特許第6396550号(P6396550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6396550蓄電デバイス用棒状チタン系構造体及びその製造方法、並びに該チタン系構造体を用いた電極活物質、電極活物質層、電極、及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396550
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用棒状チタン系構造体及びその製造方法、並びに該チタン系構造体を用いた電極活物質、電極活物質層、電極、及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20180913BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20180913BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20180913BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20180913BHJP
【FI】
   H01M4/48
   H01G11/50
   H01G11/46
   H01G11/06
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-144134(P2017-144134)
(22)【出願日】2017年7月26日
(62)【分割の表示】特願2013-60022(P2013-60022)の分割
【原出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-199691(P2017-199691A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩規
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/028530(WO,A1)
【文献】 特開2011−48947(JP,A)
【文献】 特開2012−164667(JP,A)
【文献】 特開2011−207661(JP,A)
【文献】 特開2010−140863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/48
H01G 11/46
C01G 23/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともTi原子、O原子、H原子を全て含有し、O/Tiのモル比が2より大きく2.25以下であり、H/Tiのモル比が0より大きく0.5以下であり、且つ、平均幅が5〜200nm、長手方向の平均長さが1μm以上、平均アスペクト比が5以上であり、比表面積が10m/g以上である、蓄電デバイス用の酸化チタンからなる棒状構造体。
【請求項2】
前記蓄電デバイスが、リチウムイオン二次電池及び/又は電気二重層キャパシタである、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の構造体を含有する、蓄電デバイス用負極活物質層。
【請求項4】
負極集電体、及び、請求項3に記載の蓄電デバイス用負極活物質層を備える、蓄電デバイス用負極。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電デバイス用負極を備える、蓄電デバイス。
【請求項6】
リチウムイオン二次電池及び/又は電気二重層キャパシタである、請求項5に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池、キャパシタ等の蓄電デバイス用棒状チタン系構造体及びその製造方法、並びに該チタン系構造体を用いた電極活物質、電極活物質層、電極、及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池、キャパシタ等を始めとする蓄電デバイスの電極材料(負極材等)としては、炭素系材料が主に用いられている。
【0003】
しかしながら、例えば、リチウムイオン二次電池の負極材として炭素材料を使用した場合には、リチウム金属を使用する場合程ではないものの、リチウム(Li)デンドライトが発生してしまう。また、熱暴走を引き起こし、異常発熱や発火を引き起こしていた。
【0004】
これらの問題があるため、リチウムイオン二次電池の負極材に炭素材料を使用した場合には、理論放電容量が黒鉛負極で372mAh/gと高いにもかかわらず、実際の放電容量は300〜350mAh/g程度に過ぎなかった。
【0005】
この炭素材料に代わり、酸化チタンを負極材として使用することも知られている。酸化チタンの場合は、理論放電容量は335mAh/gと高いが、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンについては密に詰まった結晶構造を有するため、実際の放電容量は高々100mAh/g程度である。
【0006】
