、油圧調整部80を有している。
【0047】
図3に示すように、油圧調整部80は、筐体81と、筐体81内に設けられた第1メインライン82aおよび第2メインライン82bと、を含んでいる。
【0048】
第1メインライン82aは、第1配管70aと双方向ポンプ31の第1ポート31aとを連通し、第2メインライン82bは、第2配管70bと双方向ポンプ31の第2ポート31bとを連通している。第1メインライン82aと第2メインライン82bは、第1バイパスライン83、第2バイパスライン84および第3バイパスライン85によって連通している。第1バイパスライン83には、第1チェック弁86aおよび第2チェック弁86bが設けられている。第2バイパスライン84には、第1リリーフ弁87aおよび第2リリーフ弁87bが設けられている。第3バイパスライン85には、第1パイロットチェック弁88aおよび第2パイロットチェック弁88bが設けられている。
【0049】
第1バイパスライン83、第2バイパスライン84および第3バイパスライン85には、集油タンク36から延びる補給ライン89が連通している。この補給ライン89は、集油タンク36からの操作油を、第1バイパスライン83のうちの第1チェック弁86aと第2チェック弁86bとの間の部分、第2バイパスライン84のうちの第1リリーフ弁87aと第2リリーフ弁87bとの間の部分、第3バイパスライン85のうちの第1パイロットチェック弁88aと第2パイロットチェック弁88bとの間の部分に、供給するように構成されている。
【0050】
上述した第1チェック弁86aは、第1メインライン82aから集油タンク36に向かう方向の操作油の流れを阻止するが、集油タンク36から第1メインライン82aに向かう方向の操作油の流れを許容するように構成されている。このことにより、第1メインライン82a内の操作油の圧力が、集油タンク36内の操作油の圧力(すなわち、大気圧)よりも低下した場合に、集油タンク36から第1メインライン82aに操作油が補給される。同様にして、上述した第2チェック弁86bは、第2メインライン82b内の操作油の圧力が、集油タンク36内の操作油の圧力よりも低下した場合に、集油タンク36から第2メインライン82bに操作油が補給される。
【0051】
上述した第1リリーフ弁87aは、第1メインライン82a内の操作油の圧力が所定値以上に上昇した場合に、第1メインライン82aから集油タンク36に向かう方向の操作油の流れを許容するように構成されている。このことにより、第1メインライン82a内の操作油の圧力が過大に上昇することを防止している。同様にして、上述した第2リリーフ弁87bは、第2メインライン82b内の操作油の圧力が所定値以上に上昇した場合に、第2メインライン82bから集油タンク36に向かう方向の操作油の流れを許容するように構成されており、第2メインライン82b内の操作油の圧力が過大に上昇することを防止している。
【0052】
上述した第1パイロットチェック弁88aおよび第2パイロットチェック弁88bは、第1メインライン82a内の操作油の圧力と第2メインライン82b内の操作油の圧力との圧力比に応じて、第3バイパスライン85における操作油の流れを許容するように構成されている。より具体的には、第1パイロットチェック弁88aは、基本的に、第1メインライン82aから集油タンク36に向かう操作油の流れを阻止するが、第2メインライン82b内の圧力が上昇し、第1メインライン82a内の圧力に対する第2メインライン82bの圧力の比が大きくなった場合には、第1メインライン82aから集油タンク36に向かう操作油の流れを許容する。一方、第1パイロットチェック弁88aは、第2メインライン82bから第1メインライン82aに向かう方向の操作油の流れを許容する。なお、この第1パイロットチェック弁88aは、上述した第1チェック弁86aと同様の機能も有している。
【0053】
同様に、第2パイロットチェック弁88bは、基本的に、第2メインライン82bから集油タンク36に向かう操作油の流れを阻止するが、第1メインライン82a内の圧力が上昇し、第2メインライン82bの圧力に対する第1メインライン82aの圧力の比が大きくなった場合には第2メインライン82bから集油タンク36に向かう操作油の流れを許容する。一方、第2パイロットチェック弁88bは、第1メインライン82aから第2メインライン82bに向かう方向の操作油の流れを許容する。なお、この第2パイロットチェック弁88bは、上述した第2チェック弁86bと同様の機能も有している。
