【文献】
勝田悦子、外3名,“GPS受信状態を用いた屋内外判定法”,情報処理学会研究報告[CD−ROM],2011年12月15日,Vol.2011-MBL-60,No.18,p.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施形態1〕
第1の実施形態に係る無線通信装置100について、図面を参照し説明すれば以下のとおりである。
【0020】
<無線通信装置100の全体構成>
まず、
図1に基づき、本発明の第1の実施形態である無線通信装置100の全体的な構成について説明する。
図1は、無線通信装置100の全体構成を示すブロック図である。
無線通信装置100は、アクセスポイント110と無線通信機能を実現するための無線LAN通信部10、GPS(Global Positioning System)120から無線通信装置100の現在位置を取得するためのGPS機能部11、無線通信装置100が屋内にあるか屋外にあるかを判定する屋内外判定部12、制御部13、記憶部14を有する。以下に各機能ブロックについて説明する。
【0021】
無線LAN通信部10は、アクセスポイント110と例えば、IEEE802.11b規格やIEEE802.11g規格で規定されている2.4GHz帯やIEE802.11a規格で規定されている5GHz帯の電波による無線通信機能を実現するものであり、送信信号を電力増幅する送信電力増幅回路、受信信号を増幅する受信増幅回路等を有している。
【0022】
GPS機能部11は、GPS120からの送信信号を受信して無線通信装置100の現在位置を示す端末位置情報を取得するものである。また、GPSからの電波のSNR(Signal to Noise Ratio)を測定する機能を有する。SNRとは、電波の強さと雑音の比、すなわち信号対雑音比を意味する。数字が大きいほど、信号が強いことを表す。
【0023】
屋内外判定部12は、GPS120からの受信信号に基づいて、無線通信装置100が屋内にあるか屋外にあるかを判定する。
【0024】
制御部13は、無線通信装置100の全体動作を制御する。また、屋内外判定部12の判定結果に基づき、周波数帯域の機能制御を行う。無線通信装置100が屋外にあると判定した時には、無線LAN通信部10の屋内でのみ使用可能な周波数帯域、例えば、日本においては5.150GHz〜5.350GHzの周波数帯域の機能を無効にする。一方、無線通信装置100が屋内にあると判定した時には、無線LAN通信部10の屋内でのみ使用可能な周波数帯域の機能を有効にする。
【0025】
記憶部14は、無線通信装置100の動作を制御するソフトウェア等を記憶するものであり、RAMやHDD、フラッシュメモリなどで構成される。また、現在位置と連携するための地図情報が格納される。ただし、地図情報はあらかじめ記憶部14に格納されていなくてもよく、必要な時にネットワークを通じて取得する構成であってもよい。
【0026】
<無線通信装置100における処理の流れ>
次に、
図2に基づき、無線通信装置100における処理の流れについて説明する。
図2はその全体処理を示すフローチャートである。
【0027】
無線通信装置100のGPS機能部11はGPS120からの送信信号を受信することによって処理がスタートする。
【0028】
屋内外判定部12は、GPS120からの受信信号に基づいて、無線通信装置100が屋内にあるか屋外にあるかを判定し(S101;Sはステップを表す。以下同様。)、上記判定結果を基に、屋内か否かで分岐する(S102)。
【0029】
屋内外判定処理により屋内であると判定された場合には、制御部13は屋内用周波数帯域の機能を有効に設定する(S103)。屋外もしくは不明であると判定された場合には、制御部13は屋内用周波数帯域の機能を無効に設定する(S104)。
【0030】
図3は屋内外判定処理のフローチャートであり、
図2のS101のサブルーチンである。GPS120からの受信信号強度により屋内外の判定を行う。以下に一例を示す。
【0031】
無線通信装置100のGPS機能部11はGPS120からの送信信号を受信することによって処理がスタートする。屋内外判定部12はGPS120の電波の状態を示すSNR値が閾値未満か否かを判定する(S201)。閾値未満の場合は(S201でYES)、S202に進み、閾値以上の場合は(S201でNO)、屋外であると判定する(S204)。
【0032】
次に、S202で、無線通信装置100はGPS120から現在の位置情報が取得できるか否かを確認する。位置情報を取得できる場合は(S202でYES)、屋内であると判定する(S203)。一方、位置情報を取得できない場合は(S202でNO)、何もせず終了する。以上で、屋内外の判定処理を終了する。
