(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
図1は、本発明の体外循環管理装置である例えば、コントローラ10を備える体外循環装置1の主な構成を示す概略図である。
図1に示す体外循環装置1は、患者Pの血液の体外循環を行う装置であるが、この「体外循環」には「体外循環動作」と「補助循環動作」が含まれる。
「体外循環動作」は、体外循環装置1の適用対象である患者(被術者)Pの心臓に血液が循環しないため患者Pの体内でガス交換ができない場合に、この体外循環装置1により、血液の循環動作と、この血液に対するガス交換動作(酸素付加及び/又は二酸化炭素除去)を行うことである。
また、「補助循環動作」とは、体外循環装置1の適用対象である患者(被術者)Pの心臓に血液が循環し、患者Pの肺でガス交換を行える場合で、体外循環装置1によっても血液の循環動作の補助を行うことである。装置によっては血液に対するガス交換動作を行う機能を持つものもある。
【0019】
ところで、本実施の形態に係る
図1に示す体外循環装置1では、例えば、病院以外のドクターカー等で、早期に患者Pの心臓外科手術を行う場合等に用いられる。
具体的には、体外循環装置1の遠心ポンプ3を作動させ、患者Pの大腿静脈(大静脈)から脱血して、人工肺2により血液中のガス交換を行って血液の酸素加を行った後に、この血液を再び患者Pの大腿動脈(大動脈)に戻す「人工肺体外血液循環」を行う。すなわち、体外循環装置1は、心臓と肺の代行を行う装置となる。
【0020】
また、体外循環装置1は、以下のような構成となっている。
すなわち、
図1に示すように、体外循環装置1は、血液を循環させる「循環回路1R」を有し、循環回路1Rは、「人工肺2」、「遠心ポンプ3」、「ドライブモータ4」、「静脈側カテーテル(脱血側カテーテル)5」と、「動脈側カテーテル(送血側カテーテル)6」と、コントローラ10を有している。なお、遠心ポンプ3は、血液ポンプとも称し、遠心式以外のポンプも利用できる。
【0021】
そして、
図1の静脈側カテーテル(脱血側カテーテル)5は、大腿静脈に挿入されるが、その際に、不図示の穿刺用金属製の内針と一体的に大腿静脈に穿刺され、その後内針を抜きとって留置されるのが、
図2に示す「脱血側留置針20」である。
また、動脈側カテーテル(送血側カテーテル)6は、大腿動脈より挿入されるが、その際に、その際に、不図示の穿刺用金属製の内針と一体的に大腿動脈に穿刺され、その後内針を抜きとって留置されるのが、
図3に示す「送血側留置針30」である。
図2は、脱血側留置針20を示す概略図であり、
図3は、送血側留置針30を示す概略図である。
【0022】
静脈側カテーテル5は、脱血チューブ11を用いて遠心ポンプ3に接続されている。脱血チューブ(「脱血ライン」とも称す。)11は、血液を送る管路である。
ドライブモータ4がコントローラ10の指令SGにより遠心ポンプ3を操作させると、遠心ポンプ3は、脱血チューブ11から脱血して人工肺2に通した血液を、送血チューブ12(「送液ライン」とも称する。)を介して患者Pに戻す構成となっている。
【0023】
人工肺2は、遠心ポンプ3と送血チューブ12の間に配置されている。人工肺2は、
図1に示すように酸素ガスを導入し、この血液に対するガス交換動作(酸素付加及び/又は二酸化炭素除去)を行う。
人工肺2は、例えば、膜型人工肺であるが、特に好ましくは中空糸膜型人工肺を用いる。送血チューブ12は、人工肺2と動脈側カテーテル6を接続している管路である。
脱血チューブ11と送血チューブ12は、例えば、塩化ビニル樹脂やシリコーンゴム等の透明性が高く、可撓性を有する合成樹脂製の管路が使用できる。
脱血チューブ11内では、血液はV方向に流れ、送血チューブ12内では、血液はW方向に流れる。
【0024】
また、体外循環装置1は、その脱血チューブ11に「流量センサ14」を有している。この流量センサ14は、脱血チューブ11を通る血液の流量値を測定するセンサであり、流量値の異常を検知するためのセンサである。
