【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明のこの目的は、本発明によれば、聴力補助装置に関するパラメータ値を自動的に決定するための方法であって、ウェブブログでのユーザ固有のブログエントリが、計算言語学的に解析され、計算言語学的解析の結果が、ユーザの主観的な聴覚的知覚に焦点を当てた結果に絞り込まれ、ユーザの主観的な聴覚的知覚に焦点を当てた絞り込まれた結果が、特定の聞取り状況に振り分けられ、ユーザの主観的な聴覚的知覚に焦点を当てた絞り込まれた結果からユーザ固有の変更希望が抽出され、ユーザ固有の変更希望に基づいて、特定の聞取り状況に適合されるパラメータ値が決定され、パラメータ値が、聴力補助装置の特定の聞取り状況に割り付けられているパラメータ値を適合するためにユーザに提供される方法によって解決される。
【0027】
第1のステップでは、本発明は、特に、ウェブログまたは対応するブログエントリが、そこに含まれていることがある多数のユーザ固有の情報により、基本的には個人固有のデータを取得するための良い基礎となることに基づく。健康上の問題に関するブログの使用では、それぞれの執筆者の健康状態を推論することができる可能性がある。しかし、そのようなブログエントリは、連続型テキストまたはプレーンテキスト、すなわち純粋なテキストで執筆されているので、データの自動的なさらなる処理のために直接には適していない。
【0028】
第2のステップでは、本発明は、従来の言語解析によって連続型テキストの評価を行うことができるという考えに基づく。すなわち、言語解析によって、元のテキストの内容および関連性をフィルタリングすることができる。インターネットサイトでもそのような言語解析を利用することができ、テキスト内のキーワードを自動的に決定したり、意見や議論を捕捉したり、個人名を認識したり、文書を自動的に分類したり特定のテーマ分野に振り分けたりする。したがって、このようにして、ウェブログを言語解析することも可能である。
【0029】
第3のステップでは、本発明は、上記2つのことを組み合わせて、データに計算言語学的解析を施すことによって、ウェブログまたは対応するブログエントリからユーザ固有のデータを取得する。ユーザ固有のデータに基づいて、例えば医学的な問題に直接対処するために使用される提案または手段を決定することができる。ブログを書く聴力補助装置の装着者に関しては、装着者が、ブログエントリの執筆時に、様々な生活状況での聴覚的印象または聴覚的知覚を書き表すデータを提供することができることを意味する。次いで、これらのエントリは、計算言語学的解析によって、聴力補助装置のそれぞれの装着者に特定的に評価される。
【0030】
計算言語学的解析の結果は、ユーザの主観的な聴覚的知覚に焦点を当てた結果に絞り込まれる。その後、絞り込まれたデータは、特定の聞取り状況、すなわち聞取り対象に振り分けられ、絞り込まれた結果からユーザ固有の変更希望を抽出することができる。好適には聞取り状況に関連する不満や望みを表すユーザ固有の変更希望は、好ましくは定型化されている。
【0031】
抽出されたユーザ固有の変更希望に基づいて、特定の聞取り状況に適合されるパラメータ値(すなわち改良提案)が決定され、これらは、特定の聞取り状況に割り付けられている補聴器のパラメータ値を適合させるためにユーザに提供される。
【0032】
したがって、この方法は、ブログエントリに基づいて、変更される聴力補助装置のパラメータ値を決定することを可能にし、これらのパラメータ値は、それぞれの聴力補助装置装着者の望みに合わせられている。装着者のブログエントリは、単に環境を知らせるために使用されるだけでなく、計算言語学的解析により、特定の聞取り状況での補聴器の微調整(「フォローアップフィッティング」)のための取り得る改良提案に関して非常に特定的に評価することができる。この方法は、特に全自動で行われる。
【0033】
さらに好ましくは、特定の聞取り状況に適合されるパラメータ値が、計算アルゴリズムに基づいて決定される。計算アルゴリズムのための入力データとして、好ましくは、ユーザ固有の変更希望および実際のパラメータ値に加えて、ユーザの医学的所見のデータも使用される。典型的な所見は、例えば、聴力に焦点を当てたデータ、さらにまた年齢、性別、または母国語である。
【0034】
