特許第6396539号(P6396539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396539無線通信システム及び方法、並びに無線通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396539
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】無線通信システム及び方法、並びに無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20090101AFI20180913BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20180913BHJP
【FI】
   H04W74/08
   H04W84/12
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-117654(P2017-117654)
(22)【出願日】2017年6月15日
(62)【分割の表示】特願2015-521204(P2015-521204)の分割
【原出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2017-200213(P2017-200213A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】大石 博一
【審査官】 松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−147324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互にCSMA/CA方式の無線通信を行う第1装置及び第2装置を備える無線通信システムであって、
前記第1装置は、第1基準信号を発信し、前記第1基準信号を発信してから第1オフセット時間経過時点から前記第2装置に対し第1周期で信号送信を開始し、
前記第2装置は、前記第1基準信号が発信されてから前記第1オフセット時間とは異なる第2オフセット時間経過時点から前記第1装置に対し前記第1周期で信号送信を開始し、
前記第1オフセット時間は、DIFSの2倍の、コンテンション・ウィンドウの最大値と、前記信号送信に係る占有時間を加算した値よりも大きい
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
相互にCSMA/CA方式の無線通信を行う第1装置及び第2装置を備える無線通信システムの通信方法であって、
前記第1装置が、第1基準信号を発信し、前記第1基準信号を発信してから第1オフセット時間経過時点から前記第2装置に対し第1周期で信号送信を開始する工程と、
前記第2装置が、前記第1基準信号が発信されてから前記第1オフセット時間とは異なる第2オフセット時間経過時点から前記第1装置に対し前記第1周期で信号送信を開始する工程と、
を備え、
前記第1オフセット時間は、DIFSの2倍の、コンテンション・ウィンドウの最大値と、前記信号送信に係る占有時間を加算した値よりも大きい
ことを特徴とする通信方法。
【請求項3】
二つの装置を備えるCSMA/CA方式の無線通信システムの一方の装置であって、
前記二つの装置のうち他方の装置に対し第1周期で信号送信を行う通信手段と、
基準信号を発信する発信手段と、
前記二つの装置各々のオフセット時間を決定する決定手段と、
を備え、
前記決定手段は、当該一方の装置に係るオフセット時間を、DIFSの2倍の、コンテンション・ウィンドウの最大値と、前記信号送信に係る占有時間を加算した値よりも大きい値に決定し、
前記通信手段は、前記他方の装置に係るオフセット時間を示す信号を送信すると共に、前記基準信号が発信されてから当該一方の装置に係るオフセット時間経過時点から前記他方の装置に対し前記第1周期で前記信号送信を開始する
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
二つの装置を備えるCSMA/CA方式の無線通信システムの一方の装置であって、
前記二つの装置のうち他方の装置に対し第1周期で信号送信を行う通信手段を備え、
前記通信手段は、DIFSの2倍の、コンテンション・ウィンドウの最大値と、前記信号送信に係る占有時間を加算した値よりも大きい値であって、前記他方の装置から当該一方の装置に係るオフセット時間を示す信号を受信すると共に、前記他方の装置から基準信号が発信されてから前記オフセット時間経過時点から前記他方の装置に対し前記第1周期で前記信号送信を開始する
