(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属プレートの一端部から他端部に向かって複数並列して延びた直線部と、前記金属プレートの一端部及び他端部にそれぞれ設けられ、隣接する前記直線部の端部同士を連通させる折返し部とを有し、前記金属プレートの内部で蛇行形状に構成された流路を備え、前記流路に作動液が封入されるプレート型熱輸送装置であって、
前記金属プレートは、少なくとも前記折返し部に対応する部分に設けられた厚肉部と、前記直線部に対応する部分の少なくとも一部の板厚が前記厚肉部の板厚よりも薄い薄肉部と、を有し、
前記流路は、前記厚肉部に対応する位置の断面積が、前記薄肉部に対応する位置の断面積より大きいことを特徴とするプレート型熱輸送装置。
一端部から他端部に向かって複数並列して延びた直線部と、前記一端部及び前記他端部にそれぞれ設けられ、隣接する前記直線部の端部同士を連通させる折返し部とを有することで蛇行形状に構成されると共に作動液が封入される流路を内部に設けた金属プレートを形成する第1工程と、
前記第1工程で形成した金属プレートの前記直線部に対応する部分の少なくとも一部を板厚方向にプレスして薄肉部を形成する第2工程と、
を有することを特徴とするプレート型熱輸送装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1のようなプレート型熱輸送装置は、金属プレートの内部に蛇行形状の流路を形成する必要があり、薄型化が難しい。このため、プレート型熱輸送装置は、タブレット型PCやスマートフォン、ノート型PCのような電子機器に搭載しようとした場合、電子機器の筐体の薄型化を阻害する要因となり得る。他方、このような電子機器は、その処理負担や演算能力の向上によって発熱量も増大しており、高性能な熱輸送装置の搭載が求められている。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、薄型化と高性能化が可能なプレート型熱輸送装置、該プレート型熱輸送装置を備える電子機器、及び該プレート型熱輸送装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るプレート型熱輸送装置は、金属プレートの一端部から他端部に向かって複数並列して延びた直線部と、前記金属プレートの一端部及び他端部にそれぞれ設けられ、隣接する前記直線部の端部同士を連通させる折返し部とを有し、前記金属プレートの内部で蛇行形状に構成された流路を備え、前記流路に作動液が封入されるプレート型熱輸送装置であって、前記金属プレートは、前記直線部に対応する部分の少なくとも一部の板厚が、前記折返し部に対応する部分の板厚よりも薄い薄肉部を有することを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、当該プレート型熱輸送装置は、蛇行形状の流路に封入された作動液が冷却対象となる発熱体からの熱吸収によって蒸発した蒸気による潜熱輸送と、液相の作動液の振動による顕熱輸送とを生じる。これにより当該プレート型熱輸送装置は、高い熱輸送能力が得られる。しかも当該プレート型熱輸送装置は、流路の直線部に対応する部分の少なくとも一部で金属プレートの板厚を薄くした薄肉部を有する。これにより当該プレート型熱輸送装置は、蛇行形状の流路のうちで圧力損失の影響が大きい折返し部は十分な流路断面積を確保しつつ、圧力損失の影響の小さい直線部に対応する部分はその板厚を薄型化することができる。その結果、当該プレート型熱輸送装置は、高い熱輸送性能を維持しつつ、板厚を可及的に薄型化することができる。
【0008】
当該プレート型熱輸送装置において、前記金属プレートは、一面側は平板状に構成され、他面側は前記折返し部に対応する部分よりも前記薄肉部を設けた部分が凹んで構成されることで、側面視で凹形状に構成された構成であってもよい。そうすると、当該プレート型熱輸送装置は、例えば搭載される電子機器の筐体内で一面を筐体の一内面に対向配置しつつ、凹形状の他面側に発熱体である電子部品等を効率よく配置できる。その結果、当該プレート型熱輸送装置は、搭載される電子機器等の筐体内に効率よく設置でき、筐体の薄型化に一層貢献できる。
【0009】
本開示に係る電子機器は、上記構成のプレート型熱輸送装置と、該プレート型熱輸送装置及び発熱体を内部に収容した筐体とを備え、前記プレート型熱輸送装置は、前記一面側が前記筐体の一内面に対向配置され、前記他面側の前記薄肉部に対応する部分に前記発熱体が配置されていることを特徴とする。これにより当該電子機器は、筐体の薄型化と高い放熱性能とを確保できる。
