(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記造形材用ヘッドは、前記有色インク用ヘッド及び前記クリアインク用ヘッドの並びに対し、間に前記第2光源を挟む位置に配設されることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置。
前記硬化手段として、紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線を発生する紫外線光源であり、前記主走査方向において前記造形材用ヘッドに対して前記第2光源と反対側に配設される第3光源を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3Dプリンタは、供給されるデータ(例えば、造形データ及び着色データ)に応じて、様々な形状の立体物を造形できる。しかし、3Dプリンタは、通常、高価な装置である。そのため、3Dプリンタに対しては、より多様な用途に使用可能な機能が望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる液滴吐出装置及び液滴吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来、平面状の媒体(メディア)等に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタ(以下、2Dプリンタという)が広く用いられている。2Dプリンタは、通常、インクジェットヘッドから媒体へインク滴を吐出することにより、2次元の画像を印刷する。また、上記においても説明をしたように、3Dプリンタの構成としても、インクジェットヘッドを用いて造形を行う構成が知られている。
【0006】
しかし、従来、2Dプリンタ及び3Dプリンタは、それぞれ別の装置として提供されている。これは、例えば、2Dプリンタと3Dプリンタとでは、基本的な動作が様々に異なるためである。更にインクジェット方式以外の方式、例えば光硬化液をレーザーで硬化させる方式、金属粉末をレーザーで溶融固化させる方式、熱軟化性樹脂フィラメントを押し出して造形する方式があるが、これらの方式では2Dプリンタ機能を有していない。
【0007】
これに対し、本願の発明者は、インクジェット方式で動作のモードを切り換えることにより、一台の装置に、2Dプリンタの動作と、3Dプリンタの動作とを行わせることを考えた。このように構成すれば、例えば、一台の装置で2D印刷機能と3D造形機能の両方が動作可能になるだけでなく、2D印刷した媒体の上に3D造形する、或いは3D造形した造形物の表面に2D印刷する等、より多様な用途に使用することができることを見出した。すなわち、上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
(構成1)インクジェット方式でインク滴を吐出する液滴吐出装置であって、所定の条件に応じて硬化する樹脂である硬化性樹脂を含むインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、硬化性樹脂を硬化させる硬化手段と、インクジェットヘッドと対向する位置に配設される台状部材と、少なくともインクジェットヘッド及び硬化手段の動作を制御する制御部とを備え、液滴吐出装置は、
液滴吐出装置に2Dプリンタの動作を行わせるモードであり、台状部材に支持された媒体に対して印刷を行う印刷モードの動作と、
液滴吐出装置に3Dプリンタの動作を行わせるモードであり、台状部材上にインクを積層することで立体物を造形する立体物造形モードの動作とを実行可能であり、制御部は、印刷モード及び立体物造形モードのいずれかのモードを選択する指示を受け付け、選択されたモードに応じて、少なくともインクジェットヘッド及び硬化手段の動作を制御する。
【0009】
この構成において、印刷モードとは、例えば、液滴吐出装置に2Dプリンタの動作を行わせるモードである。印刷モードでの動作を行う場合、液滴吐出装置は、例えば、平面状の媒体に、2次元の画像を印刷する。また、立体物造形モードとは、例えば、液滴吐出装置に3Dプリンタの動作を行わせるモードである。立体物造形モードでの動作を行う場合、液滴吐出装置は、例えば、積層造形法により立体物を造形する。
【0010】
このように構成すれば、例えば、モードの切り換えを行い、かつ、制御部によりモードに応じた制御を行うことにより、一台の装置に、2Dプリンタの動作と、3Dプリンタの動作とを適切に行わせることができる。また、これにより、例えば、一台の装置を、より多様な用途に使用することができる。
【0011】
尚、この構成において、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式で液体を吐出する液体吐出ヘッドのことである。インクジェット方式とは、例えば、ピエゾ素子等の駆動素子を駆動することにより、ノズルからインク滴を吐出させる方式のことである。また、インクジェットヘッドは、例えば、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行うことにより、制御部に指定された位置へ、インク滴を吐出する。
【0012】
(構成2)印刷モードと、立体物造形モードとを切り換える切換手段を更に有し、制御部は、印刷モード及び立体物造形モードのいずれかのモードを選択する指示を、切換手段を介してユーザから受け付ける。このように構成すれば、例えば、液滴吐出装置の動作のモードを適切に切り換えることができる。
【0013】
尚、切換手段は、例えば、液滴吐出装置に対する操作をユーザから受け付けることにより、印刷モードと、立体物造形モードとを切り換える。切換手段としては、例えば、液滴吐出装置に対する操作をユーザから受ける操作部を用いることが考えられる。この場合、操作部は、例えば、印刷モードと、立体物造形モードとを切り換える操作を、ユーザから受け付ける。このように構成すれば、例えば、液滴吐出装置の動作のモードを適切に切り換えることができる。
【0014】
(構成3)液滴吐出装置は、凹凸を平面上に造形する凹凸造形モードを更に実行可能であり、制御部は、印刷モード、立体物造形モード、及び凹凸造形モードのいずれかのモードを選択する指示を受け付け、選択されたモードに応じて、少なくともインクジェットヘッド及び硬化手段の動作を制御する。
【0015】
凹凸造形モードは、例えば、平面状の媒体の上に、オーバーハングしない立体形状を造形するモードである。凹凸造形モードにおいて、液滴吐出装置は、造形した凹凸の表面を着色することが好ましい。これにより、液滴吐出装置は、例えば、表面を着色した凹凸を平面上に造形する。また、凹凸造形モードについては、例えば、2次元の画像の印刷と、3次元の立体物の造形との間にある2.5次元(以下、2.5Dという)の動作(2.5Dプリンタの動作)と考えることができる。
【0016】
このように構成した場合、例えば、モードの切り換えを行い、かつ、制御部によりモードに応じた制御を行うことにより、液滴吐出装置に、2.5Dプリンタの動作を更に行わせることができる。また、これにより、例えば、一台の装置を、より多様な用途に使用することができる。
【0017】
(構成4)硬化性樹脂は、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型樹脂であり、硬化手段は、紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線を発生する紫外線光源である。このように構成すれば、例えば、液滴吐出装置における各モードの動作を、より適切に行うことができる。
【0018】
(構成5)硬化性樹脂は、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型樹脂であり、制御部は、インクジェットヘッドに、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行わせ、液滴吐出装置は、インクジェットヘッドとして、それぞれ異なる色の有色のインクのインク滴を吐出する複数の有色インク用ヘッドと、透明色のインクであるクリアインクのインク滴を吐出するクリアインク用ヘッドと、少なくとも立体物造形モードが選択された場合に立体物の造形用のインクのインク滴を吐出する造形材用ヘッドとを備え、立体物造形モードが選択された場合において、少なくとも着色された立体物を造形する場合、制御部は、立体物の着色用の領域であり、立体物の外部から色彩が視認できる着色領域に対し、複数の有色インク用ヘッド及びクリアインク用ヘッドにインク滴を吐出させ、複数の有色インク用ヘッド及びクリアインク用ヘッドは、主走査方向と直交する方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設されており、液滴吐出装置は、硬化手段として、紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線を発生する紫外線光源であり、複数の有色インク用ヘッド及びクリアインク用ヘッドの並びに対して主走査方向の一方側に配設される第1光源と、紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線を発生する紫外線光源であり、複数の有色インク用ヘッド及びクリアインク用ヘッドの並びに対して主走査方向の他方側に配設される第2光源とを備え、造形材用ヘッドは、第1光源と第2光源とに挟まれる領域の外に配設される。