【0054】
第1メインライン82aには、止め弁90aを介して圧力計91aが連結されている。この圧力計91aは、第1メインライン82a内の操作油の圧力を表示するためのものである。同様に、第2メインライン82bには、止め弁90bを介して圧力計91bが連結されている。この圧力計91bは、第2メインライン82b内の操作油の圧力を表示するためのものである。
【0055】
第1メインライン82aと双方向ポンプ31の第1ポート31aとは、第1連通ライン100aによって連通されている。この第1連通ライン100aには、排出弁101aが設けられており、第1配管70aの側の系統内の操作油を排出可能に構成されている。同様に、第3メインラインと双方向ポンプ31の第2ポート31bとは、第2連通ライン100bによって連通されている。この第2連通ライン100bには、排出弁101bが設けられており、第2配管70bの側の系統内の操作油を排出可能に構成されている。
【0056】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用効果について説明する。
【0057】
ランナベーン14を第1方向に回動させる場合、レギュレータ34からサーボアンプ35に回転速度指令値が発信され、この回転速度指令値に応じた電力が、サーボアンプ35からACサーボモータ32に供給される。すると、ACサーボモータ32は、双方向ポンプ31の第2ポート31bから操作油を吸引して第1ポート31aから操作油を吐出するように、双方向ポンプ31を駆動する。このことにより、双方向ポンプ31の第1ポート31aから、第1メインライン82a、第1配管70a、第1ヘッド室51aおよび第1内部経路24aを介して油圧シリンダ21の第1シリンダ室23aに加圧された操作油が供給される。すなわち、第1シリンダ室23a内の操作油の圧力が上昇する。このことにより、上昇した操作油の圧力を受けてピストン22が駆動されて、図示しないランナベーン操作機構を介してランナベーン14を第1方向に回動させ、ランナベーン14は、所望の開度位置に位置付けられる。
【0058】
第1ヘッド室51a内の操作油の圧力が上昇している間、開度位置検出器58によりランナベーン14の開度位置が検出され、ランナベーン14の開度位置検出値が、レギュレータ34に送信される。レギュレータ34は、この開度位置検出値と、図示しない制御装置から送信されるランナベーン14の開度指令値から換算された開度位置指令値との偏差を算出する。サーボアンプ35は、レギュレータ34によって算出された偏差が所定値よりも大きいと判断した場合に、切替機能によってACサーボモータ32の回転速度を増大させる。このことにより、双方向ポンプ31の操作油の吐出力を高めることができる。このため、油圧シリンダ21が操作油から受ける圧力を高めることができ、ランナベーン14の第1方向への回動速度を増大させることができる。
【0059】
また、この間、第1ヘッド室51a内の操作油の一部は、第3ヘッド室51cに流入する。第3ヘッド室51cに流入した操作油は、回収配管72を通過して集油タンク36に回収される。集油タンク36に回収された操作油は、後述するように、所定の場合に第1配管70aの側の系統または第2配管70bの側の系統に補給される。このことにより、操作油を可動羽根操作システム20内で循環させることができ、操作油の劣化を抑制できる。
【0060】
一方、ランナベーン14を第2方向に回動させる場合、レギュレータ34からサーボアンプ35に回転速度指令値が発信され、この回転速度指令値に応じた電力が、サーボアンプ35からACサーボモータ32に供給される。すると、ACサーボモータ32は、双方向ポンプ31の第1ポート31aから操作油を吸引して第2ポート31bから操作油を吐出するように、双方向ポンプ31を駆動する。このことにより、双方向ポンプ31の第2ポート31bから、第2メインライン82b、第2配管70b、第2ヘッド室51bおよび第2内部経路24bを介して油圧シリンダ21の第2シリンダ室23bに加圧された操作油が供給される。すなわち、第2シリンダ室23b内の操作油の圧力が上昇する。このことにより、操作油の圧力を受けてピストン22が駆動されて、ランナベーン14を、第1方向とは反対の第2方向に回動させ、ランナベーン14は、所望の開度位置に位置付けられる。