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム及び方法、並びに無線通信装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムでは、無線通信の衝突発生の抑制が図られる。例えば特許文献1では、同一チャンネルを使用する複数の無線局から構成される無線ネットワークが存在する場合に、他の無線ネットワークに帰属する無線局が送信する信号を検出し、該検出された信号を元に衝突回避時間を決定することによって、無線局が送信する信号の衝突確率を低減する技術が提案されている。
【0003】
或いは、特許文献2では、送信バッファ内にデータパケットが2以上存在する場合、2番目のデータパケットの送信時のバックオフ制御に使用する乱数値を1番目のデータパケットの送信時に発生させ、その乱数値を1番目のデータパケットに書き込み、1番目のデータパケットに対するACKパケットを無線基地局から受信し、該ACKパケット内に書き込まれた乱数値を読み込んで2番目のデータパケットの送信時のバックオフ制御に使用することによって、無線端末から送信されるデータパケットが衝突する確率を低減する技術が提案されている。
【0004】
或いは、特許文献3では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)等の方式により無線パケットの衝突回避を実現している場合に、共通チャンネルの使用状況を収集して、所定時間経過した時点で共通チャンネルに空き時間が多かったか否かを判定し、衝突回避時間の最大値を変更又は保持し、通信システムの伝送効率を改善する技術が提案されている。
【0005】
或いは、特許文献4では、無線基地局装置又は無線端末装置がデータパケットを送信する際に、一定期間及びランダム期間キャリアセンスを実施した後の送信権利獲得時に、最初にデータを持たないパケットを送信し、該パケット送信完了後に、キャリアセンスを行わない短い間隔で連続してデータパケットを送信する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−266950号公報
【特許文献2】特開2004−242204号公報
【特許文献3】特開2005−12275号公報
【特許文献4】特開2008−206024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非接触電力伝送を実施可能な充電装置と、該充電装置の充電対象物との間では、電力伝送中に、例えば要求電圧、要求電流、バッテリ残量等の充電に係る情報が授受されることが多い。非接触電力伝送を実施可能な充電装置では、無線通信により充電に係る情報が授受されることが多い。ここで特に、電力伝送中は、情報のリアルタイム性が重視されるため、一定周期で充電に係る情報が授受されることが望まれる。
【0008】
しかしながら、この充電に係る情報の授受に、例えば特許文献1乃至4に記載の技術を適用すると、無線通信の衝突回避制御に起因して、送信タイミングがずれる可能性がある(つまり、一定周期での情報の授受が困難になる可能性がある)という技術的問題点がある。
【0009】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、通信の衝突を回避しつつ、定期的な通信に適する無線通信システム及び方法、並びに無線通信装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線通信システムは、上記課題を解決するために、相互にCSMA/CA方式の無線通信を行う第1装置及び第2装置を備える無線通信システムであって、前記第1装置は、第1基準信号を発信し、前記第1基準信号を発信してから第1オフセット時間経過時点から前記第2装置に対し第1周期で信号送信を開始し、前記第2装置は、前記第1基準信号が発信されてから前記第1オフセット時間とは異なる第2オフセット時間経過時点から前記第1装置に対し前記第1周期で信号送信を開始し、前記第1オフセット時間は、DIFSの2倍の、コンテンション・ウィンドウの最大値と、前記信号送信に係る占有時間を加算した値よりも大きい。
【0011】
