【実施例】
【0034】
以下では、図面を参照して聴診器の実施例について詳細に説明する。
【0035】
<全体構成>
先ず、
図1及び
図2を参照して、本実施例に係る聴診器が有するチェストピースの全体構成について説明する。ここに
図1は、実施例に係る聴診器のチェストピースの全体構成を示す分解斜視図である。また
図2は、実施例に係る聴診器のチェストピースの構成を示す断面図である。
【0036】
図1及び
図2において、本実施例に係るチェストピース100は、聴診音センサ110と、センサダンパ120と、接触検出センサ130と、リング140と、リングカバー150と、センサキャップ160とを備えて構成されている。
【0037】
聴診音センサ110は、聴診対象から聴診音を取得可能なセンサである。聴診音センサ110は、例えば振動センサとして構成されており、取得した聴診音を聴診音信号として出力可能に構成されている。聴診音センサ110は、センサダンパ120を介して、チェストピース上の概ね中心位置に配置されている。聴診音センサ110は、「聴診音取得部」の一具体例である。
【0038】
接触検出センサ130は、聴診対象との接触を検出可能なセンサである。接触検出センサ130は、例えば圧力センサとして構成されており、検出された圧力に応じて接触の有無を示す信号を出力可能に構成されている。接触検出センサ130は、聴診音センサ110の周囲に複数配置されている。なお、接触検出センサ130の具体的なレイアウトについては後に詳述する。接触検出センサ130は、「接触検出部」の一具体例である。
【0039】
上述した聴診音センサ110及び接触検出センサ130は、筐体であるリング140に支持されている。また、接触検出センサ130が配置されている領域を覆うように、リングカバー150が取り付けられている。更に、リングカバー150の上から、聴診音センサ110及び接触検出センサ130が配置される領域を覆うセンサキャップ160が取り付けられている。センサキャップ160は、聴診対象に直接触れるものであるため、例えば衛生上の観点から容易に取り替え可能であることが好ましい。
【0040】
次に、
図3及び
図4を参照して、変形例に係る聴診器が有するチェストピースの全体構成について説明する。ここに
図3は、変形例に係る聴診器のチェストピースの全体構成を示す分解斜視図である。また
図4は、変形例に係る聴診器のチェストピースの構成を示す断面図である。
【0041】
図3及び
図4において、変形例に係るチェストピース1100は、聴診音センサ1110と、センサダンパ1120と、接触検出センサ1130と、ボディー1140と、リング1150と、センサキャップ1160とを備えて構成されている。
【0042】
変形例に係るチェストピース1110は、
図1及び
図2で説明した本実施例に係るチェストピース100と比較した場合、リングカバー150を備えていない点が異なる。また、変形例に係るチェストピース1110では、リング140がボディー1140及び1150に置き換えられている。
【0043】
変形例に係るチェストピース1110では更に、接触検出センサ1130の位置が変更されている。具体的には、本実施例に係るチェストピース100のように、リングカバー150が接触検出センサ130を直接押す(即ち、圧力を加える)のではなく、聴診音センサ1110に加えられた圧力がセンサダンパ1120を介して接触検出センサ1130に加えられる構成となっている。
【0044】
変形例に係るチェストピース1110によれば、本実施例に係るチェストピース100と比較して、組立性が向上する。また、接触検出センサ1130が容易に触れられない箇所に配置されているため、例えばアルコール綿等を利用した清掃や静電気対策に有利である。加えて、リングカバー150の機能をセンサダンパ1120が担うため、部品点数が減っている。更に、聴診音センサ1110を保持しているセンサダンパ1120が接触検出センサ1130に圧力を加えるため、聴診音センサ1110の接触状態を、より正確に接触検出センサ1130に伝えることができる。
【0045】
なお、以降の説明は、本実施例に係るチェストピース100について行うが、変形例に係るチェストピース1110についても同様である。即ち、変形例に係る接触検出センサ1130を、以降の本実施例に係る接触検出センサ130のように配置すれば、同様の効果を得ることができる。
【0046】
<接触検出センサの構成>
以下では、
図5から
図13を参照しながら、接触検出センサ130の構成(レイアウト)及び接触判定ロジックについて、複数の実施例を挙げて説明する。
【0047】
<第1実施例>
第1実施例に係る接触検出センサの配置例について、
図5を参照して説明する。ここに
図5は、第1実施例に係る接触検出センサの構成を示す平面図である。
【0048】
図5において、第1実施例に係る接触検出センサ130は、聴診音センサ110の周囲に4つ配置されている。具体的には、図中の聴診音センサ110から見て、上方向に接触検出センサ130A、右方向に接触検出センサ130B、下方向に接触検出センサ130C、左方向に接触検出センサ130Dがそれぞれ配置されている。接触検出センサ130A、130B、130C及び130Dの各々は、接触判定部210に接触検出信号を出力可能に構成されている。