【0033】
ここで、位置情報が取得できるか否かを確認するのは、屋内であるとの誤判定を防ぐためである。位置情報を確認しない場合、屋外であっても、GPS120からの送信信号自体の不具合や建物の陰などでの一時的な電波ノイズ増大などによってもSNR値が閾値未満となり、屋内と判定される虞がある。そこで、SNR値が閾値未満の上、位置情報も取得できない場合は屋外である可能性もあるとし、屋内とは判定しない。位置情報の受信を確認することによって、屋外であるのに屋内であると判定されることにより、屋外での使用が禁止された周波数帯域の機能使用による法令違反を防ぐことができる。一方で、SNR値が閾値以上であれば、GPS120からの送信信号は十分に受信できており、屋外であると判断できるため、位置情報を取得できるか否かの確認は省略可能である。これにより、作業の簡略化を図ることができ、バッテリーの消費を節約することができる。
【0034】
<無線通信装置100におけるGPS120の電波状態の一例>
次に、
図4に基づき、GPS120からの電波状態を示すSNRについて説明する。ここでは一例として、屋内外における衛星ごとのSNRの取得例を示す。
【0035】
図4aは屋外におけるSNRを示している。GPS120では通常24個以上の衛星で運用されており、GPS120から正確な位置情報を計測するためには、衛星からの信号が最低3つ、通常は4つ以上必要である。そこで、SNR値の上位4つの平均値を求め、例えば、閾値35以上であれば、屋外と判定する。IからIVが選択された上位4つの衛星を示す。いずれも、SNR値が45程度であり、屋外であることが分かる。
【0036】
図4bは屋内におけるSNRを示している。SNR値の上位4つの平均値が、例えば、閾値35未満であれば、屋内と判定する。同様に、IからIVが選択された上位4つの衛星を示す。選択された衛星のSNR値は、35から23程度であり、35未満となる。従って、屋内であることが分かる。
【0037】
判定に使用される衛星の数およびSNR値は適宜決定されればよく、上記値に限定されるものではない。
【0038】
このように、GPSからの電波状態を取得することにより、屋内にいるのか屋外にいるのかを判定することができる。
【0039】
本実施形態においては、GPSの位置情報取得可否と合わせて、電波状態を取得することにより、屋内にいるのか否かをより正確に判定し、屋外にいると判定された場合、屋内でのみ使用可能な周波数帯域の機能を自動的に無効にすることができる。
【0040】
また、最近の無線通信装置ではGPSなどの位置情報受信システムを備えたものが多く、無線通信装置が屋内にあるのか屋外にあるのかを判定するために新たに部品を具備する必要がなく、簡単な構成でよい。したがって、従来よりも容易に屋外にいるときに不要な機能を無効にすることにより、バッテリーの消費を節約することができる。
【0041】
なお、GPSからの位置情報が取得できない場合、屋内、屋外いずれにも判定しないことが望ましい。
【0042】
これにより、ビル陰などの屋外で間違って屋内と判定することにより、屋内でのみ使用可能な周波数帯域の機能が使用されることを防止可能となる。
【0043】
したがって、GPSからの電波状態を取得する機能を備えた無線通信装置に用いることによって、屋外での使用が禁止された周波数帯域の機能無効のし忘れを防止できるため、法令違反を防ぐことができる。
【0044】
なお、位置情報が取得可能であるか否かの判定は省略されてもよい。これにより、わずかながら誤判定を行う可能性は発生するが、屋内外判定の処理が簡略化できるため、屋内外の判定を速やかに行うことができ、バッテリーの消費を節約することができる。この場合、屋内外判定は衛星からの受信信号に限定されるものではなく、外部からの受信信号の強度を用いて判定してもよい。外部からの信号を用いる場合も衛星からの電波を用いた場合と同様に、SNRの閾値を用いて判定可能である。これにより、屋内外判定をより汎用的に行うことが可能となる。
【0045】
本発明に係る無線通信装置によれば、屋外であると判定された場合、屋内でのみ使用可能な周波数帯域の機能を自動的に無効にするため、バッテリーの消費を節約することができる。
【0046】
〔実施形態2〕
第2の実施形態に係る無線通信装置100について、図面を参照して説明すれば以下のとおりである。なお、無線通信装置100の構成に関しては、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0047】