本発明の無線通信方法は、上記課題を解決するために、相互にCSMA/CA方式の無線通信を行う第1装置及び第2装置を備える無線通信システムの通信方法であって、前記第1装置が、第1基準信号を発信し、前記第1基準信号を発信してから第1オフセット時間経過時点から前記第2装置に対し第1周期で信号送信を開始する工程と、前記第2装置が、前記第1基準信号が発信されてから前記第1オフセット時間とは異なる第2オフセット時間経過時点から前記第1装置に対し前記第1周期で信号送信を開始する工程と、を備え、前記第1オフセット時間は、DIFSの2倍の、コンテンション・ウィンドウの最大値と、前記信号送信に係る占有時間を加算した値よりも大きい。
【0012】
本発明の第1の無線通信装置は、上記課題を解決するために、二つの装置を備えるCSMA/CA方式の無線通信システムの一方の装置であって、前記二つの装置のうち他方の装置に対し第1周期で信号送信を行う通信手段と、基準信号を発信する発信手段と、前記二つの装置各々のオフセット時間を決定する決定手段と、を備え、前記決定手段は、当該一方の装置に係るオフセット時間を、DIFSの2倍の、コンテンション・ウィンドウの最大値と、前記信号送信に係る占有時間を加算した値よりも大きい値に決定し、前記通信手段は、前記他方の装置に係るオフセット時間を示す信号を送信すると共に、前記基準信号が発信されてから当該一方の装置に係るオフセット時間経過時点から前記他方の装置に対し前記第1周期で前記信号送信を開始する。
【0013】
本発明の第2の無線通信装置は、上記課題を解決するために、二つの装置を備えるCSMA/CA方式の無線通信システムの一方の装置であって、前記二つの装置のうち他方の装置に対し第1周期で信号送信を行う通信手段を備え、前記通信手段は、DIFSの2倍の値、コンテンション・ウィンドウの最大値と、前記信号送信に係る占有時間を加算した値よりも大きい値であって、前記他方の装置から当該一方の装置に係るオフセット時間を示す信号を受信すると共に、前記他方の装置から基準信号が発信されてから前記オフセット時間経過時点から前記他方の装置に対し前記第1周期で前記信号送信を開始する。

【0014】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施例に係る無線通信システムの概要を示す概念図である。
図2】第1実施例に係る無線通信システムの要部を示すブロック図である。
図3】第1実施例に係る無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
図4】第1実施例に係る信号の送信タイミングを示す概念図である。
図5】第2実施例に係る無線通信システムの概要を示す概念図である。
図6】第2実施例に係る無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
図7】第2実施例に係る信号の送信タイミングを示す概念図である。
図8】第2実施例の変形例に係る信号の送信タイミングを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の無線通信システム及び方法、並びに無線通信装置に係る実施形態について説明する。
【0017】
(無線通信システム)
実施形態に係る無線通信システムは、バックオフ制御を採用する無線通信システムである。当該無線通信システムは、第1無線通信装置と第2無線通信装置とを備えて構成されている。尚、第1無線通信装置及び第2無線通信装置は、例えばIEEE802.11等の規格に従って無線通信可能に構成されている。
【0018】
第1無線通信装置は、第2無線通信装置に対し第1信号を第1周期で送信する。第2無線通信装置は、第1無線通信装置が第1信号を送信した時点から、第1周期の1周期よりも短い一定時間遅れて、該第1無線通信装置に対し第2信号を送信する。
【0019】
ここで「一定時間」は、第1無線通信装置及び第2無線通信装置間において無線通信が実施される前に、例えば無線通信の衝突が生じないような時間として決定される。
【0020】
当該無線通信システムでは、上述の如く、第1無線通信装置から第1信号が送信された後、一定時間遅れて第2無線通信装置から第2信号が送信される。このため、第1信号と第2信号との衝突を好適に回避することができる。
【0021】
尚、バックオフ制御を採用する無線通信システムでは、バックオフ時間が乱数値とスロットタイムとの積で決定される。しかしながら、本実施形態では、第2無線通信装置が、第1信号が送信されてから一定時間遅れて第2信号を送信するように構成されている。このため、バックオフ制御における乱数値に起因する送信タイミングのずれを回避することができる。
【0022】
従って、当該無線通信システムによれば、通信の衝突を回避しつつ定期的な通信を実現することができる。
【0023】
