特許第6396541号(P6396541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396541フルカバー付きステントのための移動防止型組織固定システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396541
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】フルカバー付きステントのための移動防止型組織固定システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/848 20130101AFI20180913BHJP
【FI】
   A61F2/848
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-127721(P2017-127721)
(22)【出願日】2017年6月29日
(62)【分割の表示】特願2016-501024(P2016-501024)の分割
【原出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-192780(P2017-192780A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2017年6月29日
(31)【優先権主張番号】61/779,414
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】セドン、デーン ティ.
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー、ショーン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウッド、マーク ディ.
(72)【発明者】
【氏名】ドラン、バーンズ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ロス、ダニエル
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−332231(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0283811(US,A1)
【文献】 特表2003−500103(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0096731(US,A1)
【文献】 特表2005−538769(JP,A)
【文献】 特表2014−522278(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/147675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/848
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張状態及び非拡張状態を有するステントであって、
移動防止区域及びカバーを含んでなり、前記移動防止区域は、
第1の周方向のバンド;
第2の周方向のバンド;
第1及び第2の周方向のバンドの間に延在する少なくとも1つの移動防止機構
を含んでなり、
前記カバーは、第1及び第2の周方向のバンドの外側表面を覆うことにより、カバー付きの人工器官を形成するためのカバーであり、
ステントが拡張状態にあるとき、移動防止機構の一部分はカバーの外側表面から外向きに突出し、
移動防止機構の各々は、カバーの外側表面から外向きに突出した移動防止機構の一部分、カバーの外側表面との間にアンカーギャップをさらに画成し、アンカーギャップは、同アンカーギャップ内における組織の内方成長を許容する、ステント。
【請求項2】
移動防止機構の各々は、湾曲状の第1の領域と、湾曲状の第2の領域と、湾曲状の第1の領域と湾曲状の第2の領域とを接続する鋭角的な屈曲部と、から形成される突出領域を含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
アンカーギャップは、一部には、湾曲状の第1の領域と、湾曲状の第2の領域と、鋭角的な屈曲部と、によって画成される、請求項2に記載のステント。
【請求項4】
湾曲状の第1の領域は、湾曲状の第2の領域より小さな曲率半径を有する、請求項2に記載のステント。
【請求項5】
湾曲状の第2の領域が長手方向に延びる距離は、湾曲状の第1の領域が長手方向に延びる距離よりも大きい、請求項2に記載のステント。
【請求項6】
湾曲状の第1の領域は第1の周方向のバンドに向かって配置され、湾曲状の第2の領域は第2の周方向のバンドに向かって配置されている、請求項2に記載のステント。
【請求項7】
移動防止機構の各々は、第1の端部領域と第2の端部領域とを含んでなり、
第1の端部領域及び第2の端部領域はそれぞれ捻転領域である、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記移動防止区域は、第1及び第2の周方向のバンドを接続する複数の連結部材をさらに含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記カバーは、ステントのルーメンが組織の内方成長によって閉塞されるのを防止するべく、第1及び第2の周方向のバンドの開口部を塞ぐ、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
前記カバーは、ステントの外側表面を覆う、請求項1に記載のステント。
【請求項11】
拡張状態及び非拡張状態を有するステントであって、
第1の周方向のバンド;
第2の周方向のバンド;
第1の周方向のバンドと第2の周方向のバンドとを接続する少なくとも1つのアンカー;
ステントの外側表面を覆うことにより、カバー付きの人工器官を形成するためのカバーを含んでなり、
ステントが拡張状態にあるとき、各アンカーの突出領域は、カバーの外側表面から突出し、突出領域の内側表面とカバーの外側表面との間にアンカーギャップを画成し、アンカーギャップは、同アンカーギャップ内における組織の内方成長を許容する、ステント。
【請求項12】
アンカーの各々は、第1の周方向のバンドに接続される第1の端部領域と、第2の周方向のバンドに接続される第2の端部領域とを含んでなり、
アンカーの各々は、さらに、湾曲状の第1の領域と、湾曲状の第2の領域と、湾曲状の第1の領域と湾曲状の第2の領域とを接続する鋭角的な屈曲部とを含んでなり、湾曲状の第1の領域と湾曲状の第2の領域とは、第1の端部領域と第2の端部領域との間に配置されている、請求項11に記載のステント。
