(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる流体ダンパ装置において、本願発明者は、
図7に示すように、径方向外側に突出した2つの凸部(第1凸部461および第2凸部462)を回転軸40に設け、第1凸部461と第2凸部462との間に弁体50の基部51を支持した構成を検討している。ここで、弁体50は、断面円弧状の円周面を回転軸40の径方向内側に向けた基部51と、基部51から回転軸40の径方向外側かつ回転軸40の軸線周りの一方側(第1方向A)に向けて突出した突出部52とを備えている。従って、第1凸部461と第2凸部462との間は、弁体50の基部51を支持する基部支持部463になっている。かかる構成によれば、
図7に示す開状態で回転軸40が第1方向Aに回転すると、基部51を中心に弁体50が矢印A0で示す方向に回転する結果、弁体50は、突出部52がケース20の内周面に当接する閉状態となる。その後、回転軸40が第2方向Bに回転すると、基部51を中心に弁体50が矢印B0で示す方向に回転するので、弁体50は、
図7に示す開姿勢に戻る。
【0005】
しかしながら、
図7に示す構成では、突出部52において回転軸40の径方向内側に向く内側部分520の全体が第1凸部461の径方向外側の端部465と重なっているため、第1方向Aの側からみたとき、弁体50が第1凸部461から露出している面積が狭い。従って、回転軸40が閉方向(第1方向A)に回転した際、弁体50が受ける流体圧が小さいため、基部51を中心に弁体50が矢印A0で示す方向に回転し始めるタイミングが遅れやすいという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、回転軸を閉方向に回転させたときの弁体の閉姿勢への移行をスムーズに行うことのできる流体ダンパ装置および該流体ダンパ装置を備えたダンパ付き機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る流体ダンパ装置は、筒状のケースと、該ケースの内周面との間にダンパ室を区画する回転軸、および前記回転軸の弁体支持部に保持された弁体を備えたロータと、前記ダンパ室に充填された流体と、を有し、前記弁体は、断面円弧状の円周面を前記回転軸の径方向内側に向けた基部と、該基部から前記回転軸の径方向外側かつ前記回転軸の軸線周りの一方側に向けて突出した突出部と、を備え、前記弁体支持部は、前記突出部に向けて前記回転軸の径方向外側に突出した第1凸部と、該第1凸部に対して前記回転軸の軸線周りの他方側で隣り合う位置で前記回転軸の径方向外側に突出した第2凸部と、該第2凸部と前記第1凸部との間で前記回転軸の径方向外側に向けて開口し、前記基部が前記回転軸の軸線と平行な軸線周りに回転可能な状態で嵌った基部支持部と、を備え、前記第1凸部の径方向外側の端部は、前記弁体が前記基部を中心に前記一方側に最も傾いた状態で、前記突出部において前記回転軸の径方向内側に向く内側部分との間隔を前記他方側から前記一方側に向かうに伴って増大させる方向に前記内側部分に対して傾いた傾斜面を備え
、前記回転軸の中心から前記傾斜面の前記他方側の端と前記内側部分との接触位置に向かう仮想の直線と前記傾斜面とがなす角度が60°以下であり、前記第1凸部の前記端部は、前記弁体が前記基部を中心に前記一方側に最も傾いた状態で、前記傾斜面の前記他方側の端が前記内側部分に接触している位置と前記基部支持部との間で前記内側部分を面で受ける受け面を備えるとともに、前記弁体が前記基部を中心に前記一方側に最も傾いた状態で前記回転軸が閉方向に回転した際には、前記傾斜面によって前記回転軸の径方向外側に向かう前記流体の流体圧を前記弁体の前記突出部に与えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1凸部の径方向外側の端部が弁体の内側部分に対して傾いた傾斜面を備えており、かかる傾斜面によって、弁体が一方側に最も傾いた開姿勢で、弁体の内側部分と第1凸部の端部(傾斜面)との間隔が他方側から一方側に向かうに伴って増大している。このため、一方側から弁体をみたとき、弁体が第1凸部から露出している部分の面積が広い。従って、回転軸が閉方向(一方側)に回転した際、弁体が受ける流体圧が大きいので、基部を中心に弁体が閉姿勢にスムーズに移行する。