【0049】
ここで特に、接触検出センサ130Aと130Cとは対をなすセンサとして構成されている。同様に、接触検出センサ130Bと130Dとは対をなすセンサとして構成されている。即ち、これら1組のセンサは、「接触検出対」の一具体例である。そして、接触検出センサ130A、130B、130C及び130Dの各々は、接触検出センサ130A及び130Cを結ぶ仮想的な線と、接触検出センサ130B及び130Dを結ぶ仮想的な線とが、聴診音センサ110の中心部分において直交するように配置されている。このように配置すれば、接触検出センサ130A、130B、130C及び130Dの各々から出力される接触検出信号を利用して、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられているか否かを好適に判定できる。
【0050】
以下では、第1実施例に係る接触検出センサ130を利用した判定ロジックについて、
図6を参照して具体的に説明する。ここに
図6は、第1実施例に係る接触検出センサによる判定ロジックを示す表である。
【0051】
図6に示すように、第1実施例では、4つの接触検出センサ130A、130B、130C及び130Dのうち、対をなす2つのセンサの両方で接触が検出されている場合に、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。具体的には、対をなす接触検出センサ130A及び130Cがいずれも接触を検出している状態(即ち、ON状態)であれば、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。同様に、対をなす接触検出センサ130B及び130Dがいずれも接触を検出している状態であれば、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。なお、少なくとも1つの対において接触判定されるような場合には、その他のセンサの検出状態は問わずに、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。
【0052】
一方で、対をなす2つのセンサの両方で接触が検出されていない場合には、その他のセンサで接触が検出されていても、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられているとは判定しない。具体的には、例えば接触検出センサ130A及び130Bがいずれも接触を検出している状態であっても、接触検出センサ130C及び130Dがいずれも接触を検出していない状態であれば、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられているとは判定しない。
【0053】
上述した判定ロジックを利用すれば、単にチェストピース100が聴診対象に接触しているか否かではなく、聴診音を適切に取得することが可能な正しい状態で(例えば、傾きのない状態で)聴診対象に接触しているか否かを判定できる。従って、極めて好適に聴診対象の聴診音を取得することができる。
【0054】
<第2実施例>
次に、第2実施例に係る接触検出センサの配置例について、
図7を参照して説明する。ここに
図7は、第2実施例に係る接触検出センサの構成を示す平面図である。
【0055】
図7において、第2実施例に係る接触検出センサ130は、聴診音センサ110の周囲に3つ配置されている。具体的には、図中の聴診音センサ110から見て、上方向に接触検出センサ130A、右下方向に接触検出センサ130B、左下方向に接触検出センサ130Cがそれぞれ配置されている。接触検出センサ130A、130B及び130Cの各々は、接触判定部210に接触検出信号を出力可能に構成されている。
【0056】
ここで特に、接触検出センサ130A、130B及び130Cの各々は、接触検出センサ130A及び130Bを結ぶ仮想的な線と、接触検出センサ130B及び130Cを結ぶ仮想的な線と、接触検出センサ130C及び130Aを結ぶ仮想的な線とによって形成される三角形が、聴診音センサ110の中心部分と重なるように(即ち、三角形の内部に聴診音センサ110の中心部分が含まれるように)配置されている。このように配置すれば、接触検出センサ130A、130B及び130Cの各々から出力される接触検出信号を利用して、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられているか否かを好適に判定できる。
【0057】
以下では、第2実施例に係る接触検出センサ130を利用した判定ロジックについて、
図8を参照して具体的に説明する。ここに
図8は、第2実施例に係る接触検出センサによる判定ロジックを示す表である。
【0058】