【請求項13】
湾曲状の第1の領域は、湾曲状の第2の領域より小さな曲率半径を有する、請求項12に記載のステント。
【請求項14】
湾曲状の第2の領域が長手方向に延びる距離は、湾曲状の第1の領域が長手方向に延びる距離よりも大きい、請求項12に記載のステント。
【請求項15】
第1の端部領域及び第2の端部領域はそれぞれ捻転領域である、請求項12に記載のステント。
【請求項16】
拡張状態に関し、各アンカーの表面は、アンカーの側面表面である状態からアンカーの外側表面である状態へと移行する、請求項15に記載のステント。
【請求項17】
第1及び第2の周方向のバンドを接続する複数の連結部材をさらに含んでなる、請求項11に記載のステント。
【請求項18】
各アンカーの突出領域には、カバーが存在しない、請求項11に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルカバー付きステントのための移動防止型組織固定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、様々な体腔又は脈管の中に、例えば血管系、尿管、胃腸管、ファロピアン管、冠状血管、派生血管、気道、心臓構造物(弁膜のフレーム)などの内部に移植されうる。ステントは、自己拡張型であってもよいし、バルーン上に載荷される場合など内部の径方向の力によって拡張せしめられてもよいし、自己拡張型とバルーン拡張型との組み合わせ(ハイブリッド拡張型)であってもよい。ステントによっては、部分的カバー又はフルカバーが付いているものもある。当初のステント移植部位からのステントの移動は有害である可能性がある。
【0003】
上記に引用及び記載のうち少なくともいずれかがなされた技術は、本明細書中で参照された任意の特許、出版物又はその他の情報が本発明に関する「先行技術」であるということを承認するようには意図されていない。加えて、本節は、検索済みであることや、米国特許法施行規則第1.56条(a)に規定されたその他の関連情報が存在しないことを意味すると解釈されるべきではない。
【0004】
本願のいずれかの箇所で言及されたすべての米国特許及び米国特許出願並びにその他すべての出版文書は、参照により全体が本願に組み込まれる。
本発明の範囲を限定することなく、主張された本発明の実施形態のうちのいくつかの概要が以下に説明される。本発明の要約された実施形態のさらなる詳細及び本発明の追加の実施形態は、以下の「発明の詳細な説明」に見出すことができる。
【発明の概要】
【0005】
少なくとも1つの実施形態では、人工器官は、複数の周方向のバンド、複数の連結部材、少なくとも1つのアンカーを含んでなるステントである。いくつかの実施形態では、人工器官は少なくとも1つのカバーをさらに備えている。
【0006】
少なくとも1つの実施形態では、人工器官は、第1の周方向のバンドと、第2の周方向のバンドと、第1及び第2の周方向のバンドの間に延在する少なくとも1つのアンカーとを含んでなる少なくとも1つのアンカー区域を備えるステントである。いくつかの実施形態では、アンカー区域は、第1及び第2の周方向のバンドの間に延在する少なくとも1つの連結部材をさらに備えている。少なくとも1つの実施形態では、人工器官は少なくとも1つのカバーをさらに備えている。
【0007】
本発明を特徴付ける上記及びその他の実施形態は、本明細書に添付されて本明細書の一部を形成している特許請求の範囲において個別に指摘されている。しかしながら、本発明の一層の理解のために、本発明の実施形態がそこに例証及び説明されている、本明細書のさらなる一部を形成する図面及びそれに伴う記述内容を参照することが可能である。
【0008】
本発明の詳細な説明について、図面を具体的に参照しながら以降に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】切断されたままの状態の人工器官の一部分を示す図。
図1B】切断されたままの状態の人工器官の一部分を示す図。
図1C】切断されたままの状態の人工器官の一部分を示す図。
図1D】切断されたままの状態の人工器官の一部分を示す図。
図2A図1Aの切断されたままの状態から設定された状態へのアンカーの捻転を示す図。
図2B図1Bの切断されたままの状態から設定された状態へのアンカーの捻転を示す図。
図2C図1Cの切断されたままの状態から設定された状態へのアンカーの捻転を示す図。
図2D図1Dの切断されたままの状態から設定された状態へのアンカーの捻転を示す図。
図3A】カバーを備えた図2Aの人工器官を示す図。
図3B】カバーを備えた図2Bの人工器官を示す図。
図3C】カバーを備えた図2Cの人工器官を示す図。
図3D】カバーを備えた図2Dの人工器官を示す図。
図4】展開された状態でありかつ体腔内に配置された人工器官を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は多数の様々な形に具体化されうるが、本発明の具体的実施形態が本明細書中に詳細に説明されている。この説明は本発明の原理の例示であり、本発明を例証された特定の実施形態に限定するようには意図されていない。
【0011】
本開示のために、図中の同様の参照数字は、別途記載のないかぎり同様の特徴を指すものとする。
少なくとも1つの実施形態では、人工器官はステント10である。いくつかの実施形態において、ステント10は複数の周方向のバンド20、複数の連結部材26、少なくとも1つのアンカー28、及びこれらの組み合わせを含んでなる。少なくとも1つの実施形態において、人工器官はカバー付きステント10である。
【0012】
本願において使用されるように、「周方向のバンド」、「周方向のリング」、「支柱カラム」、「蛇行リング」、又は「蛇行バンド」は、ステントの同一の構造物、具体的には複数の転換部24によって相互に接続された複数の支柱22によって形成された構造物であって、転換部24はそれぞれ2本の支柱22の間に延在し、支柱22はそれぞれ2個の転換部24から延びている構造物を同定する用語である。
【0013】
本願において使用されるように、「転換部」24は、「山部」24a(ステントの第1端に向かって延びる転換部)、又は「谷部」24b(ステントの第2端に向かって延びる転換部)のいずれかを指す。いくつかの実施形態では、周方向のバンド20は図面に示されるように閉じている。本願において使用されるように、「閉じている」とは、支柱及び転換部がステントの全周にわたって延びる連続的経路を形成することを意味している。
【0014】