【0010】
本発明
では、前記回転軸の中心から前記傾斜面の前記他方側の端と前記内側部分との接触位置に向かう仮想の直線と前記傾斜面とがなす角度が60°以下であ
る。かかる構成によれば、流体と第1凸部との間の摩擦等の影響で、弁体が受ける流体圧の方向が分散している場合でも、回転軸が閉方向(一方側)に回転した際、弁体が受ける流体圧が大きい。それ故、基部を中心に弁体が閉姿勢にスムーズに移行する。
【0011】
本発明
では、前記第1凸部の前記端部は、前記弁体が前記基部を中心に前記一方側に最も傾いた状態で、前記傾斜面の前記他方側の端が前記内側部分に接触している位置と前記基部支持部との間で前記内側部分を面で受ける受け面を備え
るとともに、前記弁体が前記基部を中心に前記一方側に最も傾いた状態で前記回転軸が閉方向に回転した際には、前記
傾斜面によって前記回転軸の径方向外側に向かう前記流体の流体圧を前記弁体の前記突出部に与える。かかる構成によれば、弁体が基部を中心に一方側に最も傾いた開姿勢となった際、受
け面によって弁体の内側部分が面で支持される。このため、回転軸が他方側に回転した際に弁体が流体圧を受けても、弁体が第1凸部との接触位置を支点にして回転するという事態が発生しにくい。それ故、ロータを開方向に回転させたときでも、回転軸からの弁体の浮きを抑制することができる。
【0012】
本発明に係る流体ダンパ装置を備えたダンパ付き機器は、機器本体に前記流体ダンパ装置を介して蓋が取り付けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、第1凸部の径方向外側の端部が弁体の内側部分に対して傾いた傾斜面を備えており、かかる傾斜面によって、弁体が一方側に最も傾いた開姿勢で、弁体の内側部分と第1凸部の端部(傾斜面)との間隔が他方側から一方側に向かうに伴って増大している。
また、本発明では、前記回転軸の中心から前記傾斜面の前記他方側の端と前記内側部分との接触位置に向かう仮想の直線と前記傾斜面とがなす角度が60°以下である。このため、一方側から弁体をみたとき、弁体が第1凸部から露出している部分の面積が広い。従って、回転軸が閉方向(一方側)に回転した際、弁体が受ける流体圧が大きいので、基部を中心に弁体が閉姿勢にスムーズに移行する。
また、本発明では、前記第1凸部の前記端部は、前記弁体が前記基部を中心に前記一方側に最も傾いた状態で、前記傾斜面の前記他方側の端が前記内側部分に接触している位置と前記基部支持部との間で前記内側部分を面で受ける受け面を備える。このため、回転軸が他方側に回転した際に弁体が流体圧を受けても、弁体が第1凸部との接触位置を支点にして回転するという事態が発生しにくい。それ故、ロータを開方向に回転させたときでも、回転軸からの弁体の浮きを抑制することができる。また、本発明では、前記弁体が前記基部を中心に前記一方側に最も傾いた状態で前記回転軸が閉方向に回転した際には、前記傾斜面によって前記回転軸の径方向外側に向かう前記流体の流体圧を前記弁体の前記突出部に与える。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、ロータ30において、回転軸40の中心軸が延在する方向を軸線L方向とし、軸線L方向において、ケース20が位置する側を一方側L1とし、ケース20が位置する側とは反対側(回転軸40が突出している側)を他方側L2として説明する。
【0016】
[実施の形態1]
(ダンパ付き機器および流体ダンパ装置10の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る流体ダンパ装置10が搭載された洋式便器1を備えた洋式トイレユニット100の説明図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る流体ダンパ装置10の斜視図であり、