流量値の異常は、循環管路1Rのチューブのキンク、ドライブモータ4及び遠心ポンプ3の回転数が低下、圧力損失の増大等で生じ、循環管路1R内の血液の循環不良を発生させ、これにより、患者に低酸素症等を招来させるおそれもある。
【0025】
このため、脱血チューブ11等内の血液に流量異常、例えば、脱血チューブ11等内の血液の閉塞等が生じたときに、かかる異常な状態のままで、体外循環装置1が動作するのを阻止するため、
図1のクランプ7(チューブ閉塞装置)が配置されている。
体外循環装置1の担当者等は、異常が発生したとき、このクランプ7を使用して緊急に閉塞し、体外循環装置1の動作を停止させることができる構成となっている。
【0026】
また、
図1の体外循環装置1は、超音波測定装置40を有し、この超音波測定装置40は、
図1に示すようにコントローラ10と通信可能に接続されている。
この超音波測定装置40は、超音波を複数回、患者Pの大腿静脈や大腿動脈に発射し、最初の反射音波と後の反射音波の受信時間等の相違を調べることで、大腿静脈や大腿動脈内の動いている血液のみを検出し、色付けをして、例えば、
図1のコントローラ10が有する表示部である例えば、「タッチパネル51」に表示する構成となっている。
具体的には、超音波測定装置40は、
図1に示すように、その一端側に、超音波を対象物に対して発射するプローブ(探触子)41を有し、このプローブ41を患者Pの大腿静脈や大腿動脈に当て、超音波を発射させ、その反射音波を受信する構成となっている。
【0027】
また、上述の「色分け」は、例えば、プローブ41に近づいて来る血流を「赤色」で示し、プローブ41から遠ざかる血流は「青色」で示す構成となっている。
図4は、プローブ41と血流との関係を示す概略説明図である。
図4に示すように、血流が色分けして表示されることになる。
【0028】
ところで、
図1のコントローラ10に配置されているタッチパネル51は、タッチパネル型ディスプレイであり、表示部である例えば、ディスプレイと、位置入力装置を組み合わせた電子部品であり、ディスプレイ上の表示に利用者が触れることで各種情報を入力できる入力装置である。
【0029】
また、
図2及び
図3に示すように、脱血側留置針20及び送血側留置針30は、それぞれ、担当者等が保持する部分である脱血側留置針保持部22及び送血側留置針保持部32を有すると共に、血管内に挿入される部分である脱血側留置針本体21及び送血側留置針本体31を有している。
そして、本実施の形態では、脱血側留置針本体21及び送血側留置針本体31には、それぞれ、標識部である例えば、略円形のマーカーMが複数配置されている。
【0030】
図2の脱血側留置針20は、脱血側留置針本体21の基端側(脱血側留置針保持部22側)に2つのマーカーMが連接(又は連続)して配置されている。
また、この2つのマーカーMと所定間隔を開けて、脱血側留置針本体21の先端側に1つのマーカーMが配置されている。
一方、
図3の送血側留置針30は、送血側留置針本体31の基端側(送血側留置針保持部32側)に4つのマーカーMが連接等して配置されている。
また、この4つのマーカーMと所定間隔を開けて、送血側留置針本体31の先端側に1つのマーカーMが配置されている。これらのマーカーMは、好ましくはレーザーによるマーキングにより、脱血側留置針本体21や送血側留置針本体31の表面の極浅い部分にマーキングでき、生体への適合性が損なわれることがない。
【0031】
したがって、これら脱血側留置針20と送血側留置針30は、担当者等が、外観上から一見して直ちに、いずれの留置針であるかを判断することができる構成となっている。
具体的には、マーカーMが2つ連接して配置されている留置針が、脱血側留置針20であり、脱血側留置針20と異なることを一瞥して視認しやすくするため、例えば、マーカーMの数を異なる数、例えば4つ連接して配置されている留置針が、送血側留置針30となる。あるいはマーカーMを異なる形状にしたり、異なる色にして、外観上区別しうるようにしてもよい。
