特許第6396530号(P6396530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396530
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】巻回フィルム収納箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/72 20060101AFI20180913BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B65D5/72 A
   B65D83/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-63527(P2017-63527)
(22)【出願日】2017年3月28日
(62)【分割の表示】特願2013-9603(P2013-9603)の分割
【原出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-105551(P2017-105551A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000166258
【氏名又は名称】古林紙工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】堀井 貴央
(72)【発明者】
【氏名】君野 勝己
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0078346(US,A1)
【文献】 特開平06−321234(JP,A)
【文献】 特開2012−240708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/72
B65D 25/52
B65D 83/08
B65D 85/672
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回されたフィルムを収納する箱であって、前面板(5)、底面板(4)、後面板(6)および側面板(3)で形成され、上部が開口した直方体の収納室と、後面板(6)の上端縁から収納室の開口部を覆う方向に連接した開閉可能な蓋面板(2)と、蓋面板(2)の前端縁から前面板(5)を覆う方向に延出した掩蓋片(1)とを有する収納箱において、掩蓋片(1)の先端部の裏側に補強部材(9)が取り付けられており、掩蓋片(1)の先端縁(8)の両側端部の少なくとも一方に、該補強部材(9)の一部を露出させる切欠き部(7)が形成されており、該補強部材の露出部分が角部または鋸歯形状部分を有し、補強部材(9)は、該切欠き部から、掩蓋片(1)の長手方向の、該切欠き部に近い端までの区間において、掩蓋片(1)の先端縁(8)から突出しておらず、該切欠き部(7)の数は掩蓋片(1)の先端縁(8)の一方の端部につき1〜3個であることを特徴とする前記収納箱。
【請求項2】
掩蓋片(1)の先端縁(8)に鋸歯形状部分が存在しない、請求項1記載の収納箱。
【請求項3】
掩蓋片(1)の先端縁(8)が前記切欠き部(7)を除いて平坦であり、該切欠き部において該補強部材の露出部分が掩蓋片(1)の平坦な先端縁(8)から内側に引っ込んだ位置にある、請求項2記載の収納箱。
【請求項4】
切欠き部(7)が掩蓋片(1)の先端縁(8)に接する2つの点のうち、掩蓋片(1)の先端縁(8)の端に近い点(A)において、先端縁(8)と切欠き部(7)の接線がなす切欠き部の角度θが90度未満である、請求項1〜3の何れか1項記載の収納箱。
【請求項5】
掩蓋片(1)の長手方向の、切欠き部(7)よりも中央側において補強部材(9)が突出している、請求項1〜4の何れか1項記載の収納箱。
【請求項6】
巻回されたフィルムを請求項1〜の何れか1項記載の収納箱に収納した製品。
【請求項7】
フィルムがラップフィルムであり、その横方向の端部の少なくとも一方に幅0.1〜10mmにわたって微細なエンボスまたは傷を有することを特徴とする、請求項記載の製品。
【請求項8】
本明細書に記載された方法にしたがって切断ずれ量(δ)の試験を行った場合に、該フィルムの切断ずれ量(δ)が20mm以下である、請求項またはに記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、食料品販売業、飲食物提供役務等において、主として食品の包装用に汎用されているラップフィルム等のフィルムを巻回したものを収納する箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラップフィルム等のフィルムは直方体等の箱に納められて巻回フィルムとして提供されており、ここから必要分量を引出し、何らかの方法で長さ方向に対して横に切断し、使用に供される。横に切断する方法としては、箱の掩蓋片の先端縁等に配備された長尺の鋸歯によるものが最も一般的である。
