特許第6396543号(P6396543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6396543
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】足場の固定具
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20180913BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20180913BHJP
   E04G 5/04 20060101ALI20180913BHJP
   E04G 3/24 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   E02B3/06
   E01D21/00 A
   E04G5/04 Z
   E04G3/24 302Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-133535(P2017-133535)
(22)【出願日】2017年7月7日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391061646
【氏名又は名称】株式会社流機エンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
(72)【発明者】
【氏名】奥山 俊
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】原 佳伯
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮一
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−140748(JP,A)
【文献】 特開昭60−258334(JP,A)
【文献】 特開昭55−156793(JP,A)
【文献】 特開平10−325126(JP,A)
【文献】 特開2012−077578(JP,A)
【文献】 特開2015−229850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04−3/14
E01D 1/00−24/00
E04G 1/00−7/34
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の支持杭に固定する足場の固定具であって、
前記支持杭に巻付け可能な帯状シートと、この帯状シートに取り付けられた前記足場の掛止具とを有し、
前記帯状シートには流体を注入可能な袋部が存在し、
前記帯状シートが前記支持杭に巻き付けられている状態において前記袋部に流体を注入すると、前記帯状シートが前記支持杭を締め付ける構成とされている、
ことを特徴とする足場の固定具。
【請求項2】
前記帯状シートは、外側シート及び内側シートが積層されて形成され、
前記帯状シートは、前記外側シート及び前記内側シートが相互に接合された接合部と、相互に接合されていない非接合部とを有し、
前記非接合部の前記外側シートと前記内側シートと間に袋シートが収められ、この袋シートに前記流体が注入可能とされている、
請求項1に記載の足場の固定具。
【請求項3】
前記接合部の外側シートに、前記掛止具が取り付けられている、
請求項2に記載の足場の固定具。
【請求項4】
前記帯状シートの一端部及び他端部は、非接合部とされ、
前記外側シートの一端部及び他端部並びに前記内側シートの一端部及び他端部は、それぞれ連結可能とされ、
前記外側シートの連結位置と前記内側シートの連結位置とが、前記支持杭の周方向に異なる、
請求項2又は請求項3に記載の足場の固定具。
【請求項5】
前記帯状シートの上端部に、マグネットが取り付けられている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の足場の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桟橋の構造物等を補修等する際に使用する足場の固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造物を補修するにあたって、高い所での作業が必要になる場合は、通常、足場が組み立てられる(足場の設置)。また、埠頭に存在する桟橋等の水上構造物の下面(裏面)を補修する場合も、水上での作業となるため、足場が組み立てられる。もっとも、水上構造物の場合は、地面を土台(基礎)として足場を組み立てるということができない。そこで、水上構造物の場合は、水上構造物自体の下面にアンカーボルトを打ち込み、このアンカーボルトからチェーンを吊り下げ、このチェーンを利用して足場を設置している。