実施形態に係る無線通信システムの一態様では、第1無線通信装置は、更に、第1周期よりも長い第2周期で第1基準信号を発信する。尚、「第1基準信号」には、例えば、第1無線通信装置に係る識別情報等が含まれていてよい。
【0024】
第1無線通信装置は、第2周期に係る1周期において、第1基準信号が発信された時点から第1オフセット時間だけ経過した時点から、第2無線通信装置に対し第1信号を第1周期で送信する。第1無線通信装置は、更に、第1オフセット時間と一定時間とを加算した時間である第2オフセット時間を示す第3信号を、第2無線通信装置に対し送信する。
【0025】
第2無線通信装置は、第2周期に係る1周期において、第1基準信号が発信された時点から第2オフセット時間だけ経過した時点から、第1無線通信装置に対し第2信号を第1周期で送信する。
【0026】
このように構成すれば、例えば、第1基準信号が発信される度に、第1信号及び第2信号の送信タイミングの誤差を修正することができるので、実用上非常に有利である。
【0027】
実施形態に係る無線通信システムの他の態様では、当該無線通信システムは、CSMA/CA方式を用いている。
【0028】
この態様では、第1オフセット時間は、DIFS(Distributed Coordination Fnction Interframe Space)の2倍の値と、コンテンション・ウィンドウの最大値と、第1信号の送信に係る占有時間とを加算した値よりも大きくてよい。このように構成すれば、“no MAC ACK”の場合に、通信の衝突を確実に回避することができ、実用上非常に有利である。
【0029】
或いは、この態様では、第1オフセット時間は、DIFSの2倍の値と、コンテンション・ウィンドウの最大値と、第1信号の送信に係る占有時間と、SIFS(Short Interframe Space)と、ACKフレームに係る占有時間とを加算した値よりも大きくてよい。このように構成すれば、“MAC ACK”の場合に、通信の衝突を確実に回避することができ、実用上非常に有利である。
【0030】
実施形態に係る無線通信システムの他の態様では、第1無線通信装置は、当該無線通信システムとは異なる他の無線通信システムに係る第2基準信号が、第1基準信号が発信された時点から第3オフセット時間だけ経過した時点に発信されるように、他の無線通信システムに対し、第3オフセット時間を示す信号を送信する。
【0031】
このように構成すれば、当該無線通信システムと他の無線通信システムとが互いに干渉することを抑制することができ、実用上非常に有利である。
【0032】
(無線通信方法)
実施形態に係る無線通信方法は、第1無線通信装置及び第2無線通信装置を備え、バックオフ制御を採用する無線通信システムにおける無線通信方法である。当該無線通信方法は、第1無線通信装置が、第2無線通信装置に対し第1信号を第1周期で送信する第1送信工程と、第2無線通信装置が、第1無線通信装置が第1信号を送信した時点から、第1周期の1周期より短い一定時間遅れて、第1無線通信装置に対し第2信号を送信する第2送信工程と、を備える。
【0033】
当該無線通信方法によれば、上述した実施形態に係る無線通信システムと同様に、通信の衝突を回避しつつ定期的な通信を実現することができる。尚、当該無線通信方法においても、上述した実施形態に係る無線通信システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることができる。
【0034】
(無線通信装置)
実施形態に係る第1の無線通信装置は、二つの無線通信装置からなり、バックオフ制御を採用する無線通信システムにおける一方の無線通信装置であって、無線通信を実行可能な通信手段と、基準信号を発信する基準信号発信手段と、二つの無線通信装置各々に係る基準信号に対するオフセット時間を決定するオフセット時間決定手段と、を備える。
【0035】
通信手段は、二つの無線通信装置のうち他方の無線通信装置に対して、決定されたオフセット時間を示す信号を送信すると共に、基準信号が発信されてから当該一方の無線通信装置に係るオフセット時間だけ経過した後に他方の無線通信装置に対し、所定周期での信号の送信を開始する。
【0036】
当該第1の無線通信装置によれば、上述した実施形態に係る無線通信システムと同様に、通信の衝突を回避しつつ定期的な通信を実現することができる。
【0037】
実施形態に係る第2の無線通信装置は、二つの無線通信装置からなり、バックオフ制御を採用する無線通信システムにおける一方の無線通信装置であって、無線通信を実行可能な通信手段を備える。
【0038】