そこで、近年、Liデンドライトが発生せず、熱暴走が起こらず、サイクル特性にも優れたチタン酸リチウム(LTO:例えばLiTi12)が負極材として用いられるようになった。また、炭素材料と比較して比重が高いので、体積あたりの容量を向上させることが期待される。しかしながら、LTO(LiTi12)は、そもそも理論放電容量が175mAh/gと低く、実際の放電容量も163〜168mAh/g程度と低いという欠点があった(特許文献1、非特許文献1)。また、ラムスデライト型LTOに関しても理論放電容量で235mAh/gであった(特許文献2)。
【0007】
上記のような問題点は、リチウムイオン二次電池についてのみ説明したが、電気二重層キャパシタにおいても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−274849号
【特許文献2】特開平10−247496号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】E.Ferg et al, J.Electrochem.Soc., Vol.141, No.11, L147(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、分散等の取り扱いが容易で、蓄電デバイスに使用できる棒状チタン系構造体及びその簡易な製造方法を提供することを目的とする。また、この棒状チタン系構造体をリチウムイオン二次電池に採用する場合は高放電容量を示し、電気二重層キャパシタに採
用する場合は高静電容量を示す材料とすることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、特定濃度のアルカリ水溶液中に、Ti原子を有する物質を添加し、160〜450℃に加熱し、必要に応じてアルカリを水素に置換し、加熱することで、特定のチタン系構造体が得られ、このチタン系構造体を採用することにより、上記課題を解決することができることを見出した。その後さらに研究を重ね、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は以下の構成を包含する。
項1.少なくともTi原子、O原子、H原子を全て含有し、且つ、平均幅が5〜200nm、長手方向の平均長さが1μm以上、平均アスペクト比が5以上であり、比表面積が10m/g以上である、蓄電デバイス用棒状チタン系構造体。
項2.O/Tiのモル比が2より大きく2.25以下である、項1に記載の蓄電デバイス用棒状チタン系構造体。
項3.H/Tiのモル比が0より大きく0.5以下である、項1又は2に記載の蓄電デバイス用棒状チタン系構造体。
項4.前記蓄電デバイスが、リチウムイオン二次電池及び/又は電気二重層キャパシタである、項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス用棒状チタン系構造体。
項5.項1〜4のいずれかに記載の蓄電デバイス用棒状チタン系構造体の製造方法であって、
(1)2〜20mol/Lのアルカリ水溶液中で、少なくともチタンを含む材料を、160〜450℃で1時間以上アルカリ処理する工程
を備える、製造方法。
項6.前記少なくともチタンを含む材料が、酸化チタン及び/又はその前駆体である、項5に記載の製造方法。
項7.前記少なくともチタンを含む材料が、酸化チタンナノ粒子、水酸化チタン、チタンアルコキシド、三塩化チタン、四塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、及び硝酸チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であるである、項5又は6に記載の製造方法。項8.前記少なくともチタンを含む材料が、ゾル状又は平均粒子径が100nm以下の粒子状である、項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
項9.前記アルカリが、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含む、項5〜8のいずれかに記載の製造方法。
項10.前記アルカリが、少なくとも水酸化ナトリウムを50重量%以上含む、項5〜9のいずれかに記載の製造方法。
項11.前記アルカリが、少なくとも水酸化カリウムを30重量%以上含む、項5〜9のいずれかに記載の製造方法。
項12.さらに、
(2)工程(1)で得られた酸化チタン構造体中に存在するアルカリを水素(H)に置換する工程
を備える、項5〜11のいずれかに記載の製造方法。
項13.前記工程(2)が、工程(1)で得られたチタン系構造体をpH4以下の酸性溶液と接触させる工程である、項12に記載の製造方法。
項14.前記酸性溶液が、塩酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、硫酸、フッ化水素酸、及びギ酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶液を含む、項13に記載の製造方法。
項15.さらに、
(3)工程(2)で得られたチタン系構造体を、200〜500℃で0.5〜48時間熱処理を行う工程
を備える、項12〜14のいずれかに記載の製造方法。
項16.項1〜4のいずれかに記載の蓄電デバイス用棒状チタン系構造体、又は項5〜1
5のいずれかに記載の製造方法により得られた蓄電デバイス用棒状チタン系構造体を含有する、蓄電デバイス用負極活物質層。
項17.負極集電体、及び、項16に記載の蓄電デバイス用負極活物質層を備える、蓄電デバイス用負極。