しかしながら、この方法による場合は、水上構造物の下面にアンカーボルトを打ち込むための穴をあける必要がある。しかも、アンカーボルトは、接着剤等で強固に定着させる必要がある。この定着は、安全性等を考慮して、引抜き荷重が、例えば15kN程度になるように行われ、その分、定着時間も長くなる。したがって、以上の方法によると、足場を設置するために要する時間(期間)が極めて長くなる。加えて、水上構造物の下での作業は、潮が満ちているときにはできないため、作業時間が限られる。1日の作業時間は、例えば、3〜4時間程度になる。結果、900m2程度の広さの足場を設置するのに、長期間が必要になる。この他、以上の方法によると、アンカーボルトを打ち込むためにあけた穴から水上構造物の劣化が進むおそれがある。
【0003】
そこで、水上構造物を支持する支持杭に足場を固定する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。これらの方法(支持杭固定方式)によると、水上構造物自体にアンカーボルトを打ち込むための穴をあける必要がなく、また、アンカーボルトを定着させるための時間も必要がない。しかしながら、これら従来の支持杭固定方式によると、支持杭の足場を固定する部分が劣化(損傷等)するおそれがある。特に、支持杭が鋼管杭である場合は、腐食の防止等を目的として鋼管杭の表面にライニングが施されているため、従来の支持杭固定方式によると、当該ライニングを傷つけてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−325126号公報
【特許文献2】特開2012−77578号公報
【特許文献3】特開2015−229850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする主たる課題は、足場の設置作業時間を短くすることができながら、補修の対象となる構造物等を傷付けるおそれのない足場の固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、
構造物の支持杭に固定する足場の固定具であって、
前記支持杭に巻付け可能な帯状シートと、この帯状シートに取り付けられた前記足場の掛止具とを有し、
前記帯状シートには流体を注入可能な袋部が存在し、
前記帯状シートが前記支持杭に巻き付けられている状態において前記袋部に流体を注入すると、前記帯状シートが前記支持杭を締め付ける構成とされている、
ことを特徴とする足場の固定具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、足場の設置作業時間を短くすることができながら、補修の対象となる構造物等を傷付けるおそれのない足場の固定具となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】支持杭に巻き付ける前の足場固定具を示す上面図である。
図2】支持杭に巻き付ける前の足場固定具を示す正面図である。
図3】支持杭に巻き付けた足場固定具を示す正面図である。
図4】支持杭に巻き付けた足場固定具を示す上面図である。
図5】足場固定具の設置例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。
【0010】
(固定場所)
本形態の足場の固定具(足場固定具)Xは、「構造物の足場」を固定するための治具として機能する。構造物は、地上構造物であっても、図5に例示するような、水上構造物102であってもよい。水上構造物102とは、例えば、埠頭に存在する桟橋等である。水上構造物102は、水面Wの上方に位置するため、本形態による足場固定具Xの効果がいかんなく発揮される。
【0011】
本形態の足場固定具Xは、水上構造物102を支持する支持杭100に固定する。足場固定具Xは、支持杭100に対して、上下方向の如何なる位置にも固定することができる。したがって、水上構造物102の下面(裏面)に、これを補強する梁103等が存在する場合や、その他の付加物が存在する場合等においても、何ら支障なく支持杭100に対して足場固定具Xを固定することができる。図示例では、梁103に沿って足場固定具Xを固定した例を示している。
【0012】
支持杭Xは、鋼管杭であっても、その他の例えばコンクリート製の杭であってもよい。本形態の足場固定具Xは、後述するように支持杭100を傷付けるおそれがないため、例えば、鋼管杭の表面にライニングが施されている場合等においても、問題なく使用することができる。
【0013】
(足場固定具)
図1〜3に示すように、本形態の足場固定具Xは、支持杭100に巻き付けることができる帯状シート10と、この帯状シート10に取り付けられている足場の掛止具(足場掛止具)3とを、主に有する。
【0014】
