(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)オリザノール、並びに(B)25℃において液状である、トリアシルグリセロール(b1)、トコフェロール(b2)、及び炭化水素油(b3)から選ばれる1種又は2種以上の油剤を有効成分とし、かつ
成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))が0.8以上20以下である口腔内細菌であるPorphyromonas gingivalis(ポルフィノモナス ジンジバリス)由来のプロテアーゼ活性阻害剤。
(A)オリザノール、並びに(B)25℃において液状であるトリアシルグリセロール(b1)、トコフェロール(b2)、及び炭化水素油(b3)から選ばれる1種又は2種以上の油剤を有効成分とし、かつ成分(B)と成分(A)との質量比((B)/(A))が0.8以上20以下である口腔内粘膜保護剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔内細菌由来の酵素活性阻害剤は、(A)オリザノール、並びに(B)25℃において液状である、トリアシルグリセロール(b1)、トコフェロール(b2)、及び炭化水素油(b3)から選ばれる油剤を有効成分とする。口腔内細菌由来の酵素活性を阻害することによって、例えば、歯周病原因菌由来の酵素活性を阻害することも可能となって歯周病の予防効果を得ることができ、また、非特許文献1〜3に記載のように、歯茎や歯肉等の口腔内粘膜の細胞が破壊されることを防止することができる。したがって、特定の質量比である成分(A)及び成分(B)を有効成分とする、本発明の口腔内細菌由来の酵素活性阻害剤は、口腔内粘膜保護剤としても有効に機能し、または口腔内粘膜を効果的に保護することにより、口腔内の乾燥感の軽減効果や、口腔内のネバつきの抑制効果を高めることができるため、口腔内環境改善剤や口腔内乾燥軽減剤としても使用することができる。また、適宜その他の成分を含有させることにより、口腔内細菌由来の酵素活性阻害効果や口腔内粘膜保護効果等を有する、練り歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物、洗口液や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物として用いることもできる。
なお、本発明における口腔内細菌由来の酵素とは、口腔内細菌の代謝物であり、口腔内細菌が存在することによって口腔内で産生されるものである。
【0014】
本発明における口腔内細菌としては、Capuocytophaga属細菌群、例えば、C.sputigena, C.ochracea等;Eubacterium属細菌群、例えば、E.alactolyticum等;Treponema属細菌群、例えば、T.denticola等;Prevotella属細菌群、例えば、P.intermedia、P.denticola等;Actinomyces属細菌群、例えば、A.naeslundii, A.israelli等;Propionibacterium属細菌群、例えば、P.acnes等;Veillonella属細菌群、例えば、V.atypica等;Haemophilus属細菌群、例えば、H.parainluenza等;Porphyromonas属細菌群、例えば、P.gingivalis等;Fusobacterium属細菌群、例えば、F.nucleatum等;Streptococcus属細菌群、例えば、S.mutans、S.sobrinus、S.oralis、S.mitis、S.gordonii、S.sanguis等;Actinobacillus属細菌群、例えば、A.actinomycetemcomitans等が挙げられ、本発明の口腔内細菌由来の酵素活性阻害剤は、これらから選ばれる1種又は2種以上の口腔内細菌由来の酵素に対して有用である。
【0015】
さらに、口腔内細菌として、Streptococcus mutans(ストレプトコッカス ミュータンス)、Streptococcus sobrinus(ストレプトコッカス ソブリヌス)、Actinobacillus actinomycetemcomitan(アクチノバチルス アクチノマイセテムコミタンス)、Porphyromonas gingivalis(ポルフィノモナス ジンジバリス)、Prevotella intermedius(プレボテラ インターメディア)、Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム ヌクレアタム)、Treponema denticola(トレポネーマ デンティコーラ)、Tannerella forsythensis(タンネレラ フォーサイセンシス)等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の口腔内細菌由来の酵素に対して好適であり、さらにActinobacillus actinomycetemcomitan、Porphyromonas gingivalis、Prevotella intermedius、Treponema denticola、及び Tannerella forsythensis から選ばれる1種又は2種以上の歯周病原因菌由来の酵素に対して好適である。
【0016】
本発明において、活性阻害の対象とする口腔内細菌由来の酵素としては、アミダーゼ、ウレアーゼ、エラスターゼ、オキシダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、グリコシダーゼ、グルコサミニダーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、コアグラーゼ、コラゲナーゼ、ストレプトキナーゼ、ゼラチナーゼ、デキストラナーゼ、トロポミオシナーゼ、ヌクレアーゼ、ノイラミニダーゼ、ヒアルロニダーゼ、フルクトシルトランスフェラーゼ、プロテアーゼ、ペニシリナーゼ、ペプチダーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、リパーゼ、レシチナーゼ等が挙げられる。プロテアーゼとは、例えばシステインプロテアーゼやセリンプロテアーゼであり、具体的にはシステインプロテアーゼであるPorphyromonas gingivalisが産生するジンジパインであり、より具体的にはアルギニンジンジパイン、リジンジンジパインを意味し、又はトレポネーマ・デンティコラが産生するセリンプロテアーゼであるデンティリジンから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。かかる口腔内細菌由来の酵素としては、より好適には、歯周病原因菌由来の酵素から選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好適には、プロテアーゼであり、よりさらに好適にはジンジパインである。
【0017】