図2(a)、(b)は各々、流体ダンパ装置10を軸線L方向の他方側L2からみた斜視図、および流体ダンパ装置10を軸線L方向の一方側L1からみた斜視図である。
【0017】
図1に示す洋式トイレユニット100は、洋式便器1(ダンパ付き機器)および水タンク3を備えている。洋式便器1は、便器本体2、樹脂製の便座5(蓋材)、樹脂製の便蓋6(蓋材)、およびユニットカバー7等を備えている。ユニットカバー7の内部には、後述する流体ダンパ装置が便座用および便蓋用として内蔵されており、便座5および便蓋6は各々、流体ダンパ装置を介して便器本体2に連結されている。
【0018】
図2に示すように、流体ダンパ装置10は、一方側L1に円柱状の流体ダンパ装置本体10aを有している。流体ダンパ装置本体10aから他方側L2には軸状の連結部10bが突出しており、連結部10bは、便座5あるいは便蓋6に連結される。かかる流体ダンパ装置10は、起立している便座5や便蓋6が便器本体2に被さるように倒れようとする際、それに抗する力(負荷)を発生させ、便座5や便蓋6が倒れる速度を低下させる。ここで、連結部10bは、相対向する面が平坦面10cになっており、かかる平坦面10cによって、連結部10bに対する便座5や便蓋6の空周りが防止されている。
【0019】
(流体ダンパ装置10の構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係る流体ダンパ装置10の分解斜視図であり、
図3(a)、(b)、(c)は各々、ケース20からロータ30等を外した状態を軸線L方向の他方側L2からみた分解斜視図、ロータ30の回転軸40から弁体50を外した状態を軸線L方向の他方側L2からみた分解斜視図、およびケース20からロータ30等を外した状態を軸線L方向の一方側L1からみた分解斜視図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係る流体ダンパ装置10の断面図であり、
図4(a)、(b)は各々、流体ダンパ装置10を軸線Lに沿って切断したときの断面図、および流体ダンパ装置10のダンパ室11を軸線Lに対して直交する方向で切断した状態を軸線L方向の他方側L2からみたときの断面図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係る流体ダンパ装置10の要部を示す説明図であり、
図5(a)、(b)は各々、ロータ30を軸線L方向の一方側L1からみた斜視図、およびケース20を軸線L方向の他方側L2からみた斜視図である。なお、図
5(b)は、2つの弁体50も表してある。
【0020】
図3および
図4に示すように、流体ダンパ装置10は、一方側L1に底壁21を備えた筒状のケース20と、一方側L1がケース20の内側に配置されたロータ30と、他方側L2でケース20の開口29を塞ぐリング状のカバー60とを有している。カバー60は、樹脂製であり、円環部61と、円環部61の内側から一方側L1に突出した円筒部62とを有している。
【0021】
図3、
図4および
図5において、ケース20は、樹脂製であり、底壁21の外周縁から他方側L2に向けて延在する円筒状の胴部22を有している。胴部22の内周面220のうち、他方側L2に位置する部分228は、一方側L1に位置する部分229よりわずかに内径が大になっている。
【0022】
ケース20において、底壁21の中央には、一方側L1に凹んでロータ30の回転軸40の一方側L1の端部49を回転可能に支持する円形の凹部210が形成されており、かかる凹部210に対して径方向外側には、一方側L1に凹んだ2つの円弧状の凹部211が形成されている。2つの凹部211は、周方向で180°ずれた角度位置に形成されている。
【0023】
2つの凹部211の各々に対して周方向でずれた位置では、胴部22の内周面220から径方向内側に2つの仕切り用凸部23が突出している。2つの仕切り用凸部23は、周方向で180°ずれた角度位置に形成されている。本形態において、2つの仕切り用凸部23はいずれも、一方側L1の端部が底壁21と繋がっている。本形態において、仕切り用凸部23は、断面台形形状であり、径方向外側から内側に向かって周方向の寸法(厚さ)が薄くなっている。