帯状シート10は、外側シート11と内側シート12とが積層されて形成されている。外側シート11及び内側シート12は、いずれも帯状である。外側シート11及び内側シート12は、概ね長方形状であり、同一形状である。本形態の帯状シート10は、外側シート11及び内側シート12からなる2層構造であるが、必要により、3層以上の複数層構造とすることもできる。
【0015】
帯状シート10には、外側シート11及び内側シート12が相互に接合された接合部10Xと、外側シート11及び内側シート12が相互に接合されていない非接合部10Yとが存在する。接合部10X及び非接合部10Yは、支持杭100の周方向100Aに順に並んでいる。外側シート11及び内側シート12の接合は、例えば、縫付け、接着、融着等によることができる。
【0016】
図示例では、接合部10Xが5部位(5箇所)存在し、非接合部10Yが4部位(4箇所)存在する。ただし、帯状シート10は、支持杭100に巻かれたときに、端部同士が重なり合う。したがって、帯状シート10が支持杭100に巻かれた状態においては、接合部10Xが4部位になると言える。
【0017】
接合部10X及び非接合部10Yの数は、必要により、増減することができる。ただし、非接合部10Yの支持杭100の周方向100Aに沿った長さが、帯状シート10の長手方向の長さ(支持杭100の周方向100Aに沿った長さ)の100%〜150%となるようにするのが好ましい。非接合部10Yの当該長さが上記下限値を下回ると、支持杭100に帯状シート10を確実に固定することができなくなるおそれがある。他方、非接合部10Yの当該長さが上記上限値を上回ると、帯状シート10の剛性を確保することができなくなるおそれがある。この点、剛性を確保することができないと、例えば、足場を構成する部材101等を掛止した際に、帯状シート10(足場固定具X)が歪んでしまうおそれがある。
【0018】
帯状シート10には、流体を注入することができる袋部Aが存在する。帯状シート10が支持杭100に巻き付けられている状態において、袋部Aに流体を注入すると、袋部Aが膨らみ、帯状シート10が支持杭100を締め付ける状態になる。この締付けによって、帯状シート10(足場固定具X)が支持杭100に対して確実に固定される。また、支持杭100に接触するのが帯状シート10のみであるため、支持杭100を傷付けるおそれもない。しかも、アンカーの打込みや、ボルトの締付け等の作業を必要とせず、流体の注入のみで足りるため、足場の設置作業時間を短くすることができる。
【0019】
支持杭100に対する足場固定具Xの固定を確実にするという観点からは、流体の注入圧を、例えば、30kPa〜80kPaとするのが好ましい。
【0020】
袋部Aに注入する流体は、通常、空気である。ただし、流体としては、必要により、窒素等の気体を、場合によっては海水等の流体をも利用することができる。なお、空気等の注入は、例えば、コンプレッサー等を利用して行うことになる。このコンプレッサー等は、安全性の観点から、足場の固定時においては常時駆動しておくのが好ましい。
【0021】
本形態の袋部Aは、帯状シート10の非接合部10Yにおける(位置する)外側シート11と内側シート12と間に袋シート21が収められることで構成されている。流体は、注入口13を通して、各袋シート21内に注入する。図示例では、注入口13の数が、各袋シート21(袋部A)に対して2つとなっている。ただし、注入口13の数は、各袋シート21(袋部A)に対して、1つ、又は3つ以上の複数とすることもできる。
【0022】
次に、帯状シート10に取り付けられている足場掛止具3について、説明する。
足場掛止具3は、図3に示すように、足場を構成する部材101、例えば、水平方向に延在する鉄筋等を掛止する(吊り下げる)部材である。例えば、図5に示すように、相互に隣接する足場固定具Xの各足場掛止具3によって、同一の足場を構成する部材101を掛止することで、足場の設置が可能になり、あるいは足場が設置される。
【0023】
本形態においては、足場掛止具3が、一方の帯状のシート(掛止用シート)が折り返されることで構成されている。当該掛止用シートは、両端部が重ね合わされたうえで、帯状シート10に取り付けられている。一方、掛止用シートの折返し部には、足場を構成する部材101が通される。これにより、足場固定具Xに対して足場を構成する部材101が掛止される。
【0024】
足場掛止具3の取付けは、強度の観点から、外側シート11の接合部10Xに対して行うのが好ましい。図示例では、足場掛止具3の取付けが、上下2箇所(2段)で行われている。ただし、必要により、1箇所(1段)、又は3箇所以上の複数箇所(複数段)とすることもできる。いずれの場合も、足場掛止具3の取付けは、強度の観点から、例えば、縫付け、接着、融着等の接合によるのが好ましい。
【0025】