本願において使用されるように、「連結部材」又は「コネクタ」26は2つの周方向のバンド20を接続又は係合する。「山部から山部への連結部材」は、1つの周方向のバンド20の山部24aを別の周方向のバンド20の山部24aに接続する。「山部から谷部への連結部材」26は、1つの周方向のバンド20の山部24aを別の周方向のバンド20の谷部24bに、又はその逆に接続する。「谷部から谷部への連結部材」は、1つの周方向のバンド20の谷部24bを別の周方向のバンド20の谷部24bに接続する。留意すべきは、連結部材が山部から山部への連結部材であるか谷部から谷部への連結部材であるかは、ステントの配向に依存することである。よって、ステントがある方向に配向しているとき、ある特定の連結部材は山部から山部への連結部材となりうる一方、ステントが反対方向に配向しているとき、その連結部材は谷部から谷部への連結部材である。図1〜4に示されるように、隣接する周方向のバンド20を接続する連結部材26は山部から谷
部への連結部材である。図4に見ることができるように、連結部材は直線状であってもよいし湾曲状であってもよい。
【0015】
本願において使用されるように、用語「接続する」又は「係合する」は「間接的な」接続又は係合を含まない。よって、例えば要素A及びCを「接続している」要素Bは、AとBとの間、又はBとCとの間に他の要素を伴わずに直接A及びCを接続する。
【0016】
ステント並びにステントを形成している要素、例えば支柱、連結部材、及び転換部は、それぞれ幅、長さ、及び厚さを有している。本願において使用されるように、「厚さ」は、ステントの外側表面からステントの内側表面へと径方向に測定され;「幅」は周方向に測定され;「長さ」は長手方向に測定される。
【0017】
少なくとも1つの実施形態において、周方向のバンド20及び連結部材26はステントの壁を形成する。いくつかの実施形態では、ステントは、ステントの壁を通り抜けて広がる複数の開口部40を備えている。図1〜4に見ることができるように、開口部40は一部には隣接した周方向のバンド20によって画成される。いくつかの実施形態では、壁の外側表面はステントの外側表面であり、壁の内側表面はステントの内側表面である。本願において使用されるように、ステントの「内側表面」とはステントのルーメンを画成する表面であり、ステントの「外側表面」とは内側表面の反対側である。
【0018】
少なくとも1つの実施形態では、ステント10は、ステントの一方又は両方の端部に長手方向に隣接して配置された少なくとも1つのアンカー28を有する。少なくとも1つの実施形態では、ステントの端部からのアンカー28の第1端の距離はステントの長さの0〜30%である。いくつかの実施形態では、ステントの端部からのアンカー28の距離は0%より大きく30%以下である。同じく図中に見ることができるように、アンカー28はそれぞれ2つの周方向のバンド20に係合している。これは例えば図3〜4に示されている。よって、アンカーの各端部は周方向のバンド20に係合しているので、アンカー28は自由端を有していない。
【0019】
連結部材26と同様に、アンカー28は、隣接した周方向のバンド20の2つの山部に係合するか(山部から山部へのアンカー、図示せず);隣接した周方向のバンドの2つの谷部に係合するか(谷部から谷部へのアンカー、図示せず);又は、隣接した周方向のバンドの山部及び谷部に係合する(山部から谷部へのアンカー、例えば図1A〜Dに示されたもの)ことが可能である。よって、いくつかの実施形態では、アンカー28の全長が2つの隣接した周方向のバンド20の間にあり、他の実施形態では、アンカー28の長さの一部分のみが2つの隣接した周方向のバンドの間にある。1つの実施形態では、アンカー28のうち少なくとも突出領域32は2つの隣接した周方向のバンド20の間に配置される。少なくとも1つの実施形態では、アンカー28は約0.15インチ(3.81mm)〜約0.25インチ(6.35mm)の長手長さを有する。アンカーは2つの周方向のバンドの間に延在するので、2つの周方向のバンドは約0.225インチ(5.715mm)〜約0.300インチ(7.620mm)離れて配置され、2つの周方向のバンドの間に延在する連結部材は0.225インチ(5.715mm)〜約0.275インチ(6.985mm)の長手長さを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、ステント10はステントの一方の端部のみに隣接して配置された1以上のアンカー28を有する。他の実施形態では、ステントはステントの両方の端部に隣接して配置された1以上のアンカー28を有する。少なくとも1つの実施形態では、アンカー28は、ステント10の周長に関して規則的に間隔を置いて配置される。いくつかの実施形態では、ステント10はステントの端部に隣接して2、3、4、5、6個又はそれ以上のアンカー28を有する。
【0021】
少なくとも1つの実施形態では、2つの周方向のバンド20a、20b及び少なくとも1つのアンカー28は、ステント10のアンカー区域42を形成する。いくつかの実施形態では、ステント10はアンカー区域42を1個だけ有する。1つの実施形態では、単一のアンカー区域42がステントの端部領域を形成する。他の実施形態では、ステント10は、それぞれステントの端部領域を形成する2つのアンカー区域を有する。少なくとも1つの実施形態では、アンカー区域42は、第1及び第2の周方向のバンド20a、20bを接続する少なくとも1つの連結部材26をさらに備えている。いくつかの実施形態では、第1及び第2の周方向のバンド20a、20bは位相が異なっており、連結部材26は山部から谷部への連結部材である。少なくとも1つの実施形態において、アンカー区域の第1及び第2の周方向のバンドの間の長手方向の距離は、例えば図4に示されるように、ステントのその他の長手方向に隣接したバンドの間の長手方向の距離よりも大きい。いくつかの実施形態では、例えば図4に示されるように、アンカー区域の第1及び第2の周方向のバンドの間には、その他の長手方向に隣接したバンドの間よりも多くの連結部材26が存在する。
【0022】
少なくとも1つの実施形態では、アンカー28は切断されたままの状態と設定された状態とを有している。図1A〜Dのアンカー28は切断されたままの状態である一方、図2A〜Dは設定された状態の図1A〜Dのアンカーを示している。図1A〜Dに見ることができるように、アンカー28が切断されたままの状態であるときはアンカー28の全長がステント10の壁の一部を形成する一方、アンカー28が設定された状態であるときは、図2A〜Dに見ることができるようにアンカー28の一部分が人工器官の外側表面から突出する。ステントがカバー付きでない場合、設定された状態のアンカーの一部分はステントの外側表面から突出する。本明細書中で使用されるように、「突出する」とは、人工器官又はステントの外側表面を越えて延びること、又は前記外側表面の上方に配置されることを意味する。いくつかの実施形態では、アンカー28はカバー50から突出する。少なくとも1つの実施形態では、アンカー28はアンカー28の周囲における組織増殖をもたらすように構成される。