特に、緊急時、ドクターカー等で患者Pに体外循環装置1を装着する際等は、留置針がいずれの留置針であるかを担当者等が一見して把握することができるので、従来のような取り違いが発生することを未然に防止することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、各留置針のマーカーMから、その穿刺方向も直ちに把握することができる構成となっている。
具体的には、
図2の脱血側留置針20では、連接している2つマーカーMから所定間隔を設けて配置されている1つのマーカーMの方向が穿刺方向となる。
また、
図3の送血側留置針30では、連接している4つのマーカーMから所定間隔を設けて配置されている1つのマーカーMの方向が穿刺方向となる。
【0033】
このように、本実施の形態では、当該留置針が脱血側留置針20又は送血側留置針30であるか否かのみならず、当該留置針の穿刺方向も一見して把握できる構成となっているので、緊急時に、担当者等が取り違え等を配慮して、確認する手間等を簡略化させることができる。
【0034】
図1に示す体外循環装置1のコントローラ10等は、コンピュータを有し、コンピュータは、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有し、これらは、バスを介して接続されている。
【0035】
図5は、
図1のコントローラ10の主な構成を示す概略ブロック図である。
図5に示すように、コントローラ10は、「コントローラ制御部52」を有し、コントローラ制御部52は、他の装置等と通信するための「コントローラ側通信装置53」を制御する。また、
図1に示すタッチパネル51を制御する構成となっている。
【0036】
また、コントローラ制御部52は、「コントローラ本体54」も制御する構成となっている。このコントローラ本体54は、体外循環装置1の血液の循環等を制御する装置である。また、コントローラ制御部52は、「警報装置55」も制御している。
さらに、コントローラ制御部52は、「コントローラ側第1の各種情報記憶部60」、「コントローラ側第2の各種情報記憶部70」及び「コントローラ側第3の各種情報記憶部80」も制御する。
図6乃至
図8は、それぞれ、「コントローラ側第1の各種情報記憶部60」、「コントローラ側第2の各種情報記憶部70」及び「コントローラ側第3の各種情報記憶部80」の主な内容を示す概略ブロック図であるが、これらの内容については、後述する。
【0037】
図9は、
図1の超音波測定装置40の主な構成を示す概略ブロック図である。
図9に示すように、超音波測定装置40は、「測定器制御部42」を有し、測定器制御部42は、コントローラ10等と通信するための「測定器側通信装置43」を制御する。また、
図1に示すプローブ41も制御する構成となっている。
【0038】
また、測定器制御部42は、「測定器本体44」及び各種情報を入力する「情報入力装置45」を制御する。そして、
図9に示す「カラードプラ部(プログラム)46」や「測定器側各種情報記憶部47」も制御する。これらの内容については後述する。
【0039】
図10乃至
図12は、本実施の形態にかかる体外循環装置1の主な動作例等を示す概略フローチャートである。
本実施の形態では、緊急時にドクターカー等で、
図1の体外循環装置1を使用する例で、以下説明する。
先ず、ドクターカー等に収容された患者Pに、
図1に示す静脈側カテーテル5及び動脈側カテーテル6を留置するために、担当者等は、それぞれ、
図2及び
図3に示す脱血側留置針20及び送血側留置針30を患者Pの大腿静脈及び大腿動脈に穿刺する。
このとき、既に患者Pの大腿静脈及び大腿動脈の位置及びその血流方向が明確で、
図1の超音波測定装置40を使用する必要がないときは、担当者等は、