通信手段は、二つの無線通信装置のうち他方の無線通信装置により決定されたオフセット時間を示す信号を受信すると共に、他方の無線通信装置から基準信号が発信されてから受信した信号により示されるオフセット時間だけ経過した後に、他方の無線通信装置に対し、所定周期での信号の送信を開始する。
【0039】
当該第2の無線通信装置によれば、上述した実施形態に係る無線通信システムと同様に、通信の衝突を回避しつつ定期的な通信を実現することができる。
【実施例】
【0040】
本発明の無線通信システムに係る実施例について、図面に基づいて説明する。
【0041】
<第1実施例>
本発明の無線通信システムに係る第1実施例について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、第1実施例に係る無線通信システムの概要を示す概念図である。図2は、第1実施例に係る無線通信システムの要部を示すブロック図である。
【0042】
図1において、無線通信システム1は、非接触電力伝送可能な充電器10と、例えば電気自動車等の車両20と、を備えて構成されている。充電器10は地面に埋設された送電部を有しており、他方、車両20は、その底部に受電部を有している。そして、充電器10及び車両20は、送電部及び受電部を介して非接触で電力伝送を行う。尚、非接触の電力伝送には、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細については説明を割愛する。
【0043】
図2において、充電器10は、通信手段11、CPU(Central Processing Unit)12、RAM(Random Access Memory)13、ROM(Read Only Memory)14、及びビーコン15を備えて構成されている。尚、充電器10は、図2に示した構成要素以外に、例えば送電回路等を備えているが、本発明との関連性が低いので図示を省略している。
【0044】
車両20は、通信手段21、CPU22、RAM23及びROM24を備えて構成されている。尚、車両20についても、本発明との関連性が低い構成要素については図示を省略している。
【0045】
無線通信システム1では、非接触で電力伝送が行われている間、故障や異常を速やかに検知することを目的として、充電器10と車両20との間で装置の状態を示す情報が無線通信により送受信される。本実施例では、IEEE802.11規格に従い、CSMA/CA方式により衝突回避を行う無線通信を一例として挙げる。このように既存の無線通信の方式を採用することにより、当該無線通信システム1の導入費用等を抑制することができ、実用上非常に有利である。
【0046】
無線通信システム1における故障や異常を速やかに検知するためには、充電器10と車両20との間で、一定周期で信号が送受信されることが望ましい。無線通信により一定周期で信号を送受信するためには、通信の衝突を回避する必要がある。ここで、通信の衝突を回避する方法として、例えば充電器10と車両20との同期をとる方法が考えられる。しかしながら、充電器10と車両20との間でどのように同期をとるかについては、具体的な規格が定められていない。仮に独自の規格を定めてしまうと汎用性が失われる可能性がある。
【0047】
また、CSMA/CA方式では通信中の装置が検出された場合は、CW(Contention Window)の範囲内の乱数と所定のスロットルタイムとを積算した時間だけ通信の待ち時間が発生する。すると、該待ち時間が通信のジッタとなってしまう。当該無線通信システム1における上位層(例えばアプリケーション層等)が一定周期で動作しているにもかかわらず、無線通信に係る層がジッタを含んだ動作となってしまうと、装置の状態を示す情報のリアルタイム性が損なわれる可能性がある。
【0048】
そこで本実施例では、先ず、充電器10と車両20とが通信を開始する際に、車両20の通信手段21からパイロット信号の送信周期を示す信号が、充電器10に対し送信される。該信号を受信した充電器10は、必要であれば、該受信された信号により示される送信周期となるように送信周期を調整する。尚、送信周期は、例えば充電器10のRAM13等に格納される。
【0049】
次に、充電器10のCPU12は、該充電器10のビーコン15から発信されるビーコンを基準とするオフセット時間を、充電器10及び車両20各々について設定する。ここで、充電器10に係るオフセット時間と、車両20に係るオフセット時間とは相互に異なっている。
【0050】
そして、ビーコンが発信されてから設定されたオフセット時間が経過した後に、充電器10及び車両20各々が信号を送信し、その後は上記送信周期で互いに信号を送信することにより、通信の衝突を回避しつつ、定期的な信号の送受信を実現している。
