特許第6396547号(P6396547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6396547
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/47 20060101AFI20180913BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20180913BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A61F13/47 300
   A61F13/532 200
   A61F13/533 100
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-137785(P2017-137785)
(22)【出願日】2017年7月14日
【審査請求日】2018年4月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】倉持 美帆子
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−097715(JP,A)
【文献】 特開平10−328233(JP,A)
【文献】 特開2010−022539(JP,A)
【文献】 特開2006−271898(JP,A)
【文献】 特開2016−052398(JP,A)
【文献】 特開2017−086599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも吸収体が備えられた吸収性物品において、
前記吸収体の後方部の肌側面に、非肌側に窪む表面側凹溝が所定のパターンで形成されるとともに、前記表面側凹溝によって区画された複数の区画吸収部が形成され、かつ前記吸収体の後方部の非肌側面であって、臀部溝に対応する位置に、肌側に窪む臀部溝対応凹溝が形成され、
前記表面側凹溝は、吸収性物品の略長手方向に沿うとともに幅方向に間隔をあけて配置された複数の長手方向凹溝と、吸収性物品の略幅方向に沿うとともに長手方向に間隔をあけて配置された複数の幅方向凹溝とからなり、
前記長手方向凹溝は、吸収性物品の前側から後側に向けて幅方向の外方側に傾斜する放射状に形成され、前記幅方向凹溝は、隣り合う長手方向凹溝の中央部を通る仮想線に直交して形成されることにより、前記幅方向凹溝は前記吸収体の幅方向に対して、前記長手方向凹溝において屈折する折れ線状に形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記区画吸収部の長手方向長さは、長手方向前側の寸法を相対的に小さくし、長手方向後側の寸法を相対的に大きくしており、前記区画吸収部は、吸収体の後側にいくに従って相対的に大きな面積で形成されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面側凹溝の溝幅は、吸収性物品の長手方向の前側より後側の方が漸次大きくなるように形成されるとともに、吸収性物品の幅方向の中央より外方側の方が漸次大きくなるように形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記長手方向凹溝及び幅方向凹溝のうち、一方側の凹溝は、前記吸収体の肌側面から圧搾したエンボス部からなり、他方側の凹溝は、前記吸収体の肌側の積繊量を低減した凹部からなる請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記長手方向凹溝は、吸収体の長手方向中心線の左右にそれぞれ設けられ、長手方向中心線上に設けられておらず、前記臀部溝対応凹溝は、前記吸収体の長手方向中間部の幅方向中央部から前記吸収体の後端にかけて、長手方向に沿って形成された、非肌側面から肌側へ向けて圧搾したエンボス部からなる請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳しくは吸収体の後方部の肌側面に、非肌側に窪む表面側凹溝と、前記表面側凹溝によって区画された複数の区画吸収部とが形成され、かつ吸収体の後方部の非肌側面に、肌側に窪む臀部溝対応凹溝が形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に、綿状パルプなどからなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