図2及び
図3の脱血側留置針20及び送血側留置針30のマーカーMを視認し、マーカーMが2つ連接して配置されている留置針を脱血側留置針20、マーカーMが4つ連接して配置されている留置針を送血側留置針30と判断する。
【0040】
次いで、担当者等は、
図2及び
図3の脱血側留置針20及び送血側留置針30のマーカーMが連接されている部分から所定間隔を設けて配置されている1つのマーカーMへの方向を穿刺方向として、脱血側留置針20及び送血側留置針30の穿刺を行う。
このように、本実施の形態では、担当者等が脱血側留置針20及び送血側留置針30のマーカーMを視認するだけで、脱血側留置針20と送血側留置針30の取り違いや、穿刺方向の間違い等を未然に防止することができる。
したがって、特に緊急時における処置等を迅速且つ間違いなく行うことができる。
【0041】
次いで、担当者等が脱血側留置針20と送血側留置針30を患者Pの大腿静脈及び大腿動脈に穿刺する際に、
図1の超音波測定装置40を用いる場合を説明する。
先ず、担当者等は、患者Pの大腿静脈等に
図1の超音波測定装置40のプローブ41を当接させ、超音波を発生させて、大腿静脈等に対して発射し、その反射音波を検知し、画像データを、
図1のコントローラ10のタッチパネル51に表示させる。
そして、
図10のステップST(以下「ST」とする。)1では、コントローラ10の
図6に示す「マーカー検知部(プログラム)61」が動作し、
図6の「マーカー図形情報記憶部62」を参照する。
【0042】
このマーカー図形情報記憶部62は、
図2及び
図3に示すマーカーMの図形、例えば、所定の直径を有する丸型図形等の情報が記憶されている。
すなわち、マーカー検知部(プログラム)61は、このマーカー図形情報記憶部62の丸型図形に該当するマーカーMが、超音波測定器40で検知されたか否かを判断し、検出された場合は、そのマーカーMの図形情報、例えば、
図2に示すような、2つのマーカーMが連接して配置され、所定の間隔で1つのマーカーMが配置されている情報を
図6の「マーカー暫定記憶部63」に記憶する。
【0043】
ST1で、超音波測定装置40が、マーカーMを検知していないと判断したときは、担当者等が未だ、脱血側留置針20等を穿刺していないと判断し、
図10のST2へ進む。
ST2では、
図9の超音波測定装置40の「カラードプラ部(プログラム)46」が動作し、プローブ41が発射し、受信した複数の超音波の信号の差異情報から血流の流れ方向を特定し、プローブ41に近づいてくる血流を「赤色」で、遠ざかる血流を「青色」で表示可能なデータとして処理し、コントローラ10の図「血流情報記憶部71」に記憶すする。
すなわち、上述した
図4に示す画像データを生成する。
【0044】
具体的には、以下の方法で、血流の方向を特定する。
図13は、血流の方向の特定方法を説明するための概略説明図である。また、
図13には、超音波測定装置40が取得した画像が表示されている。
カラードプラ部(プログラム)46は、
図13に示すタッチパネル51の画面に表示された「画素」を順番に参照し、画素のうち「R(Red、赤)G(Green、緑)B(Blue、青)」の「R」の値が、所定の値、例えば、230以上か否かを判断し、以上の場合、当該画素を「赤色」と判断し、判断済みの点を「領域1」とする。
【0045】
次いで、「領域1」の周りの例えば、9点のRGB値を判断し、Rが230以上のときは、「領域1」の一部と判断する。さらに、このように「領域1」の一部と判断された各点の周りの9点については、Rが200以上であるか否かを判断し、200以上であるときは、同様に「領域1」と判断する。
このように、判断済みの点の周りの9点のRの値を判断し、Rが200以上となる点が無くなったときに「領域1」を確定し、「赤領域1」とする。
この赤領域1が、
図13に示す「赤領域1」である。
【0046】
同じように、他の領域を判断し、