本発明における成分(A)のオリザノールは、米糠油及び米胚芽油特有に存在する生理活性物質でγ−オリザノールとも称され、植物性ステロールのフェルラ酸(3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)エステルの総称である。かかるオリザノールは、口腔内において抗炎症作用、抗酸化作用等をもたらし、歯周炎や歯周病等の予防改善効果の向上に寄与することができる。ここで、植物性ステロールとしては、トリテルペンアルコールや、トリテルペンアルコール以外の植物性ステロール、例えば、α−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、ブラシカステロール、フコステロール、イソフコステロール、スピナステロール、アベナステロール等が挙げられる。γ−オリザノールは、単一化合物として用いてもよく、混合物として用いてもよい。なかでも、成分(A)のオリザノールとしては、良好な香味をもたらす観点から、シクロアルテノ−ルフェルラ酸エステル、24−メチレンシクロアルタノールフェルラ酸エステル、シクロブラノールフェルラ酸エステル、シクロサドールフェルラ酸エステル、β−シトステロールフェルラ酸エステル、スチグマステロールフェルラ酸エステル及びカンペステロールフェルラ酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含有するものが好ましく、少なくともシクロアルテノ−ルフェルラ酸エステルを含有するものがより好ましい。γ-オリザノールの市販品としては、築野食品工業株式会社製、オリザ油化株式会社製、株式会社岡安商店製のものが挙げられる。
【0018】
成分(A)の歯肉上での有効量は、使用場面を考慮する観点から、歯肉上に適用した本発明の酵素活性阻害剤全量中に、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005%質量%以上である。
成分(A)の含有量は、かかる成分(A)の歯肉上での付着を実現する観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上である。成分(A)の含有量は、口腔内細菌由来の酵素活性阻害剤の安定性を向上し、効果を向上する観点、及び香味の観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。また、成分(A)の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.01〜0.5質量%であり、より好ましくは0.02〜0.3質量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.2質量%である。
【0019】
本発明における成分(B)は、トリアシルグリセロール(b1)、トコフェロール(b2)、及び炭化水素油(b3)から選ばれる1種又は2種以上の油剤であって、いずれも25℃において液状である。かかる成分(B)自体には、細菌由来の酵素活性阻害効果が殆どないか、或いはそれほど高くない程度であるものの、成分(A)と特定の質量比で併用することにより、成分(A)による口腔内細菌由来の酵素活性を阻害する効果を相乗的に高めることができ、しかも歯肉への成分(A)の付着性や残留性をも高めることができる。
【0020】
成分(b1)のトリアシルグリセロールとしては、例えば、シア脂、オリーブ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、及びキョウニン油等の植物油、並びにトリグリセリンと脂肪酸を用いて工業的に製造した合成トリアシルグリセロールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。成分(b1)のトリアシルグリセロールの構成脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸が混在しているものが好ましい。具体的には、構成脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリアシルグリセロール(b1―1)の含有量は、成分(A)の口腔内細菌由来の酵素活性阻害効果を向上し、口腔粘膜への吸着性向上効果と良好な香味とをバランスよく発揮する観点から、成分(b1)中に、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは92質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。また、成分(b1―1)の含有量は、成分(B)中に、好ましくは20〜95質量%であって、より好ましくは30〜92質量%であり、より好ましくは40〜90質量%である。
【0021】
成分(b1)の構成脂肪酸の炭素数は、成分(A)による口腔内細菌由来の酵素活性阻害効果向上と口腔粘膜への吸着性向上効果と良好な香味を兼ね備える観点から、好ましくは6〜24であり、より好ましくは12〜20であある。具体的には、成分(b1)は、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選ばれる脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールであるのが好ましく、すなわち、成分(b1−1)は、オレイン酸、及びリノール酸から選ばれる不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールであり、かつ成分(b1−1)以外の成分は、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選ばれる脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールであるのが好ましい。オレイン酸、及びリノール酸から選ばれる不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールの含有量は、成分(A)による口腔内細菌由来の酵素活性阻害効果向上と口腔粘膜への吸着性向上効果をより高める観点から、成分(b1−1)中に、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。また、オレイン酸、及びリノール酸から選ばれる不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールの含有量は、成分(b1−1)中に、好ましくは80〜100質量%であり、より好ましくは90〜100質量%であり、さらに好ましくは95〜100質量%である。具体的には、成分(b1)としては、成分(A)の口腔粘膜への吸着性を有効に高める観点から、シア脂及びオリーブ油から選ばれる1種又は2種が好ましい。
【0022】
成分(b2)のトコフェロールは、ビタミンEとしても知られている成分である。かかる成分(b2)としては、血行促進作用等の観点から、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ−トコフェロール;酢酸dl−α−トコフェロール等の酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール等の誘導体から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、α-トコフェロール、酢酸トコフェロールがより好ましく、酢酸dl−α−トコフェロールがさらに好ましい。
【0023】
成分(b3)の25℃で液状の炭化水素油としては、口腔内への適用性の観点、及び香味の観点から、25℃において液状である、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、流動パラフィンがより好ましい。
【0024】
なかでも、成分(B)としては、かかる成分(B)と成分(A)との混合物を有効成分としつつ、口腔内粘膜への付着性と口腔内細菌由来の酵素活性阻害効果の観点から、成分(b1)のトリアシルグリセロール、及び成分(b2)のトコフェロールから選ばれる1種又は2種の油剤が好ましく、少なくとも成分(b2)のトコフェロールを含むことが好ましく、成分(b2)のトコフェロールがより好ましい。
【0025】