【0003】
しかし、掩蓋片の先端縁に配備された鋸歯は手に触れ易く、したがって、手を怪我する等の安全性の問題があり、この問題を解決するために、鋸歯に替えて、異形の金属粉を接着したシートを切断具に用いたり(特許文献1)、巻回フィルムがその長さ方向に連続した加工傷を有し、その加工傷域と接触する箱の局部に金属片やバルカナイズド紙片等の切断補助具を設けたり(特許文献2)することが提案されている。しかし、上述した安全性の問題は依然として残っている。
【0004】
また、巻回フィルムの横方向の端部に一定間隔で切れ目を設けることにより、鋸歯等の切断具がない箱でも切れ目に沿ってフィルムを切断できる方法が提案されている(特許文献3)。しかし、従来の箱から単に鋸歯を無くしただけの箱では、フィルムのカット性が不十分である。また、箱の一部が切断具の役目を果たすため、巻回フィルムを使い切る前に上記箱の一部が傷んでしまい、フィルムの切断ができなくなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−217345号公報
【特許文献2】特開平11−124133号公報
【特許文献3】特開2001−322636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の収納箱よりも安全にかつ十分なカット性で巻回フィルムをカットすることができ、かつ収納したフィルムを使い切るまでカット性を維持することのできる巻回フィルム収納箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究した結果、従来の収納箱において、掩蓋片の裏側に補強部材を取り付け、掩蓋片の先端縁の端部に、補強部材の一部を露出させる切欠き部を形成し、上記露出部分が角Pまたは鋸歯形状部分を有するようにすることにより、上記目的を達成することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、巻回されたフィルムを収納する箱であって、前面板(5)、底面板(4)、後面板(6)および側面板(3)で形成され、上部が開口した直方体の収納室と、後面板(6)の上端縁から収納室の開口部を覆う方向に連接した開閉可能な蓋面板(2)と、蓋面板(2)の前端縁から前面板(5)を覆う方向に延出した掩蓋片(1)とを有する収納箱において、掩蓋片(1)の先端部の裏側に補強部材(9)が取り付けられており、掩蓋片(1)の先端縁(8)の両側端部の少なくとも一方に、該補強部材(9)の一部を露出させる切欠き部(7)が形成されており、該補強部材の露出部分が角部または鋸歯形状部分を有し、補強部材(9)は、該切欠き部から、掩蓋片(1)の長手方向の、該切欠き部に近い端までの区間において、掩蓋片(1)の先端縁(8)から突出していないことを特徴とする前記収納箱である。特に、本発明は、上記収納箱において、上記切欠き部(7)の数が掩蓋片(1)の先端縁(8)の一方の端部につき1〜3個であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の収納箱は、収納箱から引き出されたフィルムを、角部Pまたは鋸歯形状部分に当てることによりフィルムに切断のきっかけを与えることができ、その結果、フィルムを掩蓋片の先端縁に沿って良好なカット性で切断することができるとともに、角部Pおよび鋸歯形状部分は切欠き部内に存在するので、手が角部P等に触れて怪我をするという心配もない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の収納箱の一例を示す斜視図である。
図2図1の収納箱の掩蓋片(1)の正面図である。
図3図1の収納箱の裏面展開図の一例を示す図である。
図4】本発明の別の収納箱の掩蓋片(1)を示す正面図である。
図5図4の掩蓋片(1)を有する収納箱の裏面展開図の一例を示す図である。
図6】(a)および(b)は、別の掩蓋片(1)の部分拡大正面図である。
図7図2の掩蓋片(1)の部分拡大正面図である。
図8】引裂き強度試験を説明する図である。
図9】フィルム切断試験を説明する図である。
図10】フィルム追従試験を説明する図である。
図11】ローレット加工が施されたラップフィルムの表面を写真撮影した図である。
図12】レーザー加工が施されたラップフィルムの表面を写真撮影した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の収納箱を、図を参照して説明する。図1は、本発明の収納箱の一例を示す斜視図であり、図2は、図1の収納箱の掩蓋片(1)の正面図である。本発明の収納箱は、前面板(5)、底面板(4)、後面板(6)および側面板(3)で形成され、上部が開口した直方体の収納室と、後面板(6)の上端縁から収納室の開口部を覆う方向に連接した開閉可能な蓋面板(2)と、蓋面板(2)の前端縁から前面板(5)を覆う方向に延出した掩蓋片(1)とを有し、掩蓋片(1)の先端部の裏側に補強部材(9)が取り付けられているとともに、掩蓋片(1)の先端縁(8)の両側端部の少なくとも一方に、補強部材(9)の一部を露出させる切欠き部(7)が形成されている。補強部材(9)の露出部分(9’)は角部Pまたは鋸歯形状部分を有する。