図13の「赤領域2」及び「赤領域3」を確定させる。
また、RGBの「青(B)」についても同様に領域の確定判断を行い、
図13に示す「青領域1と「青領域2」を確定させる。
【0047】
次いで、赤領域及び青領域のうち、最も面積(画素数)の大きな領域を選択する。
図13の例では、「赤領域1」及び「青領域1」が最も面積が大きいため選択される。
そして、これら「赤領域1」及び「青領域1」の重心の座標を求める。
図13の例では、R1(Xr,Yr)、B1(Xb,Yb)で示すポイントとなる。
【0048】
赤領域1の重心(R1)及び青領域1の重心(B1)について、血流方向の正規化されたベクトルFは、次の式で示される。
F=(Xb−Xr)/√((Xb−Xr)
2+(Yb−Yr)
2)
したがって、
図13における血流の方向は、
図13に示す矢印Fの方向となる。
【0049】
次いで、
図10のST3へ進む。ST3では、コントローラ10がタッチパネル51に、血流情報記憶部71に記憶されている血流の流れ方向(
図13の矢印F)及び赤色及び青色の血流データを、
図13に示すように表示する。
【0050】
これにより、未だ、脱血側留置針20等を穿刺していない担当者等は、脱血側留置針20等を穿刺する大腿静脈等の血流の方向をタッチパネル51上で明確に視認することができるので、その流れに対応して、適切に脱血側留置針20等を穿刺することができる。
【0051】
ところで、ST1で、マーカー検知部(プログラム)61が、このマーカー図形情報記憶部62の丸型図形に該当するマーカーMを、超音波測定器40で検知されたと判断し、そのマーカーMの図形情報を
図6の「マーカー暫定記憶部63」に記憶した場合は、
図10のST4へ進む。
【0052】
ST4では、
図6の「留置針判断部(プログラム)64」が動作し、
図6の「マーカー配列情報記憶部65」を参照する。マーカー配列情報記憶部65には、脱血側留置針20及び送血用留置針30の脱血側留置針本体21及び送血用留置針本体31に形成されているマーカーMの配置情報が記憶されている。
すなわち、送血用留置針30には、連接して4個のマーカーが配列され、間隔をあけて1つのマーカーが配置され、脱血用留置針20には、連接して2個のマーカーが配列され、間隔をあけて1個のマーカーが配置されていることが記憶されている。
【0053】
したがって、留置針判断部(プログラム)64は、「マーカー暫定記憶部63」のマーカー画像データが、送血用留置針30又は脱血用留置針20に該当するか否かを判断する。
【0054】
ST4で、送血用留置針30又は脱血用留置針20に該当すると判断されたときは、ST5へ進む。
ST5では、該当する留置針のデータ(送血用留置針30又は脱血用留置針20)と、その配置状態(向き等)を
図6の「留置針種類情報配置情報記憶部66」に記憶させる。
【0055】
次いで、ST6へ進む。ST6では、留置針種類情報配置情報記憶部66に、送血用留置針30又は脱血用留置針20のデータが記憶されているか否かを判断し、いずれかのデータが記憶さている場合は、ST7へ進む。
ST7では、
図7の「留置針配置方向判断部(プログラム)72」が動作し、
図6の「留置針種類情報配置情報記憶部66」を参照し、連接されているマーカーMから間隔があいているマーカーMへの向きに当該留置針が配置されていると判断し、その向き(N)を
図7の「留置針向き情報記憶部73」に記憶する。
具体的には、この向き(N)は、
図2及び
図3で矢印Nとして示す向きである。
【0056】
本実施の形態では、例えば、以下の方法で、送血用留置針30や脱血用留置針20の向き情報を取得する。
図14乃至
図17は、送血用留置針30の向き情報の取得工程を示す概略説明図である。
先ず、
図14に示すタッチパネル51に表示される画像では、血流が上述の赤色及び青色で表示され、送血用留置針30も表示されている。
この状態では、送血用留置針30のマーカーMを正確に把握できない場合があるので、以下のような工程を実行する。