成分(B)の含有量は、成分(A)による口腔内細菌由来の酵素活性阻害効果を確保し、口腔粘膜に付着可能にする観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、香味の観点、酵素活性阻害剤の安定性の観点から、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。また、成分(B)の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.05〜3質量%であり、より好ましくは0.08〜2質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
【0026】
成分(B)と成分(A)との質量比((B)/(A))は、成分(A)の口腔内細菌由来の酵素活性阻害効果を高め、口腔内粘膜保護効果を高めるとともに、口腔粘膜への吸着性をも高める観点から、0.8以上であって、好ましくは1以上であり、成分(A)の組成物中における安定性を高める観点から、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上であり、溶解性と口腔内に適用する際の香味の観点から、20以下であって、好ましくは10以下であり、より好ましくは7以下である。また、成分(B)と成分(A)との質量比((B)/(A))は、0.8〜20であって、好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜7であり、またさらに好ましくは1.5〜7であり、より好ましくは2〜7である。
【0027】
本発明の口腔内細菌由来の酵素活性阻害剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、成分(A)及び成分(B)、並びに後述する成分(C)の香料成分以外の他の油剤を含有することもできる。具体的には、25℃において固体又は半固体である成分(A)以外の油剤、融点が40℃以上である成分(A)以外の固体脂は、本発明の効果を確保する観点から、不可避的に混入する場合を除き含有しないか、或いはその含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。また、本発明の成分(B)及び香料成分以外の、25℃において液状である油剤の含有量は、本発明の効果を確保する観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
【0028】
なお、25℃において固体又は半固体である、成分(A)以外の油剤としては、カカオ脂、ヤシ油、パーム油、牛脂、硬化ヒマシ油、パラフィンワックス、セレシン、ワセリン、オゾケライト等が挙げられる。また、25℃において液状である、成分(B)及び後述する成分(C)の香料成分以外の油剤としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン等の環状性シリコーン油;デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサンシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン等のジメチルポリシロキサン;メチルフェニルシリコーン等が挙げられる。
【0029】
本発明の口腔内細菌由来の酵素活性阻害剤は、例えば歯磨組成物や液体口腔用組成物として用いる場合、香料成分(C)を含有することが好ましい。これにより、香料由来の香味を十分に付与することができるとともに、酵素活性阻害剤の良好な保存安定性を確保し、成分(A)の口腔粘膜への吸着向上効果を高めることもできる。かかる成分(C)の香料成分としては、例えば、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、シトラール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアセデヒド、シトラール、プレゴン、カルビートアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の香料成分が挙げられる。成分(C)として、上記の香料成分を含む、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、ペパーミント油等の天然香料成分、精油等を用いることもできる。また、成分(C)として、上記香料成分を含むストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料成分を用いることもできる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
成分(C)は、本発明の酵素活性阻害剤における良好な香味を実現し、成分(A)と成分(B)との併用によるこれらの成分の安定性の観点から、ユーカリオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、及びスペアミントオイルから選ばれる1種又は2種以上の精油(C1)を成分(C)中に10〜35質量%含有することが好ましく、メントール(C2)を成分(C)中に40〜70質量%含有することが好ましく、精油(C1)とメントール(C2)を成分(C)中に合計で50〜90質量%含有することが好ましい。本発明の酵素活性阻害剤における良好な香味を実現する観点から、好ましくはアネトールを成分(C)中に1〜18質量%含有し、好ましくはアニスアルデヒド、シンナミックアルデヒド、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド、ペリラアルデヒド、シトラール、及びシトロネラール等から選ばれる1種又は2種以上のアルデヒドを成分(C)中に1〜7質量%含有する。
【0031】
成分(C)の含有量は、香料由来の良好な香味を保持する観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上である。成分(C)の含有量は、他の成分とも相まって、酵素活性阻害剤の良好な保存安定性を確保し、成分(A)の口腔粘膜への吸着性を高める観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。また、成分(C)の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.1質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは0.2〜2質量%であり、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。
【0032】
成分(C)と成分(B)の含有量の質量比((C)/(B))は、成分(C)による香味が損なわれるのを有効に防止する観点から、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、口腔粘膜への成分(A)の吸着性の観点から、さらに好ましくは1以上であり、よりさらに好ましくは1.2以上である。成分(C)と成分(B)の含有量の質量比((C)/(B))は、成分(A)の口腔粘膜への吸着性を良好に保持しつつ、成分(A)の酵素活性阻害剤における安定性を確保する観点から、好ましくは5以下であり、より好ましくは4.5以下であり、さらに好ましくは4以下である。また、成分(C)と成分(B)の含有量の質量比((C)/(B))は、好ましくは0.3〜5であり、より好ましくは0.5〜4.5であり、さらに好ましくは1〜4であり、よりさらに好ましくは1.2〜4である。
【0033】
