特許第6396733号(P6396733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6396733-油圧制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396733
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 20/00 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   F15B20/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-192969(P2014-192969)
(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公開番号】特開2016-65552(P2016-65552A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知宏
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−252037(JP,A)
【文献】 特開2008−57611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 20/00−21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにて油圧ポンプを回転させることで油圧を供給する油圧制御装置において、
油圧ポンプと負荷との間に配置した油圧センサと、
前記油圧センサからの油圧検出値と油圧指令値との差から速度指令値を出力する速度指令演算器と、
モータの速度検出値と前記速度指令値との差からトルク指令値を算出するトルク指令値演算器と、
前記トルク指令値に基づいてモータの電流を制御する電流制御部と、
前記速度指令値と、上位制御装置から指示される油圧回路の負荷の動作状況と、に基づいて油圧回路の異常の有無を検出する油圧異常検出器と、
を備え
前記油圧ポンプには、複数の負荷が並列で接続されており、
前記油圧ポンプと各負荷との間には、前記油圧ポンプに接続される負荷を切り替える切替スイッチが設けられており、
前記油圧センサは、前記油圧ポンプと前記切替スイッチとの間に一つ設けられている、
ことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1の油圧制御装置であって、
前記油圧異常検出器は、前記速度指令値に1次遅れ等フィルタ処理した値と、前記上位制御装置から指示される油圧回路の負荷の動作状況と、に基づいて油圧回路の異常の有無を検出する、ことを特徴とする油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械向けの油圧ユニットにおいて、油圧ポンプを駆動するモータの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプにモータを連結し、油圧センサ等での検出値に基づいてフィードバック制御でモータを回転させ、これにより油圧を供給する油圧ユニットにおいては、油圧センサ等を備えているため、その検出値から油圧回路の異常検出をする各種の試みがなされている。
【0003】
図4に従来技術の油圧ポンプを駆動するモータの制御装置のブロック図を示す。この油圧回路は、油圧ポンプ9と、上位制御装置1からの切替指令Ssに基づいて油圧回路を切替えるソレノイド等の切替スイッチ12a,12bと、を備え、油圧シリンダ等のアクチュエータ14a,14bを動作させる。この油圧回路では、油圧ポンプ9と切替スイッチ12a,12bとの間に取り付けられた油圧センサ10の油圧検出値Pdをフィードバックする。そして、上位制御装置1より出力された油圧指令値Pcと油圧検出値Pdとの偏差を、油圧偏差として減算器2で算出する。速度指令演算器3は、油圧偏差に基づき比例・積分制御により速度指令値Vcを出力する。
【0004】
油圧ポンプ9を回転させるために、油圧ポンプ9にはモータ8が連結されており、このモータ8には、モータ位置検出器7が取り付けられている。このモータ位置検出器7が検出した位置検出値を微分器15が微分し、モータの速度検出値Vdを出力する。そして、速度指令値Vcとモータの速度検出値Vdの偏差を減算器4により求め、速度偏差として出力する。該速度偏差に基づき、トルク指令演算器5が比例・積分制御によりトルク指令Tcを出力する。該トルク指令Tcに基づき、インバータまでを含んだ電流制御器6がモータに電流を流し、モータを制御する。さらに、油圧異常検出器17は、切替指令Ssとアクチュエータ14a,14bの間に取り付けられた油圧センサ13a,13bで検出した油圧検出値Pad,Pbdから、油圧が異常であることを検出し、上位制御装置へ異常であることを通知する。
【0005】