【0019】
複数の有色インク用ヘッドは、例えば、プロセスカラーの各色用のインクジェットヘッドである。立体物造形モードにおいて、着色領域を着色する場合、着色領域の各位置に対しては、その位置へ着色すべき色に応じた比率で、複数の有色インク用ヘッドから、各色のインク滴を吐出する。しかし、この場合、例えば有色のインクのみで着色領域を形成すると、各位置の色によって、容積あたりのインク量に差がでるおそれがある。
【0020】
これに対し、このように構成した場合、着色領域を、有色のインクのみではなく、クリアインクを更に用いて形成する。そして、この場合、クリアインク用ヘッドは、例えば、着色領域に対し、着色領域の各位置において容積当たりのインク量を補填するように、クリアインクのインク滴を吐出する。そのため、このように構成すれば、例えば、着色領域の各位置において、有色のインクとクリアインクとを合わせた総容積量を略一定にすることができる。また、これにより、より高い精度で立体物の造形及び着色を行うことができる。
【0021】
ここで、紫外線硬化型樹脂を含むインク(以下、紫外線硬化型インクという)は、紫外線の照射により硬化するまでの間、インクジェットヘッドのノズルから吐出可能な低粘度の状態にある。そのため、主走査動作時において、インク滴の着弾により形成されるインクのドットは、紫外線が照射されるまでの間、徐々に広がることになる。また、その結果、硬化後のインクのドットの径(ドットゲイン)は、着弾後、紫外線が照射されるまでの時間によって決まることになる。また、インクのドットゲインが大きくなった場合、その分だけ、インクのドットの高さは低くなる。
【0022】
しかし、例えば立体物を造形する場合において、造形に用いるインクのドットの高さが様々に異なると、高い精度で造形を行うことが難しくなる。より具体的に、例えば、立体物造形モードにおいて、複数の有色インク用ヘッド及びクリアインク用ヘッドにより着色領域へインク滴を吐出する場合、各インクジェットヘッドにより形成されるインクのドットのドットゲインの差が大きくなった場合、ドットの高さの差も大きくなり、高い精度で造形を行うことが難しくなるおそれがある。
【0023】
これに対し、上記のように構成した場合、着色領域へインク滴を吐出するインクジェットヘッドである複数の有色インク用ヘッド及びクリアインク用ヘッドについて、第1光源と第2光源との間に並べて配設することにより、主走査動作時において、着弾後、紫外線が照射されるまでの時間の差が大きくなり過ぎることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、各インクジェットヘッドにより形成されるインクのドットのドットゲインの差を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、着色された立体物の造形を高い精度でより適切に行うことができる。
【0024】
尚、第1光源と第2光源との間に並べて配設するインクジェットヘッドについて、例えば必要以上に多くのインクジェットヘッドを配設すると、第1光源と第2光源との間の距離が、その分だけ大きくなる。また、その結果、第1光源と第2光源との間に並べた複数のインクジェットヘッドの間でも、主走査動作時において、着弾後、紫外線が照射されるまでの時間の差が大きくなるおそれもある。これに対し、上記の構成においては、例えば、着色領域へインク滴を吐出しないインクジェットヘッドである造形材用ヘッドについて、第1光源と第2光源との間には配設せず、第1光源と第2光源とに挟まれる領域の外に配設している。そのため、このように構成すれば、例えば、第1光源と第2光源との間の距離が必要以上に大きくなることを適切に防ぐことができる。また、これにより、第1光源と第2光源との間に並べた複数のインクジェットヘッドについて、ドットゲインの差をより適切に抑えることができる。そのため、このように構成した場合、例えば、この点でも、着色された立体物の造形を高い精度でより適切に行うことができる。
【0025】
(構成6)造形材用ヘッドは、有色インク用ヘッド及びクリアインク用ヘッドの並びに対し、間に第2光源を挟む位置に配設される。このように構成すれば、例えば、各インクジェットヘッドを適切に配設できる。また、これにより、例えば、着色された立体物の造形を高い精度でより適切に行うことができる。
【0026】
(構成7)硬化手段として、紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線を発生する紫外線光源であり、主走査方向において造形材用ヘッドに対して第2光源と反対側に配設される第3光源を更に備える。このように構成すれば、例えば、造形材用ヘッドにより形成されるインクのドットを適切に硬化させることができる。
【0027】
尚、この構成において、各インクジェットヘッドは、主走査方向における往復の主走査動作を行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、各モードの動作を、より高速に行うことができる。
【0028】
(構成8)インクジェット方式でインク滴を吐出する液滴吐出方法であって、所定の条件に応じて硬化する樹脂である硬化性樹脂を含むインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、硬化性樹脂を硬化させる硬化手段と、インクジェットヘッドと対向する位置に配設される台状部材とを用い、台状部材に支持された媒体に対して印刷を行う印刷モードの動作、及び台状部材上にインクを積層することで立体物を造形する立体物造形モードの動作のいずれかのモードを選択する指示を受け付け、選択されたモードに応じて、少なくともインクジェットヘッド及び硬化手段の動作を制御する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、例えば、液体吐出装置を、より多様な用途に使用することができる。より具体的には、例えば、一台の液体吐出装置に、少なくとも、2Dプリンタの動作と、3Dプリンタの動作とを行わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷造形システム10について、要部の構成の一例を示す。
【0032】
本例において、印刷造形システム10は、インクジェット方式でインク滴を吐出する液滴吐出装置の一例であり、例えばユーザ(オペレータ)の指示に基づき、少なくとも、2次元の画像を印刷する動作と、立体物を造形する動作とを行う。この場合、2次元の画像を印刷する動作とは、例えば、公知のインクジェットプリンタ等の2Dプリンタが行う動作のことである。また、立体物を造形する動作とは、例えば、積層造形法により立体物5を造形する動作のことである。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて立体物を造形する方法である。また、立体物とは、例えば、三次元構造物のことである。立体物を造形する動作は、例えば公知の3Dプリンタが行う動作であってよい。また、本例において、印刷造形システム10は、更に、2次元の画像の印刷と、3次元の立体物の造形との間にある2.5次元の動作(2.5Dプリンタの動作)を更に行う。
【0033】
また、以下において詳しく説明をするように、本例において、印刷造形システム10は、ユーザの操作に応じて設定されるモード(以下、動作モードという)に従って、上記の各動作を行う。また、動作モードとして、2次元の画像を印刷するモード(以下、印刷モードという)、3次元の立体物の造形を行うモード(以下、立体物造形モードという)、及び、2.5次元の動作により凹凸形状を形成するモード(凹凸造形モード)が用いられる。これらの各動作モードでの動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0034】
また、以下の説明をする点を除き、印刷造形システム10は、公知の印刷装置又は立体物造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、印刷造形システム10は、例えば、印刷及び造形を行うための構成として、公知のインクジェットプリンタの構成の一部を変更した装置を備えてよい。例えば、印刷造形システム10の少なくとも一部は、紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる二次元画像印刷用のインクジェットプリンタの一部を変更した装置であってよい。