成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))は、成分(A)の口腔粘膜への吸着向上効果を良好に保持しつつ、成分(A)の酵素活性阻害剤における安定性を確保する観点、及び成分(C)による香味が損なわれるのを有効に防止する観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは5以上である。成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))は、成分(A)による薬効を十分に発揮させつつ、酵素活性阻害剤の保存安定性を確保する観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下である。また、成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは3〜15であり、さらに好ましくは5〜15である。
【0034】
本発明の口腔内細菌由来の酵素活性阻害剤は、例えば歯磨組成物や液体口腔用組成物として用いる場合、水(D)を含有するのが好ましい。本発明における成分(D)の水とは、酵素活性阻害剤に配合した精製水等だけでなく、例えば処方する際に用いる70%ソルビトール液のように、配合した各成分に含まれる水分をも含む、酵素活性阻害剤中に含まれる全水分を意味する。かかる成分(D)の水を含有することにより、良好な保形性を保持しつつ、各成分を良好に分散又は溶解させて口腔内で良好に拡散させることができる。
【0035】
例えば、本発明の酵素活性阻害剤が歯磨組成物である場合、成分(D)の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは12質量%以上である。成分(D)の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。また、成分(D)の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは8〜50質量%であり、より好ましくは10〜45質量%であり、さらに好ましくは12〜40質量%である。
【0036】
また本発明の酵素活性阻害剤が液体口腔用組成物である場合、成分(D)の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。成分(D)の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは92質量%以下である。また、成分(D)の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは60〜98質量%であり、より好ましくは70〜95質量%であり、さらに好ましくは80〜92質量%である。
【0037】
なお、本発明の酵素活性阻害剤が歯磨組成物である場合、その水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業)を用いることができる。この装置では、歯磨組成物を5gとり、無水メタノール25gにより懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0038】
本発明の酵素活性阻害剤は、例えば歯磨組成物や液体口腔用組成物として用いる場合、各成分の分散性を高めて優れた保存安定性を確保しつつ、成分(A)の口腔粘膜への吸着効果と良好な香味を兼ね備える観点から、ノニオン性界面活性剤を含有するのが好ましい。かかるノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノミリスチン酸ペンタグリセリンやステアリン酸モノグリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、モノミリスチン酸ポリグリセリルやラウリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アミンオキサイド系界面活性剤、モノ−(又はジ−)エタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレンポリプロピレングリコール等のポリグリコール、並びにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、成分(A)の口腔粘膜への吸着性を効果的に高める観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがさらに好ましい。
【0039】
ノニオン性界面活性剤の含有量は、良好な保存安定性と香味を確保する観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上である。ノニオン性界面活性剤の含有量は、成分(A)の口腔粘膜への吸着向上効果を良好に保持する観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1.2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。また、ノニオン性界面活性剤の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.05〜1.5質量%であり、より好ましくは0.1〜1.2質量%であり、さらに好ましくは0.2〜1質量%である。また、成分(A)の容器への吸着を効果的に防止する観点から、ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有しないことが好ましく、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下である。
【0040】
ノニオン性界面活性剤と成分(A)の含有量の質量比(ノニオン性界面活性剤/(A))は、香味が損なわれるのを有効に防止しつつ、成分(A)の口腔粘膜への吸着性を良好に高める観点から、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上であり、よりさらに好ましくは1以上である。ノニオン性界面活性剤と成分(A)の含有量の質量比(ノニオン性界面活性剤/(A))は、酵素活性阻害剤の良好な保存安定性を保持する観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは12以下である。また、ノニオン性界面活性剤と成分(A)の含有量の質量比(ノニオン性界面活性剤/(A))は、好ましくは0.2〜20であり、より好ましくは0.5〜15であり、さらに好ましくは0.7〜12であり、よりさらに好ましくは1〜12である。
【0041】
ノニオン性界面活性剤と成分(B)の含有量の質量比(ノニオン性界面活性剤/(B))は、成分(A)の溶解性又は分散性を高めつつ、酵素活性阻害剤の保存安定性を確保する観点、及び香味が損なわれるのを有効に防止する観点から、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.4以上である。ノニオン性界面活性剤と成分(B)の含有量の質量比(ノニオン性界面活性剤/(B))は、良好な香味を保持する観点から、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。また、ノニオン性界面活性剤と成分(B)の含有量の質量比(ノニオン性界面活性剤/(B))は、好ましくは0.2〜5であり、より好ましくは0.4〜3である。
【0042】
