(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
着座面を有する座部の下面に配置される座部側プレートと、設置面に設置するための脚部の上面に配置される脚部側プレートと、上記座部側プレートと上記脚部側プレートの間にあって上記座部を揺動させるための揺動手段とを備え、
上記揺動手段は、内部に流体が封入された密閉状で環状を呈する嚢状体であり、
上記嚢状体は、上記座部の揺動中心と上記環状の中心が一致するよう、上記座部側プレートと上記脚部側プレートの間に配置され、
上記嚢状体に対する押圧力を調節することにより、上記嚢状体による座部の揺動状態を調節する調節手段をさらに備えている
ことを特徴とする椅子。
上記座部が揺動することにより、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離が小さくなったときに、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離が小さくなるのを規制して上記座部の揺動を規制する規制手段を備えている
請求項2記載の椅子。
【背景技術】
【0002】
腰掛け用の椅子は、一般家庭や職場を含めて各種の施設で広く使用されている。一般に普及している椅子による着席姿勢が長時間つづくと、腰痛の原因になることが知られている。また、着席姿勢の長いデスクワークに従事し、それに運動不足が重なると、背筋などの姿勢を維持する筋肉が衰える。腰痛が起こりやすい身体になる。
【0003】
着座面が揺動するような構造にすることで、着席姿勢を維持するときに背筋等の姿勢を維持する筋肉を使い、腰痛を予防できる。このため、着座面を有する座部を揺動可能とした各種構造の椅子が考案されてきた。このような座部を揺動可能とした椅子では、使用者の好みに合わせたり危険を防止するために、揺動を規制する機構を設けることが行われる。
【0004】
座部を揺動可能とした椅子の先行技術として、例えば下記の特許文献1〜5が開示されている。
【0005】
上記特許文献1には、つぎの椅子が記載されている。
左右一対となった2組の固定弾性部材(3)によって座部の揺動を可能としている。また、少なくとも1つの固定弾性部材(3)の伸びの上限を拘束するストッパ機構(調整棒(17),調整ナット(22)およびロックナット(23))を備えている。
【0006】
上記特許文献2には、つぎの椅子が記載されている。
弾性的に支持するクッション材として機能する弾性体(30)を備えることにより、支持体(20)に対する座部体(10)の傾動運動を可能としている。また、座部体(10)の傾動運動をあらかじめ定められた最大傾斜角度までに規制するためのストッパ(15)を備えている。
【0007】
上記特許文献3には、つぎの座部の傾斜機構付き椅子が記載されている。
ユニバーサルジョイント(50)により、座部(20)を傾動可能に支持している。座部(20)と支持板(30)の間には緩衝材(70)が配置され、座部(20)が緩衝材(70)によって弾性的に支持されている。座部(20)の傾動方向(90)への相対移動は、支持板(30)上に配置された規制部材(60)によって、狙いとする位置までに規制される。
【0008】
上記特許文献4には、つぎの椅子が記載されている。
圧縮バネ(15)と弾性ゴム(16)により、後方に向かって座板(17)を弾性的に傾動できるように支持している。
【0009】
上記特許文献5には、つぎのサスペンションシートが記載されている。
運転手が着座すると、バネ定数をもつ蛇腹形状部(22)の弾性力と押圧力が釣り合うまで着座部(21)が沈む。このとき、中空部(25)内の空気の放出量が空気孔(26)によって規制され、干渉作用が働く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術はいずれも、圧縮バネや弾性ゴムの緩衝作用を利用して座部を揺動可能としたものである。例えば、腰痛を予防するために着座面を揺動させることを考えると、座面の中心を軸としてあらゆる方向に向かって均一に揺動しうる構造が求められる。ところが、バネやゴムなどの機械的な構造体では、構造体自体の弾性があらゆる方向に均一でなかったり、複数のパーツを組み合わせた状態で結果的に弾性があらゆる方向に均一にならなかったりすることがおこりうる。
【0012】
本発明の目的はつぎに示すとおり、上記課題を解決することにある。
密閉された空間内で流体が流動する作用を利用することにより、あらゆる方向に均一な特性で座部を揺動可能とする椅子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の椅子は、つぎの構成によって上記目的を達成する。