【0024】
ロータ30は、軸線L方向の一方側L1がケース20の内側に配置された回転軸40と、回転軸40に保持された弁体50とを備えている。回転軸40は、樹脂製であり、ケース20の内側に位置する第1軸部41と、第1軸部41よりも他方側L2で延在する第2軸部42とを有している。第1軸部41は、回転軸40の一方側L1の端部49より外径が大であり、第2軸部42は、第1軸部41より外径が大である。本形態において、端部49は円筒状に形成されており、樹脂成形時のヒケを緩和する構造になっている。なお、第2軸部42は、第1軸部41より外径が小であってもよい。
【0025】
回転軸40において第1軸部41と第2軸部42との間には、第1軸部41に対して他方側L2で隣接する円形の第1フランジ部43と、第1フランジ部43に対して所定の間隔をあけて他方側L2で対向する円形の第2フランジ部44とが形成されている。このため、第1フランジ部43と第2フランジ部44との間には環状の溝45が形成されている。従って、溝45にOリング70を装着して回転軸40の第1軸部41をケース20の内側に配置すれば、Oリング70がケース20の胴部22の内周面220のうち、一方側L1に位置する部分229に当接し、ケース20と回転軸40とに挟まれた空間が密閉される。また、ケース20の底壁21と、第1軸部41において他方側L2で対向する第1フランジ部43とによって区画された空間がダンパ室11として密閉される。その際、ダンパ室11にはオイル等の流体12(粘性流体)が充填される。その後、カバー60の円筒部62を回転軸40の第2軸部42とケース20の胴部22との間に差し込み、溶接等の方法でカバー60を固定すれば、流体ダンパ装置10が構成される。
【0026】
この状態で、回転軸40の一方側L1の端部49は、ケース20の底壁21の凹部210に回転可能に支持されているとともに、第2軸部42がカバー60の円筒部62の内側で回転可能に支持される。また、第2軸部42の一部がカバー60を貫通し、連結部10
bが構成される。
【0027】
(ダンパ室11内の構成)
図4および
図5に示すように、ダンパ室11において、ケース20の2つの仕切り用凸部23の径方向内側端部231は、回転軸40の第1軸部41の外周面410に接する。
【0028】
また、回転軸40の第1軸部41の外周面410において、周方向で180°ずれた角度位置からは、径方向外側に2つの弁体支持用凸部46が形成されており、かかる2つの弁体支持用凸部46の各々に弁体50が支持されている。ここで、2つの弁体支持用凸部46はいずれも、回転軸40の一方側L1の端部49から所定の寸法だけ、他方側L2に位置する部分を起点にして第1フランジ部43まで軸線L方向に延在しており、2つの弁体支持用凸部46はいずれも、他方側L2の端部が第1フランジ部43と繋がっている。ここで、弁体保持用凸部46は、周方向の幅が径方向外側より径方向内側で狭い。
【0029】
(弁体支持部460および弁体50の構成)
図6は、本発明の実施の形態1に係る流体ダンパ装置10の弁体50および弁体支持部460を拡大して示す説明図である。なお、
図6には、弁体50が開姿勢にある状態を示してある。
【0030】
図5および
図6に示すように、弁体50は、断面円弧状の円周面を回転軸40の径方向内側に向けた基部51と、基部51から回転軸40の径方向外側かつ回転軸40の軸線L周りの一方側(第1方向A)に向けて斜めに傾いて突出した突出部52とを備えている。本形態において、突出部52は、基部51の側から径方向外側に突出した後、一方側(第1方向A)に向けて折れ曲がった形状になっており、突出部52は、基部51の側から先端に向かって厚さが徐々に薄くなっている。また、突出部52の先端は、回転軸40の径方向に所定の厚さをもって周方向に面を向ける先端面53になっている。また、弁体50は、突出部52において回転軸40の径方向内側に向く内側部分520が連続した面になっており、本形態において、内側部分520は連続した平面になっている。なお、突出部52は、基部51の側から先端まで厚さが徐々に薄くなった結果、先端が面になっていない形状や、基部51の側から先端まで厚さが一定になっている形状であってもよい。