【0023】
少なくとも1つの実施形態では、アンカー28の形態は非直線状である。少なくとも1つの実施形態では、アンカー28はそれぞれ少なくとも1つの屈曲部を有する。屈曲部は曲線的であってもよいし鋭角的であってもよい。アンカー28は、設定された状態のアンカーが人工器官の外側表面から突出する限りはいかなる形態を有してもよい。適切な形態の非限定的な例には、例えば図1A〜Dに示され、かつ以下に一層詳しく議論されるように、波形のデザイン、四角形のデザイン、丸形のデザイン、又は三角形のデザインが挙げられる。ステントのアンカーは、同一のデザイン/形態を有してもよいし異なるデザイン/形態を有してもよい。
【0024】
少なくとも1つの実施形態では、設定された状態のアンカー28は、第1の捻転領域30a、第2の捻転領域30b、及び2つの捻転領域の間に延在する中央領域32を有する。いくつかの実施形態では、アンカー28の第1の捻転領域30a、第2の捻転領域30b、及び中央領域32は、2つの隣接した周方向のバンド20の間に配置される。少なくとも1つの実施形態では、山部から山部へのアンカー又は谷部から谷部へのアンカーは、一方の捻転領域から山部又は谷部へと延び、かつその山部又は谷部に係合された2本の支柱の間にある、直線領域をさらに備えることになる(図示せず)。少なくとも1つの実施形態では、アンカー28の捻転領域30は、アンカー28が切断されたまま状態であるときは直線領域36である。いくつかの実施形態では、アンカーが設定された状態であるとき、捻転領域の第1の表面はアンカー28の側面表面である状態から外側表面である状態へと移行し、第1の表面の反対側の第2の表面はアンカー28の側面表面である状態から内側表面である状態へと移行する。捻転領域30の形成は、以下に一層詳しく議論される
【0025】
いくつかの実施形態では、捻転領域30はそれぞれアンカー28の端部領域である。1つの実施形態では、捻転領域30はそれぞれ周方向のバンド20に係合している。図2A〜Dに見ることができるように、アンカーの2つの捻転領域30は、人工器官の外側表面から突出する中央領域32を提供する。よって、アンカー28の中央領域32は、突出している領域又は固定区域と考えることができる。
【0026】
図3A〜D及び4に見ることができるように、設定された状態のアンカー28の突出領域32の内側表面は人工器官の外側表面から距離を置いて配置されて、その周辺及び内部において組織が増殖するための開放空間域を画成する。本明細書中で使用されるように、「アンカーギャップ」とは、移植後の組織の内方成長のための、アンカーとステント又は人工器官の外側表面との間の空間域である。いくつかの実施形態では、設定された状態のアンカー28は、人工器官又はステントの外側表面から約0.50インチ(1.27mm)〜約0.10インチ(2.54mm)の高さを有する。よって、1つの実施形態では、アンカー28の中央領域32は人工器官又はステントの外側表面から約0.50インチ(1.27mm)〜約0.10インチ(2.54mm)の距離だけ突出する。
【0027】
いくつかの実施形態では、ステントの端部から距離を置いて配置されたアンカー28は、ステントが体腔内に移植されたときにステントの端部又は端部近くにおける肉芽組織の形成を軽減する。少なくとも1つの実施形態において、アンカー28はステントの移動を制限する。この実施形態では、アンカー28は移動防止機構である。少なくとも1つの実施形態では、体腔内に移植された少なくとも1つのアンカーを備えたフルカバー付きステントは、アンカー周辺の組織増殖によりステント移動が低減し、かつカバーによりルーメンの閉塞が低減する。理論に束縛されるものではないが、組織の内方成長はステントを体腔壁に固定せしめることによりステントの移動を制限する。少なくとも1つの実施形態では、アンカー周辺における組織の内方成長の量は移動に影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、アンカー28の突出領域32の長手長さは組織の内方成長の量に影響する。少なくとも1つの実施形態では、鋭角的な屈曲部を備えたアンカーは曲線的な屈曲部を備えたアンカーよりも大きな組織の活性化及び組織の内方成長をもたらす。理論に束縛されるものではないが、あまり鋭くない別のエッジよりも感触の鋭いエッジを備えた屈曲部は、気道壁に擦り付けられるにつれてより大きな組織/細胞の活性化を生じ、これにより炎症を引き起こし、かつ結果としてあまり鋭くないエッジを有する屈曲部と比較してより早く組織の内方成長をもたらすことになる。理論に束縛されるものではないが、ステントの移動を最小限にすることにより、肉芽組織の形成は最小限となる。
【0028】
アンカー28の波形のデザインは、例えば図1A(切断されたままの状態)及び図3A(設定された状態)に示されている。少なくとも1つの実施形態では、波形のデザインは、直線状の第1の領域36a、湾曲状の第1の領域34a、屈曲部38a、湾曲状の第2の領域34b、及び直線状の第2の領域36bを備えている。1つの実施形態では、波形のデザインは、第2の湾曲状領域34b及び第2の直線状領域36bを接続する屈曲部をさらに備えている。いくつかの実施形態では、屈曲部38aは鋭角的である。他の実施形態では、屈曲部38aは曲線的である。本明細書中で使用されるように、鋭角的な屈曲部は曲線的な屈曲部より小さな曲率半径を有する。図1Aは鋭角的な屈曲部38aを示している。少なくとも1つの実施形態では、第1の湾曲状領域34a、屈曲部38a、及び第2の湾曲状領域34bは、設定された状態のアンカー28の突出領域32を形成する。いくつかの実施形態では、アンカーギャップは、一部には設定された状態のアンカー28の第1の湾曲状領域34a、屈曲部38a、及び第2の湾曲状領域34bによって画成される。以下に議論されるカバー50を備えた実施形態では、アンカーギャップは、カバー50の外側表面によってさらに画成される。少なくとも1つの実施形態では、波形のデザイ
ンは、ステントが体腔内に移植されたときに強力な組織活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、組織の内方成長は組織活性化と相関する。他の実施形態では、波形のデザインは、体腔内におけるステントの固定を急速に達成するアンカーを提供する。