【0061】
第2ヘッド室51b内の操作油の圧力が上昇している間、開度位置検出器58によりランナベーン14の開度位置が検出され、ランナベーン14の開度位置検出値が、レギュレータ34に送信される。レギュレータ34は、この開度位置検出値と、図示しない制御装置から送信されるランナベーン14の開度指令値から換算された開度位置指令値との偏差を算出する。サーボアンプ35は、レギュレータ34によって算出された偏差が所定値よりも大きいと判断した場合に、切替機能によってACサーボモータ32の回転速度を増大させる。このことにより、双方向ポンプ31の操作油の吐出力を高めることができる。このため、油圧シリンダ21が操作油から受ける圧力を高めることができ、ランナベーン14の第2方向への回動速度を増大させることができる。
【0062】
また、この間、第2ヘッド室51b内の操作油の一部は、第4ヘッド室51dに流入する。第4ヘッド室51dに流入した操作油は、回収配管72を通過して集油タンク36に回収される。集油タンク36に回収された操作油は、後述するように、所定の場合に第1配管70aの側の系統または第2配管70bの側の系統に補給される。このことにより、操作油を可動羽根操作システム20内で循環させることができ、操作油の劣化を抑制できる。
【0063】
可動羽根操作システム20の運転中、オイルヘッド50の第1ヘッド室51a内の操作油の圧力が低下した場合には、第1カウンターバランス弁71aが、双方向ポンプ31の第1ポート31aから第1ヘッド室51aに向かう方向の操作油の流れを許容する。このことにより、第1ヘッド室51a内の操作油の圧力を上昇させて一定圧力以上となるように維持することができ、第1ヘッド室51aや、第1ヘッド室51aに連通した第1配管70a、第1内部経路24aなどに、空気が混入して操作性が悪化することを防止できる。
【0064】
一方、オイルヘッド50の第2ヘッド室51b内の操作油の圧力が低下した場合には、第2カウンターバランス弁71bが、双方向ポンプ31の第2ポート31bから第2ヘッド室51bに向かう方向の操作油の流れを許容する。このことにより、第2ヘッド室51b内の操作油の圧力を上昇させて一定圧力以上となるように維持することができ、第2ヘッド室51bや、第2ヘッド室51bに連通した第2配管70bや第2内部経路24bなどに、空気が混入して操作性が悪化することを防止できる。
【0065】
ここで、集油タンク36に貯留された操作油の一部は、循環ポンプ74によって循環配管73に吸引されて循環する。この間、操作油は、活線浄油機75によって浄化される。このため、集油タンク36に貯留された操作油を浄化することができ、操作油の汚染による操作性が低下することを抑制できる。また、活線浄油機75を、第1配管70aや第2配管70bではなく、循環配管73に設けることにより、活線浄油機75の不具合によって油圧シリンダ21の操作が阻害されることを回避できる。
【0066】
次に、油圧調整部80の作用効果について説明する。
【0067】
例えば、第1メインライン82a内の操作油の圧力に対する第2メインライン82b内の操作油の圧力の比が大きい場合には、第1パイロットチェック弁88aは、第1メインライン82aから集油タンク36に向かう操作油の流れを許容する。このことにより、第1メインライン82a内の操作油が集油タンク36に流れ、第1メインライン82a内の操作油の圧力が異常上昇することを防止する。すなわち、双方向ポンプ31の第1ポート31aから操作油を吸引して第2ポート31bから操作油を吐出する場合に、第1配管70aの側の容量が第2配管70bの側の容量よりも大きいと、第1配管70aの側の容量と第2配管70bの側の容量との容量差分の操作油を集油タンク36に送らない限り、油圧シリンダ21のピストン22は動作しなくなり得る。このことにより、第1メインライン82a内の操作油の圧力が異常に上昇し得る。第1パイロットチェック弁88aは、第1配管70aの側の容量が第2配管70bの側の容量よりも大きいときにピストン22を動作させるために、第1配管70aの側の容量と第2配管70bの側の容量との容量差分の操作油を集油タンク36に送る流路となる。また、ピストン22が動作することで、このような第1メインライン82a内の操作油の圧力上昇を効果的に防止することができる。