【0010】
本開示に係るプレート型熱輸送装置の製造方法は、一端部から他端部に向かって複数並列して延びた直線部と、前記一端部及び前記他端部にそれぞれ設けられ、隣接する前記直線部の端部同士を連通させる折返し部とを有することで蛇行形状に構成されると共に作動液が封入される流路を内部に設けた金属プレートを形成する第1工程と、前記第1工程で形成した金属プレートの前記直線部に対応する部分の少なくとも一部を板厚方向にプレスして薄肉部を形成する第2工程とを有することを特徴とする。従って、当該製造方法によれば、高い熱輸送性能と薄型化とが可能なプレート型熱輸送装置を製造できる。
【0011】
当該製造方法において、前記第2工程では、前記金属プレートの前記直線部に対応する部分の少なくとも一部をプレスして凹ませることで、該直線部に対応する部分の少なくとも一部の板厚を前記折返し部に対応する部分の板厚よりも薄くすることで、前記薄肉部を形成してもよい。これにより当該製造方法は、低コスト且つ簡素な設備で薄肉部を持ったプレート型熱輸送装置を製造できる。
【0012】
当該製造方法において、前記第1工程では、内部に前記直線部が並列された素材プレートを押出成形によって形成し、該素材プレートの一端部及び他端部に前記折返し部を形成した後、前記一端部及び前記他端部を閉塞することで、前記流路を内部に設けた前記金属プレートを形成してもよい。このように当該製造方法は、素材プレートの成形に押出成形を用いることでプレート型熱輸送装置を低コストで製造できる。
【0013】
当該製造方法において、前記第1工程では、素材プレートの表面にエッチング加工によって前記流路と同経路を持った溝部を形成した後、該素材プレートの表面に蓋プレートを接合して前記溝部を閉塞することで、前記流路を有する前記金属プレートを形成してもよい。このように当該製造方法は、素材プレートの成形にエッチング加工を用いているため、流路(溝部)を一層高精度に微細加工することができ、プレート型熱輸送装置の一層の薄型化が可能となる。
【0014】
本開示に係るプレート型熱輸送装置の製造方法は、素材プレートの表面にエッチング加工によって蛇行形状の溝部を形成した後、前記素材プレートの表面に蓋プレートを接合して前記溝部を閉塞することで、蛇行形状に構成されると共に作動液が封入される流路を内部に設けた金属プレートを形成することを特徴とする。従って、当該製造方法によれば、プレート型熱輸送装置を一層薄型に成形することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、プレート型熱輸送装置の薄型化と高性能化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るプレート型熱輸送装置及びその製造方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本開示に係るプレート型熱輸送装置10(以下、単に「熱輸送装置10」ともいう)を模式的に示した斜視図である。
図2Aは、
図1に示す熱輸送装置10の側面図であり、
図2Bは、
図2A中のIIB−IIB線に沿う断面図である。
【0019】
図1〜
図2Bに示すように、熱輸送装置10は、金属プレート12を備え、この金属プレート12の内部に作動液Fが封入される流路14を有する。
【0020】
金属プレート12は、アルミニウムや銅のような熱伝導率が高い金属によって形成されたプレートである。金属プレート12は、長手方向両端部にそれぞれ厚肉部16を有し、厚肉部16,16間に薄肉部18を有する。
【0021】
厚肉部16は、金属プレート12を形成する前の中間体である素材プレート20(
図9A参照)の板厚を残した部分である。厚肉部16は、例えば2mm程度の板厚である。薄肉部18は、厚肉部16よりも薄い板厚で構成された部分である。薄肉部18は、例えば1.3mm程度の板厚である。詳細は後述するが、薄肉部18はプレスによって金属プレート12を潰して形成される。
【0022】
本開示の熱輸送装置10は、後述するタブレット型PCのような携帯型の電子機器22(
図5参照)に搭載されるため、厚肉部16及び薄肉部18を上記板厚で構成している。厚肉部16及び薄肉部18の板厚は、適宜変更可能である。
【0023】