【0029】
アンカー28の四角形のデザインは、例えば図1B(切断されたままの状態)及び図3B(設定された状態)に示されている。少なくとも1つの実施形態では、四角形のデザインは、直線状の第1の領域36a、第1の屈曲部38a、第2の領域であって直線状のもの34b又は湾曲状のもの36bのいずれか、第2の屈曲部38b、直線状の第3の領域36c、第3の屈曲部38c、第4の領域であって直線状のもの34d又は湾曲状のもの36dのいずれか、第4の屈曲部38d、及び直線状の第5の領域36eを備えている。いくつかの実施形態では、第2及び第3の屈曲部は38b及び38cは曲線的である。他の実施形態では、第2及び第3の屈曲部38a、38bは鋭角的である。図1Bは曲線的な第2及び第3の屈曲部38b、38cを示している。少なくとも1つの実施形態では、第2の領域34b/36b、第1の屈曲部38a、第3の領域36c、第2の屈曲部38b、及び第4の領域34d/36dは設定された状態のアンカー28の突出領域32を形成する。いくつかの実施形態では、アンカーギャップは、一部には設定された状態のアンカー28の第2の領域34b/36b、第1の屈曲部38a、第3の領域36c、第2の屈曲部38b、及び第4の領域34d/36dによって画成される。以下に議論されるカバー50を備えた実施形態では、アンカーギャップは、カバー50の外側表面によってさらに画成される。いくつかの実施形態では、第2及び第4の領域は、アンカーが切断されたままの状態であるときは直線状の36であり、アンカーが設定された状態であるときは湾曲状の34である(図1B及び3Bを比較されたい)。他の実施形態では、第2及び第4の領域は、アンカー28が切断されたままの状態であるとき及びアンカー28が設定された状態であるときに直線状の36である(図示せず)。いくつかの実施形態では、第3の領域36cは人工器官の外側表面とほぼ平行である。少なくとも1つの実施形態において、四角形のデザインは、ステントが体腔内に移植されたときにアンカー周囲における大量の組織の内方成長をもたらす。理論に束縛されるものではないが、アンカーの突出領域の長手長さは組織の内方成長の量に影響を及ぼす。
【0030】
アンカー28の丸形のデザインは、例えば図1C(切断されたままの状態)及び図3C(設定された状態)に示されている。少なくとも1つの実施形態では、丸形のデザインは、直線状の第1の領域36a、湾曲状の第2の領域34、及び直線状の第3の領域36bを備えている。いくつかの実施形態では、第2の領域34は、2つの直線状の領域と、2つの直線状の領域を接続している湾曲状の領域とを備えている。少なくとも1つの実施形態では、湾曲状の領域34は、設定された状態のアンカー28の突出領域32を形成する。いくつかの実施形態では、アンカーギャップは、一部には設定された状態のアンカー28の湾曲状の領域34によって画成される。以下に議論されるカバー50を備えた実施形態では、アンカーギャップは、カバー50の外側表面によってさらに画成される。いくつかの実施形態では、丸形のデザインは、ステントが体腔内に移植されたときに組織の活性化をほとんどもたらさない。少なくとも1つの実施形態では、丸形のデザインを有するアンカーを備えたステントは、組織がステントの移植に先立って炎症を起こしている場所に移植される。
【0031】
アンカー28の三角形のデザインは、例えば図1D(切断されたままの状態)及び図3D(設定された状態)に示されている。少なくとも1つの実施形態では、三角形のデザインは、直線状の第1の領域36a、第1の屈曲部38a、直線状の第2の領域36b、第2の屈曲部38b、直線状の第3の領域36c、第3の屈曲部38c、及び直線状の第4の領域36dを備えている。いくつかの実施形態では、第2の屈曲部38bは曲線的である。他の実施形態では、第2の屈曲部38bは鋭角的である。少なくとも1つの実施形態では、第2の直線状領域36b、第2の屈曲部38b、及び第3の直線状領域36cは、
設定された状態のアンカー28の突出領域32を形成する。いくつかの実施形態では、アンカーギャップは、一部には設定された状態のアンカー28の第2の直線状領域36b、第2の屈曲部38b、及び第3の直線状領域36cによって画成される。以下に議論されるカバー50を備えた実施形態では、アンカーギャップはカバー50の外側表面によってさらに画成される。いくつかの実施形態では、三角形のデザインは、ステントが体腔内に移植されたときに軽度の組織活性化を引き起こす。他の実施形態では、三角形のデザインは、体腔内への移植後にステントの比較的迅速な固定をもたらす。
【0032】
ステント10は、いくつかの状態、すなわち「切断されたままの状態」、その後の「熱設定された状態」、その後の「クリンプされた状態」、その後の「展開配置された状態」、を有する。本願において使用されるように、ステントはレーザー切断後及び熱設定の前は「切断されたままの状態」であり;ステントは切断されたままの状態の後及び熱処理後には「熱設定された状態」であり;ステントは送達デバイス上に配置された時は「クリンプされた状態」であり;かつ、ステントは体腔内に展開配置されたときは「展開配置された状態」である。図4は、脈管60に展開配置されたステント10を示す。図4に示されるように、アンカー28は脈管60の壁に埋め込まれている。
【0033】
少なくとも1つの実施形態では、ステント10は例えば図3A〜Dに示されるようにカバー50を有する。いくつかの実施形態では、ステント10がクリンプされた状態であるとき及びステント10が展開配置された状態であるとき、ステント10はカバー50を有する。本明細書中で使用されるように、「カバー」50はステント壁によって画成された開口部40を覆うように延在することにより、開口部を閉塞し、かつ開口部を通り抜けて人工器官のルーメン内へと組織が増殖するのを防止する。少なくとも1つの実施形態では、人工器官10はフルカバー付きのステントである。本明細書中で使用されるように、「フルカバー付きのステント」は、少なくともステントの第1端から第2端に及ぶカバー50を有する。よって、フルカバー付きのステントのカバー50は、ステント10の長さに等しいか又はそれ以上の長さを有する。本明細書中で使用されるように、「カバー付きステント」はステントの長手長さよりも短い長手長さのカバー50を有する。カバー50は、a)ステントの壁の外側表面;b)ステントの壁の内側表面;又はc)ステントの壁の内側表面及び外側表面の両方、を覆って配置されうる。いくつかの実施形態では、カバー50の厚さは、a)ステントの壁の厚さより薄い;b)ステントの壁の厚さと等しい;又はc)ステントの壁の厚さより厚い。本明細書中以後人工器官の外側表面12を参照する場合は、a)人工器官の外側表面12がステント及びカバー50によって形成されている実施形態、並びにb)人工器官の外側表面12がカバー50によってのみ形成されている実施形態が含まれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、ステント、送達システム又はアセンブリの他の部分は、X線、MRI、超音波などのような画像診断技術によって検出可能な1以上のエリア、バンド、コーティング、部材などを備えうる。いくつかの実施形態では、ステント及び隣接するアセンブリのうち少なくともいずれか一方の少なくとも一部分は、少なくとも部分的に放射線不透過性である。