本発明の口腔内細菌由来の酵素活性阻害剤は、例えば歯磨組成物や液体口腔用組成物として用いる場合、さらに適度な泡立ちを付与し、良好な使用感を確保する観点から、アニオン界面活性剤を含有することもできる。これにより、良好な起泡性や泡質、優れた洗浄性を確保することができ、使用感を高めることが可能となる。かかるアニオン界面活性剤としては、例えば、アシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、及びポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらアニオン界面活性剤の疎水基のアルキル基及びアシル基は、炭素数6〜18であることが好ましく、炭素数10〜14であることがより好ましい。また、ナトリウム塩であることが好ましい。なかでも、良好な起泡性及び低刺激性等を付与して使用感を高める観点から、アシルアミノ酸塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩及びアルキル硫酸エステル塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0043】
アニオン界面活性剤の含有量は、良好な起泡性を確保する観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。アニオン界面活性剤の含有量は、製造時の脱泡性の観点、及び適度な起泡性を確保する観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である。また、アニオン界面活性剤の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.3〜3質量%であって、より好ましくは0.5〜2質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0044】
本発明の酵素活性阻害剤を歯磨組成物として用いる場合は、さらに粘結剤を含有することが好ましい。粘結剤を含有することにより、酵素活性阻害剤に適度な粘性を付与して良好な保形性をもたせ、チューブ容器やスクイズ容器などの押圧により吐出する容器に充填した際にも良好な吐出性を確保することができる。かかる粘結剤としては、例えばアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ペクチン、寒天、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム及びメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、及び寒天から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、2種以上を組み合わせて含有することがさらに好ましい。
【0045】
粘結剤の含有量は、保存安定性、保形性及び吐出性を確保する観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。粘結剤の含有量は、各成分を良好に分散又は溶解させる観点から、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。また、粘結剤の含有量は、本発明の酵素活性阻害剤中に、好ましくは0.3〜3質量%であり、より好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0046】
本発明の酵素活性阻害剤には、例えば歯磨組成物や液体口腔用組成物として用いる場合、上記成分のほか、通常かかる口腔用組成物に使用可能なその他の成分、例えば、研磨剤、発泡助剤、フッ化ナトリウムやモノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、pH調整剤、糖アルコール、保存剤等を本発明の効果が阻害されない範囲で適宜含有させることができる。
【0047】
本発明の酵素活性阻害剤の25℃における粘度は、例えば歯磨組成物や液体口腔用組成物として用いる場合、吐出性と保形性と使用感を良好に兼ね備える観点から、好ましくは1000〜5000dPa・sであり、より好ましくは1500〜4000dPa・sであり、さらに好ましくは2000〜4000dPa・sである。
なお、本発明の酵素活性阻害剤の25℃における粘度は、製造後少なくとも24時間室温で静置した酵素活性阻害剤を粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後、ヘリパス型粘度計(東機産業株式会社 TVB−10R)を用いて、ロータT−C、回転数2.5rpm、1分間の条件で測定することができる。
【0048】
本発明の酵素活性阻害剤のpHは、良好な香味や使用感を保持する観点から、好ましくは5.5以上であり、より好ましくは6以上であり、好ましくは9以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは7.5以下である。
なお、本発明の酵素活性阻害剤のpHとは、25℃においてpH電極を用いて測定した値であり、本発明の酵素活性阻害剤が歯磨組成物である場合、蒸留水を加えて酵素活性阻害剤の濃度として10質量%の水溶液に調整した後に測定した値を意味する。
【0049】
本発明の酵素活性阻害剤の製造方法としては、成分(A)、(B)及び必要に応じて成分(C)を含む油溶性成分を15℃〜40℃の温度で混合して油相1を得る工程(1)、
成分(D)等を含む水溶性成分を混合して水相1を得る工程(2)、並びに
油相1と水相1とを15℃〜40℃の温度で混合する工程(3)
を備え、工程(2)以外の工程において、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まない方法を用いるのが好ましい。これにより、各成分の分散性又は溶解性を高めつつ、良好な香味と風味を保持するとともに、成分(A)の口腔粘膜への吸着又は付着を効果的に高めることのできる組成物を得ることができる。
【0050】
工程(1)における油溶性成分は、成分(A)、(B)及び必要に応じて成分(C)を含むほか、さらに必要に応じて他の油剤も含む。工程(1)において、成分(A)、(B)及び必要に応じて成分(C)や他の油剤を混合して油相1を得る方法は、特に制限なく、常法により行うことができる。15℃〜40℃の温度で混合するとは、加熱することなく、これらの成分の撹拌等の混合を行う意味であり、好ましくは15℃〜35℃の温度で混合する。工程(1)においては、例えば組成物中における成分(C)の溶解性又は分散性を高める観点から、必要に応じてプロピレングリコール、エタノール、1,3−ブチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の溶剤を、成分(C)に対して5〜30質量%配合し混合することが好ましい。
【0051】
工程(2)における水溶性成分は、例えば成分(D)のほか、グリセリン、ソルビトール、粘結剤等の成分を含むのが好ましい。工程(2)においては、カルボキシメチルセルロースや寒天等の粘結剤を良好に分散させる観点から、粘結剤や成分(D)を含む水溶性成分を40℃を超え100℃以下、好ましくは60℃〜80℃に加熱して溶解させ、その後にかかる温度を保持したまま、必要に応じてプロピレングリコール、グリセリンやソルビトール(液)、モノフルオロリン酸等のその他の水溶性成分と混合して水相1を得ることが好ましい。得られた水相1の温度は、工程(2)を経た後、工程(3)の処理前に15℃〜40℃、好ましくは15℃〜35℃の温度とする。
【0052】