【0057】
図14の画像には赤色や青色の部分が表示され、マーカーMを把握し難いため、画像を「白黒化」する。
図15は、画像を白黒化した状態を示す概略説明図である。
次いで、
図16や
図17に示すように、画像の明るさを暗くすると、
図17の矢印Gで示す丸印の中のように、送血用留置針30のマーカーMを明確に把握することができる状態となる。
【0058】
次いで、4つの連接されているマーカーMの一つ、
図17のマーカーM1の座標(Xstart,Ystart)と、間隔をあけて配置されているマーカーM、
図17のマーカーM2の座標(Xend,Yend)と、以下の式に基づき、送血用留置針30のベクトルNを求める。
N=(Xend−Xstart,Yend−Ystart)/√((Xend−Xstart)
2+(Yend−Ystart)
2)
【0059】
次いで、ST8へ進む。ST8では、
図7の「留置針及び血流向き情報表示部(プログラム)74」が動作し、
図7の「血流情報記憶部71」の血流の流れ方向のデータ、血流の「赤色」及び「青色」のデータ及び、
図7の「留置針向き情報記憶部73」の留置針の向きデータを、コントローラ10のタッチパネル51に表示する。
【0060】
図18(a)は、患者Pに穿刺された脱血用留置針20と、その画像データを生成する超音波測定装置40の配置状態を示す概略図であり、(b)は、大腿静脈の血流の流れ方向のデータ、血流の「赤色」及び「青色」のデータ及び脱血用留置針20の向きデータの表示例を示す概略説明図である。
具体的には、
図18(b)に示すように、脱血用留置針20の穿刺方向(N)と、大腿静脈の血流方向(F)が画像、色情報及び矢印情報と共に表示される。
【0061】
図19(a)は、患者Pに穿刺された送血用留置針30と、その画像データを生成する超音波測定装置40の配置状態を示す概略図であり、(b)は、大腿動脈の血流の流れ方向のデータ、血流の「赤色」及び「青色」のデータ及び送血用留置針30の向きデータの表示例を示す概略説明図である。
具体的には、
図19(b)に示すように、送血用留置針30の穿刺方向(N)と、大腿動脈の血流方向(F)が画像、色情報及び矢印情報と共に表示される。
【0062】
また、本実施の形態では、これら血流方向(F)の矢印の図形と留置針の穿刺方向(N)を示す矢印の図形は、その相違を一見して把握できるように、異なる図形を用いている。
さらに、留置針の穿刺方向(N)を示す矢印の図形の色彩は、送血用留置針30と脱血用留置針20で、それぞれ異なる色彩となっている。
このため、当該留置針が送血用留置針30又は脱血用留置針20であるかを担当者は一見して把握することができる。
【0063】
このように、本実施の形態では、担当者は、タッチパネル51の画面を視認するだけで、患者Pに穿刺した留置針(脱血用留置針20等)が血流方向(F)との関係で適切か否かを迅速に判断することができる。
【0064】
次いで、ST9へ進む。ST9では、タッチパネル51に、留置針の配置の適正判断を求めるか否か表示される。
すなわち、例えば、患者Pの血流がほぼ停止状態で、担当者等が、穿刺した留置針の血流に対する方向が正しいか否かの判断を明確に行えない場合等や、自己の判断の確認を希望する場合等である場合に適正判断を求める。
【0065】
ST10で、留置針の配置の適正判断を求めると入力された場合は、ST11へ進む。ST11では、
図7の「内積情報生成部(プログラム)75」が動作し、
図7の血流情報記憶部71の血流の向き(F)と、留置針向き情報記憶部73の留置針の向き(N)の情報に基づき、内積情報(1乃至−1)の情報を生成し、「内積情報記憶部76」に記憶する。
【0066】
図20は、内積情報を説明するための概略説明図である。
図20の留置針の向き(N)と血流の向き(F)のそれぞれを正規化(長さを1とする)したときのベクトルの内積(IP)は以下の式で表される。
内積(IP)=|N|・|F|・COSθ