【0035】
いくつかの実施形態において、ステント10の少なくとも一部分は、治療薬を送達するための1以上の機構を備えるように構成される。多くの場合、薬剤は、ステントの移植の部位又はこれに隣接したエリアに放出されるようになされた、ステントの表面領域に設けられる物質のコーティング又はその他の層(若しくは複数層)の形態となろう。本明細書中で使用されるような治療薬の層又はコーティングは、治療薬がステントの壁によって画成された開口部を覆うように延在して閉塞することはないので、本明細書中で使用されるようなカバー50ではない。いくつかの実施形態では、アンカー28の突出領域32は該領域の上に沈積された治療薬を有する。
【0036】
本明細書中で使用されるように、「治療薬」は、疾患の治療、予防、又は症状の緩和に使用される薬物又はその他の薬剤製品である。治療薬には非遺伝的な作用物質、遺伝的な作用物質、細胞物質などが含まれる。適切な非遺伝的治療薬のいくつかの例には、限定するものではないが:抗血栓形成剤、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、血管細胞成長促進物質、成長因子阻害剤、パクリタキセルなどが挙げられる。作用物質が遺伝的治療薬を含む場合、そのような遺伝的な作用物質は、限定するものではないが:DNA、RNA並びにこれらそれぞれの誘導体及び構成要素のうち少なくともいずれか;ヘッジホッグタンパク質などを含みうる。治療薬が細胞物質を含む場合、細胞物質は、限定するものではないが:ヒト起源及びヒト以外の起源のうち少なくともいずれかの細胞並びにこれらそれぞれの構成要素及び誘導体のうち少なくともいずれかを含みうる。治療薬がポリマー剤によって送達される場合、ポリマー剤は、ポリスチレン‐ポリイソブチレン‐ポリスチレン3ブロックコポリマー(SIBS)、ポリエチレンオキシド、シリコーンゴム及び任意の他の適切な基材であってよい。
【0037】
少なくとも1つの実施形態では、ステント10は、いくつかの状態それぞれにおいて、外側表面12、内側表面14、第1端から第2端まで延びる長手長さ、複数の周方向のバンド20、複数の連結部材26、及び少なくとも1つのアンカー28を含んでなる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアンカー28はステントが切断されたままの状態であるときは切断されたままの状態である。他の実施形態では、少なくとも1つのアンカー28は、ステントがクリンプされた状態であるとき及びステント10が展開配置された状態であるときは、設定された状態である。よって、送達デバイスは設定された状態の少なくとも1つのアンカー28を備えたステントを担持するように構成される。
【0038】
少なくとも1つの実施形態では、ステントを形成する方法は、切断されたままの状態のステント10を形成することと;少なくとも1つのアンカー28を切断されたままの状態から設定された状態へと変換することと;任意選択でステントにカバー50を付与することと、を含む。追加の選択肢として、治療薬がアンカー28の突出している部分に選択的に適用される。
【0039】
これらのステップは以下に一層詳しく議論される。
[切断されたままの状態のステントを形成するステップ]
いくつかの実施形態では、切断されたままの状態のステント10は、チューブ状のステント材料のレーザー切断又は同材料におけるパターンのエッチングによって形成される。他の実施形態では、切断されたままの状態のステント10は、平らなシート状のステント材料のレーザー切断又は同材料におけるパターンのエッチングと、該シートを巻いて長辺を接合することによりチューブを形成することとによって形成される。
【0040】
いくつかの実施形態では、パターンは、上記に議論されるように、複数の周方向のバンド20、複数の連結部材26、及び少なくとも1つのアンカー28を含む。他の実施形態では、パターンはアンカー区域42を備えている。いくつかの実施形態では、切断されたままの状態のアンカー28の厚さは約0.01インチ(0.25mm)である。
【0041】
当分野で既知であるか又は後に開発される任意の他の適切な技法も、本明細書中に開示されたステントを形成するために使用されうる。
ステント10は、任意の適切な生体適合性材料、例えば1以上のポリマー、1以上の金属又はポリマー及び金属の組み合わせから作製されうる。適切な材料の例には、生体適合性でもある生物分解性材料が挙げられる。生物分解性により意味されるのは、材料が、正常な生物学的プロセスの一部として崩壊又は分解を経て無害な化合物となるであろうということである。適切な生物分解性材料には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸(PGA)、コ
ラーゲン又はその他の結合性のタンパク質若しくは天然材料、ポリカプロラクトン、ヒアルロン酸、接着性タンパク質、これらの材料のコポリマー並びにこれらの複合材料及び組み合わせ並びに他の生分解性ポリマーの組み合わせが挙げられる。使用されうるその他のポリマーにはポリエステル及びポリカーボネートのコポリマーが挙げられる。適切な金属の例には、限定するものではないが、ステンレス鋼、チタン、タンタル、白金、タングステン、金及び前述の金属のうちいずれかの合金が挙げられる。適切な合金の例には、白金‐イリジウム合金、コバルト‐クロム合金、例えばElgiloy(登録商標)及びPhynox(登録商標)、MP35N合金並びにニッケル‐チタン合金、例えばニチノールが挙げられる。
【0042】
本発明のステントは、超弾性のニチノール又はばね鋼のような形状記憶材料で作製されてもよいし、塑性的に変形可能な材料で作製されてもよい。形状記憶材料の場合、ステントは、記憶される形状が与えられ、次いで体腔への送達のために縮径された形状へと変形されうる。該ステントは、転移温度に加熱されてあらゆる制約が取り除かれると、体腔内で該ステント自体をその記憶された形状へと回復することができる。