着座面を有する座部の下面に配置される座部側プレートと、設置面に設置するための脚部の上面に配置される脚部側プレートと、上記座部側プレートと上記脚部側プレートの間にあって上記座部を揺動させるための揺動手段とを備え、
上記揺動手段は、内部に流体が封入された密閉状で環状を呈する嚢状体であり、
上記嚢状体は、上記座部の揺動中心と上記環状の中心が一致するよう、上記座部側プレートと上記脚部側プレートの間に配置され
、
上記嚢状体に対する押圧力を調節することにより、上記嚢状体による座部の揺動状態を調節する調節手段をさらに備えている。
【0015】
請求項
2に記載の椅子は、請求項
1の構成に加えてつぎの構成を採用する。
上記調節手段は、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離を調節することにより、上記嚢状体に対する押圧力を調節する。
【0016】
請求項
3に記載の椅子は、請求項
2の構成に加えてつぎの構成を採用する。
上記座部が揺動することにより、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離が小さくなったときに、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離が小さくなるのを規制して上記座部の揺動を規制する規制手段を備えている。
【0017】
請求項
4に記載の椅子は、請求項
3記載の構成に加えてつぎの構成を採用する。
上記調節手段と上記規制手段の少なくともいずれかは、上記環状を呈する嚢状体の内側の領域に配置されている。
【0018】
請求項
5に記載の椅子は、請求項
4の構成に加えてつぎの構成を採用する。
上記調節手段と上記規制手段の少なくともいずれかは、上記環状の周方向において等間隔に複数配置されている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の椅子は、上記座部側プレートと上記脚部側プレートの間に、上記座部を揺動させるための揺動手段がある。上記揺動手段は、内部に流体が封入された密閉状で環状を呈する嚢状体である。上記嚢状体は、上記座部の揺動中心と上記環状の中心が一致するよう、上記座部側プレートと上記脚部側プレートの間に配置されている。
この椅子では、使用者が着座面に着座した状態で、密閉された環状の嚢状体に封入された流体は、上記座部の揺動中心を中心として自在に流動する。この流体の流動によって座部の揺動を可能としている。したがって、座部の揺動中心を中心としてあらゆる方向に均一な特性で、座部が揺動可能である。
【0020】
請求項
1に記載の椅子は、
さらに、上記調節手段で上記嚢状体に対する押圧力を調節することにより、上記嚢状体による座部の揺動状態を調節する。
上記調節手段が、上記嚢状体に対する押圧力を高くしたときと低くしたときでは、嚢状体に封入された流体の流動状態が変化し、それに伴い座部の揺動状態が変化する。使用者は、座部の揺動状態を好みに合わせて調節することができる。
【0021】
請求項
2に記載の椅子は、上記調節手段は、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離を調節することにより、上記嚢状体に対する押圧力を調節する。
上記調節手段により、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離を大きくしたときは、上記嚢状体に対する押圧力が低くなる。反対に、上記調節手段により、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離を小さくしたときは、上記嚢状体に対する押圧力が高くなる。これにより、嚢状体に封入された流体の流動状態が変化し、それに伴い座部の揺動状態が変化する。使用者は、座部の揺動状態を好みに合わせて調節することができる。
【0022】
請求項
3に記載の椅子は、上記座部が揺動することにより、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離が小さくなったときに、上記規制手段が、上記座部側プレートと上記脚部側プレートとの距離が小さくなるのを規制し、上記座部の揺動を規制する。
上記規制手段で座部の揺動を規制することにより、座部の傾斜が大きくなりすぎて使用者がずり落ちる危険を防止したり、座部の揺動の程度を使用者の好みに合わせたりすることができる。
【0023】
請求項
4に記載の椅子は、上記調節手段と上記規制手段の少なくともいずれかが、上記環状を呈する嚢状体の内側の領域に配置されている。
上記調節手段や上記規制手段を配置するスペースとして、嚢状体の内側の領域を利用する。部材の配置効率がよく、スペースが有効活用される。部材の配置スペースをいたずらに拡げることにならない。