【0012】
本発明の収納箱は、収納箱から引き出されたフィルムを、補強部材(9)の露出部分(9’)の角部Pまたは鋸歯形状部分に当てることによりフィルムに切断のきっかけを与えることができ、その結果、フィルムを掩蓋片(1)の先端縁(8)に沿って良好に切断することができる。
【0013】
図3は、図1の収納箱の裏面展開図の一例を示す図である。補強部材(9)は、図3に示されるように、掩蓋片(1)の先端部の裏側に取り付けられており、かつ、補強部材(9)の一部が、図1および2に示されるように、掩蓋片(1)の切欠き部(7)において露出するように取り付けられている。また、補強部材(9)は、切欠き部(7)から、掩蓋片(1)の長手方向の、該切欠き部に近い端までの区間において、掩蓋片(1)の先端縁(8)から突出していない。なお、図3では、補強部材(9)が掩蓋片(1)の裏面先端部のほぼ全長にわたって取り付けられているが、露出部分(9’)が存在する限り、上記先端部の一部のみに取り付けられていてもよい。
【0014】
補強部材(9)の上記露出部分(9’)は、切欠き部(7)内に角部Pまたは鋸歯形状部分を有する。図1および2は、角部(P)を有する場合であり、図4は、鋸歯形状部分を有する場合である。角部(P)は、図1および2に示されるように、切欠き部(7)において掩蓋片(1)の長手方向の中央部側から端部側の方へ補強部材(9)が露出することにより、形成される。露出部分(9’)の大きさおよび形状は、切欠き部(7)内に角部Pまたは鋸歯形状部分が形成される限り、特に制限されない。
【0015】
切欠き部(7)は、掩蓋片(1)の先端縁(8)の両側端部の一方または両方に形成されている。切欠き部(7)は、この内部に補強部材(9)が露出され、かつ露出部分が角部(P)または鋸歯形状部分を有する限り、どのような形状であってもよい。例えば、図2および4ならびに図6の(a)および(b)に示される形状が挙げられる。図6の(a)および(b)は、本発明における掩蓋片(1)の端部の別の例を示す部分拡大正面図である。図7は、図2の掩蓋片(1)の一方の端部を拡大した正面図である。切欠き部(7)は、切欠き部(7)が掩蓋片(1)の先端縁(8)に接する2つの点AおよびBのうち、掩蓋片(1)の長手方向の端に近い点Aにおいて、先端縁(8)と切欠き部(7)の接線がなす切欠き部の角度θが90度未満であるのが好ましい(図7参照)。角度θは、好ましくは10度≦θ<90度の範囲であり、より好ましくは20度≦θ≦60度、さらに好ましくは20度≦θ≦45度の範囲である。角度θが90度未満であると、箱から引き出したフィルムが切欠き部において最初に触れる箇所(点Aから切欠き部の頂点の方へ向かう部分)が、図7に示されるように傾斜しているので、フィルムをこの傾斜部分に沿ってよりスムーズに角部Pまたは鋸歯形状部分に運ぶことができ、その結果、より容易にフィルムを切断することができる。
【0016】
切欠き部(7)の数は、掩蓋片(1)の先端縁(8)の一方の端部につき、1個または2個以上である。図2は、掩蓋片(1)の先端縁(8)の一方の端部につき、切欠き部(7)が1個の場合であり、図4は2個の場合である。2個以上の場合には、収納箱から引き出されたフィルムを角部Pまたは鋸歯形状部分に当てるとき、掩蓋片(1)の長手方向の端に最も近い切欠き部(7)内の角部Pまたは鋸歯形状部分に当たり損なっても、その隣の切欠き部(7)内の角部Pまたは鋸歯形状部分に当たり得る点で好ましい。しかし、切欠き部が多すぎると、フィルムに切断のきっかけが与えられた後も、フィルムが切欠き部やその内部にある角部Pまたは鋸歯形状部分に当たり得るので、切断時に引っかかり感があり、切断のスムーズ性に欠けるという点で好ましくない。これらを考慮すると、切欠き部の数は、掩蓋片(1)の先端縁(8)の一方の端部につき1〜3個であるのが好ましく、最も好ましくは2個である。
【0017】
切欠き部(7)は、掩蓋片(1)の先端縁(8)の長さをLとしたとき、掩蓋片(1)の端からL/3までの間に角部Pまたは鋸歯状部分が存在するような位置に形成されるのが好ましい。より好ましくは、角部Pまたは鋸歯状部分が、掩蓋片(1)の端からL/4または50mmの長い方までの間に存在するような位置に切欠き部(7)が形成される。
【0018】
また、掩蓋片(1)の先端縁(8)の端に最も近い位置にある切欠き部は、この切欠き部の点Aと掩蓋片(1)の先端縁(8)の端との最短距離をbとするとき(図7参照)、bが30mm以下であるのが好ましく、より好ましくは20mm以下である。