医学的所見を考慮に入れる利点は、軽度の難聴と重度の難聴を区別して異なる処置を行うことが可能であることである。増幅のための調節の余地は、重度の難聴の人ではより小さい。なぜなら、不快閾値までの残りの差分がより小さいからである。したがって、特定の目的で行われる増幅の増減は、重度の難聴の人に関しては、軽度の難聴の人よりも小さい間隔で行わなければならない。
【0035】
ここで、特定の聞取り状況とは、分類可能な聞取り状況、すなわち、典型的な日常の聞取り状況に属するものとして分類することができる状況を意味する。補聴器装着者が特定の聴覚環境にいる場合、この聴覚環境内で、装着者が聴覚的知覚の変更を望むいくつかの状況が生じることがある。
【0036】
典型的な聴覚環境は、例えば、休憩室、道路交通、レストラン(ここでは典型的な「カクテルパーティー状況」が生じることが多い)、コンサートホールなどである。聞取り状況には、典型的には聞取り対象が振り分けられ、または重ね合わされ、聞取り対象は、主観的な聞取りの過程で明らかとなる。そのような聞取り対象に関する例は、言語の聞取り、音楽鑑賞、方向の聞取り、風の音の抑制である。特に、そのような対象および/または聞取り状況は、計算言語学的解析によってテキストエントリから解析して、結果として表すことができる。
【0037】
特定の聞取り状況に適合されたパラメータ値は、好ましくは、聴力補助装置の装着者自身に、自分の補聴器のプログラミングのために提供される。装着者は、対応する提案を選択的に承諾または拒否するという選択肢を有する。
【0038】
さらに好ましくは、適合されたパラメータ値は、補聴器音響技師に利用可能にされる。ここで、補聴器音響技師は、適合されたパラメータ値を、相談目的の面談および/または適合目的の面談において、対応する聴力補助装置の装着者と話をし、評価し、次いで、場合によってはさらなる適合の後に聴力補助装置に伝達することができる。当然、装着者が、対応する提案を最初に承諾し、さらに補聴器音響技師を訪ねて、場合によってはさらなる適合または変更を行うことも可能である。全自動の代替形態では、決定および適合されたパラメータ値が、利用者の聴力補助装置に直接伝達される。
【0039】
本発明の有利な実施形態では、ユーザ固有のブログエントリの作成時に、ブログエントリに割り付けられる聴力補助装置のパラメータ値が記憶される。すなわち、聴力補助装置のパラメータ値として、状況がブログエントリに記述された時点(すなわち聞取り状況が体験された時点)で聴力補助装置において元々調整された、または調整されていたパラメータが記憶される。
【0040】
特に好ましくは、ブログエントリの作成時、補聴器の実際のパラメータ値が記憶される。実際のパラメータ値の記憶は、好ましくはすぐに行われる。特定の状況の体験の時点でブログエントリがすぐに執筆される場合、実際のパラメータ値が基礎とされ、記憶され、引き続き使用される。パラメータ値は、補聴器の信号処理特性を成すので、後の引き続きの使用において、適切な変更提案によって適合させることができる。
【0041】
特に、聴力補助装置の装着者は、聞取り状況から時間的に遅れてブログエントリを作成する可能性を有する。この場合、パラメータ値およびブログエントリの捕捉は、2つの個別のステップで行われる。ブログを書く聴力補助装置装着者がこれをできるようにするには、ブログエントリの作成に使用されるモバイルデバイス(スマートフォンなど)に、対応するソフトウェアを装備すればよい。そのようなソフトウェアは、好ましくは、簡単なユーザ入力(例えば、個々のキーおよび/またはキーの組合せの作動、またはスマートフォンのディスプレイでのスワイプジェスチャ)が使用されて、パラメータ値にマークとしてタイムスタンプを提供し、同時に聴力補助装置の実際のパラメータ値を受信し、これらを後の使用のために記憶するように設計されている。
【0042】
さらに好ましくは、聴力補助装置の装着者が聴力補助装置の制御要素を作動し、それにより、例えばボタンを押すことによって、パラメータ値にタイムスタンプまたは対応するマークを提供するという可能性がある。聴力システム装着者が、後の時点でブログエントリを執筆するとき、このタイムスタンプに基づき、そのタイムスタンプとの対応する関係を、例えば対応するリンク(すなわち参照)の形態でブログエントリに記入することができる。
【0043】