【0031】
一方、弁体支持用凸部46の径方向外側の部分には、弁体50を支持する弁体支持部460が形成されている。本形態において、弁体支持部460は、径方向外側に突出した第1凸部461と、第1凸部461に対して、軸線L周りの他方側(第2方向B)で隣り合う位置で径方向外側に突出する第2凸部462とを備えており、第1凸部461は、弁体50の突出部52に向けて突出している。第1凸部461および第2凸部462はいずれも、他方側L2の端部が第1フランジ部43と繋がっている。また、弁体支持部460は、第1凸部461と第2凸部462との間で径方向外側に向けて開口する溝状の基部支持部463を備えている。
【0032】
基部支持部463は、内周面が約180°以上の角度範囲にわたって湾曲した円弧状になっており、基部支持部463には弁体50の基部51が基部51の軸線周り(軸線Lと平行な軸線周り)に回転可能に支持されている。本形態において、第2凸部462は、第1凸部461より周方向の幅が広い。また、第1凸部461の先端部は、第2凸部462の先端部より径方向内側に位置する。このため、弁体50の突出部52は、第1凸部461の径方向外側に位置する。また、弁体支持用凸部46は、周方向の幅が径方向外側より径方向内側で狭くなっている。
【0033】
ここで、第1凸部461の径方向外側の端部465は、弁体50が基部51を中心に一方側(第1方向A)に最も傾いた状態で、突出部52の内側部分520との間隔を他方側
(第2方向B)から一方側(第1方向A)に向かうに伴って増大させる方向に内側部分520に対して傾いた傾斜面464を備えている。ここで、回転軸40の中心(軸線L)から傾斜面464の他方側(第2方向B)の端と内側部分520との接触位置Pに向かう仮想の直線Rと傾斜面464とがなす角度が90°以下になっている。ここで、回転軸40の中心(軸線L)から傾斜面464の他方側(第2方向B)の端と内側部分520との接触位置Pに向かう仮想の直線Rと傾斜面464とがなす角度θは、好ましくは60°以下が好ましく、本形態では、例えば46°に設定されている。
【0034】
また、本形態では、第1凸部461の径方向外側の端部465は、弁体50が
図6に示す開姿勢において傾斜面464の他方側(第2方向B)の端が内側部分520に接触している位置(接触位置P)と基部支持部463との間には、内側部分520を面で受ける受け面466を備えている。すなわち、第1凸部461の径方向外側の端部465は、弁体50が
図6に示す開姿勢において、内側部分520のうち、基部51側の第1部分521から、第1部分521に対して突出部52の突出方向で離間する第2部分522までを受ける受け面466を備えている。本形態において、内側部分520は連続した平面になっており、受け面466も、第1部分521を受ける部分から第2部分522を受ける分まで連続した平面になっている。なお、内側部分520は曲面になっていてもよく、この場合、受け面466も、第1部分521を受ける部分から第2部分522を受ける部分が、内側部分520と略同一形状の曲面になっていることが好ましい。
【0035】
なお、弁体50が基部51を中心に周方向の一方側(第1方向A)に傾いて受け面466で支持された開姿勢で、弁体50の先端面53は、第1凸部461の第1方向Aの側面461eよりわずかに第2方向Bに位置しており、第1凸部461の第1方向Aの側面461eから第1方向Aに突出していない。
【0036】
(ダンパ室11内での軸線L方向での密閉構造)
図3、
図4および