【0035】
本例において、印刷造形システム10は、吐出ユニット12、操作部14、プラテン16、及び制御部18を備える。吐出ユニット12は、印刷や造形に用いるインクのインク滴を吐出する部分である。本例において、吐出ユニット12は、複数のインクジェットヘッド、及び紫外線光源等を有する。また、複数のインクジェットヘッドは、紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。この場合、紫外線硬化型インクは、所定の条件に応じて硬化する樹脂である硬化性樹脂を含むインクの一例である。また、紫外線硬化型インクは、光硬化型インクの一例である。また、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。また、紫外線光源は、硬化性樹脂を硬化させる硬化手段であり、インク滴の着弾により形成されるインクのドットへ紫外線を照射することにより、インクのドットを硬化させる。吐出ユニット12の具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0036】
操作部14は、印刷造形システム10に対するユーザの操作を受け付ける部分である。操作部14は、例えば、ユーザの操作を受け付けることにより、印刷造形システム10の動作モードを切り換える切換手段として動作する。また、本例において、操作部14は、例えば、印刷造形システム10において印刷や造形等を実行する装置(以下、印刷造形システム10の本体装置という)の外部に配設されたホストPC等である。操作部14は、例えば、印刷や造形等を実行する装置の操作パネル等であってもよい。
【0037】
プラテン16は、吐出ユニット12と対向する位置に配設される台状部材である。本例において、プラテン16は、印刷造形システム10の動作モードに応じて、インク滴の吐出対象となる物体を上面に保持する。例えば、2次元の印刷モードでの動作時において、プラテン16は、印刷対象となる媒体(メディア)を上面に保持する。また、3次元の立体物造形モードでの動作時において、プラテン16は、造形中の立体物を上面に保持する。また、2.5次元の凹凸造形モードでの動作時において、プラテン16は、凹凸が造形される基台(例えば、樹脂板等の造形基台)、或いは3次元の立体物造形モードと同様に造形物を上面に保持する。
【0038】
また、本例において、プラテン16は、少なくとも、上下方向(図中のZ方向)への移動が可能に構成されている。この場合、上下方向とは、プラテン16の上面と垂直な方向のことである。また、この構成により、印刷造形システム10は、少なくとも立体物造形モード及び凹凸造形モードでの動作時において、造形の進行に応じてプラテン16を上下方向へ移動させることにより、Z方向への走査を実行する。
【0039】
制御部18は、印刷造形システム10の各部の動作を制御するための構成である。制御部18は、例えば、操作部14から受け取るユーザの指示に応じて、印刷造形システム10の各部の動作を制御する。また、本例において、制御部18は、モード制御部102、吐出制御部104、硬化制御部106、及び走査・駆動制御部108を有する。
【0040】
モード制御部102は、例えば、印刷造形システム10の動作モードの制御を実行する。より具体的に、モード制御部102は、例えば、ユーザによる動作モードの選択を操作部14を介して受け取る。また、いずれの動作モードが選択されているかに応じて、吐出制御部104、硬化制御部106、及び走査・駆動制御部108の動作を制御する。
【0041】
吐出制御部104は、吐出ユニット12における各インクジェットヘッドによるインク滴の吐出タイミングを制御する。また、硬化制御部106は、吐出ユニット12における紫外線光源の照射タイミング等を制御することにより、インクを硬化させる動作の制御を行う。
【0042】
走査・駆動制御部108は、吐出ユニット12やプラテン16を移動させる駆動源(モータ等)の動作を制御することにより、吐出ユニット12の走査動作を制御する。より具体的に、走査・駆動制御部108は、例えば、印刷する画像や、造形する立体物の形状等に応じて、吐出ユニット12に主走査動作を行わせる。この場合、吐出ユニット12に主走査動作を行わせるとは、例えば、吐出ユニット12が有するインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることである。また、主走査動作とは、例えば、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつインク滴を吐出する動作である。主走査動作における吐出ユニット12の移動は、プラテン16に対する相対的な移動であってよい。
【0043】
また、上記においても説明をしたように、少なくとも立体物造形モード及び凹凸造形モードでの動作時において、印刷造形システム10は、プラテン16を上下方向へ移動させることにより、Z方向への走査を実行する。この場合、走査・駆動制御部108は、例えば、造形の進行に応じて、吐出ユニット12から離れる方向へ、プラテン16を順次移動させる。
【0044】
尚、
図1において、モード制御部102、吐出制御部104、硬化制御部106、及び走査・駆動制御部108は、制御部18が行う動作について、機能毎に分けて示したものである。そのため、モード制御部102、吐出制御部104、硬化制御部106、及び走査・駆動制御部108は、必ずしも、物理的に互いに分離した部分でなくてもよい。例えば、制御部18は、印刷造形システム10の本体装置のCPU等であってよい。この場合、例えば予め設定されたプログラムに応じて、CPUが、モード制御部102、吐出制御部104、硬化制御部106、及び走査・駆動制御部108のそれぞれとして動作してもよい。また、モード制御部102、吐出制御部104、硬化制御部106、及び走査・駆動制御部108のそれぞれにおける少なくとも一部として、個別の制御回路等を用いてもよい。この場合、CPUは、例えば、個別の制御回路等と共に、吐出制御部104、硬化制御部106、及び走査・駆動制御部108のそれぞれとして動作する。
【0045】
また、印刷造形システム10は、図示した構成以外にも、例えば、印刷や造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。例えば、印刷造形システム10は、吐出ユニット12に副走査動作を行わせる副走査駆動部等を更に備えてもよい。この場合、副走査動作とは、例えば、プラテン16に対して相対的に、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドを移動させる動作である。
【0046】
続いて、吐出ユニット12の具体的な構成等について、説明をする。
図2は、吐出ユニット12の構成及び動作の一例について説明をする図である。
図2(a)は、吐出ユニット12の具体的な構成の一例を示す。
【0047】
本例において、吐出ユニット12は、キャリッジ200、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源220、及び平坦化ローラユニット222を有する。また、複数のインクジェットヘッドとして、複数の有色インク用ヘッド202y、202m、202c、202k(以下、有色インク用ヘッド202y〜kと記載する)、クリアインク用ヘッド208、白インク用ヘッド206、造形材用ヘッド204、サポート材用ヘッド210を有する。
【0048】
キャリッジ200は、吐出ユニット12におけるその他の構成を保持する保持部材であり、各構成を、プラテン16と対向させて保持する。また、キャリッジ200は、例えば、主走査動作時において、走査・駆動制御部108(
図1参照)の指示に応じて、各構成を保持した状態で、主走査方向(Y方向)へ移動する。
【0049】
有色インク用ヘッド202y〜k、クリアインク用ヘッド208、白インク用ヘッド206、サポート材用ヘッド210、及び造形材用ヘッド204は、インクジェット方式で硬化性樹脂のインク滴を吐出するインクジェットヘッドの一例である。また、本例において、有色インク用ヘッド202y〜k、クリアインク用ヘッド208、白インク用ヘッド206、サポート材用ヘッド210、及び造形材用ヘッド204は、例えば、紫外線硬化型インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドであり、副走査方向(X方向)における位置を揃えて、主走査方向(Y方向)へ並べて配設される。
【0050】
尚、有色インク用ヘッド202y〜k、クリアインク用ヘッド208、白インク用ヘッド206、造形材用ヘッド204、及びサポート材用ヘッド210としては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、これらのインクジェットヘッドは、プラテン16(