本発明のさらなる有利な実施形態では、この方法は、同様に装着者が改善を望む聞取り状況が生じている周囲音の音響的な記録に関して、装着者を支援することを可能にする。好ましくは、これに関して、聴力補助装置のマイクロフォンが使用される。なぜなら、このマイクロフォンは、(例として使用されるスマートフォンのマイクロフォンとは異なり)通常は常に最適な位置にあるからである。好ましくは、聴力補助装置の上記または各マイクロフォンによって、周囲の音が連続的にリングバッファに記録される。リングバッファは、好適には、その時々の実際の音響的録音または記録を保持する。ここで、リングバッファのメモリ容量が満杯になるとすぐに、好適には、その時点で最も古い記録が削除され、新たに入力された記録によって置き換えられる。
【0044】
ブログエントリが聞取り状況から時間的に遅れて執筆される場合、好ましくは自動的にリングバッファのコピーが記憶され、相談担当の補聴器音響技師との適合目的の面談における後の使用、例えば文書化の目的のために使用される。さらに好ましくは、ブログエントリが時間的に遅れて執筆される場合に、タイムスタンプの付与が、実際のパラメータ値を記憶するためだけでなく、音響的な録音を記憶するためにも使用される。
【0045】
さらなる有利な実施形態では、各聴力補助装置の装着者が変更可能なパラメータ値のみが記憶される。すなわち、聴力システムのすべてのパラメータ値がブログエントリの作成時に記憶されるわけではない。これは、特に、聴力システムまたは聴力補助装置の製造業者のみが好適に変更可能なパラメータ値に当てはまる。これらのパラメータ値は、好適には既に最初から、装着者への聴力補助装置の引渡し時に、対応する患者データベースに登録されており、したがってそこに呼出し可能に記憶されている。数千のパラメータを含むが、聴力システム装着者が変更可能であるのはそのうちの非常にわずかな部分である現代の聴力システムでは、これは、伝達すべきパラメータ値のデータ量を大幅に減少させる。
【0046】
好ましくは、ブログエントリと、ブログエントリに割り付けられた聴力補助装置のパラメータ値とがバックエンドシステムに伝達される。バックエンドシステムとは、例えば、クラウドまたはクラウドデータセンタに常駐するシステムを意味する。クラウドは、ITインフラストラクチャ、例えば計算容量、データメモリ、使用容量、または完成したソフトウェアをインターネットを介してユーザに利用可能にし、これらをローカルの計算機にインストールする必要はない。特に好ましくは、各補聴器製造業者の聴覚学部門で、バックエンドシステムを介する伝達が行われる。したがって、聴力補助装置のパラメータ値が聴覚学部門に利用可能にされる。
【0047】
ブログエントリに割り付けられた補聴器のパラメータ値が常にバックエンドシステムに伝達されることを保証するために、聴力補助装置のパラメータ値にタイムスタンプが提供されると有利である。したがって、執筆されたブログエントリに、適合する補聴器のパラメータ値をそれぞれ割り付けることができ、これらをまとめてバックエンドシステムに伝達することができる。
【0048】
有利な実施形態では、聞取り状況に割り付けられたパラメータ値をバックエンドシステムに伝達することは、自動で行われる。好ましい代替実施形態では、聞取り状況に割り付けられたパラメータ値は、聴力補助装置の装着者によってバックエンドシステムに伝達される。特に好ましくは、ここで、聴力補助装置装着者によって変更された補聴器のパラメータ値のみがバックエンドシステムに伝達される。
【0049】
好適には、ブログエントリと、ブログエントリに割り付けられた補聴器のパラメータ値とをバックエンドシステムに伝達する前に、聞取り状況を記述しているブログエントリであるかどうかが決定される。ブログエントリが、聴力補助装置の装着者の聴覚的知覚に関係ない状況を記述している場合、そのブログエントリはさらには解析されない。
【0050】
ブログエントリが、聞取り状況を記述するブログエントリである場合、そのブログエントリは、補聴器の対応するパラメータ値と共に評価される。
【0051】
聞取り状況を記述するブログエントリであるかどうかの決定は、好ましくは、同様に言語解析に基づいて行われる。品詞(「PoS」)解析が特に有利であり、品詞解析では、単語がそれらの基本形に戻される。次いで、これらの基本形が単語カタログと比較され、そこから、それに対応して、ユーザ固有の聴覚的知覚に対するブログエントリの関係性が決定される。