項18.項17に記載の蓄電デバイス用負極を備える、蓄電デバイス。
項19.リチウムイオン二次電池及び/又は電気二重層キャパシタである、項18に記載の蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蓄電デバイスに適用でき、分散等の取り扱いも容易なチタン系構造体及びその簡易な製造方法を提供することができる。このチタン系構造体は、リチウムイオン二次電池に採用する場合は高放電容量を示し、電気二重層キャパシタに採用する場合は高静電容量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.チタン系構造体
本発明の蓄電デバイス用チタン系構造体は、平均幅が5〜200nm、長手方向の平均長さが1μm以上、平均アスペクト比が5以上であり、比表面積が10m/g以上の棒状の構造体である。
【0015】
本発明において、「チタン系構造体」とは、典型的には、酸化チタンに代表されるチタン化合物からなる構造体を意味する。「酸化チタン」とは、最も一般的な酸化チタンである二酸化チタン(TiO)のみを指すものではなく、三酸化二チタン(Ti);一酸化チタン(TiO);Ti、Ti等に代表される二酸化チタンから酸素欠損した組成のもの等も含む。また、末端OH基に代表されるように一部酸化チタンの合成に起因するTi−O−Ti以外の基を含んでいても良い。換言すれば、H原子を有し、且つ、O/Tiのモル比が2より大きくてもよい。このような観点から、O/Tiのモル比は2より大きく2.25以下であることが好ましく、2.05〜2.2がより好ましい。また、H/Tiのモル比は0より大きく0.5以下であることが好ましく、0.1〜0.35がより好ましい。これら、O/Ti及びH/Tiのモル比は、例えば、蛍光X線(WDX)、X線回折(XRD)、TG−DTA等により測定することができる。
【0016】
本発明において、「棒状」とは、幅(短辺)に対して長さ(長辺)が大きければよく、必ずしも直方体、円柱状のように、直線的である必要はなく、曲がっていてもよい。また、完全な平面を有している必要はなく、曲面であってもよい。断面は、円状、楕円状、四角形状等、特に制限はない。また、本発明のチタン系構造体には、多少の凹凸を有していてもよい。筒状(チューブ状)であってもよい。なお、本明細書において、チタン系構造体の断面が円状、楕円状等の場合における幅(短辺)とは、平均外径を指す。
【0017】
<形状>
本発明のチタン系構造体の平均幅は、5nm以上、好ましくは10nm以上である。平均幅が5nm未満では、チタン系構造体が互いに絡み合いやすく、凝集しすいため単離が困難である。本発明のチタン系構造体の平均幅は、200nm以下、好ましくは100nm以下である。平均幅が200nmをこえると、比表面積が小さくなり、レート特性等が悪化する。
【0018】
チタン系構造体の長手方向の平均長さは、1μm以上、好ましくは2μm以上である。平均長さが1μm未満では、塗膜の強度やレート特性が悪化することがある。また、塗布した場合の膜性を良好にするために、本発明のチタン系構造体の長手方向の平均長さは、50μm以下程度が好ましく、20μm以下程度がより好ましい。
【0019】
チタン系構造体の平均アスペクト比(幅に対する長手方向の長さの比、長手方向の長さ/幅)は、5以上、好ましくは10以上である。平均アスペクト比が5未満では、高導電性、高強度等、高アスペクト比に起因する物性を得られない。また、塗布した場合の膜性を良好にするために、酸化チタン構造体の平均アスペクト比は、5000以下程度が好ましく、1000以下程度がより好ましい。
【0020】
チタン系構造体の形状(幅、長手方向の長さ、及びアスペクト比)は、例えば、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察等により測定することができ、断面は例えば、FIB(Focused Ion Beam)により加工を行った後にTEMで観察することができる。
【0021】
本発明のチタン系構造体は、比表面積は10m/g以上、好ましくは15m/g以上である。比表面積が10m/g未満では、電解液との接触面積が小さく、電解液との素早い反応性が低下する。一方、塗膜の収縮を抑え、クラックなどを防止する観点から、500m/g以下が好ましく、300m/g以下がより好ましい。比表面積は、BET法等により測定できる。
【0022】
従来の酸化チタンナノチューブ(アルカリ水溶液と酸化チタンとの接触温度が低いもの)は、500〜900℃程度の高温領域では形状が崩壊し、粒子状となってしまうため、比表面積及びアスペクト比を維持できないが、本発明の酸化チタン構造体は、500〜900℃程度の高温領域でも、比表面積及びアスペクト比をある程度維持することができる。
【0023】
つまり、本発明のチタン系構造体は、合成時に単離しやすく、凝集しにくく、熱処理後においても、高比表面積とアスペクト比を有し、活性と溶液中への分散性を両立するものである。
【0024】
<組成>
上述したように、本発明のチタン系構造体は、O/Tiのモル比は2より大きく2.25以下であることが好ましく、2.05〜2.2がより好ましい。また、H/Tiのモル比は0より大きく0.5以下であることが好ましく、0.1〜0.35がより好ましい。
【0025】