図5に具体的な油圧異常検出器のブロック図を示す。油圧検出値Pad,Pbdと切替指令Ssにより、セレクタ173で選択された異常検出油圧閾値Aap,Abpを比較器174により比較する。比較結果よりカウンタ175が油圧低下時間を検出する。該油圧低下時間と切替指令Ssによりセレクタ178で選択された異常検出時間閾値Aat,Abtを比較器179により比較する。アクチュエータ14aの何らかの異常でリーク量が大きい状態で動作した場合、油圧検出器Padの低下する時間が長くなる。結果、カウンタで検出した油圧低下時間が長くなり、異常検出時間Aatより長くなった場合に、閾値比較器179が異常であることを検出し、上位制御装置へ異常であることを通知し、操作者に油圧回路やアクチュエータが異常であることを知らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−195081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に示した従来技術において、油圧ポンプの故障やポンプから切替スイッチの経路等での油圧回路でリーク等が発生した場合は、異常を検出できない課題がある。また、油圧センサが多数必要となり、コストアップする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に対してなされたものであり、モータにて油圧ポンプを回転させることで油圧を供給する油圧制御装置において、油圧ポンプと負荷との間に配置した油圧センサと、前記油圧センサからの油圧検出値と油圧指令値との差から速度指令値を出力する速度指令演算器と、モータの速度検出値と前記速度指令値との差からトルク指令値を算出するトルク指令値演算器と、前記トルク指令値に基づいてモータの電流を制御する電流制御部と、前記速度指令値または前記速度指令値に1次遅れのフィルタ処理した値と、前記上位制御装置から指示される油圧回路の負荷の動作状況と、に基づいて油圧回路の異常の有無を検出する油圧異常検出器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による油圧制御装置によれば、油圧センサを増やすことなく、安価に、また、アクチュエータだけでなく油圧ポンプの故障や、油圧ポンプから切替スイッチの経路等を含んだ油圧回路全体の異常を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例の油圧異常検出器を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例の油圧異常検出器を示すブロック図である。
図4】従来技術を示すブロック図である。
図5】従来技術の油圧異常検出器を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例について説明する。従来例と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。図1に本発明の油圧制御装置のブロック図を示す。油圧異常検出器16は切替指令Ssと速度指令値Vcから、油圧が異常であることを検出し、上位制御装置へ異常であることを通知する。
【0012】
図2に本発明の具体的な油圧異常検出器のブロック図を示す。速度指令値Vcと切替指令Ssによりセレクタ164で選択された異常流量閾値161,162,163を比較器165により比較し、速度指令値Vcが異常流量閾値より大きい場合に、上位制御装置へ異常であることを通知する。
【0013】
具体的には、流量は速度指令値とほぼ同値となる。また、アクチュエータ動作時の必要流量すなわち速度指令値は予め測定できる。よって、何らかの異常でリーク量が大きい状態でアクチュエータ14aが動作した場合、圧力検出値Pdが所望の値となるようにモータを動作させるため、速度指令値が大きくなる。セレクタ164からの切替指令Ssに基づいて切替スイッチSaを動作させている際には、異常流量閾値としてアクチュエータAa用の値であるAalを選択する。そして、速度指令値が異常流量閾値Aalを超えた場合に、比較器165から上位制御装置へ異常であることが通知される。セレクタ164からの切替指令Ssに基づいて切替スイッチSbを動作させている際には、異常流量閾値としてアクチュエータAb用の値であるAblを選択する。そして、速度指令値が異常流量閾値Ablを超えた場合に、比較器165から上位制御装置へ異常であることが通知される。また、どの切替スイッチもオンさせていない場合、セレクタ164は、切替指令Ssより異常流量閾値としてアクチュエータが何も動作していない場合の値であるAを選択する。これにより、油圧ポンプの故障、油圧回路のリークが大きい場合でも、速度指令値が異常流量閾値Aを超えた場合には比較器165から上位制御装置へ異常であることが通知される。異常流量閾値Aは、アクチュエータが何も動作していない場合より少し大きな値に設定しておけば、より厳しく油圧回路の状況を確認でき、その状態で上位制御装置へ異常であることを通知でき、予防保全も可能となる。
【0014】
図3に本発明の油圧異常検出器の他のブロック図を示す。従来例と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。速度指令値をローパスフィルタ166でフィルタ処理したフィルタ処理速度指令値と異常流量閾値を比較器165により比較し、速度指令値Vcが異常流量閾値より大きい場合に、上位制御装置へ異常であることを通知する。
【0015】
具体的には、アクチュエータ動作時には急激な油圧変化、定常動作時の油圧ポンプによるリップル等により、速度検出器はある程度の振幅をもって振動する。本振動によって、速度指令値Vcも振動するため、異常流量閾値を設定する場合、過敏に異常検出しないように、大きい値を設定する必要がある。このような場合、フィルタ処理速度指令値を判定値に用いることで、より厳しくかつ正確に油圧回路の異常を検出できる。
【符号の説明】
【0016】
1 上位制御装置、2,4 減算器、3 速度指令演算器、5 トルク指令演算器、6 電流制御器、7 モータ位置検出器、8 モータ、9 油圧ポンプ、10 油圧センサ、11 タンク、12a,12b 切替スイッチ、13a,13b 油圧センサ、14a,14b アクチュエータ、15 微分器、16,17 油圧異常検出器、161,162,163 異常流量閾値、164 セレクタ、165 比較器、166 ローパスフィルタ、171,172 異常検出油圧閾値、173,178 セレクタ、174,179 比較器、175 カウンタ、176,177 異常検出時間閾値。
図1
図2
図3
図4
図5