工程(3)では、工程(1)で得られた油相1と、工程(2)で得られた水相1とを15℃〜40℃の温度、好ましくは15℃〜35℃の温度で混合する。本発明の酵素活性阻害剤の製造方法では、工程(2)以外の工程において、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まないのが好ましいことから、上述のとおり、工程(2)を経た後、工程(3)の処理前においても、また工程(3)を経た後の工程においても、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まず、15℃〜40℃の温度、好ましくは15〜35℃の温度で処理を行うのがよい。
【0053】
なお、本発明の酵素活性阻害剤がノニオン界面活性剤を含有する場合には、ノニオン界面活性剤は、油相1又は水相1のいずれに配合してもよいが、製造性の観点から、油相1に配合する、すなわち工程(1)において配合することが好ましい。本発明の酵素活性阻害剤がアニオン界面活性剤や研磨剤や20℃における溶解度が40%以下の糖アルコール等の紛体を含有する場合には、工程(3)において、これらアニオン界面活性剤及び粉体を油相1及び水相1とともに配合して混合してもよく、工程(3)を経た後に配合して混合してもよいが、製造性の観点から、工程(3)において配合して混合することが好ましい。
【0054】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の酵素活性阻害剤、及び口腔内粘膜保護剤を開示する。
[1](A)オリザノール、並びに(B)25℃において液状である、トリアシルグリセロール(b1)、トコフェロール(b2)、及び炭化水素油(b3)から選ばれる1種又は2種以上の油剤を有効成分とし、かつ
成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))が0.8以上20以下である口腔内細菌由来の酵素活性阻害剤。
[2]成分(A)の歯肉上での有効量は、歯肉上に適用した本発明の酵素活性阻害剤全量中に、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005%質量%以上である上記[1]の酵素活性阻害剤。
[3]成分(A)の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である上記[1]又は[2]の酵素活性阻害剤。
【0055】
[4]構成脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリアシルグリセロール(b1−1)の含有量は、成分(b1)中に、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは92質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である上記[1]〜[3]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[5]成分(b1)の構成脂肪酸の炭素数は、好ましくは6〜24であり、より好ましくは12〜20である上記[1]〜[4]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[6]成分(b1−1)は、好ましくはオレイン酸、及びリノール酸から選ばれる不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールであり、かつ成分(b1−1)以外の成分は、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選ばれる脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールであり、或いは、オレイン酸、及びリノール酸から選ばれる不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールを、好ましくは95質量%以上含有する上記[1]〜[5]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[7]成分(b1)は、好ましくはシア脂及びオリーブ油から選ばれる1種又は2種である上記[1]〜[6]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[8]成分(b2)は、好ましくはα-トコフェロール、酢酸トコフェロールであり、より好ましくは酢酸dl−α−トコフェロールである上記[1]〜[7]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[9]成分(b3)は、好ましくは流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレンから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは流動パラフィンである上記[1]〜[8]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[10]成分(B)の含有量は、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である上記[1]〜[9]いずれか1の酵素活性阻害剤。
【0056】
[11]成分(B)と成分(A)との質量比((B)/(A))は、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは7以下である上記[1]〜[10]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[12]さらに25℃において固体又は半固体である成分(A)以外の油剤、融点が40℃以上である成分(A)以外の固体脂の含有量は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、また成分(B)及び香料成分以外の、25℃において液状である油剤の含有量は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である上記[1]〜[11]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[13]さらに香料成分(C)を含有し、かかる成分(C)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である上記[1]〜[12]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[14]成分(C)と成分(B)の含有量の質量比((C)/(B))は、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは1以上であり、よりさらに好ましくは1.2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは4.5以下であり、さらに好ましくは4以下である上記[13]の酵素活性阻害剤。
【0057】
[15]歯磨組成物である場合における水(D)の含有量は、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは12質量%以上であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である上記[1]〜[14]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[16]液体口腔用組成物である場合における水(D)の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは92質量%以下である上記[1]〜[14]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[17]好ましくはノニオン性界面活性剤を含有し、より好ましくはノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好ましくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである上記[1]〜[16]いずれか1の酵素活性阻害剤。