図5において、弁体50は弁体支持用凸部46と同様、軸線L方向に延在しており、弁体50の他方側L2の端部56は、第1フランジ部43と接している。従って、弁体50と第1フランジ部43との間に隙間がほとんどあいていない。従って、弁体50と第1フランジ部43との間を流体12が通過しないようになっている。これに対して、弁体50の一方側L1の端部57は、弁体支持用凸部46の一方側L1の端部よりわずかに他方側L2に位置する。このため、弁体50に対して一方側L1では、弁体支持用凸部46とケース20の胴部22の内周面220との間にはわずかな隙間G0が空いている。従って、流体は、隙間G0を通ってわずかに通過することができる。
【0037】
第1軸部41の一方側L1の端面417および弁体支持用凸部46の一方側L1の端部467とケース20の底壁21との間にはわずかな隙間が存在するが、第1軸部41の一方側L1の端面417および弁体支持用凸部46の一方側L1の端部467に形成された第1リブ(
図4(a)には図示せず)がケース20の底壁21と接している。このため、第1軸部41の一方側L1の端面417と底壁21との間、および弁体支持用凸部46の一方側L1の端面417と底壁21との間を流体12が通過しないようになっている。
【0038】
具体的には、第1リブ16は、流体ダンパ装置10を組み立てる際にケース20の内側に回転軸40を配置したとき、底壁21と当接する。また、第1リブ16の高さ(突出寸法)が高すぎる場合、底壁21と第1軸部41の一方側L1の端面417との間、および底壁21と弁体保持用凸部46との間で潰される。本形態において、第1リブ16は潰された状態で底壁21に接している。
【0039】
仕切り用凸部23の他方側L2の端面236と回転軸40の第1フランジ部43との間にはわずかな隙間が存在するが、仕切り用凸部23の他方側L2の端面236に形成され
た第2リブ(
図4(a)には図示せず)が第1フランジ部43と接している。このため、仕切り用凸部23の他方側L2の端面236と第1フランジ部43との間を流体12が通過しないようになっている。
【0040】
具体的には、第2リブ17は、流体ダンパ装置10を組み立てる際にケース20の内側に回転軸40を配置したとき、第1フランジ部43と接する。また、第2リブ17の高さ(突出寸法)が高すぎる場合、第2リブ17は、仕切り用凸部23の他方側L2の端部236と第1フランジ部43との間で潰される。本形態において、第2リブ17は潰された状態で第1フランジ部43に接している。
【0041】
ここで、第1リブ16および第2リブ17は、潰される前は断面三角形形状をもって形成されており、突出方向において根元部分が先端側より幅が広い。また、第1リブ16および第2リブ17は、潰された後は断面台形形状になっており、潰された後でも、突出方向において根元部分が先端側より幅が広い。
【0042】
このように本形態では、回転軸40やケース20の精度や組み立て精度が極端に高くなくても、負荷が発生する方向に回転軸40を回転させた際、ケース20とロータ30との軸線L方向の隙間から流体が漏れることを容易に抑制することができる。それ故、ダンパ室11における封止状態が安定するので、便座5や便蓋6が倒れる際の時間を安定することができる。また、流体12として、粘度の低い流体12を用いることができるので、弁体50等に加わる負荷を軽減することができる。また、粘度の低い流体12であれば、比較的安価であるため、流体ダンパ装置10の低コスト化を図ることができる。
【0043】
(動作)
本形態の流体ダンパ装置10において、ロータ30(回転軸40)が軸線L周りに第1方向Aに回転すると、弁体50は、流体圧を受けて基部51を中心に矢印A0で示す方向に回転し、突出部52が第2凸部462の側に向けて移動する。その結果、突出部52の径方向外側部分は、ケース20の胴部22の内周面220に当接する。従って、弁体50および弁体支持用凸部46では、第2方向Bへの流体の移動が阻止される結果、ロータ30(回転軸40)には負荷(抗力)が加わる。このような場合でも、弁体50より一方側L1では、弁体支持用凸部46とケース20の胴部22の内周面220との間にはわずかな隙間G0が空いている。従って、弁体50および弁体支持用凸部46では、第2方向Bへの流体の移動がわずかに許容される。それ故、ロータ30(回転軸40)は、負荷が加わるものの、低速度での第1方向Aへの回転が許容される。