ただし、本発明のチタン系構造体中のアルカリ金属の含有量は、充放電容量やサイクル特性を維持する点から、総重量の20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。このチタン系構造体中のアルカリ金属の含有量は、水熱合成法を採用する場合の原料由来のアルカリ金属(例えば水酸化ナトリウム中のナトリウム、水酸化カリウム中のカリウム等)を意図するものである。特に、ナトリウムは、洗浄等により容易に含有量を低減することができるが、カリウムは、洗浄するだけでは含有量を低減することが困難である。そのため、本発明のチタン系構造体は、特にカリウム含有量が低減されていることが好ましい。なお、耐熱性を必要とする場合は、カリウム等金属をある程度含有するほうが好ましいことがあるため、金属含有量は、目的等に応じて適宜設定すればよい。チタン以外のアルカリ金属の含有量は、イオンクロマトグラフ法、ICP発光分光分析法等により測定できる。
【0026】
<結晶構造>
本発明のチタン系構造体の具体的な結晶構造は、特に制限されるわけではなく、複数の結晶形を含んでいてもよい。チタン系構造体の結晶構造は、例えば、X線回折、電子線回折、ラマン分光分析等により測定することができる。
【0027】
2.チタン系構造体の製造方法
<工程(1)>
本発明のチタン系構造体の製造方法は、
(1)2〜20mol/Lのアルカリ水溶液中で、少なくともチタンを含む材料を、160〜450℃で1時間以上アルカリ処理する工程
を備える。
【0028】
工程(1)では、これに限定されるわけではないが、少なくともチタンを含む材料と、2〜20mol/Lのアルカリ水溶液を、160〜450℃に加熱して1時間以上放置することが好ましい。
【0029】
具体的には、少なくともチタンを含む材料の分散液(例えば水分散液等)(特に酸化チタン又は酸化チタン前駆体の水分散液)に、アルカリ金属水酸化物を、上記の濃度になるように投入し、160〜450℃に加熱して1時間以上放置することが好ましい。また、具体的な方法はこれに限られることはなく、2〜20mol/Lアルカリ水溶液中に、少なくともチタンを含む材料(特に酸化チタン又は酸化チタン前駆体)又はその分散液(特に酸化チタン又は酸化チタン前駆体の水分散液)を投入し、160〜450℃に加熱して1時間以上放置してもよい。
【0030】
アルカリ水溶液は、アルカリ、特にアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を溶解させた水溶液が好ましい。なかでも、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含むことが好ましい。
【0031】
アルカリ水溶液としては、原料のチタンを含む材料(特に酸化チタン又は酸化チタン前駆体)の表面を溶解し、反応を促進する点から、アルカリ金属の水酸化物の水溶液が好ましい。なお、アルカリとして、2種類以上のアルカリを含む水溶液としてもよく、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を水酸化ナトリウムと併用することも可能である。また、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等を水酸化カリウムと併用することも可能である。特に、アルカリとしては、高アスペクト比の構造体を合成するためには、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムが好ましい。なお、水酸化ナトリウムを使用して高温でアルカリ処理した場合には平均幅が大きい構造体が生成する傾向にあり、水酸化カリウムを使用した場合には平均幅が小さい構造体が生成する傾向にある(水酸化ナトリウムを使用して低温でアルカリ処理するとナノチューブが生成する傾向にある)。
【0032】
アルカリ水溶液の濃度は、原料のチタンを含む材料の表面を溶解し、かつ反応液の流動性を保つことにより、アスペクト比の大きいチタン系構造体構造体を、長時間かけることなく作製できる点から、2〜20mol/L、好ましくは5〜15mol/L程度である。
【0033】
アルカリ水溶液中に水酸化カリウムを含む場合、アルカリ成分として水酸化カリウムのみを含む水溶液であってもよいが、2種類以上のアルカリ成分(水酸化カリウム及び他のアルカリ成分)を含む水溶液であってもよい。ただし、幅が大きいチタン系構造体を得る場合には、全アルカリ成分に対する水酸化ナトリウムの濃度は、30〜100mol%が好ましく、50〜100mol%がより好ましく、60〜100mol%がさらに好ましい。なお、アルカリ成分として水酸化カリウム以外のアルカリ成分を含む場合は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等を水酸化カリウムと併用させればよい。また、全アルカリ成分濃度は、2〜20mol/Lであるが、5〜15mol/Lが好ましい。
【0034】
使用するチタンを含む材料としては、特に制限はないが、酸化チタン又は酸化チタン前駆体が好ましい。具体的には、公知又は市販の酸化チタン微粒子をそのまま使用してもよ
いし、水酸化チタンを使用してもよい。また、水との接触によって水酸化チタンを生じるハロゲン化チタン、チタンアルコキシド等を用いてもよい。これらのチタンを含む材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0035】