図8に示すように、第2実施例では、接触を検出している(即ち、ON状態である)接触検出センサ130が形成する多角形が、聴診音センサ110の中心部分を含んでいる場合に、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。なお、第2実施例では、接触を検出している接触検出センサ130が多角形を形成するためには、接触検出センサ130A、130B及び130Cの全てにおいて接触が検出されることが要求される。このため、接触検出センサ130A、130B及び130Cの全てにおいて接触が検出される場合にのみ、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定される。
【0059】
一方で、接触検出センサ130A、130B及び130Cのうち、少なくとも1つで接触が検出されない場合には、接触を検出している接触検出センサ130が多角形を形成しない。よって、接触検出センサ130A、130B及び130Cのうち、少なくとも1つで接触が検出されない場合には、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられているとは判定しない。
【0060】
上述した判定ロジックを利用すれば、単にチェストピース100が聴診対象に接触しているか否かではなく、聴診音を適切に取得することが可能な正しい状態で聴診対象に接触しているか否かを判定できる。従って、極めて好適に聴診対象の聴診音を取得することができる。
【0061】
<第3実施例>
次に、第2実施例に係る接触検出センサの配置例について、
図9を参照して説明する。ここに
図9は、第3実施例に係る接触検出センサの構成を示す平面図である。
【0062】
図9において、第3実施例に係る接触検出センサ130は、聴診音センサ110の周囲に5つ配置されている。具体的には、図中の聴診音センサ110から見て、上方向に接触検出センサ130A、右方向に接触検出センサ130B、右下方向に接触検出センサ130C、左下方向に接触検出センサ130D、左方向に接触検出センサ130Eがそれぞれ配置されている。接触検出センサ130A、130B、130C、130D及び130Eの各々は、接触判定部210に接触検出信号を出力可能に構成されている。
【0063】
ここで特に、接触検出センサ130A、130B、130C、130D及び130Eの各々は、互いを結ぶ仮想的な線を一辺として形成され得る複数の多角形(即ち、三角形、四角形又は五角形)のうち、少なくとも一部の多角形が、聴診音センサ110の中心部分と重なるように(即ち、多角形の内部に聴診音センサ110の中心部分が含まれるように)配置されている。このように配置すれば、接触検出センサ130A、130B、130C、130D及び130Eの各々から出力される接触検出信号を利用して、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられているか否かを好適に判定できる。
【0064】
以下では、第3実施例に係る接触検出センサ130を利用した判定ロジックについて、
図10を参照して具体的に説明する。ここに
図10は、第3実施例に係る接触検出センサによる判定ロジックを示す表である。
【0065】
図10に示すように、第3実施例では、接触を検出している(即ち、ON状態である)接触検出センサ130が形成する多角形が、聴診音センサ110の中心部分を含んでいる場合に、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。具体的には、接触検出センサ130A、130C及び130Dにおいて接触が検出されている場合には、三角形ACDに聴診音センサ110の中心部分が含まれるため、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定される。同様に、接触検出センサ130B、130D及び130Eにおいて接触が検出されている場合、接触検出センサ130A、130C及び130Eにおいて接触が検出されている場合、接触検出センサ130A、130B及び130Dにおいて接触が検出されている場合、接触検出センサ130B、130C及び130Eにおいて接触が検出されている場合にも、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定される。
【0066】
一方で、例えば接触検出センサ130A、130B及び130Cにおいて接触が検出されている場合、三角形ABCには聴診音センサ110の中心部分が含まれないため、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定されない。即ち、3つ以上の接触検出センサ130において接触が検出されている場合であっても、形成される多角形に聴診音センサ110の中心部分が含まれない場合は、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定されない。なお、接触が検出されている接触検出センサ130が2つ以下である場合にも、多角形が形成されないため、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定されない。
