(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6396540
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】エスカレータ
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
B66B31/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-126483(P2017-126483)
(22)【出願日】2017年6月28日
【審査請求日】2017年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 哲也
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−279252(JP,A)
【文献】
特開平09−124265(JP,A)
【文献】
特開2009−067479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 25/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された多数の踏段と、
前記踏段の後輪が当接するガイドレールと、
前記踏段のうち特定の踏段の後部側に取付けられ、潤滑用の油を貯留するとともに貯留した油を前記ガイドレールに塗布する貯留・塗布手段と、
前記特定の踏段に踏板を装着したまま前記貯留・塗布手段へ油を補充可能な補充手段とを備え、
前記貯留・塗布手段は、
前記補充手段が接続して油が流入する油流入口と、該油流入口から流入した油を貯留する貯留部と、有する給油器と、
前記給油器と前記踏段とを、前記踏段の進行方向に直交する軸回りに回動可能なように連結するアングルと、
を備えることを特徴とするエスカレータ。
【請求項2】
前記給油器は、
給油器底側に取り付けられて前記ガイドレールに接触する油塗布部材と、
前記貯留部から油を前記油塗布部材へ滲み出させる油滲出構造と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のエスカレータ。
【請求項3】
前記油滲出構造では、油の滲出速度が調整可能であることを特徴とする請求項2に記載のエスカレータ。
【請求項4】
前記補充手段は、エスカレータ機械室に備えられ、
前記給油器が該エスカレータ機械室の設定位置に位置するときに前記補充手段から前記油流入口へ油が補充可能であることを特徴とする請求項2または3に記載のエスカレータ。
【請求項5】
前記給油器の後部側に、前記ガイドレールを清掃する清掃部材を備えることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載のエスカレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無端状に連結された多数の踏段と、踏段の後輪が当接するガイドレールとを備えたエスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータには、上階側と下階側とに亘って踏段用のガイドレールが設けられている。そして、踏段の車輪がこのガイドレールを転動しつつ踏段が移動する。そして、ガイドレールと踏段の車輪との間に生じる摩擦力を抑えるために、ガイドレールに定期的に潤滑油を給油している。
【0003】
ここで、踏段の後輪が当接するガイドレールにこの給油を行う際、通常、踏段を外した開口部から直接にガイドレールに給油し、更に、開口部の位置をずらして給油する、という作業を、2人の作業員が共同作業で繰り返して行っている。
【0004】
このような給油を行っているので、給油作業に時間がかかっている。しかも、踏段を外した開口部が生じるため作業の安全性確保に充分な注意を払う必要があり、このことは給油作業にかかる時間を更に増大させている。
【0005】
このため、作業時間を短縮するための提案がいくつかなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-319767号公報
【特許文献2】特開平10-279252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、踏段の後輪が当接するガイドレール全周にわたって踏段を外すことなく給油することには至っていない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、踏段の後輪が当接するガイドレール全周にわたって踏段を外すことなく給油することができるエスカレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係るエスカレータは、無端状に連結された多数の踏段と、前記踏段の後輪が当接するガイドレールと、前記踏段のうち特定の踏段の後部側に取付けられ、潤滑用の油を貯留するとともに貯留した油を前記ガイドレールに塗布する貯留・塗布手段と、前記特定の踏段に踏板を装着したまま前記貯留・塗布手段へ油を補充可能な補充手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエスカレータの外観を示す全体斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るエスカレータ構成を示す模式的な側面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係るエスカレータの踏段を説明する側面図。
【
図4】本発明の一実施形態に係るエスカレータで、給油器への給油を説明する模式的な側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るエスカレータを説明する。
図1は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)に係るエスカレータの外観を示す全体斜視図である。
図2は、本実施形態に係るエスカレータ構成を示す模式的な側面図である。
図3は、本実施形態に係るエスカレータの踏段を説明する側面図である。
図4は、本実施形態に係るエスカレータで、給油器への給油を説明する模式的な側面図である。
図5は、
図4で矢視Q−Qから見た給油器底面図である。
【0012】
本実施形態に係るエスカレータ10は、無端状に連結された多数の踏段12と、踏段12の後輪14が当接するガイドレール16(
図3参照)と、踏段12のうち特定の踏段12sの後部側に取付けられ、潤滑用の油L(
図4参照)を貯留するとともに貯留した油をガイドレール16に塗布する貯留・塗布手段18と、特定の踏段12sに踏板22を装着したまま貯留・塗布手段18へ油を補充可能な補充手段24と備える。本実施形態では、特定の踏段12sは、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、この特定の踏段12sの構成は他の踏段に比べて同じであってもよいし異ならせてもよい。
【0013】
