【実施例】
【0040】
本発明の無線通信システムに係る実施例について、図面に基づいて説明する。
【0041】
<第1実施例>
本発明の無線通信システムに係る第1実施例について、
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1は、第1実施例に係る無線通信システムの概要を示す概念図である。
図2は、第1実施例に係る無線通信システムの要部を示すブロック図である。
【0042】
図1において、無線通信システム1は、非接触電力伝送可能な充電器10と、例えば電気自動車等の車両20と、を備えて構成されている。充電器10は地面に埋設された送電部を有しており、他方、車両20は、その底部に受電部を有している。そして、充電器10及び車両20は、送電部及び受電部を介して非接触で電力伝送を行う。尚、非接触の電力伝送には、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細については説明を割愛する。
【0043】
図2において、充電器10は、通信手段11、CPU(Central Processing Unit)12、RAM(Random Access Memory)13、ROM(Read Only Memory)14、及びビーコン15を備えて構成されている。尚、充電器10は、
図2に示した構成要素以外に、例えば送電回路等を備えているが、本発明との関連性が低いので図示を省略している。
【0044】
車両20は、通信手段21、CPU22、RAM23及びROM24を備えて構成されている。尚、車両20についても、本発明との関連性が低い構成要素については図示を省略している。
【0045】
無線通信システム1では、非接触で電力伝送が行われている間、故障や異常を速やかに検知することを目的として、充電器10と車両20との間で装置の状態を示す情報が無線通信により送受信される。本実施例では、IEEE802.11規格に従い、CSMA/CA方式により衝突回避を行う無線通信を一例として挙げる。このように既存の無線通信の方式を採用することにより、当該無線通信システム1の導入費用等を抑制することができ、実用上非常に有利である。
【0046】
無線通信システム1における故障や異常を速やかに検知するためには、充電器10と車両20との間で、一定周期で信号が送受信されることが望ましい。無線通信により一定周期で信号を送受信するためには、通信の衝突を回避する必要がある。ここで、通信の衝突を回避する方法として、例えば充電器10と車両20との同期をとる方法が考えられる。しかしながら、充電器10と車両20との間でどのように同期をとるかについては、具体的な規格が定められていない。仮に独自の規格を定めてしまうと汎用性が失われる可能性がある。
【0047】
また、CSMA/CA方式では通信中の装置が検出された場合は、CW(Contention Window)の範囲内の乱数と所定のスロットルタイムとを積算した時間だけ通信の待ち時間が発生する。すると、該待ち時間が通信のジッタとなってしまう。当該無線通信システム1における上位層(例えばアプリケーション層等)が一定周期で動作しているにもかかわらず、無線通信に係る層がジッタを含んだ動作となってしまうと、装置の状態を示す情報のリアルタイム性が損なわれる可能性がある。
【0048】
そこで本実施例では、先ず、充電器10と車両20とが通信を開始する際に、車両20の通信手段21からパイロット信号の送信周期を示す信号が、充電器10に対し送信される。該信号を受信した充電器10は、必要であれば、該受信された信号により示される送信周期となるように送信周期を調整する。尚、送信周期は、例えば充電器10のRAM13等に格納される。
【0049】
次に、充電器10のCPU12は、該充電器10のビーコン15から発信されるビーコンを基準とするオフセット時間を、充電器10及び車両20各々について設定する。ここで、充電器10に係るオフセット時間と、車両20に係るオフセット時間とは相互に異なっている。
【0050】
そして、ビーコンが発信されてから設定されたオフセット時間が経過した後に、充電器10及び車両20各々が信号を送信し、その後は上記送信周期で互いに信号を送信することにより、通信の衝突を回避しつつ、定期的な信号の送受信を実現している。
【0051】