就寝時などにおける漏れなどを防止した夜用の生理用ナプキンでは、吸収量を確保するため吸収体を厚くしたものが多く市場に提供されているが、吸収体が厚いとごわ付いて装着感が悪化する問題があった。近年では、夜用の生理用ナプキンにおいても装着感を向上するため、薄型化したものが要求されている。しかし、単に吸収体を薄型化しただけでは、吸収量不足による漏れや、肌面とのフィット性の悪さから伝い漏れのおそれがあり、着用者にも不安感を与えていた。
【0004】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、吸収体の柔軟性を向上して肌面との隙間を低減し、漏れを防止したものが開発されている。例えば、下記特許文献1においては、吸収性コアは、排泄部対向部における幅方向の中央部に前方中高領域を有するとともに、後方部における幅方向の中央部に後方中高領域を有しており、前記前方中高領域及び前記後方中高領域は、それぞれ吸収性コアの幅方向に延びる溝部によって分割され、吸収性コアの長手方向に沿って並んだ複数の小吸収部が形成された吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2においては、吸収層は、肌当接面側に溝を備える離間部と、該離間部によって区画された該離間部よりも高坪量である小吸収部とを有し、前記小吸収部には、非肌当接側面に、肌当接面側へ向かう圧搾凹部を有する吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−97715号公報
【特許文献2】特開2014−97241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2記載の吸収性物品では、凹溝によって区画された小吸収部がそれぞれ、吸収体の長手方向に長い長方形状を成しているため、身体の部分によって異なる丸みに沿って変形しにくく、充分満足できるフィット性が得られない場合があった。
【0008】
特に夜用の生理用ナプキンにおいては、着用者の臀部を広く覆うように通常のものより後方に長く形成されているため、吸収性物品の後方部が臀部の外側に膨出する丸みに沿うとともに、窪んだ溝状の臀部溝に沿って変形しやすい構造であることが要求される。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、吸収性物品の後方部を身体の形状に沿って変形しやすくし、フィット性を向上した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、少なくとも吸収体が備えられた吸収性物品において、
前記吸収体の後方部の肌側面に、非肌側に窪む表面側凹溝が所定のパターンで形成されるとともに、前記表面側凹溝によって区画された複数の区画吸収部が形成され、かつ前記吸収体の後方部の非肌側面であって、臀部溝に対応する位置に、肌側に窪む臀部溝対応凹溝が形成され、
前記表面側凹溝は、吸収性物品の略長手方向に沿うとともに幅方向に間隔をあけて配置された複数の長手方向凹溝と、吸収性物品の略幅方向に沿うとともに長手方向に間隔をあけて配置された複数の幅方向凹溝とからなり、
前記長手方向凹溝は、吸収性物品の前側から後側に向けて幅方向の外方側に傾斜する放射状に形成され、前記幅方向凹溝は、隣り合う長手方向凹溝の中央部を通る仮想線に直交して形成されることにより、前記幅方向凹溝は前記吸収体の幅方向に対して、前記長手方向凹溝において屈折する折れ線状に形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、前記吸収体の後方部の肌側面に、所定のパターンで形成された非肌側に窪む表面側凹溝と、前記表面側凹溝によって区画された複数の区画吸収部とが形成されているため、前記表面側凹溝を基点として隣り合う区画吸収部の間が内側に折れ曲がるように変形することによって、吸収体の後方部が外側に膨出する臀部の丸みに沿って柔軟に変形しやすくなり、臀部とのフィット性が向上できる。
【0012】
また、前記吸収体の後方部の非肌側面には、臀部溝に対応する位置に、臀部溝対応凹溝が形成されているため、前記臀部溝対応凹溝を可撓軸として、吸収体が臀部溝に沿って肌側に向けた凸状に変形しやすくなり、この凸状に変形した部分が臀部溝に入り込むことによって臀部溝とのフィット性が向上できる。