【0019】
切欠き部(7)の大きさは、図7に示されるように、切欠き部の開口部の長さ(AとBとの距離)をw、掩蓋片(1)の先端縁(8)と切欠き部の頂点との間の距離をhとするとき、wが20mm以下であるのが好ましく、より好ましくは10mm以下である。hは20mm以下が好ましく、より好ましくは10mm以下である。
【0020】
掩蓋片(1)の先端縁の一方の端部につき、切欠き部(7)が2個以上存在するとき、それらの形状および大きさは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0021】
本発明の収納箱は、巻回フィルムの収納のために通常用いられる紙、例えば坪量400〜500g/mのコートボール紙等を使用して作ることができる。紙の坪量は、小さいと耐久性に問題が生じ易くなり、大きいとコスト高になる。従って、紙の坪量は、収納するフィルムロールの尺長から必要となる耐久性を勘案して適宜選択される。
【0022】
補強部材(9)は、収納箱の他の部分を構成するものと同じ紙で構成してもよく、あるいはカット性および箱の強度の補強の点から、膠化繊維(バルカナイズドファイバー)またはそれに樹脂を含浸させたものが好ましい。上記樹脂としては、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ユリア樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0023】
補強部材(9)は、掩蓋片(1)の先端部の裏側に接着剤等を使用して取り付けることができる。
【0024】
掩蓋片(1)の両側端部は互いに対称形であってもなくてもよい。
【0025】
さらに、本発明の収納箱は、図4に示されるように、掩蓋片(1)の長手方向の、切欠き部よりも中央側において補強部材(9)が突出していてもよい。図5は、図4の掩蓋片(1)を有する収納箱の裏面展開図の一例を示す図である。収納箱から引き出されたフィルムは、角部Pまたは鋸歯形状部分によって切断のきっかけが与えられると、その後は掩蓋片(1)の先端縁に沿って切断されるが、図4に示されるように、この先端縁よりもわずかに補強部材(9)が突出していると、フィルムは、この突出部分(9”)に沿って切断され得る。補強部材(9)が、収納箱の他の部分を構成する紙より硬質な材料で構成されているときには、フィルムを突出部分(9”)に沿ってより良好に滑らせることができ、したがって、より容易にフィルムを切断することができる。補強部材(9)が掩蓋片(1)の先端縁から突出する距離は高々5mmが好ましく、より好ましくは高々3mmである。
【0026】
補強部材(9)の突出部分(9”)は、その先端縁に沿ってフィルムがスムーズに運ばれるならばどのような形状であってもよく、例えば円弧状の先端縁を有するもの(図4参照)や台形状が挙げられる。
【0027】
本発明の収納箱は巻回したフィルム用であり、巻回したフィルムとしては、ラップフィルム、クッキングシート、アルミホイル、クラフト紙、上質紙およびトレーシングペーパー等が挙げられる。特に、引き裂き強度が0.01N以上2.0N未満のものが好ましい。上記引き裂き強度は、フィルムを引き出し方向が短辺となるように100mm×50mmの大きさに切り取り、図8に示すように、一方の短辺の両端の各々から20mmのところから垂直に長さ20mmの切込みを入れ、図8のαの部分とβの部分を、引っ張り試験機を用いて200mm/分の速度で引っ張ることにより測定される値である。引裂き強度は、より好ましくは0.1N以上1.5N未満、さらに好ましくは0.1N以上0.5N未満である。引裂き強度が0.01N未満であると、フィルムをロール状に巻いたときに剥離性に劣る場合があり、2.0N以上であると、カット性に劣る場合がある。
【0028】
ラップフィルムとしては、例えばポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメチルペンテン−1およびポリアミド等から選ばれる樹脂からなる単層又は多層のフィルムで全厚みが3〜30μm、典型的には5〜15μm程度のもの、が好適であり、ラップフィルムの長さ方向および横方向の引張破断力がいずれもが1〜15N、より好ましくは1〜10Nであるのが好ましい。上記引張破断力は、JIS K−7127に従い、フィルムの引き出し方向が長辺となるようにフィルムを10mm×150mmの大きさに切り取って試験片とし、試験速度500mm/分で測定される値である。
【0029】