酸化チタンを使用する場合は、その形態は、特に制限はない。公知又は市販の酸化チタン微粒子をそのまま使用してもよいし、粒径が大きい場合は遊星ボールミル、ペイントシェーカー等を用いて乾式又は湿式で粉砕して用いてもよい。また、ゾル状のものを採用してもよい。
【0036】
チタンを含む材料として酸化チタンを用いる場合は、アナターゼ型酸化チタンを含むことが好ましい。
【0037】
酸化チタンの平均粒子径は、表面がアルカリ水溶液に速やかに溶解し、より低温、より短時間で本発明のチタン系構造体を製造できる点から、50nm以下が好ましく、35nm以下がより好ましい。なお、該酸化チタンの平均粒子径の下限値は、特に制限はないが、通常1nm程度である。酸化チタンの平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察等により測定することができる。
【0038】
アルカリ水溶液中に投入する、チタンを含む材料の量は、特に制限されないが、反応液の流動性と生産性とのバランスを取る観点から、0.01〜1mol/L程度が好ましく、0.05〜0.5mol/L程度がより好ましい。
【0039】
工程(1)の処理温度は、160〜450℃である。つまり、水の臨界点である374℃以上で反応させてもよい。しかし、製造装置及び使用エネルギーの観点から、好ましくは、180〜370℃程度、より好ましくは200〜300℃程度である。接触温度が低すぎると本発明のチタン系構造体を製造することはできず、細い構造体を多く含むため、(1)生成物が凝集して塊状になりやすく、高アスペクト比かつ高分散性のチタン系構造体が得られず、溶媒への分散性に劣る
(2)ろ過により単離することが困難である
(3)構造中にカリウム等の金属成分が残りやすく、除去するのが困難である
等の問題点がある。
【0040】
つまり、低温(160℃以下)で処理した場合、高アスペクト比、高比表面積でありながら、分散性が高く、単離が容易で、金属分の除去も容易であるチタン系構造体は得られない。
【0041】
前記のアルカリ処理の時間は、特に制限はなく、0.5〜72時間程度が好ましい。
【0042】
本発明では、使用するチタンを含む材料の平均粒子径、処理温度及び処理時間の好ましい範囲には相関関係があり、平均粒子径が大きめの酸化チタンを使用する場合には、処理温度を高めとすることが好ましい。例えば、平均粒子径7nmの酸化チタンを用いる場合は、処理時間を6時間以上、処理温度を160℃以上とすることが好ましく、平均粒子径25nmの酸化チタンを用いる場合には、処理時間を10時間以上、処理温度を185℃以上とすることが好ましい。
【0043】
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られたチタン系構造体中に存在するナトリウム(Na)及び/又はカリウム(K)を水素(H)に置換する。
【0044】
その方法としては、工程(1)で得られたチタン系構造体を、pH4以下の酸性溶液と
接触させることが好ましい。具体的には、工程(1)で得られたチタン系構造体を、酸性溶液中に浸漬させることが好ましい。具体的には、チタン系構造体を酸性溶液中に直接投入してもよいし、チタン系構造体ナノワイヤの分散液と酸性溶液とを混合してもよい。酸性溶液中に均一に分散させる観点から、あらかじめチタン系構造体の分散液を作製し、これと酸性溶液とを混合することが好ましい。なお、浸漬の際には、分散を促進させるために、撹拌、超音波等による分散操作を行えば、時間を短縮することができる。
【0045】
酸性溶液のpHは、4以下が好ましいが、効率よくアルカリ金属(特にカリウム等)を除去でき、アスペクト比の大きいチタン系構造体の形状を維持する点から、−1〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。
【0046】
酸性溶液としては、アルカリ金属イオンとプロトンを交換でき、後に容易に除去することができる分子量が小さく、揮発又は分解しやすいプロトン酸の水溶液が好ましい。具体的には、塩酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、硫酸、フッ化水素酸、ギ酸等の一般的な無機酸又は有機酸の水溶液が挙げられ、塩酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等がより好ましい。これらの酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0047】
酸性溶液中に添加するチタン系構造体の量は、特に制限されないが、撹拌を十分に行い、かつ生産効率を高める点から、0.1〜20重量%程度が好ましく、1〜10重量%程度がより好ましい。
【0048】
工程(1)において得られたチタン系構造体は、ナトリウム、カリウム等の金属が若干残存していることがあり、特に工程(1)においてアルカリ水溶液中に水酸化カリウムを含んでいる場合には、カリウムがチタン系構造体から脱離しにくいが、この工程により、余剰のアルカリ成分、及びチタン系構造体中に含まれるチタン以外の金属を取り除くことができる。
【0049】
ただし、酸性溶液を用いるため、この工程の後、チタン系構造体を水洗して酸と遊離した金属塩を除去することが好ましい。
【0050】
酸性溶液と接触させる時間は、大気圧条件下の場合は1〜168時間程度が好ましく、充分にアルカリ金属を除去する必要がある場合は8時間以上がより好ましい。