【0013】
更に、前記表面側凹溝は、吸収性物品の前側から後側に向けて幅方向の外方側に傾斜する放射状に形成された長手方向凹溝を有するため、吸収体の後方部が臀部の丸みに沿ってより柔軟に変形できるようになる。すなわち、長手方向凹溝を前述の放射状に形成することにより、隣り合う長手方向凹溝の離間距離が、股下側寄り位置より背側寄り位置の方が広くなるため、股下側において臀部の細かな丸みの変化に対応できるとともに、背側において臀部の大きな丸みに対応できるようになる。したがって、吸収体の後方部が確実に臀部の形状に沿って柔軟に変形できるようになる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記区画吸収部の長手方向長さは、長手方向前側の寸法を相対的に小さくし、長手方向後側の寸法を相対的に大きくしており、前記区画吸収部は、吸収体の後側にいくに従って相対的に大きな面積で形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
請求項に係る本発明として、前記表面側凹溝の溝幅は、吸収性物品の長手方向の前側より後側の方が漸次大きくなるように形成されるとともに、吸収性物品の幅方向の中央より外方側の方が漸次大きくなるように形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項記載の発明では、吸収体をより一層臀部の丸みに沿って変形しやすくするため、表面側凹溝の溝幅を、前側より後側の方が大きく、かつ幅方向中央より外方側の方が大きくなるように形成している。上記特許文献1、2記載の吸収性物品では、凹溝の断面寸法がほぼ一定であると推定できるため、凹溝を基点として変形した場合、隣り合う小吸収部の成す角(折れ角)は、全ての領域で凹溝の両側壁が当接する一定の範囲までであり、場所によって変化する身体の丸みの大きさに追随して変形しにくい構造であった。つまり、身体の丸みが緩やかな部分では、凹溝の両側壁間に隙間が生じ、その部分が窪み部となって、肌面との間に隙間が生じ、この隙間を通じて体液が流れやすくなるとともに、身体の丸みが大きな部分では、凹溝の両側壁が当接してそれ以上折れ曲がりにくくなるため、隣り合う小吸収部同士の折れ角が不足して小吸収部の表面と肌面との間に隙間が生じ、この隙間を通じて体液が流れやすくなる。これに対して、本発明では、前記表面側凹溝の溝幅を場所によって変化させることにより、隣り合う区画吸収部の折れ角が、長手方向の前側より後側の方が大きく、かつ幅方向中央より外方側の方が大きくなるようにしている。これによって、長手方向の後側及び幅方向の外方側の方が丸みがきつくなる臀部の形状に沿って吸収体が変形しやすくなり、臀部とのフィット性が向上できる。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記長手方向凹溝及び幅方向凹溝のうち、一方側の凹溝は、前記吸収体の肌側面から圧搾したエンボス部からなり、他方側の凹溝は、前記吸収体の肌側の積繊量を低減した凹部からなる請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、装着時に吸収体が身体の形状に沿って変形した際、長手方向凹溝及び幅方向凹溝のうち、一方側の凹溝がエンボス部によって形成されているため、吸収体の強度が確保でき、吸収体の割れが防止できるようになる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記長手方向凹溝は、吸収体の長手方向中心線の左右にそれぞれ設けられ、長手方向中心線上に設けられておらず、前記臀部溝対応凹溝は、前記吸収体の長手方向中間部の幅方向中央部から前記吸収体の後端にかけて、長手方向に沿って形成された、非肌側面から肌側へ向けて圧搾したエンボス部からなる請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、前記臀部溝対応凹溝を、所定の位置に、エンボス部によって形成しているため、吸収体の後方部が臀部溝に沿って変形しやすくなるとともに、臀部溝に入り込んだ吸収体が臀部の動きなどによって割れるのが防止できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収性物品の後方部が身体の形状に沿って変形しやすくなり、フィット性が向上できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3図1のIII−III線矢視図である。