【0043】
[少なくとも1つのアンカーを切断されたままの状態から設定された状態へと変換するステップ]
少なくとも1つの実施形態では、切断されたままの状態のアンカー28は設定された状態のアンカーに変換される。いくつかの実施形態では、切断されたままの状態から設定された状態へのアンカー28の変換は、アンカー28を外側へ向かって捻転又は方向転換してアンカーの一部分が人工器官又はステントの外側表面から突出するようにすることを含んでなる。少なくとも1つの実施形態では、アンカー28が設定された状態であるとき、アンカー28の捻転領域30の表面はアンカー28の側面表面である状態から外側表面である状態へと移行する。このことは例えば図2A〜Dに見ることができる。図のように、側面表面はアンカーの端部に隣接しており、外側表面はアンカーの中央領域に隣接している。少なくとも1つの実施形態では、設定された状態のアンカー28の幅は、切断されたままの状態のアンカー28の厚さに等しい。少なくとも1つの実施形態では、切断されたままの状態から設定された状態へとアンカー28を変換することは、1以上の捻転領域30を形成することを含んでなる。いくつかの実施形態では、1以上の捻転領域は、アンカー28を外側へ向かって捻転又は方向転換してアンカーの一部分が人工器官又はステントの外側表面から突出するようにすることにより形成される。
【0044】
少なくとも1つの実施形態では、アンカー28は、設定された状態のアンカーを維持するために捻転せしめられた後で熱設定される。
上記に議論されるように、ステント10の壁は厚さを有している。いくつかの実施形態では、アンカー28が切断された状態であるときはアンカーは壁の厚さに等しい厚さを有し、アンカーが設定された状態であるときはアンカーはステントの壁の厚さに等しい幅を有する。これは、例えば図1〜2に見ることができる。
【0045】
[ステントにカバーを付与するステップ]
少なくとも1つの実施形態では、ステント10にカバー50が付与される。いくつかの実施形態では、カバー50は、1以上のアンカー28が設定された状態に熱設定された後でステント10に付与される。いくつかの実施形態では、カバー50はステント10の長さと少なくとも等しい長さを有する。他の実施形態では、カバー50の長さはステント10の長さよりも長い。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、ステントはフルカバー付きのステントである。カバー50は、ステント10の壁の開口部40を覆って塞ぐ任意の適切な方法で付与されることが可能である。いくつかの実施形態では、カバー50はステント10を浸漬コーティング
することによって付与される。他の実施形態では、カバー50はステント10の上にコーティング材を吹付けコーティングすることによって付与される。
【0047】
少なくとも1つの実施形態では、付与されたカバー材料はアンカーギャップを形成するために除去される。いくつかの実施形態では、アンカー28の突出領域32の表面に付与されたカバー材料も、突出領域32がカバー50から露出するか又はカバー50の無い状態になるように除去される。換言すれば、突出領域32はその上にカバー材料を有していない。アンカーギャップを形成するためにカバー材料を除去するか又はアンカー28の表面上のカバー材料を除去するためのいかなる方法も、カバー50に穴が開かない限りは使用可能である。上記に議論されるように、カバー50は人工器官のルーメンが組織の内方成長によって閉塞されるのを防止する。いくつかの実施形態では、アンカーギャップを形成し、かつアンカー28の突出領域32のカバー材料を除去するために、レーザーが使用される。適切なレーザーはYAGレーザーである。いくつかの実施形態では、ステントはカバー材料が除去されている間、適所に保持される。1つの実施形態では、ステントはマンドレル上にある。他の実施形態では、アンカーギャップはコーティング工程の間エポキシで充填され、コーティングが付与された後でアンカーギャップを形成するためにエポキシが溶解される。一実施形態において、レーザーはアンカーからカバー材料を除去してアンカー28の突出領域32が露出するようにするために使用される。さらに他の実施形態では、アンカーギャップ内のコーティングは、アンカーギャップの幾何学的形状と一致する形状を備えたダイス又は他のデバイスを用いて打抜きされる。一実施形態において、レーザーは、アンカーからカバー材料を除去してアンカー28の突出領域32が露出するようにするために使用される。
【0048】
カバー50のための適切な材料には、開口部40のうち少なくとも一部を通り抜けての腫瘍又は組織の内方成長を防止する任意の他の種類の材料が含まれる。非限定的な例には、シリコーンエラストマー、ポリウレタン、ポリスチレン‐ポリイソブチレン‐ポリスチレン3ブロックコポリマー(SIBS)、ePTFE、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
以下の番号を付された言明は、上述のようなステント又は人工器官の1以上の態様に関する。
言明1. ステントであって、
第1の周方向のバンド;
第2の周方向のバンド;
第1及び第2の周方向のバンドの両方に接続された少なくとも1つのアンカーであって、それぞれアンカーギャップを画成するアンカー
を含んでなるステント。
【0050】
言明2. アンカーはそれぞれ:
第1の周方向のバンドに接続された第1のアンカー端部領域;
第2の周方向のバンドに接続された第2のアンカー端部領域;及び
アンカーギャップを画成する中央領域
を含んでなる、言明1に記載のステント。
【0051】
言明3. 第1のアンカー端部領域及び第2のアンカー端部領域はそれぞれ捻転領域である、言明1〜2に記載のステント。
言明4. アンカーはそれぞれ波形のデザイン、四角形のデザイン、丸形のデザイン、又は三角形のデザインを有する、言明1〜3に記載のステント。
【0052】
言明5. アンカーはそれぞれ、山部から山部へのアンカー、山部から谷部へのアンカ
ー、又は谷部から谷部へのアンカーである、言明1〜4に記載のステント。
言明6. 少なくとも1つのアンカーは複数のアンカーである、言明1〜5に記載のステント。
【0053】
言明7. 第1の周方向のバンド、第2の周方向のバンド、及び少なくとも1つのアンカーはアンカー区域を形成している、言明1〜6に記載のステント。
言明8. アンカー区域は第1及び第2の周方向のバンドを接続する複数の連結部材をさらに含んでなる、言明7に記載のステント。
【0054】
言明9. 連結部材はそれぞれ直線状である、言明8に記載のステント。
言明10. アンカー区域を1つだけ有している、言明7〜9に記載のステント。