【0051】
<工程(3)>
本発明のチタン系構造体の製造方法においては、上記の工程(2)の後、さらに、
(3)工程(2)で得られたチタン系構造体を、200〜500℃で0.5〜48時間熱処理を行う工程
を備えることが好ましい。
【0052】
熱処理温度は、チタン系構造体に残存するTi−OH基の脱水反応を行わせることができる点から200〜500℃が好ましく、250〜400℃がより好ましい。
【0053】
熱処理は通常の気相又は真空中における焼成を行ってもよいが、液相中で行ってもよい。
【0054】
なお、気相で熱処理する場合の雰囲気としては、特に制限はなく、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等が好ましい。
【0055】
一方、液相中で行う場合は、低い処理温度で結晶性を上げることができるため、150〜400℃が好ましく、200〜300℃がより好ましい。
【0056】
このようにして得られるチタン系構造体は、上記の「1.酸化チタン構造体」にて説明したような特性を有するものである。
【0057】
3.負極活物質層
本発明においては、負極活物質層は、上記の本発明のチタン系構造体を活物質として含有する。
【0058】
また、本発明において、負極活物質層には、他の負極活物質として、従来からリチウムイオン二次電池、キャパシタ等に用いられている負極活物質を併用してもよい。
【0059】
併用可能な負極活物質としては、特に制限されるものではなく、例えば、グラファイト、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等の炭素質材料、Si,SiO等のケイ素系材料、Al、Si、Pb、Sn、Zn、Cd等とリチウムとの合金系化合物、酸化タングステン、酸化モリブデン、硫化鉄、硫化チタン、チタン酸リチウム、酸化鉄、等を用いることができる。特に、Li4+xTi12(0≦x≦3)で表され、スピネル型構造を有するチタン酸リチウムが好ましい。これらの負極活物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0060】
本発明の負極活物質層における、本発明のチタン系構造体と、他の負極活物質との比率は特に制限されないが、安全性と充放電容量を両立する点から、全活物質に対して本発明のチタン系構造体を50〜100重量%が好ましく、70〜100重量%がより好ましい。
【0061】
負極活物質層には、上記の活物質以外にも、周知の導電材、結着剤等を含ませることもできる。導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び有機物を熱処理して得られるアモルファスカーボン等が挙げられる。また、結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂類の他、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0062】
負極活物質層中の、負極活物質、導電材及び結着剤の混合比率は特に制限されないが、容量と導電性を両立する点から、負極活物質は30〜99重量%が好ましく、40〜95重量%がより好ましい。また、導電材は1〜50重量%が好ましく、2〜40重量%がより好ましい。さらに、結着剤は1〜30重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましい。
【0063】
なお、本発明のチタン系構造体は、上述のとおり、棒状の材料である。また、他の活物質、導電材、結着剤等は粒子状又は粉末状の材料である。したがって、これらを混合して負極活物質層ペーストとする場合には、アセトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を混合してペースト状とすることが好ましい。
【0064】
また、本発明の負極活物質層の厚みは、十分な容量と電極の強度を確保する点から、5〜200μmが好ましく、10〜150μmがより好ましい。
【0065】
上記のような本発明の負極活物質層は、上記のとおり形成した負極活物質層ペーストを成形後乾燥させることにより形成することができる。
【0066】
4.負極
本発明の蓄電デバイス用負極は、上記の本発明の負極活物質層を備える。より具体的には、負極集電体上に、本発明の負極活物質層を備えることが好ましい。
【0067】
負極集電体の材質としては、特に制限されないが、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン等を用いることができる。さらに、これらの材質からなる負極集電体表面を、接着性、導電性、耐還元性の目的で、カーボン、ニッケル、チタン、銀等で処理してもよい。
【0068】
負極集電体の好ましい厚みは任意に設定可能であるが、例えば1〜500μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0069】
負極集電体上に負極活物質層を形成する方法は特に制限されない。例えば、負極集電体上に負極活物質層ペーストを塗布及び乾燥させてもよいし、負極活物質層ペーストを成形後乾燥し、負極集電体と接着させてもよい。塗布、乾燥、接着の方法は周知のものを採用すればよい。なお、乾燥温度は、50〜300℃程度が好ましく、70〜200℃程度がより好ましい。