特に、本発明の収納箱は、フィルムの横方向の端部の強度が低くかつ伸びが小さいフィルムの収納に好適に使用できる。このようなフィルムは、具体的には、フィルムの横方向の端部から50mmの範囲において、フィルムの引き出し方向が長辺となるようにフィルムを10mm×50mmの大きさに切り取って試験片としたときのJIS K7127に基づく引張り試験における伸びが70%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下であり、かつ端部破断力が1〜20N、好ましくは1〜10N、より好ましくは1〜7N、さらに好ましくは1〜5Nであるフィルムである。なお、試験速度は50mm/分である。このようなフィルムは、例えば、フィルムの横方向の端部の少なくとも一方に、例えば0.1〜10mmの幅で、ローレット加工やレーザー加工を施すことにより得ることができる。
【0030】
ローレット加工は、フィルムを金属製等の彫刻ロールと金属製や高硬度のゴム等の彫刻ロール又は平滑ロールとで挟み込むことにより、あるいはフィルムの巻に該彫刻ロールを押し当てることにより微細なエンボスや傷を入れる加工である。加工条件はフィルムの材質により適宜選択されるべきであるが、通常、押圧は10〜50N/m程度である。ローレット加工が施されたフィルム表面を写真撮影したものを図11に示す。ローレット加工は、原反製膜時に、スリット加工時に、またはスリット加工後に独立の工程を設けて施すことができる。ローレット加工は、フィルムの横方向の端部の少なくとも一方に施されるが、どちらの側からでも切断出来るように、両方の端部に施すことがより好ましい。加工幅は通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜6mmである。
【0031】
レーザー加工はレーザーの照射熱により、フィルムを極めて微細な領域において溶融し、そこに凹形状や孔を設ける加工である。使用するレーザーは、特に制限されない。例えば、炭酸ガスレーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザーおよびエキシマレーザーなどのガスレーザーや、クロム添加ルビー結晶を媒質に使用したルビーレーザー、チタン添加サファイア結晶を媒質に使用したチタンサファイアレーザー、YAG結晶中のイットリウムを他の希土類元素で置換した種々のYAGレーザーおよびネオジム添加YAGを用いたNd:YAGレーザーなどの固体レーザーが挙げられる。また、液体レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー、金属蒸気レーザー、化学レーザー等の公知のレーザーを使用することができる。照射出力は、0.5〜20W程度であり、フィルムの肉厚や加工速度を勘案して適宜調節する。レーザー加工が施されたフィルム表面を写真撮影したものを図12に示す。レーザー加工は、原反製膜時に、スリット加工時に、またはスリット加工後に独立の工程を設けて施すことができる。レーザー加工は、フィルムの横方向の端部の少なくとも一方に施されるが、どちらの側からでも切断出来るように、両方の端部に施すことがより好ましい。加工幅は通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜6mmである。
【0032】
また、ローレット加工やレーザー加工を施すと、巻回フィルムの引出端が巻き本体に強く密着して引き出せなくなるというトラブルの防止効果を得ることもできる。
【0033】
また、本発明の収納箱は、横切性に優れるフィルムの収納にも有用である。横切性は、以下に述べる切断ずれ量(δ)によって直接的に示される。切断ずれ量(δ)を測定するためのフィルム切断試験は、図9に示すように行われる。すなわち、辺α(長さ300mm)および辺β(長さ220mm)を有する長方形の試験片を用意し(ここで、辺αはフィルムの長さ方向と平行である)、一方の辺αの中央部に長さ3mmの切込みを入れ、切込みを入れた辺α側の両隅を人の手で引張ってフィルムを切断する。切断したときのフィルムの切断線と、切込みから他方の辺αに垂直に降ろした基準線との乖離の最大値(単位:mm)が切断ずれ量(δ)である。
【0034】
上記横切性に優れるフィルムとは、上記切断ずれ量(δ)が30mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、最も好ましくは5mm以下であるフィルムである。
【0035】
さらに、本発明の収納箱は、追従性に優れるフィルムの収納にも有用である。追従性は、以下に述べる追従ずれ量によって示される。追従ずれ量を測定するためのフィルム追従試験は、図10に示すように行われる。すなわち、フィルムを、引き出し方向が長辺となるように300mm×220mmの大きさに切り取り、一方の長辺の、端部から50mmのところに5mmの切込みを入れる。R2400(単位mm)のステンレス板を、その円弧状の縁の端部が上記切込みと一致するようにフィルムの上に置き、ステンレス板を片方の手で押え、他方の手でフィルムの上記切込み付近を持ち、フィルムを上記切込みの部分からステンレス板の上記縁に沿って切断する。切断するとき、フィルムを、ステンレス板側に、ステンレス板から45度の角度になるように倒してステンレス板の上記縁に当たるようにする。切断したときのフィルムの切断線と、ステンレス板の上記縁との乖離の最大値(単位:mm)が追従ずれ量である。