【0024】
請求項
5に記載の椅子は、上記調節手段と上記規制手段の少なくともいずれかが、上記環状の周方向において等間隔に複数配置されている。
上記座部は、環状の周方向において等間隔に複数配置された調節手段で揺動状態が調節される。つまり、揺動を調節する力のバランスが、環状の周方向において均一化される。したがって、座部は、揺動中心を中心としてあらゆる方向に均一な特性で揺動し、その揺動は、環状の周方向においてほぼ均一に調節される。
また、上記座部は、環状の周方向において等間隔に複数配置された規制手段で揺動が規制される。つまり、揺動を規制する力のバランスが、環状の周方向において均一化される。したがって、座部は、揺動中心を中心としてあらゆる方向に均一な特性で揺動し、その揺動は、環状の周方向においてほぼ均一に規制される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1〜
図3は、本発明の第1実施形態の椅子を示す図である。
【0028】
図1(A)は座部側から要部を見た図、(B)は縦断面図、(C)は脚部側から要部を見た図である。
図2は、要部を示す分解斜視図である。
【0029】
〔全体構造〕
本実施形態の椅子は、着座面3を有する座部1の下面に配置される座部側プレート10と、設置面に設置するための脚部2の上面に配置される脚部側プレート20と、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20の間にあって上記座部1を揺動させるための揺動手段30とを備えている。
【0030】
〔座部側プレート〕
上記座部側プレート10は、上記座部1の下面に配置され取り付けられる。
この例では、上記座部側プレート10は、長方形のプレート状に形成されている。長方形の左右両側辺が上り段差状に屈曲され、それぞれ帯状の取り付け部11が形成されている。両取付け部11には、座部1を取り付けるためにボルト12を挿通させる取り付け穴13が形成されている。
【0031】
上記座部側プレート10の中央部分には、複数の挿通穴14が形成されている。この例では上記挿通穴14が4つ形成されている。上記各挿通穴14には、後述する調節手段40の一部として機能する調節ボルト41が挿通される。上記各挿通穴14は、上記揺動手段30の一部として機能する嚢状体31の内側の領域に配置されている。上記各挿通穴14は、上記座部1の揺動中心Oを中心として、周方向において等間隔に配置されている。
【0032】
〔脚部側プレート〕
上記脚部側プレート20は、上記脚部2の上面に配置され取り付けられる。
この例では、上記脚部側プレート20は、長方形のプレート状に形成されている。長方形の左右両側辺が下り段差状に屈曲され、それぞれ帯状の取り付け部21が形成されている。両取付け部21には、脚部2を取り付けるためにボルト22を挿通させる取り付け穴23が形成されている。
【0033】
上記脚部側プレート20の中央部分には、複数の挿通穴24が形成されている。この例では上記挿通穴24が4つ形成されている。上記各挿通穴24には、調節手段40の一部として機能する調節ボルト41が挿通される。上記各挿通穴24は、上記揺動手段30の一部として機能する嚢状体31の内側の領域に配置されている。上記各挿通穴24は、上記座部1の揺動中心Oを中心として、周方向において等間隔に配置されている。
【0034】
〔両プレートの位置関係〕
つまり、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20は上下対称である。上記座部1の揺動中心Oは、上記座部側プレート10の中心と一致し、上記脚部側プレート20の中心とも一致している。上記座部側プレート10の各挿通穴14と上記脚部側プレート20の各挿通穴24は同じ位置に形成されている。上記座部側プレート10の各挿通穴14と上記脚部側プレート20の各挿通穴24に、それぞれ調節ボルト41が挿通される。
【0035】
〔揺動手段〕
上記揺動手段30は、内部に流体が封入された密閉状で環状を呈する嚢状体31である。
【0036】
上記嚢状体31は、可撓性のある素材から形成され、密閉状の内部に流体を封入することができる。上記嚢状体31を構成する素材は、可撓性とともに弾性を有するものが好ましい。例えば、ゴムやエラストマー等を用いることができる。上記嚢状体31は、全体として環状を呈している。この例ではドーナツ状である。
具体的には、ゴムチューブやチューブレスタイヤなどを適用することができる。
【0037】