【0070】
5.蓄電デバイス
本発明の蓄電デバイスは、本発明の蓄電デバイス用負極を備える。このような蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。
【0071】
また、本発明の蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタの場合、さらに、正極と負極とをセパレータを介して設置し、正極と負極との間に非水電解液を満たすことが好ましい。具体的には、正極と負極とを、非水電解液を含浸させたセパレータを介して設置することが好ましい。
【0072】
正極としては、周知の正極を使用することができる。例えば、正極集電体の上に、正極活物質と、必要に応じて導電材、結着剤等を含む正極活物質層を備える負極を使用することができる。
【0073】
正極集電体としては、上記説明した負極集電体と同じものを使用することができる。
【0074】
正極活物質としては、特に制限されるものではなく、種々の酸化物、硫化物等が挙げられる。例えば、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn、LiMnO等)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO等)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLiCoO等)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCo等)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNiCoMn1−x−y等)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LiMn2−yNi等)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLiFePO、LiFe1−yMnPO、LiCoPO等)、硫酸鉄(Fe(SO)、バナジウム酸化物(例えばV等)等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、硫黄(S)、フッ化カーボン等も挙げられる。特に、LiMnNiCo(x+y+z=1;0≦x≦0.5;0≦y≦1;0≦z≦1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。これら
の正極活物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0075】
導電材及び結着剤としては、上記説明したものを使用することができる。
【0076】
非水電解液としては、有機溶媒と電解質塩とを含む有機電解液が好ましい。
【0077】
有機電解液の有機溶媒としては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の低粘度の鎖状炭酸エステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の高誘電率の環状炭酸エステル;γ−ブチロラクトン;1,2−ジメトキシエタン;テトラヒドロフラン;2−メチルテトラヒドロフラン;1−3ジオキソラン;メチルアセテート;メチルプロピオネート;ジメチルホルムアミド;スルホラン;トリグライム;テトラグライム;これらの混合溶媒等を挙げることができる。また、耐熱性を求める場合は、イミダゾリウム塩など各種溶融塩(イオン液体)を用いてもよい。なお、これらのなかでは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が好ましい。
【0078】
また、電解質塩としては、特に制限はなく、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiI、LiAlCl、これらの混合物等が挙げられる。好ましくは、LiBF及び/又はLiPFのリチウム塩がよい。
【0079】
セパレータとしては、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂からなる微多孔膜が用いられ、材料、重量平均分子量や空孔率の異なる複数の微多孔膜が積層してなるもの、これらの微多孔膜に各種の可塑剤、酸化防止剤、難燃剤等の添加剤を適量含有しているもの等であってもよい。また、デンドライトが発生し難いことから、通常の樹脂メッシュやセルロース膜等も用いることもできる。
【0080】
また、蓄電デバイスの形状としては巻回型の長円形状、円形状等を用いることができる。その他の電池の構成要素として、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品についても従来用いられてきたものをそのまま用いることができる。
【実施例】
【0081】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0082】
実施例1
チタンテトライソプロポキシド28.4g(0.1mol)を水200gとNaOH80gを混合した溶液(NaOH濃度10mol/L)に投入し、チタン製マイクロリアクターの中に封入し、250℃で24h保持した。
【0083】