本開示の熱輸送装置10は、金属プレート12の一面12a側が平板状に構成される一方、他面12b側の一部を幅方向(
図1中で短手方向)に亘って板厚方向に凹ませることで薄肉部18を形成している。これにより、熱輸送装置10(金属プレート12)は、
図2Aに示す側面視で凹形状或いは扁平なU字形状に構成されている。熱輸送装置10は、薄肉部18の幅寸法を金属プレート12の幅寸法よりも小さく構成し、容器状に構成されてもよい。
【0024】
流路14は、金属プレート12の内部でトンネル状の細孔を蛇行させた蛇行流路である。流路14は、複数の直線部(直線流路)14aと、複数の折返し部(折返し流路)14bとを有する。
【0025】
直線部14aは、金属プレート12の長手方向で一端部12cから他端部12dに向かって延びた細孔である。直線部14aは、一端部12cから他端部12dに向かう方向と直交する方向、つまり金属プレート12の幅方向に沿って複数本(
図2Bでは9本)が並列されている。
【0026】
折返し部14bは、隣接する直線部14a,14aの端部同士を連通させる略U字状の細孔である。折返し部14bは、隣接する2本の直線部14a,14aの端部同士を連通させるものであり、3本以上の直線部14aの端部同士を一度に連通するものではない。従って、
図2Bに示すように、全ての直線部14aの両端部がそれぞれ隣接する直線部14aと順に連通され、流路14は1本の蛇行した細孔として形成されている。
【0027】
流路14は、その両端部が閉塞されており、内部に作動液Fが封入される。作動液Fとしては、代替フロン、フロン、アセトン又はブタン等が用いられる。本開示では、作動液Fは代替フロンを用いている。
図2B中に2点鎖線で図示したように、流路14の一端部には、作動液Fの入口ポートとなる細管24が連通している。細管24は、作動液Fの流路14への充填が完了した後、閉塞される。
【0028】
図2A及び
図2Bに示すように、折返し部14bは厚肉部16に対応する位置に配置され、直線部14aは大部分が薄肉部18に対応する位置に配置されると共に一部が厚肉部16に対応する位置に配置されている。換言すれば、金属プレート12は、直線部14aに対応する部分の少なくとも一部の板厚が折返し部14bに対応する部分の板厚よりも薄く形成され、この薄い部分が薄肉部18となっている。薄肉部18は、折返し部14bに対応する位置には設けず、直線部14aの範囲内に設けることが望ましい。
【0029】
図3は、
図2B中のIII−III線に沿う断面図である。
図4は、
図2B中のIV−IV線に沿う断面図である。
【0030】
流路14は、厚肉部16に対応する位置(
図3参照)の断面積が、薄肉部18に対応する位置(
図4参照)の断面積より大きい。流路14は、圧力損失の大きい折返し部14bが厚肉部16に対応する位置に設けられて大きな断面積を有する。これにより流路14は、折返し部14bでの圧力損失によって作動液Fによる熱輸送性能が低下することを防止できる。一方、直線部14aは、折返し部14bに比べて圧力損失が小さい。このため、直線部14aは、薄肉部18によって潰されて断面積が小さくなっていても作動液Fによる熱輸送性能への影響は少ない。
【0031】
なお、上記した通り、本開示の薄肉部18はプレスによって金属プレート12を潰して形成している。このため、隣接する直線部14a,14a間を仕切る壁部26は、実際には
図4のように金属プレート12の板厚方向に沿った向きではなく、板厚方向からある程度傾いた向きとなり、直線部14aの流路断面は平行四辺形に近い形状となる可能性が高い。
【0032】
このような熱輸送装置10は、例えば直線部14aや他端部12d側の折返し部14bに対応する位置の金属プレート12外面に、発熱体が当接配置される。これにより熱輸送装置10は、発熱体からの熱を吸熱し、この熱を作動液Fを介して一端部12c側へと輸送し、一端部12c側の折返し部14bに対応する位置及びその付近の金属プレート12外面から外部に放熱する。その結果、熱輸送装置10は、発熱体を冷却することができる。なお、熱輸送装置10は、発熱体からの熱吸収によって流路14内に封入された作動液Fが蒸発した蒸気による潜熱輸送と、液相の作動液Fの振動による顕熱輸送とを生じることで高い熱輸送能力を発生できるヒートレーン(プレート型ヒートパイプ)である。
【0033】
図5は、
図1に示す熱輸送装置10を搭載した電子機器22の内部構造を模式的に示す断面図である。
【0034】