【0067】
上述した判定ロジックを利用すれば、単にチェストピース100が聴診対象に接触しているか否かではなく、聴診音を適切に取得することが可能な正しい状態で聴診対象に接触しているか否かを判定できる。従って、極めて好適に聴診対象の聴診音を取得することができる。
【0068】
<第4実施例>
次に、第4実施例に係る接触検出センサの配置例について、
図11を参照して説明する。ここに
図11は、第4実施例に係る接触検出センサの構成を示す平面図である。
【0069】
図11において、第4実施例に係る接触検出センサ130は、聴診音センサ110の周囲に6つ配置されている。具体的には、図中の聴診音センサ110から見て、上方向に接触検出センサ130A、右上方向に接触検出センサ130B、右下方向に接触検出センサ130C、下方向に接触検出センサ130D、左下方向に接触検出センサ130E、左上方向に接触検出センサ130Fがそれぞれ配置されている。接触検出センサ130A、130B、130C、130D、130E及び130Fの各々は、接触判定部210に接触検出信号を出力可能に構成されている。
【0070】
ここで特に、接触検出センサ130A及び130Dは対をなすセンサとして構成されている。同様に、接触検出センサ130B及び130E、接触検出センサ130C及び130Fも対をなすセンサとして構成されている。即ち、これら1組のセンサは、「接触検出対」の一具体例である。そして、接触検出センサ130A、130B、130C、130D、130E及び130Fの各々は、接触検出センサ130A及び130Dを結ぶ仮想的な線と、接触検出センサ130B及び130Eを結ぶ仮想的な線と、接触検出センサ130C及び130Fを結ぶ仮想的な線とが、聴診音センサ110の中心部分において交わるように配置されている。
【0071】
本実施例では更に、接触検出センサ130A、130B、130C、130D、130E及び130Fの各々は、互いを結ぶ仮想的な線を一辺として形成され得る複数の多角形(即ち、三角形、四角形、五角形又は六角形)のうち、少なくとも一部の多角形が、聴診音センサ110の中心部分と重なるように(即ち、多角形の内部に聴診音センサ110の中心部分が含まれるように)配置されている。
【0072】
このように配置すれば、接触検出センサ130A、130B、130C、130D、130E及び130Fの各々から出力される接触検出信号を利用して、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられているか否かを好適に判定できる。また本実施例では特に、2つの判定ロジックを選択的に利用して接触を判定することが可能である。
【0073】
以下では、第4実施例に係る接触検出センサ130を利用した判定ロジックについて、
図12及び
図13を参照して具体的に説明する。ここに
図12は、第4実施例に係る接触検出センサによる判定ロジックを示す表(その1)である。また
図13は、第4実施例に係る接触検出センサによる判定ロジックを示す表(その2)である。
【0074】
図12に示すように、第4実施例の1つ目の判定ロジックでは、6つの接触検出センサ130A、130B、130C、130D、130E及び130Fのうち、対をなす2つのセンサの両方で接触が検出されている場合に、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。具体的には、対をなす接触検出センサ130A及び130Dがいずれも接触を検出している状態(即ち、ON状態)であれば、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。同様に、対をなす接触検出センサ130B及び130Eがいずれも接触を検出している状態、或いは対をなす接触検出センサ130C及び130Fがいずれも接触を検出している状態であれば、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。なお、少なくとも1つの対において接触判定されるような場合には、その他のセンサの検出状態は問わずに、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。
【0075】
一方で、対をなす2つのセンサの両方で接触が検出されていない場合には、その他のセンサで接触が検出されていても、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられているとは判定しない。具体的には、例えば接触検出センサ130A、130B及び130Cがいずれも接触を検出している状態であっても、接触検出センサ130D、130E及び130Fがいずれも接触を検出していない状態であれば、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられているとは判定しない。
【0076】