<無線通信装置100における処理の流れ>
図5に基づき、無線通信装置100における処理の流れについて説明する。
図5は実施の形態1とは異なる屋内外判定処理のフローチャートであり、
図2のS101のサブルーチンである。GPS120からの位置情報と地図情報を連携させることにより屋内外の判定を行う。以下に一例を示す。
【0048】
全体処理を示すフローに関しては、実施の形態1と同じ処理(
図2のフローチャート)となるので、その説明を省略する。
【0049】
無線通信装置100はGPS120から現在の位置情報が取得できるか否かを確認する(S301)。
位置情報を取得できる場合は(S301でYES)、S302に進む。一方、位置情報を取得できない場合は(S301でNO)、何もせず終了し、屋内外の判定を行わない。
【0050】
S302で、地図情報が記憶部14から取得可能か否かを判定する。地図情報を取得可能できる場合は(S302でYES)、S303に進む。一方、取得できない場合には(S302でNO)、何もせず終了し、屋内外の判定を行わない。
【0051】
S303で、地図情報から現在位置を検索し、地図上の建物上であるか否かを確認する。現在位置が地図上の建物上にある場合は(S303でYES)、屋内であると判定する(S304)。一方、地図上の建物上ではない場合は(S303でNO)、屋外であると判定する(S305)。以上で、屋内外の判定処理を終了する。
【0052】
屋内外の判定は、現在位置が地図上の建物上に重なるか否かをプログラムにより自動で判定させてもよいし、ユーザが地図上で確認することにより手動設定する構成であってもよい。
【0053】
さらに、屋内外の判定をより正確に行うためには、S303で、現在位置が地図上の建物上にある場合(S303でYES)、GPS120の電波の状態を示すSNR値が閾値未満か否かを判定する処理を追加してもよい。閾値未満の場合は、屋内であると判定し(S304)、閾値以上の場合は、屋外であると判定する(S305)。
【0054】
<無線通信装置100における位置情報と地図情報との連携の一例>
次に、
図6に基づき、GPS120からの位置情報と地図情報との連携について説明する。ここでは一例として、現在位置が地図上の建物上にある例を示す。
【0055】
GPS120から現在位置情報が取得され、地図情報上に表示される。下向きの矢印が現在位置を表す。この図においては、矢印が建物内に表示されているため、屋内と判定することができる。
【0056】
このように、GPSからの位置情報を取得することにより、簡単な構成で地図情報と連携して屋内にいるのか屋外にいるのかを正確に判定することができる。
【0057】
さらに、GPSの電波状態を取得すれば、現在位置が地図上の建物上にあった場合、屋内にいるのか屋外にいるのかをより正確に判定することができる。
【0058】
本実施形態においては、GPSが位置情報を取得可能である場合に、地図情報を取得することにより、屋内にいるのか否かを判定し、屋外にいると判定された場合、屋内でのみ使用可能な周波数帯域の機能を自動的に無効にすることができる。
【0059】
なお、地図情報は無線通信装置にあらかじめ格納されていなくてもよく、必要に応じてネットワークから現在地周辺の地図を取得してもよい。
【0060】
これにより、無線通信装置に必要なメモリを抑えることができ、コストダウンを図ることが可能となる。
【0061】
したがって、地図情報を取得する機能を備えた無線通信装置に用いることによって、電波状態が良好ではない環境であっても位置情報さえ取得可能であれば、バッテリーの消費を節約し、屋外での使用が禁止された周波数帯域の機能無効のし忘れを防止できるため、法令違反を防ぐことができる。
【0062】
さらに、GPSの電波状態を取得することにより、屋内にいるのか屋外にいるのかより正確に判定することができる。
【0063】
〔実施形態3〕
第3の実施形態に係る無線通信装置100aについて、図面を参照して説明すれば以下のとおりである。なお、第1の実施形態と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0064】
<無線通信装置100aの全体構成>
まず、
図7に基づき、本発明の第3の実施形態である無線通信装置100aの全体的な構成について説明する。
図7は、無線通信装置100aの全体構成を示すブロック図である。
【0065】
無線通信装置100aは、
図7に示すように、無線通信装置100と比べて基地局130とセルラー通信機能を実現するためのセルラー通信部15が追加されている点が異なる。