ここで、オフセット時間は、CSMA/CA方式による衝突回避動作が発生しないように設定される。具体的には例えば、“no MAC ACK”の場合、オフセット時間は、“2×(DIFS)+CWmax+(フレーム占有時間)”よりも長い時間として設定される。他方“MAC ACK”の場合、オフセット時間は、“2×(DIFS)+CWmax+(フレーム占有時間)+SIFS+(ACKフレーム占有時間)”よりも長い時間として設定される。尚、オフセット時間は、CSMA/CA方式のバックオフ時間に基づき、そのバックオフ時間は優先度の高い信号の場合、通常数百マイクロ秒程度であり、最大の場合でも約1ミリ秒である。
【0052】
次に、以上のように構成された無線通信システム1の動作を、
図3及び
図4を参照して説明する。尚、
図3及び
図4は、“no MAC ACK”の場合の動作を示している。
【0053】
図3において、先ず、充電器10及び車両20間において電力伝送を行うために、車両20の通信手段21は、充電器10に対し、認証に係る情報及び各種パラメータを示す信号を送信する。この際、車両20の通信手段21は、充電器10に対し、パイロット信号の送信周期を示す信号も送信する。
【0054】
所定の認証処理が終了した後、充電器10のCPU12は、該充電器10に係るオフセット時間toaと、車両20に係るオフセット時間tosとを設定する。充電器10の通信手段11は、車両20に対し、設定されたオフセット時間tosを示す信号を送信する。
【0055】
次に、充電器10のビーコン15からビーコンが発信された時点(
図4における時刻t0参照)から、オフセット時間toaだけ経過した時点(
図4における時刻t1参照)に、充電器10の通信手段11は、車両20に対し制御信号を送信する。車両20の通信手段21は、充電器10からビーコンが発信された時点からオフセット時間tosだけ経過した時点(
図4における時刻t2参照)に、充電器10に対し制御信号を送信する。
【0056】
その後、充電器10の通信手段11は、時刻t1(
図4参照)から送信周期tpcだけ経過した時点(
図4における時刻t3参照)に、車両20に対し制御信号を送信する。他方、車両20の通信手段21は、時刻t2(
図4参照)から送信周期tpcだけ経過した時点(
図4における時刻t4参照)に、充電器10に対し制御信号を送信する。以降、充電器10の通信手段11及び車両20の通信手段21は、ビーコンが再び発信されるまで、交互に制御信号を送信する。
【0057】
尚、
図4における時刻t0と時刻t7との差が、ビーコンの発信周期tpbに相当する。ビーコンの発信tpbは、例えば100ミリ秒である。
【0058】
ここで、オフセット時間について説明を加える。
【0059】
オフセット時間toaについては、2×(DIFC)+CWmax+(フレーム占有時間)<toa<tpcという関係式を満たすことが望ましい。オフセット時間tosについては、2×(DIFC)+CWmax+(フレーム占有時間)<tos<tpcという関係式を満たすことが望ましい。
【0060】
また、オフセット時間toaとオフセット時間tosとの差分は、2×(DIFC)+CWmax+(フレーム占有時間)<|tos−toa|<tpc/2という関係式を満たすことが望ましい。つまり、
図4に示したように、オフセット時間toaがオフセット時間tosよりも短い場合、オフセット時間tosは、オフセット時間toaより最大で“tpc/2”だけ長くなる。他方、オフセット時間tosがオフセット時間toaよりも短い場合、オフセット時間toaは、オフセット時間tosより最大で“tpc/2”だけ長くなる。
【0061】
本実施例に係る「充電器10」及び「車両20」は、夫々、本発明に係る「第1無線通信装置」及び「第2無線通信装置」の一例である。本実施例に係る「CPU12」及び「ビーコン15」は、夫々、本発明に係る「オフセット時間設定手段」及び「基準信号発信手段」の一例である。
【0062】
本実施例に係る「制御信号(充電器)」、「制御信号(車)」、「オフセット時間tosを示す信号」及び「ビーコン」は、夫々、本発明に係る「第1信号」、「第2信号」、「第3信号」及び「第1基準信号」の一例である。本実施例に係る「オフセット時間toa」、「オフセット時間tos」、「送信周期tpc」及び「発信周期tpb」は、夫々、本発明に係る「第1オフセット時間」、「第2オフセット時間」、「第1周期」及び「第2周期」の一例である。
【0063】
<第2実施例>
本発明の無線通信システムに係る第2実施例について、
図5乃至