【0036】
上記追従性に優れるフィルムとは、上記追従ずれ量が50mm未満、好ましくは35mm未満、より好ましくは10mm未満、さらに好ましくは5mm未満であるフィルムである。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1〜9および比較例1〜4
図1に示される形状の収納箱において、掩蓋片(1)の長手方向の一方の端部が図6の(a)(タイプAという)または(b)(タイプBという)の形状の切欠き部を1個有し、切欠き部内に補強部材9の一部(9’)が露出して角部Pを有し、掩蓋片(1)の長手方向の両方の端部が互いに対称形である、縦45mmx横45mmx長さ310mmの収納箱を作製した。タイプAの切欠き部は、h=4mm、b=10mm、w=7mm、θ=30度であり、タイプBの切欠き部は、h=4mm、b=10mm、w=7mm、θ=90度である。上記箱の補強部材以外は、片面コートされたコートボール紙(厚紙の坪量450g/m )で構成し、補強部材は、バルカナイズドファイバーに樹脂を含浸させたもので構成した。なお、比較例1〜4では、タイプBの形状の切欠き部を有するが、切欠き部内に補強部材9の一部(9’)が露出しておらず、したがって角部Pを有しない収納箱を作製した。また、実施例2、4〜6、8および9ならびに比較例1および3の収納箱は、図4に示されるように、掩蓋片(1)の先端縁(8)から補強部材(9)が突出して、突出部分(9”)を有する。突出部分(9”)の先端縁(8)からの最大距離は3mmである。
【0039】
試験
上記のようにして得た収納箱に、巻回されたフィルム(幅300mm、長さ20mのフィルムを、幅305mm、内径27mm、肉厚1.5mmの紙管に巻いたもの)を収納し、下記に示すカット性の試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
なお、収納したフィルムは以下の通りである。
TPX:ポリ4−メチルペンテン−1(三井化学株式会社製)を主原料とするラップフィルム、厚み10μm、引裂き強度0.26N、端部破断力4.4N、切断ずれ量3.8mm、追従ずれ量5mm
PVDC:旭化成ホームプロダクツ(株)製のサランラップ(登録商標)(ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム)、厚み10μm、引裂き強度0.022N、端部破断力9.4N、切断ずれ量12.7mm、追従ずれ量33mm
PE:宇部フィルム(株)製のポリラップ(商品名)(ポリエチレン(PE)フィルム)、厚み11μm、引裂き強度1.76N、端部破断力3N、切断ずれ量26.6mm、追従ずれ量49mm
アルミホイル:東洋アルミエコープロダクツ(株)製の抗菌クッキングホイル(商品名)、厚み11μm、引裂き強度0.28N、端部破断力6N、切断ずれ量24.3mm、追従ずれ量0mm
クッキングシート:旭化成ホームプロダクツ(株)製のクックパー オーブン・電子レンジにクッキングシート(商品名)、厚み50μm、引裂き強度1.2N、端部破断力17N、切断ずれ量20.4mm、追従ずれ量2mm
【0041】
カット性試験(1)
収納されたフィルムを収納箱から約40cm引出し、蓋を閉じた状態で、フィルムを切断する試験を50回試みた。切断できた回数により以下のように評価した。
◎ 36〜50回
○ 21〜35回
△ 11〜20回
× 10回以下
【0042】
カット性試験(2)
収納されたフィルムを収納箱から約40cm引出し、蓋を閉じた状態で、フィルムを切断する試験を10回行い、切断の途中で引っかかりを感じることなくスムーズに切断できた回数により以下のように評価した。
◎ 9〜10回
○ 6〜8回
△ 3〜5回
× 2回以下
【0043】
耐久性試験
収納されたフィルムを収納箱から約40cm引出し、蓋を閉じた状態で、フィルムを切断する試験を100回行い、箱が歪みカットしにくくなるまでの回数を試験し、以下のように評価した。
◎ 91回以上
○ 76〜90回
△ 51〜75回
× 50回以下
【0044】
【表1】
【符号の説明】
【0045】
1:掩蓋片
2:蓋面板
3:側面版
4:底面板
5:前面板
6:後面板
7:切欠き部
8:掩蓋片の先端縁
9:補強部材
9’:補強部材の露出部分
9”:補強部材の突出部分
図1
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図3
図4
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図12