[18]ノニオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1.2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である上記[17]の酵素活性阻害剤。
[19]ノニオン性界面活性剤と成分(A)の含有量の質量比(ノニオン性界面活性剤/(A))は、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上であり、よりさらに好ましくは1以上であり、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは12以下である上記[17]又は[18]の酵素活性阻害剤。
[20]歯磨組成物や液体口腔用組成物である場合の25℃における粘度は、好ましくは1000〜5000dPa・sであり、より好ましくは1500〜4000dPa・sであり、さらに好ましくは2000〜4000dPa・sである上記[1]〜[19]いずれか1の酵素活性阻害剤。
【0058】
[21](A)オリザノール、並びに(B)25℃において液状であるトリアシルグリセロール(b1)、トコフェロール(b2)、及び炭化水素油(b3)から選ばれる1種又は2種以上の油剤を有効成分とし、かつ成分(B)と成分(A)との質量比((B)/(A))が0.08以上20以下である口腔内粘膜保護剤。
[22]口腔内環境改善剤である上記[21]の口腔内粘膜保護剤。
[23]口腔内細菌由来の酵素活性を阻害するための上記[1]〜[20]いずれか1の酵素活性阻害剤の使用。
[24]口腔内粘膜を保護するための上記[21]の口腔内粘膜保護剤の使用。
[25]口腔内環境を改善するための上記[21]の口腔内粘膜保護剤の使用。
[26]成分(A)、及び(B)を含む油溶性成分を15℃〜40℃の温度で混合して油相1を得る工程(1)、
水溶性成分を混合して水相1を得る工程(2)、並びに
油相1と水相1とを15℃〜40℃の温度で混合する工程(3)
を備え、工程(2)以外の工程において、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まない上記[1]〜[22]いずれか1の口腔内粘膜保護剤の製造方法。
【実施例】
【0059】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0060】
[実施例1〜4、比較例1〜6]
表1に示す処方にしたがって、各酵素活性阻害剤を調製し、必要に応じて得られた酵素活性阻害剤を用い、下記に示す方法にしたがって各測定及び各評価を行った。
【0061】
《口腔内細菌由来の酵素活性阻害効果の評価》
(細菌の培養)
Porphyromonas gingivalis ATCC 33277(以後「P.g.」という)の培養には、平板培地としてアネロコロンビアウサギ血液寒天培地(日本BD(株))を用い、液体培地としてブレインハートインフュージョン培地(日本BD(株))に5μg/mLヘミン、1μg/mLメナジオンを添加した培地を用いた。培養は嫌気グローブボックス中(N
2:H
2:CO
2=80:10:10)の37℃インキュベーターで行った。
P.g.を培地で培養後、菌培養上清を抽出し、抽出した菌培養上清に氷冷下にて80%硫酸アンモニウムを加えて攪拌した後、10,000gで30分間遠心分離した。ペレットに少量の氷冷したバッファー(20mM Tris−HCl(pH7.4)、150mM NaCl、10mM CaCl
2)を加えて溶解した後、氷冷下でバッファー(20mM Tris−HCl(pH7.4)、150mM NaCl、0.05%Tween20、10mM CaCl
2)にて一晩透析した。その後、7,000gで10分間遠心分離して、沈殿を除去し、濃縮P.g.培養上清とした。
【0062】
(酵素活性量の測定)
測定用の緩衝液には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用した。前述のP.g.濃縮培養上清をPBSで50倍に希釈した(P.g.培養上清50倍希釈液)。ジメチルスルホキシド(DMSO)に、表1に記載の各酵素活性阻害剤を溶解した後、PBSで10倍希釈して測定用サンプルとした。96 wellプレートに、酵素として前述のP.g.培養上清50倍希釈液100μLと所定濃度の測定サンプル100μLを加え、37℃で10分間プレインキュベードした。その後、酵素基質となるBoc−Phe−Ser−Arg−MCA(3107−v; (株)ペプチド研究所)を2μL添加し(終濃度100μM)、37℃で10分間インキュベートした。蛍光分光光度計(励起波長380nm、吸収波長460nm)を用いて、反応の進行に伴う蛍光強度の増加を測定し、酵素反応の強さは基質から遊離するAMC(7−amino−4−methylcoumarin)量で評価して、下記式により酵素阻害活性(%)の値を算出した。
酵素阻害活性(%)=100−(測定サンプルの蛍光強度/controlの蛍光強度)×100
なお、コントロールは、評価素材をDMSO100%液としたものであり、各酵素活性阻害剤について、6サンプルずつ酵素活性量を測定して求めた平均値を表1及び
図1に示す。酵素阻害活性(%)の値が小さいほど(絶対値が大きいほど)、阻害効果が高いことを意味する。
【0063】
【表1】
【0064】
表1によれば、γ-オリザノールを単独で用いた比較例1は、ある程度のプロテアーゼ活性阻害効果を示す一方、各々25℃で液状である油剤を単独で用いた比較例2〜5は、殆ど活性阻害効果を示さないことがわかる。
これに対し、γ-オリザノールに、各々25℃で液状の油剤である、シア脂を併用した実施例2、トコフェロールを併用した実施例3、流動パラフィンを併用した実施例4、オリーブ油を併用した実施例5は、比較例1でも示されるγ-オリザノールによる阻害効果が、各油剤を単独で用いた比較例2〜4で示される効果を相加した場合よりも、高い効果が得られることが認められる。
一方、シリコーン油と混合した比較例6は、オリザノールのプロテアーゼ活性を却って高めてしまっているため、活性阻害効果が減じられる結果となっていることが認められる。
【0065】
《口腔状態と口腔内酵素活性との関連性の評価1》
20〜50代男性(N=43)を被験者とし、蒸留水6mLを口に含み、30秒間含嗽した洗口吐出液を採取した後、15,000rpm、4℃で15分間遠心分離した。遠心上清を除去した後、沈渣の質重量を計測し、口腔粘膜剥離量とした。
20〜50代男性(N=46)の10分間の安静時唾液を採取した後、3,000rpm、4℃で15分間遠心分離した。96 well plateに100μL 唾液上清、100μL PBSを添加し、30秒間攪拌した。その後、酵素基質となるBoc−Phe−Ser−Arg−MCA(3107−v; (株)ペプチド研究所)を2μL添加し(終濃度100μM)、37℃で10分間インキュベートした。蛍光分光光度計(励起波長380nm、吸収波長460nm)を用いて、反応の進行に伴う蛍光強度の増加を測定し、酵素反応の強さは基質から遊離するAMC(7−amino−4−methylcoumarin)量で評価し、唾液のプロテアーゼ活性とした。粘膜剥離量とプロテアーゼ活性(平均値に対する相対比)との関係を