図4】吸収体4の肌側面の平面図である。
図5】表面側凹溝10を基点とした吸収体4の変形状態を示す断面図である。
図6】変形例に係る表面側凹溝10を基点とした吸収体4の変形状態を示す断面図である。
図7】(A)は長手方向前側又は幅方向中央側の表面側凹溝10、(B)は長手方向後側又は幅方向外方側の表面側凹溝10を示す断面図である。
図8】表面側凹溝10の底部にエンボス溝15を形成した場合の吸収体4の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に長手方向に沿ってほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記透液性表面シート3の非肌側に隣接して、前記透液性表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0025】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0026】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0027】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0028】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0029】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布7が配設されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0030】
前記サイド不織布7は、図2及び図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないフラップ部が形成されている。このフラップ部は、ほぼ体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置にヒップホールド用フラップW、Wを形成してもよい。これらウイング状フラップW、Wおよびヒップホールド用フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを基端部の折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップWをショーツの内面に止着するようになっている。
【0031】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材9、9…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、図2に示されるように、外側に傾斜しながら表面側に起立する直線状の立体ギャザーBS、BSが左右対で形成されている。
【0032】
〔凹溝〕
以下、前記吸収体4に形成される凹溝について説明する。図4に示されるように、前記吸収体4の後方部の肌側面には、非肌側に窪む表面側凹溝10が所定のパターンで形成されるとともに、前記表面側凹溝10によって区画された複数の区画吸収部11、11…が形成され、かつ前記吸収体4の後方部の非肌側面であって、着用者の臀部溝に対応する位置に、臀部溝に沿って肌側に窪む臀部溝対応凹溝12が形成されている。
【0033】
前記表面側凹溝10、区画吸収部11及び臀部溝対応凹溝12が形成される吸収体4の後方部とは、図1に示されるように、前記ウイング状フラップWより長手方向後側の領域、すなわち着用者の体液排出部Hに対応する領域より長手方向後側の領域のことである。より好ましくは、ヒップホールド用フラップWが形成された領域であって、後側にいくに従って徐々に幅方向外側に突出するヒップホールド用フラップWが所定の幅以上になった部位より長手方向の後側、具体的には、ウイング状フラップWの後端部における吸収体4の側縁から生理用ナプキン1の側縁までの長さが最も小さくなる部分におけるフラップ幅Aと、前記表面側凹溝10及び臀部溝対応凹溝12の前端におけるフラップ幅Bとの比B/Aが、2.0〜3.0程度となる位置より長手方向の後側の領域のことである。