【0066】
セルラー通信部15は、基地局130とセルラー通信機能を実現するものであり、例えばCDMA(Code Division Multiple Access)方式などの広帯域移動通信である。送信信号を電力増幅する送信電力増幅回路、受信信号を増幅する受信増幅回路等を有している。
【0067】
<無線通信装置100aにおける処理の流れ>
次に、
図8に基づき、無線通信装置100aにおける処理の流れについて説明する。
図8は実施の形態1および実施の形態2とは異なる屋内外判定処理のフローチャートであり、
図2のS101のサブルーチンである。GPS120もしくは基地局130からの位置情報と地図情報を連携させることにより屋内外の判定を行う。以下に一例を示す。
【0068】
全体処理を示すフローに関しては、実施の形態1と同じ処理(
図2のフローチャート)となるので、その説明を省略する。
【0069】
無線通信装置100はGPS120から現在の位置情報が取得できるか否かを確認する(S401)。位置情報を取得できる場合は(S401でYES)、S403に進む。一方、位置情報を取得できない場合は(S401でNO)、S402に進む。
【0070】
S402で、基地局130から位置情報が取得できるか確認する。位置情報を取得できる場合は、S403に進む。一方、位置情報を取得できない場合は、何もせず終了し、屋内外の判定を行わない。
【0071】
S403で、地図情報が記憶部14から取得可能か否かを判定する。地図情報を取得可能できる場合は(S403でYES)、S404に進む。一方、地図情報を取得できない場合は(S403でNO)、何もせず終了し、屋内外の判定を行わない。
【0072】
S404で、地図情報から現在位置を検索し、地図上の建物上であるか否かを確認する。現在位置が地図上の建物上にある場合は(S404でYES)、屋内であると判定する(S405)。一方、地図上の建物上ではない場合は(S404でNO)、屋外であると判定する(S406)。以上で、屋内外の判定処理を終了する。
【0073】
実施形態2と同様、さらに、屋内外の判定をより正確に行うためには、S404で、現在位置が地図上の建物上にある場合(S404でYES)、GPS120の電波の状態を示すSNR値が閾値未満か否かを判定する処理を追加してもよい。閾値未満の場合は、屋内であると判定し(S405)、閾値以上の場合は、屋外であると判定する(S406)。
【0074】
本実施形態では、GPSもしくは基地局のいずれかを用いて位置情報を得る構成としている。GPSからの位置情報を先に取得する構成としているが、基地局からの位置情報を先に取得する構成であってもよい。位置情報を取得しやすい方から先に取得する構成にすることにより、無駄な処理を省略することができ、バッテリーの消費を節約することができる。
【0075】
本実施形態においては、基地局の位置情報を利用して位置を取得する構成を追加している。単体の基地局では電波が建物などによって複雑に反射・吸収されるため、誤差は大きくなると考えられるが、複数の基地局を利用して位置情報を求めることで、より高い精度の位置情報を得られることが可能となる。
【0076】
さらに、衛星からの信号に加えて基地局の位置情報を使用することで、高架橋の下などの衛星電波が届きにくい場所においても正確に位置情報を取得することが可能となる。
【0077】
さらに、GPSの電波状態を取得することにより、屋内にいるのか屋外にいるのかより正確に判定することができる。
【0078】
したがって、基地局からの位置情報を取得する機能を備えた無線通信装置に用いることによって、衛星電波が届きにくい環境であっても位置情報を取得可能となり、バッテリーの消費を節約し、屋外での使用が禁止された周波数帯域の機能無効のし忘れを防止できるため、法令違反を防ぐことができる。
【0079】
本実施形態1から実施形態3では、衛星からの位置情報を取得する手段として、GPS120を用いて説明しているが、これに限るものではなく、現在位置を測定可能なシステムであればよい。
【0080】
例えば、ロシアではGLONASS(Global Navigation Satellite System)と呼ばれる衛星測位システムが全世界で実用可能であり、EUでも同様のシステムを構築中である。
【0081】
以上、実施形態1から実施形態3について具体的に説明を行ったが、本発明はそれらに限定されるものではない。上述した2つの実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。