【0051】
ここで、オフセット時間は、CSMA/CA方式による衝突回避動作が発生しないように設定される。具体的には例えば、“no MAC ACK”の場合、オフセット時間は、“2×(DIFS)+CWmax+(フレーム占有時間)”よりも長い時間として設定される。他方“MAC ACK”の場合、オフセット時間は、“2×(DIFS)+CWmax+(フレーム占有時間)+SIFS+(ACKフレーム占有時間)”よりも長い時間として設定される。尚、オフセット時間は、CSMA/CA方式のバックオフ時間に基づき、そのバックオフ時間は優先度の高い信号の場合、通常数百マイクロ秒程度であり、最大の場合でも約1ミリ秒である。
【0052】
次に、以上のように構成された無線通信システム1の動作を、図3及び図4を参照して説明する。尚、図3及び図4は、“no MAC ACK”の場合の動作を示している。
【0053】
図3において、先ず、充電器10及び車両20間において電力伝送を行うために、車両20の通信手段21は、充電器10に対し、認証に係る情報及び各種パラメータを示す信号を送信する。この際、車両20の通信手段21は、充電器10に対し、パイロット信号の送信周期を示す信号も送信する。
【0054】
所定の認証処理が終了した後、充電器10のCPU12は、該充電器10に係るオフセット時間toaと、車両20に係るオフセット時間tosとを設定する。充電器10の通信手段11は、車両20に対し、設定されたオフセット時間tosを示す信号を送信する。
【0055】
次に、充電器10のビーコン15からビーコンが発信された時点(図4における時刻t0参照)から、オフセット時間toaだけ経過した時点(図4における時刻t1参照)に、充電器10の通信手段11は、車両20に対し制御信号を送信する。車両20の通信手段21は、充電器10からビーコンが発信された時点からオフセット時間tosだけ経過した時点(図4における時刻t2参照)に、充電器10に対し制御信号を送信する。
【0056】
その後、充電器10の通信手段11は、時刻t1(図4参照)から送信周期tpcだけ経過した時点(図4における時刻t3参照)に、車両20に対し制御信号を送信する。他方、車両20の通信手段21は、時刻t2(図4参照)から送信周期tpcだけ経過した時点(図4における時刻t4参照)に、充電器10に対し制御信号を送信する。以降、充電器10の通信手段11及び車両20の通信手段21は、ビーコンが再び発信されるまで、交互に制御信号を送信する。
【0057】
尚、図4における時刻t0と時刻t7との差が、ビーコンの発信周期tpbに相当する。ビーコンの発信tpbは、例えば100ミリ秒である。
【0058】
ここで、オフセット時間について説明を加える。
【0059】
オフセット時間toaについては、2×(DIFC)+CWmax+(フレーム占有時間)<toa<tpcという関係式を満たすことが望ましい。オフセット時間tosについては、2×(DIFC)+CWmax+(フレーム占有時間)<tos<tpcという関係式を満たすことが望ましい。
【0060】
また、オフセット時間toaとオフセット時間tosとの差分は、2×(DIFC)+CWmax+(フレーム占有時間)<|tos−toa|<tpc/2という関係式を満たすことが望ましい。つまり、図4に示したように、オフセット時間toaがオフセット時間tosよりも短い場合、オフセット時間tosは、オフセット時間toaより最大で“tpc/2”だけ長くなる。他方、オフセット時間tosがオフセット時間toaよりも短い場合、オフセット時間toaは、オフセット時間tosより最大で“tpc/2”だけ長くなる。
【0061】
本実施例に係る「充電器10」及び「車両20」は、夫々、本発明に係る「第1無線通信装置」及び「第2無線通信装置」の一例である。本実施例に係る「CPU12」及び「ビーコン15」は、夫々、本発明に係る「オフセット時間設定手段」及び「基準信号発信手段」の一例である。
【0062】
本実施例に係る「制御信号(充電器)」、「制御信号(車)」、「オフセット時間tosを示す信号」及び「ビーコン」は、夫々、本発明に係る「第1信号」、「第2信号」、「第3信号」及び「第1基準信号」の一例である。本実施例に係る「オフセット時間toa」、「オフセット時間tos」、「送信周期tpc」及び「発信周期tpb」は、夫々、本発明に係る「第1オフセット時間」、「第2オフセット時間」、「第1周期」及び「第2周期」の一例である。
【0063】
<第2実施例>