図7を参照して説明する。第2実施例では、無線通信システムの通信範囲と、他の無線通信システムの通信範囲とが重なっている以外は、第1実施例に係る無線通信システムの構成と同様であるので、第1実施例と重複する説明を省略すると共に、図面における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に、第1実施例と異なる点についてのみ、
図5乃至
図7を参照して説明する。
図5は、第2実施例に係る無線通信システムの概要を示す概念図である。
【0064】
図5において、無線通信システム1は、充電器10及び車両20を備えて構成されており、無線通信システム2は、充電器30及び車両40を備えて構成されている。尚、充電器30及び車両40各々の構成は、充電器10及び車両20各々の構成と同様である。
【0065】
充電器10及び車両20間において電力伝送が実施されている際に、無線通信システム2を構成する充電器30及び車両40間において電力伝送が新たに開始される場合の動作について、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0066】
無線通信システム1における電力伝送に伴い、充電器10及び車両20間において制御信号の送受信が行われている場合、充電器10は、ビーコン15(
図2参照)から発信されるビーコンに、制御通信(即ち、制御信号の送受信)が行われていることを示す情報を付加する。
【0067】
このため、充電器10のビーコン15から発信されたビーコンを受信可能な無線通信システム(ここでは、無線通信システム2)は、受信したビーコンから既に制御通信を行っている無線通信システムが存在することを認識可能となる。
【0068】
図6において、充電器30及び車両40間において電力伝送を開始する際に、充電器30は、無線通信システム1の充電器10に対し、充電制御を開始することを示す信号を送信する。尚、充電制御を開始することを示す信号の送信前に、充電器30及び車両40間において所定の認証処理が実施される(図示せず)。
【0069】
充電制御を開始することを示す信号を受信した充電器10のCPU12(
図2参照)は、ビーコン15から発信されるビーコンを基準とする充電器30から発信されるビーコンに係るオフセット時間tob1を設定する。続いて、充電器10の通信手段11(
図2参照)は、充電器30に対し、設定されたオフセット時間tob1を示す信号を送信する。この際、通信手段は、例えば、無線通信システム1における送信周期tpc0(第1実施例に係る“tpc”に相当)と、オフセット時間の差分である“tos0−toa0”(第1実施例に係る“tos−toa”に相当)と、を示す信号も、充電器30に対し送信する。
【0070】
充電器30は、該充電器10に係るオフセット時間toa1と、車両40に係るオフセット時間tos1とを設定する。続いて、充電器30は、車両40に対し、設定されたオフセット時間tos1を示す信号を送信する。
【0071】
次に、充電器10のビーコン15からビーコンが発信された時点(
図7における時刻t0参照)から、オフセット時間toa0だけ経過した時点(
図7における時刻t1参照)に、充電器10の通信手段11は、車両20に対し制御信号を送信する。充電器30は、充電器10からビーコンが発信された時点からオフセット時間tob1だけ経過した時点(
図7における時刻t2参照)に、ビーコンを発信する。
【0072】
充電器30は、該充電器30からビーコンが発信された時点からオフセット時間toa1だけ経過した時点(
図7における時刻t3参照)に、車両40に対し制御信号を送信する。
【0073】
車両20の通信手段21(
図2参照)は、充電器10からビーコンが発信された時点からオフセット時間tos0だけ経過した時点(
図7における時刻t4参照)に、充電器10に対し制御信号を送信する。車両40は、充電器30からビーコンが発信された時点からオフセット時間tos1だけ経過した時点(
図7における時刻t5参照)に、充電器30に対し制御信号を送信する。
【0074】
充電器10の通信手段11は、時刻t1から送信周期tpc0だけ経過した時点(
図7における時刻(
図7における時刻t6参照)に、車両20に対し制御信号を送信する。充電器30は、時刻t3から送信周期tpc1だけ経過した時点(
図7における時刻t7参照)に、車両40に対し制御信号を送信する。
【0075】
車両20の通信手段21は、時刻t4から送信周期tpc0だけ経過した時点(