本実施形態では、貯留・塗布手段18は給油器28(オイラー)を備える。この給油器28は、補充手段24が接続して油が流入する油流入口30と、油流入口30から流入した油を貯留する貯留部32と有する。油流入口30は、補充手段24が接続したときには開栓状態となり補充手段24が非接続のときには閉栓状態となる構成であることが好ましい。
【0014】
また、本実施形態では、給油器28は、アングル34によって特定の踏段12sの後部の下部に連結されている。この連結では回動可能に連結された構成であると、特定の踏段12sがガイドレール16に沿って移動する上で回動の自由度があって好ましい。
【0015】
更に、貯留・塗布手段18は、給油器28の底側に取り付けられてガイドレール16に接触する油塗布部材36と、貯留部32から油を油塗布部材36へ滲み出させる油滲出構造38とを備える。
【0016】
本実施形態では、油塗布部材36は、安価で簡単に入手し易いフェルト部材36fで構成されている。
【0017】
また、油滲出構造38としては、例えば、貯留部32の底に多数の滲出用の開口40(
図5参照)を備えていて、開口40の下側に当接しているフェルト部材36fに油が自重で滲出する構成であってもよい。この場合、貯留部32の底の内側に滲出速度調整用のシート状部材を配置してもよい。
【0018】
踏段12は、上記した踏板22および後輪14と、踏段側部を構成する踏段支え42と、前輪用のガイドレール(図示せず)が当接する前輪44とを備える。
【0019】
また、本実施形態では、補充手段24は、エスカレータ機械室R(
図4参照)に備えられており、給油器28がエスカレータ機械室Rの設定位置Pに位置するときに補充手段24から油流入口30へ油が供給可能になっている。
【0020】
補充手段24としては、例えば、給油器28の油流入口30に接続可能な接続口46を有する油補充ライン48をエスカレータ10が備えていて、エスカレータ機械室Rの設定位置Pでは、作業員がこの接続口46を油流入口30に接続できる構成であってもよい。また、給油器28が開閉可能な蓋を備えていて、作業員がこの蓋を開けて油を補充する構成であってもよい。
【0021】
更には、エスカレータ機械室Rで、オペレータが操作ボタンを押すことによって、特定の踏段12sの移動が設定位置Pで停止して接続口46が油流入口30に自動的に接続されて油が給油器28に供給される構成になっていてもよい。この場合、オペレータが操作ボタンを押さなくても、設定した日時や時刻に自動的に接続口46が油流入口30に接続されて油が供給されるようにしてもよい。
【0022】
また、補充手段24は、油を給油器28に供給する際に、給油器28に供給すべき油量を自動的に算出して、その算出結果に基づいて供給する構成にすることも可能である。
【0023】
また、補充手段24を、エスカレータ機械室Rに限らず、他の位置に配置することも可能である。
【0024】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果を説明する。
【0025】
エスカレータ10の稼働時には、後輪14がガイドレール16を転動しつつ特定の踏段12sおよび他の踏段が前方Fに移動していく。そして、フェルト部材36fの下側から滲出している油(潤滑油)がガイドレール面(後輪14が当接して転動する面)に塗布されていく。すなわち、踏段12のうち特定の踏段12sに簡易な構成の貯留・塗布手段18(給油器28、フェルト部材36f、油滲出構造38)を配置することで、特定の踏段12sがガイドレール16を移動する際にガイドレール16に油を塗布していく構成になっている。
【0026】
従って、給油器28の貯留部32には、補充手段24により油が補充されるので、作業員が踏板22を外して油を補充する必要はない。そして、特定の踏段12sが周回移動することでフェルト部材36fはガイドレール16の全周にわたって接触して移動するので、ガイドレール16全周にわたって油を供給することができる。そして、ガイドレール16への給油作業にかかる時間が大幅に短縮される。
【0027】
また、給油作業において踏板22を外した開口部がエスカレータに生じることもなく、踏板22を外したときに形成される開口部から小石等が落下して、踏段12の移動時に異音が発生するコールバックの原因となるおそれもない。このことは、多台数の踏段やエスカレータを設置している設置現場では、特に顕著に奏される。
【0028】
また、定期的に給油できないことによってガイドレール16が乾いてしまい後輪14の動きが悪くなって異音が発生する、ということが回避される効果も奏される。
【0029】
また、油滲出構造38としては、例えば、貯留部32の底に多数の滲出用の開口40(
図5参照)を備えていて、開口40の下側に当接しているフェルト部材36fに油が自重で滲出する構成にすることで、簡単な構成で貯留部32の油を自重で滲出させてガイドレール16に塗布することができる。
【0030】
また、油滲出構造38では、上述したように、貯留部32の底の内側に滲出速度調整用のシート状部材を配置することや、開口40の開口面積が可変になっている構成にすることで、滲出する油が多すぎたり少なすぎたりする場合があっても、簡単な調整でこのような不具合を充分に解消することができる。
【0031】
あるいは、貯留部32の底部に配置可能で、開口40の寸法が互いに異なる複数種の板材を予め用意しておき、滲出速度を低下させたい場合に、この板材のうち適度な開口寸法を有する板材を貯留部32の底側に入れてもよい。
【0032】
また、エスカレータ10は、給油器28の後部側に、ガイドレール16を清掃する清掃部材50を備えてもよい。これにより、ガイドレール16に小石等が載ることで踏段12の移動時に異音が発生するコールバックを防止することができる。
【0033】
また、給油器28に油量を検出するセンサを配置し、貯留部32の油量が規定値以下になると遠隔でエスカレータ機械室Rなどに知らせる構成にしてもよい。これにより、定期的に給油器28の油量を調べなくても、油量が規定値以下になったことをエスカレータ機械室Rなどで認識することができる。
【0034】
以上、実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲はそれらに限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
10…エスカレータ、12…踏段、12s…特定の踏段、14…後輪、16…ガイドレール、18…貯留・塗布手段、22…踏板、24…補充手段、28…給油器、30…油流入口、32…貯留部、34…アングル、36…油塗布部材、36f…フェルト部材、38…油滲出構造、40…開口、42…踏段支え、44…前輪、46…接続口、48…油補充ライン、50…清掃部材、F…前方、L…油、P…設定位置、R…エスカレータ機械室。
【要約】
【課題】踏段の後輪が当接するガイドレール全周にわたって踏段を外すことなく給油することができるエスカレータを提供することを課題とする。
【解決手段】エスカレータは、無端状に連結された多数の踏段12と、踏段12の後輪14が当接するガイドレール16と、踏段12のうち特定の踏段12sの後部側に取付けられ、潤滑用の油を貯留するとともに貯留した油をガイドレール16に塗布する貯留・塗布手段18と、特定の踏段12sに踏板22を装着したまま貯留・塗布手段18へ油を補充可能な補充手段とを備える。
【選択図】
図3