図1参照)と対向する面に、複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列を有する。この場合、それぞれのインクジェットヘッドにおけるノズル列は、並び方向が同一で、かつ互いに平行になる。また、主走査動作時において、ノズルが並ぶ方向と直交する主走査方向へ移動しつつ、Z方向へインク滴をそれぞれ吐出する。
【0051】
有色インク用ヘッド202y〜kは、互いに異なる色の有色のインクのインク滴をそれぞれ吐出するインクジェットヘッドである。本例において、有色インク用ヘッド202y〜kは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。この場合、YMCKの各色は、プロセスカラーの各色の一例である。吐出ユニット12の構成の変形例においては、例えば、各色の淡色や、R(赤)G(緑)B(青)やオレンジ、メタリック等の色用の有色インク用ヘッドを更に有してもよい。また、例えば用途に応じて、有色インク用ヘッドとして用いるインクジェットヘッドについて、インクの入れ替えを行ってもよい。
【0052】
クリアインク用ヘッド208は、紫外線硬化型のクリアインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。この場合、クリアインクとは、透明色(T)であるクリア色のインクである。クリアインクは、紫外線硬化型の樹脂を含み、かつ、着色剤を含まないインクであってよい。また、クリアインクは、無色透明のインクであってよい。白インク用ヘッド206は、白色(W)の紫外線硬化型インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。
【0053】
造形材用ヘッド204は、立体物の内部等の造形に用いる紫外線硬化型インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。本例において、造形材用ヘッド204は、所定の色の造形用インク(MO)のインク滴を吐出する。造形用インクは、例えば造形専用のインクであってよい。また、造形用インクとしては、例えば、白色のインク又はクリアインク等を用いることも考えられる。
【0054】
尚、本例において、造形材用ヘッド204は、例えば、立体物造形モードが選択された場合、及び、凹凸造形モードが選択された場合に使用される。一方、印刷モードが選択された場合には、使用されない。
【0055】
サポート材用ヘッド210は、造形中の立体物の周囲を支えるサポートの材料(サポート材、S)を含むインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。この場合、サポートとは、例えば、造形中の立体物の外周を囲むことで立体物を支持する積層構造物(サポート層)のことである。サポートの材料としては、立体物の造形後に水で溶解可能な水溶性の材料を用いることが好ましい。また、サポートは、造形後に除去されるものであるので、立体物の造形に用いるインクよりも紫外線による硬化度が弱く、分解し易い材料が好ましい。サポートの材料としては、例えば、サポート用の公知の材料を好適に用いることができる。
【0056】
尚、本例において、サポート材用ヘッド210は、例えば、立体物造形モードが選択された場合に使用される。一方、凹凸造形モードが選択された場合、及び、印刷モードが選択された場合には、使用されない。
【0057】
複数の紫外線光源220は、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線の光源である。また、本例において、紫外線光源220としては、UVLED(紫外LED)を用いる。紫外線光源220としては、UVLED以外に、メタルハライドランプ、又は水銀ランプ等を用いてもよい。
【0058】
また、本例において、吐出ユニット12は、複数の紫外線光源220として、図中にUVLED1〜3として示した3つの紫外線光源220を有する。このうち、UVLED1として示した紫外線光源220(以下、UVLED1という)は、第1光源の一例である。UVLED2として示した紫外線光源220(以下、UVLED2という)は、第2光源の一例である。UVLED3として示した紫外線光源220(以下、UVLED3という)は、第3光源の一例である。
【0059】
また、本例において、有色インク用ヘッド202y〜k及びクリアインク用ヘッド208は、図中に示すように、主走査方向へ連続して並べて配設されている。そして、UVLED1は、有色インク用ヘッド202y〜k及びクリアインク用ヘッド208の並びに対して主走査方向の一方側に配設される。また、UVLED2は、この並びに対して、主走査方向の他方側に配設される。
【0060】
これにより、有色インク用ヘッド202y〜k及びクリアインク用ヘッド208は、UVLED1とUVLED2との間に挟まれた領域に配設される。また、有色インク用ヘッド202y〜k及びクリアインク用ヘッド208以外のインクジェットヘッドである白インク用ヘッド206、造形材用ヘッド204、及びサポート材用ヘッド210は、UVLED1とUVLED2との間に挟まれる領域の外に配設される。
【0061】
また、この場合、白インク用ヘッド206、造形材用ヘッド204、及びサポート材用ヘッド210は、有色インク用ヘッド202y〜k及びクリアインク用ヘッド208の並びに対し、UVLED2を間に挟む位置に配設される。また、本例において、UVLED3は、白インク用ヘッド206、造形材用ヘッド204、及びサポート材用ヘッド210に対し、UVLED2と反対側に配設される。これにより、白インク用ヘッド206、造形材用ヘッド204、及びサポート材用ヘッド210は、UVLED2とUVLED3との間に挟まれた領域に配設される。尚、このように各構成を配置する理由については、後に説明をする。
【0062】
平坦化ローラユニット222は、立体物造形モードの動作時において、立体物の造形中に形成される紫外線硬化型インクの層を平坦化する。また、平坦化ローラユニット222は、凹凸造形モードの動作時においても、平坦化を行うことが好ましい。本例において、平坦化ローラユニット222は、白インク用ヘッド206、造形材用ヘッド204、及びサポート材用ヘッド210の並びと、UVLED3との間に配設される。これにより、平坦化ローラユニット222は、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドの並びに対し、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
【0063】
尚、本例において、平坦化ローラユニット222は、平坦化を実行するための平坦化機構として、例えば、インクの層の表面を平坦化するためのローラを有する。また、平坦化ローラユニット222は、吐出ユニット12全体の位置に対し、上下方向(Z方向)へ、図示を省略した駆動機構により移動可能に構成されている。そして、この機能により、例えば、平坦化ローラユニット222は、平坦化を行う場合にのみ、インクの層と接触する位置へ移動する。尚、平坦化ローラユニット222は、ローラ下端がヘッドの下端よりも下の位置に固定とし、プラテン16をZ軸方向に走査することで、平坦化を行う場合にのみ、インクの層と接触させてもよい。
【0064】
以上の構成により、吐出ユニット12は、制御部18の指示に応じて、選択された動作モードに応じた動作により、インク滴を吐出する。以下、各動作モードでの動作について、更に詳しく説明をする。最初に、立体物造形モードでの動作について、説明をする。本例において、立体物造形モードとは、例えば、プラテン16上にインクを積層することで立体物を造形する動作モードのことである。
【0065】
図2(b)は、立体物造形モードでの動作により造形する立体物5の一例を示す。立体物造形モードでの動作時において、吐出ユニット12は、例えば、サポート材用ヘッド210以外の各インクジェットヘッドからインク滴を吐出することにより、立体物5を造形する。また、サポート材用ヘッド210により、立体物5の周囲に、サポート6を形成する。
【0066】
また、立体物5を形成する動作として、より具体的に、例えば、紫外線硬化型インクの層を形成する層形成動作と、紫外線を照射することで紫外線硬化型インクの層を硬化させる硬化動作とを複数回繰り返して行う。また、これにより、吐出ユニット12は、硬化した紫外線硬化型インクの層を複数層重ねて形成する。また、着色された立体物5を造形する場合、例えば、有色インク用ヘッド202y〜kにより、立体物5の表面を着色する。
【0067】
ここで、立体物造形モードでの動作に関し、更に具体的な例として、着色された立体物5を造形する動作の一例を示す。
図3は、本例において造形される立体物5の構成の一例を示す模式図である。
図3(a)は、立体物5の垂直断面の一例を示す。