【0034】
前記表面側凹溝10、区画吸収部11及び臀部溝対応凹溝12は、生理用ナプキン1の後方部のみに形成され、これより前側の領域には形成されていない。前記表面側凹溝10、区画吸収部11及び臀部溝対応凹溝12は、吸収体を臀部の形状に沿って変形しやすくするためのものであり、前方部では吸収体の変形状態が異なるため、むしろ設けないのが望ましい。
【0035】
前記表面側凹溝10が形成される吸収体4の肌側面とは、吸収体4の肌当接面のことであり、前記臀部溝対応凹溝12が形成される非肌側面とは、吸収体4の非肌当接面(下着側面)のことである。
【0036】
本生理用ナプキン1においては、前記吸収体4の後方部の肌側面に、所定のパターンで形成された非肌側に窪む表面側凹溝10と、前記表面側凹溝10によって区画された複数の区画吸収部11とが形成されているため、図5及び図6に示されるように、非肌側に窪む前記表面側凹溝10を基点として、前記表面側凹溝10の両側壁が閉じるように隣り合う区画吸収部11、11の間が内側に折れ曲がることにより、吸収体の後方部が全体として外側に膨出して柔軟に変形しやすくなる。これによって、吸収体4の後方部が臀部の丸みに沿って柔軟に変形し、臀部とのフィット性が向上できる。
【0037】
また、前記吸収体4の後方部の非肌側面には、臀部溝に対応する位置に、臀部溝対応凹溝12が形成されているため、前記臀部溝対応凹溝12を可撓軸として、吸収体4が臀部溝に沿って肌側に向けた凸状に変形しやすくなり、この凸状に変形した部分が臀部溝に入り込むことによって臀部溝とのフィット性が向上できる。
【0038】
前記表面側凹溝10は、前記吸収体4の後方部の肌側面に形成された、非肌側に窪む凹溝である。前記表面側凹溝10は、吸収体4のみを非肌側に窪ませて形成してもよいし、被包シート5及び吸収体4を一体的に非肌側に窪ませて形成してもよいし、透液性表面シート3から吸収体4にかけて一体的に非肌側に窪ませて形成してもよい。何れにしても、吸収体4がこの表面側凹溝10を基点として折れ曲がりやすくなっていればよい。
【0039】
前記表面側凹溝10は、肌側面が周辺の部分より非肌側に窪んだ厚みが薄く形成された部分であり、吸収体4の曲げ剛性が弱くなった部分である。前記吸収体4は、前記表面側凹溝10において分割されることなく、前記表面側凹溝10の底部には吸収体が存在している。
【0040】
前記表面側凹溝10は、図4に示されるように、生理用ナプキン1の略長手方向に沿うとともに幅方向に間隔をあけて配置された複数の長手方向凹溝13、13…と、生理用ナプキン1の略幅方向に沿うとともに長手方向に間隔をあけて配置された複数の幅方向凹溝14、14…とから構成されている。
【0041】
前記長手方向凹溝13が長手方向の中間位置から後側に向けて吸収体4の後側端縁又は側方端縁の近傍位置まで形成され、隣り合う長手方向凹溝13、13の間が長手方向に所定の間隔で幅方向凹溝14によって区画されている。
【0042】
前記長手方向凹溝13は直線で構成され、隣り合う長手方向凹溝13、13間を結ぶ幅方向凹溝14は長手方向凹溝13とほぼ直交する直線で構成されている。前記幅方向凹溝14は、1組の長手方向凹溝13、13間に配置された幅方向凹溝14の端縁から連続して、これと隣接する次の長手方向凹溝13に向けて延びている。このため、前記幅方向凹溝14は、全体として、吸収体4の幅方向に連続する線状に形成されている。
【0043】
前記長手方向凹溝13は、生理用ナプキン1の前側から後側に向けて幅方向の外方側に傾斜する放射状に形成されている。すなわち、隣り合う長手方向凹溝13、13の離間距離が、生理用ナプキン1の前側より後側の方が相対的に大きく形成されている。前記放射状とは、長手方向中心線CL上の1点又は互いに近接する複数の点を中心として、長手方向後側の幅方向外方側に向けて、長手方向中心線CLとの成す角を変化させた複数の直線で構成したものである。
【0044】
本生理用ナプキン1においては、前記長手方向凹溝13を生理用ナプキン1の前側から後側に向けて幅方向の外方側に傾斜する放射状に形成することにより、吸収体4の後方部が臀部の丸みに沿ってより柔軟に変形できるようになっている。すなわち、長手方向凹溝13を前述の放射状に形成することにより、隣り合う長手方向凹溝13、13の離間距離が、股下側寄り位置より背側寄り位置の方が広くなるため、股下側において臀部の細かな丸みの変化に対応できるとともに、背側において臀部の大きな丸みに対応できるようになる。したがって、吸収体4の後方部が確実に臀部の形状に沿って柔軟に変形できるようになる。