図2に示す。
【0066】
《口腔内状態と口腔内酵素活性との関連性の評価2》
被験者46名に記入式質問票を用いて、試験当日の口腔不快症状の有無の評価を記載させた。質問票において口中がネバつくと感じている被験者の唾液プロテアーゼ活性量の平均値と、口中がネバつくと感じていない被験者の唾液プロテアーゼ活性量の平均値をも求めた。同様に、口中が乾くと感じている被験者の唾液プロテアーゼ活性量の平均値と、口中が乾くとは感じられない被験者の唾液プロテアーゼ活性量の平均値を求めた。これら平均値を表2に示し、唾液プロテアーゼ活性と口腔不快症状との関連性を評価した。
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示すように、口の中がネバつく、或いは乾くといった口腔不快症状のある被験者は、唾液中のプロテアーゼ活性が高いことが認められる。また、
図2に示すように、粘膜剥離量とプロテアーゼ活性量との間には相関関係があることが認められる。
以上より、口腔内のプロテアーゼをはじめとする口腔内細菌由来の酵素活性を阻害することにより、粘膜剥離量が低減され、口の中がネバつく、口の中が乾くといった不定愁訴も軽減することができると考えられる。
【0069】
[実施例5〜8、比較例7]
表3に示す処方にしたがって、各歯磨組成物を調製した。
得られた歯磨組成物を用い、下記に示す方法にしたがって成分(A)の口腔粘膜への吸着性の評価を行った。なお、粘度は、各歯磨組成物を粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後、ヘリパス型粘度計を用いて、ロータT-C、回転数2.5rpm、1分間の条件で測定した。
結果を表3に示す。
【0070】
《成分(A)の口腔粘膜への吸着性》
歯ブラシ(チェックスタンダード、花王株式会社製)を装着した保持部、及び稼動可能な試験台を備えたブラッシングマシーンを用いた。まず、シリコーン製シート(タイガーズポリマー株式会社 SR板 SR−50、1.5cm×5cm)を両面テープでブラッシングマシーンの試験台に固定した。次いで、各歯磨組成物を1g±0.01g秤量して上記シート上に配置し、イオン交換水250μLを注いだ後、歯ブラシへの荷重を200g、試験台の稼動を60rpmとし、20ストロークずつ3回にわたりブラッシングを行った。なお、シート上からずれた歯磨組成物は、各ブラッシングとブラッシングの間に元のシート上に戻した。
ブラッシング後、一定量の流水でシートを10秒間洗浄し、目視により歯磨組成物が除去されていることを確認した。次いで、シートを軽く乾燥させ、アセトンとともに25mLメスフラスコに投入して1分間程度浸漬して両面テープを剥離した後、シートを再びメスフラスコに戻し、25mLまで水を充填した。
【0071】
次に、超音波洗浄機(ULTRASONIC CREANER SU−9TH 柴田化学機器工業株式会社)を用い、15分間×2回超音波処理を行った。処理後のメスフラスコ中の液体を四フッ化エチレン樹脂製フィルター(ポアサイズ0.45μm)でろ過し、ろ液中における成分(A)の量(μg/cm
2)を測定対象物としてHPLCにより測定し、成分(A)の口腔粘膜への吸着性の指標として評価した。
なお、歯磨組成物を用いたブラッシングをしなかったこと以外、同様にして上記測定を行なった結果を用い、両面テープを剥離した後にシート上に残存する粘着剤等の成分によって、得られる結果が左右されないことを確認した。
なお、HPLCの測定は以下の条件により行った。
【0072】
<HPLC(高速液体クロマトグラフィー)の測定条件>
《γ−オリザノール》
装置:日立高速液体クロマトグラム La chrom Elite
カラム:L−column ODS4.6×150mm(5μm)(化学物質評価研究機構)
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/テトラヒドロフラン(88:12)
流量:1.0mL/Min
サンプル注入量:20μL
測定波長:326nm
なお、γ−オリザノールのピークは、保持時間5分の2〜3のピークの総和として測定した。
【0073】
【表3】
【0074】
※1:オリザ油化株式会社製
※2:クロピュアリキッドベジラン、クローダジャパン株式会社製(トリオレイン酸グリセリル44.2質量%、トリリノール酸グリセリル6質量%、トリステアリン酸グリセリル44質量%、トリパルミチン酸グリセリル4質量%)
※3:小堺製薬株式会社製(トリオレイン酸グリセリル82.5質量%、トリリノール酸グリセリル6質量%、トリパルミチン酸グリセリル9質量%、トリステアリン酸グリセリル2.3質量%、トリアラキン酸グリセリル0.2質量%)
※4:l−メントール50質量%、ペパーミントオイル15質量%、アネトール5質量%、スペアミントオイル5質量%、ユーカリオイル1質量%、アニスアルデヒド2.5質量%、プロピレングリコール17質量%、エタノール3質量%、他(1,8-シネオール、ターピネオール等)1.5質量%
※5:レオドールTW-S120V、花王株式会社製
※6:エマール10PT、花王株式会社製
※7:ケルデント、DSP五協フード&ケミカル株式会社製
※8:CMC1150、ダイセルファインケム株式会社製
※9:サンローズF35SH、日本製紙ケミカル製
※10:サイロピュア♯25、富士シリシア化学株式会社製
※11:ソルボシルAC77、PT PQ Silicas Indonesia製
【0075】
表3に示すように、実施例5〜8の歯磨組成物は、比較例7に比して、成分(A)のオリザノールの口腔粘膜への吸着性が高められることがわかる。
【0076】
[実施例9、比較例8]
表4に示す処方にしたがって、各口腔内粘膜保護剤を調製し、下記に示す方法にしたがって口腔内の細胞剥離量(%)を測定し、口腔内粘膜の保護効果を評価した。上記比較例1の評価も含め、結果を表4及び
図3に示す。
【0077】
《口腔内粘膜の保護効果の評価》
評価素材として、ヒト歯肉上皮前駆細胞(HGEP細胞;CELLnTEC社)を用いた。
まず、ジメチルスルホキシド(DMSO)に、各酵素活性阻害剤を溶解した後、CnT−Prime培地(CELLnTEC社)で100倍希釈して測定用サンプルとした。次に、HGEP細胞をCnT−Prime培地中で増殖させた後、24 well plateに8×10
4 cells/well播種し、サブコンフルエントになるまで培養した。培地を1mLの測定用サンプルに置換し、24時間培養後、上記P.g.濃縮培養上清10μLを添加し、2時間インキュベーションした。各wellをPBSで洗浄後、wellに残存している細胞をACTase(細胞剥離用酵素)で回収した後、血球計算版で細胞数を測定し、下記式により細胞剥離量(%)の値を算出した。
細胞剥離量(%)
=100−(測定サンプルの細胞数/controlの細胞数)×100
【0078】
なお、コントロールは、評価素材をDMSO100%液としたものであり、各酵素活性阻害剤について、2サンプルずつ細胞剥離量を測定して求めた平均値を表4及び
図3に示す。細胞剥離量(%)の値が小さいほど(絶対値が大きいほど)、口腔内粘膜の保護効果が高いことを意味する。
【0079】
【表4】
【0080】
成分(A)のγ-オリザノールを単独で用いた比較例1は、ある程度の細胞剥離抑制効果を示す一方、成分(B)の25℃で液状である油剤を単独で用いた比較例8は、ほとんど細胞剥離抑制効果を示さないことがわかる。
これに対し、成分(A)のγ-オリザノールと成分(B)の25℃で液状の油剤を併用した実施例9は、比較例1と比較例8とで示される効果を相加した場合よりも、高い細胞剥離抑制効果が得られることが認められる。