上記嚢状体31に封入する流体は、気体や液体を用いることができる。また、上記流体として、気体や液体より粘性の高いジェル状、クリーム状、スラリー状の物質等を用いることができる。気体の一例として空気を用いることができる。液体の一例として水を用いることができる。ジェル状、クリーム状、スラリー状の物質は、例えば高分子や無機粉末などが媒質に分散して粘性を有するものを用いることができる。
【0038】
以下の説明では、ゴム製の嚢状体31に流体として空気を封入した例を説明する。
【0039】
上記嚢状体31は、上記座部1の揺動中心Oと上記環状の中心Oが一致するよう、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20の間に配置されている。
【0040】
図1(A)(C)では、環状の嚢状体31の中心と座部1の揺動中心を符号Oで示している。
図1(B)では、環状の嚢状体31の中心と座部1の揺動中心を上下に貫く軸を符合Oで示している。
【0041】
〔調節手段〕
本実施形態の椅子は、上記嚢状体31に対する押圧力を調節することにより、上記嚢状体31による座部1の揺動状態を調節する調節手段40をさらに備えている。
【0042】
上記調節手段40は、この例では、4本の調節ボルト41と、各調節ボルトにねじ結合する調節ナット42とから構成されている。この例では、上記調節ナット42として手指での回転操作をしやすい蝶ナットを用いている。なお、
図2では、調節ボルト41と調節ナット42を各々1組しか図示していない。つまり残りの3組は記載を省略している。
【0043】
上記各調節ボルト41は、座部側プレート10の上面側から各挿通穴14に挿通され、脚部側プレート20の各挿通穴14を通って先端部が下面側に出ている。上記各調節ボルト41の先端部にそれぞれ調節ナット42がねじ込まれている。
【0044】
上記調節手段40は、上記環状を呈する嚢状体31の内側の領域に配置されている。
つまり、上記各調節ボルト41は、環状の嚢状体31の中心Oと座部1の揺動中心Oを上下に貫く軸Oに沿って、環状の嚢状体31の内側の領域を上下に貫通している。
【0045】
上記調節手段40は、上記環状の周方向において等間隔に複数配置されている。
つまり、上記各調節ボルト41は、上記軸Oを中心として、環状の周方向において等間隔に配置される。
【0046】
上記調節手段40は、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20との距離を調節することにより、上記嚢状体31に対する押圧力を調節する。
つまり、上記各調節ナット42をねじ込んでいけば、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20との距離が小さくなる。そうすると、上記嚢状体31に対する押圧力が高くなって、嚢状体31内の空気の圧力が高くなる。この状態では、使用者が座面に座ったときのクッションが硬くなり、座部の揺動は抵抗が大きくなる。
反対に、上記各調節ナット42を緩めれば、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20との距離が大きくなる。そうすると、上記嚢状体31に対する押圧力が低くなって、嚢状体31内の空気の圧力が低くなる。この状態では、使用者が座部1に着座したときのクッションが柔らかくなり、小さな抵抗で座部1が揺動する。
【0047】
〔規制手段〕
本実施形態の椅子は、上記座部1が揺動することにより、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20との距離が小さくなったときに、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20との距離が小さくなるのを規制して上記座部1の揺動を規制する規制手段50を備えている。
【0048】
具体的には、上記規制手段50として圧縮ばね50を用いている。規制手段と圧縮ばねには、同じ符号50を付して説明する。上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20に挟まれた領域で、上記圧縮ばね50を上記調節ボルト41に挿通させている。この状態で上記圧縮ばね50は、上記脚部側プレート20の上面に載っている。
【0049】
つまり、上記規制手段(圧縮ばね)50は、上記環状を呈する嚢状体31の内側の領域に配置されている。また、上記規制手段(圧縮ばね)50は、上記環状の周方向において等間隔に複数配置されている。
【0050】
上記圧縮ばね50の長さ寸法は、座部側プレート10と上記脚部側プレート20とのあいだの距離より少し短めになるよう設定されている。つまり、圧縮ばね50の上端部と座部側プレート10の間には一定の間隙がある。この間隙が、規制手段(圧縮ばね)50によって規制されずに座部1が揺動しうる範囲にあたる。