図13に示すように、第4実施例の2つ目の判定ロジックでは、接触を検出している(即ち、ON状態である)接触検出センサ130が形成する多角形が、聴診音センサ110の中心部分を含んでいる場合に、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定する。具体的には、接触検出センサ130A、130C及び130Eにおいて接触が検出されている場合には、三角形ACEに聴診音センサ110の中心部分が含まれるため、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定される。同様に、接触検出センサ130B、130D及び130Fにおいて接触が検出されている場合、接触検出センサ130A、130B、130D及び130Eにおいて接触が検出されている場合、接触検出センサ130B、130C、130E及び130Fにおいて接触が検出されている場合、接触検出センサ130A、130C、130D及び130Fにおいて接触が検出されている場合にも、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定される。
【0077】
一方で、例えば接触検出センサ130A、130B及び130Cにおいて接触が検出されている場合、三角形ABCには聴診音センサ110の中心部分が含まれないため、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定されない。即ち、3つ以上の接触検出センサ130において接触が検出されている場合であっても、形成される多角形に聴診音センサ110の中心部分が含まれない場合は、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定されない。なお、接触が検出されている接触検出センサ130が2つ以下である場合にも、多角形が形成されないため、チェストピース100が聴診対象に正しく押し当てられていると判定されない。
【0078】
上述した2種類の判定ロジックを利用すれば、単にチェストピース100が聴診対象に接触しているか否かではなく、聴診音を適切に取得することが可能な正しい状態で聴診対象に接触しているか否かを判定できる。従って、極めて好適に聴診対象の聴診音を取得することができる。
【0079】
以上のように、本実施例に係る聴診器では、接触検出センサ130を適切な位置に配置しているため、好適に聴診対象との接触状態を判定することができる。なお、上述した第1から第4実施例の配置例はあくまで一例であり、対をなす接触検出センサ130を結ぶ線が聴診音センサ110と重なる領域で交わるように、或いは接触検出センサ130同士を結ぶ仮想的な線を一辺として形成され得る複数の多角形のうち、少なくとも一部の多角形が、聴診音センサ110の中心部分と重なるように配置される場合であれば、上述した判定ロジックを利用して好適に接触状態を判定できる。
【0080】
<ノイズキャンセル処理>
次に、
図14及び12を参照して、本実施例に係る聴診器で実行されるノイズキャンセル処理について説明する。ここに
図14は、ノイズキャンセル処理に関連する構成を示すブロック図である。また
図15は、ノイズキャンセル処理の流れを示すフローチャートである。
【0081】
図14において、本実施例に係る聴診器では、既に説明したように、接触検出センサ130から出力されたセンサ信号(即ち、接触検出信号)が、接触判定部210に入力される構成となっている。接触判定部210は、接触検出信号に基づいて、チェストピース100が聴診対象に正しく接触しているか否かを判定し、判定結果を接触検出信号として出力する。
【0082】
接触判定部210から出力された接触検出信号は、強度調整部220に入力される構成となっている。強度調整部220は、接触検出信号が示す接触判定結果に基づいて、ノイズキャンセル処理の強度を調整するための強度調整信号を出力する。なお、強度調整部220は、「調整手段」の一具体例である。
【0083】
強度調整部220から出力された強度調整信号は、ノイズキャンセル処理部230に入力される構成となっている。また、ノイズキャンセル処理部230には、聴診音センサ110から出力されたセンサ信号(即ち、聴診音信号)も入力される構成となっている。ノイズキャンセル処理部230は、聴診音信号に対して、強度調整信号に応じた強度でノイズキャンセル処理を施して出力する。なお、ノイズキャンセル処理部230は、「ノイズキャンセル手段」の一具体例である。
【0084】
図15において、本実施例に係る聴診器による聴診音取得時には、先ず接触検出センサ130から接触検出信号が取得される(ステップS101)。接触検出信号が取得されると、接触判定部210において、チェストピース100が聴診対象に正しく接触しているか否かが判定される(ステップS102)。
【0085】