帯状シート10の一端部10A及び他端部10Bは、非接合部10Yとされており、外側シート11及び内側シート12が接合されていない。そして、図3に示すように、外側シート11の一端部11A及び他端部11Bは、連結可能とされている。同様に、内側シート12の一端部12A及び他端部12Bも、連結可能とされている。これらの連結(帯状シート10の連結)は、帯状シート10を支持杭100に対して巻き付けた後、袋部Aに流体を注入するに先立って行う。
【0026】
帯状シート10の連結は、例えば、線ファスナー(スライドファスナー、滑り式留金具)、ボタン等の点ファスナー、マジックテープ(登録商標)等の面ファスナーなどを利用して実現することができる。ただし、設置作業の迅速性や強度の観点からは、線ファスナーによるのが好ましい。そして、線ファスナーによる場合、特に強度の観点からは、外側シート11の連結位置11Cと内側シート12の連結位置12Cとが、支持杭100の周方向100Aに関して異なるものとするのが好ましい。この位置ずれ(相違)の長さ10Lは、例えば、5〜20cmであるのが好ましい。
【0027】
図2に示すように、帯状シート10の上端部には、マグネット14が取り付けられている。マグネット14が取り付けられていると、例えば、支持杭100が鋼管杭である場合においては、袋部Aに流体を注入する前に、帯状シート10を支持杭100に仮留めすることができる。足場固定具Xの固定(設置)作業は、水面W上での作業となり、また、極めて狭い空間での作業になる。したがって、マグネット14による仮留めは、極めて有用である。
【0028】
マグネット14の取付けは、強度の観点から、帯状シート10の接合部10Xに対して行うのが好ましい。図示例では、各接合部10Xの上端部に、マグネット14を取り付けている。マグネット14の取付けは、上下方向に位置をずらして2箇所以上の複数箇所に行うこともできる。
【0029】
(素材等)
外側シート11は、支持杭100に巻き付けられた状態において、表面に露出部材である。また、外側シート11は、支持杭100に対する帯状シート11の強固な巻付け状態を確保するための部材である。したがって、外側シート11には、柔軟性と共に十分な引張強さが要求される。外側シート11の引張強さは、例えば1800N/5cm以上であるのが好ましい。このような要求を満たす素材としては、例えば、高強度ナイロン、アラミド、ポリエステル ポリアリレート等を例示することができる。
【0030】
内側シート12は、支持杭100に巻き付けられた状態において、当該支持杭100に当接する(接触する)部材である。したがって、内側シート12には、柔軟性と共に摩擦に対する強さが要求される。また、内側シート12には、支持杭100に対して十分な摩擦力を有することも要求される。このような要求を満たす素材としては、例えば、等を例示することができる。
【0031】
足場掛止具3を構成する掛止用シートは、足場を構成する部材101を掛止する部材である。したがって、掛止用シートには、柔軟性と共に摩擦に対する強さが要求される。また、掛止用シートには、足場等を吊り下げるだけの十分な強度を有することも要求される。このような要求を満たす素材としては、例えば、各種ゴム、塩化ビニル、ポリアリレート等を例示することができる。なお、足場掛止具3は、掛止用シート以外の部材で構成することもでき、その場合は、硬質な素材で形成することもできる。
【0032】
袋シート21は、空気等の流体を注入するための部材である。したがって、袋シート21には、流体の圧力によって裂けるおそれのない十分な強さが要求される。また、袋シート21には、流体が抜けるおそれのない密閉性、流体が空気等の気体の場合は気密性も要求される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、桟橋等の構造物を補修等する際に使用する足場の固定具として利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
3 足場掛止具
10 帯状シート
11 外側シート
12 内側シート
13 注入口
14 マグネット
21 袋シート
100 支持杭
101 足場を構成する部材
102 水上構造物
103 梁
A 袋部
X 足場固定具
【要約】
【課題】足場の設置作業時間を短くすることができながら、補修の対象となる構造物等を傷付けるおそれのない足場の固定具を提供する。
【解決手段】構造物の支持杭100に固定する足場の固定具Xについて、支持杭100に巻付け可能な帯状シート10と、この帯状シート10に取り付けられた足場の掛止具3とを備え、帯状シート10には流体を注入可能な袋部Aが存在し、帯状シート10が支持杭100に巻き付けられている状態において袋部Aに流体を注入すると、帯状シート10が支持杭100を締め付ける構成とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5