図5に示すように、電子機器22は、扁平薄型の容器である筐体30の開口面にディスプレイ32を設けた構成である。電子機器22は、タブレット型PCを例示するが、スマートフォンやノート型PC等でもよい。筐体30は、例えばアルミニウムやマグネシウム等の金属で形成されている。ディスプレイ32は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。
【0035】
電子機器22は、熱輸送装置10と、基板34と、CPU35と、DCDCコンバータ36と、放熱フィン37と、送風ファン38とを筐体30の内部に備える。
【0036】
CPU35は中央演算装置であり、電子機器22に搭載される電子部品のうちで最大級の発熱を伴う。DCDCコンバータ36は直流の電圧を変換するものであり、CPU35に比べて物理的な高さ寸法が大きく構成されると共に、大きな発熱を伴う。CPU35及びDCDCコンバータ36は、それぞれ高い熱伝導率を持ったサーマルラバーシート39を介して熱輸送装置10の薄肉部18の外面に当接配置されている。筐体30の内部には、さらに図示しないメモリ等の各種電子部品が収納されている。
【0037】
放熱フィン37は、アルミニウムや銅のような熱伝導率の高い金属で形成されている。放熱フィン37は、例えば熱輸送装置10の一端部12c側の厚肉部16の外面に当接配置される。放熱フィン37は、他端部12d側の厚肉部16の外面や薄肉部18の外面に当接配置されてもよい。送風ファン38は、筐体30内の空気を吸引して放熱フィン37に向かって送風する。送風ファン38から放熱フィン37を通過した冷却風Wは、筐体30の側壁に形成された排気口30aを通って外部に放出される。
【0038】
熱輸送装置10は、筐体30の一内面30bに平板状の一面12aが対向配置され、或いは一面12aが一内面30bに当接配置される。従って、電子機器22では、CPU35やDCDCコンバータ36のような発熱体で発生した熱Hは、熱輸送装置10の流路14内に封入された作動液Fによって一端部12c側へと高効率に輸送される。この搬送された熱Hは、放熱フィン37に伝達され、送風ファン38からの冷却風Wによって排気口30aから筐体30の外部へと排出される。また、熱Hの一部は、一面12aから一内面30bを介して外部に放出される。この際、電子機器22では、熱輸送装置10の薄肉部18に対応した位置にCPU35やDCDCコンバータ36のような発熱体を配置できる。このため、熱輸送装置10は、電子機器22の筐体30の薄型化を阻害することを防止できる。
【0039】
次に、熱輸送装置10の製造方法の一例を説明する。
図6は、プレート型熱輸送装置10の製造方法の一手順を示すフローチャートである。
図7は、素材プレート20の構成を模式的に示す平面断面図である。
図8は、
図7に示す素材プレート20の両端部の一部の壁部26を切除した状態を示す平面断面図である。
【0040】
先ず、
図6中のステップS1において、金属プレート12の成形前の中間体となる素材プレート20を押出成形によって形成する。
図7に示すように、成形された素材プレート20は、壁部26によって互いに仕切られた直線細孔40を
図2Bに示す金属プレート12と同数(
図7では9本)有する。つまり素材プレート20は、その長手方向に貫通した直線細孔40が幅方向に並列されたプレートである。
【0041】
ステップS2では、
図8に示すように素材プレート20の直線細孔40を形成する壁部26の両端部をそれぞれ1枚置きに切除する。壁部26の切除部Cは、一端部12c側と他端部12d側とでそれぞれ互い違いになるように設定される。この際、切除部Cは、最終的に金属プレート12の厚肉部16となる部分に収まる範囲に設けられる。
【0042】
ステップS3では、素材プレート20の両端部12c,12dをそれぞれ封止して流路14を形成する。すなわち、素材プレート20の両端部12c,12dについて、封止後に流路14の折返し部14bとなる部分を確保可能な位置、例えば
図8中の1点鎖線Aで示す位置よりそれぞれ外側となる部分を板厚方向に潰して封止する。これにより、素材プレート20は、
図2Bに示す流路14と同様な流路14を持った平板となる。
【0043】
ステップS4では、流路14を形成した素材プレート20をプレス機42で成形して薄肉部18を形成する。
【0044】
図9Aは、プレス機42に素材プレート20をセットした状態を模式的に示す側面図である。
図9Bは、
図9Aに示す状態から素材プレート20をプレス成形し、金属プレート12を形成した状態を示す側面図である。