【0045】
前記表面側凹溝10、区画吸収部11及び臀部溝対応凹溝12が形成される吸収体4の厚みは、3〜20mm、好ましくは5〜15mmとするのがよい。
【0046】
隣り合う長手方向凹溝13、13の離間距離(区画吸収部11の幅方向長さ)は、5〜30mm、好ましくは10〜20mmとするのがよい。隣り合う長手方向凹溝13、13の離間距離は、図4に示されるように、前側端部の離間距離Cと後側端部の離間距離Dとの比D/Cが、1.3〜4.0倍、好ましくは1.5〜2.5倍とするのがよい。この前側端部と後側端部の離間距離の比D/Cは、長手方向凹溝13が吸収体4の後側端縁の近傍まで形成される場合の比であり、図示例のように、最も幅方向外側の長手方向凹溝13のように吸収体4の後側端縁まで延びず吸収体4の側方端縁の近傍で途切れている場合、これより内側の吸収体4の後側端縁の近傍まで形成した長手方向凹溝13と同様に、吸収体4の後側端縁の近傍まで延長した場合の前側端部の離間距離Cと後側端部の離間距離Dをとればよい。
【0047】
前記幅方向凹溝14は、隣り合う長手方向凹溝13、13の間において、これらの中央部を通る仮想線(図示せず)にほぼ直交する直線で形成するのが好ましい。
【0048】
前記長手方向凹溝13が放射状に形成され、前記幅方向凹溝14が隣り合う長手方向凹溝13、13の中央部を通る仮想線にほぼ直交して形成されることにより、前記幅方向凹溝14は、吸収体4の幅方向に対して、前記長手方向凹溝13において屈折する折れ線状に形成されるようになる。
【0049】
長手方向に隣り合う幅方向凹溝14の離間距離E(区画吸収部11の長手方向長さ)は、全体に亘ってほぼ均等に形成してもよいし、臀部の丸みに適合するように場所によって異なる寸法としてもよい。異なる寸法とする場合、長手方向前側の寸法を相対的に小さくし、長手方向後側の寸法を相対的に大きくするのが好ましい。前記離間距離Eとしては、10〜50mm、好ましくは15〜30mmとするのがよい。
【0050】
前記表面側凹溝10は、吸収体4の後側端縁及び側方端縁まで達しない吸収体4の中間部に形成するのが好ましい。つまり、表面側凹溝10の端縁と吸収体4の端縁との間に吸収体の肌側面が非肌側に窪んでいない余裕部を持たせるのが良い。これにより、装着時に吸収体4が変形した際の吸収体4の割れが防止できるようになる。
【0051】
前記長手方向凹溝13は、図4に示されるように、吸収体4の長手方向中心線CLに対して左右対称に配置されている。前記長手方向凹溝13は、吸収体4の長手方向中心線CLの左右にそれぞれ設けられ、長手方向中心線CL上には設けないのが好ましい。長手方向中心線CL上には、非肌側面に肌側に窪む臀部溝対応凹溝12が設けられるため、肌側面から非肌側に窪む凹溝を設けるのは好ましくない。
【0052】
前記表面側凹溝10の断面形状は、三角形状(図5)、台形状(図6)、U字状など、特に限定されないが、図5に示されるように、底部で両側壁が交差又は近接する略三角形状に形成するのが好ましい。これにより、装着時に表面側凹溝10を基点として吸収体4が変形したとき、図5(B)に示されるように、前記表面側凹溝10が閉じるように両側壁がほぼ隙間なく当接するため、隙間を通じた体液の流れが生じにくくなる。一方、図6に示されるように、表面側凹溝10の断面形状を台形状とした場合、装着時に表面側凹溝10を基点として吸収体4が変形したとき、同図6(B)に示されるように、両側壁の溝頂部同士が当接するが、溝底部が離間するように変形する。
【0053】
前記表面側凹溝10の溝幅は、全体に亘ってほぼ均等に形成してもよいが、図4及び図7に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向の前側より後側の方が漸次大きくなるように形成するとともに、生理用ナプキン1の幅方向の中央より外方側の方が漸次大きくなるように形成するのが好ましい。これにより、吸収体4がより一層臀部の丸みに沿って変形しやすくなる。すなわち、表面側凹溝10の溝幅が大きな部分では、隣り合う区画吸収部11、11の折れ角が大きくなり、表面側凹溝10の溝幅が小さな部分では、隣り合う区画吸収部11、11の折れ角が小さくなる。従って、長手方向の後側及び幅方向の外方側の方が丸みがきつくなる臀部の形状に沿って、吸収体4が変形しやすくなる。図7(A)は、表面側凹溝10の溝幅を相対的に小さく形成したものであり、図7(B)は、表面側凹溝10の溝幅を相対的に大きく形成したものである。ここで、前記溝幅とは、溝頂部における両側壁の離間距離をいう。