図3(b)は、立体物5の水平断面の一例を示す。
【0068】
上記においても説明をしたように、本例において、立体物造形モードの動作を行う場合、印刷造形システム10は、層形成動作及び硬化動作を繰り返し、紫外線硬化型インクの層を複数層重ねて形成することにより、立体物5を造形する。より具体的には、例えば、
図3(a)において符号5aを付して示した層を複数層重ねて形成することにより、立体物5を造形する。また、立体物5の周囲に、吐出ユニット12におけるサポート材用ヘッド210により、サポート6を形成する。これにより、印刷造形システム10は、例えば、オーバーハング部分を有する任意の形状の立体物5を造形する。
【0069】
尚、本例において立体物5を構成する各層(層5a)を形成する動作については、
図3(a)において符号5a(n)、5a(n+1)を付した層に着目して、後に更に詳しく説明をする。符号5a(n)、5a(n+1)を付した層は、例えば、下からn番目及びn+1番目の層である。
【0070】
また、本例において、印刷造形システム10は、層形成動作において、紫外線硬化型インクの層として、内部領域及び外周領域を有する層を形成する。この場合、内部領域とは、立体物5の内部を構成する領域である。外周領域とは、例えば、立体物5の外部から色彩が視認できる領域(外郭領域)である。また、本例において、印刷造形システム10は、内部領域として、内部造形領域50、内部白色領域51、及び内部クリア領域52を形成する。また、外周領域として、着色領域53及び外部クリア領域54を形成する。
【0071】
内部造形領域50は、造形される立体物5において最も内側の部分を構成する領域である。この場合、立体物5において最も内側の部分とは、例えば、層形成動作において形成する各層において、他の各領域(内部白色領域51、内部クリア領域52、着色領域53、及び外部クリア領域54)に囲まれる部分のことである。また、本例において、印刷造形システム10は、少なくとも、造形材用ヘッド204を用いて、内部造形領域50を形成する。
【0072】
尚、内部造形領域50は、立体物5において、形状の基本部分を構成する造形層として機能する領域である。内部造形領域50は、一部が空洞状の領域であってもよい。
【0073】
内部白色領域51は、内部造形領域50と隣接して内部造形領域50の周囲を囲む白色層領域である。また、立体物5の外側方向において、内部白色領域51は、内部クリア領域52を挟んで着色領域53と接する。そして、この構成により、内部白色領域51は、着色領域53を介して立体物5の外部から入射する光を反射する。このように構成すれば、例えば、着色領域53に着色された色について、減法混色による色表現を実現できる。また、これにより、例えば、着色領域53に着色する色について、立体物5の外部から適切な色彩で視認されるようにできる。
【0074】
本例において、内部白色領域51の形成は、例えば白インク用ヘッド206を用いて行う。また、内部白色領域51の色は、例えば、減法混色による色表現を実現するために十分な範囲で、白色又は白色に近い色であればよい。
【0075】
内部クリア領域52は、内部白色領域51を挟んで内部造形領域50の周囲を囲む領域であり、内側の内部白色領域51と、外側の着色領域53との間において、両領域に接する。また、本例において、内部クリア領域52の形成は、クリアインク用ヘッド208を用いて行う。内部クリア領域52を形成することにより、例えば、インクの層の平坦化時において、内部白色領域51における白色インクと、着色領域53におけるYMCKインクとが混ざることを適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、平坦化ローラユニット222による平坦化の動作をより適切に行うことができる。
【0076】
着色領域53は、内部白色領域51及び内部クリア領域52を挟んで内部造形領域50の周囲を囲む領域である。また、本例において、着色領域53は、外部クリア領域54を介して立体物5の外部から色彩を確認できる立体物5の外郭領域を構成する。
【0077】
また、印刷造形システム10は、例えば、有色インク用ヘッド202y〜kにより着色領域53へYMCKインクのインク滴を吐出することにより、着色領域53への着色を行う。この場合、制御部18は、カラー画像情報を示す画像に基づいて有色インク用ヘッド202y〜kにインク滴を吐出させることにより、有色インク用ヘッド202y〜kに、着色領域53への着色を行わせる。また、本例において、印刷造形システム10は、着色領域53へインク滴を吐出するインクジェットヘッドとして、有色インク用ヘッド202y〜kに加え、クリアインク用ヘッド208を更に用いる。これにより、印刷造形システム10は、YMCKインク及びクリアインクにより、着色領域53を形成する。
【0078】
尚、立体物5の用途等においては、例えば一部の領域に対してのみ、着色を行うこと等も考えられる。この場合、着色を行わない領域に対しては、クリアインクのみにより、着色領域53を形成してもよい。また、一部の領域に対し、着色領域53を省略してもよい。
【0079】
外部クリア領域54は、内部白色領域51、内部クリア領域52、及び着色領域53を挟んで内部造形領域50の周囲を囲む領域であり、立体物5の最外面を構成する。本例において、外部クリア領域54の形成は、クリアインク用ヘッド208を用いて行う。外部クリア領域54を形成することにより、立体物5の表面を適切に保護することができる。また、例えば、着色領域53の自然光の紫外線による退色を防止することもできる。以上のようにして、本例によれば、例えば、立体物5の造形及び着色を適切に行うことができる。
【0080】
ここで、着色領域53を着色する場合、着色領域53の各位置に対しては、その位置へ着色すべき色に応じた比率で、カラーインクであるYMCKの各色のインク滴を吐出する。この場合、着色領域53の各位置とは、例えば、近接する複数の着弾位置(着滴位置)を含む領域のことである。また、着弾位置とは、例えば、主走査動作において吐出されるインク滴の着弾位置のことである。そして、この場合、例えばカラーインクのみで着色領域53を形成すると、各位置の色によって、容積あたりのインク量に差がでるおそれがある。
【0081】
これに対し、本例においては、上記のように、着色領域53を、カラーインクのみではなく、カラーインクと、クリアインクとを用いて形成する。そして、この場合、クリアインク用ヘッド208は、例えば、着色領域53に対し、着色領域53の各位置において容積当たりのインク量を補填するように、クリアインクのインク滴を吐出する。このように構成すれば、例えば、着色領域53の各位置において、カラーインクとクリアインクとを合わせた総容積量を略一定にすることができる。そのため、本例によれば、例えば、高い精度で適切に立体物5の造形及び着色を行うことができる。
【0082】
尚、図示は省略したが、立体物造形モードでの動作を行う場合において、印刷造形システム10は、着色しない立体物5を造形してもよい。この場合、例えば、内部造形領域50に対応する領域のみで、立体物5を造形することが考えられる。また、必要に応じて、例えば、外部クリア領域54に対応する領域を有する立体物5を造形してもよい。
【0083】
続いて、立体物造形モードでの動作に関し、立体物5を構成する各層を形成する動作について、更に詳しく説明をする。本例において、吐出ユニット12におけるそれぞれのインクジェットヘッドは、例えば、主走査方向における往復の主走査動作を行う。また、往復の主走査動作のうち、一方の方向への主走査動作時のみに、平坦化ローラユニット222による平坦化動作を行う。
【0084】
尚、より具体的に、本例において、平坦化ローラユニット222による平坦化は、例えば、往路方向への主走査動作時には行わず、復路方向への主走査動作時にのみ行う。この場合、例えば平坦化ローラユニット222を移動させる駆動機構により、復路方向への主走査動作時にのみ、インクの層と平坦化ローラユニット222とを接触させる。
【0085】
また、各回の主走査動作においては、複数の紫外線光源220のうち、各インクジェットヘッドの後方側になる紫外線光源220により、紫外線を照射する。この場合、各インクジェットヘッドの後方側とは、主走査動作における移動方向における、各インクジェットの後方側のことである。
【0086】
また、各回の主走査動作の合間には、次に形成するインクの層の厚さに合わせ、所定の高さ分、上下方向(Z方向)において、プラテン16の位置を下げる。また、この場合、本例においては、平坦化ローラユニット222による平坦化で除去するインクの厚さを考慮して、プラテン16の位置を下げる。
【0087】