本発明の無線通信システムに係る第2実施例について、図5乃至図7を参照して説明する。第2実施例では、無線通信システムの通信範囲と、他の無線通信システムの通信範囲とが重なっている以外は、第1実施例に係る無線通信システムの構成と同様であるので、第1実施例と重複する説明を省略すると共に、図面における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に、第1実施例と異なる点についてのみ、図5乃至図7を参照して説明する。図5は、第2実施例に係る無線通信システムの概要を示す概念図である。
【0064】
図5において、無線通信システム1は、充電器10及び車両20を備えて構成されており、無線通信システム2は、充電器30及び車両40を備えて構成されている。尚、充電器30及び車両40各々の構成は、充電器10及び車両20各々の構成と同様である。
【0065】
充電器10及び車両20間において電力伝送が実施されている際に、無線通信システム2を構成する充電器30及び車両40間において電力伝送が新たに開始される場合の動作について、図6及び図7を参照して説明する。
【0066】
無線通信システム1における電力伝送に伴い、充電器10及び車両20間において制御信号の送受信が行われている場合、充電器10は、ビーコン15(図2参照)から発信されるビーコンに、制御通信(即ち、制御信号の送受信)が行われていることを示す情報を付加する。
【0067】
このため、充電器10のビーコン15から発信されたビーコンを受信可能な無線通信システム(ここでは、無線通信システム2)は、受信したビーコンから既に制御通信を行っている無線通信システムが存在することを認識可能となる。
【0068】
図6において、充電器30及び車両40間において電力伝送を開始する際に、充電器30は、無線通信システム1の充電器10に対し、充電制御を開始することを示す信号を送信する。尚、充電制御を開始することを示す信号の送信前に、充電器30及び車両40間において所定の認証処理が実施される(図示せず)。
【0069】
充電制御を開始することを示す信号を受信した充電器10のCPU12(図2参照)は、ビーコン15から発信されるビーコンを基準とする充電器30から発信されるビーコンに係るオフセット時間tob1を設定する。続いて、充電器10の通信手段11(図2参照)は、充電器30に対し、設定されたオフセット時間tob1を示す信号を送信する。この際、通信手段は、例えば、無線通信システム1における送信周期tpc0(第1実施例に係る“tpc”に相当)と、オフセット時間の差分である“tos0−toa0”(第1実施例に係る“tos−toa”に相当)と、を示す信号も、充電器30に対し送信する。
【0070】
充電器30は、該充電器10に係るオフセット時間toa1と、車両40に係るオフセット時間tos1とを設定する。続いて、充電器30は、車両40に対し、設定されたオフセット時間tos1を示す信号を送信する。
【0071】
次に、充電器10のビーコン15からビーコンが発信された時点(図7における時刻t0参照)から、オフセット時間toa0だけ経過した時点(図7における時刻t1参照)に、充電器10の通信手段11は、車両20に対し制御信号を送信する。充電器30は、充電器10からビーコンが発信された時点からオフセット時間tob1だけ経過した時点(図7における時刻t2参照)に、ビーコンを発信する。
【0072】
充電器30は、該充電器30からビーコンが発信された時点からオフセット時間toa1だけ経過した時点(図7における時刻t3参照)に、車両40に対し制御信号を送信する。
【0073】
車両20の通信手段21(図2参照)は、充電器10からビーコンが発信された時点からオフセット時間tos0だけ経過した時点(図7における時刻t4参照)に、充電器10に対し制御信号を送信する。車両40は、充電器30からビーコンが発信された時点からオフセット時間tos1だけ経過した時点(図7における時刻t5参照)に、充電器30に対し制御信号を送信する。
【0074】
充電器10の通信手段11は、時刻t1から送信周期tpc0だけ経過した時点(図7における時刻(図7における時刻t6参照)に、車両20に対し制御信号を送信する。充電器30は、時刻t3から送信周期tpc1だけ経過した時点(図7における時刻t7参照)に、車両40に対し制御信号を送信する。
【0075】
車両20の通信手段21は、時刻t4から送信周期tpc0だけ経過した時点(図7における時刻t8参照)に、充電器10に対し制御信号を送信する。車両40は、時刻t5から送信周期tpc1だけ経過した時点(図7における時刻t9参照)に、充電器30に対し制御信号を送信する。