【0054】
前記表面側凹溝10の断面形状を略三角形状に形成した場合、図7に示されるように、表面側凹溝10の前側であって幅方向中央側において、溝幅を相対的に小さく形成したものでは、両側壁の成す角度αが相対的に小さく、表面側凹溝10の後側であって幅方向外方側において、溝幅を相対的に大きく形成したものでは、両側壁の成す角度αが相対的に大きくなる。前記αとしては、10〜45°、好ましくは20〜30°とするのがよく、前記αとしては、30〜90°、好ましくは40〜50°とするのがよい。
【0055】
前記表面側凹溝10の溝深さは、吸収体4の厚みに対して、20〜50%とするのが好ましい。
【0056】
前記表面側凹溝10には、図8に示されるように、溝底部に沿って肌側面から非肌側へ向けて圧搾したエンボス溝15を設けるのが好ましい。前記エンボス溝15を設けることにより、表面側凹溝10の底部が圧密化され、繊維の毛管作用によって、吸収体4に吸収された体液が表面側凹溝10に沿って拡散しやすくなるとともに、吸収された体液が吸収体4の広範囲に拡散することによる体液の漏れが防止できるようになる。
【0057】
前記エンボス溝15の溝幅は、表面側凹溝10の溝幅(溝頂部における両側壁の離間距離)より小さくするのが好ましい。前記エンボス溝15は、表面側凹溝10の全体に設けてもよいし、一部に設けてもよい。一部に設ける場合は、吸収体4の長手方向への体液の拡散を促進するため、長手方向凹溝13のみに設け、幅方向凹溝14には設けないようにしたり、吸収体4の中間部での体液の拡散を促進し、端縁部での拡散を抑制するため、吸収体4の幅方向中央側及び長手方向中央側の表面側凹溝10のみに設け、吸収体4の端縁周辺の表面側凹溝10には設けないようにしたりすることができる。
【0058】
前記表面側凹溝10を形成するには、吸収体に凹溝を形成する公知の形態を制限なく用いることが可能である。例えば、吸収体4の肌側の積繊量を低減する形態、吸収体4の肌側面から圧搾する形態などを適用できる。
【0059】
好ましい実施形態として、前記長手方向凹溝13は、吸収体4の肌側面から圧搾したエンボス部で構成し、前記幅方向凹溝14は、吸収体4の肌側の積繊量を低減した凹部で構成することができる。これによって、装着時に吸収体4が身体の形状に沿って変形した際、長手方向凹溝13がエンボス部によって形成されているため、吸収体4の強度が確保でき、吸収体4の割れが防止できるようになる。上記の「吸収体4の肌側面から圧搾したエンボス部」は、吸収体4(又は被包シート5)の肌側面からの圧搾により吸収体4のみ(又は被包シート5及び吸収体4のみ)を窪ませたエンボス部でもよいし、透液性表面シート3の肌側面からの圧搾により透液性表面シート3から吸収体4にかけて一体的に窪ませたエンボス部でもよい。
【0060】
前記区画吸収部11は、前記表面側凹溝10によって周囲が区画された四角形状の吸収体部分であり、前記表面側凹溝10より相対的に厚い厚みで形成されている。具体的には、両側がそれぞれ長手方向凹溝13によって区画され、前後がそれぞれ幅方向凹溝14によって区画されている。前記区画吸収部11は、吸収体4の長手方向及び幅方向に沿ってそれぞれ複数形成されている。前記区画吸収部11の大きさは均一ではなく、前述の通り長手方向凹溝13が放射状に形成されることにより、吸収体4の後側にいくに従って相対的に大きな面積で形成されている。
【0061】
長手方向中心線CLを横断する区画吸収部11は、他の領域に形成される区画吸収部11と比べ相対的に大きな面積で形成するのが好ましい。長手方向中心線CLを横断する区画吸収部11は、吸収体4の非肌側面に設けられた臀部溝対応凹溝12によって幅方向に折れ曲がり、装着時に臀部溝に入り込む部分であるため、あまり小さな面積で形成されていると、折れ曲がりにくいとともに、臀部溝に入り込んだ吸収体4の割れが生じやすくなる。長手方向中心線CLを横断する区画吸収部11の面積は、他の領域の面積の1.5倍〜3倍とするのがよく、2倍程度が最も好ましい。
【0062】