【0068】
一方、第2メインライン82b内の操作油の圧力に対する第1メインライン82a内の操作油の圧力の比が大きい場合には、第2パイロットチェック弁88bは、第2メインライン82bから集油タンク36に向かう操作油の流れを許容する。このことにより、第2メインライン82b内の操作油が集油タンク36に流れ、第2メインライン82b内の操作油の圧力が異常上昇することを防止する。すなわち、双方向ポンプ31の第2ポート31bから操作油を吸引して第1ポート31aから操作油を吐出する場合に、第2配管70bの側の容量が第1配管70aの側の容量よりも大きいと、第2配管70bの側の容量と第1配管70aの側の容量との容量差分の操作油を集油タンク36に送らない限り、油圧シリンダ21のピストン22は動作しなくなり得る。このことにより、第2メインライン82b内の操作油の圧力が異常に上昇し得る。第2パイロットチェック弁88bは、第2配管70bの側の容量が第1配管70aの側の容量よりも大きいときにピストン22を動作させるために、第2配管70bの側の容量と第1配管70aの側の容量との容量差分の操作油を集油タンク36に送る流路となる。また、ピストン22が動作することで、このような第2メインライン82b内の操作油の圧力上昇を効果的に防止することができる。
【0069】
このようにして、油圧調整部80により、第1メインライン82a内の操作油の圧力と、第2メインライン82b内の操作油の圧力とを調整することができる。
【0070】
また、油圧調整部80の第1メインライン82a内の操作油の圧力が、大気圧よりも低下した場合には、集油タンク36に貯留されている操作油が、補給ライン89から第1バイパスライン83に供給され、第1チェック弁86aを通過して第1メインライン82aに供給される。このことにより、第1メインライン82a内に操作油を補給することができ、第1メインライン82a内の操作油の圧力が大気圧よりも低下することを防止できる。この際、補給ライン89から第3バイパスライン85にも操作油が供給され、第1パイロットチェック弁88aを通過して第1メインライン82aに操作油を供給することもできる。
【0071】
同様に、油圧調整部80の第2メインライン82b内の操作油の圧力が、大気圧よりも低下した場合には、集油タンク36に貯留されている操作油が、補給ライン89から第1バイパスライン83に供給され、第2チェック弁86bを通過して第2メインライン82bに供給される。このことにより、第2メインライン82b内に操作油を補給することができ、第2メインライン82b内の操作油の圧力が大気圧よりも低下することを防止できる。この際、補給ライン89から第3バイパスライン85にも操作油が供給され、第2パイロットチェック弁88bを通過して第2メインライン82bに操作油を供給することもできる。
【0072】
ところで、本実施の形態によれば、既設で用いられていた圧油タンクを用いることなく、双方向ポンプ31によって、油圧シリンダ21に加圧された操作油を直接的に供給することができる。このことにより、可動羽根操作システム20で使用される操作油の使用量を低減することができる。この場合、万が一の漏油の場合であっても、漏油量を少なくすることができ、環境負荷を低減することができる。また、本実施の形態のように双方向ポンプ31を用いて油圧シリンダ21に加圧された操作油を直接的に供給する場合、圧油タンクのように貯留された操作油を加圧する場合に比べて、油圧シリンダ21の駆動に要する電力を低減することができる。このため、可動羽根操作システム20で消費されるエネルギを低減し、省エネルギ化に貢献することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、油圧シリンダ21およびオイルヘッド50は、バルブ水車10のバルブ11内に設けられているが、双方向ポンプ31、ACサーボモータ32および制御部33を有するランナベーン制御装置30は、バルブ水車10のバルブ11の外部に設置されている。