【0051】
〔動作と機能〕
図3(A)は、座部1を揺動させずに座部1に荷重が加わった状態である。
使用者が座部1に着座すると、座部1に加わる荷重で嚢状体31が押圧され、座部側プレート10と上記脚部側プレート20とのあいだの距離が小さくなる。そうすると、圧縮ばね50の上端部と座部側プレート10との間隙も小さくなる。
【0052】
図3(B)(C)は、座部1を揺動させた状態である。
さらに、座部1を揺動させると、傾斜の下側にあたる領域(図では右側である)において、嚢状体31はさらに押し潰される。嚢状対31に封入された流体は傾斜の上側に向かって流れ、傾斜の上側にあたる領域(図では左側である)において、嚢状体31は回復する。
【0053】
このとき、傾斜の下側にあたる領域(図では右側である)において、圧縮ばね50の上端部と座部側プレート10との間隙がさらに小さくなる。そして、座部1の揺動が一定以上に大きくなると、上記座部側プレート10の下面が圧縮ばね50の上端部に当接する。それ以上に座部1を揺動させようとすると、圧縮ばね50のばね力に抗しなければならず、座部1の揺動が規制される。
【0054】
〔規制部材の変形例〕
上述した例では、規制部材50が圧縮ばね50であるケースを説明した。上記規制部材50の具体例としては、これに限定するものではない。圧縮ばね50の代わりに、所定寸法に切断したパイプを使用することもできる。
【0055】
〔作用効果〕
以上のように、上記実施形態では、つぎの作用効果を奏する。
【0056】
この椅子では、使用者が着座面に着座した状態で、密閉された環状の嚢状体31に封入された流体は、上記座部1の揺動中心Oを中心として自在に流動する。この流体の流動によって座部1の揺動を可能としている。したがって、座部1の揺動中心Oを中心としてあらゆる方向に均一な特性で、座部1が揺動可能である。
【0057】
上記調節手段40が、上記嚢状体31に対する押圧力を高くしたときと低くしたときでは、嚢状体31に封入された流体の流動状態が変化し、それに伴い座部1の揺動状態が変化する。使用者は、座部1の揺動状態を好みに合わせて調節することができる。
【0058】
上記調節手段40により、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20との距離を大きくしたときは、上記嚢状体31に対する押圧力が低くなる。反対に、上記調節手段40により、上記座部側プレート10と上記脚部側プレート20との距離を小さくしたときは、上記嚢状体31に対する押圧力が高くなる。これにより、嚢状体31に封入された流体の流動状態が変化し、それに伴い座部の揺動状態が変化する。使用者は、座部1の揺動状態を好みに合わせて調節することができる。
【0059】
上記規制手段50で座部1の揺動を規制することにより、座部1の傾斜が大きくなりすぎて使用者がずり落ちる危険を防止したり、座部1の揺動の程度を使用者の好みに合わせたりすることができる。
【0060】
上記調節手段40や上記規制手段50を配置するスペースとして、嚢状体31の内側の領域を利用する。部材の配置効率がよく、スペースが有効活用される。部材の配置スペースをいたずらに拡げることにならない。
【0061】
上記座部1は、環状の周方向において等間隔に複数配置された調節手段40で揺動状態が調節される。つまり、揺動を調節する力のバランスが、環状の周方向において均一化される。したがって、座部1は、揺動中心Oを中心としてあらゆる方向に均一な特性で揺動し、その揺動は、環状の周方向においてほぼ均一に調節される。
また、上記座部1は、環状の周方向において等間隔に複数配置された規制手段50で揺動が規制される。つまり、揺動を規制する力のバランスが、環状の周方向において均一化される。したがって、座部1は、揺動中心Oを中心としてあらゆる方向に均一な特性で揺動し、その揺動は、環状の周方向においてほぼ均一に規制される。
【0062】
〔第2実施形態〕
図4および
図5は、本発明の第2実施形態を示す。
この例は、座部側プレート10と嚢状体31の間に、スライドプレート60を配置したものである。
【0063】
上記スライドプレート60は樹脂製の板で、嚢状体31の外周と同等もしくはそれより少し大きな円形に形成されている。上記スライドプレート60は、座部1の揺動中心Oおよび嚢状体31の中心軸Oに対し、その中心が一致するように配置されている。上記スライドプレート60には、上述した調節ボルト41を挿通する4つの挿通穴61が形成されている。各挿通穴61は、上記座部1の揺動中心Oを中心として、周方向において等間隔に配置されている。
【0064】