例えば、本例においては、往復の主走査動作を行う毎に、Z方向への走査として、プラテン16を下げる動作を行う。この場合、例えば、平坦化を行わずに主走査動作を行った場合に形成されるインクの層の厚みを2層重ねた厚さから、平坦化で除去するインクの厚さを減じた高さ分、プラテン16を移動させる。また、より具体的に、例えば、平坦化を行わずに主走査動作を行った場合に形成されるインクの層の厚みが20μm程度の場合、2層分の厚さは、40μm程度になる。そして、平坦化で除去するインクの厚さが8μm程度の場合、プラテン16を下げる距離は、例えば32μm程度となる。
【0088】
また、上記のように主走査動作と、Z方向への走査とを繰り返すことにより、例えば、着色された立体物5を適切に造形できる。また、この場合、平坦化ローラユニット222により平坦化を行う主走査動作において、平坦化ローラユニット222の下端の上下方向位置(Z方向位置)は、毎回一定になる。そのため、平坦化ローラユニット222は、毎回、平坦化の前にプラテン16を移動させた距離に応じた寸法(例えば32μm)で、インクの層を平坦化することになる。そのため、本例によれば、例えば、インクの層の平坦化を高い精度で適切に行うことができる。
【0089】
ここで、本例において形成されるインクの層の様子について、更に具体的に説明をする。
図4は、立体物造形モードを行う場合に形成されるインクの層である5a(n)層、及び5a(n+1)層のより具体的な様子の一例を示す図である。この5a(n)層、及び5a(n+1)層は、
図3(a)において符号5a(n)、及び5a(n+1)を付した層である。
【0090】
図4(a)は、5a(n)層の形成時の様子の一例を示す模式図である。本例において、5a(n)層は、例えば、往復の主走査動作のうち、往路方向への主走査動作により形成するインクの層である。この場合、主走査動作時において、吐出ユニット12は、例えば、図中の右方向へ移動しつつインク滴を吐出する。また、その結果、
図2等に示した本例の構成の吐出ユニット12を用いる場合、例えば、着色領域53においては、先ず、着色領域53へインク滴を吐出するインクジェットヘッドの中で右端に位置するクリアインク用ヘッド208が吐出するクリアインク(T)のインク滴が、着滴(着弾)する。また、その後、右側からのインクジェットヘッドの並び順に応じて、K、C、M、Yの各色のインク滴が、順番に着滴する。
【0091】
尚、
図4においては、図示の便宜上、模式的に、1滴のインク滴により形成されるインクのドットを、一つの四角形により表現している。しかし、実際の構成において、隣接するインクのドットは、例えば、少なくとも一部が重なるように形成される。そして、この場合、先に着滴したインク滴により形成されるインクのドットの上に、後で着滴するインク滴により形成されるインクのドットが重なることになる。
【0092】
また、往路方向及び復路方向への主走査動作において、吐出ユニット12は、それぞれの領域に応じたインクジェットヘッドからインク滴を吐出することにより、着色領域53の他に、図示のように、内部白色領域51、内部クリア領域52、及び外部クリア領域54を更に形成する。また、図中に三次元構造物の表面として破線で示した立体物5の表面の外側に、サポート6を形成する。
【0093】
図4(b)は、5a(n+1)層の形成時の様子の一例を示す模式図である。本例において、5a(n+1)層は、例えば、往復の主走査動作のうち、復路方向への主走査動作により形成するインクの層である。この場合、主走査動作時において、吐出ユニット12は、図中の左方向へ移動しつつインク滴を吐出する。また、その結果、本例の構成の吐出ユニット12を用い、立体物5の同じ位置へインク滴を吐出する場合、左側のインクジェットヘッドにより吐出されるインク滴から順番に、着滴することになる。より具体的には、例えば、着色領域53においては、先ず、着色領域53へインク滴を吐出するインクジェットヘッドの中で左端に位置する有色インク用ヘッド202yが吐出するインク滴が、着滴する。また、その後、左側からのインクジェットヘッドの並び順に応じて、M、C、K、Tの各色のインク滴が、順番に着滴する。すなわち、この場合、着色領域53においては、クリアインク(T)のインク滴が最後に着滴することになる。
【0094】
ここで、上記においても説明をしたように、実際の構成において、隣接するインクのドットは、例えば、少なくとも一部が重なるように形成される。そして、着滴の順序がこのようになるため、5a(n+1)層の着色領域53において、他の色よりも後で着滴するクリアインク(T)のドットは、他の色のインクのドットよりも上の位置に形成されることになる。また、少なくとも、クリアインク(T)のドットの上に、YMCKインク等の有色のインクのドットが形成されることはない。
【0095】
そして、この場合、復路方向への主走査動作時において、平坦化ローラユニット222は、主にクリアインクと接することになる。そのため、このように構成すれば、例えば、着色領域53において、YMCKインク等の有色のインクの状態を平坦化ローラユニット222により乱すことを適切に防ぐことができる。また、これにより、互いに異なる色の有色のインクが混ざり、色間滲み等が発生することを適切に防ぐことができる。更に、内部クリア領域52及び外部クリア領域54のクリアインクと接することでも、同様な効果が得られる。
【0096】
また、この場合、
図4に関連しても説明をしたように、平坦化ローラユニット222の下端の上下方向位置(Z方向位置)は、毎回一定になる。そのため、平坦化ローラユニット222は、毎回、平坦化の前にプラテン16を移動させた距離に応じた寸法(例えば32μm)で、インクの層を平坦化することになる。そのため、本例によれば、例えば、インクの層の平坦化を高い精度で適切に行うことができる。
【0097】
また、本例においては、上記のように、着色領域53へのインク滴の吐出を、有色インク用ヘッド202y〜k及びクリアインク用ヘッド208により行う。また、この場合、着色領域53のおける各位置に対し、着色すべき色に応じた比率で、有色インク用ヘッド202y〜kからインク滴を吐出する。例えば、
図4(a)においては、明るい空色に着色する場合について、着色の仕方の一例を示している。また、本例においては、更に、上記においても説明をしたように、着色領域53の各位置において容積当たりのインク量を補填するように、クリアインク用ヘッド208が、クリアインクのインク滴を吐出する。
【0098】
ここで、紫外線硬化型インクは、紫外線の照射により硬化するまでの間、インクジェットヘッドのノズルから吐出可能な低粘度の状態にある。そのため、主走査動作時において、インク滴の着弾により形成されるインクのドットは、紫外線が照射されるまでの間、徐々に広がることになる。また、その結果、硬化後のインクのドットの径(ドットゲイン)は、着弾後、紫外線が照射されるまでの時間によって決まることになる。また、インクのドットゲインが大きくなった場合、その分だけ、インクのドットの高さは低くなる。
【0099】
しかし、紫外線硬化型インクを用いて立体物を造形する場合において、硬化後のインクのドットの高さが様々に異なると、高い精度で造形を行うことが難しくなる。より具体的に、例えば、立体物造形モードにおいて、有色インク用ヘッド202y〜k及びクリアインク用ヘッド208により着色領域53へインク滴を吐出する場合において、各インクジェットヘッドにより形成されるインクのドットのドットゲインの差が大きくなった場合、高い精度で造形を行うことが難しくなるおそれがある。
【0100】
これに対し、本例においては、着色領域53へインク滴を吐出するインクジェットヘッドである有色インク用ヘッド202y〜k及びクリアインク用ヘッド208について、
図2等に示したように、UVLED1とUVLED2との間の領域に、一箇所にまとめて、並べて配設している。このように構成すれば、例えば、着色領域53に形成されるインクのドットについて、主走査動作時において、着弾後、紫外線が照射されるまでの時間の差を適切に抑えることができる。また、これにより、各インクジェットヘッドにより形成されるインクのドットのドットゲインの差を適切に抑えることができる。そのため、本例によれば、例えば、着色された立体物の造形を高い精度でより適切に行うことができる。
【0101】
尚、UVLED1とUVLED2との間に並べて配設するインクジェットヘッドについて、例えば必要以上に多くのインクジェットヘッドを配設すると、UVLED1とUVLED2との間の距離が、その分だけ大きくなる。また、その結果、UVLED1とUVLED2との間に並べた複数のインクジェットヘッドの間でも、主走査動作時において、着弾後、紫外線が照射されるまでの時間の差が大きくなるおそれもある。
【0102】
これに対し、本例においては、例えば、着色領域53へインク滴を吐出するインクジェットヘッドである有色インク用ヘッド202y〜k及びクリアインク用ヘッド208のみを、UVLED1とUVLED2との間に配設している。また、着色領域53へインク滴を吐出しないインクジェットヘッドである白インク用ヘッド206、造形材用ヘッド204、及びサポート材用ヘッド210については、UVLED1とUVLED2とに挟まれる領域の外に配設している。