隣り合う区画吸収部11、11は、図5(A)、図6(A)に示されるように、装着前の生理用ナプキン1の展開状態では、表面側凹溝10を介して並列的に配置され、図5(B)、図6(B)に示されるように、装着時に前記表面側凹溝10を基点に変形した状態では、所定の折れ角を有しながらほぼ隣接して配置されるようになる。前記区画吸収部11は、装着時に折れ曲がりなどが生じず、区画吸収部11の肌側面が肌面に対向するようになる。
【0063】
前記臀部溝対応凹溝12は、吸収体4の後方部の非肌側面に形成された、肌側に窪む凹溝である。前記臀部溝対応凹溝12は、吸収体4のみを非肌側に窪ませて形成してもよいし、被包シート5及び吸収体4を一体的に非肌側に窪ませて形成してもよい。
【0064】
前記臀部溝対応凹溝12は、吸収体4の後方部の非肌側面であって、臀部溝に対応する位置に、臀部溝に沿って1条の直線状に形成されている。つまり、吸収体4の長手方向中間部の幅方向中央部から吸収体4の後端にかけて、長手方向に沿って形成するのが好ましい。これにより、前記臀部溝対応凹溝12を可撓軸として、吸収体4の幅方向中央部が長手方向に沿って肌側に突出しやすくなり、凸状に変形した部分が臀部溝に入り込んで身体とのフィット性が向上できるようになる。
【0065】
前記臀部溝対応凹溝12の前側端縁は、前記表面側凹溝10の前側端縁とほぼ一致するように配置するのが好ましい。これによって、表面側凹溝10による臀部の丸みに沿った変形と、臀部溝対応凹溝12による臀部溝に沿った変形とが、ほぼ一致した位置から生じるようになる。一方、前記臀部溝対応凹溝12の後側端縁は、吸収体4の後側端縁まで形成するのが好ましい。つまり、表面側凹溝10の後側端縁より後側に突出して形成されている。これによって、吸収体4の後方部が後側端縁にかけて、臀部溝に沿って変形しやすくなり、臀部溝に対するフィット性が確実に向上できる。
【0066】
前記臀部溝対応凹溝12は、吸収体4の非肌側面から肌側へ向けて圧搾したエンボス部によって構成するのが好ましい。これによって、臀部溝に入り込んだ部分が臀部溝の動きによって割れるのが防止できるようになる。
【0067】
前記臀部溝対応凹溝12の断面形状も上述の表面側凹溝10と同様に、三角形状(図5)、台形状(図6)、U字状など、特に限定されない。
【0068】
前記臀部溝対応凹溝12の溝幅は、前記表面側凹溝10より相対的に大きく形成されている。具体的には、2〜20mmとするのがよい。前記臀部溝対応凹溝12は、全長に亘ってほぼ均等な溝幅で形成するのが好ましい。
【0069】
前記臀部溝対応凹溝12の溝深さは、吸収体4の厚みに対して、20〜50%とするのが好ましい。
【0070】
〔他の形態例〕
(1)図1に示される生理用ナプキン1では、前記表面側凹溝10より前側部分に凹溝が形成されていないが、吸収体4の肌側面に非肌側に窪む凹溝を適宜のパターンで形成してもよい。
【0071】
(2)前記吸収体4の体液排出部Hに対応する部位を含む領域に、肌側に増厚された吸収体の中高部(図示せず)を設けてもよい。前記中高部は、吸収体4の肌側面に隣接するとともに、吸収体4の幅方向中央部に配置され、吸収体4より小さな幅寸法及び長手寸法で形成されている。
【符号の説明】
【0072】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイド不織布、10…表面側凹溝、11…区画吸収部、12…臀部溝対応凹溝、13…長手方向凹溝、14…幅方向凹溝、15…エンボス溝
【要約】
【課題】吸収性物品の後方部を身体の形状に沿って変形しやすくし、フィット性を向上する。
【解決手段】吸収体4の後方部の肌側面に、非肌側に窪む表面側凹溝10が所定のパターンで形成されるとともに、表面側凹溝10によって区画された複数の区画吸収部11が形成され、かつ吸収体4の後方部の非肌側面であって、臀部溝に対応する位置に、肌側に窪む臀部溝対応凹溝12が形成されている。前記表面側凹溝10は、生理用ナプキン1の略長手方向に沿うとともに幅方向に間隔をあけて配置された複数の長手方向凹溝13と、生理用ナプキン1の略幅方向に沿うとともに長手方向に間隔をあけて配置された複数の幅方向凹溝14とからなり、前記長手方向凹溝13は、生理用ナプキン1の前側から後側に向けて幅方向の外方側に傾斜する放射状に形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8