図7における時刻t8参照)に、充電器10に対し制御信号を送信する。車両40は、時刻t5から送信周期tpc1だけ経過した時点(
図7における時刻t9参照)に、充電器30に対し制御信号を送信する。
【0076】
その後、充電器10のビーコン15は、時刻t0から発信周期tpb0だけ経過した時点(
図7における時刻t10参照)にビーコンを発信する。他方、充電器30は、時刻t2から発信周期tpb1だけ経過した時点(
図7における時刻t11参照)にビーコンを発信する。
【0077】
尚、充電器30は、充電器10から発信されるビーコン(即ち、無線通信システム1のビーコン)を基準とした、充電器30及び車両40各々に係るオフセット時間を設定してもよい。この場合、充電器30はビーコンを発信しなくてもよい。
【0078】
オフセット時間toa0及びtoa1各々は、上述した第1実施例におけるオフセット時間toaと同様に設定されることが望ましい。オフセット時間tos0及びtos1各々は、上述した第1実施例におけるオフセット時間tosと同様に設定されることが望ましい。
【0079】
ビーコンに係るオフセット時間tob1については、2×(DIFS)+CWmax+(フレームの占有時間)<tob1<Tpcという関係式を満たすことが望ましい。
図7では、“Tpc”=“tpc0”=“tpc1”である。尚、3以上の無線通信システムが存在し、夫々の通信範囲が相互に重なっている場合のビーコンに係るオフセット時間は、2×(DIFS)+CWmax+(フレームの占有時間)<tobn<Tpcという関係式を満たすことが望ましい(“tobn”は、n番目のビーコンのオフセット時間を意味する)。
【0080】
本実施例に係る「充電器30から発信されるビーコン」及び「オフセット時間tob」は、夫々、本発明に係る「第2基準信号」及び「第3オフセット時間」の一例である。
【0081】
尚、
図7では、送信周期tpc0と送信周期tpc1とは同じ値であり、発信周期tpb0と発信周期tpb1とは同じ値であるが、送信周期tpc0と送信周期tpc1とが互いに異なり、発信周期tpb0と発信周期tpb1とが互いに異なっていてよい。
【0082】
<変形例>
第2実施例に係る無線通信システムの変形例について、
図8を参照して説明する。
【0083】
図8に示すように、変形例に係る無線通信システムでは、ビーコン群が送信される時間帯と、制御信号が送信される時間帯とが交互に現れる。ここで、ビーコン群が送信される時間帯の長さ、及び制御信号が送信される時間帯の長さは、ともに“Tpc/2”である。尚、
図8では、“Tpc/2”=“tpc0/2”=“tpc1/2”である。
【0084】
このように構成すれば、複数の無線通信システム各々の通信可能範囲が相互に重なる場合であっても、比較的容易にオフセット時間を設定することができる。特に、ビーコンに係るオフセット時間(ここでは、“tob1”)と、制御信号に係るオフセット時間(ここでは、“toa0”、“toa1”、“tos0”及び“tos1”)との間の調整が不要となり、実用上非常に有利である。
【0085】
変形例では、ビーコンに係るオフセット時間tobnは、2×(DIFS)+CWmax+(フレームの占有時間)<tobn<Tpc/2の範囲で設定される(ここでは、n=1)。また、制御信号に係るオフセット時間は、Tpc/2<toan<Tpc、Tpc/2<tosn<Tpcの範囲で夫々設定される(尚、n=0、1)。
【0086】
尚、
図8において、時刻0〜時刻Tbpが、充電器10のビーコンの発信周期tbp0に相当し、時刻t1〜時刻t2が、充電器30のビーコンの発信周期tbp1に相当する。
図8において、充電器10及び充電器30各々のビーコンの発信周期は、ともにTbpである(即ち、“tbp0=tbp1=Tbp”)。
【0087】
上述した実施例では、“no MAC ACK”の場合の動作を示したが、本発明は“no MAC ACK”の場合に限らず、“MAC ACK”の場合にも適用可能であることは言うまでもない。“MAC ACK”の場合は、
図4、7及び8に示した信号の他に、“ACK信号”が、車両20又は40からの制御信号の送信に先立って、車両20又は40から対応する充電器10又は30に対して送信される。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う無線通信システム及び方法、並びに無線通信装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。