【0103】
このように構成した場合、例えば、着色領域53へインク滴を吐出するインクジェットヘッドを挟む紫外線光源であるUVLED1とUVLED2との間の距離が必要以上に大きくなることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、UVLED1とUVLED2との間に並べた複数のインクジェットヘッドについて、ドットゲインの差を適切に抑えることができる。そのため、本例においては、例えば、この点でも、着色された立体物の造形を高い精度でより適切に行うことができる。
【0104】
尚、本例におけるこのような特徴について、より一般化して考えた場合、吐出ユニット12が有する複数のインクジェットヘッドについて、着色領域53へのインク滴を吐出する着色用のインクジェットヘッドのグループ(着色用ヘッド群)と、それ以外の造形用のインクジェットヘッドのグループ(造形用ヘッド群)に分けて配設し、着色用のインクジェットヘッドのグループに、有色インク用ヘッド202y〜kに加え、クリアインク用ヘッド208を含ませている構成であるともいえる。また、このような構成により、着色された立体物の造形を高い精度で行うことが可能になっているといえる。
【0105】
また、吐出ユニット12の具体的な構成については、このような特徴を有する他の構成を用いることも考えられる。この場合、UVLED等の紫外線光源220については、着色用ヘッド群と造形用ヘッド群との間に少なくとも一つを配置し、動作モードに応じて駆動することが考えられる。
【0106】
また、吐出ユニット12の具体的な構成の変形例においては、より具体的に、例えば、複数のインクジェットヘッドの配置に関し、着色用ヘッド群のインクジェットヘッドと、造形用ヘッド群のインクジェットヘッドとを、副走査方向へずらして配設すること等も考えられる。また、例えば、着色用ヘッド群に含まれるクリアインク用ヘッド208の他に、造形用ヘッド群にも、クリアインク用ヘッドを含ませてもよい。また、
図2に示した構成においては、紫外線硬化型(光硬化型)のサポート材を用いるために、サポート材用ヘッド210についても、UVLED2とUVLED3との間に配設している。しかし、紫外線硬化型以外のサポート材を用いる場合には、サポート材用ヘッド210について、UVLED2とUVLED3との間以外の位置に配設してもよい。
【0107】
また、いずれの構成の吐出ユニット12を用いる場合においても、立体物造形モードでの動作時に各インクジェットヘッドにより形成されるインクのドットの直径について、例えば、有色インク用ヘッド202y〜kにより形成されるドットの直径と、クリアインク用ヘッド208により形成されるドットの直径との差が、有色インク用ヘッド202y〜kにより形成されるドットの直径と、造形材用ヘッド204等により形成されるドットの直径との差よりも小さくなるようにすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、UVLED1とUVLED2との間に並べた複数のインクジェットヘッドについて、ドットゲインの差をより適切に抑えることができる。
【0108】
続いて、立体物造形モード以外の動作モードについて、説明をする。
図5は、立体物造形モード以外の動作モードの例を示す。
図1に関連して説明をしたように、本例において、印刷造形システム10は、立体物造形モードの動作以外に、少なくとも、印刷モードの動作と、凹凸造形モードの動作とを行う。また、複数の動作モードのそれぞれに対応した動作を行うために、本例において、制御部18は、実行すべき動作モードを選択する指示を、操作部14を介して、ユーザから受け取る。また、選択された動作モードに応じて、制御部18は、印刷造形システム10の各部の動作を制御する。
【0109】
図5(a)は、印刷モードの動作の一例を示す図である。上記においても説明をしたように、本例において、印刷モードの動作とは、例えば、プラテン16上に支持された媒体8に対して2次元の画像を印刷する動作モードである。この動作は、例えば、公知の2Dプリンタが行う動作と同一又は同様の動作であってよい。また、媒体8とは、例えば、印刷の対象となる平面状のメディアである。より具体的に、媒体8としては、例えば、用紙、フィルム、又は板材等を用いることができる。また、媒体8として、例えば、表面に凹凸を有する立体物等を用いることも考えられる。
【0110】
また、本例において、印刷モードの動作を行う場合、印刷造形システム10は、例えば、Z方向への走査は行わず、Z方向におけるプラテン16の位置を固定した状態で、媒体8への印刷を行う。この場合、プラテン16は、例えば、媒体8の厚みに合わせて、吐出ユニット12と媒体8との間の距離(吐出ギャップ)を十分に小さくするように、吐出ユニット12に近い高い位置に固定される。
【0111】
本例によれば、例えば、ユーザの指示に応じて、印刷造形システム10に対し、立体物造形モードの動作に加え、印刷モードの動作を適切に行わせることができる。また、これにより、例えば、印刷造形システム10を多様な用途に使用することができる。
【0112】
尚、より具体的な構成において、プラテン16は、例えば、媒体8を真空吸着して固定してもよい。また、例えば、媒体8をロールから順次供給し、図示しないローラ等で副走査方向へ媒体8を搬送してもよい。
【0113】
図5(b)は、凹凸造形モードの動作の一例を示す図である。上記においても説明をしたように、本例において、凹凸造形モードの動作とは、例えば、2次元の画像の印刷と、3次元の立体物の造形との間にある2.5次元の動作により凹凸形状を形成する動作である。
【0114】
また、より具体的に、凹凸造形モードの動作とは、例えば、凹凸を平面上に造形する動作であり、平面状の造形基台7の上にインク滴を吐出することにより、造形基台7の上に、オーバーハングしない立体形状を造形する。造形基台7とは、例えば、凹凸造形モードでの動作時にインク滴の吐出対象となる媒体(メディア)である。造形基台7としては、例えば、樹脂板等を好適に用いることができる。また、凹凸造形モードの動作としては、例えば、造形基台7上に、表面を着色した凹凸を形成することが考えられる。また、造形基台7上に、着色をしない凹凸を形成してもよい。
【0115】
また、本例において、凹凸造形モードの動作を行う場合、印刷造形システム10は、例えば、造形基台7上において、サポート材を用いずに造形を行う。また、造形の進行に応じてZ方向への走査を行い、プラテン16をZ方向へ移動させる。これにより、印刷造形システム10は、造形基台7上に、オーバーハングしない立体形状(凹凸)を形成する。
【0116】
尚、造形基台7としては、例えば、一部に2次元の画像が印刷された媒体を用いることも考えられる、この場合、印刷造形システム10は、例えば、
図5(b)の凹凸造形モードの動作の前に
図5(a)の印刷モードの動作を行い、造形基台7として用いられる媒体に対し、2次元の画像を印刷してもよい。また、凹凸造形モードの動作により製造される成果物としては、例えば、ジオラマやレリーフ等が考えられる。具体的には、まず媒体8に対し、少なくとも海面と平地のカラー印刷を印刷モードで行い、次に起伏のある山の部分を凹凸造形モードで行い、
図5(b)に示した2.5Dのジオラマを完成させる。この場合、印刷造形システム10は、例えば、凹凸造形モードの動作において、オーバーハングのない立体の造形と、その表面へのカラー印刷とを行う。
【0117】
本例によれば、例えば、ユーザの指示に応じて、印刷造形システム10に対し、立体物造形モード及び印刷モードの動作に加え、凹凸造形モードの動作を適切に行わせることができる。また、これにより、例えば、印刷造形システム10をより多様な用途に使用することができる。
【0118】
また、本例においては、立体物造形モード、印刷モード、及び凹凸造形モードの動作を同じ装置で行うことが可能になるため、更に多様な成果物を製造することも可能になる。例えば、印刷造形システム10により、平面画像上に、その画像に関連する構造物等を造形すること等も考えられる。また、これにより、例えば、高品質なジオラマ等を作成できる。また、立体物造形モードで造形した立体物の表面の一部に、ロゴや符号、名前の文字等を印刷すること等も考えられる。この場合、例えば立体物造形モードの動作に続けて印刷モードの動作を行うことにより、立体物の表面に対し、高い精度で印刷を行うことができる。
【0119】
尚、立体物の造形と、印刷とを別の装置で行う場合、複数の装置が必要になり、装置のコストが大きく上昇することになる。また、位置合わせが必要になり、作業コストも増大するおそれがある。これに対し、本例によれば、例えば、多様な成果物を、低いコストで適切に製造できる。
【0120】
また、立体物につけるロゴや符号、名前の文字等については、例えば