ここで、チェストピース100が聴診対象に正しく接触していると判定された場合(ステップS102:YES)、聴診音信号に含まれるノイズは少なくなると判断できる。このため、強度調整部220は、ノイズキャンセル処理を弱くするような強度調整信号を出力する(ステップS103)。これにより、ノイズキャンセル処理部230で実行されるノイズキャンセル処理の強度は弱くなり、過度なノイズキャンセル処理により音質が悪化してしまうことを抑制することができる。なお、ノイズキャンセル処理の強度を弱めるのではなく、ノイズキャンセル処理を停止するようにしてもよい。
【0086】
他方で、チェストピース100が聴診対象に正しく接触していると判定されない場合(ステップS102:NO)、例えば外部からの音を多く集音してしまうおそれがあるため、聴診音信号に含まれるノイズは多くなると判断できる。このため、強度調整部220は、ノイズキャンセル処理を強くするような強度調整信号を出力する(ステップS104)。これにより、ノイズキャンセル処理部230で実行されるノイズキャンセル処理の強度は強くなり、ノイズが多い場合であっても、鮮明な聴診音を出力することができる。
【0087】
<ミュート処理>
次に、
図16から
図18を参照して、本実施例に係る聴診器で実行されるミュート処理について説明する。ここに
図16はミュート処理に関連する構成を示すブロック図である。また
図17は、ミュート処理の流れを示すフローチャートである。更に
図18は、ミュート処理時の動作例を示すタイムチャートである。
【0088】
図16において、本実施例に係る聴診器では、既に説明したように、接触検出センサ130から出力されたセンサ信号(即ち、接触検出信号)が、接触判定部210に入力される構成となっている。接触判定部210は、接触検出信号に基づいて、チェストピース100が聴診対象に正しく接触しているか否かを判定し、判定結果を接触検出信号として出力する。
【0089】
接触判定部210から出力された接触検出信号は、ミュート制御部240に入力される構成となっている。ミュート制御部240は、接触検出信号が示す接触判定結果に基づいて、ミュート処理のON/OFFを切り替えるためのミュート制御信号を出力する。
【0090】
ミュート制御部240から出力されたミュート制御信号は、ミュート処理部250に入力される構成となっている。また、ミュート処理部250には、聴診音センサ110から出力されたセンサ信号(即ち、聴診音信号)も入力される構成となっている。ミュート処理部250は、聴診音信号に対して、ミュート制御信号に応じたミュート処理を施して出力する。なお、ミュート処理部250は、「音量制限手段」の一具体例である。
【0091】
図17において、本実施例に係る聴診器の使用開始時(即ち、チェストピース100を聴診対象に初めて接触させる際)には、先ず接触検出センサ130から接触検出信号が取得される(ステップS201)。接触検出信号が取得されると、接触判定部210において、チェストピース100が聴診対象に正しく接触しているか否かが判定される(ステップS202)。
【0092】
ここで、チェストピース100が聴診対象に正しく接触していると判定されない場合(ステップS202:NO)、接触時の衝撃音が出力される可能性があると判断できる。このため、ミュート制御部240は、ミュート処理をONとするミュート制御信号を出力する(ステップS203)。これにより、ミュート処理部240では聴診音がミュートされ、接触時の衝撃音に起因する不快感を低減することができる。なお、ミュート処理では、聴診音を完全に消音するのではなく、聴診音を小さくして出力するようにしてもよい。
【0093】
他方で、チェストピース100が聴診対象に正しく接触していると判定される場合(ステップS102:YES)、新たに衝撃音が発生する可能性は低いと判断できる。このため、ミュート制御部240は、所定期間の経過後(ステップS204:YES)、ミュート処理をOFFとするようなミュート制御信号を出力する(ステップS205)。これにより、ミュート処理部240ではミュート処理が実行されなくなり、聴診音の出力が開始される。
【0094】
図18に示すように、接触時の衝撃音は、チェストピース100と聴診対象との接触の瞬間だけでなく、その後もしばらく減衰しながら検出される。このため、仮に接触が検出されると同時にミュート処理をOFFにしてしまうと、衝撃音が含まれる聴診音が出力されてしまうおそれがある。
【0095】
これに対し本実施例では、上述したように、接触が検出されてから所定期間後にミュート処理がOFFとされる。よって、聴診音は、衝撃音が消えてから出力開始されることになる。このように、衝撃音の減衰時間に基づいて所定期間を設定しておけば、より好適に衝撃音による不快感を低減することが可能である。
【0096】
以上説明したように、本実施例に係る聴診器によれば、聴診対象との接触を好適に検出することが可能である。従って、極めて好適に聴診対象の聴診音を取得することができる。
【0097】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う聴診器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。