言明11. カバー付きの人工器官を形成するためにカバーをさらに含んでなる、言明1〜10に記載のステント。
【0055】
言明12. 中央領域はカバーから距離を置いて突出する、言明11に記載のステント。
言明13. 中央領域は中央領域の上にカバー材料を有していない、言明11〜12に記載のステント。
【0056】
言明14. カバーは、シリコーン、ポリウレタン、及びこれらの組み合わせを含んでなる、言明11〜13に記載のステント。
言明15. 拡張状態及び非拡張状態を有するステントであって、
移動防止区域を含んでなり、前記移動防止区域は:
第1の周方向のバンド;
第2の周方向のバンド;
第1及び第2の周方向のバンドの間に延在する少なくとも1つの移動防止機構
を含んでなり、
ステントが非拡張状態にあるとき及びステントが拡張状態にあるとき、移動防止機構の一部分はステントの外側表面から突出している、ステント。
【0057】
言明16. 移動防止機構はそれぞれ、各移動防止機構の内側表面とステントの外側表面との間にギャップをさらに画成する、言明15に記載のステント。
言明17. 移動防止機構はそれぞれ、山部から山部への移動防止機構、山部から谷部への移動防止機構、又は谷部から谷部への移動防止機構である、言明15〜16に記載のステント。
【0058】
言明18. 移動防止機構はそれぞれ、第1の端部領域及び第2の端部領域を含んでなり、第1の端部領域は捻転領域であり第2の端部領域は捻転領域である、言明15〜17に記載のステント。
【0059】
言明19. カバーをさらに含んでなり、移動防止機構の、ステントの外側表面から突出している部分は露出している、言明15〜18に記載のステント。
言明20. アンカーギャップはそれぞれ、カバーによってさらに画成されている、言明19に記載のステント。
【0060】
言明21. 体腔内人工器官を製造する方法であって:
チューブからステントをレーザー切断するステップであって、ステントは第1の周方向のバンド、第2の周方向のバンド及び少なくとも1つのアンカーを含んでなり、アンカーはそれぞれ第1の周方向のバンド及び第2の周方向のバンドに接続され、ステントは外側表面を有する、ステップと;
アンカーの一部分をステントの外側表面から外側へと突出させるために各アンカーを捻転せしめるステップと、を含んでなる方法。
【0061】
言明22. アンカーはそれぞれ、山部から山部へのアンカー、山部から谷部へのアンカー、又は谷部から谷部へのアンカーである、言明21に記載のカバー付き人工器官。
言明23. アンカーはそれぞれ、第1の周方向のバンドに接続された第1のアンカー端部領域及び第2の周方向のバンドに接続された第2のアンカー端部領域を含んでなり、第1及び第2の端部領域はいずれもアンカーの一部分をステントの外側表面から突出させるために捻転せしめられる、言明21〜22に記載の方法。
【0062】
言明24. アンカーが捻転せしめられた後、アンカーはアンカーギャップを画成する、言明21〜23に記載の方法。
言明25. アンカーを捻転せしめた後に各アンカーを熱設定するステップをさらに含んでなる、言明21〜24に記載の方法。
【0063】
言明26. アンカーギャップをエポキシで充填するステップをさらに含んでなる、言明24〜25に記載の方法。
言明27. ステントにカバー材料を付与することによりカバーを形成するステップをさらに含んでなる、言明21〜26に記載の方法。
【0064】
言明28. カバー材料は、シリコーン、ポリウレタン、及びこれらの組み合わせを含んでなる、言明26に記載の方法。
言明29. アンカーギャップから任意のカバー材料を除去するステップをさらに含んでなる、言明27〜28に記載の方法。
【0065】
言明30. アンカーのカバーから突出している部分が露出するように、各アンカーからカバー材料を除去するステップをさらに含んでなる、言明29に記載の方法。
言明31. アンカーギャップを形成するため、アンカーを切除するため、又はアンカーギャップの形成及びアンカーの切除のために、レーザーが使用される、言明29〜30に記載の方法。
【0066】
言明32. アンカーギャップの大きさのダイス型を打抜くことにより、アンカーギャップからカバー材料が除去される、言明29に記載の方法。
言明33. 各アンカーからカバー材料を除去してアンカーのカバーから突出している部分が露出するようにするステップをさらに含んでなる、言明31に記載の方法。
【0067】
言明34. カバーを形成した後にアンカーギャップからエポキシを除去するステップをさらに含んでなる、言明27〜28に記載の方法。
上記の開示は、例証であって網羅的でないものと意図されている。この説明は数多くの変更形態及び代替形態を当業者に示唆するであろう。個々の図面において示され、かつ上記に説明された様々な要素は、所望の通りに、組み合わされてもよいし組み合わせのために改変されてもよい。上記の代替形態及び変更形態はすべて特許請求の範囲の範囲内に含まれるように意図されており、特許請求の範囲において用語「含んでなる(comprising)」は「備えているがそれらに限定はされない(including, but not limited to )」ことを意味している。
【0068】
さらに、従属クレームにおいて提示された特定の特徴は、本発明の範囲内において互いに別のかたちで組み合わされることが可能であって、本発明が、従属クレームの特徴の任意の他の可能な組み合わせを有している他の実施形態をも明確に対象としているものと認識されるべきであるようになっている。例えば、特許請求の範囲の公開を目的として、後
続する任意の従属請求項は、多項従属形式がその法域内で容認された形式である場合、そのような従属請求項において引用されたすべての記述事項を所有する全ての先行する請求項に多項従属した形式で代替的に書かれているとみなされるべきである(例えば、請求項1に直接従属している請求項はそれぞれ、代替的にすべての先行する請求項に従属するものとみなされるべきである)。多項従属の請求項形式が制限されている法域では、添付の従属請求項は、以降のそのような従属請求項において列挙された具体的な請求項以外の、先行の記述事項を所有する請求項への従属性を生じる各々単独に従属する請求項形式で代替的に書かれているものとそれぞれみなされるべきである。
【0069】
これで本発明の説明を完了する。当業者は、本明細書中に記載された具体的な実施形態についての他の等価物を認識しうるものであり、その等価物は本願に添付された特許請求の範囲によって包含されるものと意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4