【0076】
その後、充電器10のビーコン15は、時刻t0から発信周期tpb0だけ経過した時点(図7における時刻t10参照)にビーコンを発信する。他方、充電器30は、時刻t2から発信周期tpb1だけ経過した時点(図7における時刻t11参照)にビーコンを発信する。
【0077】
尚、充電器30は、充電器10から発信されるビーコン(即ち、無線通信システム1のビーコン)を基準とした、充電器30及び車両40各々に係るオフセット時間を設定してもよい。この場合、充電器30はビーコンを発信しなくてもよい。
【0078】
オフセット時間toa0及びtoa1各々は、上述した第1実施例におけるオフセット時間toaと同様に設定されることが望ましい。オフセット時間tos0及びtos1各々は、上述した第1実施例におけるオフセット時間tosと同様に設定されることが望ましい。
【0079】
ビーコンに係るオフセット時間tob1については、2×(DIFS)+CWmax+(フレームの占有時間)<tob1<Tpcという関係式を満たすことが望ましい。図7では、“Tpc”=“tpc0”=“tpc1”である。尚、3以上の無線通信システムが存在し、夫々の通信範囲が相互に重なっている場合のビーコンに係るオフセット時間は、2×(DIFS)+CWmax+(フレームの占有時間)<tobn<Tpcという関係式を満たすことが望ましい(“tobn”は、n番目のビーコンのオフセット時間を意味する)。
【0080】
本実施例に係る「充電器30から発信されるビーコン」及び「オフセット時間tob」は、夫々、本発明に係る「第2基準信号」及び「第3オフセット時間」の一例である。
【0081】
尚、図7では、送信周期tpc0と送信周期tpc1とは同じ値であり、発信周期tpb0と発信周期tpb1とは同じ値であるが、送信周期tpc0と送信周期tpc1とが互いに異なり、発信周期tpb0と発信周期tpb1とが互いに異なっていてよい。
【0082】
<変形例>
第2実施例に係る無線通信システムの変形例について、図8を参照して説明する。
【0083】
図8に示すように、変形例に係る無線通信システムでは、ビーコン群が送信される時間帯と、制御信号が送信される時間帯とが交互に現れる。ここで、ビーコン群が送信される時間帯の長さ、及び制御信号が送信される時間帯の長さは、ともに“Tpc/2”である。尚、図8では、“Tpc/2”=“tpc0/2”=“tpc1/2”である。
【0084】
このように構成すれば、複数の無線通信システム各々の通信可能範囲が相互に重なる場合であっても、比較的容易にオフセット時間を設定することができる。特に、ビーコンに係るオフセット時間(ここでは、“tob1”)と、制御信号に係るオフセット時間(ここでは、“toa0”、“toa1”、“tos0”及び“tos1”)との間の調整が不要となり、実用上非常に有利である。
【0085】
変形例では、ビーコンに係るオフセット時間tobnは、2×(DIFS)+CWmax+(フレームの占有時間)<tobn<Tpc/2の範囲で設定される(ここでは、n=1)。また、制御信号に係るオフセット時間は、Tpc/2<toan<Tpc、Tpc/2<tosn<Tpcの範囲で夫々設定される(尚、n=0、1)。
【0086】
尚、図8において、時刻0〜時刻Tbpが、充電器10のビーコンの発信周期tbp0に相当し、時刻t1〜時刻t2が、充電器30のビーコンの発信周期tbp1に相当する。図8において、充電器10及び充電器30各々のビーコンの発信周期は、ともにTbpである(即ち、“tbp0=tbp1=Tbp”)。
【0087】
上述した実施例では、“no MAC ACK”の場合の動作を示したが、本発明は“no MAC ACK”の場合に限らず、“MAC ACK”の場合にも適用可能であることは言うまでもない。“MAC ACK”の場合は、図4、7及び8に示した信号の他に、“ACK信号”が、車両20又は40からの制御信号の送信に先立って、車両20又は40から対応する充電器10又は30に対して送信される。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う無線通信システム及び方法、並びに無線通信装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
1、2…無線通信システム、10、30…充電器、20、40…車両、11、21…通信手段、12、22…CPU、13、23…RAM、14、24…ROM、15…ビーコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8