【0052】
さらに好ましくは、特定の聞取り状況に適合されるパラメータ値を決定するために、抽出されたユーザ固有の変更希望が、提案システムに記憶されている変更提案と比較され、変更提案には、聴力補助装置に関する対応するパラメータ値が割り付けられている。これに関し、好ましくは、ユーザの主観的な聴覚的知覚を表す計算言語学的解析の各結果は、聞取り状況および/または聞取り対象のカタログ項目に振り分けられる。ここで、好適には、聞取り状況および/または聞取り対象のカタログは、前述したように聞取り状況および/または聞取り対象を含むリストである。
【0053】
本発明のさらに好ましい実施形態では、特定の聞取り状況に適合されるパラメータ値を決定するために、患者データベースを含む提案システムが使用される。患者データベースは、好ましくは、別の装着者の聴力補助装置を適合するために使用されたパラメータ値を含む。決定時、好適には、同一または同様の特性(例えば、難聴、メンタルフィットネス、または個人的嗜好)を有する別の患者の補聴器のパラメータ値が考慮に入れられる。決定において、既に過去に行われた特定の聞取り状況に適合するパラメータ値の計算との比較に基づくことができる。
【0054】
さらに、ユーザ固有の変更希望と提案システムに記憶されている変更提案との比較において、好適には、さらに、ブログエントリに割り付けられた補聴器のパラメータ値が考慮に入れられる。
【0055】
さらに、ブログエントリに割り付けられた補聴器のパラメータ値、および/または適合された補聴器のパラメータ値が視覚化されると有利である。視覚化は、好ましくは、同様の聞取り状況で、例えば同等の難聴ならびに同様の興味および認識能力を持つ別の装着者が、聴力補助装置の対応する調節によって既にどのように補助されたかの指摘を含む。
【0056】
計算言語学的解析は通常、解析すべきテキストの構文解析、意味解析、および/または文脈解析を含む。好ましくは、計算言語学的解析において、ブログエントリの文構造が解析される。これは構文解析であり、ブログエントリは、文の構造および文の種類に関して解析される。文の種類としては、特に、発言文、質問文、命令文が識別される。ここで、構文は、言語構築が形成される規則を表す。次いで、それぞれの文の成分(主語、動詞、目的語、副詞、形容詞)が、聴覚的知覚および起こり得るネガティブな感情の連想に対する関係性について解析される。
【0057】
さらに好ましくは、計算言語学的解析において、ブログエントリの内容が解析される。これは意味解析であり、構文解析に基づいて行われる。意味論は、言語構造の意味を述べる。テキストの内容は、1つまたは複数の単語の意味内容が解析されることによって決定される。これには、言語の単語どうしの関係、および単語とその対象との関係の解析も含まれる。同様に、計算言語学的解析において、ブログエントリの文脈が解析されると有利である。
【0058】
本発明のさらなる有利な実施形態では、ウェブログは、音声信号の形態で、特に発話信号の形態で捕捉される。すなわち、本発明において、ユーザの発話された言語および/またはその環境が認識および捕捉される。これに関し、ユーザは、例えば既に状況の体験時に、状況に関連する心象を言語認識ソフトウェアによって直接記録することができる。次いで、捕捉された音声信号(発話信号)から、同様にユーザ固有の変更希望が抽出され、それに基づいて、特定の聞取り状況に適合されるパラメータ値が決定され、これらのパラメータ値は、特定の聞取り状況に割り付けられた聴力補助装置のパラメータ値を適合させるためにユーザに提供される。
【0059】
捕捉された音声信号の対応する評価を可能にするために、これらは、好ましくは、言語処理モジュールによって処理される。言語処理モジュールにおいて、音声信号での言語は、テキスト情報に変換される。次いで、これらのテキスト情報は、コンピュータ言語的に解析され、前述したように、特定の聞取り状況に適合されるパラメータ値を決定するためにさらに処理される。
【0060】
特に、本発明による方法において、音声信号からのテキスト情報を含むビデオデータを捕捉し、次いで、このビデオデータを本発明に従って解析してさらに処理することができる。
【0061】
以下、本発明の例示的実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。