このことにより、バルブ水車10の外部に圧油タンクやコンプレッサ等が設置された既設の可動羽根操作システムを、本実施の形態による可動羽根操作システム20に改修する場合、圧油タンクやコンプレッサなどを、本実施の形態によるランナベーン制御装置30に交換すればよい。この場合、バルブ水車10のバルブ11内の更新作業を不要にすることができる。このため、操作油の使用料を低減することができる可動羽根操作システム20へ、既設の可動羽根操作システムを容易に改修することができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、上述したように、双方向ポンプ31、ACサーボモータ32および制御部33を有するランナベーン制御装置30は、バルブ水車10のバルブ11の外部に設置されている。このことにより、ランナベーン制御装置30の操作や点検を、バルブ11内ではなく、バルブ11の外部で行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0075】
なお、上述した本実施の形態においては、第1カウンターバランス弁71aおよび第2カウンターバランス弁71bが、ランナベーン制御装置30の外部に設置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1カウンターバランス弁71aおよび第2カウンターバランス弁71bは、ランナベーン制御装置30内に組み込まれていてもよい。
【0076】
また、上述した本実施の形態においては、集油タンク36に連結された循環配管73に活線浄油機75が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、活線浄油機75は、回収配管72に設けられていてもよい。この場合には、回収配管72に図示しないポンプを設けて、オイルヘッド50の第3ヘッド室51cおよび第4ヘッド室51dから操作油を吸引させることが好適である。このポンプは、油面検出器59により検出される第3ヘッド室51c内の操作油の油面に基づいて駆動されることが好ましい。例えば、ポンプは、検出される油面が所定の上限値よりも高い場合に駆動され、所定の下限値よりも低い場合に停止させることが好ましい。
【0077】
以上述べた実施の形態によれば、既設の可動羽根操作システムの改修を容易に行うことができる。
【0078】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0079】
なお、上述した実施の形態では、水力機械の一例として立軸バルブ水車を例にとって説明したが、このことに限られることはなく、横軸バルブ水車にも可動羽根操作システムを適用することができ、更には、バルブ水車以外のカプラン水車等の水力機械にも、可動羽根操作システムを適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10:バルブ水車、14:ランナベーン、15:回転主軸、17:点検口、20:可動羽根操作システム、21:油圧シリンダ、22:ピストン、23a:第1シリンダ室、23b:第2シリンダ室、31:双方向ポンプ、32:ACサーボモータ、33:制御部、34:レギュレータ、35:サーボアンプ、36:集油タンク、50:オイルヘッド、70a:第1配管、70b:第2配管、71a:第1カウンターバランス弁、71b:第2カウンターバランス弁、72:回収配管、75:活線浄油機
【要約】
【課題】既設の可動羽根操作システムの改修を容易に行うことができる水力機械の可動羽根操作システムを提供する。
【解決手段】実施の形態による水力機械の可動羽根操作システム20は、回転主軸15内に設けられた油圧シリンダ21と、双方向ポンプ31と、ポンプ駆動モータ32と、制御部33と、水力機械10内に設けられたオイルヘッド50と、を備えている。双方向ポンプ31は、第1シリンダ室23aおよび第2シリンダ室23bのいずれか一方に加圧された操作油を選択的に供給する。オイルヘッド50は、回転主軸15を回転可能に連結し、双方向ポンプ31から第1シリンダ室23aおよび第2シリンダ室23bに供給される操作油が通過するように構成されている。双方向ポンプ31、ポンプ駆動モータ32および制御部33は、水力機械10の外部に設置されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3