そしてこの例では、座部側プレート10には、4つの挿通穴14に替えて4つの弧状穴14Aが形成されている。上記各弧状穴14Aは、上述した挿通穴14と同様に、上記座部1の揺動中心Oを中心として、周方向において等間隔に配置されている。各弧状穴14Aは、上記座部1の揺動中心Oを中心として、周方向に沿って円弧状に開口している。各弧状穴14Aに各々、上述した調節ボルト41が挿通されている。それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0065】
この例では、嚢状体31と座部側プレート10の間にスライドプレート60を介在させている。また、座部側プレート10において、弧状穴14Aに調節ボルト41を挿通している。この構成により、脚部2、脚部側プレート20および嚢状体31に対し、座部1および座部側プレート10をスライド回動させることができる。つまり、スライドプレート60に対して座部側プレート10がスライド回動するのである。したがって、スライドプレート60の上面にフッ素樹脂などの潤滑性コーティングを施してもよい。回動角度は、弧状穴14Aの円弧の長さによって決定される。
【0066】
この例では、座部1をスライド回動させることにより、ツイスト運動を行い、さらなる腰痛予防効果が見込める。それ以外は、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0067】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態を示す。
この例は、規制手段50として弾性ゴム70を適用した例である。上記弾性ゴム70は円柱状で、上下面にねじ部71A、71Bを有する。上側のねじ部71Aが座面側プレート10の挿通穴14に挿通され、下側のねじ部71Bが脚部側プレート20の挿通穴24に挿通されている。その状態で、両ねじ部71A、71Bにはナット72が取り付けられている。それ以外は、上記第1および第2実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0068】
この例では、使用者が座部1に着座すると、座部1に加わる荷重で嚢状体31が押圧され、座部側プレート10と上記脚部側プレート20とのあいだの距離が小さくなる。そうすると、嚢状体31が押し潰され、このとき、各弾性ゴム70も圧縮される。
【0069】
座部1を揺動させると、傾斜の下側にあたる領域において、嚢状体31はさらに押し潰され、弾性ゴム70も圧縮される。傾斜の上側にあたる領域において、嚢状体31は回復し、弾性ゴム70は引っ張られる。このような弾性ゴムの作用により、座部1の揺動が規制される。それ以外は、上記第1および第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0070】
〔第4実施形態〕
図7は、本発明の第4実施形態を示す。
この例は、嚢状体31に対する押圧力を調節して嚢状体31による座部1の揺動状態を調節する調節手段として、嚢状体31を外側から締め付ける締め付けユニット80を採用した例である。
【0071】
上記締め付けユニット80は、外包部材81と締め付けコード82と、締め込みラチェット83とを備えて構成されている。
上記外包部材81は、環状の嚢状体31の上下と外側を包み、内側に開放部84を有する。上記締め付けコード82は、上記外包部材81の開放部84の両側を、締め込みラチェット83で締め込むことができるようになっている。上記締め付けコード82の一端は開放部84の上側辺に固定されている。上記締め付けコード82は、開放部84の下側辺と脚部側プレート20を貫通している。また、上記締め付けコード82の他端は締め込みラチェット83に巻き取って締め込むことができるようになっている。
【0072】
上記締め込みラチェット83を回転させて締め付けコード82の張力を強くすることで開放部84を狭くする。これにより嚢状体31を外側から締め付け、嚢状体31に対する押圧力を調節して嚢状体31による座部1の揺動状態を調節するようになっている。それ以外は、上記第1および第2実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0073】
この例では、嚢状体31を外側から締め付けることで、嚢状体31に対する押圧力を調節して嚢状体31による座部1の揺動状態を調節することができる。それ以外は、上記第1および第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0074】
〔その他の変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではない。本発明は、各種の態様に変形して実施することができ、各種の変形例を包含する趣旨である。