そして、NがFに対して垂直で、θが90°(度)のとき、COSθは「0」となる。
また、NとFが同一方向で、θ=0°(度)のとき、COSθは「1」となる。
逆に、NとFが反対方向で、θ=180°(度)のとき、COSθは「−1」となる。
【0067】
本実施の形態では、この内積を利用する。すなわち、留置針の向きと血流の向きが同じ方向であれば、「1」に近づき、逆に反対方向であれば、「−1」に近づくこととなるので、この内積の数値で、留置針の血流方向に対する方向を判断するものである。
【0068】
具体的には、先ず、ST11では、留置針の向き(N)と血流の向き(F)から内積情報を生成する。
例えば、
図18(b)の例では、留置針の向き(N)と血流の向き(F)のθは90°(度)以内、例えば、45°であり、COSθは「0.5」で「0」より「1」に近い数値となる。
【0069】
一方、
図21は、
図19(b)の大腿動脈の血流の流れ方向のデータと送血用留置針30の向きデータの血流の流れ方向(F)の向きを
図18(b)と同じ向きにして、送血用留置針30を示した概略図である。
図21の例では、留置針の向き(N)と血流の向き(F)のθは90°(度)超、例えば、135°であり、COSθは「−0.5」で「0」より「−1」に近い数値となる。
【0070】
そこで、ST11では、この数値「0.5」や「−0.5」等を内積情報記憶部76に記憶することとなる。
【0071】
次いで、ST12へ進む。ST12では、
図8の「内積情報判断部(プログラム)81」が動作し、
図6の「留置針種類情報配置情報記憶部66」、
図7の「内積情報記憶部76」及び
図8の「留置針適正内積情報記憶部82」を参照する。
このうち、留置針適正内積情報記憶部82には、留置針の種類に応じた内積情報が記憶されている。例えば、脱血用留置針20の場合は、血流の向きに沿って穿刺する必要があるため、内積情報が例えば「0.5乃至1」等と記憶されている。
一方、送血用留置針30の場合は、血流の向きと反対に穿刺する必要があるため、内積情報が例えば、「−0.5乃至−1」等と記憶されている。
【0072】
したがって、ST12では、留置針種類情報配置情報記憶部66から留置針の種類(脱血用留置針20等)を把握し、内積情報記憶部76から実際の数値を把握し、さらに、留置針適正内積情報記憶部82から数値の基準情報を把握することで、当該留置針の向きが適正か否かを判断することができ、この判断結果を
図8の「留置針適正判断結果情報記憶部83」に記憶することとなる。
【0073】
例えば、
図18(b)の例で説明すると、以下のようになる。
先ず、
図6の留置針種類情報配置情報記憶部66には、当該留置針が脱血用留置針20であることが記憶されている。
また、
図7の内積情報記憶部には、内積情報が「0.5」であることが記憶されている。さらに、
図8の留置針適正内積情報記憶部82には、脱血用留置針20の場合、その内積情報の基準が「0.5乃至1」であることが記憶されている。
【0074】
したがって、
図18(b)の例では、内積情報判断部(プログラム)81は、当該留置針の配置方向は「適正」と判断して、その適正との判断結果を留置針適正判断結果情報記憶部83に記憶する。
【0075】
次いで、ST13へ進む。ST13では、留置針適正判断結果情報記憶部83の判断結果、例えば、
図18(b)の例では「適正」をコントローラ10のタッチパネル51に表示する。
また、この結果が「適正」でない場合は、「適正でない」旨の表示と共に、
図5の「警報装置55」が警報を出力し、担当者等に注意を喚起する。
【0076】
したがって、本実施の形態では、担当者等が穿刺した留置針の血流に対する向きが適正か否かの判断が困難である場合等であっても、自動的にその適正程度を判断し、担当者等に報知するので、緊急等の場合であっても迅速にその適否を判断することができる。
【0077】
ところで、本発明は、上述の実施の形態に限定されない。