図3等を用いて説明をした方法により、着色された立体物を造形することで実現すればよいようにも思われる。しかし、この場合、印刷モードの動作により立体物の表面へ印刷を行う場合と比べ、画像の品質が低下するおそれがある。また、造形に要する時間が増大するおそれもある。これに対し、本例によれば、文字等を示す高精細な画像についても、立体物の表面に対し、より適切に印刷を行うことができる。また、これにより、高品質な立体物をより適切に造形できる。
【0121】
続いて、本例の印刷造形システム10において実行する各種の動作モードについて、更に具体的に説明をする。
図6は、印刷造形システム10において実行する各種の動作モードの例を示す。
【0122】
図6に示した動作モードの具体例(以下、実施例という)は、モード1〜5の5種類の動作モードを含む。これらのうち、モード1、2は、印刷モードの具体例である。モード3は、凹凸造形モードの具体例である。また、モード4、5は、立体物造形モードの具体例である。また、
図6においては、
図2に示した吐出ユニット12の各構成のうち、それぞれのモードで使用する構成(アクティブにする構成)を、丸印で示している。また、動作の具体的な設定に応じて使用する構成(場合によってアクティブにする構成)を、三角印で示している。また、それぞれのモードにおいて使用しない構成(インアクティブにする構成)を、バーで示している。
【0123】
尚、
図6において、Y、M、C、K、T、W、MO、Sと示す構成は、それぞれの色又は用途のインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。Rと示す構成は、平坦化ローラユニット222である。また、UVLED1〜3は、紫外線光源220である。
【0124】
以下、本実施例におけるモード1〜5の動作について、更に具体的に説明をする。最初に、印刷モードの具体例であるモード1、2の動作について、説明をする。本実施例において、モード1、2は、2次元印刷を行うモードであり、例えば、通常の紙やフィルム、板材(例えばアクリル板等)を媒体として用いて、媒体の表面にカラー印刷をする。この場合、媒体において被印刷面となる表面は、例えば、平面状である。また、媒体の表面は、例えば小さな凹凸を有する面であってもよい。また、媒体として、例えば立体物を用いることも考えられる。
【0125】
また、印刷モードの具体例のうち、モード1は、表面が白色の媒体に対して印刷(記録)を行う動作モードである。この場合、印刷造形システム10は、例えば、2次元の画像を印刷する一般的な2Dプリンタと同様に、プロセスカラー用の有色インク用ヘッド202y〜kからインク滴を吐出することにより、カラー印刷を行う。また、この場合、紫外線光源220のうち、UVLED1及びUVLED2のうちの少なくとも一方を駆動して、インクを硬化させる。また、印刷により得られる成果物について、例えば光沢やトップコートによる保護等が必要な場合には、クリアインク用ヘッド208を使用して、オーバーコート層を形成する。
【0126】
尚、UVLED1及びUVLED2については、例えば、各回の主走査動作において、両方の紫外線光源220を使用してもよい。また、例えば、主走査動作において吐出ユニット12が移動する向きに応じて、UVLED1及びUVLED2のうちの一方を使用しもよい。この場合、主走査動作での移動方向において後方側になる紫外線光源220を駆動する。また、硬化速度を上げたい場合は、例えば、UVLED3を更に駆動してもよい。
【0127】
印刷モードの具体例のうち、モード2は、白以外の色に着色された媒体に対して印刷を行うモードである。この場合、先ず、少なくともその後に有色インク用ヘッド202y〜kにより着色を行う領域に対し、白インク用ヘッド206により、白色のインク滴を吐出し、白色のインクの層を形成する。また、この場合、白色のインクの硬化は、UVLED1及びUVLED2のうちの少なくとも一方を駆動することで行う。また、その他の点については、モード1の動作と同様にして、カラー印刷を行う。尚、本実施例において、モード2の動作では、必ず、印刷がされる各領域に対し、先に白色のインク滴を吐出し、その後に、プロセスカラーのインク滴を吐出する。
【0128】
凹凸造形モードの具体例であるモード3は、2.5Dプリンタの動作(2.5次元印刷)を行う動作モードである。この場合、造形基台に対し、例えば、造形材用ヘッド204で造形用インク(MO)の層を積層することにより、造形基台上に、オーバーハングしない立体物である凹凸を形成する。また、この場合、例えば、UVLED2及びUVLED3のうちの少なくとも一方を駆動して、インクを硬化させる。尚、凹凸の造形は、例えば、白インク用ヘッド206を用いて、白色のインクにより行うこと等も考えられる。
【0129】
また、凹凸の造形後、更にカラー着色を行う場合には、例えば、造形した凹凸の外周面に対し、白インク用ヘッド206で白色のインク滴を吐出して、白色のインクの層を形成する。この白色のインクの層は、その後に形成するプロセスカラーのインクの層について、減法混色での色表現をするために必要な層である。
【0130】
また、その後、白色のインクの層に重ねて、有色インク用ヘッド202y〜kによりプロセスカラーのインク滴を吐出し、着色を行う。また、UVLED1及びUVLED2のうちの少なくとも一方を駆動して、インクを硬化させる。また、硬化速度を上げたい場合は、例えば、UVLED3を更に駆動してもよい。
【0131】
立体物造形モードの具体例であるモード4、5は、オーバーハング部分のある任意の立体物を造形するモードである。また、このうち、モード4は、造形のみを行う動作モードである。また、モード5は、造形と同時に着色を行う動作モードである。
【0132】
モード4の動作では、例えば、造形材用ヘッド204と、UVLED2及びUVLED3とを用いて、造形用インク(MO)の層を積層することで、立体物を造形する。また、造形用インク(MO)の各層の形成と同時に、必要に応じて、例えば、サポート材用ヘッド210により、オーバーハング形状の造形を可能にするためのサポート材を吐出する。更に、必要に応じて、例えば、白インク用ヘッド206により、立体物の表面に、白色のインクの層を形成する。この白色のインクの層は、例えばその後に立体物の表面を着色する場合において、減法混色での色表現をするために必要な層である。
【0133】
また、モード5の動作は、吐出ユニット12における全てのインクジェットヘッドと、3つの紫外線光源220(UVLED1〜3)を用いて、着色を行いながら立体物を造形する。この動作は、例えば、
図3及び
図4等を用いて説明をした動作である。
【0134】
また、印刷造形システム10において行う動作モードの具体例としては、モード1〜5の動作に限らず、更に他の動作モードも考えられる。例えば、白インク用ヘッド206と、UVLED2及びUVLED3とを用いて、白色の立体物を造形する動作モード等が考えられる。また、例えば、クリアインク用ヘッド208と、UVLED1及びUVLED2とを用いて、クリアインクで立体物を造形する動作モード等も考えられる。更には、例えば、クリアインク用ヘッド208と、有色インク用ヘッド202y〜kと、UVLED1及びUVLED2との組み合わせにより、任意の色の立体物を造形する動作モード等も考えられる。
【0135】
以上のように、本例においては、例えば、プロセスカラーによる印刷を行うためのインクジェットヘッドと、造形用のインクジェットヘッド等をキャリッジ用に一体に配置し、ユーザの指示に応じて制御部18により動作モードの切り換えを行うことにより、2次元カラー印刷(2D印刷)、2.5次元の造形(2.5D印刷)、及び3次元の立体物の造形(3D印刷)を、1台の装置で適切に行うことができる。また、カラー着色用のインク、及び造形用のインクとして、共に紫外線硬化型インクを使用することにより、2D印刷、2.5D印刷、及び3D印刷について、インク滴の吐出後の後処理や、紫外線光源を適切に共通化することができる。また、印刷造形システム10において、上下方向に移動可能なプラテン16を用いることで、2D印刷時の吐出ギャップの調整と、2.5D印刷及び3D印刷での積層時の厚さ方向(上下方向)の走査とを共通の構成で適切に行うことができる。そのため、本例によれば、立体物の造形等を行う一台の装置について、多様な用途に適切に使用することができる。
【0136】
また、本例においては、更に、2D印刷、2.5D印刷、及び3D印刷のそれぞれについて、適切に動作を切り換えることが可能であるため、例えば、異なる動作モードの動作を連続して行うこと等も可能になる。また、これにより、例えば、平面画像を印刷した上に、その画像に連続して構造物を造形すること等も可能になる。また、3D印刷により造形した立体物の特定箇所に対し、ロゴ等の2次元画像を後工程で印刷すること等も可能になる。そのため、本例によれば、例えば、印刷造形システム10により、多様な成果物を適切に製造できる。
【0137】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。