得られた物質を2000gの水に加えて濾過した。さらに1000gの水に加えて分散した後、65wt%HNO水溶液を加えてpH1に調製し、24時間撹拌した。その後、ろ過と1000gの水への分散を繰り返し、最終的に8.4gの白色物質を得た。
【0084】
この物質を真空中200℃で12時間、空気中290℃で5時間加熱することにより、8.2gの白色物質を得た。
【0085】
SEMにより観察したところ、平均幅80nm、長手方向の平均長さ3μmの大きいアスペクト比(37.5)の棒状の物質が観察された。また、BET比表面積を測定したと
ころ、29m/gであった。
【0086】
実施例2
チタン源として25nmの酸化チタンナノ粒子を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。
【0087】
SEMにより観察したところ、平均幅75nm、長手方向の平均長さ3μmの大きいアスペクト比(40)の棒状の物質が観察された。また、BET比表面積を測定したところ、25m/gであった。
【0088】
実施例3
チタンテトライソプロポキシド28.4gに酢酸12.0gと水と65wt%硝酸1mlを加え、80℃で3時間加熱し、平均粒径4nmの酸化チタンが8g含まれているゾル200gを合成し、NaOH80gを混合する以外は、実施例1と同様に実験を行った。
【0089】
SEMにより観察したところ、平均幅70nm、長手方向の平均長さ2.8μmの大きいアスペクト比(40)の棒状の物質が観察された。また、BET比表面積を測定したところ、33m/gであった。
【0090】
実施例4
チタン源として四塩化チタン19.0gを用いる以外は実施例1と同様に実験を行った。
【0091】
SEMにより観察したところ、平均幅65nm、長手方向の平均長さ2μmの大きいアスペクト比(31)の棒状の物質が観察された。また、BET比表面積を測定したところ、38m/gであった。
【0092】
実施例5
チタンテトライソプロポキシド28.4gに酢酸12.0gと水と65wt%硝酸1mlを加え、80℃で3時間加熱し、平均粒径4nmの酸化チタンが8g含まれているゾル200gを合成し、KOH112gを混合し、ハステロイ製マイクロリアクターの中に封入し、250℃で18時間保持した。
【0093】
得られた物質を2000gの水に加えて濾過した。さらに2000gの水に加えて分散した後、65wt%HNO水溶液を加えてpH1に調製し、80℃で24時間撹拌した。その後、25%NH水溶液を加えてpH6に調製し、ろ過、1000gの水への分散を繰り返し、8.6gの白色物質を得た。
【0094】
この物質を真空中200℃で12時間、空気中300℃で5時間加熱することにより8.3gの白色物質を得た。
【0095】
TEMにより観察したところ、平均幅12nm平均長さ5μmの繊維状の物質が観察された。またBET比表面積を測定したところ、190m/gであった。
【0096】
比較例1
市販のチタン酸ナトリウム(NaTi)10gに300gの水を加え、35%HCl水溶液を加えて、pH1とした。この分散液を80℃で5時間、常温で3日間撹拌し、pH7になるまで水洗とろ過を繰り返した。この材料を200℃で12時間真空乾燥した後、空気中300℃で5時間加熱し、10.1gの白色物質を得た。
【0097】
BET比表面積を測定したところ、約12m/gであった。
【0098】
実験例1
実施例1で合成した構造体4.5g、アセチレンブラック4.0g、PTFEパウダー1.5gにアセトンを加えて混練し、2軸ロールで成形し、真空中170℃で乾燥を行った。得られたシートをアルミ箔に接着し、電極を作製した。対極にLi金属、電解液1mol/LのLiPF(EC/PC=3/7)を用いて、0.2Cで充放電試験を行った。
【0099】
その結果、
サイクル1 :充電容量322mAh/g、放電容量258mAh/g
サイクル2 :充電容量268mAh/g、容量放電254mAh/g
サイクル3〜10:サイクル2と同様の性能
であり、LTOの理論容量をはるかに上回る放電容量が得られた。
【0100】
実験例2
実施例5で合成した構造体5.5g、アセチレンブラック3.0g、PTFEパウダー1.5gにアセトンを加えて混練し、2軸ロールで成形し、真空中170℃で乾燥を行った。得られたシートをアルミ箔に接着し、電極を作製した。対極にLi金属、電解液1mol/LのLiPF(EC/PC=3/7)を用いて、0.2Cで充放電試験を行った。
【0101】
その結果、
サイクル1 :充電容量360mAh/g、放電容量230mAh/g
サイクル2 :充電容量260mAh/g、放電容量220mAh/g
サイクル3〜10:サイクル2と同等の性能
であり、LTOの理論容量をはるかに上回る放電容量が得られた。
【0102】
実験例3
比較例1で合成した構造体5.5g、アセチレンブラック3.0g、PTFEパウダー1.5gにアセトンを加えて混練し、2軸ロールで成形し、真空中170℃で乾燥を行った。得られたシートをアルミ箔に接着し、電極を作製した。対極にLi金属、電解液1mol/LのLiPF(EC/PC=3/7)を用いて、0.2Cで充放電試験を行った。
【0103】
その結果、
サイクル1 :充電容量249mAh/g、放電容量195mAh/g
サイクル3 :充電容量201mAh/g、放電容量191mAh/g
サイクル10 :充電容量208mAh/g、放電容量186mAh/g
であり、充放電容量が実験例1,2と比較して小さいうえに劣化が見られた。