【0045】
図9Aに示すように、素材プレート20をプレスする際は、先ず、プレス機42の下型42aの表面42cに素材プレート20を載置する。下型42aの表面42cは、素材プレート20の全面を載置可能な平板状に構成されている。この際、素材プレート20は、一面12aが下型42aの表面42cに当接する向きで配置される。
【0046】
続いて、
図9Bに示すように、プレス機42の上型42bを下降させ、上型42bと下型42aの間で素材プレート20を押し潰す。なお、上型42bは、素材プレート20に形成された流路14の直線部14aに対応する位置のみを押し潰すことができる一方、折返し部14bに対応する位置を避けた形状となっている。これにより、素材プレート20は、薄肉部18を厚肉部16,16間に設けた金属プレート12となる。
【0047】
最終的には、ステップS5において金属プレート12の流路14内に作動液Fを充填することで、当該熱輸送装置10の製造が完了する。
【0048】
次に、熱輸送装置10の製造方法の変形例を説明する。
図10は、プレート型熱輸送装置10の製造方法の別の一手順を示すフローチャートである。
【0049】
上記した
図6に示した製造方法は、金属プレート12を成形する前段階の素材プレート20を押出成形によって形成している。これに対し、
図10に示す製造方法は、金属プレート12を成形する前段階の素材プレート50をエッチング加工によって形成する。
【0050】
すなわち、
図10中のステップS11,S12において、金属プレート12の成形前の中間体となる素材プレート50をエッチング加工を利用して形成する。
【0051】
先ず、ステップS11では、
図11に示すように平板状の素材プレート50の表面50aにマスク52を設ける。マスク52は、
図11中に網掛け模様を施した部分である。マスク52は、素材プレート50のエッチング加工を施さない部分を覆うマスキングシールやマスキング塗料である。従って、マスク52は、
図2Bに示す流路14の経路以外の部分に設けられる。換言すれば、最終的な金属プレート12で流路14となる部分である非マスク領域Rにはマスク52を設けない。
【0052】
次いで、マスク52を設けた素材プレート50に所定のエッチング加工を施す。本開示の熱輸送装置10は、例えばアルミニウムで金属プレート12を形成する。そこでエッチング加工は、例えば塩化第二鉄液を用いて実施する。これにより、
図12に示すように素材プレート50は、その表面50aに開口した溝部54が形成される。溝部54は、流路14と同経路を有する蛇行形状の溝部である。
【0053】
ステップS12では、
図12に示すように素材プレート50の表面50aを蓋プレート56で閉塞する。蓋プレート56は、例えば素材プレート50と同材質の薄板である。蓋プレート56は、例えば拡散接合によって素材プレート50と接合される。素材プレート50は、表面50aに蓋プレート56が接合されることで溝部54が閉塞される。その結果、溝部54は流路14となる。
【0054】
なお、ステップS13,S14は、
図6中のステップS4,S5と同様である。すなわちステップS13では流路14を形成した素材プレート50をプレス機42で成形して薄肉部18を形成し、金属プレート12を形成する。またステップS14ではステップS13で形成した金属プレート12の流路14に作動液Fを充填することで、当該熱輸送装置10の製造を完了する。
【0055】
以上のように、本開示に係るプレート型熱輸送装置10は、金属プレート12の一端部12cから他端部12dに向かって複数並列して延びた直線部14aと、金属プレート12の一端部12c及び他端部12dにそれぞれ設けられ、隣接する直線部14aの端部同士を連通させる折返し部14bとを有し、金属プレート12の内部で蛇行形状に構成された流路14を備え、流路14に作動液Fが封入される。当該熱輸送装置10において、金属プレート12は、直線部14aに対応する部分の少なくとも一部の板厚が、折返し部14bに対応する部分の板厚よりも薄い薄肉部18を有する。
【0056】