【0044】
これに対して、ロータ30(回転軸40)が軸線L周りに第2方向Bに回転すると、弁体50は、流体圧を受けて基部51を中心に矢印B0で示す方向に回転し、突出部52が第1凸部461の側に向けて移動する。その結果、突出部52の径方向外側部分とケース20の胴部22の内周面との間には隙間があく。従って、弁体50および弁体支持用凸部46では、第1方向Aへの流体の移動が許容される結果、ロータ30(回転軸40)には負荷が加わらない。
【0045】
ここで、仕切り用凸部23および弁体保持用凸部46は各々、周方向において同数かつ等角度間隔の複数の個所(2箇所)に設けられている。このため、ダンパ室11が複数(2つ)に区切られることになるため、大きな負荷を発生させることができる。一方、ダンパ室11を区切ると、その分、ケース20とロータ30との軸線方向の隙間から流体が漏れようとする箇所が増えることになる。しかるに本形態によれば、かかる漏れを第1リブ16および第2リブ17の形成によって抑制することができるため、ダンパ室11を複数に区切ることの不利益を解消することができる。また、弁体保持用凸部46は、周方向の幅が径方向外側より径方向内側で狭い。このため、弁体保持用凸部46が仕切り用凸部2
3の径方向内側部分(根元部分)に当接しにくいので、ロータ30の回転可能な角度を広くすることができる。
【0046】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の流体ダンパ装置10において、弁体50では、突出部52が基部51から回転軸40の径方向外側かつ回転軸40の軸線L周りの一方側(第1方向A)に向けて突出している一方、回転軸40の弁体支持部460は、第1凸部461と第2凸部462との間に基部支持部463を備えている。このため、回転軸40の回転に伴って、弁体50は、基部461を中心に回転し、開姿勢および閉姿勢となる。
【0047】
また、回転軸40の第1凸部461の径方向外側の端部465が弁体50の内側部分520に対して傾いた傾斜面464を備えており、かかる傾斜面464によって、弁体50が一方側(第1方向A)に最も傾いた開姿勢で、弁体50の内側部分520と第1凸部461の端部465(傾斜面464)との間隔が他方側(第2方向B)から一方側(第1方向A)に向かうに伴って増大している。このため、第1方向Aの側から弁体50をみたとき、弁体50が第1凸部461から露出している部分の面積が広い。従って、回転軸40が閉方向(第1方向A)に回転した際、弁体50が受ける流体圧が大きいので、基部51を中心に弁体50が閉姿勢にスムーズに移行する。
【0048】
特に本形態において、回転軸40の中心(軸線L)から傾斜面464の他方側(第2方向B)の端と内側部分520との接触位置Pに向かう仮想の直線Rと傾斜面464とがなす角度が90°以下になっている。このため、第1方向Aの側から弁体50をみたとき、弁体50が第1凸部461から露出している部分の投影面積が広い。従って、回転軸40が閉方向(第1方向A)に回転した際、弁体50が受ける流体圧が大きいので、基部51を中心に弁体50が閉姿勢にスムーズに移行する。
【0049】
また、本形態では、仮想の直線Rと傾斜面464とがなす角度が60°以下になっているため、流体と第1凸部461との間の摩擦等の影響で、弁体50が受ける流体圧の方向が分散している場合でも、回転軸40が閉方向(第1方向A)に回転した際、弁体50が受ける流体圧が大きい。それ故、基部51を中心に弁体50が閉姿勢にスムーズに移行する。
【0050】
また、弁体50の突出部52の内側部分520は、第1部分521から第2部分522までが第1凸部461の受け面466で支持される。このため、回転軸40が開方向(第2方向B)に回転した際、弁体50が第1方向Aの流体圧を受けても、弁体50が第1凸部461との接触位置を支点にして回転するという事態が発生しにくい。それ故、ロータ30を開方向に回転させたときでも、回転軸40からの弁体50の浮きを抑制することができる。