従って、当該熱輸送装置10は、蛇行形状の流路14に封入された作動液Fが冷却対象となる発熱体(CPU35等)からの熱吸収によって蒸発した蒸気による潜熱輸送と、液相の作動液Fの振動による顕熱輸送とを生じる。これにより当該熱輸送装置10は、高い熱輸送能力が得られる。しかも当該熱輸送装置10は、流路14の直線部14aに対応する部分の少なくとも一部で金属プレート12の板厚を薄くした薄肉部18を有する。これにより当該熱輸送装置10は、蛇行形状の流路14のうちで圧力損失の影響が大きい折返し部14bは十分な流路断面積を確保しつつ、圧力損失の影響の小さい直線部14aに対応する部分はその板厚を薄型化することができる。その結果、当該熱輸送装置10は、高い熱輸送性能を維持しつつ、板厚を可及的に薄型化することができる。このため、当該熱輸送装置10は、搭載される電子機器22等の筐体30の薄型化に貢献できる。
【0057】
当該熱輸送装置10において、金属プレート12は、一面12a側は平板状に構成され、他面12b側は折返し部14bに対応する部分よりも薄肉部18を設けた部分が凹んで構成されることで、側面視で凹形状に構成されている。これにより当該熱輸送装置10は、例えば搭載される電子機器22の筐体30内で一面12aを筐体30の一内面30bに対向配置しつつ、凹形状の他面12b側に発熱体であるCPU35等を効率よく配置できる。その結果、当該熱輸送装置10は、搭載される電子機器22等の筐体30内に効率よく設置でき、筐体30の薄型化に一層貢献できる。
【0058】
本開示に係るプレート型熱輸送装置10の製造方法は、一端部12cから他端部12dに向かって複数並列して延びた直線部14aと、一端部12c及び他端部12dにそれぞれ設けられ、隣接する直線部14aの端部同士を連通させる折返し部14bとを有することで蛇行形状に構成されると共に作動液Fが封入される流路14を内部に設けた金属プレート12を形成する第1工程(
図6中のステップS1〜S3、
図10中のステップS11〜S12)と、第1工程で形成した金属プレート12の直線部14aに対応する部分の少なくとも一部を板厚方向にプレスして薄肉部18を形成する第2工程(
図6中のステップS4、
図10中のステップS13)とを有する。従って、当該製造方法によれば、高い熱輸送性能と薄型化とが可能な熱輸送装置10を低コスト且つ簡素な設備で製造できる。
【0059】
この場合、
図6に示す製造方法において、第1工程では、内部に直線部14aが並列された素材プレート20を押出成形によって形成し、素材プレート20の一端部12c及び他端部12dに折返し部14bを形成した後、一端部12c及び他端部12dを閉塞することで、流路14を内部に設けた金属プレート12を形成する。このように当該製造方法は素材プレート20の成形に押出成形を用いているため、熱輸送装置10を低コストで製造できる。
【0060】
一方、
図10に示す製造方法において、第1工程では、素材プレート50の表面50aにエッチング加工によって流路14と同経路を持った溝部54を形成した後、素材プレート50の表面50aに蓋プレート56を接合して溝部54を閉塞することで、流路14を有する金属プレート12を形成する。このように当該製造方法は素材プレート50の成形にエッチング加工を用いているため、流路14(溝部54)を一層高精度に微細加工することができる。その結果、当該製造方法は、機械加工である押出成形を用いる製造方法に比べ、熱輸送装置10の一層の薄型化が可能となる。また当該製造方法は、エッチング加工で流路14を形成するため、流路14の形状自由度が向上し、製造される熱輸送装置10の用途も拡大できる。この場合、
図10に示す製造方法はエッチング加工によって熱輸送装置10を可及的に薄型化できるため、薄肉部18の形成工程(
図10中のステップS13)を省略しても熱輸送装置10の十分な薄型化が可能となる。
【0061】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0062】
上記実施形態では、側面視で凹形状に構成されたプレート型熱輸送装置10を例示したが、薄肉部18の設置位置や設置形状は適宜変更可能である。例えばプレート型熱輸送装置10は、一面12a及び他面12bをそれぞれ凹ませて側面視でH形状に構成されてもよい。
【解決手段】プレート型熱輸送装置10は、金属プレート12の一端部12cから他端部12dに向かって複数並列して延びた直線部14aと、金属プレート12の一端部12c及び他端部12dにそれぞれ設けられ、隣接する直線部14aの端部同士を連通させる折返し部14bとを有し、金属プレート12の内部で蛇行形状に構成された流路14を備え、流路14に作動液Fが封入される。当該熱輸送装置10において、金属プレート12は、直線部14aに対応する部分の少なくとも一部の板厚が、折返し部14bに対応する部分の板厚よりも薄い薄肉部18を有する。